説明

コネクタ

【課題】 同軸線路方向と垂直方向の軸ズレを防止し、高周波特性が改善されたコネクタを提供すること。
【解決手段】 コネクタ10は、第1コンタクト1及び第2コンタクト2と、前記第1及び第2コンタクト1,2を夫々保持する第1及び第2ハウジング4,5と、これらを覆う第1及び第2外郭部材7,9とを有する。前記第1コンククト1は前記第2コンタクト2に対し予め定められた方向へ移動自在に構成される。 前記第1外郭部材は前記第1ハウジング4を保持し、前記第2外郭部材9は前記第2ハウジング5を保持する。前記第1外郭部材7は前記第2外郭部材9に対し、予め定められた方向へ移動自在に構成される。前記コネクタ10が相手側コネクタと接続する際、前記第1コンタクト1及び前記第1外郭部材7のそれぞれは接続方向と交差する方向に移動可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローティング構造を備えたコネクタに関し、詳しくは、基板と基板(もしくはパネル等)の接続に使用される同軸コネクタに利用され同軸線路とは垂直方向に対する組立相対誤差をコネクタのみで許容できる同軸コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、同軸ケーブル等を電子機器に接続するための中心導体とその周囲にシールド等の外部導体を備えた同軸コネクタでは、コネクタの相互嵌合時における嵌合ギャップ(嵌合の浮き)が存在すると、特性インピーダンスが乱れて高周波特性を維持することができなくなる。これを防止する対策としては、次の二つが提案されている。
【0003】
まず、特許文献1では、コネクタの外部にコイルバネ、スライド片等でフローティング構造を設けたフローティングコネクタとし、コイルバネもしくはガタの変動内であれば嵌合ギャップは生じないようにする。ただし、双方のコネクタ、即ち、プラグ、ジャック等が基板などに固定されている場合、フローティング構造を設けることができない。
【0004】
一方、特許文献2に開示されたパネル取付型同軸コネクタでは、中心導体にバネを介し、電気的接続を取る構造を有している。しかしながら、スプリングやバネを介して電気接続することは、電気的にインダクタンス成分を増加させてしまい、高周波を遮断してしまう性質がある。
【0005】
【特許文献1】特開2000−277217号公報
【特許文献2】特開平8−335483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、同軸コネクタのプラグ・ジャックをパネルや基板等に取り付ける際に、組立相対誤差の関係で同軸線路方向と、この同軸線路方向と直交する垂直の方向(パネル平面方向)のどちらかに軸ズレが生じ、高周波特性が劣化してしまうという欠点があった。
【0007】
そこで、本発明の技術的課題は、同軸線路方向と垂直方向の軸ズレがあっても良好な高周波特性が得られるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、コネクタにおいて、前記コネクタは、コンタクトと、前記コンタクトを保持するハウジングと、これらを覆う外郭部材とを有し、前記コンタクトは第1コンタクトと第2コンタクトとからなり、前記第1コンククトは前記第2コンタクトに対し、予め定められた方向へ移動自在に構成され、前記ハウジングは前記第1コンタクトを保持する第1ハウジングと前記第2コンククトを保持する第2ハウジングとからなり、前記外郭部材は前記第1ハウジングを保持する第1外郭部材と前記第2ハウジングを保持する第2外郭部材とからなり、前記第1外郭部材は前記第2外郭部材に対し所定の方向へ移動自在に構成され、前記コネクタが相手側コネクタと接続する際、前記第1コンタクト及び前記第1外郭部材のそれぞれは接続方向と交差する方向に移動可能に構成されていることを特徴とするコネクタが得られる。
【0009】
また、本発明によれば、前記コネクタにおいて、前記第1コンタクト及び前記第2コンタクトの接触は面接触又は点接触であることを特徴とするコネクタが得られる。
【0010】
さらに、本発明によれば、前記いずれかに記載のコネクタにおいて、前記第1外郭部材は前記相手側コネクタとの嵌合をガイドする機構を有することを特徴とするコネクタが得られる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、同軸線路方向と垂直方向の軸ズレを防止し、高周波特性が改善されたコネクタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は本発明の第1の実施の形態によるレセプタクルコネクタを示す断面図である。図2は図1のレセプタクルコネクタのフローティング状態を示す図である。
【0014】
図1及び図2を参照すると、同軸コネクタであるレセプタクルコネクタ10は、中心部の第1コンタクト1と接点3を介して軸方向に接触した第2コンタクト2と、第1コンタクトの周囲に配置された第1ハウジング4と、第2コンタクトの周囲に配置された第2ハウジング5と、第1コンタクト1及び第1ハウジング4とを嵌合した状態で収容する第1外郭部材7と、第1外郭部材7の先端に設けられたガイド部材6と、第1外郭部材7の周囲に配置された導電性材料、例えば、金属からなるコイルバネ8と、これらの部材の端面及び周囲を覆う導電性材料からなる第2外郭部材9とを備えている。第2外郭部材9は、第2ハウジング5の周囲を覆うとともに第1外郭部材7の一端側に設けられた端部外郭部材11と外周面を覆う金属製の外周外郭部材12とを備えている。
【0015】
第1コンタクト1は、円筒形状の金属からなり、バネ性を得るために長さ方向に切込み1aを有する円筒部1cと、円筒部1cよりも径の大きな円板状の接点部1bとを有している。
【0016】
第1コンタクト1の円筒部1cの接点部1b付近の周囲に絶縁材料からなるリング状の第1ハウジング4が設けられ、この第1ハウジング4は、接点部1bによって左方向の抜けが防止されている。
【0017】
第1外郭部材7は径の大きなフランジ部7aと、これよりも径の小さな円筒状の中径部7cと、中径部7cよりも径が細くかつ先端部が次第に細くなるようにテーパ状に形成された小径部7bとを有している。小径部7bの先端には、切り込み6aを備えた円筒状金属からなるガイド部6が形成されている。中径部7cの内側には、孔径が細くなる段部が形成され、第1ハウジング4の右方向の移動を防止している。フランジ部7aの開口側は、径が大きくなる座部7eが形成されている。この座部7eには、後に説明する端部外郭部材11の一端の突出部11dが挿入される。
【0018】
ここで、第1コンタクト1、第1ハウジング4、ガイド部6、及び第1外郭部材7とを備えた組立体を内部アッセンブリと呼び、符号16で示す。この内部アッセンブリ16は、第1コンタクト1を中心導体、第1外郭部材7を外部導体とする同軸構造を有する。
【0019】
外周外郭部材12は、バネル20に取り付け、固定するためのフランジ部12aと、フランジ部12aから円筒状に突出し、開口部12e付近で次第に内径が大きくなるように形成された嵌合部12bと、フランジ部12aの開口部12e側と反対側の部分に連続した円筒状の円筒部12cとを備えている。
【0020】
嵌合部12bの内径よりも、円筒部12cの内径の方が広く形成され、それぞれの内部の孔部は、段部12dを形成して接続されている。
【0021】
フランジ部12aの段部12dと第1外郭部材7のフランジ部7aとの間の第1外郭部材7の中径部7cとこれに続く小径部7bの一部の周囲には、コイルバネ8が設けられている。このコイルバネ8は、第1コンタクト1と第2コンタクト2とが接触するように、内部アッセンブリ16を図1では、左方向に付勢するとともに、内部アッセンブリ16をフローティングさせ、更に、第1外郭部材7と第2外郭部材9の外周外郭部材12との間を導通させる役割もなす。
【0022】
第2コンタクト2は一端に径の大きな円柱状の頭部2aとこれよりも径の小さな端子部2bを備え、この頭部2aの端面と端子部2bの先端を露出するように、周囲を第2ハウジング5によって覆われている。第2ハウジング5は、第2コンタクト2の頭部2a側を覆う大径部5aと、第2コンタクト2の端子部2bの先端を露出させて大径部5aよりも小さな径の小径部5bとを備えている。
【0023】
第2外郭部材9の端部外郭部材11は中心部に第2ハウジング5の外形に対応するように大きな径の孔部11aと段部11cを介して設けられた孔部よりも小さな径の孔部11bが設けられている。大きな径の孔部11aの周囲には、ボス部11dが軸方向外側に突出して設けられている。端部外郭部材11に第2コンタクト2が埋設された第2ハウジング5が、第2ハウジング5の大径部5aの端部周囲にボス部11dが位置しそれぞれの軸方向端部が同一面となるように嵌合されている。このボス部11dは、第1外郭部材7のフランジ部7aの端面の座部7eに、内周面とボス部11dの周面が隙間をもってフランジ部7a内部を径方向に移動自在となるように嵌合される。
【0024】
外周外郭部材12の円筒部12cは、取付け用のパネル20の孔部20aに、挿入されて、パネル20に当接するフランジ部12aによって、例えば、図示しないネジ等によって固着される。
【0025】
また、表面等に導体パターンが形成された絶縁性の基板30に、円筒部12cの先端の固定部12fと、第2コンタクト2の小径部2bを端子として、基板30に、端部外郭部材11の端部が当接するとともに、この基板30に設けられた貫通孔に挿入されて、図示しない半田付等によって導体パターンに接続され、固定されている。
【0026】
ここで、第1コンタクト1を有する第1ハウジング4は、第2コンタクト2を有する第2ハウジング5に対して相対的に軸方向、もしくは軸方向に垂直な方向に移動可能(フローティング)に形成されている。
【0027】
図1に示すように内部アッセンブリ16が中心位置にあるときから、内部アセンブリ16が、矢印22で示される同軸線路方向であるか、または、矢印21で示されるように同軸線路方向に対して垂直方向に移動しているときの状態をフローティング状態と呼ぶ。ここで、図2に示される場合において、同軸線路に対して垂直方向にフローティング量Lを持って移動した状態を示している。
【0028】
図3(a)は図1及び図2のレセプタクルコネクタを示す半断面図で、図3(b)は図3(a)のB部分の拡大部分断面図で、図3(c)は図3(b)のC部分を更に拡大した部分拡大断面図である。
【0029】
図3(b)に示すように、図1及び図2の例においては、フローティング状態において、第1外郭部材7のフランジ部と第2外郭部材9との電気接続は、コイルバネの接触等を介して行われている。図3(b)に示す例では、更に、接触を確実にするために、フランジ部7aに溝7fを設け、この溝7fに導電性ゴムからなるリング15を設けることによって、第1外郭部材7と第2外郭部材9との導通を強化することができる。
【0030】
図3(c)に示すように、第1コンタクト1の大径部1bの端面に先端の尖ったピンポイントが接点3として形成されている(ピンポイント接点)。この接点3と第2コンタクト2の大径部2aの端面との接触力は、コイルバネ8によって調節されている。このために、第1コンタクト1と第2コンタクト2の軸方向及び軸方向に交差する方向のフローティングが可能となっている。
【0031】
図4は、図3(c)の接点の種々の例を示す側面図である。
【0032】
図4(a)はピンポイント接点3を示している。図4(b)に示すように、第1コンタクト1と第2コンタクト2との接点は、円錐状のピンポイント接点3aとしても良く、図4(c)に示すように、ドーム型の接点3bとしても良い。
【0033】
また、図4(d)に示すように、接点は、頭部2aと大径部1bの端面の面接触でも良い。
【0034】
さらに、図4(e)に示すように、第2コンタクト2の頭部2a側に台形状の突出部3dを形成し、第1コンタクト1の大径部1bの端部にこれを収容し、突出部より大きい窪み部3cを形成しても良い。
【0035】
図5、図6及び図7は、図1及び図2に示したコネクタの嵌合動作の説明に供せられる断面図である。
【0036】
図5を参照すると、本発明の実施の形態によるレセプタクルコネクタ10とプラグコネクタ50との嵌合前の状態を示している。プラグコネクタ50には、同軸ケーブル60が挿入され、同軸ケーブル60の外部導体は、同軸線路の外部導体である外側の外郭部材53に接続され、同軸ケーブル60の中心導体は、同軸線路の中心導体である中心部のピンコンタクト51に接続されており、例えば、図5に示すように、プラグコネクタ50は同軸線路と直交する垂直方向にずれて固定されている構造を備えている。図5の位置において、レセプタクルコネクタ10とプラグコネクタ50とは、その中心部において、軸方向のズレlがある。
【0037】
図6に示すように、レセプタクルコネクタ10とプラグコネクタ50とを、軸方向に嵌合させると、レセプタクルコネクタ10の第2外郭部材9の外周外郭部材12の内径よりも、プラグコネクタ50の外郭部材53の外径の方が小さいために、第1外郭部材7の先端部のガイド部6と外郭部材53の内径とが嵌合し、レセプタクルコネクタ10の中心部の内部アッセンブリ16を嵌合方向(軸方向)と交差する方向である上方へ押し上げる。ここで、第1外郭部材7の小径部7bの外周面とプラグコネクタ50の外郭部材53の内周面54とが摺接して、内周面54は、フローティング量Lを保ったままで、レセプタクルコネクタ10の第1外郭部材7とプラグコネクタ50の外郭部材53とが嵌合する。
【0038】
このように、プラグコネクタ50をレセプタクルコネクタ10の開口部12eへ挿入する際、プラグコネクタ50に対して、レセプタクルコネクタ10の内部アッセンブリ16の軸ズレlを補正する機構を第1外郭部材7の小径部7bの外周面とプラグコネクタ50の外郭部材53の内周面54とがなしている。
【0039】
図7に示すように、さらに、レセプタクルコネクタ10とプラグコネクタ50との嵌合を進めると、レセプタクルコネクタ10の第1コンタクト1の円筒部1cとピンコンタクト51とが嵌合し、嵌合終了状態となる。ここにおいて、プラグコネクタ50とレセプタクルコネクタ10の嵌合が終わると、軸ズレ分だけ内部アッセンブリ16がレセプタクルコネクタ10に対して同軸線路方向とは垂直の方向に、フローティング量Lをもって移動しているが、この際も、第2外郭部材と外郭部材、中心導体である第1コンタクトとピンコンタクト51との電気的接続は維持させることができる。
【0040】
なお、フローティング量L(軸ズレl補正にともなう移動量)は小さいほど、高周波特性は良好である。
【0041】
以上説明したように、本発明のコネクタによれば、基板等に固定されたコネクタ端子を動かすことなく、同軸線路方向と直交する垂直の方向に対する相対誤差を吸収することが可能である。
【0042】
また、本発明によれば、従来例の如くコイルは不要であることから高周波を通過させることが可能である。
【0043】
また、本発明によれば、基板と基板(もしくはパネル等)の接続に使用される同軸コネクタに利用され同軸線路とは垂直方向に対する組立相対誤差をコネクタのみで許容できるものである。
【0044】
また、本発明によれば、プラグコネクタ50と嵌合する際にレセプタクルコネクタ10の内部アッセンブリ16の軸ズレ1を補正できる構造を同軸コネクタ開口部に持たせ、内部アッセンブリ16の第1外郭部材7はレセプククルコネクタの第2外郭部材12に、第1コンタクト1は第2コンタクトに各々電気的につながっており、コイルバネ8によって中心導体同士に接触力をもたせることで、軸ズレ補正の際にレセプタクルコンタクトの中心導体である第2コンタクト2と内部アッセンブリ16の中心導体である第1コンタクト1は、軸ズレlを起こすにもかかわらず良好な電気的な接続を維持することが可能である。
【0045】
さらに、本発明によれば、基板30等に固定されたコネクタ端子2b、固定部12fを動かすことなく、同軸線路方向と、同軸線路方向に直交する垂直の方向の両方向に対する相対誤差を吸収することが可能である。
【0046】
次に、本発明の第2の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0047】
図8は本発明の第2の実施の形態によるレセプタクルコネクタ及びプラグコネクタを示す断面図である。図9は図1のレセプタクルコネクタの外部導体接触バネの概観を示す斜視図である。
【0048】
図8及び図9を参照すると、本発明の第2の実施の形態による同軸コネクタであるレセプタクルコネクタ100は、第1の実施の形態によるものとは、図9の外部導体接触バネ70を備えている点、及びパネル20に取り付けられていない点で異なっている。すなわち、レセプタクルコネクタ100は、中心部の第1コンタクト1と接点3を介して軸方向に接触した第2コンタクト2と、第1コンタクトの周囲に配置された第1ハウジング4と、第2コンタクトの周囲に配置された第2ハウジング5と、第1コンタクト1及び第1ハウジング4とを嵌合した状態で収容する第1外郭部材7と、第1外郭部材7の先端に設けられたガイド部材6と、第1外郭部材7の周囲に配置された導電性材料、例えば、金属からなるコイルバネ8と、これらの部材の端面及び周囲を覆う導電性材料からなる第2外郭部材9とを備えている。第2外郭部材9は、第2ハウジング5の周囲を覆うとともに第1外郭部材7の一端側に設けられた端部外郭部材11と外周面を覆う金属製の外周外郭部材12とを備えている。
【0049】
第1コンタクト1は、円筒形状の金属からなり、バネ性を得るために長さ方向に切込み1aを有する円筒部1cと、円筒部1cよりも径の大きな円板状の接点部1bとを有している。
【0050】
第1コンタクト1の円筒部1cの接点部1b付近の周囲に絶縁材料からなるリング状の第1ハウジング4が設けられ、この第1ハウジング4は、接点部1bによって左方向、即ち、軸方向の抜けが防止されている。
【0051】
第1外郭部材7は径の大きなフランジ部7aと、これよりも径の小さな円筒状の中径部7cと、中径部7cよりも径が小さい小径部7bとを有している。小径部7bの先端には、先端に移動するにつれて次第に細くなるテーパ状のガイド部6が形成されている。中径部7cの内側で小径部7b寄りには、孔径が細くなる段部が形成され、第1ハウジング4の右方向の移動を防止している。小径部7bの内側がやや細く絞られた形状を輸している。フランジ部7aの開口側には、端部外郭部材11の一端の突出部11dが挿入される。
【0052】
ここで、第1コンタクト1、第1ハウジング4、ガイド部6、及び第1外郭部材7とを備えた組立体を内部アッセンブリと呼び、符号16で示す。この内部アッセンブリ16は、第1コンタクト1を中心導体、第1外郭部材7を外部導体とする同軸構造を有する。
【0053】
外周外郭部材12は、テーパ部12jと、このテーパ部12jから円筒状に突出し開口部12e付近で次第に内径が大きくなるように形成された嵌合部12bと、テーパ部12jの開口部12e側と反対側の部分に連続した円筒状の円筒部12cとを備え、円筒部の一端には、フランジ部12iが形成されている。さらに、内側には、テーパ部12jの内側から延びる内円筒部12gを備え、内円筒部12gと円筒部12cとの間にコイルバネ8を収容するリング状の空間(溝)12hを形成している。
【0054】
第1外郭部材7のフランジ部7a及び中径部7cから溝12h内にかけて、コイルバネ8が設けられている。このコイルバネ8は、第1コンタクト1と第2コンタクト2とが接触するように、内部アッセンブリ16を図1では、左方向に付勢するとともに、内部アッセンブリ16をフローティングさせ、更に、第1外郭部材7と第2外郭部材9の外周外郭部材12との間を導通させる役割もなす。
【0055】
第2コンタクト2は一端に径の大きな円柱状の頭部2aとこれよりも径の小さな端子部2bを備え、この頭部2aの端面と端子部2bの先端を露出するように、周囲を第2ハウジング5によって覆われている。第2ハウジング5は、第2コンタクト2の頭部2a側を覆う大径部5aと、第2コンタクト2の端子部2bの先端を露出させて大径部5aよりも小さな径の小径部5bとを備えている。
【0056】
第2外郭部材9の端部外郭部材11は中心部に第2ハウジング5の外形に対応するように大きな径の孔部11aと段部11cを介して設けられた孔部よりも小さな径の孔部11bが設けられている。大きな径の孔部11aの周囲には、ボス部11dが軸方向外側に突出して設けられている。ボス部11dの周囲には、リング状の溝11eが形成され、この溝11eの内部には、外部導体接触バネ70が挿入されている。
【0057】
図9に示すように、外部導体接触バネ70は、中央に円形の穴71を備えた略六角形状の平面部72と平面部の各辺から斜め外方に延び、先端でくの字形状に折れ曲がった接触片73とを有している。図9で示された平面部72の一面が第1外郭部材7に接触するように、溝11e内に装着されている。
【0058】
端部外郭部材11に第2コンタクト2が埋設された第2ハウジング5が位置し、第2ハウジング5の大径部5aの端部周囲にボス部11dが位置し、それぞれの軸方向端部が同一面となるように嵌合される。
【0059】
また、図1の例と同様の表面等に導体パターンが形成された絶縁性の基板30に、第2コンタクト2の小径部2bを端子として、基板30に、端部外郭部材11の端部が当接するとともに、この基板30に設けられた貫通孔に挿入されて、図示しない半田付等によって導体パターンに接続され、固定されている。
【0060】
ここで、第1コンタクト1を有する第1ハウジング4は、第2コンタクト2を有する第2ハウジング5に対して相対的に軸方向、もしくは軸方向に垂直な方向に移動可能(フローティング)に形成されている。
【0061】
図10、図11、図12及び図13は、図8に示したコネクタの嵌合動作の説明に供せられる断面図である。
【0062】
図10を参照すると、図8の状態から、ずれがなくレセプタクルコネクタ100とプラグコネクタ50が嵌合される状態が示されている。プラグコネクタ50には、同軸ケーブル60が挿入され、同軸ケーブル60の外部導体は、外部導体バネ55を備えた同軸線路の外部導体である内側の外郭部材56を介して外側の外郭部材53に接続され、同軸ケーブル60の中心導体は、同軸線路の中心導体である中心部のピンコンタクト51に接続されており、例えば、図10に示すように、プラグコネクタ50は同軸線路と直交する垂直方向にずれて固定されている構造を備えている。図10の位置において、レセプタクルコネクタ100とプラグコネクタ50とは、その中心部において、軸方向に若干のズレがある。
【0063】
図10に示すように、レセプタクルコネクタ100とプラグコネクタ50とを、軸方向に嵌合させると、レセプタクルコネクタ100の第2外郭部材9の外周外郭部材12の内径よりも、プラグコネクタ50の外郭部材53の外径の方が小さいために、第1外郭部材7の先端部のガイド部6と外郭部材53の内径とが嵌合し、レセプタクルコネクタ10の中心部の内部アッセンブリ16と嵌合する。ここで、第1外郭部材7の小径部7bの外周面とプラグコネクタ50の外郭部材53の内周面54とが摺接して、内周面54は、これによってガイドされてレセプタクルコネクタ10の第1外郭部材7とプラグコネクタ50の外郭部材53とが嵌合する。
【0064】
その際に、プラグコネクタ50をレセプタクルコネクタ100の開口部12eへ挿入する際、プラグコネクタ50に対して、レセプタクルコネクタ100の内部アッセンブリ16の軸ズレを補正する機構を第1外郭部材7の小径部7bの外周面とプラグコネクタ50の外郭部材53の内周面54とがなしている。
【0065】
図11に示すように、レセプタクルコネクタ100とプラグコネクタ50との嵌合を進めると、レセプタクルコネクタ100の第1コンタクト1の円筒部1cとピンコンタクト51とが嵌合する。
【0066】
図12に示すように、さらに嵌め合いを進めると、プラグコンタクト50の外部導体バネ55と、第1外郭部材7の内周面7fとが接触する。
【0067】
図13に示すようにさらに嵌合を進めると、嵌合終了状態となる。
【0068】
次に、レセプタクルコネクタ100とプラグコネクタ50とが、嵌合方向と垂直方向にズレがある場合について説明する。
【0069】
図14、図15、図16、図17、図18及び図19は、図8に示したコネクタの嵌合動作の説明に供せられる断面図である。
【0070】
図14を参照すると、レセプタクルコネクタ100とプラグコネクタ50がずれ量l′だけずれて嵌合される状態が示されている。プラグコネクタ50には、同軸ケーブル60が挿入され、同軸ケーブル60の外部導体は、外部導体バネ55を備えた同軸線路の外部導体である内側の中心外郭部材56を介して外側の外郭部材53に接続され、同軸ケーブル60の中心導体は、同軸線路の中心導体である中心部のピンコンタクト51に接続されており、例えば、図14に示すように、プラグコネクタ50は同軸線路と直交する垂直方向にずれて固定されている構造を備えている。図14の位置において、レセプタクルコネクタ100とプラグコネクタ50とは、その中心部において、軸方向に交差する方向にズレl′がある。
【0071】
図15に示すように、レセプタクルコネクタ100とプラグコネクタ50とを、軸方向に嵌合させると、レセプタクルコネクタ100の第2外郭部材9の外周外郭部材12の内径よりも、プラグコネクタ50の外郭部材53の外径の方が小さいために、第1外郭部材7の先端部のガイド部6と外郭部材53の内径とが嵌合し、レセプタクルコネクタ100の中心部の内部アッセンブリ16を嵌合方向(軸方向)と交差する方向である下方へ押し下げる。ここで、第1外郭部材7の小径部7bの外周面とプラグコネクタ50の外郭部材53の内周面54とが摺接して、内周面54は、フローティング量Lを保ったままで、レセプタクルコネクタ100の第1外郭部材7とプラグコネクタ50の外郭部材53とが嵌合する。
【0072】
図16に示すように、プラグコネクタ50をレセプタクルコネクタ100の開口部12eへ挿入する際、プラグコネクタ50に対して、レセプタクルコネクタ100の内部アッセンブリ16の軸ズレl′を補正する機構を第1外郭部材7の小径部7bの外周面とプラグコネクタ50の外郭部材53の内周面54とがなしている。
【0073】
図17に示すように、さらに嵌合を進めると、プラグコンタクト50の外部導体バネ55とレセプタクルコネクタ100の第1外郭部材7のガイド部6の内側とが接触する。
【0074】
図18に示すように、レセプタクルコネクタ100とプラグコネクタ50との嵌合をさらに、進めると、レセプタクルコネクタ100の第1コンタクト1の円筒部1cとプラグコネクタ50のピンコンタクト51とが嵌合する。その際に外部導体バネ55との第1外郭部材7内周面とが接触するとともに、アッセンブリ16はやや上方に押し戻された状態となる。
【0075】
図19に示すように、さらに、嵌合を進めると、アッセンブリ16は水平状態となり、嵌合終了状態となる。ここにおいて、プラグコネクタ50とレセプタクルコネクタ100の嵌合が終わると、軸ズレ分だけ内部アッセンブリ16がレセプタクルコネクタ10に対して同軸線路方向とは垂直の方向に、フローティング量L′をもって移動しているが、この際も、第2外郭部材9と外郭部材53、中心導体である第1コンタクトとピンコンタクト51との電気的接続は維持させることができる。
【0076】
なお、フローティング量L′(軸ズレl′補正にともなう移動量)は小さいほど、高周波特性は良好である。
【0077】
以上説明したように、本発明のコネクタによれば、基板等に固定されたコネクタ端子を動かすことなく、同軸線路方向と直交する垂直の方向に対する相対誤差を吸収することが可能である。
【0078】
また、本発明によれば、従来例の如くコイルは不要であることから高周波を通過させることが可能である。
【0079】
また、本発明によれば、基板と基板(もしくはパネル等)の接続に使用される同軸コネクタに利用され同軸線路とは垂直方向に対する組立相対誤差をコネクタのみで許容できるものである。
【0080】
また、本発明によれば、プラグコネクタ50と嵌合する際にレセプタクルコネクタ100の内部アッセンブリ16の軸ズレl′を補正できる構造を同軸コネクタ開口部に持たせ、内部アッセンブリ16の第1外郭部材7はレセプククルコネクタの第2外郭部材12に、第1コンタクト1は第2コンタクトに各々電気的につながっており、コイルバネ8によって中心導体同士に接触力をもたせることで、軸ズレl,l′補正の際にレセプタクルコンタクトの中心導体である第2コンタクト2と内部アッセンブリ16の中心導体である第1コンタクト1は、軸ズレlを起こすにもかかわらず良好な電気的な接続を維持することが可能である。
【0081】
さらに、本発明によれば、基板30等に固定されたコネクタ端子2b、固定部12fを動かすことなく、同軸線路方向と、同軸線路方向に直交する垂直の方向の両方向に対する相対誤差を吸収することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上の説明の通り、本発明によるコネクタは、電子機器、電気機器のパネルや基板に設けられる同軸コネクタに適用される。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施の形態によるレセプタクルコネクタを示す断面図である。
【図2】図1のレセプタクルコネクタのフローティング状態を示す図である。
【図3】(a)は図1及び図2のレセプタクルコネクタを示す半断面図ある。 (b)は図3(a)のB部分を示す拡大部分断面図である。 (c)は図3(b)のC部分を更に拡大した断面図である。
【図4】(a)乃至(e)は図3(c)の接点の種々の例を示す側面図である。
【図5】図1及び図2に示したコネクタの嵌合動作の説明に供せられる断面図で、嵌合前の状態を示している。
【図6】図1及び図2に示したコネクタの嵌合動作の説明に供せられる断面図で、嵌合時の状態を示している。
【図7】図1及び図2に示したコネクタの嵌合動作の説明に供せられる断面図で、嵌合後の状態を示している。
【図8】本発明の第2の実施の形態によるレセプタクルコネクタ及びプラグコネクタを示す断面図である。
【図9】図1のレセプタクルコネクタの外部導体接触バネの概観を示す斜視図である。
【図10】図8に示したコネクタの嵌合動作の説明に供せられる断面図である。
【図11】図8に示したコネクタの嵌合動作の説明に供せられる断面図である。
【図12】図8に示したコネクタの嵌合動作の説明に供せられる断面図である。
【図13】図8に示したコネクタの嵌合動作の説明に供せられる断面図である。
【図14】図8に示したコネクタの嵌合動作の説明に供せられる断面図である。
【図15】図8に示したコネクタの嵌合動作の説明に供せられる断面図である。
【図16】図8に示したコネクタの嵌合動作の説明に供せられる断面図である。
【図17】図8に示したコネクタの嵌合動作の説明に供せられる断面図である。
【図18】図8に示したコネクタの嵌合動作の説明に供せられる断面図である。
【図19】図8に示したコネクタの嵌合動作の説明に供せられる断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1 第1コンタクト
1a 切込み
1b 円筒部
1c 接点部
2 第2コンタクト
2a 頭部
2b 端子部
3 接点
3a ピンポイント接点
3b ドーム型接点
3c 窪み
3d 突出部
4 第1ハウジング
5 第2ハウジング
5a 大径部
5b 小径部
6 ガイド部
6a 切り込み
7 第1外郭部材
7a フランジ部
7b 小径部
7c 中径部
7d 段部
7e 座部
7f 溝
8 コイルバネ
9 第2外郭部材
10 レセプタクルコネクタ
11 端部外郭部材
11a,11b 孔部
11c 段部
11d ボス部
11e 溝
12 外周外郭部材
12a フランジ部
12b 開口部
12c 円筒部
12d 段部
12e 開口部
12f 固定部
12g 内円筒部
12h 空間(溝)
12i フランジ部
12j テーパ部
15 リング
16 内部アッセンブリ
20 パネル
20a 孔部
30 基板
50 プラグコネクタ
51 ピンコンタクト
53 外郭部材
54 内周面
55 外部導体バネ
56 中心外部導体
60 同軸ケーブル
70 外部導体接触バネ
71 穴
72 平面部
73 接触片
100 レセプタクルコネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタにおいて、前記コネクタは、コンタクトと、前記コンタクトを保持するハウジングと、これらを覆う外郭部材とを有し、
前記コンタクトは第1コンタクトと第2コンタクトとからなり、前記第1コンククトは前記第2コンタクトに対し予め定められた方向へ移動自在に構成され、
前記ハウジングは前記第1コンタクトを保持する第1ハウジングと前記第2コンククトを保持する第2ハウジングとからなり、
前記外郭部材は前記第1ハウジングを保持する第1外郭部材と前記第2ハウジングを保持する第2外郭部材とからなり、
前記第1外郭部材は前記第2外郭部材に対し、予め定められた方向へ移動自在に構成され、
前記コネクタが相手側コネクタと接続する際、前記第1コンタクト及び前記第1外郭部材のそれぞれは接続方向と交差する方向に移動可能に構成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタにおいて、前記第1コンタクト及び前記第2コンタクトの接触は面接触又は点接触であることを特徴とするコネクタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコネクタにおいて、前記第1外郭部材は前記相手側コネクタとの嵌合をガイドする機構を有することを特徴とするコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−288120(P2008−288120A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133763(P2007−133763)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】