説明

コネクタ

【課題】接続作業性に優れ、しかも簡単な構成で高いシール性を得ることができるコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ10は、第1および第2接続孔と、第1接続孔と第2接続孔との間の段部に形成された収納部16とを有するコネクタ本体11と、リテーナ30とを備えている。収納部16には、シール部材17が収納されている。リテーナ30およびコネクタ本体11には、パイプPを挿入方向へ押すことで、パイプPの先端でシール部材17を押す方向への力を加える押圧機構40が設けられている。押圧機構40は、リテーナ30とフランジ部Paとに形成された斜面を介して、リテーナ30の装着方向への移動力を、パイプPの挿入方向への移動力に変換して、シール部材17にシール力を加える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジ部を有する配管を他の管体に接続するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコネクタとして、例えば特許文献1等に記載されたものが知られている。特許文献1のコネクタは、車両の燃料系統に使用される、いわゆるクイックコネクタであり、パイプを挿入可能な接続孔を有するコネクタ本体を備え、接続孔に挿入されたパイプの外周や先端にOリングを配置し、コネクタ本体の内壁とのシールをしている。
【0003】
しかし、従来のコネクタでは、パイプとOリングとのシール性を高めるために接触圧を高めようとすると、パイプの挿入荷重が増大し、パイプの挿入作業性がよくないという課題があった。また、パイプの先端に設けたシール部材では、パイプの先端部と接続孔の内壁に密着する形状を形成することが難しく、安定したシール力を発揮することが難しいという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−216707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の技術の問題点を解決することを踏まえ、接続作業性に優れ、しかも簡単な構成で高いシール性を得ることができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
適用例1は、環状に突出したフランジ部を有するパイプを他の管体に接続するコネクタにおいて、
上記パイプを挿入方向に挿入するための第1接続孔と、該第1接続孔より小さい内径を有する第2接続孔と、上記第1接続孔と上記第2接続孔との間の段部に形成された収納部とを有するコネクタ本体と、
上記収納部に収納され、上記パイプの先端で押圧されて上記パイプと上記コネクタ本体の内壁との間をシールするシール部材と、
を備え、
上記挿入方向に対して直角の方向である装着方向に移動することで上記コネクタ本体に装着され、該装着された状態にてフランジ部に係合する移動部材と、
上記パイプを上記挿入方向へ移動することで、上記パイプの先端で上記シール部材に押す方向への力を加える押圧機構と、
を備え、
上記押圧機構は、上記移動部材と上記フランジ部のいずれかに形成された斜面を介して、上記移動部材の装着方向への移動力を、上記パイプの挿入方向への移動力に変換するカム機構を備えていることを特徴とする。
【0008】
適用例1において、パイプがコネクタ本体の正規の接続位置に挿入されると、パイプは、その先端でシール部材を収納部に対して押圧することで、高いシール性を得ることができ、例えば、燃料系統に使用した場合には、燃料透過量を低減することができる。
【0009】
また、パイプは、シール部材を押圧端で挿入方向へ押圧することにより、シール力を高めており、パイプの外周に配置したOリングのように、Oリングを拡径した接触圧によりシール力の増大を図っていない。よって、シール部材は、シール力を増大させるために、Oリングでシール力を高める構成と比べて、挿入するための荷重が小さく、挿入作業性がよい。
【0010】
さらに、パイプの先端でシール部材を挿入方向へ押す力は、移動部材が装着方向へ移動する力を利用しているから、接続作業も簡単である。
【0011】
[適用例2]
適用例2のシール部材は、上記パイプの先端の内壁から先端面、外周面にかけて覆うように断面コ字形に形成されている構成をとることができる。この構成によると、シール部材がパイプの先端を覆うとともに、第1接続孔と第2接続孔の段部に密着する形状とすることも容易である。
【0012】
[適用例3]
適用例3の押圧機構は、上記コネクタ本体と上記移動部材とに形成された係合部を介して上記移動部材の挿入方向への位置を段階的に設定する調節機構を有している構成をとることができる。この構成により、シール部材によるシール力を、移動部材を装着するときの力などを考慮して定めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例にかかるコネクタを分解して示す斜視図である。
【図2】コネクタにパイプを接続した状態を示す断面図である。
【図3】コネクタを分解した断面図である。
【図4】コネクタ本体の上部およびリテーナに形成された押圧機構を説明する説明図である。
【図5】リテーナおよびコネクタ本体に形成された調節機構を説明する説明図である。
【図6】コネクタにパイプを接続する作業を説明する説明図である。
【図7】図6に続く作業を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1) コネクタ10の概略構成
図1は本発明の一実施例にかかるコネクタ10を分解して示す斜視図である。コネクタ10は、燃料タンクからエンジンへの燃料系統に使用され、パイプPをチューブTbに接続するためのものであり、コネクタ本体11と、先端側のシール部材17と、ストッパリング18と、外周側のシール部材19と、リテーナ30(移動部材)とを備えている。パイプPは、金属製(例えば、アルミニウム製)でほぼ丸パイプ状に形成されている。パイプPの先端面から所定距離を隔てた位置の外周面上には、環状に突出したバルジ部からなるフランジ部Paが形成されている。また、パイプPの先端部には、シール部材17を押圧する押圧端Pbが形成されている。さらに、パイプPの外周部には、フランジ部Paから先端側にストッパリング18によりシールされるシール面Pcが形成されている。フランジ部Paの一端面には、押圧斜面Pdが形成されている。以下、コネクタ本体11、リテーナ30を順に説明する。
【0015】
(2) コネクタ10の各部の構成
(2)−1 コネクタ本体11
図2はコネクタ10にパイプPを接続した状態を示す断面図、図3はコネクタ10を分解した断面図である。図2および図3において、コネクタ本体11は、例えば樹脂製で、ほぼ円筒状に形成されている。コネクタ本体11の一端部は、パイプPを接続する配管接続部12となっており、その他端部は、例えば合成樹脂製のチューブTb(図1)が圧入によって装着されるチューブ接続部13となっている。なお、以下、コネクタ10の配管接続部12の側を前側、チューブ接続部13の側を後側として、以下の説明を行なう。
【0016】
図3において、コネクタ本体11内の中空部は、第1および第2接続孔14,15となっている。第1接続孔14内には、シール部材17およびシール部材19が配置されている。第2接続孔15は、チューブTbに接続される通路15aを形成している。第1接続孔14は、第2接続孔15より内径が大きいことから、両孔の間は、段部となってシール部材17を収納する収納部16が形成されている。シール部材17は、耐燃料透過性に優れたゴム材料から形成され、パイプPの先端の押圧端Pbに嵌合し、つまり押圧端Pbの内壁から先端面から外周面にかけて覆うように断面コ字形に形成されている。また、シール部材19は、Oリングからなり、パイプPの外周面のシール面Pcと第1接続孔14の内壁との間をシールしている。
【0017】
図1において、コネクタ本体11の配管接続部12の外周面には、その前側から後方に向かって所定間隔を隔てて平行に並ぶ第1および第2の規制フランジ21,22が形成されている。第2の規制フランジ22には、リテーナ30を支持するために配管接続部12の側面12aと所定間隙を隔て、かつ片持ち梁からなるガイド規制部23が突設されている。また、第1の規制フランジ21と第2の規制フランジ22との間には、差込孔26および左右1対の受入孔28が形成されている。受入孔28の下部には、リテーナ30を仮止位置にて係止する係合爪29が形成されている。
【0018】
(2)−2 リテーナ30
図1において、リテーナ30は、コネクタ本体11に対して仮止位置から完了位置まで移動可能な樹脂製の部材であり、配管接続部12の外周部の一部を囲むコ字形に形成されたリテーナ本体31を備えている。リテーナ本体31は、平板状の基板部32の前側に形成された抜止部33、検知片34およびガイド片37を備えている。ガイド片37は、配管接続部12のガイド規制部23の内側に挿入されることによりリテーナ30の移動をガイドするものである。
【0019】
(2)−3 押圧機構40
図4はコネクタ本体11の上部およびリテーナ30に形成された押圧機構40を説明する説明図である。押圧機構40は、パイプPの押圧端Pbでシール部材17を押す力を加えるとともに、その力を所定の値に設定するための機構であり、カム機構42と、調節機構45とを備えている。
【0020】
カム機構42は、リテーナ30の装着方向d1(図示下方)への力を、パイプPを挿入方向d2へ移動させる力へ変換するための機構であり、リテーナ30の抜止部33の奥側の面に形成された押圧傾斜面33aと、パイプPのフランジ部Paの押圧斜面Pdとを備えている。カム機構42の構成により、リテーナ30が装着方向d1へ移動したときに、押圧斜面Pdを介して、パイプPを挿入方向d2へ移動させ、これによりパイプPの押圧端Pbがシール部材17を収納部16に向けて押圧する。
【0021】
図5はリテーナ30およびコネクタ本体11に形成された調節機構45を説明する説明図である。図4および図5に示すように、調節機構45は、リテーナ30の装着方向d1の位置を設定することにより、パイプPの挿入方向d2への移動量を設定する機構であり、コネクタ本体11の第1の規制フランジ21に形成された規制突起21aと、リテーナ30の抜止部33の前側の面に形成された調節段部33cとを備えている。調節段部33cは、複数の突起を配列し、規制突起21aに係合するように構成されている。調節機構45の構成により、リテーナ30の装着方向d1への移動量に応じて、調節段部33cが規制突起21aに係合する位置を変更することにより、リテーナ30の停止位置を定める。これにより、パイプPの挿入方向d2の移動量を変更し、シール部材17のシール力を調節することができる。
【0022】
(3) コネクタ10の接続作業
上記のように構成されたコネクタ10にパイプPを接続するには、図3に示すように、シール部材17を収納部16に収納し、さらに、シール部材19、ストッパリング18およびシール部材17を第1接続孔14に挿入する。続いて、コネクタ本体11にリテーナ30を仮組みする。すなわち、図1において、リテーナ30の抜止部33を差込孔26に、第1および第2の規制フランジ21,22の間にそれぞれ位置合わせするとともに、両方の検知片34で配管接続部12の外周面を挟んだ状態にて、リテーナ30を下方へ押し込む。これにより、抜止部33が差込孔26内に、ガイド片37がガイド規制部23内にそれぞれ挿入され、リテーナ30が装着方向へ仮止位置まで移動したときに、コネクタ本体11と仮組状態になる(図4の状態)。
【0023】
続いて、パイプPをコネクタ10に接続するには、以下の操作を行なう。すなわち、図1および図6に示すように、パイプPをコネクタ本体11の第1接続孔14に挿入すると、ストッパリング18、シール部材19の各々の貫通孔を貫通し、パイプPの先端がシール部材17に達する。この状態にまでパイプPが第1接続孔14に挿入されると、図1に示すパイプPのフランジ部Paがリテーナ30における検知片34の検知突起35を拡げる方向に弾性変形させ、検知片34の検知突起35が受入孔28の係合爪29から側方へずれる。これにより、受入孔28の係合爪29に対する検知突起35の下面の係合が解除されるため、リテーナ30の下方への移動が可能になる。
【0024】
続いて、リテーナ30の基板部32を押して装着方向へ移動させると、検知片34の検知突起35が、コネクタ本体11の側面12aに沿って摺動しつつ下降するとともに、図7に示すように、リテーナ30の押圧傾斜面33aがパイプPのフランジ部Paの押圧斜面Pdに当たり、さらに、リテーナ30を下方に移動すると、パイプPが挿入方向d2へ移動して、シール部材17が収納部16に押圧される。
【0025】
そして、リテーナ30をさらに下方へ移動すると、リテーナ30の調節段部33cが第1の規制フランジ21の規制突起21aに係合しつつ、段階的に下方へ移動する。そして、最終的にコネクタ本体11の下端に達することで検知片34(図1)が弾性復元し、検知突起35がコネクタ本体11の下端に係合することにより、リテーナ30の上動が規制される。これによって、パイプPは、抜け方向の移動が規制され、コネクタ本体11に対して抜止めされてコネクタ10に接続される(図2の状態)。
【0026】
(4) コネクタ10の作用・効果
上記実施例の構成により、以下の効果を奏する。
(4)−1 図2に示すように、パイプPがコネクタ本体11の正規の接続位置に完全に挿入されると、パイプPは、シール部材19、ストッパリング18を貫通して、さらにその先端でシール部材17を収納部16に対して押圧することで、高いシール性を得ることができる。すなわち、コネクタ10とパイプPとのシール箇所は、シール部材19だけでなく、シール部材17がパイプPの先端に押されて、シール性を発揮し、燃料透過量を低減することができる。
【0027】
(4)−2 シール部材17は、パイプPの押圧端Pbで挿入方向へ押圧されることにより、シール力を高めており、パイプPの外周に配置したOリングのように、Oリングを拡径した接触圧によりシール力の増大を図っていない。よって、シール部材17は、Oリングでシール力を高める構成と比べて、挿入するための荷重が小さく、挿入作業性がよい。
【0028】
(4)−3 パイプPの押圧端Pbでシール部材17を挿入方向d2へ押圧する力は、リテーナ30が装着方向d1へ移動する力、つまり、仮止位置から完了位置への移動するときの力を利用しているから、接続作業も簡単である。
【0029】
(4)−4 シール部材17によるシール力は、リテーナ30の移動量を設定する調節機構45により調節することができる。すなわち、調節機構45は、第1の規制フランジ21の規制突起21aに係合する3個の調節段部33cのいずれかを選択することにより、シール部材17によるシール力を、リテーナ30を装着するときの力などを考慮して定めることができる。
【0030】
(4)−5 シール部材17は、パイプPの先端の内壁から先端面、外周面にかけて覆うように断面コ字形に形成されているから、パイプPの押圧端Pbを覆うとともに、第1接続孔14と第2接続孔15の段部に密着する形状とすることも容易である。
【0031】
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
上記実施例では、移動部材として、パイプPを抜止めするためのリテーナ30を用いたが、これに限らず、コネクタにパイプを挿入したときに、パイプが正規の接続位置にあるのを確認するためのチェッカとしてもよく、このチェッカに押圧機構を設けてもよい。
【符号の説明】
【0032】
10…コネクタ
11…コネクタ本体
12…配管接続部
12a…側面
13…チューブ接続部
14,15…第1および第2接続孔
15a…通路
16…収納部
17…シール部材
18…ストッパリング
19…シール部材
21,22…第1および第2の規制フランジ
21a…規制突起
23…ガイド規制部
26…差込孔
28…受入孔
29…係合爪
30…リテーナ
31…リテーナ本体
32…基板部
33…抜止部
33a…押圧傾斜面
33c…調節段部
34…検知片
35…検知突起
37…ガイド片
40…押圧機構
42…カム機構
45…調節機構
P…パイプ
Pa…フランジ部
Pb…押圧端
Pc…シール面
Pd…押圧斜面
Tb…チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に突出したフランジ部(Pa)を有するパイプ(P)を他の管体に接続するコネクタにおいて、
上記パイプ(P)を挿入方向に挿入するための第1接続孔(14)と、該第1接続孔(14)より小さい内径を有する第2接続孔(15)と、上記第1接続孔(14)と上記第2接続孔(15)との間の段部に形成された収納部(16)とを有するコネクタ本体(11)と、
上記収納部(16)に収納され、上記パイプ(P)の先端で押圧されて上記パイプ(P)と上記コネクタ本体(11)の内壁との間をシールするシール部材(17)と、
を備え、
上記挿入方向に対して直角の方向である装着方向に移動することで上記コネクタ本体(11)に装着され、該装着された状態にてフランジ部(Pa)に係合する移動部材と、
上記パイプ(P)を上記挿入方向へ移動することで、上記パイプ(P)の先端で上記シール部材(17)に押す方向への力を加える押圧機構(40)と、
を備え、
上記押圧機構(40)は、上記移動部材と上記フランジ部(Pa)のいずれかに形成された斜面を介して、上記移動部材の装着方向への移動力を、上記パイプ(P)の挿入方向への移動力に変換するカム機構を備えていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタにおいて、
上記シール部材(17)は、上記パイプ(P)の先端の内壁から先端面、外周面にかけて覆うように断面コ字形に形成されているコネクタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のコネクタにおいて、
上記押圧機構(40)は、上記コネクタ本体(11)と上記移動部材とに形成された係合部を介して上記移動部材の挿入方向への位置を段階的に設定する調節機構(45)を有しているコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−231901(P2011−231901A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104812(P2010−104812)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】