説明

コネクタ端子の接続構造及び接続方法

【課題】電線と確実に接続させることができ、しかも、設備費及び製造費を抑えつつ導体との接続箇所における良好な耐食性を得ることが可能なコネクタ端子の接続構造及び接続方法を提供すること。
【解決手段】芯線12を外被13で覆った電線11へ接続されたコネクタ端子10の接続構造であって、コネクタ端子10は、電線11の端部を圧着するバレル部21と、相手端子と導通される電気接続部31とを備え、電線11は、端部近傍で外被13が切断分離され、分離された外被分離部13aが端部側へずらされて芯線12が露出され、電線11の端部側へずらされた外被分離部13a、露出された芯線12部分及び外被13部分がコネクタ端子10のバレル部21に圧着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ端子の電線への接続構造及び接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電線の端部に接続されるコネクタ端子の接続箇所を保護するために、上下型からなる成形金型の内部に、被覆電線の先端部導体に端子金具を圧着した端末接続部を収容してセットする成型空洞のモールド部が設けられ、モールド部に溶融状態のモールド樹脂を射出注入して端末接続部を被覆成形することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−162647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、圧着接続部分をモールドしたコネクタ端子では、電線を圧着する圧着工程を行った後、圧着機から取り外して成形機へ配置させ、この成形機でモールド樹脂を注入して樹脂モールドを成形する成形工程を行うこととなる。したがって、成形工程を行う成形機及びモールド用の樹脂材料が必要であり、設備費及び製造費が嵩んでしまう。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電線と確実に接続させることができ、しかも、設備費及び製造費を抑えつつ導体との接続箇所における良好な耐食性を得ることが可能なコネクタ端子の接続構造及び接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタ端子の接続構造は、下記(1)を特徴としている。
(1) 導体を外被で覆った電線へ接続されたコネクタ端子の接続構造であって、
前記コネクタ端子は、前記電線の端部を圧着するバレル部と、相手端子と導通される電気接続部とを備え、
前記電線は、端部近傍で前記外被が切断分離され、分離された外被分離部が端部側へずらされて前記導体が露出され、
前記電線の端部側へずらされた外被分離部、露出された導体部分及び外被部分が前記コネクタ端子のバレル部に圧着されていること。
【0007】
上記(1)の構成のコネクタ端子の接続構造では、電線の端部側へずらされた外被分離部、露出された導体部分及び外被部分がコネクタ端子のバレル部に圧着されている。したがって、コネクタ端子に圧着された電線は、その導体の露出部分の周囲及び前後が完全に封鎖された状態となり、導体を防水することができる。よって、異種金属同士の接続であっても、接続箇所を樹脂によって成形機でモールドすることなく、接続箇所における異種金属接触腐食などの電食を防止することができる。つまり、圧着機だけで電線と確実に接続させることができ、しかも、成形機やモールド樹脂を不要とすることで設備費及び製造費を抑えつつ導体との接続箇所における良好な耐食性を得ることができ、ワイヤハーネスの生産工場への展開を有利にすることができる。
【0008】
また、上述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタ端子の接続方法は、下記(2)を特徴としている。
(2) 導体を外被で覆った電線の端部を圧着するバレル部と、相手端子と導通される電気接続部とを備えたコネクタ端子を前記電線に接続する接続方法であって、
前記電線の端部近傍で前記外被を切断分離し、
分離した外被分離部を端部側へずらして前記導体を露出させ、
前記電線の端部側へずらした外被分離部、露出させた導体部分及び外被部分を前記コネクタ端子のバレル部に圧着すること。
【0009】
上記(2)のコネクタ端子の接続方法では、端部近傍で切断分離した外被分離部を端部側へずらして導体を露出させ、外被分離部、露出させた導体部分及び外被部分をコネクタ端子のバレル部に圧着することにより、電線の導体の露出部分の周囲及び前後を完全に封鎖させた状態とし、導体を防水することができる。よって、異種金属同士の接続であっても、接続箇所を樹脂によって成形機でモールドすることなく、接続箇所における異種金属接触腐食などの電食を防止することができる。つまり、圧着機だけで電線と確実に接続させることができ、しかも、成形機やモールド樹脂を不要とすることで設備費及び製造費を抑えつつ導体との接続箇所における良好な耐食性を得ることができ、ワイヤハーネスの生産工場への展開を有利にすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電線と確実に接続させることができ、しかも、設備費及び製造費を抑えつつ導体との接続箇所における良好な耐食性を得ることが可能なコネクタ端子の接続構造及び接続方法を提供できる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施形態を説明する電線に接続されたコネクタ端子の斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態を説明する電線に接続されたコネクタ端子の断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態を説明する電線に接続されたコネクタ端子のバレル部の斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態を説明するコネクタ端子及び電線の斜視図である。
【図5】図5は、電線前処理工程を説明する図であって、図5(a)は電線の端部の側面図、図5(b)は外被を分離させた電線の端部の側面図である。
【図6】図6は、圧着接続工程を説明するコネクタ端子がセットされた圧着機の斜視図である。
【図7】図7は、変形例に係るコネクタ端子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は本発明の実施形態を説明する電線に接続されたコネクタ端子の斜視図、図2は本発明の実施形態を説明する電線に接続されたコネクタ端子の断面図、図3は本発明の実施形態を説明する電線に接続されたコネクタ端子のバレル部の斜視図、図4は本発明の実施形態を説明するコネクタ端子及び電線の斜視図、図5は電線前処理工程を説明する図であって、図5(a)は電線の端部の側面図、図5(b)は外被を分離させた電線の端部の側面図、図6は圧着接続工程を説明するコネクタ端子がセットされた圧着機の斜視図である。
【0015】
図1から図3に示すように、コネクタ端子10は、電線11に接続されている。コネクタ端子10は、銅または銅合金等の導電性金属材料を、例えば、プレス加工することにより形成されたもので、バレル部21及び電気接続部31を有している。
【0016】
図4に示すように、バレル部21は、先端側である電気接続部31側から後端側へ向かって順に、先端圧着部22、芯線圧着部23及び外被圧着部24とされている。このバレル部21は、正面視で上方側が開放されたU字状または凹状に形成されており、その内部に電線11の端部が配置された状態で圧着される。
【0017】
コネクタ端子10が接続される電線11は、アルミニウムからなる芯線(導体)12と、この芯線12の周囲に押出し被覆された外被13とを有している。この電線11は、端部近傍で外被13が切断分離され、分離された外被分離部13aが端部側へずらされて芯線12が露出された状態でコネクタ端子10のバレル部21に圧着されている。
【0018】
これにより、電線11は、端部側へずらされた外被分離部13a、露出された芯線12部分及び外被13部分が、コネクタ端子10のバレル部21を構成する先端圧着部22、芯線圧着部23及び外被圧着部24にそれぞれ圧着されている。
【0019】
このように、上記実施形態に係るコネクタ端子の接続構造によれば、電線11の端部側へずらされた外被分離部13a、露出された芯線12部分及び外被13部分がコネクタ端子10のバレル部21に圧着されている。したがって、コネクタ端子10に圧着された電線11は、その芯線12の露出部分の周囲及び前後が完全に封鎖された状態となり、芯線12を防水することができる。よって、異種金属同士の接続であっても、接続箇所を樹脂によって成形機でモールドすることなく、接続箇所における異種金属接触腐食などの電食を防止することができる。つまり、圧着機だけで電線11と確実に接続させることができ、しかも、成形機やモールド樹脂を不要とすることで設備費及び製造費を抑えつつ芯線12との接続箇所における良好な耐食性を得ることができ、ワイヤハーネスの生産工場への展開を有利にすることができる。
【0020】
次に、コネクタ端子10への電線11の接続方法について説明する。
【0021】
(電線前処理工程)
まず、図5(a)に示すように、電線11の端部近傍の切断分離位置(図中破線部分)で外被13を切断分離する。そして、切断分離することにより、先端側で分離された外被分離部13aを、図5(b)に示すように、端部側へずらし、芯線12を露出させる。
【0022】
ここで、芯線12に外被分離部13aの一部が被覆された状態とし、そのときの芯線12に対する外被分離部13aの被覆寸法Xを、1mm以上とする。また、外被13の切断分離位置は、被覆寸法Xで外被分離部13aが芯線12を被覆した状態において、バレル部21の芯線圧着部23が十分に圧着される程度に芯線12が露出されるように設定する。
【0023】
(圧着接続工程)
図6に示すように、圧着機の下加締型41と上加締型42の間にコネクタ端子10のバレル部21を配置させ、前処理を施した電線11の端部をバレル部21に配置させる。
【0024】
この状態で、下加締型41に対して上加締型42を近接させ、コネクタ端子10のバレル部21を内側に押し曲げて加締める。
【0025】
このように、圧着機の下加締型41及び上加締型42でバレル部21を内側に押し曲げると、電線11の端部側へずらされた外被分離部13aが先端圧着部22に圧着され、電線11の露出された芯線12部分が芯線圧着部23に圧着され、電線11の外被13部分が外被圧着部24に圧着される。よって、コネクタ端子10は、電線11の芯線12と導通した状態に接続される。
【0026】
そして、上記のように電線11にコネクタ端子10を圧着することにより、電線11は、その芯線12の露出部分が芯線圧着部23で覆われた状態となる。また、先端圧着部22に圧着された外被13の一部である外被分離部13aが圧縮され、芯線12が通されていた孔部が塞がれる。これにより、芯線12の先端部が、先端圧着部22で圧縮された外被分離部13aによって密閉される。さらに、芯線12の露出部分における先端側と反対側の後方側は、外被13部分が外被圧着部24に圧着されて密閉される。
【0027】
つまり、上記実施形態に係るコネクタ端子の接続方法によれば、端部近傍で切断分離した外被分離部13aを端部側へずらして芯線12を露出させ、外被分離部13a、露出させた芯線12部分及び外被13部分をコネクタ端子10のバレル部21に圧着することにより、電線11の芯線12の露出部分の周囲及び前後を完全に封鎖させた状態とし、芯線12を防水することができる。よって、異種金属同士の接続であっても、接続箇所を樹脂によって成形機でモールドすることなく、接続箇所における異種金属接触腐食などの電食を防止することができる。つまり、圧着機だけで電線11と確実に接続させることができ、しかも、成形機やモールド樹脂を不要とすることで設備費及び製造費を抑えつつ芯線12との接続箇所における良好な耐食性を得ることができ、ワイヤハーネスの生産工場への展開を有利にすることができる。
【0028】
図7は変形例に係るコネクタ端子の斜視図である。
【0029】
図7に示すように、このコネクタ端子10は、バレル部21を構成する芯線圧着部23と外被圧着部24とが分割されたものである。このコネクタ端子10では、バレル部21を加締めて電線11の端部に圧着した際に、分割された芯線圧着部23及び外被圧着部24がそれぞれ独立して外径のことなる芯線12及び外被13に圧着されることとなる。これにより、電線11の端部へコネクタ端子10を、より確実に接続することができる。
【0030】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0031】
10 コネクタ端子
11 電線
12 芯線(導体)
13 外被
13a 外被分離部
21 バレル部
31 電気接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体を外被で覆った電線へ接続されたコネクタ端子の接続構造であって、
前記コネクタ端子は、前記電線の端部を圧着するバレル部と、相手端子と導通される電気接続部とを備え、
前記電線は、端部近傍で前記外被が切断分離され、分離された外被分離部が端部側へずらされて前記導体が露出され、
前記電線の端部側へずらされた外被分離部、露出された導体部分及び外被部分が前記コネクタ端子のバレル部に圧着されていることを特徴とするコネクタ端子の接続構造。
【請求項2】
導体を外被で覆った電線の端部を圧着するバレル部と、相手端子と導通される電気接続部とを備えたコネクタ端子を前記電線に接続する接続方法であって、
前記電線の端部近傍で前記外被を切断分離し、
分離した外被分離部を端部側へずらして前記導体を露出させ、
前記電線の端部側へずらした外被分離部、露出させた導体部分及び外被部分を前記コネクタ端子のバレル部に圧着することを特徴とするコネクタ端子の接続方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−105583(P2013−105583A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247620(P2011−247620)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】