説明

コネクタ

【課題】シール性能を低下させることなく、嵌合抵抗の低減を図る。
【解決手段】第1ハウジング10に取り付けたシール部材30は、両ハウジング10,20の嵌合方向に並び、両ハウジング10,20の嵌合状態では第2ハウジング20の第2シール面23に密着する複数のリップ部34F,34R,35を有する。シール部材30は、第1ハウジング10の嵌合方向における後端側のリップ部34F,34Rを含む本体部31と、嵌合方向における前端側のリップ部35を含み、第2シール面23に接近する方向への弾性変位を可能とされた可変部32とを備える。第2ハウジング20は、第1ハウジング10との嵌合過程における終期にのみ可変部32を押圧して第2シール面23側へ弾性変位させる押圧部24を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外周にシール部材が取り付けられた第1ハウジングと、内周面がシール面となっているフード部を有する第2ハウジングとを備え、両ハウジングを嵌合した状態では、シール部材に形成されているリップ部が、シール面に当接して潰されるように弾性変形し、その弾性復元力によりリップ部とシール面とが液密状に密着するようになっている防水タイプのコネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−344475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記コネクタにおいて両ハウジングを嵌合する過程では、シール部材とシール面との間に、リップ部の弾性変形に起因する摩擦抵抗が生じるが、この摩擦抵抗は嵌合動作に抗する嵌合抵抗となる。そして、この嵌合抵抗は、リップ部とシール面との接触面積が広いほど大きくなる。
【0005】
この点を勘案した場合、上記コネクタは、複数のリップ部が両ハウジングの嵌合方向に並ぶように形成されており、嵌合作業の途中から完了までの間、複数のリップ部の全てが、シール面に対して同じ強さで弾性接触する状態を維持するため、大きな嵌合抵抗が生じ続けることになり、作業性の点で問題がある。
【0006】
尚、嵌合抵抗を低減する手段としては、リップ部の数を減らしてリップ部とシール面との接触面積を小さくすることが考えられるが、リップ部の数を減らした場合、シール性能の低下が懸念される。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、シール性能を低下させることなく、嵌合抵抗の低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、周面に第1シール面が形成された第1ハウジングと、前記第1ハウジングと嵌合可能であり、前記第1シール面に対して径方向に対向可能な第2シール面が形成された第2ハウジングと、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの嵌合方向に並ぶ複数のリップ部を有し、前記複数のリップ部とは反対側の周面を前記第1シール面に密着させた状態で前記第1ハウジングに取り付けられ、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングが嵌合した状態では前記複数のリップ部が弾性変形して前記第2シール面に密着するようになっているシール部材とを備え、前記シール部材は、前記複数のリップ部のうち前記第2ハウジングに対する前記第1ハウジングの嵌合方向における後端側の前記リップ部を含む本体部と、前記複数のリップ部のうち前記第2ハウジングに対する前記第1ハウジングの嵌合方向における前端側の前記リップ部を含み、前記第2シール面に接近する方向への弾性変位を可能とされた可変部とを備え、前記第2ハウジングは、前記第1ハウジングとの嵌合過程における終期にのみ前記可変部を押圧して前記第2シール面側へ弾性変位させる押圧部を備えているところに特徴を有する。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記本体部の前記リップ部と前記可変部の前記リップ部が弾性変形していない状態では、前記第1シール面を基準とする前記可変部の前記リップ部の高さが、前記第1シール面を基準とする前記本体部の前記リップ部の高さよりも低く、前記本体部の前記リップ部が前記第2シール面に接触し、且つ前記押圧部が前記可変部と非接触の状態では、前記可変部の前記リップ部が前記第2シール面とは非接触となるところに特徴を有する。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記シール部材は、前記本体部と前記可変部とが直接的に連なった形態とされているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
<請求項1の発明>
両ハウジングの嵌合が完了した状態では、本体部と可変部の全てのリップ部が、第2シール面に対して弾性変形して密着するので、第2シール面とシール部材との接触面積が広く確保され、高いシール性能が得られる。
【0012】
また、両ハウジングの嵌合過程において嵌合終期に至る前までは、本体部のリップ部が第2シール面に当接して弾性変形するのに対し、可変部は、押圧部による押圧作用を受けないので、第2シール面側へ弾性変位しない。このことは、嵌合終期に至る前までは、可変部のリップ部が第2シール面とは非接触の状態となるか、若しくは、第2シール面との接触に起因する可変部のリップ部の弾性変形量が本体部のリップ部の弾性変形量よりも小さい状態となることを意味する。
【0013】
したがって、嵌合終期に至る前におけるシール部材と第2シール面との間の摩擦抵抗を比較した場合、本体部と可変部の全てのリップ部が同じ弾性変形量で第2シール面に接触するものに比べると、本発明は、リップ部と第2シール面との間の摩擦抵抗が低減されるので、シール部材と第2シール面との間の摩擦に起因する嵌合抵抗が低減される。
【0014】
<請求項2の発明>
第1シール面を基準とする可変部のリップ部の高さを本体部のリップ部よりも低くして、両ハウジングの嵌合終期に至る前までは、可変部のリップ部と第2シール面とが非接触となるようにしている。これにより、両ハウジングの嵌合終期に至る前までは、可変部のリップ部と第2シール面との間で摩擦抵抗が生じないので、嵌合抵抗が大幅に低減される。
【0015】
<請求項3の発明>
シール部材の本体部と可変部とが直接的に連なっているので、本体部のリップ部が、第2シール面との間の摩擦抵抗により可変部から離間するように弾性変形する。このとき、シール部材のうち第2シール面と対向する側の周面においては、本体部のリップ部の弾性変形が、可変部に対して引張力として作用し、引張力を受けた可変部は、第2シール面側へ接近するように弾性変位させられる。このように、可変部は、嵌合終期に至る前、即ち押圧部で押圧させる前に、第2シール面に接近するように予備変形を生じるので、嵌合終期には押圧部の押圧作用による可変部の変位動作が円滑に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態において第1ハウジングと第2ハウジングが嵌合した状態をあらわす断面図
【図2】第1ハウジングの断面図
【図3】第2ハウジングの断面図
【図4】第1ハウジングと第2ハウジングの嵌合途中であって、押圧部が可変部と非接触の状態をあらわす断面図
【図5】第1ハウジングと第2ハウジングの嵌合途中であって、押圧部が可変部に当接した状態をあらわす断面図
【図6】図1の部分拡大断面図
【図7】図4の部分拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図7を参照して説明する。本実施形態のコネクタは、第1ハウジング10と、第1ハウジング10と嵌合可能な第2ハウジング20と、第1ハウジング10に取り付けたリング状のシール部材30により両ハウジング10,20の嵌合部分を液密状にシールするようにした防水機能を有するものである。尚、各ハウジング10,20における前後方向については、各ハウジング10,20が相手側のハウジング20,10に嵌合する方向を前方とする。
【0018】
第1ハウジング10は、合成樹脂製であり、ブロック状の端子収容部11と、端子収容部11を包囲する筒状嵌合部12とを一体に形成したものである。筒状嵌合部12は、その後端部(図1における右側の端部)において端子収容部11の外周に連なっており、端子収容部11の外周と筒状嵌合部12の内周との間の環状の空間は、第1ハウジング10の前端面(図1における左側の端面)に開口する嵌合空間13となっている。端子収容部11内には、前端部に角筒部を有する周知形態の雌端子金具(図示省略)が、後方から挿入されている。
【0019】
端子収容部11の外周面には、嵌合空間13に臨む第1シール面14が形成されている。第1シール面14は、周方向に連続する滑らかな面であり、両ハウジング10,20の嵌合方向と平行な面である。端子収容部11の外周には、第1シール面14の後端から径方向(両ハウジング10,20の嵌合方向と直交す方向)外側へ突出した形態のストッパ15が全周に亘って形成されている。ストッパ15は、第1ハウジング10の前方に臨む面であり、シール部材30の後方への相対変位を規制する。
【0020】
第2ハウジング20は、合成樹脂製であり、端子保持部21と、端子保持部21の前面(図1における右側の面)から前方へ筒状に突出(延出)した形態のフード部22とを一体に形成したものである。図3に示すように、端子保持部21には、端子本体(図示省略)から前方へ細長いタブ25Fを突出させた周知形態の雄端子金具25が、その端子本体を端子保持部21内に収容した状態で保持されており、端子保持部21から前方へ突出したタブ25Fがフード部22によって包囲されている。
【0021】
フード部22の内周面には、全周に亘って第2シール面23が形成されている。第2シール面23は、周方向に連続する滑らかな面であり、両ハウジング10,20の嵌合方向と平行な面である。フード部22の内周には、前方(第1ハウジング10に対して第2ハウジング20が嵌合する方向)へ突出した形態の押圧部24が形成されている。押圧部24は、前後方向(両ハウジング10,20の嵌合方向と平行な方向)においては第2シール面23の後端部に位置している。また、押圧部24は、全周に亘って連続して形成されているとともに、径方向においては第2シール面23よりも内側に位置しており、径方向における第2シール面23と押圧部24との間の間隔は、全周に亘って一定である。押圧部24の前端面は、両ハウジング10,20の嵌合方向とほぼ直角な押圧面24Fとなっている。
【0022】
シール部材30は、ゴム製であり、本体部31と、本体部31の前端(第2ハウジング20に対する第1ハウジング10の嵌合方向における前方側の端部)に直接的に連なる可変部32とを一体に形成したものである。前後方向(両ハウジング10,20の嵌合方向と平行な方向)において、本体部31の寸法は可変部32に比べて大きい。したがって、シール部材30のうち後端側の大部分が本体部31となっており、シール部材30の前端部が可変部32となっている。
【0023】
本体部31の内周面には、周方向に沿ってリブ状に突出した形態の内周リップ部33が形成されている。また、本体部31の外周には、前後方向(両ハウジング10,20の嵌合方向と平行な方向)に間隔を空けた2つのメインリップ部34F,34R(本発明の構成要件である本体部31のリップ部)が形成されている。メインリップ部34F,34Rは、周方向に沿ってリブ状に突出した形態であり、全周に亘って連続している。この2つのメインリップ部34F,34Rは、本体部31の前端部(可変部32との境界位置)と、本体部31の前後方向における略中央位置とに配置されている。
【0024】
可変部32は、本体部31の前端から前方(第2ハウジング20に対する第1ハウジング10の嵌合方向における前方であって、第2シール面23と平行な方向)へリブ状に突出した形態であり、全周に亘って連続している。可変部32のうち、本体部31に連なる後端部を除いた大部分は、サブリップ部35(本発明の構成要件である可変部32のリップ部)となっている。
【0025】
かかるシール部材30は、前方から端子収容部11に外嵌され、本体部31の後端面をストッパ15に当接させた状態で取り付けられている。ストッパ15への当接により、シール部材30は、第1ハウジング10に対する後方への相対変位を規制され、前後方向において位置決めされている。シール部材30を第1ハウジング10に取り付けた状態では、シール部材30の内周面(メインリップ部34F,34Rが突出している側とは反対側の周面)の内周リップ部33が、径方向に潰れた状態で第1シール面14に対して液密状に密着されている。また、可変部32の内周面が、第1シール面14に対して殆ど弾性変形しない状態で全周に亘って当接している。
【0026】
シール部材30を第1ハウジング10に取り付けた状態では、可変部32は、その後端部を支点として第1シール面14から離間するように径方向外側(即ち、両ハウジング10,20が嵌合した状態において第2シール面23に接近する方向)に弾性変形(弾性変位)し得るようになっている。可変部32が弾性変形していない状態では、図2に示すように、第1シール面14を基準とする径方向におけるサブリップ部35の最大高さは、メインリップ部34F,34Rの最大高さよりも低い。また、シール部材30の外周面(両ハウジング10,20が嵌合した状態で第2シール面23と対向する側の周面)においては、前側のメインリップ部34Fの前面側の基端部と、サブリップ部35(可変部32)の後端部(基端部)とが、直接的に連なった状態となっている。
【0027】
次に、本実施形態の作用を説明する。両ハウジング10,20を嵌合する過程では、まず、フード部22の前端部が嵌合空間13内に進入し、第2シール面23の前端部が、前側のメインリップ部34Fに当接する。このとき、サブリップ部35(可変部32)と第2シール面23とは非接触の状態、即ち径方向に間隔を空けて対向する状態である。第2シール面23が前側のメインリップ部34Fに当接した状態から更に両ハウジング10,20の嵌合が進むと、前側のメインリップ部34Fが第2シール面23と第1シール面14との間で径方向に潰されるように弾性変形するので、前側のメインリップ部34Fと第2シール面23との間の摩擦に起因する嵌合抵抗が生じる。
【0028】
この状態から両ハウジング10,20の嵌合が更に進むと、図4及び図7に示すように、第2シール面23が後側のメインリップ部34Rにも当接し、この後側のメインリップ部34Rも、前側のメインリップ部34Fと同様に、径方向に潰されるように弾性変形する。したがって、これ以降の嵌合過程では、2つのメインリップ部34F,34Rと第2シール面23との間の摩擦に起因する嵌合抵抗が生じることになる。この2つのメインリップ部34F,34Rに起因する嵌合抵抗は、前側のメインリップ部34Fのみに起因する嵌合抵抗に比べると、第2シール面23との接触面積が広い分だけ大きい。
【0029】
また、前側のメインリップ部34Fは、第2シール面23に当接した後、図4及び図7に示すように、第2シール面23との摩擦により第1ハウジング10における後方へ引っ張られるように弾性変位する。これにより、この前側のメインリップ部34Fに直接的に連なっているサブリップ部35(可変部32)の外周部分が、このメインリップ部34Fにより後方へ引っ張られ、サブリップ部35は、全体として外周側(第2シール面23に接近する方向)へ変位するように弾性変形(予備変形)させられる。これにより、本体部31から前方に突出した向きとなっていた可変部32は、斜め前方外向きに突出方向を変えることになる。このとき、押圧部24と可変部32とは非接触であり、可変部32と第2シール面23も非接触である。
【0030】
この状態から、更に両ハウジング10,20の嵌合が進むと、図5に示すように、2つのメインリップ部34F,34Rとサブリップ部35が弾性変形したままで、押圧部24の押圧面24Fが可変部32(サブリップ部35)の前端に当接する。この状態から両ハウジング10,20の嵌合が更に進むと、押圧部24(押圧面24F)が可変部32を後方へ押して前後方向(両ハウジング10,20の嵌合方向)に潰すのであるが、このとき、可変部32は、前側のメインリップ部34Fに引っ張られて径方向外側(第2シール面23に接近する方向)へ向きを変えた状態に予備変形させられているので、押圧部24からの押圧力により径方向外側へ変位するように弾性変形する。これにより、サブリップ部35が、第2シール面23に対し弾性変形した状態で液密状に密着する。そして、サブリップ部35が第2シール面23に密着した直後に、図1に示すように、両ハウジング10,20の嵌合が完了する。
【0031】
このように、押圧部24による可変部32への押圧動作と、サブリップ部35(可変部32)が第2シール面23に密着する動作は、両ハウジング10,20の嵌合過程における終期にのみ行われる。そして、両ハウジング10,20の嵌合が完了した状態では、本体部31と可変部32の外周側に形成されている全てのリップ部34F,34R,35が、第2シール面23に対して弾性変形して密着するので、第2シール面23とシール部材30との接触面積が広く確保され、高いシール性能が得られる。
【0032】
本実施形態のコネクタは、シール部材30が、3つのリップ部34F,34R,35のうち第2ハウジング20に対する第1ハウジング10の嵌合方向における後端側のメインリップ部34F,34Rを含む本体部31と、3つのリップ部34F,34R,35のうち第2ハウジング20に対する第1ハウジング10の嵌合方向における前端側のサブリップ部35を含み、第2シール面23に接近する方向への弾性変位を可能とされた可変部32とを備えた構成となっており、第2ハウジング20は、第1ハウジング10との嵌合過程における終期にのみ可変部32を押圧して第2シール面23側へ弾性変位させる押圧部24を備えた構成となっている。
【0033】
この構成によれば、両ハウジング10,20の嵌合過程において嵌合終期に至る前までは、本体部31のメインリップ部34F,34Rが第2シール面23に当接して弾性変形するのに対し、可変部32は、押圧部24による押圧作用を受けないので、第2シール面23側へ弾性変位せず、嵌合終期に至る前までは、可変部32のサブリップ部35は第2シール面23とは非接触の状態を保つ。したがって、嵌合終期に至る前におけるシール部材と第2シール面23との間の摩擦抵抗を比較した場合、本体部と可変部の全てのリップ部が同じ弾性変形量で第2シール面に接触するものに比べると、本実施形態は、サブリップ部35が第2シール面23と非接触である分だけ、シール部材30と第2シール面23との間の摩擦抵抗が低減されるので、シール部材30と第2シール面23との間の摩擦に起因する嵌合抵抗が低減される。
【0034】
また、本体部31のメインリップ部34F,34Rと可変部32のサブリップ部35が弾性変形していない状態では、第1シール面14を基準とするサブリップ部35の高さが、第1シール面14を基準とするメインリップ部34F,34Rの高さよりも低く設定されており、メインリップ部34F,34Rが第2シール面23に接触し、且つ押圧部24が可変部32と非接触の状態では、サブリップ部35が第2シール面23とは非接触となる構成としている。
【0035】
このように、第1シール面14を基準とするサブリップ部35の高さをメインリップ部34F,34Rよりも低くして、両ハウジング10,20の嵌合終期に至る前までは、サブリップ部35と第2シール面23とが非接触となるようにしていることで、両ハウジング10,20の嵌合終期に至る前までは、可変部32のサブリップ部35と第2シール面23との間で摩擦抵抗が発生しないようになっているので、嵌合抵抗が大幅に低減される。
【0036】
また、シール部材30は、本体部31と可変部32とが直接的に連なった形態とされているので、本体部31の前側のメインリップ部34Fが、第2シール面23との間の摩擦抵抗により可変部32から離間するように弾性変形したとき、シール部材30のうち第2シール面23と対向する側の外周面においては、前側のメインリップ部34Fの弾性変形が、可変部32に対して引張力として作用しする。そして、引張力を受けた可変部32は、第2シール面23側へ接近するように弾性変位(予備変形)させられる。このように、可変部32は、嵌合終期に至る前、即ち押圧部24で押圧させる前に、第2シール面23に接近するように予備変形を生じるので、嵌合終期には押圧部24の押圧作用による可変部32の変位動作が円滑に行われる。
【0037】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、嵌合終期に至る前までは、可変部が第2シール面と非接触の状態を維持するようにしたが、本発明によれば、嵌合の初期又は中期から完了に至るまでの間、可変部のリップ部が第2シール面と接触する状態を保つようにしてもよい。この場合、可変部が押圧部で押圧される前の状態では、可変部のリップ部と第2シール面との間の摩擦抵抗が、本体部のリップ部と第2シール面との間の摩擦抵抗よりも小さくなるようにすればよい。
(2)上記実施形態では、第1シール面を第1ハウジングの外向きの周面に形成し、第2シール面を第2ハウジングの内向きの周面に形成したが、これとは逆に、第1シール面を第1ハウジングの内向きの周面に形成し、第2シール面を第2ハウジングの外向きの周面に形成してもよい。この場合、シール部材は第1ハウジングの内向きの周面に取り付けられることになる。
(3)上記実施形態では、シール部材が弾性変形していない状態において、第1シール面を基準とする可変部のリップ部の高さが、本体部のリップ部の高さよりも低くなるようにすることで、嵌合終期に至る前までは可変部のリップ部が第2シール面とは非接触となるようにしたが、これに替えて、シール部材が弾性変形していない状態において、第1シール面を基準とする可変部のリップ部の高さを、本体部のリップ部の高さと同じ高さ、又は本体部のリップ部よりも高くしてもよい。この場合、両ハウジングの嵌合方向における可変部のリップ部の厚さ寸法を、本体部のリップ部よりも薄くしたり、可変部のリップ部と本体部のリップ部の形状を異ならせたりする等の手段を講じ、これにより、可変部のリップ部と第2シール面との間の摩擦抵抗が、本体部のリップ部と第2シール面との間の摩擦抵抗よりも小さくなるようにすればよい。
(4)上記実施形態では、シール部材が弾性変形していない状態において、可変部のリップ部は、第2ハウジングに対する嵌合方向前方(第2シール面と略平行な方向)に突出する形態となっているが、シール部材が弾性変形していない状態において、可変部のリップ部は、第2シール面に接近する方向(径方向外向き)に突出する形態であってもよい。
(5)上記実施形態では、本体部のリップ部の数を2つとしたが、本体部のリップ部の数は1つ又は3つ以上であってもよい。
(6)上記実施形態では、可変部のリップ部の数を1つとしたが、可変部のリップ部の数は複数であってもよい。
(7)上記実施形態では、押圧部が可変部に接触するよりも前に、本体部のリップ部が、第2シール面との間の摩擦によって可変部を第2シール面側へ予備変形させるようにしたが、可変部は、シール部材が弾性変形しない状態においても第2シール面側へ弾性変位し易い形状をなしていてもよい。
(8)上記実施形態では、シール部材の本体部と可変部とが直接連なる形態とすることで、本体部のリップ部の弾性変形が可変部に対して直接的な引張力として作用するようにしたが、シール部材は、本体部と可変部との間に、本体部のリップ部の弾性変形が可変部に直接影響しないような変形遮断部を介在させた形態であってもよい。
(9)上記実施形態では、可変部が、押圧部によって両ハウジングの嵌合方向に潰されることにより第2シール面側へ弾性変位するようにしたが、押圧部が可変部と第1シール面との間に潜り込むことによって、可変部が第2シール面側へ弾性変位するようにしてもよい。
(10)上記実施形態では、押圧部が、可変部に対し両ハウジングの嵌合方向とほぼ直角な平面によって押圧するようにしたが、押圧部は、可変部に対して食い込むように押圧する形態としてもよい。
【符号の説明】
【0038】
10…第1ハウジング
14…第1シール面
20…第2ハウジング
23…第2シール面
24…押圧部
30…シール部材
31…本体部
32…可変部
34F,34R…メインリップ部(本体部のリップ部)
35…サブリップ部(可変部のリップ部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面に第1シール面が形成された第1ハウジングと、
前記第1ハウジングと嵌合可能であり、前記第1シール面に対して径方向に対向可能な第2シール面が形成された第2ハウジングと、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの嵌合方向に並ぶ複数のリップ部を有し、前記複数のリップ部とは反対側の周面を前記第1シール面に密着させた状態で前記第1ハウジングに取り付けられ、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングが嵌合した状態では前記複数のリップ部が弾性変形して前記第2シール面に密着するようになっているシール部材とを備え、
前記シール部材は、
前記複数のリップ部のうち前記第2ハウジングに対する前記第1ハウジングの嵌合方向における後端側の前記リップ部を含む本体部と、
前記複数のリップ部のうち前記第2ハウジングに対する前記第1ハウジングの嵌合方向における前端側の前記リップ部を含み、前記第2シール面に接近する方向への弾性変位を可能とされた可変部とを備え、
前記第2ハウジングは、前記第1ハウジングとの嵌合過程における終期にのみ前記可変部を押圧して前記第2シール面側へ弾性変位させる押圧部を備えていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記本体部の前記リップ部と前記可変部の前記リップ部が弾性変形していない状態では、前記第1シール面を基準とする前記可変部の前記リップ部の高さが、前記第1シール面を基準とする前記本体部の前記リップ部の高さよりも低く、
前記本体部の前記リップ部が前記第2シール面に接触し、且つ前記押圧部が前記可変部と非接触の状態では、前記可変部の前記リップ部が前記第2シール面とは非接触となることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記シール部材は、前記本体部と前記可変部とが直接的に連なった形態とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−150835(P2011−150835A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9945(P2010−9945)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】