説明

ココア製品の製法

色を改善するためにココア製品を酵素処理する方法が開示される。その開示の態様は、ココア製品のpHを変化させることがないかかる処理に特に指向される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概略、色を改善するためにココア製品を酵素処理する方法に関する。いくつかの態様において、本開示はココア製品のpHを調整する必要性がないかかる処理に指向される。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本願は、2009年3月11日付けで出願した、ココア製品の製法を発明の名称とする米国仮特許出願、シリアル番号61/159,292号(ここに出典明示してその全てを本明細書の一部とみなす)の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
より暗色を持つココア製品は、ココアおよびチョコレート産業において広範囲に適用される。例えば、赤色、暗褐色または黒色のココアパウダーは、乳製品、クッキング成分、ベーキング製品および菓子のごとき種々の製品に組み込まれる。かかる製品の例には、キャンディーおよびチョコレートの製品、チョコレート、バー、キャンディーバー、クッキー、ココアおよびチョコレート飲料、インスタントココア製品、ビスケット、シロップ、ケーキ、パン、プリン、アイスクリーム、アイスクリームトッピングおよび他のタイプのデザートための菓子コーティング、コンパウンドおよびフィリング(filling)が含まれる。1つの重要な用途は、チョコレートおよびチョコレートバーにある。もう一つの重要な用途は、暗色のサンドイッチクッキーを有することがは一般的であるクッキー産業にある。しかしながら、これらの多数のココアおよびチョコレート製品の調製において、特に、色の強度が増加するので、苦いまたはオフノート(off-note)風味を有する傾向にある。
【0004】
カカオ豆からのココアケーキおよびココアパウダーのごときココア製品を製造するために使用される多数の方法が存在する。従来のプロセスは、カカオ豆を発酵させ、清潔にし、焙煎することを含む。カカオ豆の固い外殻のウイノウイング(winnowing)(クラッキングおよびファニングともいう)は、ココアニブを得るためになされる。ニブの粉砕の結果、ココアリカー(チョコレートリカー、チョコレート塊またはココア塊ともいう)を形成する。次いで、ココアリカーを加圧して、リカーの乾燥部分であるココアケーキから、脂肪含有部分であるカカオ脂を分離させる。次いで、ココアケーキを粉砕または微粉砕し、篩にかけて、ココアパウダーを形成する。この従来のプロセスは、19を超えるL値の茶色を一般的に有し、しばしばココアまたは天然ココアと呼ばれるココア製品を製造する。
【0005】
また、カカオ豆、ニブ、ココアリカー、ケーキまたはココアパウダーは、化学塩基および/または緩衝剤の添加によって製品の酸性度を低下させるアルカリに付すことができる。このアルカリプロセスは、製品のpHを上昇させ、改変して、製品中により暗色を発生するために用いられるよく知られた工程である。しかしながら、それは、時々風味の中和に導くか、またはオフノートおよび風味を創製しかねない。アルカリプロセス後に、製品のpHは、しばしば緩衝剤および/または酸を用いて本来の製品のpH領域まで低下させる。
【0006】
カカオ豆の処理における第1の工程は、発酵または熟成である。カカオ豆(または種子)は鞘から取り出し、発酵させ、次いで、乾燥させる。発酵工程はカカオ豆中の風味の発生に重要である。次いで、カカオ豆は清潔にされ篩にかけ、最終製品に依存してある種の配合によって混合し得る。
【0007】
次の工程はカカオ豆の焙煎であり、これは最終製品の風味および色の生成に重要である。一般的に、より高い焙煎温度(180℃と同程度に高い)は、より暗色に導くが、より低い温度(70℃と同程度に低い)はより薄い色に導くであろう。また、ココア製品がそれらの中でこれまで同定されたほぼ500のフレーバ化合物を生成するようにいくつかの化学反応を受けるので、焙煎工程は風味の発生にとって重要である。従来の方法は、カカオ豆の焙煎を含んでいる。別法において、焙煎工程は、ココアニブまたはココアリカーでさえ、生じることができる。例えば、ココアニブは、ダッチプロセス(ココアニブに適用されるアルカリプロセス)に続いて焙煎工程を経由できる。
【0008】
焙煎後、カカオ豆は、ココアニブを露出するためにカカオ豆から殻を除去することよりなるウイノウイング工程を受ける。次いで、ニブは、ココアリカーを形成するための粉砕工程を受ける。別法として、ココアニブを焙煎するか、またはダッチプロセスを受けることができる。次いで、ココアリカーは、リカーを液圧プレスによって典型的に加圧して、2つの異なる製品のカカオ脂画分およびココアケーキ画分に分離する。液体の脂肪含有部分であるカカオ脂を用いて、甘いミルクチョコレートを調製する。次いで、より乾燥した部分であるココアケーキを微粉砕し篩にかけて、ココアパウダーを形成する。
【0009】
種々の方法が現在、ココア製品の色を改善するために存在する。用いられる最も一般的な方法はアルカリプロセスであり、これは、カカオ豆、ニブ、リカー、ケーキまたはパウダーに用いて、赤色、暗褐色または黒色のごときより暗色を持つ製品を調製するアルカリ化工程である。一般的に用いるアルカリ剤は、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素アンモニウムおよび/または水酸化カリウムのごとき、ナトリウム、カルシウム、カリウム、アンモニウムおよび/またはマグネシウム化合物である。時々多量のこれらの化学薬品は、オフノートまたは不適当な風味を生成しかねず、他の工程をこれらのオフノートを除去またはマスクするために必要とし得る。加えて、アルカリプロセスを60℃から230℃までの範囲にある温度で実行でき、一般的には2時間から48時間を要し得る。圧力下で、そのプロセスを実行により処理時間を低下できるが、全プロセスは依然として、時間およびエネルギー集約的である。
【0010】
暗色のココアケーキの製造方法の一例は、米国特許第5,009,917号に見出され、これは改変されたアルカリプロセスを用いる。そのプロセスにおいて、ココアケーキは細かな篩にかけ、ココアの重量の5〜60%の初期含水量および1〜12%のアルカリを含む水溶液に添加し、150〜300°F(約66℃〜149℃)の温度および10〜200p.s.i. にて5〜180分間混合し、反応器をベントし、酸素含有ガスを供給し、1時間当たり反応器の少なくとも3ヘッドスペースにおいてヘッドスペース変化を達成し、圧力を放出し、次いでケーキを乾燥させる。
【0011】
暗色を発生するもう一つの方法は、焙煎工程中に時間、温度および湿度を増加させることである。例えば、特に高い焙煎温度ならびにより長い焙煎時間の結果、より暗色を生じ得ることが知られている (John Wiley & Sons, Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, Vo. 6, 356, 2009)。焙煎温度は、それが低、中または高焙煎であるかに依存して、70℃〜180℃で広範囲に変化できる。より長い焙煎時間は、より暗色に導くが、製品中の苦味または焙煎風味を生じ得る。同様に、焙煎時間は、30分間〜数時間の範囲とすることができ、より長い焙煎時間は、暗色に導く。また、より高い空気湿度条件および空気流量の変化を焙煎中に使用して、色を増すことができる(Wieslawa Krysiak, J. of Food Eng., 77 (2006), 449-453, Influence of Roasting Conditions on Coloration of Roasted Cocoa Beans)。欠点は、これらの方法が比較的高エネルギー使用を含む注意深く制御された条件を必要とすることである。
【0012】
依然として他のアプローチは、より一貫した風味を得るために酵素処理の存在下でココアニブまたはココアリカーのpHおよび温度を変更することを含む。例えば、米国特許第5,888,562号においては、ニブまたはリカーは、異なる起原のカカオ豆、または種々の段階の発酵に付されたカカオ豆から調製され、酵素ならびにpHおよび温度の変更により処理し、続いて、風味前駆物質における変動性を克服し、かつよく発酵し焙煎されたカカオ豆を得るために焙煎する。しかし、このプロセスにおいて、pHは、酵素活性を最大化して、より一貫した風味を得るために、温度と共に、一般的にしばしば数回調整される。
【0013】
他のアプローチはココア製品の色を改善するために取られた。人工着色料を添加して色を改善し、それにより、アルカリプロセスを介して製品に化学薬品を添加しなければならないことを回避する。しかしながら、多数の国々は、ある種の食品中の着色料の使用に対する規制を有している。他のものは、ココア製品のより強烈な色を提供するように、pHならびに温度および圧力を改変することに加えて、アルカリプロセスのために長時間を用いる。依然として、他のものは、苦い風味またはオフノートを有することなく、より暗色を得る広範囲な処理工程を開発した。しかしながら、これらのプロセスは時間およびエネルギー集約的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本開示は、一般的に色を改善するためにココア製品を酵素処理する方法に関する。いくつかの態様において、本開示はココア製品のpHを調整する必要性がないかかる処理に指向される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示は、処理されたココア製品の製法に関し、この製法は、水の存在下で少なくとも1つのプロテアーゼおよび少なくとも1つのカルボヒドラーゼの酵素混合物をココア製品に添加し、還元糖およびアミノ酸を増加するのに十分である時間および温度にてココア製品を処理して、処理したココア製品を得ることによりココア製品を提供する工程を含む。1つの具体例において、水の存在下で酵素混合と組み合わせたココア製品は、約15分〜5時間の時間、および40℃〜70℃の温度にて処理される。典型的には、酵素混合物の一部であるプロテアーゼは、エンドペプチダーゼ、エキソペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、メタロプロテイナーゼおよびカルボキシペプチダーゼよりなる群から選択される。酵素混合物の一部であるカルボヒドラーゼは、典型的には、サッカリダーゼ、アミラーゼ、エキソアミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、エンドアミラーゼ、α−アミラーゼ、グルカナーゼおよびセルラーゼよりなる群から選択される。プロテアーゼは、ココア製品の重量に基づき、0.01〜1.0重量%の量であることができる。カルボヒドラーゼは、ココア製品の重量につき0.01〜1.0重量%の量であることができる。処理されたココア製品の色は、19未満のL値を有する。より暗色を持つ(例えば、19未満のL値を持つ)ココア製品を製造するために、従来の方法を改変することが必要である。
【0016】
本発明のもう一つの態様は、処理されたココア製品の製法を提供し、この製法は、水の存在下で少なくとも1つのプロテアーゼおよび少なくとも1つのカルボヒドラーゼの酵素混合物をココア製品に添加し、次いで、pHを調整することなくメイラード反応が生じるために利用可能な還元糖およびアミノ酸を増加させるのに十分である時間および温度にてココア製品を処理することにより、ココア製品を提供する工程を含む。次いで、これらの糖およびアミノ酸は、一般的にメイラード反応と呼ばれる非酵素反応において相互に反応するのに利用可能である。この反応は、製品の色を改善するためにしばしば用いられる。1つの具体例において、処理されたココア製品のpHが、出発ココア製品の±1.0のpH単位の範囲内にある。もう一つの具体例において、塩基、酸、緩衝剤または中和剤の添加は、ココア製品または処理されたココア製品のpHを0.1〜1.0を超えるpH単位で変更しない量である。ココア製品および処理されたココア製品のpH範囲は、4.0〜7.0のpHに維持される。もう一つの具体例において、水の存在下で酵素混合物と組み合わせたココア製品は、約15分間〜5時間の時間、70℃未満の温度にて処理される。典型的には、温度は少なくとも40℃である。酵素混合物の一部であるプロテアーゼは、エンドペプチダーゼ、エキソペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、メタロプロテイナーゼおよびカルボキシペプチダーゼよりなる群から選択できる。酵素混合物の一部であるカルボヒドラーゼは、サッカリダーゼ、アミラーゼ、エキソアミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、エンドアミラーゼ、α−アミラーゼ、グルカナーゼおよびセルラーゼよりなる群から選択できる。プロテアーゼは、典型的には、ココア製品の重量に基づき0.01〜1.0重量%の量にある。カルボヒドラーゼは、典型的には、ココア製品の重量に基づき0.01〜1.0重量%の量にある。処理されたココア製品は、19未満のL値を持つ色を有する。
【0017】
本発明の1つの態様は、水の存在下で少なくとも1つのプロテアーゼおよび少なくとも1つのカルボヒドラーゼの酵素混合物を焙煎されたココア製品に添加し、還元糖およびアミノ酸を増加させるのに十分な時間および温度にて焙煎されたココア製品を処理することにより既に焙煎されたココア製品を供する方法を提供する。次いで、これらの還元糖およびアミノ酸はメイラード反応が生じるのに利用可能である。1つの具体例において、焙煎されたココア製品は、水の存在下での酵素混合物と組み合せ、約15分間〜5時間の時間、40℃〜70℃の温度にて処理される。酵素混合物の一部であるプロテアーゼは、エンドペプチダーゼ、エキソペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、メタロプロテイナーゼおよびカルボキシペプチダーゼよりなる群から選択できる。酵素混合物の一部であるカルボヒドラーゼは、サッカリダーゼ、アミラーゼ、エキソアミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、エンドアミラーゼ、α−アミラーゼ、グルカナーゼおよびセルラーゼよりなる群から選択できる。プロテアーゼは、典型的には、焙煎されたココア製品の重量に基づき0.01〜1.0重量%の量にある。カルボヒドラーゼは、典型的には、焙煎されたココア製品の重量に基づき0.01〜1.0重量%の量にある。処理されたココア製品の色は、19未満のL値を有する。
【0018】
より暗色の、より強烈に着色したチョコレート製品についての増加している要求が存在する。例えば、19未満のL値を持ち、利用可能な還元糖およびアミノ酸を増加させるのに十分な時間および温度にて水の存在下で少なくとも1つのプロテアーゼおよび少なくとも1つのカルボヒドラーゼの酵素混合物によって酵素処理されたココア製品のごとき食用食品の必要性が存在し;ここに、処理されたココア製品は、乳製品、クッキング成分、ベーキング製品、キャンディーまたはそのいずれかの組合せよりなる群から選択される食用食品に組み込まれる。もう一つの具体例において、食用食品は、キャンディーおよびチョコレート製品、チョコレート、バー、キャンディーバー、クッキー、ココアおよびチョコレート飲料、インスタントココア製品、ビスケット、シロップ、ケーキ、パン、プリン、アイスクリーム、アイスクリームトッピングおよび他のタイプのデザートのための菓子コーティング、コンパウンドおよびフィリングとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、カカオ豆からココアパウダーおよびカカオ脂を生成するための従来の方法についてのプロセスフローチャートである。
【図2】図2は、アルカリプロセスを含む別法についてのプロセスフローチャートであり、これは、ニブに対してもでき(ダッチプロセス)、続いてココアニブの焙煎をすることができる。また、アルカリプロセスは、ココアケーキに行うことができる。
【図3】図3は、ココアケーキからのココアパウダーの製法のプロセスフローチャートである。この方法において、アルカリ化工程が示される。しかしながら、天然ココアを製造するために、このプロセスは、典型的には、アルカリ化工程なくして実施される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
選択された定義
本願明細書に用いた以下の用語は、以下の意味を有する:
「カカオ豆」なる用語は、その木の鞘から得られる豆または種子を意味する。最初に発酵させ、次いで処理して、カカオ脂、ココアパウダーおよびチョコレート製品のごとき種々の製品を製造するための基本的な未加工成分である。
【0021】
「ココアニブ」なる用語は、カカオ豆の非食用の殻から分離されるニブまたは核をいう。
「ココアリカー」なる用語は、ココアニブの粉砕から生じる生成物を意味する。ココアリカーは、時々、チョコレートリカー、チョコレート塊またはココア塊と呼ばれる。
【0022】
「ココアケーキ」なる用語は、ココアリカーを加圧して、ココアケーキを生成および分離することによってココアリカーから調製された生成物を意味し、それは、カカオ脂からのココアリカーのより乾燥した部分である。
【0023】
「ココアパウダー」なる用語は、ココアケーキの微粉砕および篩かけから生成された生成物を意味する。
【0024】
「処理されたココア製品」なる用語は、本明細書に記載した条件下で出発ココアパウダーまたはココアケーキの酵素処理にそれぞれ起因する製品を意味する。
【0025】
「焙煎されたココア製品」なる用語は、焙煎工程に付されたココアパウダーまたはココアケーキをいう。従来のココアプロセス中の焙煎工程は、カカオ豆で生じるが、別法においては、ココアニブ、ココアリカー、ココアケーキまたはココアパウダーに適用できる。
【0026】
「ココア製品」なる用語は、処理、未処理または焙煎されているかに拘らず、ココアケーキまたはココアパウダーを意味する。
【0027】
「アルカリプロセス」または「アルカリ化工程」なる用語は、ココアニブ、ココアリカー、ココアケーキまたはココアパウダーに対するアルカリ生成物またはアルカリ生成物の組合せを適用する方法をいう。このプロセスは、より暗色のココアまたはチョコレート製品を提供するために、ナトリウム、カルシウム、カリウム、アンモニウムおよび/またはマグネシウムの化合物のごとき1以上のアルカリ化合物、例えば、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素アンモニウムおよび/もしくは水酸化カリウムまたはその組合せを適用することよりなる。ダッチプロセスは、一般的には、ココアニブに適用されるアルカリプロセスをいう。
【0028】
「プロテアーゼ」なる用語は、ポリペプチド鎖中のアミノ酸を連結するペプチド結合の加水分解によってタンパク質異化を始めるいずれかの酵素をいう。プロテアーゼは、時々プロテイナーゼまたはタンパク分解酵素と呼ばれる。プロテアーゼは、それらがペプチドおよびアミノ酸のごときより小さな単位への水の存在下での種々の結合の加水分解を触媒するために、加水分解酵素として知られているそのクラスの酵素に属する。
【0029】
「カルボヒドラーゼ」なる用語は、炭水化物を単糖に加水分解するいずれかの酵素をいう。カルボヒドラーゼが、水の存在下でグルコースおよびスクロースのごときより小さな単位への炭水化物結合の加水分解のための触媒として作用するために、それらは加水分解酵素と考えられる。
【0030】
概要
前記に概説されるごとく、本発明は、ココアパウダーおよびココアケーキのごときココア製品を酵素処理する種々のプロセスを提供する。1つの具体例は、水の存在下で少なくとも1つのプロテアーゼおよび少なくとも1つのカルボヒドラーゼの酵素混合物をココア製品に添加し、還元糖およびアミノ酸を増加させるのに十分である時間および温度にてココア製品を処理することによりココア製品を提供する方法に関する。ココア製品の処理時間は、典型的には、15分間〜5時間である。1つの具体例において、処理時間は、典型的には、30分間〜60分間である。驚くべきことには、ココア製品の処理に用いる温度は、70°未満であることができる。温度は典型的には少なくとも40℃である。より低い時間および温度条件の結果、かなりの省エネルギーならびに製造時間の低下を生じることができる。1つの態様において、酵素混合中の各酵素は、ココア製品の重量に基づき0.01〜1.0重量%の比率で用いられる。
【0031】
もう一つの態様において、ココア製品は、pHの調整なくして酵素処理される。この結果は、酵素があるpH範囲の活性を有するので、全く予期されなく、これは、アルカリプロセスでのごとく、色を改善するためにpHを調整する方法の使用に導いた。また、これは、従来のアルカリプロセスまたは高い焙煎プロセスより使用のためのより速くかつより容易なプロセスに導く。また、プロセスを促進する特定の圧力下で開示されたプロセスを用いる必要性も存在しない。本プロセスの結果、ココア製品は、好ましい風味である改善された色を持つ。
【0032】
プロセス
ココア製品は、メイラード反応に利用可能な還元糖およびアミノ酸を増加させるのに十分な時間および温度にて水の存在下で少なくとも1つのプロテアーゼおよび少なくとも1つのカルボヒドラーゼの酵素混合物で処理される。1つの態様において、ココア製品は、pHを調整することなく、酵素混合物によって処理される。もう一つの態様において、プロセスは、既に焙煎されたココア製品に適用される。
【0033】
1つの具体例において、本発明は、水の存在下で少なくとも1つのプロテアーゼおよび少なくとも1つのカルボヒドラーゼの酵素混合物をココア製品に添加し、還元糖およびアミノ酸を増加させるのに十分な温度でココア製品を処理することにより、ココア製品を提供する方法を提供する。もう一つの具体例において、酵素混合物は、1を超えるプロテアーゼおよび1を超えるカルボヒドラーゼを含む。1つの具体例において、プロセスは、水の存在下で少なくとも1つのプロテアーゼ、少なくとも1つのカルボヒドラーゼおよびポリフェノールオキシダーゼ(しばしばチロシナーゼという)の酵素混合物でココア製品を処理することを提供する。もう一つの具体例において、酵素混合物は、ポリフェノールオキシダーゼと共に少なくとも1つのプロテアーゼを含む。少なくとも1つのプロテアーゼおよび少なくとも1つのカルボヒドラーゼの酵素混合物は最適化して、赤みがかった色、または暗褐色または黒色のごときより暗色のごとき望ましい色を提供できる。
【0034】
プロテアーゼは、ポリペプチド鎖中のアミノ酸を連結するペプチド結合の加水分解によってタンパク質異化を始めるいずれの酵素も含むことができる。プロテアーゼは、時々プロテイナーゼまたはタンパク分解酵素ともいう。プロテアーゼは、それらがペプチドおよびアミノ酸のごときより小さな単位への水の存在下での種々の結合の加水分解を触媒するために、加水分解酵素として知られているクラスの酵素に属する。したがって、そのプロセスは、メイラード反応が生じるのに自由に利用可能であるアミノ酸の量を増加させる。酵素混合物の一部であるプロテアーゼは、典型的には、エンドペプチダーゼ、エキソペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、メタロプロテイナーゼ、カルボキシペプチダーゼおよびその組合せよりなる群から選択される。1つの態様において、プロテアーゼは、ココア製品の重量に基づき0.01〜1.0重量%の量であることができる。もう一つの態様において、酵素混合物の一部であるプロテアーゼの量は、典型的には、ココア製品の重量に基づき0.10〜1.0重量%の量にある。1つの具体例において、プロテアーゼは、Flavourzyme(登録商標)1000Lのごときアミノペプチダーゼ、Neutrase(登録商標)0.8Lのごときメタロプロテイナーゼ中性プロテアーゼ、およびAlcalase(登録商標)2.4L FGのごときプロテアーゼを含むことができ、これらの全ては、Novozymes SAから入手可能である。
【0035】
酵素混合物の一部であるカルボヒドラーゼは、炭水化物を還元糖のごとき単糖に加水分解するいずれの酵素も含むことができる。カルボヒドラーゼが、水の存在下でグルコースおよびスクロースのごときより小さな単位への炭水化物結合の加水分解のための触媒として作用するために、それらは加水分解酵素と考えられる。したがって、そのプロセスは、メイラード反応が生じるのに自由に利用可能である還元糖の量を増加させる。1つの態様において、酵素混合物の一部であるカルボヒドラーゼは、ココア製品の重量に基づき0.01〜1.0重量%の量にある。もう一つの態様において、酵素混合物の一部であるカルボヒドラーゼの量は、ココア製品の重量に基づき0.10〜0.40重量%の量にあることができる。酵素混合物の一部であるカルボヒドラーゼは、サッカリダーゼ、アミラーゼ、エキソアミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、エンドアミラーゼ、α−アミラーゼ、グルカナーゼ、セルロースおよびその組合せよりなる群から選択できる。1つの具体例において、カルボヒドラーゼは、Fungamyl(登録商標)800Lのごときα−アミラーゼ、Amylase(商標)AG 300Lのごときグルコアミラーゼまたはアミリグルコシダーゼ(amyliglucosidase)、Viscozyme(登録商標)Lのごときβ−グルカナーゼ、もしくはCelluclast(登録商標)1.5Lのごときセルラーゼ、またはその組合せを含むことができ、その全てはNovozymesからのものである。
【0036】
1つの具体例において、本発明は、水の存在下で少なくとも1つのプロテアーゼおよび少なくとも1つのカルボヒドラーゼの酵素混合物をココア製品に添加し、還元糖およびアミノ酸を増加させるのに十分である時間および温度にてココア製品を処理することにより、ココア製品を提供する方法に関する。水は、より小さな単位へのこれらの化合物の加水分解を助けるであろう。好ましくは、水は、ココア製品の約20%〜40体積%の量で添加され存在する。
【0037】
本発明のもう一つの態様は、水の存在下で少なくとも1つのプロテアーゼおよび少なくとも1つのカルボヒドラーゼの酵素混合物をココア製品に添加し、利用可能な還元糖およびアミノ酸を増加させるのに十分な時間および温度にてココア製品を処理することにより、ココア製品を調製する方法を提供する。1つの具体例において、ココア製品は、15分間〜5時間の時間で処理される。もう一つの具体例において、ココア製品は15分を超える時間処理される。まだもう一つの具体例において、ココア製品は、30分間〜60分間の時間処理される。
【0038】
本発明の1つの態様において、水の存在下で少なくとも1つのプロテアーゼおよび少なくとも1つのカルボヒドラーゼの酵素混合物をココア製品に添加し、利用可能な還元糖およびアミノ酸を増加させるのに十分な時間および温度にてココア製品を処理することにより、ココア製品を供する方法を提供する。1つの具体例において、ココア製品は70℃未満の温度にて処理される。もう一つの具体例において、ココア製品は、45℃〜60℃の温度にて処理される。さらにもう一つの具体例において、ココア製品は、50℃〜55℃の温度にて処理される。
【0039】
プロテアーゼおよびカルボヒドラーゼのごとき酵素の使用によるココア製品に存在するタンパク質および炭水化物を酵素処理する方法は、タンパク質をアミノ酸のごときより小さな単位に分解し、炭水化物を還元糖または単糖のごときより小さな単位に低下させる。次いで、これらの糖およびアミノ酸は、一般的にメイラード反応と呼ばれる非酵素反応において、相互に反応するために自由に利用可能である。この反応は、より暗色に着色した製品を得るためにしばしば用いられる。この反応は、典型的には、反応が糖とアミノ酸との間に生じることを可能にするのに十分な熱の存在下で生じる。メイラード反応のこの加熱工程は、典型的には70℃〜120℃の温度で生じる。
【0040】
最終製品の色は、温度、時間、用いた酵素混合物および酵素量に依存して変更できる。特に、用いた酵素混合物および量の組み合せを変更して、より暗色を発生できる。色は、ハンターL、a、b色空間尺度のごとき多数の尺度によって測定できる。L値は、100(純白)から0(真っ黒)までの尺度を用いることにより、製品の明度を測定する。数が低くなる程、明度の点からより黒くなる。暗色を得るためのアルカリプロセスまたは同様のプロセスを受けないココア製品(しばしば「ココア」または「天然ココア」という)については、典型的なL値は、約21〜22である。また、「a」、「b」および「a/b」尺度のごとき他のパラメーターを用いて、色を記載できる。「a」値は、赤色〜緑色の色を測定し、正の数は赤色を示し、負の数は緑色を示し、0の値は灰色を示す。「b」値は、黄色〜青色の色スペクトルを測定し、正の数は黄色、負の数は青色を示し、0の値は再び灰色を示す。最後にまた、「a/b」比を時々用いて、ココア製品の赤みがかった色相を示す。「a/b」値がより高くなる程、色がより深い赤色となり、約1.25またはそれを超える比が、商業的に実行可能な色と考えられる。1つの態様において、処理されたココア製品の色は、19未満のL値を有する。もう一つの態様において、処理され焙煎されたココア製品の色は、19未満のL値を有する。色はHunter Associates Laboratory, Inc.によるHunterLab ColorQuest(登録商標)45/0分光光度計により測定できる。
【0041】
1つの驚くべき態様において、本発明は、水の存在下で少なくとも1つのプロテアーゼおよび少なくとも1つのカルボヒドラーゼの酵素混合物をココア製品に添加し、pHを調整することなく、還元糖およびアミノ酸を増加させるのに十分な時間および温度にてココア製品を処理することにより、ココア製品を供する方法を提供する。この結果は、製品のpHを上昇させるためにアルカリ溶液を添加する従来のアルカリプロセスのごとき一般的な実施に反している。より酸性の製品は、出発製品の低いpHからの異風味(off-flavor)および渋味に導き、これは、ココア製品のpHを上昇させることを必要とする。しかしながら、本開示において、pHを上昇させる塩基、pHを安定化させる緩衝剤または中和剤であるか、または元来のpHに近いpHを得ることを試みるためにpHを低下させる酸でさえであるかに拘らず、ココア製品のpHを変更するためのいずれの化学薬品も添加することを必要としない。ココア製品および処理されたココア製品のpH範囲は、処理工程中に4.0〜7.0のpHに維持され、より一般的には、pHは処理工程間に4.5〜6.5であり、プロセスの全体にわたり、その範囲内にとどまるであろう。1つの具体例において、出発ココア製品および最終的な処理されたココア製品のpHにおける変動は、pHが±1内であろう。もう一つの具体例において、pHが5.0〜6.0である。もう一つの具体例において、出発ココア製品および最終的な処理されたココア製品のpHにおける変動は、±0.5のpH単位内であろう。
【0042】
本発明のもう一つの態様は、水の存在下で少なくとも1つのプロテアーゼおよび少なくとも1つのカルボヒドラーゼの酵素混合物を焙煎されたココア製品に添加し、還元糖およびアミノ酸を増加させるのに十分な時間および温度にて焙煎されたココア製品を処理することにより、既に焙煎されたココア製品を調製する方法を提供する。焙煎工程がココア製品の色を改善するように試みるために一般的に単独で用いられるものであるので、この結果はむしろ予期されない。しかしながら、開示されたプロセスを用いて、焙煎後でさえさらに色を改善できることが判明した。1つの具体例において、焙煎されたココア製品は、水の存在下で酵素混合物と組み合せ、約15分間〜5時間の時間および40℃〜70℃の温度にて処理される。酵素混合物の一部であるプロテアーゼは、エンドペプチダーゼ、エキソペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、メタロプロテイナーゼおよびカルボキシペプチダーゼよりなる群から選択できる。酵素混合物の一部であるカルボヒドラーゼは、典型的には、サッカリダーゼ、アミラーゼ、エキソアミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、エンドアミラーゼ、α−アミラーゼ、グルカナーゼおよびセルラーゼよりなる群から選択される。プロテアーゼは、典型的には、焙煎されたココア製品の重量に基づき0.01〜1.0重量%の量にある。カルボヒドラーゼは、典型的には、焙煎されたココア製品の重量に基づき0.01〜1.0重量%の量にある。処理され焙煎されたココア製品の色は、19未満のL値を有する。
【0043】
製品
本明細書に開示され処理されたココア製品は、食品および飲料のごとき多数の異なる食用食品に用いることができる。1つの態様において、食用食品は、pHを調整することなく、還元糖およびアミノ酸を増加させるのに十分な時間および温度にて、水の存在下で少なくとも1つのプロテアーゼおよび少なくとも1つのカルボヒドラーゼの酵素混合物によって酵素処理されたココア製品を含み、それは19未満のL値を有し、ここに、処理されたココア製品は、乳製品、クッキング成分、ベーキング製品、キャンディーまたは菓子およびそのいずれかの組合せに組み込まれる。もう一つの態様において、処理されたココア製品は、キャンディーおよびチョコレート製品、チョコレート、バー、キャンディーバー、クッキー、ココアおよびチョコレート飲料、インスタントココア製品、ビスケット、シロップ、ケーキ、パン、プリン、アイスクリーム、アイスクリームトッピングおよび他のタイプのデザートのための菓子コーティング、コンパウンドおよびフィリングに利用される。1つの態様において、処理されたココア製品は、チョコレートおよびチョコレートバーに用いることができる。もう一つの態様において、処理されたココア製品は、暗色のサンドイッチクッキーに用いることができる。
【0044】
実施例
以下のテーブルは、特に、メイラード反応が生じるのに利用可能な炭水化物からの還元糖およびタンパク質からのアミノ酸の量を増加させるために、酵素活性が生じることを可能にするのに十分な時間および温度の水を含む少なくとも1つのプロテアーゼおよび少なくとも1つのカルボヒドラーゼの酵素混合物を添加することにより、ココア製品の10kgの試料を提供することからの結果を示す。驚くべきことには、いくつかの試料において、プロセスの間に酵素処理されたココア製品試料のいずれについてもいずれの時間でもpHを調整する必要がなく、プロセスの全体にわたって比較的一貫したままである。さらに、結果は、酵素処理されない製品と比較して、19未満のL値によって示されるように、最終製品の色はより暗く、それは、典型的には約21のL値を有することを示す。プロセスの温度は約50℃〜55℃である。ココア製品が酵素処理された後に、それは約10分間100℃の温度にて蒸気乾燥される。他のプロセスが一般的に酵素活性の量を最大化するために、より高温度、より長時間の反応および/またはより高圧力に依拠するので、この低温の処理でさえも、この改善された色は驚くべきものである。比較的低温および短い反応時間の結果、ココア製品の色を増加させるために従来のプロセスに関するかなりの省エネルギーを生じる。加えて、プロセスが、pHを調整するために添加される化学薬品の低下または全くなくても行うことができるために、結果は、多量の化学処理に関連しかねない異風味がなく処理されたココア製品である。予期せぬことには、より酸性の製品に関連した苦味風味およびより薄い色を回避するためにココア製品のpHを上昇させることがなくても、より暗色が、好ましい風味を保持しつつ、製品において達成できる。
【0045】
【表1】

【0046】
より暗色が酵素処理によって得られる場合、第2のセットの試験は、10kgのココア製品試料に実行される。最初の実行は、酵素が試料に添加されない参考試料よりなり、それは、天然ココア製品を得るために図1に詳述されるごとき従来のプロセスによって処理される。具体的には、ココア製品は、滅菌、乾燥および焙煎されるが、それはアルカリプロセスを受けない。この参考試料は、19を超えるL値によって示される典型的な茶色を有する。
【0047】
第2の実行は、図2に詳述される別法のプロセスよりなる。別法として、それは、アルカリ溶液を添加するアルカリ工程を含み得る。この例において、アルカリ溶液は、典型的には、8時間〜12時間反応時間で80℃の温度にて、各々の炭酸カリウム(50%濃度)および水酸化ナトリウム(30%濃度)の水中の1.0〜10体積%の溶液を含む。得られたpHは約8.0である。このアルカリプロセス試料において、約6.0のL値により示されたはるかに暗色が得られる。
【0048】
残りのココア試料は、酵素反応が生じることを可能にする時間および温度にて、水と少なくとも1つのプロテアーゼおよび少なくとも1つのカルボヒドラーゼを含む酵素混合物を添加することにより、処理される。これらの試料において、19未満、13.7から8.2と同程度の低さまでの範囲のL値から見ることができるような、暗色が得られる。さらに、pH変化はより高い色を得るためには必要ではなかった。これらの試料のpHは、約5.0〜6.5の範囲にあり得る。
【0049】
さらなる試験は、酵素反応が生じるのに十分な時間および温度にて、少なくとも1つのプロテアーゼおよび少なくとも1つのカルボヒドラーゼを含む酵素混合物を水とココア製品に添加することにより行われ、アルカリ量の低下を含む改変されたアルカリプロセスを使用することをさらに含む。例えば、アルカリ溶液は、20%未満であり、18%から1.3%と同程度の低さまでの範囲にある。酵素処理で用いるアルカリ溶液の例は、3.3%アンモニア溶液(12%濃度)、3.3%水酸化ナトリウム溶液(50%濃度)および6.6%炭酸カリウム溶液(50%濃度)を含む13.2%の総アルカリ溶液である。ココア製品試料のpHは約pH8〜10である。対照的に、従来のプロセスに用いる典型的なアルカリ溶液の例は、典型的には、15〜30%水酸化ナトリウム溶液(50%濃度)を含む2.5〜3.5%アンモニア溶液(12%濃度)であり、それは17.5〜33.5%の総アルカリ溶液である。
【0050】
ココアパウダーを形成するためのココアケーキのさらなる処理を示す図3を参照すると、酵素処理は、このプロセスのいずれの段階でも行なうことができる。1つの具体例において、酵素処理は、典型的には、アルカリ工程に代えて行い、処理されたココア製品を製造する。さらなる具体例において、プロセスは、ココア製品のpHを調整することなく行われる。もう一つの具体例において、既に焙煎されたココア製品を酵素処理して、暗色のココア製品を製造する。
【0051】
【表2−1】

【0052】
【表2−2】

【0053】
さらなるセットの試験は、還元糖およびアミノ酸を単独でおよびアルカリプロセスと組み合わせて増加させるのに十分な時間および温度にて、ココア製品を水と少なくとも1つのプロテアーゼで酵素および少なくとも1つのカルボヒドラーゼで酵素処理する結果を含む。ココア製品は、3〜8.4の範囲にあるL値を持った改善された暗色を示した。また、用いた各化合物の用量パーセンテージならびに反応時間を含む。
【0054】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.ココア製品を提供し;
b.水の存在下で、少なくとも1つのプロテアーゼおよび少なくとも1つのカルボヒドラーゼの酵素混合物をココア製品に添加し;次いで
c.還元糖およびアミノ酸を増加させるのに十分な時間および温度にて、ココア製品を処理する
工程を含む、処理されたココア製品の製法。
【請求項2】
酵素混合物中のプロテアーゼが、エンドペプチダーゼ、エキソペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、メタロプロテイナーゼよりなる群から選択され、カルボヒドラーゼが、サッカリダーゼ、アミラーゼ、エキソアミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、エンドアミラーゼ、α−アミラーゼ、セルラーゼおよびグルカナーゼならびにその組合せよりなる群から選択されることを特徴とする請求項1記載の製法。
【請求項3】
プロテアーゼをココア製品の重量に基づき0.01〜1.0重量%含み、カルボヒドラーゼをココア製品の重量に基づき0.01〜1.0重量%含むことを特徴とする請求項2記載の製法。
【請求項4】
ココア製品が、15分間〜5時間の時間および40℃〜70℃の温度にて処理されることを特徴とする請求項3記載の製法。
【請求項5】
処理されたココア製品が、19未満のL値を有することを特徴とする請求項1記載の製法。
【請求項6】
酵素混合物が、さらにポリフェノールオキシダーゼを含むことを特徴とする請求項1記載の製法。
【請求項7】
プロテアーゼをココア製品の重量に基づき0.10〜1.0重量%含み、カルボヒドラーゼをココア製品の重量に基づき0.10〜1.0重量%含む請求項2記載の製法。
【請求項8】
ココア製品が、30分間〜2時間の時間、45℃〜60℃の温度にて処理されることを特徴とする請求項7記載の製法。
【請求項9】
ココア製品が、30分間〜60分間の時間、50℃〜55℃の温度にて処理されることを特徴とする請求項7記載の製法。
【請求項10】
a.ココア製品を提供し;
b.水の存在下で、少なくとも1つのプロテアーゼおよび少なくとも1つのカルボヒドラーゼの酵素混合物をココア製品に添加し;次いで
c.pHを調整することなく、還元糖およびアミノ酸を増加させるのに十分な時間および温度にて、ココア製品を処理して、処理されたココア製品を得る
工程を含む、処理されたココア製品の製法。
【請求項11】
処理されたココア製品のpHが、ココア製品のpHの±1.0のpH単位の範囲内にあることを特徴とする請求項10記載の製法。
【請求項12】
塩基、酸、緩衝剤または中和剤の添加が、0.1〜1.0のpH単位でココア製品または処理されたココア製品のpHを変化させない量にあることを特徴とする請求項10記載の製法。
【請求項13】
ココア製品および処理されたココア製品のpH範囲が、処理工程の間に4.0および7.0に維持されることを特徴とする請求項10記載の製法。
【請求項14】
ココア製品が、15分間〜5時間の時間、40℃〜70℃の温度にて処理されることを特徴とする請求項10記載の製法。
【請求項15】
ココア製品が、30分間〜2時間の時間、45℃〜60℃の温度にて処理されることを特徴とする請求項10記載の製法。
【請求項16】
ココア製品が、30分間〜60分間の時間、50℃〜55℃の温度にて処理されることを特徴とする請求項10記載の製法。
【請求項17】
酵素混合物中のプロテアーゼが、エンドペプチダーゼ、エキソペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼおよびメタロプロテイナーゼよりなる群から選択され、カルボヒドラーゼが、サッカリダーゼ、アミラーゼ、エキソアミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、エンドアミラーゼ、α−アミラーゼ、セルラーゼおよびグルカナーゼならびにその組合せよりなる群から選択されることを特徴とする請求項10記載の製法。
【請求項18】
プロテアーゼをココア製品の重量に基づき0.01〜1.0重量%含み、カルボヒドラーゼをココア製品の重量に基づき0.01〜1.0重量%含むことを特徴とする請求項10記載の製法。
【請求項19】
処理されたココア製品が、19未満のL値を有することを特徴とする請求項10記載の製法。
【請求項20】
酵素混合物が、さらにポリフェノールオキシダーゼを含むことを特徴とする請求項10記載の製法。
【請求項21】
a.焙煎されたココア製品を提供し;
b.水の存在下で、少なくとも1つのプロテアーゼおよび少なくとも1つのカルボヒドラーゼの酵素混合物を焙煎されたココア製品に添加し;次いで
c.還元糖およびアミノ酸を増加させるのに十分な時間および温度にて、焙煎されたココア製品を処理する
工程を含む、処理されたココア製品の製法。
【請求項22】
酵素混合物中のプロテアーゼが、エンドペプチダーゼ、エキソペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼおよびメタロプロテイナーゼよりなる群から選択され、カルボヒドラーゼが、サッカリダーゼ、アミラーゼ、エキソアミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、エンドアミラーゼ、α−アミラーゼ、セルラーゼおよびグルカナーゼならびにその組合せよりなる群から選択されることを特徴とする請求項21記載の製法。
【請求項23】
プロテアーゼを焙煎されたココア製品の重量に基づき0.01〜0.50重量%含み、カルボヒドラーゼを焙煎されたココア製品の重量に基づき0.01〜0.50重量%含むことを特徴とする請求項22記載の製法。
【請求項24】
焙煎されたココア製品が、15分間〜5時間の時間および40℃〜70℃の温度にて処理されることを特徴とする請求項23記載の製法。
【請求項25】
処理された焙煎ココア製品が、19未満のL値を有することを特徴とする請求項24記載の製法。
【請求項26】
酵素混合物が、さらにポリフェノールオキシダーゼを含むことを特徴とする請求項21記載の製法。
【請求項27】
a.水の存在下で、少なくとも1つのプロテアーゼおよび少なくとも1つのカルボヒドラーゼの酵素混合物をココア製品に添加し;
b.pHを調整することなく、還元糖およびアミノ酸を増加させるのに十分な時間および温度にて、ココア製品を処理し;次いで
c.19未満のL値を持つ処理されたココアパウダーを生成する
工程を含む、処理されたココア製品の製法。
【請求項28】
ココア製品が、少なくとも15分間の時間、40℃〜70℃の温度にて処理されることを特徴とする請求項27記載の製法。
【請求項29】
酵素混合物中のプロテアーゼが、エンドペプチダーゼ、エキソペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼおよびメタロプロテイナーゼよりなる群から選択され、カルボヒドラーゼが、サッカリダーゼ、アミラーゼ、エキソアミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、エンドアミラーゼ、α−アミラーゼ、セルラーゼおよびグルカナーゼならびにその組合せよりなる群から選択されることを特徴とする請求項27記載の製法。
【請求項30】
利用可能な還元糖およびアミノ酸を増加させるのに十分な時間および温度にて水の存在下で、少なくとも1つのプロテアーゼおよび少なくとも1つのカルボヒドラーゼの酵素混合物によって酵素処理された、19未満のL値を持つココア製品を含む食用食品であって、
処理されたココア製品が、乳製品、クッキング成分、ベーキング製品、キャンディーおよび菓子、ならびにいずれかのその組合せよりなる群から選択される該食用食品。
【請求項31】
少なくとも1つの食品が、キャンディーおよびチョコレート製品、チョコレート、バー、キャンディーバー、クッキー、ココアおよびチョコレート飲料、インスタントココア製品、ビスケット、シロップ、ケーキ、パン、プリン、アイスクリーム、アイスクリームトッピングおよび他のタイプのデザートための菓子コーティング、コンパウンドおよびフィリングを含む請求項30記載の食用食品。
【請求項32】
ココア製品が、pHを調整することなく酵素処理された請求項30記載の食用食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−520077(P2012−520077A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−554140(P2011−554140)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/026787
【国際公開番号】WO2010/104926
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(500159680)カーギル・インコーポレイテッド (30)
【Fターム(参考)】