説明

コネクタ及びハウジング

【課題】電線の本数が少なくなっても、電線がしっかりと固定されるようにする。
【解決手段】ハウジング20は、外部に引き出された電線40が結束バンド60の巻き付けによって固定される板状の電線固定部22を有している。電線固定部22における電線40の延出方向と交差する幅方向の両端部には、結束バンド60が選択的に通される主バンド通し部27が形成されている。また、電線固定部22の幅方向の中間部となる両主バンド通し部27の間にも、結束バンド60が選択的に通される副バンド通し部28が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ及びハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のコネクタは、ハウジングと、ハウジングの後端部に装着される電線カバーとを備えている。電線カバーは、ハウジングの後面から引き出された電線を覆うように配置され、その一端部における電線導出口の口縁から板状の電線固定部が突出して形成されている。電線と電線固定部とには結束バンドが巻き付けられ、これによって電線が電線固定部に固定される。
【0003】
また、電線固定部には、結束バンドを挿通可能な一対の結束孔が形成されている。電線を電線固定部に固定するに際し、電線の本数や外径に応じて、両結束孔のうちのいずれに結束バンドを通すのかどうかを適宜選択することにより、電線が電線固定部に複数パターンで固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−343497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のコネクタの場合、結束孔の個数が2つのみであるため、結束バンドの巻回経路を決定する際の選択の幅が狭いという事情がある。したがって、例えば、電線の本数がさらに少なくなると、結束バンドと電線固定部との間で電線が遊動する余地が生じ、電線が電線固定部にしっかりと固定されないおそれがある。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電線の本数が少なくなっても、電線がしっかりと固定されるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、板状の電線固定部を有するハウジングと、前記ハウジングから外部に引き出される電線と、前記電線固定部と前記電線とに巻き付けられて、前記電線を前記電線固定部に固定させる結束バンドとを備えたコネクタであって、前記電線固定部における前記電線の延出方向と交差する幅方向の両端部には、前記結束バンドが選択的に通される一対の主バンド通し部が形成され、さらに、前記電線固定部の幅方向の中間部となる前記両主バンド通し部の間にも、前記結束バンドが選択的に通される副バンド通し部が形成されているコネクタであるところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記両主バンド通し部と前記副バンド通し部とが幅方向に千鳥配置されているところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のものにおいて、前記電線固定部には、前記ハウジングの一部を成形する際に通過する金型によって型抜き孔が形成されており、前記型抜き孔が前記副バンド通し部で構成されているところに特徴を有する。
【0010】
請求項4の発明は、外部に引き出された電線が結束バンドの巻き付けによって固定される板状の電線固定部を有し、前記電線固定部における前記電線の延出方向と交差する幅方向の両端部には、前記結束バンドが選択的に通される一対の主バンド通し部が形成され、さらに、前記電線固定部の幅方向の中間部となる前記両主バンド通し部の間にも、前記結束バンドが選択的に通される副バンド通し部が形成されているハウジングであるところに特徴を有する。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4に記載のものにおいて、前記両主バンド通し部と前記副バンド通し部とが幅方向に千鳥配置されているところに特徴を有する。
【0012】
請求項6の発明は、請求項4又は5に記載のものにおいて、前記電線固定部には、前記ハウジングの一部を成形する際に通過する金型によって型抜き孔が形成されており、前記型抜き孔が前記副バンド通し部で構成されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0013】
<請求項1又は請求項4の発明>
電線固定部の幅方向の両端部に主バンド通し部が形成されているとともに、電線固定部の幅方向の中間部にも副バンド通し部が形成されているため、主バンド通し部に加えて副バンド通し部にも結束バンドを通すことが可能となる。したがって、仮に、電線の本数が少なくなっても、副バンド通し部に結束バンドを通すことにより、電線固定部に電線をしっかりと固定させることができる。
【0014】
<請求項2又は請求項5の発明>
主バンド通し部と副バンド通し部とが幅方向に千鳥配置されているため、主バンド通し部と副バンド通し部との間の距離が過度に詰められることがない。したがって、主バンド通し部と副バンド通し部との間にある程度まとまった本数の電線を保持することができる。また、電線固定部の強度を確保できる。
【0015】
<請求項3又は請求項6の発明>
型抜き孔が副バンド通し部で構成されているから、型抜き孔と副バンド通し孔とが別々に形成されている場合に比べ、電線固定部の構成が簡素化される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態1に係るコネクタにおいて、電線固定部をあらわすハウジングの要部背面図である。
【図2】電線固定部をあらわすハウジングの側面図である。
【図3】結束バンドが第1巻回経路を通ることによって電線固定部に電線が固定される状態をあらわす断面図である。
【図4】結束バンドが第2巻回経路を通ることによって電線固定部に電線が固定される状態をあらわす断面図である。
【図5】結束バンドが第3巻回経路を通ることによって電線固定部に電線が固定される状態をあらわす断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図5によって説明する。実施形態1に係るコネクタ10は、ハウジング20と電線40とを備えている。
【0018】
ハウジング20は合成樹脂製であって、全体としてブロック状をなしている。ハウジング20には複数のキャビティ21が形成されている。各キャビティ21内には後方から端子金具(図示せず)が挿入される。各端子金具は電線40の端末部に接続されている。各キャビティ21内に端子金具が挿入されると、ハウジング20の後面から複数の電線40が引き出される。
【0019】
ハウジング20の後端部には、ハウジング20とは別体の電線カバー(図示せず)が装着される。電線カバーは、ハウジング20の後面から引き出された各電線40を覆うように配置される。電線カバーの一側面には、電線導出口が開口して形成されている。各電線40は、電線導出口を通して外部に導出させられる。
【0020】
また、ハウジング20の一側面26の後端部には、図1及び図2に示すように、板状の電線固定部22が形成されている。電線固定部22は、電線カバーの電線導出口と対向する位置に配置されている。具体的には、電線固定部22は、ハウジング20の一側面26の後端部から後方に突出する略矩形状の基端部23と、基端部23の後端からやや後方へ傾斜しつつ一側方に突出する略矩形状の本体部24とからなる。本体部24は、その幅方向(電線40の延出方向と直交する方向)の中央部が前方へ膨出するようにして断面円弧状に湾曲する形態とされている。
【0021】
さて、本体部24の幅方向両端部には、一対の主バンド通し部27が開口して形成されている。両主バンド通し部27は、互いに同一の形状であって、電線40の延出方向に長い略矩形状に開口する形態とされている。そして、両主バンド通し部27は、それぞれ幅方向に沿った仮想線A上に並んで配置されている。
【0022】
また、本体部24の幅方向中間部(詳細には幅方向中央部)となる両主バンド通し部27の間には、一つの副バンド通し部28が開口して形成されている。副バンド通し部28は、主バンド通し部27よりも小さい開口面積を有し、幅方向に長い略矩形状に開口する形態とされている。そして、副バンド通し部28は、仮想線Aよりも基端部23寄りの位置に配置されている。したがって、両主バンド通し部27と副バンド通し部28とは幅方向に千鳥配置とされている。
【0023】
また、ハウジング20の両側面の幅方向中間部(詳細には幅方向中央部)には、前後方向に延びる一対のリブ29が突出して形成されている。ハウジング20が相手ハウジング(図示せず)に嵌合される場合に、両リブ29が相手ハウジングに形成されたリブ受け部に適合して挿入されることにより、ハウジング20が相手ハウジングに対し正規の嵌合姿勢から傾いて嵌合されるのが防止されるようになっている。そして、電線固定部22には、ハウジング20の一側面20に位置するリブ29を成形するためのスライド型が通過することによって型抜き孔25が形成されている。この型抜き孔25は、副バンド通し部28によって構成されている。言い換えれば、副バンド通し部28が型抜き孔25を兼用している。
【0024】
次に、電線固定部22に電線40を固定する方法について説明する。
ハウジング20から引き出された各電線40は、結束バンド60によって電線固定部22に固定される。結束バンド60は、電線固定部22と電線40とに外側から巻回されて締め付けられる。
【0025】
例えば、ハウジング20の後面から引き出された電線40の本数が多い場合、図3に示すように、結束バンド60が電線固定部22の幅方向両側縁に掛け止められる第1巻回経路をとることができる。この第1巻回経路では、結束バンド60が主バンド通し部27と副バンド通し部28とに通されて掛け止められることがない。
【0026】
また、例えば、電線40の本数が少ない場合、図4に示すように、結束バンド60が電線固定部22の両主バンド通し部27に通されて掛け止められる第2巻回経路をとることができる。この第2巻回経路では、結束バンド60が、電線固定部22の幅方向両側縁と副バンド通し部28とに掛け止められることがない。
【0027】
また、例えば、電線40の本数がさらに少ない場合、図5に示すように、結束バンド60が電線固定部22の主バンド通し部27の一方と副バンド通し部28とに通されて掛け止められる第3巻回経路をとることができる。この第3巻回経路では、結束バンド60が、電線固定部22の幅方向両側縁と主バンド通し部27のもう一方とに掛け止められることがない。
【0028】
第1〜第3巻回経路では、結束バンド60と電線固定部22との間に、各電線40が遊動規制状態に保持される。したがって、各電線40が振動等によってがたつくのが防止される。なお、電線径が小さくなって各電線40全体の断面積が減少する場合にも、第2、第3巻回経路等を適宜選択することにより、上記同様に対応できる。
【0029】
このように、本実施形態によれば、結束バンド60の巻回経路として、主バンド通し部27と副バンド通し部28とを選択的に利用することにより、電線40の本数の減少に柔軟に対応することができる。このため、電線40の本数が少なくなっても、例えば、副バンド通し部28に結束バンド60を通すことにより、各電線40が電線固定部22にしっかりと固定される。
【0030】
この場合、仮に、電線固定部22が電線カバーに形成されていると、電線カバーを取り外す際に、結束バンド60も取り外さねばならず、作業が煩雑になる。また、振動発生時に、ハウジング20と電線カバーとの間にがたが発生すると、そのがた付きの影響が電線40にまで及ぶことになる。その点、本実施形態のように、電線固定部22がハウジング20と一体に形成されていれば、電線カバーを取り外す際に、結束バンド60を取り外す必要がなく、かつ電線カバーのがた付きの影響が電線40にまで及ぶのが回避される。
【0031】
また、主バンド通し部27と副バンド通し部28とが幅方向に千鳥配置されているため、主バンド通し部27と副バンド通し部28との間の距離が過度に詰められることがない。したがって、例えば、巻回経路3では、主バンド通し部27と副バンド通し部28との間にある程度まとまった本数の電線40を保持することができる。また、主バンド通し部27と副バンド通し部28とが幅方向に千鳥配置されているため、両通し部27、28が幅方向に一直線上に並んで配置されるよりも、電線固定部22の強度を高めることができる。
【0032】
さらに、型抜き孔25が副バンド通し部28で構成されているから、型抜き孔25と副バンド通し部28とが別々に形成されている場合に比べ、電線固定部22の構成が簡素化される。
【0033】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)電線固定部の幅方向中間部に、2つ以上の副バンド通し部が形成されていてもよい。
(2)主バンド通し部が、電線固定部の幅方向両側縁に切り欠いて形成されていてもよい。
(3)結束バンドが二本用意され、このうち一本の結束バンドが主バンド通し部の一方と副バンド通し部とに掛け止められ、もう一本の結束バンドが主バンド通し部の他方と副バンド通し部とに掛け止められる態様であってもよい。この場合、副バンド通し部は、二本の結束バンドに共用されるとよい。
(4)結束バンドが電線固定部の幅方向一側縁と主バンド通し部とに掛け止められる態様であってもよい。また、結束バンドが電線固定部の幅方向一側縁と副バンド通し部とに掛け止められる態様であってもよい。
(5)リブが、相手ハウジングに対するハウジングの誤組み付けを防止する機能を有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0034】
10…コネクタ
20…ハウジング
22…電線固定部
25…型抜き孔
27…主バンド通し部
28…副バンド通し部
29…リブ
40…電線
60…結束バンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の電線固定部を有するハウジングと、
前記ハウジングから外部に引き出される電線と、
前記電線固定部と前記電線とに巻き付けられて、前記電線を前記電線固定部に固定させる結束バンドとを備えたコネクタであって、
前記電線固定部における前記電線の延出方向と交差する幅方向の両端部には、前記結束バンドが選択的に通される一対の主バンド通し部が形成され、さらに、
前記電線固定部の幅方向の中間部となる前記両主バンド通し部の間にも、前記結束バンドが選択的に通される副バンド通し部が形成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記両主バンド通し部と前記副バンド通し部とが幅方向に千鳥配置されている請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記電線固定部には、前記ハウジングの一部を成形する際に通過する金型によって型抜き孔が形成されており、前記型抜き孔が前記副バンド通し部で構成されている請求項1又は2記載のコネクタ。
【請求項4】
外部に引き出された電線が結束バンドの巻き付けによって固定される板状の電線固定部を有し、
前記電線固定部における前記電線の延出方向と交差する幅方向の両端部には、前記結束バンドが選択的に通される一対の主バンド通し部が形成され、さらに、
前記電線固定部の幅方向の中間部となる前記両主バンド通し部の間にも、前記結束バンドが選択的に通される副バンド通し部が形成されていることを特徴とするハウジング。
【請求項5】
前記両主バンド通し部と前記副バンド通し部とが幅方向に千鳥配置されている請求項4記載のハウジング。
【請求項6】
前記電線固定部には、前記ハウジングの一部を成形する際に通過する金型によって型抜き孔が形成されており、前記型抜き孔が前記副バンド通し部で構成されている請求項4又は5記載のハウジング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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