説明

コネクタ装置

【課題】積層された複数の接続端子を積層方向に貫通する金属製の軸部に絶縁層を設けることなく、この軸部を有する押圧部材によって複数の接続端子を積層方向に押圧することが可能なコネクタ装置を提供する。
【解決手段】コネクタ装置1は、雄側ハウジング90と雌側ハウジング20とが嵌合されたとき、雄側接続端子81〜83、雌側接続端子41〜43、及び第1〜第3絶縁部材94〜96が積層構造となり、この積層構造を押圧する押圧力を出力する金属製の押圧部材7を備える。押圧部材7は、雄側接続端子81〜83及び第1〜第3絶縁部材94〜96を積層方向に貫通する軸部7bを有し、雄側接続端子81〜83と軸部7bとの短絡が、第1〜第3絶縁部材94〜96に設けられ、雄側接続端子81〜83の挿通孔81a〜83aを挿通する筒部941,951,961によって防止されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれが複数の接続端子を保持する2つのハウジングを嵌合した後に、これら両ハウジングの複数の接続端子を押圧することが可能な押圧部材を備えたコネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電気自動車の駆動源としての電気モータに電流を供給する電流供給経路に設けられ、電力ハーネス同士、又は電力ハーネスとモータもしくはインバータとの間を着脱可能とするコネクタが用いられている。この種のコネクタとして、第1コネクタ部と第2コネクタ部とを結合し、両コネクタ部のそれぞれの接合端子同士を押圧して接触させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されたコネクタは、複数の第1接合端子、及び複数の第1接合端子に一体的に固定された複数の絶縁部材が収容された第1ターミナルハウジングを有する第1コネクタ部と、複数の第2接合端子が収容された第2ターミナルハウジングを有する第2コネクタ部とを備え、第1ターミナルハウジングと第2ターミナルハウジングとを嵌合させると、第1接合端子と第2接合端子とが絶縁部材を介して交互に配置される積層状態となるように構成されている。
【0004】
このコネクタはさらに、積層状態となった複数の第1接合端子、複数の第2接合端子、及び複数の絶縁部材を積層方向に押圧することで、複数の第1接合端子と複数の第2接合端子とを各接点にて一括して固定し、電気的に接続させる接続部材を第1ターミナルハウジング内に備えている。この接続部材は、複数の第1接合端子及び複数の絶縁部材を積層方向に貫通する軸部と、軸部の一端に設けられ、締め付け工具を嵌合させる異形穴が形成された頭部と、軸部の他端に設けられ、第1ターミナルハウジングに形成された雌ネジに螺合する雄ネジが形成されたネジ部とを有している。
【0005】
しかして、接続部材を締め付け工具によって回転させると、ネジ部の螺合によって頭部が軸方向に移動し、頭部が弾性部材を介して複数の絶縁部材のうち最も頭部側に位置する絶縁部材を積層方向に押圧し、これによって複数の第1接合端子と複数の第2接合端子とが電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−113942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のように構成された接続部材には、弾性部材を介して積層構造を押圧する押圧力の反力が常に作用するので、強度及び耐久性を高めるためには、絶縁部材の頭部、軸部、及びネジ部を金属部材によって一体に形成することが望ましい。この場合、接続部材と第1接合端子及び第2接合端子との間を絶縁するために、軸部の外周に例えば絶縁性樹脂からなる絶縁層をコーティングする必要があり、接続部材の製造工数を増大させる要因となっていた。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、積層された複数の接続端子を積層方向に貫通する金属製の軸部に絶縁層を設けることなく、この軸部を有する押圧部材によって複数の接続端子を積層方向に押圧することが可能なコネクタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数の第1接続端子と、複数の絶縁部材と、前記複数の第1接続端子及び前記複数の絶縁部材を保持する第1ハウジングと、前記複数の第1接続端子にそれぞれ電気的に接続される複数の第2接続端子と、前記複数の第2接続端子を保持する第2ハウジングと、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの嵌合により積層構造となる前記複数の第1接続端子、前記複数の第2接続端子、及び前記複数の絶縁部材をこれらの積層方向に押圧する押圧力を発生させる押圧部材とを備え、前記押圧部材は、前記複数の第1接続端子及び前記複数の絶縁部材を前記積層方向に貫く導電性金属からなる軸部と、前記軸部の一端に形成され、前記押圧力を出力する頭部とを有し、前記複数の絶縁部材は、前記複数の第1接続端子の間に介在する本体部と、前記本体部から前記積層方向に突出する筒部とを有し、前記複数の第1接続端子は、前記積層方向に形成された挿通孔に前記筒部を挿通させて前記第1ハウジング内に保持され、前記押圧部材は、前記軸部が前記複数の絶縁部材の前記本体部及び前記筒部に形成された貫通孔に挿入され、前記絶縁部材の前記筒部によって前記複数の第1接続端子と前記押圧部材の前記軸部とが絶縁されているコネクタ装置を提供する。
【0010】
また、前記複数の絶縁部材に形成された前記貫通孔は、前記筒部側の小径部と、前記本体部側の大径部とを有し、前記複数の絶縁部材のうち少なくとも1つの絶縁部材は、その前記大径部に、前記積層方向に隣り合う他の絶縁部材の前記筒部を収容しているとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るコネクタ装置によれば、積層された複数の接続端子を積層方向に貫通する金属製の軸部に絶縁層を設けることなく、この軸部を有する押圧部材によって複数の接続端子を積層方向に押圧することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係るコネクタ装置を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】(a)は雄側コネクタの断面図、(b)は雌側コネクタの断面図である。
【図5】雌側コネクタに設けられた雌側接続端子を示し、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図6】雌側コネクタに設けられた他の雌側接続端子を示し、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図7】雄側コネクタに設けられた雄側接続端子を示し、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図8】第1絶縁部材及び第2絶縁部材を示し、(a)は側面図、(b)及び(c)は斜視図である
【図9】第3絶縁部材を示し、(a)は側面図、(b)及び(c)は斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態]
次に、本発明の実施の形態について、図1〜図9を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の第1の実施の形態に係るコネクタ装置を示す斜視図である。図2は、図1のA−A線断面図である。図3は、図1のB−B線断面図である。また、図4(a)は雄側コネクタの断面図、図4(b)は雌側コネクタの断面図である。
【0015】
このコネクタ装置1は、雌側コネクタ2及び雄側コネクタ9を有している。雌側コネクタ2と雄側コネクタ9とは、雌側コネクタ2の雌側ハウジング20と雄側コネクタ9の雄側ハウジング90とを嵌合することにより結合される。本実施の形態では、雌側ハウジング20に雄側ハウジング90の一部が収容されるように、雌側ハウジング20と雄側ハウジング90との嵌合が行われ、この嵌合により作動するロック機構2aによって両ハウジングが容易に外れないように構成されている。
【0016】
雌側コネクタ2には、例えば車両の駆動源としての電気モータに電流を供給するための3本の電線31,32,33が接続されている。この電気モータは例えば三相交流モータであり、3本の電線31,32,33は、三相交流モータに各相電流を供給する。また、この電気モータが搭載される車両としては、例えば電気モータを単一の駆動源とする電気自動車や、電気モータ及び内燃機関であるエンジンを併用して駆動源とする所謂ハイブリッド車が挙げられる。
【0017】
電線31〜33は、例えば銅やアルミニウム等の導電性の金属からなる中心導体3aと、中心導体3aの外周に形成された架橋ポリエチレン等の絶縁性の樹脂からなるシース3bとから構成されている。
【0018】
図1に示すように、雄側コネクタ9は、雄側ハウジング90に回転可能に保持された押圧部材7を有している。押圧部材7の頭部7aには、ドライバ等の工具によって押圧部材7を回転させるための十字状の溝が形成されている。
【0019】
(雌側コネクタ2の構成)
図3及び図4(b)に示すように、雌側コネクタ2は、雌側接続端子41〜43と、雌側接続端子41〜43を保持する雌側ハウジング20とを有している。雌側接続端子41〜43は、本発明の複数の第2接続端子の一例である。
【0020】
雌側ハウジング20は、雄側ハウジング90の一部を収容する収容凹部20aを一端部に有しており、他端部には電線31〜33を保持する保持部20cが形成されている。また、雌側ハウジング20には、雄側ハウジング90との嵌合時に押圧部材7の頭部7aに対応する部位に、円形の開口20bが形成されている。
【0021】
雌側コネクタ2内における電線31〜33の先端部は、シース3bが除去されて中心導体3aが露出している。電線31の中心導体3aには雌側接続端子41が、電線32の中心導体3aには雌側接続端子42が、電線33の中心導体3aには雌側接続端子43が、それぞれ接続されている。雌側接続端子41〜43は、例えば銅合金からなる基材の表面が錫メッキされた導電性部材からなる。
【0022】
図5は、雌側接続端子41,43を示し、(a)は側面図、(b)は平面図である。図6は、雌側接続端子42を示し、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【0023】
雌側接続端子41,43は、電線31,33の中心導体3aがかしめ固定されるかしめ部41a,43aと、平板状の接触部41b,43bとが一体に形成されている。接触部41b,43bの先端は、二股に分かれて電線31,33の延伸方向に開口している。すなわち、雌側接続端子41,43は、Y端子として形成されている。
【0024】
雌側接続端子42は、電線32の中心導体3aがかしめ固定されるかしめ部42aと、平板状の接触部42bと、かしめ部42aと接触部42bとの間に介在し、電線32の延伸方向に対して傾斜した傾斜部42cとが一体に形成されている。この雌側接続端子42もまた、Y端子として形成されている。
【0025】
図3及び図4(b)に示すように、雌側接続端子41と雌側接続端子43とは、互いの接触部41b,43b同士が接近するように雌側ハウジング20内に保持されている。また、雌側接続端子42は、雌側接続端子41と雌側接続端子43との間に保持されている。雌側接続端子41の接触部41b、雌側接続端子42の接触部42b、及び雌側接続端子43の接触部43bは、互いに平行かつ等間隔に並列している。
【0026】
(雄側コネクタ9の構成)
図3及び図4(a)に示すように、雄側コネクタ9は、雄側接続端子81〜83と、受け部材93と、第1〜第3絶縁部材94〜96と、押圧部材7と、コイルバネ71と、これらを収容する雄側ハウジング90とを有している。雄側接続端子81〜83は、本発明の複数の第1接続端子の一例である。
【0027】
雄側ハウジング90は、アウタハウジング91と、アウタハウジング91の内面に保持されたインナハウジング92とからなる。アウタハウジング91の内部は、雌側ハウジング20の収容凹部20aに収容されるアウタハウジング91の先端部91bの外面に保持されたシール部材911、及び収容凹部20a内に保持されてアウタハウジング91の先端部91bの内面に接触するシール部材21によって気密に封止されている。
【0028】
アウタハウジング91は、例えばアルミニウム等の導電性の金属からなる。インナハウジング92は、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PPA(ポリフタルアミド)樹脂、PA(ポリアミド)樹脂、又はPBT(ポリブチレンテレフタレート)等の絶縁性の樹脂からなる。
【0029】
アウタハウジング91には、押圧部材7の頭部7aを保持し、押圧部材7を回転可能に支持する円筒状の保持孔91aが形成されている。頭部7aと保持孔91aの内面との間には、シール部材72が配置されている。また、アウタハウジング91には、保持孔91aに対向する内面に、保持孔91a側に向かって突出する凸部91cが形成されている。この凸部91cには、雌ネジ91dが形成されている。
【0030】
押圧部材7は、アルミニウムや鉄、あるいはステンレス等の導電性を有する金属からなり、円板状の頭部7a、頭部7aよりも小径に形成された円柱状の軸部7b、及び雌ネジ91dに螺合する雄ネジが形成されたネジ部7cが一体に形成されている。頭部7aは軸部7bの一端に形成され、雌ネジ91dは軸部7bの他端に形成されている。押圧部材7は、軸部7bの中心軸線が雄側ハウジング90と雌側ハウジング20との嵌合方向に対して直交する向きになるように、アウタハウジング91に支持されている。
【0031】
インナハウジング92は、アウタハウジング91の内面に、例えば圧入によって保持されている。インナハウジング92は、雄側接続端子81〜83を互いに平行かつ等間隔に支持している。雄側接続端子81〜83は、例えば銅合金からなる基材の表面が錫メッキされた導電性部材からなる。
【0032】
図7は、雄側接続端子81〜83を示し、(a)は側面図、(b)は平面図である。図7に示すように、雄側接続端子81〜83は平板状であり、一方の端部の近傍に、雄側接続端子81〜83を厚さ方向に貫通する挿通孔81a,82a,83aが形成されている。
【0033】
受け部材93は、押圧部材7の頭部7aとの対向面に、環状の凹溝93aが形成された円板状の絶縁性部材である。凹溝93aの内側には、受け部材93を厚さ方向に貫通する貫通孔93bが形成されている。また、凹溝93aの内部には、鉄やステンレス等の金属からなる円環板状の座金931が配置されている。受け部材93は、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PPA(ポリフタルアミド)樹脂、PA(ポリアミド)樹脂、又はPBT(ポリブチレンテレフタレート)等の絶縁性の樹脂からなる。
【0034】
座金931と押圧部材7の頭部7aとの間には、弾性部材であるコイルバネ71が配置されている。コイルバネ71の一端は凹溝93aに収容されている。
【0035】
図8は、第1絶縁部材94及び第2絶縁部材95を示し、(a)は側面図、(b)及び(c)は斜視図である。図9は、第3絶縁部材96を示し、(a)は側面図、(b)及び(c)は斜視図である。
【0036】
第1絶縁部材94及び第2絶縁部材95と第3絶縁部材96とは、第3絶縁部材96に突起部(後述)が形成されていない他は、同じ形状及び大きさである。第1〜第3絶縁部材94,95,96は、受け部材93と同様の絶縁性の樹脂からなる。
【0037】
第1〜第3絶縁部材94,95,96は、直方体状の本体部940,950,960と、筒部941,951,961とを一体に有している。本実施の形態では、筒部941,951,961において、その軸方向に直交する断面(軸方向直交断面)の輪郭が円筒状に形成されているが、多角形(例えば、正方形,長方形,又は五角形等)の角筒状であってもよい。
【0038】
筒部941,951,961は、本体部940,950,960の第1平面940b,950b,960bに直交するように立設されている。第1平面940b,950b,960bの裏面側にあたる第2平面940c,950c,960cは、第1平面940b,950b,960bと平行に形成されている。
【0039】
第1〜第3絶縁部材94,95,96には、筒部941,951,961の中心軸方向に沿って、筒部941,951,961及び本体部940,950,960を貫通する貫通孔94a,95a,96aが形成されている。貫通孔94a,95a,96aは、筒部941,951,961側の小径部94a,95a,96aと、本体部940,950,960側の大径部94a,95a,96aからなる。
【0040】
小径部94a,95a,96aは、筒部941,951,961の全体、及び本体部940,950,960の第1平面940b,950b,960b側の一部に亘って形成されている。大径部94a,95a,96aは、本体部940,950,960の第2平面940c,950c,960c側の一部に形成されている。大径部94a,95a,96aの内径は、筒部941,951,961の外径と同等もしくは筒部941,951,961の外径よりも大きな寸法に形成されている。また、筒部941,951,961は、その軸方向長さが、大径部94a,95a,96aの軸方向長さよりも大きな寸法に形成されている。
【0041】
第1絶縁部材94及び第2絶縁部材95の本体部940,950の第2平面940c,950c側の端部には、第2平面940c,950cに直交する方向に突出した突起部942,952が形成されている。突起部942,952は、第2平面940c,950cからの高さが雄側接続端子81〜83の厚みよりも小さい寸法に形成されている。
【0042】
突起部942,952は、雄側ハウジング90内にて、雄側接続端子82,83の先端面に対向するように配置される。突起部942,952は、雄側接続端子82,83の幅方向に沿って延びるように形成され、雄側接続端子82,83に対向する面の反対側は、雌側ハウジング20との嵌合方向に対して傾斜したテーパ面942a,952aとして形成されている。このテーパ面942a,952aは、雌側接続端子42,43の接触部42b,43bを雄側接続端子82,83の接触面に導くように機能する。
【0043】
図4(a)に示すように、第1〜第3絶縁部材94,95,96は、受け部材93とアウタハウジング91の凸部91cとの間に積み重なるように配置される。より具体的には、第3絶縁部材96の第2平面960cが凸部91cに接触し、第3絶縁部材96の筒部961の一部が第2絶縁部材95の貫通孔95aの大径部95aに収容され、筒部961の外周面961bが大径部95aの内周面950aに対向している。また、第2絶縁部材95の筒部951の一部が第1絶縁部材94の貫通孔94aの大径部94aに収容され、筒部951の外周面951bが大径部94aの内周面940aに対向している。またさらに、第1絶縁部材94の筒部941が受け部材93の貫通孔93bに収容され、筒部941の外周面941bが貫通孔93bの内周面に対向している。
【0044】
押圧部材7の軸部7bは、受け部材93の貫通孔93b、第1絶縁部材94の貫通孔94a、第2絶縁部材95の貫通孔95a、及び第3絶縁部材96の貫通孔96aに挿入されている。貫通孔94a,95a,96aの小径部94a,95a,96aの内周面941a,951a,961aは、軸部7bの外周面に対向している。
【0045】
雄側接続端子81は、受け部材93の第1絶縁部材94側の平面93cに接触し、雄側接続端子81と第1絶縁部材94の本体部940との間には隙間が形成されている。雄側接続端子82は、第1絶縁部材94の第2平面940cに接触し、雄側接続端子82と第2絶縁部材95の本体部950との間には隙間が形成されている。また、雄側接続端子83は、第2絶縁部材95の第2平面950cに接触し、雄側接続端子83と第3絶縁部材96の本体部960との間には隙間が形成されている。
【0046】
雄側ハウジング90と雌側ハウジング20とが嵌合されると、図3に示すように、雄側接続端子81と第1絶縁部材94の本体部940との間に雌側接続端子41の接触部41bが、雄側接続端子82と第2絶縁部材95の本体部950との間に雌側接続端子42の接触部42bが、雄側接続端子83と第3絶縁部材96の本体部960との間に雌側接続端子43の接触部43bが、それぞれ介挿される。そして、受け部材93、雄側接続端子81、雌側接続端子41の接触部41b、第1絶縁部材94の本体部940、雄側接続端子82、雌側接続端子42の接触部42b、第2絶縁部材95の本体部950、雄側接続端子83、雌側接続端子43の接触部43b、及び第3絶縁部材96の本体部960が、この順序で積み重なった積層構造となる。
【0047】
第1〜第3絶縁部材94〜96の筒部941,951,961は、本体部940,950,960から積層方向に沿って、押圧部材7の頭部7a側に向かって突出している。また、雄側接続端子81〜83の挿通孔81a,82a,83aは、雄側接続端子81〜83を積層方向に貫通し、挿通孔81a,82a,83aに筒部941,951,961を挿通させて雄側ハウジング90に保持されている。
【0048】
押圧部材7のネジ部7cは、雄側ハウジング90と雌側ハウジング20とを嵌合する際には、図4に示すように、締め付けの余地を残した緩んだ状態で雌ネジ91dに螺合している。そして、押圧部材7は、雄側ハウジング90と雌側ハウジング20との嵌合後、雌側ハウジング20の開口20bを介して挿入されるドライバ等の工具によって雄側ハウジング90に対して回されることにより、ネジ部7cが雌ネジ91dにより深く螺合し、頭部7aが受け部材93側に移動してコイルバネ71を圧縮する。受け部材93は、コイルバネ71の弾性力(復元力)を受け、積層構造となった雄側接続端子81〜83、雌側接続端子41〜43、及び第1〜第3絶縁部材94〜96を積層方向に押圧する。
【0049】
このように、押圧部材7は、雄側ハウジング90と雌側ハウジング20との嵌合により積層構造となる雄側接続端子81〜83、雌側接続端子41〜43、及び第1〜第3絶縁部材94〜96をこれらの積層方向に押圧する押圧力を発生させ、この押圧力を頭部7aから出力する。頭部7aは、コイルバネ71、座金931、及び受け部材93を介して雄側接続端子81〜83、雌側接続端子41〜43、及び第1〜第3絶縁部材94〜96を押圧し、雄側接続端子81〜83と雌側接続端子41〜43とを各接点で電気的に接続する。
【0050】
雄側接続端子81と押圧部材7の軸部7bとの短絡は、雄側接続端子81の挿通孔81aに挿通された第1絶縁部材94の筒部941によって防止されている。雄側接続端子82と押圧部材7の軸部7bとの短絡は、雄側接続端子82の挿通孔82aに挿通された第2絶縁部材95の筒部951によって防止されている。また、雄側接続端子83と押圧部材7の軸部7bとの短絡は、雄側接続端子83の挿通孔83aに挿通された第3絶縁部材96の筒部961によって防止されている。
【0051】
雌側接続端子41〜43についても同様に、第1絶縁部材94の筒部941、第2絶縁部材95の筒部951、及び第3絶縁部材96の筒部961によって、押圧部材7の軸部7bとの短絡が防止されている。
【0052】
また、雄側接続端子81及び雌側接続端子41と、雄側接続端子82及び雌側接続端子42との間の短絡は、第1絶縁部材94の本体部940によって防止されている。雄側接続端子82及び雌側接続端子42と、雄側接続端子83及び雌側接続端子43との間の短絡は、第2絶縁部材95の本体部950によって防止されている。
【0053】
(本実施の形態の作用及び効果)
以上説明した本実施の形態によれば、以下のような効果が得られる。
【0054】
(1)雄側接続端子81〜83と押圧部材7の軸部7bとの間に第1〜第3絶縁部材94,95,96の筒部941,951,961が介在するので、軸部7bを例えば絶縁性樹脂によってコーティングするような絶縁加工を施すことなく、押圧部材7の軸部7bを介した雄側接続端子81〜83間の短絡や漏電を防止することができる。つまり、軸部7bを絶縁性樹脂によってコーティングするような場合、製造工程において、コーティングするという別の工程が発生するが、本発明の場合、第1〜第3絶縁部材94,95,96の成型の際、一緒に、筒部941,951,961も成型できるため、非常に製造がし易い。また、筒部941,951,961は、本体部940,950,960から積層方向に突出しているので、第1〜第3絶縁部材94〜96同士の隙間を形成する際にも、利用できる。
【0055】
(2)受け部材93及び第1〜第3絶縁部材94,95,96は、筒部941,951,961によって相互に連結されるので、第1〜第3絶縁部材94,95,96を雄側ハウジング90内に保持する保持構造を簡略化することが可能となる。
【0056】
(3)押圧部材7及び雄側ハウジング90のアウタハウジング91を金属によって構成したので、例えばこれらの部材を樹脂から構成した場合に比較して、強度及び耐久性を高めることができる。
【0057】
(4)押圧部材7は、ネジ部7cがインナハウジング92の雌ネジ91dに螺合することで軸方向移動し、軸部7bを介してネジ部7cと一体に形成された頭部7aが押圧力を出力するので、簡素な構成で押圧力を発生する機構を構成することができる。また、軸部7bによって雄側接続端子81〜83の位置のずれを抑制することも可能となる。
【0058】
(5)第1及び第2絶縁部材94,95に形成された貫通孔94a,95aは、筒部側の小径部94a,95aと、本体部側の大径部94a,95aとを有し、その大径部94a,95aに、積層方向に隣り合う他の第2又は第3絶縁部材95,96の筒部951,961を収容している。このように構成することにより、本体部940,950,960から積層方向に突出する筒部941,951,961の高さをより大きくすることができる。これにより、押圧部材7の軸部7bに対して、直交方向に交わるように配置される各絶縁部材(第1及び第2絶縁部材94,95)が傾き難くなり(図4参照)、その結果、押圧部材7による押圧において、積層方向に、各絶縁部材(第1及び第2絶縁部材94,95)がスムーズに移動でき、適切に、押圧部材7による押圧が完了することができる。
【0059】
以上、本発明の各実施の形態を説明したが、上記に記載した各実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、各実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0060】
また、本発明は、上記実施の形態に記載した構成に限らず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、雄側接続端子及び雌側接続端子の数がそれぞれ3である場合について説明したが、これに限らず、2又は4以上であってもよい。また、コネクタ装置の用途にも制限はない。
【符号の説明】
【0061】
1…コネクタ装置、2…雌側コネクタ、2a…ロック機構、3a…中心導体、3b…シース、7…押圧部材、7a…頭部、7b…軸部、7c…ネジ部、9…雄側コネクタ、20…雌側ハウジング(第2ハウジング)、20a…収容凹部、20b…開口、20c…保持部、21…シール部材、31,32,33…電線、41〜43…雌側接続端子(第2接続端子)、41a,42a,43a…かしめ部、41b,42b,43b…接触部、42c…傾斜部、43…雌側接続端子、71…コイルバネ、72…シール部材、81〜83…雄側接続端子(第1接続端子)、81a,82a,83a…挿通孔、90…雄側ハウジング(第1ハウジング)、91…アウタハウジング、91a…保持孔、91b…先端部、91c…凸部、91d…雌ネジ、92…インナハウジング、93…受け部材、93a…凹溝、94,95,96…第1〜第3絶縁部材、94a,95a,96a…貫通孔、94a,95a,96a…小径部、94a,95a,96a…大径部、911…シール部材、931…座金、940,950,960…本体部、940a,950a,960a…内周面、940b,950b,960b…第1平面、940c,950c,960c…第2平面、941,951,961…筒部、941a,951a,961a…内周面、941b,951b,961b…外周面、942,952…突起部、942a,952a…テーパ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1接続端子と、
複数の絶縁部材と、
前記複数の第1接続端子及び前記複数の絶縁部材を保持する第1ハウジングと、
前記複数の第1接続端子にそれぞれ電気的に接続される複数の第2接続端子と、
前記複数の第2接続端子を保持する第2ハウジングと、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの嵌合により積層構造となる前記複数の第1接続端子、前記複数の第2接続端子、及び前記複数の絶縁部材をこれらの積層方向に押圧する押圧力を発生させる押圧部材とを備え、
前記押圧部材は、前記複数の第1接続端子及び前記複数の絶縁部材を前記積層方向に貫く導電性金属からなる軸部と、前記軸部の一端に形成され、前記押圧力を出力する頭部とを有し、
前記複数の絶縁部材は、前記複数の第1接続端子の間に介在する本体部と、前記本体部から前記積層方向に突出する筒部とを有し、
前記複数の第1接続端子は、前記積層方向に形成された挿通孔に前記筒部を挿通させて前記第1ハウジング内に保持され、
前記押圧部材は、前記軸部が前記複数の絶縁部材の前記本体部及び前記筒部に形成された貫通孔に挿入され、
前記絶縁部材の前記筒部によって前記複数の第1接続端子と前記押圧部材の前記軸部とが絶縁されている
コネクタ装置。
【請求項2】
前記複数の絶縁部材に形成された前記貫通孔は、前記筒部側の小径部と、前記本体部側の大径部とを有し、
前記複数の絶縁部材のうち少なくとも1つの絶縁部材は、その前記大径部に、前記積層方向に隣り合う他の絶縁部材の前記筒部を収容している、
請求項1に記載のコネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−97972(P2013−97972A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238826(P2011−238826)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】