コネクタ取付装置
【課題】ワイヤハーネスの弛みを小さく抑制できて、ワイヤハーネスを容易に取り付けることができるコネクタ取付装置を提供する。
【解決手段】本コネクタ取付装置38は、電動パワーステアリング装置1の電動モータ18から導出されたワイヤハーネス33を、被取付部材としてのラックハウジング15に取り付けている。コネクタ取付装置38は、ワイヤハーネス33の端部33aに設けられたコネクタ36を、取付部材41を介してラックハウジング15に、ワイヤハーネス33の長手方向に関して位置調整可能に取り付けている。弛みを有する状態でワイヤハーネス33を容易に取り付けることができる。その後、取付部材41を介してワイヤハーネス33の端部33aを、ラックハウジング15に対してワイヤハーネス33の長手方向について位置調節でき、ワイヤハーネス33の弛みを小さく抑制することができる。
【解決手段】本コネクタ取付装置38は、電動パワーステアリング装置1の電動モータ18から導出されたワイヤハーネス33を、被取付部材としてのラックハウジング15に取り付けている。コネクタ取付装置38は、ワイヤハーネス33の端部33aに設けられたコネクタ36を、取付部材41を介してラックハウジング15に、ワイヤハーネス33の長手方向に関して位置調整可能に取り付けている。弛みを有する状態でワイヤハーネス33を容易に取り付けることができる。その後、取付部材41を介してワイヤハーネス33の端部33aを、ラックハウジング15に対してワイヤハーネス33の長手方向について位置調節でき、ワイヤハーネス33の弛みを小さく抑制することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車に用いられるコネクタ取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の電動パワーステアリング装置は、操舵補助用の電動モータと、この電動モータに接続されたワイヤハーネスとを有している。ワイヤハーネスは、ステアリング装置のハウジングに帯部材およびブラケットにより固定されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−203377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ワイヤハーネスは、予め定められた所定の設置経路に沿うようにして組み付けられている。このようにワイヤハーネスを組み付けるには、ワイヤハーネスの長さを、上述の所定の設置経路の長さよりも所定長で長く形成する必要がある。その結果、ワイヤハーネスが弛みを生じ、ワイヤハーネスの周囲に配置された車両側部品に干渉する虞がある。
【0004】
また、ワイヤハーネスが弛みを生じないようにするには、ワイヤハーネスの中間部の多数箇所を帯部材により固定することが考えられる。しかし、ワイヤハーネスの多数箇所を帯部材で固定するのは、手間がかかる。
そこで、この発明の目的は、ワイヤハーネスの弛みを小さく抑制できて、ワイヤハーネスを手間をかけずに取り付けることができるコネクタ取付装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ワイヤハーネスの端部に設けられたコネクタを取付部材を介して被取付部材に取り付けるコネクタ取付装置において、上記取付部材が、ワイヤハーネスの長手方向に関して位置調整可能に被取付部材に取り付けられていることを特徴とする。この発明によれば、例えば、弛みを持たせた状態のワイヤハーネスを容易に手間をかけずに取り付けることができる。しかも、取り付け後に取付部材を被取付部材に対して位置調節することにより、コネクタ、ひいてはワイヤハーネスの端部を、被取付部材に対してワイヤハーネスの長手方向について位置調節できるので、ワイヤハーネスの全体の弛みを小さく抑制することができる。
【0006】
また、本発明において、上記コネクタは、取付部材の端部からワイヤハーネスの長手方向に沿ってスライドすることにより、取付部材に取り付けられるようにしてある場合がある。この場合、例えば、弛みを解消するために被取付部材に対して取付部材を移動させるときに、取付部材をコネクタに対して取り付ける向きに移動させることが可能となる。これにより弛みの解消に伴って、コネクタの抜け止めも一括して達成でき、組立時間を短縮できる。
【0007】
また、上記取付部材が被取付部材に対して位置調整されるときに、取付部材のスライド移動を案内する案内機構が備られ、この案内機構は、被取付部材に設けられた案内部と、取付部材に設けられ上記案内部に係合する被案内部を含む場合がある。この場合には、取付部材を容易に位置調節できる。
また、上記被取付部材は、電動パワーステアリング装置のラックハウジングを含み、上記ワイヤハーネスは操舵補助用の電動モータから引き出されている場合がある。この場合、ワイヤハーネスをラックハウジングに沿って弛みなく配置することができるので、ワイヤハーネスと周囲の車両側部材との干渉の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、電動パワーステアリング装置において、弛み抑制手段によりワイヤハーネスの弛みを小さく抑制することを通じて、ワイヤハーネスと車両側部材との干渉の発生を防止するようにしている。第1の実施形態では、弛み抑制手段としてのコネクタ取付装置が電動パワーステアリング装置に適用されている場合に則して説明するが、本発明はこれに限らず、例えば、マニュアル操舵のステアリング装置に適用されてもよい。
【0009】
図1は、本発明の第1の実施形態のコネクタ取付装置が適用される電動パワーステアリング装置の模式図である。
図1を参照して、電動パワーステアリング装置1は、操向輪2を操舵するために操舵部材としてのステアリングホイール3に加えられる操舵トルクを伝達するステアリングシャフト4と、ステアリングシャフト4からの操舵トルクにより操向輪2を操舵するための例えばラックアンドピニオン機構からなる操舵機構5と、ステアリングシャフト4および操舵機構5の間に設けられてこの間において回転を伝達するための軸継手としての中間軸6とを有している。
【0010】
ステアリングシャフト4は、ステアリングコラム7の内部を挿通して、ステアリングコラム7により回転自在に支持されている。ステアリングコラム7はブラケット8を介して車体9に支持されている。ステアリングシャフト4の一方の端部4aにステアリングホイール3が連結されていて、回転自在に支持されている。ステアリングシャフト4の他方の端部4bに中間軸6が連結されている。
【0011】
中間軸6は、動力伝達軸10と、中間軸6の一方の端部に設けられた自在継手11と、中間軸6の他方の端部に設けられた自在継手12とを有している。
操舵機構5は、入力軸としてのピニオン軸13と、自動車の横方向(直進方向と直交する方向である。)に延びる転舵軸としてのラックバー14と、ピニオン軸13およびラックバー14を支持するラックハウジング15とを有している。ピニオン軸13のピニオン歯13aと、ラックバー14のラック歯14aとが互いに噛み合っている。
【0012】
ピニオン軸13は、ラックハウジング15に回動自在に支持されている。また、ラックバー14は、ラックハウジング15に直線往復動自在に支持されている。ラックハウジング15は、車体9に固定されている。ラックハウジング15の両側へラックバー14の両端部が突出している。ラックバー14の各端部はそれぞれ、図示しないタイロッドおよびナックルアームを介して対応する操向輪2に連結されている。
【0013】
ステアリングホイール3が操舵されると、その操舵トルクがステアリングシャフト4等を介して操舵機構5に伝達される。回転がピニオン歯13aおよびラック歯14aによって、自動車の横方向に沿ってのラックバー14の直線運動に変換される。これにより操向輪2を操舵することができる。
電動パワーステアリング装置1は、操舵トルクに応じて操舵補助力を得られるようになっている。すなわち、電動パワーステアリング装置1は、操舵トルクを検出するトルクセンサ16と、制御部としてのECU(Electronic Control Unit :電子制御ユニット)17と、操舵補助用の電動モータ18と、減速機19とを有している。
【0014】
本実施形態では、電動モータ18および減速機19は、操舵機構5に関連して設けられている。すなわち、操舵機構5のラックハウジング15は、ラックバー14に沿って延びる筒状のハウジング本体としてのチューブ20と、ピニオン軸13を支持するためのギヤハウジング21とを有している。ギヤハウジング21が、減速機19およびトルクセンサ16を収容して支持し且つ電動モータ18を支持している。
【0015】
また、本実施形態では、操舵補助用のトルクセンサ16および電動モータ18に接続されたワイヤハーネス29に弛みが生じないように、ワイヤハーネス29のコネクタ36(図2参照)が位置調節可能にコネクタ取付装置38により取り付けられている。
ピニオン軸13は、入力軸22と、出力軸23と、トーションバー24とを有している。入力軸22および出力軸23は、トーションバー24を介して同一の軸線上で互いに連結されている。入力軸22は、中間軸6およびステアリングシャフト4を介して、ステアリングホイール3に連なっている。出力軸23の端部には、ピニオン歯13aが設けられている。入力軸22に操舵トルクが入力されたときに、トーションバー24が弾性ねじり変形し、これにより、入力軸22および出力軸23が相対回転する。
【0016】
トルクセンサ16は、トーションバー24に関連して設けられ、トーションバー24を介する入力軸22および出力軸23間の相対回転変位量に基づいてトルクを検出する。トルク検出結果は、ECU17に与えられる。
ECU17は、上述のトルク検出結果や図示しない車速センサから与えられる車速検出結果等に基づいて、駆動回路(図示せず)を介して電動モータ18を制御する。
【0017】
減速機19は、減速機構としてのウォームギヤ機構25を有している。このウォームギヤ機構は、駆動ギヤとしてのウォーム軸26と、従動ギヤとしてのウォームホイール27とを有している。ウォーム軸26は、電動モータ18により駆動される。ウォーム軸26は、ウォームホイール27に噛み合っている。ウォームホイール27は、出力軸23に一体回転できるように互いに固定されている。
【0018】
ステアリングホイール3が操作されると、操舵トルクがトルクセンサ16により検出され、トルク検出結果および車速検出結果等に応じて電動モータ18が操舵補助力を発生させる。操舵補助力は、減速機19を介してピニオン軸13の出力軸23に伝達され、ステアリングホイール3の動きとともに操舵機構5のラックバー14に伝わり、操向輪2が操舵される。具体的には、電動モータ18の出力回転は、伝動装置としての減速機19を介して出力軸23に伝達され、その間、減速機19により減速される。ピニオン軸13の出力軸23に伝達された回転はラックバー14の直線運動に変換されて、操舵が補助される。
【0019】
電動モータ18は、図示しないが、ハウジングとしてのモータハウジングと、このモータハウジングに軸受を介して回動自在に支持される出力軸と、この出力軸に一体回転するように設けられた円筒形状のロータと、円筒形状をなしてロータに対向してモータハウジング内に固定されるステータとを有している。出力軸とモータハウジングとステータとロータとが、モータ本体としてのブラシレスモータを構成している。また、電動モータ18は、ロータの回転角を検出する回転角検出手段としてのレゾルバ28を有している。レゾルバ28は、モータハウジング内に収容されている。
【0020】
電動パワーステアリング装置1は、ECU17を電動モータ18およびトルクセンサ16に電気的に接続するためのワイヤハーネス29を有している。ワイヤハーネス29は、電動モータ18のレゾルバ28用の第1のワイヤハーネス30と、トルクセンサ16用の第2のワイヤハーネス31と、電動モータ18のモータ本体用の第3のワイヤハーネス32とを有している。
【0021】
第1のワイヤハーネス30は、レゾルバ28の固定部のコイルと、ECU17とを電気的に接続していて、レゾルバ28からの電気信号を伝達するための信号線である。第2のワイヤハーネス31は、トルクセンサ16と、ECU17とを電気的に接続していて、トルクセンサ16からの電気信号を伝達するための信号線である。第3のワイヤハーネス32は、電動モータ18のモータ本体のステータのコイルと、ECU17とを電気的に接続していて、モータ本体への電力を供給するための電力線である。
【0022】
図2は、図1に示す電動パワーステアリング装置の要部の斜視図であり、おもに操舵機構を示している。図1および図2を参照する。
第1のワイヤハーネス30は、電気的に互いに直列に接続された一対のワイヤハーネス33,34を有している。一方のワイヤハーネス33は、電線束35と、コネクタ36とを有している。他方のワイヤハーネス34は、電線束35と、コネクタ37とを有している。
【0023】
電線束35は、複数の被覆電線35aと、複数の被覆電線35aを一括して取り囲む外被35bとを有している。被覆電線35aは、導電性の芯線と、この芯線を被覆する絶縁性の被覆材とを有している。
第1のワイヤハーネス30の一方のワイヤハーネス33は、電動モータ18のモータハウジングから引き出されて延設されていて、延設端としてのワイヤハーネス33の端部33aにコネクタ36が設けられている。一方のワイヤハーネス33のコネクタ36と、他方のワイヤハーネス34のコネクタ37とが、連結されている。このコネクタ37は、他方のワイヤハーネス34の電線束35の一方の端部に設けられていて、この電線束35がECU17につながっている。
【0024】
各コネクタ36,37は、図示しないが、コネクタハウジングと、複数の端子金具とをそれぞれ有している。コネクタハウジングは、端子金具に対応した複数の端子保持部を有している。端子保持部が、対応する端子金具をそれぞれ保持している。端子金具には、予め定められた被覆電線の芯線が接続されている。
対をなす両コネクタ36,37は、互いに連結されていて、また必要に応じて連結を解除できるようになっている。一方のコネクタ36のコネクタハウジングと、他方のコネクタ37のコネクタハウジングとが互いに機械的に連結でき、このように連結された状態で、対をなすコネクタ36,37の対応する端子金具同士が電気的に接続されるようになっている。
【0025】
第2および第3のワイヤハーネス31,32については、第1のワイヤハーネス30と異なる点を中心に説明し、同様の構成については、同じ符合を付して説明を省略する。
第2のワイヤハーネス31は、電気的に互いに直列に接続された一対のワイヤハーネス33,34を有している。一方のワイヤハーネス33は、ギヤハウジング21から引き出されて延設されている。第3のワイヤハーネス32は、複数の被覆電線(図示せず)を有している。
【0026】
電動パワーステアリング装置1は、上述のコネクタ36を被取付部材としてのチューブ20に取り付けるためのコネクタ取付装置38と、他方のワイヤハーネス34を被取付部材としてのチューブ20に取り付けるための固定部材39とを有している。
コネクタ取付装置38は、コネクタ36が取り付けられて保持される取付部材41と、この取付部材41を被取付部40に固定する固定部材としての固定ボルト42と、被取付部材としてのラックハウジング15のチューブ20に設けられた被取付部40とを有している。コネクタ取付装置38は、第1のワイヤハーネス30の一方のワイヤハーネス33のコネクタ36および第2のワイヤハーネス31の一方のワイヤハーネス33のコネクタ36を、取付部材41を介して被取付部40に取り付けている。
【0027】
図3は、図2の要部としてのコネクタ取付装置38およびこれに関連する部材の一部断面図である。図4は、図3に示す要部のA4方向からみた側面図である。図5は、図3に示す要部のA5方向からみた側面図である。図6は、図3に示す要部の分解斜視図である。図7は、図6に示す要部としての取付部材41とコネクタ36とのA7方向からみた側面図である。図8は、図4に示す要部の模式図であり、位置調節範囲の一方の端部に配置された状態を示す。図9は、図4に示す要部の模式図あり、位置調節範囲の他方の端部に配置された状態を示す。先ず、図4および図6を参照する。
【0028】
被取付部40は、チューブ20に一体に形成された取付座40aと、取付座40aに形成されたねじ孔40bと、取付部材41を案内する案内部40cとを有している。案内部40cは、取付座40aの縁部から延設されていて、ラックハウジング15のチューブ20の長手方向X1に平行に所定長さで延びている。
図3および図6を参照して、取付部材41は、被取付部40の取付座40aに沿って配置される板状の本体41aと、コネクタ36が係合して保持される係合部41bと、位置調節するときに案内される被案内部41cと、本体41aに形成された長孔41dとを有している。これら各部41a,41b,41c,41dは、一体に形成されていて、単一部品の板金成形品により構成されている。なお、取付部材41は、複数の部品を互いに固定することにより構成してもよい。
【0029】
図4および図6を参照して、取付部材41は、ワイヤハーネス29の長手方向、換言すれば、チューブ20の長手方向X1に平行な方向に関して位置調整可能に被取付部40に取り付けられている。
すなわち、長孔41dの長手方向は、コネクタ36を取付部材41の係合部41bに取り付けるための後述する取付方向に平行とされ、また、一対のコネクタ36を互いに連結する連結方向に平行とされ、また、ラックハウジング15のチューブ20の長手方向X1に平行とされている。また、この長手方向X1に沿って、係合部41bに取り付けられたコネクタ36から対応する一方のワイヤハーネス33が延び出している。
【0030】
固定ボルト42は、取付部材41の長孔41dを挿通して、被取付部40のねじ孔40bにねじ込まれている。固定ボルト42が被取付部40のねじ孔40bに締め付け状態でねじ込まれることにより、固定ボルト42の頭部と被取付部40の取付座40aとが、その間に取付部材41の本体41aを挟持して固定している。また、固定ボルト42が被取付部40にゆるくねじ込まれた状態で、取付部材41が取付座40aに仮保持される。仮保持された状態では、本体41aが取付座40aに接した状態で、長孔41dの長手方向について取付部材41が取付座40aに対してスライド自在に保持されている。仮保持された状態で、長孔41dの長手方向について長孔41dと固定ボルト42とを相対移動させることにより、取付部材41を固定ボルト42および被取付部40に対して位置調節することができる。
【0031】
図4および図5を参照して、コネクタ取付装置38は、上述のように位置調節するときに取付部材41のスライド移動を案内する案内機構47を有している。この案内機構47は、被取付部40に設けられた上述の案内部40cと、取付部材41に設けられた上述の被案内部41cとを含んでいる。
取付部材41の被案内部41cは、本体41aの端部に屈曲した板状に形成されていて、本体41aの一方の面からチューブ20の中心へ向けて突出している。被案内部41cにおいて、チューブ20の中心寄りの面は、長孔41dの長手方向に平行に延びている。仮保持された状態で、案内部40cと被案内部41cとは互いに係合できるように、互いに近接して、互いに平行に配置されている。案内部40cと被案内部41cとが互いに係合することにより、取付部材41が被取付部40に対して位置調整されるときに、当該案内機構47が取付部材41のスライド移動を案内する。
【0032】
仮保持された状態の取付部材41が移動するときに、案内部40cに被案内部41cが沿うことにより、取付部材41の移動がラックハウジング15のチューブ20の長手方向X1に沿って案内される。また、案内部40cに被案内部41cが沿うことにより、取付部材41に取り付けられたコネクタ36の向きが、ひいては、このコネクタ36が設けられた一方のワイヤハーネス33の延びる方向(長手方向)が、ラックハウジング15のチューブ20の長手方向X1に平行な方向に規制される。
【0033】
図6および図7を参照して、一方のワイヤハーネス33のコネクタ36は、取付部材41の端部41eから所定の取付方向としての一方のワイヤハーネス33の長手方向に沿ってスライドすることにより、取付部材41に取り付けられるようにしてある。
取付部材41の係合部41bは、本体41aから一方向へ向けて突出して延びた板状の凸部からなる。この凸部は、長孔41dの長手方向(一方のワイヤハーネス33の長手方向に平行な方向に相当する。)に平行に、所定の向きX2に突出している。この向きX2(所定の取付方向に相当する。)に凸部の先端側の端部41eからコネクタ36が凸部に係合するようになっている。
【0034】
また、コネクタ36は、コネクタハウジングに設けられた係合部36aを有している。係合部36aは、コネクタハウジングの側面に一体に形成された凹部からなる。この凹部は、所定の取付方向としての所定の向きX3に開放されている。このように開放された側から、係合部36aに取付部材41の係合部41bが係合するようになっている。上述の所定の向きX2,X3が互いに逆向きになるようにして、係合部36a,41b同士が互いに係合し、これにより、取付部材41がコネクタ36を保持することができる。
【0035】
上述の取付方向X2,X3は、対をなすコネクタ36,37同士を互いに連結する連結方向に平行であり、また、ワイヤハーネス33のコネクタ36から被覆電線が延びる方向に平行である。また、取付方向X2,X3についてコネクタ36が取付部材41に取り付けられるときにコネクタ36が移動する向きX3は、連結方向について当該コネクタ36が相手方のコネクタ37により押し込まれる向きと同じ向きであり、また、一方のワイヤハーネス33のコネクタ36から被覆電線が延び出す向きと同じ向きである。
【0036】
具体的には、取付部材41の係合部41bは、案内部としての一対の縁部を有している。縁部は、互いに平行に所定間隔を開けて配置されている。また、コネクタ36の係合部36aは、案内部としての一対の溝部を有している。これら一対の溝部は、互いに対向して開放され、互いに平行に所定間隔を開けて配置されている。また、溝部は、所定の取付方向X3に向けて開放された導入開口を有し、反対側の端部で閉じられている。係合部36aの一対の溝部に、係合部41bの一対の縁部が嵌まるようになっている。
【0037】
なお、コネクタ36の側面にわずかに突出形成した凸部36b1が、係合部41bに形成した係止孔41b1に係止されて、コネクタ36と取付部材41とが結合されている。また、係合部36aの位置取りに支障がない程度に取付座40aの一側を取付座40aよりは少し低い程度にチューブ20より突出させた突出部40a1を設けたため、コネクタ36に外力が加わったときの係合部41bの変形を防止している。
【0038】
図8および図9を参照して、第1および第2のワイヤハーネス30,31のワイヤハーネス33の弛みを小さく抑制するには、先ず、取付部材41を、ワイヤハーネス33の端部33aのコネクタ36が取り付けられた状態で且つ上述の仮保持された状態とする。この状態で、長孔41d内の任意の位置に固定ボルト42を配置することができる。
例えば、図8に示すように、長孔41dの一方の端部に固定ボルト42があるときには、ワイヤハーネス33の弛み度合いが大きくなる。逆に、図9に示すように、長孔41dの他方の端部に固定ボルト42があるときには、ワイヤハーネス33の弛み度合いが小さくなる。従って、固定ボルト42が長孔41dの他方の端部に近接する向きに、取付部材41が位置調節される。具体的には、取付部材41が、ラックハウジング15の長手方向X1について、ワイヤハーネス33を引っ張る向きであって、トルクセンサ16および電動モータ18から遠ざかる向きに、移動される。これにより、ワイヤハーネス33の弛みを小さくすることができる。第1および第2のワイヤハーネス30,31の2つのワイヤハーネス33のうちで、少なくとも一方のワイヤハーネス33の弛みがなくなった状態で、取付部材41が被取付部40に固定される。
【0039】
また、このときワイヤハーネス33はコネクタ36を軽く引っ張るようになる。このときの張力により、コネクタ36が取付部材41に付勢され、付勢状態でコネクタ36と取付部材41との係合部36a,41b同士の係合が維持される。
なお、一対のワイヤハーネス33,34の一対のコネクタ36,37同士の連結は、取付部材41の位置調節後であってもよいし、位置調節前であってもよい。また、取付部材41に取り付けられたコネクタ36と、これに連結された相手方のコネクタ37とを介して、他方のワイヤハーネス34の弛みを小さく抑制するように、取付部材41を調節することも考えられる。この場合、取付部材41を位置調節する向きは、上述の説明とは逆向きになる。
【0040】
本実施形態のコネクタ取付装置38は、ワイヤハーネス33の端部33aに設けられたコネクタ36を取付部材41を介して被取付部材としてのラックハウジング15のチューブ20の被取付部40に取り付けている。このコネクタ取付装置38において、上記取付部材41が、ワイヤハーネス33の長手方向に関して位置調整可能に被取付部40に取り付けられていることを特徴とする。
【0041】
本実施形態によれば、例えば、ワイヤハーネス33に弛みを持たせて、このワイヤハーネス33の端部33aのコネクタ36を取付部材41に取り付けることにより、ワイヤハーネス33を被取付部40に取り付けることができる。弛みを持たせた状態のワイヤハーネス33を容易に手間をかけずに取り付けることができる。しかも、取り付け後に、ワイヤハーネス33の端部33aのコネクタ36を取付部材41に取り付けた状態で、この取付部材41を被取付部40に対して位置調節することができる。これにより、コネクタ36、ひいてはワイヤハーネス33の端部33aを、被取付部40に対してワイヤハーネス33の長手方向について位置調節できるので、ワイヤハーネス33の全体の弛みを小さく抑制することができ、さらに解消することも可能となる。
【0042】
このように、全体の弛みを解消するための位置調節は、ワイヤハーネス33の端部33aの1箇所で済むので、ワイヤハーネスの複数カ所を帯部材(図示せず)によりラックハウジングへ固定する従来方法に比べて、手間がかからずに済む。また、弛みを解消できるので、弛みの解消のための従来の作業を削減したり廃止したりできる。従って、組立作業の時間を短縮できる。また、弛みを解消するには、もともと用いられている取付部材41の小変更、例えば、被取付部40に対して位置調節可能とする程度の小変更で対応することが可能である。これに加えて、ワイヤハーネス33の全体の弛みを解消できるので、弛みの解消のための従来の部材、例えば帯部材を削減したり廃止したりできる。従って、部品点数を削減できる。
【0043】
また、本実施形態では、コネクタ36は、取付部材41の係合部41bの端部41eからワイヤハーネス33の長手方向に沿ってスライドすることにより、取付部材41に取り付けられるようにしてある。この場合、例えば弛みを解消するために被取付部40に対して取付部材41を移動させるときに、取付部材41をコネクタ36に対して取り付ける向きに移動させることが可能となる。これにより弛みの解消に伴って、コネクタ36の抜け止めも一括して達成でき、組立時間を短縮できる。
【0044】
また、本実施形態では、取付部材41が被取付部40に対して位置調整されるときに、取付部材41のスライド移動を案内する案内機構47が備えられている。この案内機構47は、被取付部40に設けられた案内部40cと、取付部材41に設けられ上記案内部40cに係合する被案内部41cを含むようにしている。これにより、取付部材41を容易に位置調節でき、その結果、組立時間を短縮できる。なお、案内機構47は、複数箇所に設けられていてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、被取付部材は電動パワーステアリング装置1のラックハウジング15を含み、上記ワイヤハーネス33は操舵補助用のトルクセンサ16および電動モータ18から引き出されている。この場合、コネクタ取付装置38を用いて、ワイヤハーネス33をラックハウジング15に沿って弛みなく配置することができるので、ワイヤハーネス33と周囲の車両側部材との干渉の発生を防止することができる。
【0046】
また、本実施形態について、以下のような変形例を考えることができる。以下の説明では、上述の実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
図10は、第2の実施形態の電動パワーステアリング装置の要部としてのコネクタ取付装置38およびこれに関連する部材の斜視図である。図10を参照して、第2の実施形態のコネクタ取付装置38では、2つの固定ボルト42が、取付部材41の2つの長孔41dを挿通して、取付部材41を固定している。取付部材41は、4つのコネクタ36を取り付けることができるようになっている。取付部材41の本体41aは、2片部が互いに交差する屈曲状をなしている。一方の片部のみに長孔41dが形成され、両方の片部に2つのコネクタ36がそれぞれ取り付けられている。2つの長孔41dは、互いに平行に形成されている。取付部材41は、やはりチューブ20にスライド可能である。
【0047】
コネクタ36は、上述の第1のワイヤハーネス30の一方のワイヤハーネス33のコネクタ36と、上述の第2のワイヤハーネス31の一方のワイヤハーネス33のコネクタ36と、第3のワイヤハーネス32の2つのコネクタ36とを有している。
第3のワイヤハーネス32は、電気的に互いに直列に接続された2対のワイヤハーネス33,34を有している。一方の対のワイヤハーネス33は、ひとつの被覆電線35aと、1個のコネクタ36とを有している。一方の対のワイヤハーネス34は、ひとつの被覆電線35aと、1個のコネクタ37とを有している。他方の対のワイヤハーネス33は、2つの被覆電線35aと、1個のコネクタ36とを有している。他方の対のワイヤハーネス34は、2つの被覆電線35aと、1個のコネクタ37とを有している。両方の対の一方のワイヤハーネス33は、電動モータ18のモータハウジングから引き出されて延設されていて、延設端としての端部33aに一方のコネクタ36が設けられている。
【0048】
図11は、第3の実施形態の電動パワーステアリング装置の要部としてのコネクタ取付装置38およびこれに関連する部材の斜視図である。図12は、図11に示す要部の平面図である。図11および図12を参照する。
第3の実施形態のコネクタ取付装置38は、コネクタ36の近傍にあるワイヤハーネス33の端部33aの移動を規制する規制部43を有している。この規制部43は、取付部材41に一体に鉤状をなして形成されていて、ワイヤハーネス33の端部33aが、予め定める所定位置およびこの所定位置の近傍位置に位置規制されるようにしている。また、規制部43は、ワイヤハーネス33を引っ掛けられることにより、手間をかけずに係止することができる。
【0049】
規制部43は、取付部材41の本体41aの対向部41fから屈曲状に延びる根本部と、根本部からさらに屈曲状に延設された先端部とを有している。先端部は、対向部41fに平行に延びている。規制部43の先端部と対向部41fとの間には、ワイヤハーネス33の太さよりも大きな所定間隔が開けられている。規制部43は、対向部41fとの間に、ワイヤハーネス33の端部33aを入れて保持する保持空間44を区画している。これにより、ワイヤハーネス33が不用意に外方へ向けて突出することがなく、ワイヤハーネス33と周囲の部材との干渉が生じることが防止される。
【0050】
保持空間44は、ワイヤハーネス33の長手方向に開放される。これとともに、保持空間44は、ワイヤハーネス33の長手方向と直角に交差する一方の向きに開放された開放部44aを有している。この開放部44aを通じて、コネクタ36に連結された状態のワイヤハーネス33の端部33aを、保持空間44内に容易に入れることができる。
規制部43は、当該規制部43が延びる向きに平行に延びるリブ41gを有している。リブ41gは、規制部43の剛性を高めることができる。その結果、規制部43によりワイヤハーネス33の移動を確実に規制することができる。なお、第3の実施形態の取付部材41には、第2の実施形態の長孔41dに代えて丸孔が形成されている。
【0051】
図13は、本発明の第4の実施形態の電動パワーステアリング装置の要部としての操舵機構およびこれに関連する部材の斜視図である。図14は、図13に示す要部としてのA14部分の横断面図である。図15は、図13に示す要部としてのA15部分の横断面図である。
第4の実施形態の電動パワーステアリング装置1は、第3のワイヤハーネス32の中間部の移動を規制する複数の規制部45を有している。規制部45は、ラックハウジング15のチューブ20に一体に鉤状をなして形成されたフックからなる。これにより、ワイヤハーネス33の中間部が、予め定める所定位置およびこの所定位置の近傍位置に位置規制されている。また、規制部45は、ワイヤハーネス33を引っ掛けられることにより、手間をかけずに係止することができる。
【0052】
第3のワイヤハーネス32は、モータハウジングから導出された複数、例えば3本の被覆電線35aと、これら3本の被覆電線35aを一括して取り囲んで覆う絶縁性の外被35bとを有している。第3のワイヤハーネス32は、チューブ20の一方の側部20aに沿ってチューブ20の長手方向X1に平行に直線状に配置されていて、直線状に配置された部分の端部で、チューブ20を乗り越えて、チューブ20の他方の側部20aに係止されている。
【0053】
複数の規制部45は、チューブ20の長手方向X1に平行に且つ第3のワイヤハーネス32の長手方向に平行に並んで配置されていて、チューブ20の長手方向X1について所定間隔を開けて互いに離隔して配置されている。
規制部45は、チューブ20の互いに反対側にある側部20aに設けられた2つの規制部45(図13において左から2つの規制部45が相当する。)を含んでいる。第3のワイヤハーネス32が、一方の規制部45から、チューブ20を乗り越えて、他方の規制部45へ至っている。2つの規制部45の開放部44aは、第3のワイヤハーネス32がチューブ20を乗り越える部分とは反対側へ向けて開放されていて、第3のワイヤハーネス32がチューブ20上で突出することを抑制している。
【0054】
規制部45は、チューブ20の長手方向X1について互いに隣接した2つの規制部45(図13において、右から2つの規制部45が相当する。)を含んでいる。これら2つの規制部45の開放部44aは、互いに異なる向き、例えば互いに逆向きに開放されている。これにより、互いに隣接する2つの規制部45が互いに協働して、第3のワイヤハーネス32が保持空間44から脱落することを抑制することができる。
【0055】
これに加えて、規制部45は、順に並ぶ3つ以上の規制部45(図13において、右から3つの規制部45が相当する。)を含む。これら3つ以上の規制部45は、各保持空間44の中心位置が所定の設置経路としての直線上に配置されている。各保持空間44の各開放部44aが互いに交互に反対側へ向いて開放されている。これにより、規制部45からの第3のワイヤハーネス32の脱落を確実に防止できる。
【0056】
図14および図15を参照して、規制部45は、チューブ20の側部20aから屈曲状に延びる根本部と、根本部から屈曲状に延設された先端部とを有している。先端部は、側部20aに平行に延びている。規制部45の先端部と、これに対向する側部20aとの間には、第3のワイヤハーネス32の太さ(外被35bが円形をなすときの外径に相当する。)よりも小さな所定間隔が開けられている。規制部45は、これに対向する側部20aとの間に、第3のワイヤハーネス32を入れて保持する保持空間44を区画している。第3のワイヤハーネス32は、保持空間44内に押し込まれている。これにより、第3のワイヤハーネス32が不用意に外方へ向けて突出することが、ひいては、第3のワイヤハーネス32と周囲の部材との干渉が生じることが防止される。
【0057】
保持空間44は、第3のワイヤハーネス32の長手方向に開放される。これとともに、保持空間44は、第3のワイヤハーネス32の長手方向と直角に交差する一方の向きに開放された開放部44aを有している。この開放部44aを通じて、第3のワイヤハーネス32を保持空間44内に容易に入れることができる。また、開放部44aに臨んだチューブ20の側部20aには、断面凸湾曲形状をなす突起20bが形成されている。これにより、開放部44aの間隔L1は、保持空間44の奥部の間隔L2よりも小さくされている。突起20bは、第3のワイヤハーネス32の抜け止め用に設けられている。また、開放部44aは、開放された状態のままで使用される。
【0058】
このように本実施形態では、ラックハウジング15のチューブ20に一体に形成された複数の規制部45により、部品点数の増加を抑制しつつ、第3のワイヤハーネス32の弛みを抑制することができる。
また、第4の実施形態では、例えばボルトを利用した固定部材(図示せず)を廃止しているので、手間をかけずに第3のワイヤハーネス32を取り付けることができる。
【0059】
また、ワイヤハーネス32の固定のためのボルトを削減したり廃止したりできるので、ラックハウジング15のチューブ20に設けられるボルトのねじ込み用の座部(図示せず)を削減したり、廃止したりできる。その結果、座部に起因した干渉の発生を防止できるので、本電動パワーステアリング装置1をより多くの種類の車両に適用することが可能となる。
【0060】
というのは、上述の座部は、チューブ20の径方向であってチューブ20と第3のワイヤハーネス32とが並ぶ方向に直交する径方向について、突出量が大きくなる傾向にある。これに加えて、チューブ20の径方向であって第3のワイヤハーネス32とチューブ20とが並ぶ方向に平行な径方向についても、第3のワイヤハーネス32の突出量が大きくなる。このように、直交する2つの径方向についての突出量が大きいと、車両側部材との干渉を回避するのが困難になる。これに対して、本実施形態の規制部45は、チューブ20から突出するものの、チューブ20の径方向であってチューブ20と第3のワイヤハーネス32とが並ぶ方向に平行な径方向についてだけ突出し、しかも、その突出量は、第3のワイヤハーネス32の突出量と同程度で済む。従って、車両側部材との干渉を容易に回避することができる。
【0061】
図16は、第5の実施形態の電動パワーステアリング装置1の要部としての操舵機構およびこれに関連する部材の斜視図である。図17は、図16のA17部分の横断面図である。図18は、図16のA18部分の横断面図である。
第5の実施形態の電動パワーステアリング装置1は、第4の実施形態の規制部45に保持された第3のワイヤハーネス32を取り囲んだ状態で覆うカバー46を有している。
【0062】
カバー46は、断面溝形をなし、一方向に延びる長尺部材である。溝形の内側に、第3のワイヤハーネス32および規制部45を収容する収容空間が区画されている。本実施形態では、カバー46は、複数の例えば3つの規制部45に跨がって第3のワイヤハーネス32を覆っている。カバー46の長手方向について、収容空間は両側へ向けて開放されていて、収容空間を第3のワイヤハーネス32が貫通している。また、収容空間は、カバー46の断面において溝形の開放側となる一方向について開放されている。この一方向から、規制部45およびこれに保持された第3のワイヤハーネス32を、収容空間内へ入れることができる。
【0063】
カバー46は、第3のワイヤハーネス32の長手方向に沿って、長尺の領域を覆うことができる。その結果、この領域において第3のワイヤハーネス32と車両側部材との干渉が生じることが、確実に防止される。また、カバー46は、規制部45による保持空間44の開放部44aの少なくとも一部、例えば半分以上の領域を覆うことができるので、第3のワイヤハーネス32の脱落を確実に防止することができる。
【0064】
カバー46は、規制部45とは別体で形成されていて、規制部45に取り付けられていて、また、必要に応じて取り外すことができるようにされている。すなわち、カバー46は、被取付部材としてのラックハウジング15のチューブ20の規制部45に取り付けるために係合する係合部46aを有している。このカバー46の係合部46aが、規制部45の係合部45aに互いに係合することにより、カバー46の脱落が防止される。
【0065】
規制部45の係合部45aは、規制部45の根本部に形成された貫通孔の周縁部からなる。カバー46の係合部46aは、断面溝形の一方の側壁の端縁に形成された鉤状のフックからなる。カバー46が規制部45に取り付けられるときには、カバー46の側壁の少なくとも一部が弾性変形して、係合部45a,46a同士が互いに係合するようになっている。
【0066】
各規制部45が係合部45aをそれぞれ有しているが、少なくともひとつの規制部45が係合部45aを有していればよく、この規制部45の係合部45aに対応して、カバー46の係合部46aが設けられていればよい。
また、第1および第2の実施形態の位置調節可能なコネクタ取付装置38のいずれかと、第3、第4および第5の実施形態の規制部43,45の少なくともひとつとを同時に実施することもできる。例えば、第1および第2の実施形態のワイヤハーネス33に、第3、第4および第5の実施形態の規制部43,45の少なくともひとつを適用することかできる。この場合、コネクタ取付装置38を位置調節しても、ワイヤハーネス29に含まれる一部のワイヤハーネス33に弛みが残ることがあるが、この弛みに起因した干渉の発生を規制部43,45により防止することができる。
【0067】
第1,第2および第3の各実施形態のコネクタ取付装置38は、上述の第1、第2および第3のワイヤハーネス30,31,32のうちの任意の少なくとも一つについて適用することができ、また、他の用途のワイヤハーネスについても適用することができる。
また、コネクタ取付装置としては、少なくとも一つのコネクタ36を取り付けることができればよいし、この少なくとも一つのコネクタ36には、少なくとも一つの被覆電線が接続されていればよい。また、上述のコネクタ取付装置38は、自動車のステアリング装置のラックハウジング15以外の部分にコネクタを取り付けるために適用されてもよいし、ステアリング装置以外の機械装置に適用されてもよい。
【0068】
また、第4および第5の実施形態の規制部45は、第1、第2および第3のワイヤハーネス30,31,32のうちの任意の少なくとも一つについて適用でき、また、ハウジングとしてのラックハウジング15以外の部材に形成してもよく、また、ステアリング装置以外の他の用途のワイヤハーネスについても適用することができる。その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施形態のコネクタ取付装置が適用される電動パワーステアリング装置の模式図である。
【図2】図1に示す電動パワーステアリング装置の要部の斜視図であり、おもに操舵機構を示している。
【図3】図2の要部としてのコネクタ取付装置および関連する部材の一部断面図であり、図4のA3−A3断面を示す。
【図4】図3に示す要部のA4方向から見た側面図である。
【図5】図3に示す要部のA5方向から見た側面図である。
【図6】図3に示す要部の分解斜視図である。
【図7】図6に示す要部としてのコネクタと取付部材とのA7方向から見た側面図である。
【図8】図4に示す要部の模式図であり、取付部材が位置調節範囲の一方の端部に配置された状態を示す。
【図9】図4に示す要部の模式図あり、取付部材が位置調節範囲の他方の端部に配置された状態を示す。
【図10】本発明の第2の実施形態の電動パワーステアリング装置の要部としてのコネクタ取付装置およびこれに関連する部材の斜視図である。
【図11】本発明の第3の実施形態の電動パワーステアリング装置の要部としてのコネクタ取付装置およびこれに関連する部材の斜視図である。
【図12】図11に示す要部の平面図である。
【図13】本発明の第4の実施形態の電動パワーステアリング装置の要部としての操舵機構およびこれに関連する部材の斜視図である。
【図14】図13に示す要部としてのA14部分の横断面図である。
【図15】図13に示す要部としてのA15部分の横断面図である。
【図16】本発明の第5の実施形態の電動パワーステアリング装置の要部としての操舵機構およびこれに関連する部材の斜視図である。
【図17】図16に示す要部としてのA17部分の横断面図である。
【図18】図16に示す要部としてのA18部分の横断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1…電動パワーステアリング装置、15…ラックハウジング(被取付部材)、18…電動モータ、33…ワイヤハーネス、33a…(ワイヤハーネスの)端部、36…コネクタ、38…コネクタ取付装置、40c…案内部、41…取付部材、41c…被案内部、41e…(取付部材の)端部、47…案内機構、X1…長手方向、
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車に用いられるコネクタ取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の電動パワーステアリング装置は、操舵補助用の電動モータと、この電動モータに接続されたワイヤハーネスとを有している。ワイヤハーネスは、ステアリング装置のハウジングに帯部材およびブラケットにより固定されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−203377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ワイヤハーネスは、予め定められた所定の設置経路に沿うようにして組み付けられている。このようにワイヤハーネスを組み付けるには、ワイヤハーネスの長さを、上述の所定の設置経路の長さよりも所定長で長く形成する必要がある。その結果、ワイヤハーネスが弛みを生じ、ワイヤハーネスの周囲に配置された車両側部品に干渉する虞がある。
【0004】
また、ワイヤハーネスが弛みを生じないようにするには、ワイヤハーネスの中間部の多数箇所を帯部材により固定することが考えられる。しかし、ワイヤハーネスの多数箇所を帯部材で固定するのは、手間がかかる。
そこで、この発明の目的は、ワイヤハーネスの弛みを小さく抑制できて、ワイヤハーネスを手間をかけずに取り付けることができるコネクタ取付装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ワイヤハーネスの端部に設けられたコネクタを取付部材を介して被取付部材に取り付けるコネクタ取付装置において、上記取付部材が、ワイヤハーネスの長手方向に関して位置調整可能に被取付部材に取り付けられていることを特徴とする。この発明によれば、例えば、弛みを持たせた状態のワイヤハーネスを容易に手間をかけずに取り付けることができる。しかも、取り付け後に取付部材を被取付部材に対して位置調節することにより、コネクタ、ひいてはワイヤハーネスの端部を、被取付部材に対してワイヤハーネスの長手方向について位置調節できるので、ワイヤハーネスの全体の弛みを小さく抑制することができる。
【0006】
また、本発明において、上記コネクタは、取付部材の端部からワイヤハーネスの長手方向に沿ってスライドすることにより、取付部材に取り付けられるようにしてある場合がある。この場合、例えば、弛みを解消するために被取付部材に対して取付部材を移動させるときに、取付部材をコネクタに対して取り付ける向きに移動させることが可能となる。これにより弛みの解消に伴って、コネクタの抜け止めも一括して達成でき、組立時間を短縮できる。
【0007】
また、上記取付部材が被取付部材に対して位置調整されるときに、取付部材のスライド移動を案内する案内機構が備られ、この案内機構は、被取付部材に設けられた案内部と、取付部材に設けられ上記案内部に係合する被案内部を含む場合がある。この場合には、取付部材を容易に位置調節できる。
また、上記被取付部材は、電動パワーステアリング装置のラックハウジングを含み、上記ワイヤハーネスは操舵補助用の電動モータから引き出されている場合がある。この場合、ワイヤハーネスをラックハウジングに沿って弛みなく配置することができるので、ワイヤハーネスと周囲の車両側部材との干渉の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、電動パワーステアリング装置において、弛み抑制手段によりワイヤハーネスの弛みを小さく抑制することを通じて、ワイヤハーネスと車両側部材との干渉の発生を防止するようにしている。第1の実施形態では、弛み抑制手段としてのコネクタ取付装置が電動パワーステアリング装置に適用されている場合に則して説明するが、本発明はこれに限らず、例えば、マニュアル操舵のステアリング装置に適用されてもよい。
【0009】
図1は、本発明の第1の実施形態のコネクタ取付装置が適用される電動パワーステアリング装置の模式図である。
図1を参照して、電動パワーステアリング装置1は、操向輪2を操舵するために操舵部材としてのステアリングホイール3に加えられる操舵トルクを伝達するステアリングシャフト4と、ステアリングシャフト4からの操舵トルクにより操向輪2を操舵するための例えばラックアンドピニオン機構からなる操舵機構5と、ステアリングシャフト4および操舵機構5の間に設けられてこの間において回転を伝達するための軸継手としての中間軸6とを有している。
【0010】
ステアリングシャフト4は、ステアリングコラム7の内部を挿通して、ステアリングコラム7により回転自在に支持されている。ステアリングコラム7はブラケット8を介して車体9に支持されている。ステアリングシャフト4の一方の端部4aにステアリングホイール3が連結されていて、回転自在に支持されている。ステアリングシャフト4の他方の端部4bに中間軸6が連結されている。
【0011】
中間軸6は、動力伝達軸10と、中間軸6の一方の端部に設けられた自在継手11と、中間軸6の他方の端部に設けられた自在継手12とを有している。
操舵機構5は、入力軸としてのピニオン軸13と、自動車の横方向(直進方向と直交する方向である。)に延びる転舵軸としてのラックバー14と、ピニオン軸13およびラックバー14を支持するラックハウジング15とを有している。ピニオン軸13のピニオン歯13aと、ラックバー14のラック歯14aとが互いに噛み合っている。
【0012】
ピニオン軸13は、ラックハウジング15に回動自在に支持されている。また、ラックバー14は、ラックハウジング15に直線往復動自在に支持されている。ラックハウジング15は、車体9に固定されている。ラックハウジング15の両側へラックバー14の両端部が突出している。ラックバー14の各端部はそれぞれ、図示しないタイロッドおよびナックルアームを介して対応する操向輪2に連結されている。
【0013】
ステアリングホイール3が操舵されると、その操舵トルクがステアリングシャフト4等を介して操舵機構5に伝達される。回転がピニオン歯13aおよびラック歯14aによって、自動車の横方向に沿ってのラックバー14の直線運動に変換される。これにより操向輪2を操舵することができる。
電動パワーステアリング装置1は、操舵トルクに応じて操舵補助力を得られるようになっている。すなわち、電動パワーステアリング装置1は、操舵トルクを検出するトルクセンサ16と、制御部としてのECU(Electronic Control Unit :電子制御ユニット)17と、操舵補助用の電動モータ18と、減速機19とを有している。
【0014】
本実施形態では、電動モータ18および減速機19は、操舵機構5に関連して設けられている。すなわち、操舵機構5のラックハウジング15は、ラックバー14に沿って延びる筒状のハウジング本体としてのチューブ20と、ピニオン軸13を支持するためのギヤハウジング21とを有している。ギヤハウジング21が、減速機19およびトルクセンサ16を収容して支持し且つ電動モータ18を支持している。
【0015】
また、本実施形態では、操舵補助用のトルクセンサ16および電動モータ18に接続されたワイヤハーネス29に弛みが生じないように、ワイヤハーネス29のコネクタ36(図2参照)が位置調節可能にコネクタ取付装置38により取り付けられている。
ピニオン軸13は、入力軸22と、出力軸23と、トーションバー24とを有している。入力軸22および出力軸23は、トーションバー24を介して同一の軸線上で互いに連結されている。入力軸22は、中間軸6およびステアリングシャフト4を介して、ステアリングホイール3に連なっている。出力軸23の端部には、ピニオン歯13aが設けられている。入力軸22に操舵トルクが入力されたときに、トーションバー24が弾性ねじり変形し、これにより、入力軸22および出力軸23が相対回転する。
【0016】
トルクセンサ16は、トーションバー24に関連して設けられ、トーションバー24を介する入力軸22および出力軸23間の相対回転変位量に基づいてトルクを検出する。トルク検出結果は、ECU17に与えられる。
ECU17は、上述のトルク検出結果や図示しない車速センサから与えられる車速検出結果等に基づいて、駆動回路(図示せず)を介して電動モータ18を制御する。
【0017】
減速機19は、減速機構としてのウォームギヤ機構25を有している。このウォームギヤ機構は、駆動ギヤとしてのウォーム軸26と、従動ギヤとしてのウォームホイール27とを有している。ウォーム軸26は、電動モータ18により駆動される。ウォーム軸26は、ウォームホイール27に噛み合っている。ウォームホイール27は、出力軸23に一体回転できるように互いに固定されている。
【0018】
ステアリングホイール3が操作されると、操舵トルクがトルクセンサ16により検出され、トルク検出結果および車速検出結果等に応じて電動モータ18が操舵補助力を発生させる。操舵補助力は、減速機19を介してピニオン軸13の出力軸23に伝達され、ステアリングホイール3の動きとともに操舵機構5のラックバー14に伝わり、操向輪2が操舵される。具体的には、電動モータ18の出力回転は、伝動装置としての減速機19を介して出力軸23に伝達され、その間、減速機19により減速される。ピニオン軸13の出力軸23に伝達された回転はラックバー14の直線運動に変換されて、操舵が補助される。
【0019】
電動モータ18は、図示しないが、ハウジングとしてのモータハウジングと、このモータハウジングに軸受を介して回動自在に支持される出力軸と、この出力軸に一体回転するように設けられた円筒形状のロータと、円筒形状をなしてロータに対向してモータハウジング内に固定されるステータとを有している。出力軸とモータハウジングとステータとロータとが、モータ本体としてのブラシレスモータを構成している。また、電動モータ18は、ロータの回転角を検出する回転角検出手段としてのレゾルバ28を有している。レゾルバ28は、モータハウジング内に収容されている。
【0020】
電動パワーステアリング装置1は、ECU17を電動モータ18およびトルクセンサ16に電気的に接続するためのワイヤハーネス29を有している。ワイヤハーネス29は、電動モータ18のレゾルバ28用の第1のワイヤハーネス30と、トルクセンサ16用の第2のワイヤハーネス31と、電動モータ18のモータ本体用の第3のワイヤハーネス32とを有している。
【0021】
第1のワイヤハーネス30は、レゾルバ28の固定部のコイルと、ECU17とを電気的に接続していて、レゾルバ28からの電気信号を伝達するための信号線である。第2のワイヤハーネス31は、トルクセンサ16と、ECU17とを電気的に接続していて、トルクセンサ16からの電気信号を伝達するための信号線である。第3のワイヤハーネス32は、電動モータ18のモータ本体のステータのコイルと、ECU17とを電気的に接続していて、モータ本体への電力を供給するための電力線である。
【0022】
図2は、図1に示す電動パワーステアリング装置の要部の斜視図であり、おもに操舵機構を示している。図1および図2を参照する。
第1のワイヤハーネス30は、電気的に互いに直列に接続された一対のワイヤハーネス33,34を有している。一方のワイヤハーネス33は、電線束35と、コネクタ36とを有している。他方のワイヤハーネス34は、電線束35と、コネクタ37とを有している。
【0023】
電線束35は、複数の被覆電線35aと、複数の被覆電線35aを一括して取り囲む外被35bとを有している。被覆電線35aは、導電性の芯線と、この芯線を被覆する絶縁性の被覆材とを有している。
第1のワイヤハーネス30の一方のワイヤハーネス33は、電動モータ18のモータハウジングから引き出されて延設されていて、延設端としてのワイヤハーネス33の端部33aにコネクタ36が設けられている。一方のワイヤハーネス33のコネクタ36と、他方のワイヤハーネス34のコネクタ37とが、連結されている。このコネクタ37は、他方のワイヤハーネス34の電線束35の一方の端部に設けられていて、この電線束35がECU17につながっている。
【0024】
各コネクタ36,37は、図示しないが、コネクタハウジングと、複数の端子金具とをそれぞれ有している。コネクタハウジングは、端子金具に対応した複数の端子保持部を有している。端子保持部が、対応する端子金具をそれぞれ保持している。端子金具には、予め定められた被覆電線の芯線が接続されている。
対をなす両コネクタ36,37は、互いに連結されていて、また必要に応じて連結を解除できるようになっている。一方のコネクタ36のコネクタハウジングと、他方のコネクタ37のコネクタハウジングとが互いに機械的に連結でき、このように連結された状態で、対をなすコネクタ36,37の対応する端子金具同士が電気的に接続されるようになっている。
【0025】
第2および第3のワイヤハーネス31,32については、第1のワイヤハーネス30と異なる点を中心に説明し、同様の構成については、同じ符合を付して説明を省略する。
第2のワイヤハーネス31は、電気的に互いに直列に接続された一対のワイヤハーネス33,34を有している。一方のワイヤハーネス33は、ギヤハウジング21から引き出されて延設されている。第3のワイヤハーネス32は、複数の被覆電線(図示せず)を有している。
【0026】
電動パワーステアリング装置1は、上述のコネクタ36を被取付部材としてのチューブ20に取り付けるためのコネクタ取付装置38と、他方のワイヤハーネス34を被取付部材としてのチューブ20に取り付けるための固定部材39とを有している。
コネクタ取付装置38は、コネクタ36が取り付けられて保持される取付部材41と、この取付部材41を被取付部40に固定する固定部材としての固定ボルト42と、被取付部材としてのラックハウジング15のチューブ20に設けられた被取付部40とを有している。コネクタ取付装置38は、第1のワイヤハーネス30の一方のワイヤハーネス33のコネクタ36および第2のワイヤハーネス31の一方のワイヤハーネス33のコネクタ36を、取付部材41を介して被取付部40に取り付けている。
【0027】
図3は、図2の要部としてのコネクタ取付装置38およびこれに関連する部材の一部断面図である。図4は、図3に示す要部のA4方向からみた側面図である。図5は、図3に示す要部のA5方向からみた側面図である。図6は、図3に示す要部の分解斜視図である。図7は、図6に示す要部としての取付部材41とコネクタ36とのA7方向からみた側面図である。図8は、図4に示す要部の模式図であり、位置調節範囲の一方の端部に配置された状態を示す。図9は、図4に示す要部の模式図あり、位置調節範囲の他方の端部に配置された状態を示す。先ず、図4および図6を参照する。
【0028】
被取付部40は、チューブ20に一体に形成された取付座40aと、取付座40aに形成されたねじ孔40bと、取付部材41を案内する案内部40cとを有している。案内部40cは、取付座40aの縁部から延設されていて、ラックハウジング15のチューブ20の長手方向X1に平行に所定長さで延びている。
図3および図6を参照して、取付部材41は、被取付部40の取付座40aに沿って配置される板状の本体41aと、コネクタ36が係合して保持される係合部41bと、位置調節するときに案内される被案内部41cと、本体41aに形成された長孔41dとを有している。これら各部41a,41b,41c,41dは、一体に形成されていて、単一部品の板金成形品により構成されている。なお、取付部材41は、複数の部品を互いに固定することにより構成してもよい。
【0029】
図4および図6を参照して、取付部材41は、ワイヤハーネス29の長手方向、換言すれば、チューブ20の長手方向X1に平行な方向に関して位置調整可能に被取付部40に取り付けられている。
すなわち、長孔41dの長手方向は、コネクタ36を取付部材41の係合部41bに取り付けるための後述する取付方向に平行とされ、また、一対のコネクタ36を互いに連結する連結方向に平行とされ、また、ラックハウジング15のチューブ20の長手方向X1に平行とされている。また、この長手方向X1に沿って、係合部41bに取り付けられたコネクタ36から対応する一方のワイヤハーネス33が延び出している。
【0030】
固定ボルト42は、取付部材41の長孔41dを挿通して、被取付部40のねじ孔40bにねじ込まれている。固定ボルト42が被取付部40のねじ孔40bに締め付け状態でねじ込まれることにより、固定ボルト42の頭部と被取付部40の取付座40aとが、その間に取付部材41の本体41aを挟持して固定している。また、固定ボルト42が被取付部40にゆるくねじ込まれた状態で、取付部材41が取付座40aに仮保持される。仮保持された状態では、本体41aが取付座40aに接した状態で、長孔41dの長手方向について取付部材41が取付座40aに対してスライド自在に保持されている。仮保持された状態で、長孔41dの長手方向について長孔41dと固定ボルト42とを相対移動させることにより、取付部材41を固定ボルト42および被取付部40に対して位置調節することができる。
【0031】
図4および図5を参照して、コネクタ取付装置38は、上述のように位置調節するときに取付部材41のスライド移動を案内する案内機構47を有している。この案内機構47は、被取付部40に設けられた上述の案内部40cと、取付部材41に設けられた上述の被案内部41cとを含んでいる。
取付部材41の被案内部41cは、本体41aの端部に屈曲した板状に形成されていて、本体41aの一方の面からチューブ20の中心へ向けて突出している。被案内部41cにおいて、チューブ20の中心寄りの面は、長孔41dの長手方向に平行に延びている。仮保持された状態で、案内部40cと被案内部41cとは互いに係合できるように、互いに近接して、互いに平行に配置されている。案内部40cと被案内部41cとが互いに係合することにより、取付部材41が被取付部40に対して位置調整されるときに、当該案内機構47が取付部材41のスライド移動を案内する。
【0032】
仮保持された状態の取付部材41が移動するときに、案内部40cに被案内部41cが沿うことにより、取付部材41の移動がラックハウジング15のチューブ20の長手方向X1に沿って案内される。また、案内部40cに被案内部41cが沿うことにより、取付部材41に取り付けられたコネクタ36の向きが、ひいては、このコネクタ36が設けられた一方のワイヤハーネス33の延びる方向(長手方向)が、ラックハウジング15のチューブ20の長手方向X1に平行な方向に規制される。
【0033】
図6および図7を参照して、一方のワイヤハーネス33のコネクタ36は、取付部材41の端部41eから所定の取付方向としての一方のワイヤハーネス33の長手方向に沿ってスライドすることにより、取付部材41に取り付けられるようにしてある。
取付部材41の係合部41bは、本体41aから一方向へ向けて突出して延びた板状の凸部からなる。この凸部は、長孔41dの長手方向(一方のワイヤハーネス33の長手方向に平行な方向に相当する。)に平行に、所定の向きX2に突出している。この向きX2(所定の取付方向に相当する。)に凸部の先端側の端部41eからコネクタ36が凸部に係合するようになっている。
【0034】
また、コネクタ36は、コネクタハウジングに設けられた係合部36aを有している。係合部36aは、コネクタハウジングの側面に一体に形成された凹部からなる。この凹部は、所定の取付方向としての所定の向きX3に開放されている。このように開放された側から、係合部36aに取付部材41の係合部41bが係合するようになっている。上述の所定の向きX2,X3が互いに逆向きになるようにして、係合部36a,41b同士が互いに係合し、これにより、取付部材41がコネクタ36を保持することができる。
【0035】
上述の取付方向X2,X3は、対をなすコネクタ36,37同士を互いに連結する連結方向に平行であり、また、ワイヤハーネス33のコネクタ36から被覆電線が延びる方向に平行である。また、取付方向X2,X3についてコネクタ36が取付部材41に取り付けられるときにコネクタ36が移動する向きX3は、連結方向について当該コネクタ36が相手方のコネクタ37により押し込まれる向きと同じ向きであり、また、一方のワイヤハーネス33のコネクタ36から被覆電線が延び出す向きと同じ向きである。
【0036】
具体的には、取付部材41の係合部41bは、案内部としての一対の縁部を有している。縁部は、互いに平行に所定間隔を開けて配置されている。また、コネクタ36の係合部36aは、案内部としての一対の溝部を有している。これら一対の溝部は、互いに対向して開放され、互いに平行に所定間隔を開けて配置されている。また、溝部は、所定の取付方向X3に向けて開放された導入開口を有し、反対側の端部で閉じられている。係合部36aの一対の溝部に、係合部41bの一対の縁部が嵌まるようになっている。
【0037】
なお、コネクタ36の側面にわずかに突出形成した凸部36b1が、係合部41bに形成した係止孔41b1に係止されて、コネクタ36と取付部材41とが結合されている。また、係合部36aの位置取りに支障がない程度に取付座40aの一側を取付座40aよりは少し低い程度にチューブ20より突出させた突出部40a1を設けたため、コネクタ36に外力が加わったときの係合部41bの変形を防止している。
【0038】
図8および図9を参照して、第1および第2のワイヤハーネス30,31のワイヤハーネス33の弛みを小さく抑制するには、先ず、取付部材41を、ワイヤハーネス33の端部33aのコネクタ36が取り付けられた状態で且つ上述の仮保持された状態とする。この状態で、長孔41d内の任意の位置に固定ボルト42を配置することができる。
例えば、図8に示すように、長孔41dの一方の端部に固定ボルト42があるときには、ワイヤハーネス33の弛み度合いが大きくなる。逆に、図9に示すように、長孔41dの他方の端部に固定ボルト42があるときには、ワイヤハーネス33の弛み度合いが小さくなる。従って、固定ボルト42が長孔41dの他方の端部に近接する向きに、取付部材41が位置調節される。具体的には、取付部材41が、ラックハウジング15の長手方向X1について、ワイヤハーネス33を引っ張る向きであって、トルクセンサ16および電動モータ18から遠ざかる向きに、移動される。これにより、ワイヤハーネス33の弛みを小さくすることができる。第1および第2のワイヤハーネス30,31の2つのワイヤハーネス33のうちで、少なくとも一方のワイヤハーネス33の弛みがなくなった状態で、取付部材41が被取付部40に固定される。
【0039】
また、このときワイヤハーネス33はコネクタ36を軽く引っ張るようになる。このときの張力により、コネクタ36が取付部材41に付勢され、付勢状態でコネクタ36と取付部材41との係合部36a,41b同士の係合が維持される。
なお、一対のワイヤハーネス33,34の一対のコネクタ36,37同士の連結は、取付部材41の位置調節後であってもよいし、位置調節前であってもよい。また、取付部材41に取り付けられたコネクタ36と、これに連結された相手方のコネクタ37とを介して、他方のワイヤハーネス34の弛みを小さく抑制するように、取付部材41を調節することも考えられる。この場合、取付部材41を位置調節する向きは、上述の説明とは逆向きになる。
【0040】
本実施形態のコネクタ取付装置38は、ワイヤハーネス33の端部33aに設けられたコネクタ36を取付部材41を介して被取付部材としてのラックハウジング15のチューブ20の被取付部40に取り付けている。このコネクタ取付装置38において、上記取付部材41が、ワイヤハーネス33の長手方向に関して位置調整可能に被取付部40に取り付けられていることを特徴とする。
【0041】
本実施形態によれば、例えば、ワイヤハーネス33に弛みを持たせて、このワイヤハーネス33の端部33aのコネクタ36を取付部材41に取り付けることにより、ワイヤハーネス33を被取付部40に取り付けることができる。弛みを持たせた状態のワイヤハーネス33を容易に手間をかけずに取り付けることができる。しかも、取り付け後に、ワイヤハーネス33の端部33aのコネクタ36を取付部材41に取り付けた状態で、この取付部材41を被取付部40に対して位置調節することができる。これにより、コネクタ36、ひいてはワイヤハーネス33の端部33aを、被取付部40に対してワイヤハーネス33の長手方向について位置調節できるので、ワイヤハーネス33の全体の弛みを小さく抑制することができ、さらに解消することも可能となる。
【0042】
このように、全体の弛みを解消するための位置調節は、ワイヤハーネス33の端部33aの1箇所で済むので、ワイヤハーネスの複数カ所を帯部材(図示せず)によりラックハウジングへ固定する従来方法に比べて、手間がかからずに済む。また、弛みを解消できるので、弛みの解消のための従来の作業を削減したり廃止したりできる。従って、組立作業の時間を短縮できる。また、弛みを解消するには、もともと用いられている取付部材41の小変更、例えば、被取付部40に対して位置調節可能とする程度の小変更で対応することが可能である。これに加えて、ワイヤハーネス33の全体の弛みを解消できるので、弛みの解消のための従来の部材、例えば帯部材を削減したり廃止したりできる。従って、部品点数を削減できる。
【0043】
また、本実施形態では、コネクタ36は、取付部材41の係合部41bの端部41eからワイヤハーネス33の長手方向に沿ってスライドすることにより、取付部材41に取り付けられるようにしてある。この場合、例えば弛みを解消するために被取付部40に対して取付部材41を移動させるときに、取付部材41をコネクタ36に対して取り付ける向きに移動させることが可能となる。これにより弛みの解消に伴って、コネクタ36の抜け止めも一括して達成でき、組立時間を短縮できる。
【0044】
また、本実施形態では、取付部材41が被取付部40に対して位置調整されるときに、取付部材41のスライド移動を案内する案内機構47が備えられている。この案内機構47は、被取付部40に設けられた案内部40cと、取付部材41に設けられ上記案内部40cに係合する被案内部41cを含むようにしている。これにより、取付部材41を容易に位置調節でき、その結果、組立時間を短縮できる。なお、案内機構47は、複数箇所に設けられていてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、被取付部材は電動パワーステアリング装置1のラックハウジング15を含み、上記ワイヤハーネス33は操舵補助用のトルクセンサ16および電動モータ18から引き出されている。この場合、コネクタ取付装置38を用いて、ワイヤハーネス33をラックハウジング15に沿って弛みなく配置することができるので、ワイヤハーネス33と周囲の車両側部材との干渉の発生を防止することができる。
【0046】
また、本実施形態について、以下のような変形例を考えることができる。以下の説明では、上述の実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
図10は、第2の実施形態の電動パワーステアリング装置の要部としてのコネクタ取付装置38およびこれに関連する部材の斜視図である。図10を参照して、第2の実施形態のコネクタ取付装置38では、2つの固定ボルト42が、取付部材41の2つの長孔41dを挿通して、取付部材41を固定している。取付部材41は、4つのコネクタ36を取り付けることができるようになっている。取付部材41の本体41aは、2片部が互いに交差する屈曲状をなしている。一方の片部のみに長孔41dが形成され、両方の片部に2つのコネクタ36がそれぞれ取り付けられている。2つの長孔41dは、互いに平行に形成されている。取付部材41は、やはりチューブ20にスライド可能である。
【0047】
コネクタ36は、上述の第1のワイヤハーネス30の一方のワイヤハーネス33のコネクタ36と、上述の第2のワイヤハーネス31の一方のワイヤハーネス33のコネクタ36と、第3のワイヤハーネス32の2つのコネクタ36とを有している。
第3のワイヤハーネス32は、電気的に互いに直列に接続された2対のワイヤハーネス33,34を有している。一方の対のワイヤハーネス33は、ひとつの被覆電線35aと、1個のコネクタ36とを有している。一方の対のワイヤハーネス34は、ひとつの被覆電線35aと、1個のコネクタ37とを有している。他方の対のワイヤハーネス33は、2つの被覆電線35aと、1個のコネクタ36とを有している。他方の対のワイヤハーネス34は、2つの被覆電線35aと、1個のコネクタ37とを有している。両方の対の一方のワイヤハーネス33は、電動モータ18のモータハウジングから引き出されて延設されていて、延設端としての端部33aに一方のコネクタ36が設けられている。
【0048】
図11は、第3の実施形態の電動パワーステアリング装置の要部としてのコネクタ取付装置38およびこれに関連する部材の斜視図である。図12は、図11に示す要部の平面図である。図11および図12を参照する。
第3の実施形態のコネクタ取付装置38は、コネクタ36の近傍にあるワイヤハーネス33の端部33aの移動を規制する規制部43を有している。この規制部43は、取付部材41に一体に鉤状をなして形成されていて、ワイヤハーネス33の端部33aが、予め定める所定位置およびこの所定位置の近傍位置に位置規制されるようにしている。また、規制部43は、ワイヤハーネス33を引っ掛けられることにより、手間をかけずに係止することができる。
【0049】
規制部43は、取付部材41の本体41aの対向部41fから屈曲状に延びる根本部と、根本部からさらに屈曲状に延設された先端部とを有している。先端部は、対向部41fに平行に延びている。規制部43の先端部と対向部41fとの間には、ワイヤハーネス33の太さよりも大きな所定間隔が開けられている。規制部43は、対向部41fとの間に、ワイヤハーネス33の端部33aを入れて保持する保持空間44を区画している。これにより、ワイヤハーネス33が不用意に外方へ向けて突出することがなく、ワイヤハーネス33と周囲の部材との干渉が生じることが防止される。
【0050】
保持空間44は、ワイヤハーネス33の長手方向に開放される。これとともに、保持空間44は、ワイヤハーネス33の長手方向と直角に交差する一方の向きに開放された開放部44aを有している。この開放部44aを通じて、コネクタ36に連結された状態のワイヤハーネス33の端部33aを、保持空間44内に容易に入れることができる。
規制部43は、当該規制部43が延びる向きに平行に延びるリブ41gを有している。リブ41gは、規制部43の剛性を高めることができる。その結果、規制部43によりワイヤハーネス33の移動を確実に規制することができる。なお、第3の実施形態の取付部材41には、第2の実施形態の長孔41dに代えて丸孔が形成されている。
【0051】
図13は、本発明の第4の実施形態の電動パワーステアリング装置の要部としての操舵機構およびこれに関連する部材の斜視図である。図14は、図13に示す要部としてのA14部分の横断面図である。図15は、図13に示す要部としてのA15部分の横断面図である。
第4の実施形態の電動パワーステアリング装置1は、第3のワイヤハーネス32の中間部の移動を規制する複数の規制部45を有している。規制部45は、ラックハウジング15のチューブ20に一体に鉤状をなして形成されたフックからなる。これにより、ワイヤハーネス33の中間部が、予め定める所定位置およびこの所定位置の近傍位置に位置規制されている。また、規制部45は、ワイヤハーネス33を引っ掛けられることにより、手間をかけずに係止することができる。
【0052】
第3のワイヤハーネス32は、モータハウジングから導出された複数、例えば3本の被覆電線35aと、これら3本の被覆電線35aを一括して取り囲んで覆う絶縁性の外被35bとを有している。第3のワイヤハーネス32は、チューブ20の一方の側部20aに沿ってチューブ20の長手方向X1に平行に直線状に配置されていて、直線状に配置された部分の端部で、チューブ20を乗り越えて、チューブ20の他方の側部20aに係止されている。
【0053】
複数の規制部45は、チューブ20の長手方向X1に平行に且つ第3のワイヤハーネス32の長手方向に平行に並んで配置されていて、チューブ20の長手方向X1について所定間隔を開けて互いに離隔して配置されている。
規制部45は、チューブ20の互いに反対側にある側部20aに設けられた2つの規制部45(図13において左から2つの規制部45が相当する。)を含んでいる。第3のワイヤハーネス32が、一方の規制部45から、チューブ20を乗り越えて、他方の規制部45へ至っている。2つの規制部45の開放部44aは、第3のワイヤハーネス32がチューブ20を乗り越える部分とは反対側へ向けて開放されていて、第3のワイヤハーネス32がチューブ20上で突出することを抑制している。
【0054】
規制部45は、チューブ20の長手方向X1について互いに隣接した2つの規制部45(図13において、右から2つの規制部45が相当する。)を含んでいる。これら2つの規制部45の開放部44aは、互いに異なる向き、例えば互いに逆向きに開放されている。これにより、互いに隣接する2つの規制部45が互いに協働して、第3のワイヤハーネス32が保持空間44から脱落することを抑制することができる。
【0055】
これに加えて、規制部45は、順に並ぶ3つ以上の規制部45(図13において、右から3つの規制部45が相当する。)を含む。これら3つ以上の規制部45は、各保持空間44の中心位置が所定の設置経路としての直線上に配置されている。各保持空間44の各開放部44aが互いに交互に反対側へ向いて開放されている。これにより、規制部45からの第3のワイヤハーネス32の脱落を確実に防止できる。
【0056】
図14および図15を参照して、規制部45は、チューブ20の側部20aから屈曲状に延びる根本部と、根本部から屈曲状に延設された先端部とを有している。先端部は、側部20aに平行に延びている。規制部45の先端部と、これに対向する側部20aとの間には、第3のワイヤハーネス32の太さ(外被35bが円形をなすときの外径に相当する。)よりも小さな所定間隔が開けられている。規制部45は、これに対向する側部20aとの間に、第3のワイヤハーネス32を入れて保持する保持空間44を区画している。第3のワイヤハーネス32は、保持空間44内に押し込まれている。これにより、第3のワイヤハーネス32が不用意に外方へ向けて突出することが、ひいては、第3のワイヤハーネス32と周囲の部材との干渉が生じることが防止される。
【0057】
保持空間44は、第3のワイヤハーネス32の長手方向に開放される。これとともに、保持空間44は、第3のワイヤハーネス32の長手方向と直角に交差する一方の向きに開放された開放部44aを有している。この開放部44aを通じて、第3のワイヤハーネス32を保持空間44内に容易に入れることができる。また、開放部44aに臨んだチューブ20の側部20aには、断面凸湾曲形状をなす突起20bが形成されている。これにより、開放部44aの間隔L1は、保持空間44の奥部の間隔L2よりも小さくされている。突起20bは、第3のワイヤハーネス32の抜け止め用に設けられている。また、開放部44aは、開放された状態のままで使用される。
【0058】
このように本実施形態では、ラックハウジング15のチューブ20に一体に形成された複数の規制部45により、部品点数の増加を抑制しつつ、第3のワイヤハーネス32の弛みを抑制することができる。
また、第4の実施形態では、例えばボルトを利用した固定部材(図示せず)を廃止しているので、手間をかけずに第3のワイヤハーネス32を取り付けることができる。
【0059】
また、ワイヤハーネス32の固定のためのボルトを削減したり廃止したりできるので、ラックハウジング15のチューブ20に設けられるボルトのねじ込み用の座部(図示せず)を削減したり、廃止したりできる。その結果、座部に起因した干渉の発生を防止できるので、本電動パワーステアリング装置1をより多くの種類の車両に適用することが可能となる。
【0060】
というのは、上述の座部は、チューブ20の径方向であってチューブ20と第3のワイヤハーネス32とが並ぶ方向に直交する径方向について、突出量が大きくなる傾向にある。これに加えて、チューブ20の径方向であって第3のワイヤハーネス32とチューブ20とが並ぶ方向に平行な径方向についても、第3のワイヤハーネス32の突出量が大きくなる。このように、直交する2つの径方向についての突出量が大きいと、車両側部材との干渉を回避するのが困難になる。これに対して、本実施形態の規制部45は、チューブ20から突出するものの、チューブ20の径方向であってチューブ20と第3のワイヤハーネス32とが並ぶ方向に平行な径方向についてだけ突出し、しかも、その突出量は、第3のワイヤハーネス32の突出量と同程度で済む。従って、車両側部材との干渉を容易に回避することができる。
【0061】
図16は、第5の実施形態の電動パワーステアリング装置1の要部としての操舵機構およびこれに関連する部材の斜視図である。図17は、図16のA17部分の横断面図である。図18は、図16のA18部分の横断面図である。
第5の実施形態の電動パワーステアリング装置1は、第4の実施形態の規制部45に保持された第3のワイヤハーネス32を取り囲んだ状態で覆うカバー46を有している。
【0062】
カバー46は、断面溝形をなし、一方向に延びる長尺部材である。溝形の内側に、第3のワイヤハーネス32および規制部45を収容する収容空間が区画されている。本実施形態では、カバー46は、複数の例えば3つの規制部45に跨がって第3のワイヤハーネス32を覆っている。カバー46の長手方向について、収容空間は両側へ向けて開放されていて、収容空間を第3のワイヤハーネス32が貫通している。また、収容空間は、カバー46の断面において溝形の開放側となる一方向について開放されている。この一方向から、規制部45およびこれに保持された第3のワイヤハーネス32を、収容空間内へ入れることができる。
【0063】
カバー46は、第3のワイヤハーネス32の長手方向に沿って、長尺の領域を覆うことができる。その結果、この領域において第3のワイヤハーネス32と車両側部材との干渉が生じることが、確実に防止される。また、カバー46は、規制部45による保持空間44の開放部44aの少なくとも一部、例えば半分以上の領域を覆うことができるので、第3のワイヤハーネス32の脱落を確実に防止することができる。
【0064】
カバー46は、規制部45とは別体で形成されていて、規制部45に取り付けられていて、また、必要に応じて取り外すことができるようにされている。すなわち、カバー46は、被取付部材としてのラックハウジング15のチューブ20の規制部45に取り付けるために係合する係合部46aを有している。このカバー46の係合部46aが、規制部45の係合部45aに互いに係合することにより、カバー46の脱落が防止される。
【0065】
規制部45の係合部45aは、規制部45の根本部に形成された貫通孔の周縁部からなる。カバー46の係合部46aは、断面溝形の一方の側壁の端縁に形成された鉤状のフックからなる。カバー46が規制部45に取り付けられるときには、カバー46の側壁の少なくとも一部が弾性変形して、係合部45a,46a同士が互いに係合するようになっている。
【0066】
各規制部45が係合部45aをそれぞれ有しているが、少なくともひとつの規制部45が係合部45aを有していればよく、この規制部45の係合部45aに対応して、カバー46の係合部46aが設けられていればよい。
また、第1および第2の実施形態の位置調節可能なコネクタ取付装置38のいずれかと、第3、第4および第5の実施形態の規制部43,45の少なくともひとつとを同時に実施することもできる。例えば、第1および第2の実施形態のワイヤハーネス33に、第3、第4および第5の実施形態の規制部43,45の少なくともひとつを適用することかできる。この場合、コネクタ取付装置38を位置調節しても、ワイヤハーネス29に含まれる一部のワイヤハーネス33に弛みが残ることがあるが、この弛みに起因した干渉の発生を規制部43,45により防止することができる。
【0067】
第1,第2および第3の各実施形態のコネクタ取付装置38は、上述の第1、第2および第3のワイヤハーネス30,31,32のうちの任意の少なくとも一つについて適用することができ、また、他の用途のワイヤハーネスについても適用することができる。
また、コネクタ取付装置としては、少なくとも一つのコネクタ36を取り付けることができればよいし、この少なくとも一つのコネクタ36には、少なくとも一つの被覆電線が接続されていればよい。また、上述のコネクタ取付装置38は、自動車のステアリング装置のラックハウジング15以外の部分にコネクタを取り付けるために適用されてもよいし、ステアリング装置以外の機械装置に適用されてもよい。
【0068】
また、第4および第5の実施形態の規制部45は、第1、第2および第3のワイヤハーネス30,31,32のうちの任意の少なくとも一つについて適用でき、また、ハウジングとしてのラックハウジング15以外の部材に形成してもよく、また、ステアリング装置以外の他の用途のワイヤハーネスについても適用することができる。その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施形態のコネクタ取付装置が適用される電動パワーステアリング装置の模式図である。
【図2】図1に示す電動パワーステアリング装置の要部の斜視図であり、おもに操舵機構を示している。
【図3】図2の要部としてのコネクタ取付装置および関連する部材の一部断面図であり、図4のA3−A3断面を示す。
【図4】図3に示す要部のA4方向から見た側面図である。
【図5】図3に示す要部のA5方向から見た側面図である。
【図6】図3に示す要部の分解斜視図である。
【図7】図6に示す要部としてのコネクタと取付部材とのA7方向から見た側面図である。
【図8】図4に示す要部の模式図であり、取付部材が位置調節範囲の一方の端部に配置された状態を示す。
【図9】図4に示す要部の模式図あり、取付部材が位置調節範囲の他方の端部に配置された状態を示す。
【図10】本発明の第2の実施形態の電動パワーステアリング装置の要部としてのコネクタ取付装置およびこれに関連する部材の斜視図である。
【図11】本発明の第3の実施形態の電動パワーステアリング装置の要部としてのコネクタ取付装置およびこれに関連する部材の斜視図である。
【図12】図11に示す要部の平面図である。
【図13】本発明の第4の実施形態の電動パワーステアリング装置の要部としての操舵機構およびこれに関連する部材の斜視図である。
【図14】図13に示す要部としてのA14部分の横断面図である。
【図15】図13に示す要部としてのA15部分の横断面図である。
【図16】本発明の第5の実施形態の電動パワーステアリング装置の要部としての操舵機構およびこれに関連する部材の斜視図である。
【図17】図16に示す要部としてのA17部分の横断面図である。
【図18】図16に示す要部としてのA18部分の横断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1…電動パワーステアリング装置、15…ラックハウジング(被取付部材)、18…電動モータ、33…ワイヤハーネス、33a…(ワイヤハーネスの)端部、36…コネクタ、38…コネクタ取付装置、40c…案内部、41…取付部材、41c…被案内部、41e…(取付部材の)端部、47…案内機構、X1…長手方向、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスの端部に設けられたコネクタを取付部材を介して被取付部材に取り付けるコネクタ取付装置において、上記取付部材が、ワイヤハーネスの長手方向に関して位置調整可能に被取付部材に取り付けられていることを特徴とするコネクタ取付装置。
【請求項2】
請求項1において、上記コネクタは、取付部材の端部からワイヤハーネスの長手方向に沿ってスライドすることにより、取付部材に取り付けられるようにしてあることを特徴とするコネクタ取付装置。
【請求項3】
請求項1または2において、上記取付部材が被取付部材に対して位置調整されるときに、取付部材のスライド移動を案内する案内機構が備られ、この案内機構は、被取付部材に設けられた案内部と、取付部材に設けられ上記案内部に係合する被案内部を含むことを特徴とするコネクタ取付装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項において、上記被取付部材は、電動パワーステアリング装置のラックハウジングを含み、上記ワイヤハーネスは操舵補助用の電動モータから引き出されていることを特徴とするコネクタ取付装置。
【請求項1】
ワイヤハーネスの端部に設けられたコネクタを取付部材を介して被取付部材に取り付けるコネクタ取付装置において、上記取付部材が、ワイヤハーネスの長手方向に関して位置調整可能に被取付部材に取り付けられていることを特徴とするコネクタ取付装置。
【請求項2】
請求項1において、上記コネクタは、取付部材の端部からワイヤハーネスの長手方向に沿ってスライドすることにより、取付部材に取り付けられるようにしてあることを特徴とするコネクタ取付装置。
【請求項3】
請求項1または2において、上記取付部材が被取付部材に対して位置調整されるときに、取付部材のスライド移動を案内する案内機構が備られ、この案内機構は、被取付部材に設けられた案内部と、取付部材に設けられ上記案内部に係合する被案内部を含むことを特徴とするコネクタ取付装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項において、上記被取付部材は、電動パワーステアリング装置のラックハウジングを含み、上記ワイヤハーネスは操舵補助用の電動モータから引き出されていることを特徴とするコネクタ取付装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2007−242283(P2007−242283A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59701(P2006−59701)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
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