コネクタ
【課題】基板用コネクタにおける固定金具の半田付け部分に過大な応力が作用することを防ぐ。
【解決手段】固定金具20が半田付けにより基板Pの上面に固定された基板用コネクタ10に対して嵌合されるハーネス側コネクタ30であって、ワイヤハーネスの端末に接続され基板用コネクタ10のフード部12の内部に嵌合可能な雌ハウジング31と、この雌ハウジング31とは別体に形成されたホルダ50とが備えられる。ホルダ50には、雌ハウジング31に弾性的に係合して当該ホルダ50が雌ハウジング31に装着された状態にロックするロックアーム57A,57Bが設けられるとともに、当該ホルダ50が雌ハウジング31に装着された上でこの雌ハウジング31が基板用コネクタ10のフード部12に嵌合された場合に基板Pの下面に係止する係止部61が設けられる。
【解決手段】固定金具20が半田付けにより基板Pの上面に固定された基板用コネクタ10に対して嵌合されるハーネス側コネクタ30であって、ワイヤハーネスの端末に接続され基板用コネクタ10のフード部12の内部に嵌合可能な雌ハウジング31と、この雌ハウジング31とは別体に形成されたホルダ50とが備えられる。ホルダ50には、雌ハウジング31に弾性的に係合して当該ホルダ50が雌ハウジング31に装着された状態にロックするロックアーム57A,57Bが設けられるとともに、当該ホルダ50が雌ハウジング31に装着された上でこの雌ハウジング31が基板用コネクタ10のフード部12に嵌合された場合に基板Pの下面に係止する係止部61が設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田付けにより基板の上面に固定された基板用コネクタに対して嵌合されるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の基板用コネクタ装置の一例として、特許文献1に記載されたものが知られている。基板用コネクタは、前面に開口したフード部を設けた雄ハウジングを有し、この雄ハウジングには、一端が基板の導電路に半田付けされるタブ状の端子金具がそれぞれの他端をフード部内に臨ませた形態で収容されているとともに、雄ハウジングの左右両側面に固定金具が装着された構造であって、両固定金具が半田付けされることにより基板の端縁部の上面に固定されている。一方、基板用コネクタと嵌合されるコネクタは、ワイヤハーネスの端末に接続された形態であり、詳細には複数の電線の端末に接続された雌端子が後方から挿入されて収容された雌ハウジングを有しており、同雌ハウジングが基板用コネクタの雄ハウジングのフード部内に嵌合されることで、雌雄の端子金具同士が接続されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−87903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような基板用コネクタ装置では、コネクタ(雌ハウジング)の後面から電線が引き出された構造であるから、配線の取り回し中等において、例えば電線が上方に引っ張られるようなことがあると、基板用コネクタの雄ハウジングが引き上げられてそれに伴い固定金具の半田付け部分に過大な応力が作用し、クラックが入ってついには破壊に到るおそれがあった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、基板用コネクタにおける固定金具の半田付け部分に過大な応力が作用することを防ぐところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、フード部を有するとともに両側面に設けられた固定金具が半田付けにより基板の上面に固定された基板用コネクタに対して嵌合されるコネクタであって、ワイヤハーネスの端末に接続され前記基板用コネクタの前記フード部の内部に嵌合可能なハウジングと、このハウジングとは別体に形成されたホルダと、が備えられ、このホルダには、前記ハウジングに弾性的に係合して当該ホルダが前記ハウジングに装着された状態にロックするロック部材が設けられるとともに、当該ホルダが前記ハウジングに装着された上でこのハウジングが前記基板用コネクタの前記フード部に嵌合された場合に前記基板の下面に係止する係止部が設けられているところに特徴を有する。
【0006】
ホルダをハウジングに装着した状態で同ハウジングを基板用コネクタのフード部内に嵌合すると、ホルダに設けられた係止部が基板の下面に係止する。そのため、コネクタの後面側に引き出された電線が基板の上方に引っ張られたとしても、係止部が基板に係止することで、ハウジングさらには基板用コネクタが傾動することが規制され、ひいては固定金具の半田付け部分に過大な応力が作用することが防がれる。
ホルダはハウジングとは別体に形成され、しかもホルダ側のみにロック部材を設けた構造としたから、ハウジングの製造金型は既存のままに留めて、ホルダ側の製造金型のみを新たに起こせばよく、安価に対応することが可能となる。
【0007】
また、以下のような構成としてもよい。
(1)前記係止部は、前記基板を上下両面から挟持可能となっている。
基板用コネクタのフード部が基板の端縁から大きく突出している場合等、条件によってはワイヤハーネスが基板の下方に引っ張られたときにも、ハウジングひいては基板用コネクタが傾動する可能性があるが、ホルダに設けられた係止部が基板を上下両面から挟持するようになっているから、下方への傾動も規制することができる。
【0008】
(2)前記ホルダは前記ハウジングに対して前方から外嵌可能な枠状に形成され、このホルダには、前記ハウジングに設定された被突当部に当たって押し込みを規制する突当部と、この突当部が前記被突当部に当たったところで前記ハウジングの後面に弾性的に係止して抜け止めするロックアームとが設けられている。
枠状をなすホルダがハウジングに対して前方から外嵌されて押し込まれると、正規位置まで押し込まれたところで突当部が相手の被突当部に当たることで押し込みが停止され、そのときロックアームがハウジングの後面に弾性的に係止して抜け止めされることで、ホルダがハウジングに対して正規位置に装着された状態にロックされる。
【0009】
(3)前記ハウジングの側面には、このハウジングに収容された端子金具に係止して抜け止めするリテーナが装着されるリテーナ装着孔が開口されている。
仮にホルダに設けられた係止部がハウジングと一体的に設けられた構造であると、いわゆるサイドリテーナをハウジング設ける場合に、干渉を避けるために配設位置に制約を受けるが、係止部は、ハウジングとは別体で後付けされるホルダに設けたから、サイドリテーナの配設位置について設計上の自由度を大幅に広げることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板用コネクタにおける固定金具の半田付け部分に過大な応力が作用することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るハーネス側コネクタを基板用コネクタに嵌合する動作を示す側断面図
【図2】基板用コネクタが基板上に固定された状態の斜視図
【図3】基板用コネクタの背面図
【図4】ハーネス側コネクタの分解側断面図
【図5】雌ハウジングとホルダの平面図
【図6】同側面図
【図7】雌ハウジングの正面図
【図8】ホルダの背面から視た斜視図
【図9】ホルダの背面図
【図10】ハーネス側コネクタが基板用コネクタに嵌合された状態の側断面図
【図11】その側面図
【図12】関連技術の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図11に基づいて説明する。
この実施形態では、図1に示すように、プリント配線基板P(以下、単に基板Pという)の端縁部に固定された基板用コネクタ10に対し、ワイヤハーネスの端末に接続されたハーネス側コネクタ30(本発明のコネクタに相当)を嵌合する部分を例示する。
【0013】
基板用コネクタ10は、図1ないし図3に示すように、合成樹脂製の雄ハウジング11を有している。この雄ハウジング11は、前面に開口した扁平な角筒状をなすフード部12を備えており、このフード部12の厚肉の背面壁が端子保持部13となっている。
端子保持部13には、複数の端子金具15が、上下2段に亘り横方向に整列して装着されている。端子金具15は、タブを概ねクランク状に屈曲して形成されており、主にタブの太さを異にした大小2種類が備えられている。
各端子金具15は、上記した端子保持部13に形成された端子圧入口14に後方から圧入されて装着されている。各端子金具15の一端側の端子接続部16は、フード部12内に突出して上下2段に亘って横方向に並んだ形態を採り、他端側の基板接続部17は横一列に並んで、それぞれ基板P上に形成された対応する導電路に半田付けにより接続されるようになっている。
【0014】
雄ハウジング11の左右両側面には、固定金具20が装着されている。固定金具20は、金属板を略L字形に曲げ加工することにより、本体板21の下端部に外側に直角曲げされた取付板22が形成された形状である。一方、雄ハウジング11の左右両側面には、装着溝25が上下に貫通した形状で形成されており、固定金具20の本体板21の両側縁が、装着溝25の両側縁に沿って圧入されることで、抜け止めされて固定されるようになっている。このとき、固定金具20の取付板22は、雄ハウジング11の下面の僅か下方に位置し、基板P上に設けられた固定ランドに半田付けにより固定されるようになっている。
【0015】
雄ハウジング11のフード部12における天井壁には、前縁の幅方向の中央位置にロック突部27が形成されている。また、両側壁の内面の下部位置には、前縁からガイド溝28が切り込み形成されている。
【0016】
ハーネス側コネクタ30は、図4ないし図6に示すように、雌ハウジング31とホルダ50とから構成されている。
雌ハウジング31は合成樹脂製であって、図7にも示すように、扁平な横長のブロック状に形成されており、前側の略2/3の長さ領域が、上記した基板用コネクタ10の雄ハウジング11のフード部12内に嵌合可能となっている。
【0017】
雌ハウジング31内には、前後方向に貫通した複数のキャビティ32が、上記した基板用コネクタ10に装着された端子金具15の端子接続部16の配列と対応して、上下2段に亘って横方向に並んで形成されている。キャビティ32についても大小2種類が備えられ、基板用コネクタ10側の端子金具15の大小と対応した位置に配されている。
各キャビティ32内には、電線34の端末に接続された雌端子35が収容されるようになっており、雌端子35についても大小2種類が備えられている。図4の矢線aに示すように、雌端子35は対応するキャビティ32内に後方から挿入され、正規位置まで挿入されると、キャビティ32の底面に設けられたランス33に弾性的に係止されて抜け止めされるようになっている。
【0018】
雌ハウジング31の下面側には、雌端子35を二重係止するためのサイドタイプのリテーナ37が装着されている。そのため雌ハウジング31の下面における前後方向の中央位置には、リテーナ装着孔38が、ほぼ全幅に亘って各キャビティ32を貫通するようにして形成されている。
リテーナ37は同じく合成樹脂製であって、全体としては上記したリテーナ装着孔38に下方から緊密に挿入可能な格子状に形成され、雌端子35の被係止部35A(あご部)に係止する係止突部37Aが、キャビティ32の配置と対応した配置で設けられている。そしてリテーナ37は、図4に示すように、各係止突部37Aがキャビティ32の下方に退避して雌端子35の挿入を許容する仮係止位置と、図1に示すように、各係止突部37Aが雌端子35に係止可能にキャビティ32内に進入した本係止位置とに、それぞれ組み付け可能とされている。
【0019】
雌ハウジング31の上面における幅方向の中央部には、基板用コネクタ10の雄ハウジング11のロック突部27に係止する突起41を備えたロックレバー40が、前縁から後方を向いて延出した形態で撓み変位可能に設けられている。ロックレバー40の延出端は操作部42となっており、同操作部42を押圧することでロックレバー40を強制的に撓み変位できるようになっている。
【0020】
雌ハウジング31の後面には、図7に示すように、全周に亘ってフランジ44が形成されている。このうち上フランジ44Aは、幅方向の中央部の上端部が前方に張り出して形成され、ロックレバー40の操作部42の前端側の上部を横切った形態の保護壁45を構成している。一方、ロックレバー40の左右両側には保護壁46が立てられており、これらの保護壁45,46により、ロックレバー40に対して電線34が噛み込むこと等から保護するようになっている。
【0021】
フランジ44のうち下フランジが指掛部46となっており、同指掛部46に指を掛けることにより、上記したロックレバー40の操作部42の押圧操作や、それに続く雌ハウジング31の引き抜き動作の便宜が図られている。
雌ハウジング31の左右の外側面における後縁部には、左右のフランジ44Bの前面に突出するようにして、上記した相手の雄ハウジング11における両側壁の内面に形成されたガイド溝28に進入可能なガイドリブ47が形成されている。
【0022】
さて、雌ハウジング31には、同雌ハウジング31とは別体に形成されたホルダ50が装着可能となっている。
ホルダ50は同じく合成樹脂製であって、大まかには図8にも示すように、雌ハウジング31の後端側に外嵌可能なように、奥行のある横長の方形の枠状に形成されている。ホルダ50の天井壁の後縁における幅方向の中央部には、雌ハウジング31の保護壁45を嵌めて逃がす逃がし凹部51が形成されている。
【0023】
また、ホルダ50における後端の内周縁には、内側に所定寸法張り出すようにして後面壁52が形成されている。なお、下部側の後面壁52Aは背が高く、かつ下部領域が凹んだ段差状に形成されている。
ホルダ50の後面壁52には、詳しくは後記するように、当該ホルダ50を雌ハウジング31の前方から外嵌した場合に、概ね雌ハウジング31のフランジ44に当たってそれ以上の押し込みを規制する突当部54A〜54Cが形成されている。
【0024】
より詳細には、上部側の後面壁52には、上フランジ44Aに当たる横長の左右一対の第1突当部54Aが形成されている。左右の後面壁52には、左右のフランジ44Bに当たる背の低い第2突当部54Bが形成されている。両第2突当部54Bには、雌ハウジング31の左右の外側面に形成されたガイドリブ47を挿通して逃がす逃がし溝55が形成されている。下部側の後面壁52Aのうち上側の領域には、下フランジすなわち指掛部46に当たる第3突当部54Cが、ほぼ全幅に亘って形成されている。これらの突当部54A〜54Cが当たる雌ハウジング31のフランジ44の各部位が、本発明にいう被突当部となる。
【0025】
ホルダ50の後面からは、同ホルダ50が雌ハウジング31に対して正規位置まで押し込まれて押し込みが停止したところで、雌ハウジング31に係止して抜け止めを図るための弾性変位可能なロックアーム57A,57Bが突設されている。
2本の第1ロックアーム57Aは、ホルダ50における左右の後面壁52の第2突当部54Bの上方位置から突出形成され、先端の鈎部58が、雌ハウジング31の左右のフランジ44Bの上部位置の裏面に係止するようになっている。
一方、同じく2本の第2ロックアーム57Bは、下部側の後面壁52Aのうち下側の領域における左右両端部から突出形成され、先端の鈎部58が雌ハウジング31の後面下端に形成された指掛部46の左右両端部に寄った位置の裏面にそれぞれ係止するようになっている。
【0026】
ホルダ50の左右の側壁における前縁の下部位置には、基板Pの端縁がほぼ緊密に挿入される基板挿入溝60が形成されている。基板挿入溝60は詳細には、ホルダ50の下面壁の上面と面一となる位置において、側壁の前縁から奥に向けて切り込み形成されており、詳しくは後記するように、ホルダ50が装着された雌ハウジング31が相手の雄ハウジング11のフード部12内に正規嵌合された場合に、基板Pの端縁が奥に達するまでの深さを有している。
上記のように基板挿入溝60が形成されたことにより、ホルダ50の下面壁が全幅にわたって、基板Pの下面に係止する下側係止部61として機能する。一方、ホルダ50の側壁における基板挿入溝60の上側の側縁部が、基板Pの上面に係止する上側係止部62として機能するようになっている。
【0027】
続いて、本実施形態の作用を説明する。
基板用コネクタ10は、図1及び図2に示すように、基板Pの端縁寄りの所定位置において、雄ハウジング11の先端部を基板Pの端縁から所定寸法突出させた形態で載置され、表面実装により、各端子金具15の基板接続部17が半田付けで対応する導電路に接続され、併せて左右の固定金具20の取付板22が半田付けで基板Pに固定される。
【0028】
ハーネス側コネクタ30では、図4に示すように、リテーナ37が仮係止位置にある状態で、雌ハウジング31に設けられた各キャビティ32に対し、電線34の端末に接続された雌端子35が後方から挿入され、ランス33により一次係止される。続いてリテーナ37が本係止位置に押し込まれることで、各雌端子35が二重係止される(図1参照)。ここで、雌ハウジング31の後面から引き出された電線34は適宜に束ねられ、ワイヤハーネスが構成される。
【0029】
次に、上記のように雌端子35が収容されて二重係止された雌ハウジング31に対し、図4の矢線bに示すように、ホルダ50が前方から外嵌される。ホルダ50が押し込まれてその終盤になると、ガイドリブ47が逃がし溝55に挿入されて案内され、また、各ロックアーム57A,57Bが、左右のフランジ44B並びに指掛部46に当たって弾性撓みしつつ押し込まれる。ホルダ50側の突当部54A〜54Cが雌ハウジング31のフランジ44に設定された被突当部に当たったところで押し込みが停止され、このときロックアーム57A,57Bの鈎部58が、左右のフランジ44B並びに指掛部46を通過することで、ロックアーム57A,57Bが復元変位しつつそれらに係止し、これにより図1に示すように、ホルダ50が雌ハウジング31の後端部の正規位置に装着された状態となる。
【0030】
このように組み付けられたハーネス側コネクタ30が、図1の矢線cに示すように、基板用コネクタ10に対して嵌合される。詳細には、雌ハウジング31が相手の雄ハウジング11のフード部12内に嵌合され、嵌合が進むと、フード部12の先端側がホルダ50内に進入し、またロックレバー40を弾性撓みさせつつ押し込まれ、雌ハウジング31の先端が端子保持部13に当たる正規位置まで押し込まれると、図10に示すように、ロックレバー40が復元変位しつつ雄雌のハウジング11,31が正規に嵌合した状態にロックされる。これに伴い、対応する端子金具15と雌端子35同士が正規に電気接続された状態になる。
またこの間に、基板Pの端縁がホルダ50に設けられた基板挿入溝60に挿入され、両ハウジング11,31が正規嵌合されたところで、基板挿入溝60の奥端まで進入した状態となる。
【0031】
図11に示すように、両コネクタ10,30の嵌合接続が完了した状態において、例えば同図の矢線xに示すように、ハーネス側コネクタ30の後方に引き出された電線34の束(ワイヤハーネス)が上方に引っ張られたとしても、ホルダ50に設けられた下側係止部61が、広い範囲に亘って基板Pの下面側の端縁に係止することで、雌ハウジング31さらにはこれに嵌合された基板用コネクタ10が傾動することが規制され、ひいては固定金具20の半田付け部分に過大な応力が作用することが防がれる。
また、同図の矢線yに示すように、電線34の束(ワイヤハーネス)が下方に引っ張られると、雌ハウジング31が同図の時計回り方向に多少なりとも傾動しようとするが、左右の上側係止部62が基板Pの上面側の端縁に係止することで、雌ハウジング31さらにはこれに嵌合された基板用コネクタ10が同方向に傾動することがより確実に規制される。
【0032】
以上のように本実施形態によれば、ハーネス側コネクタ30に装着されたホルダ50に対し、同コネクタ30が相手の基板用コネクタ10に正規に嵌合された際に、基板Pの端縁が進入する基板挿入溝60を設けて、同基板挿入溝60の下側と上側に設けられた係止部61,62で基板Pの端縁を挟むようにしたから、ハーネス側コネクタ30の後面側に引き出された電線34の束(ワイヤハーネス)が上方または下方に引っ張られたとしても、係止部61,62が基板Pに係止することで、雌ハウジング31さらには相手の基板用コネクタ10が傾動することが規制され、ひいては固定金具20の半田付け部分に過大な応力が作用することが防がれる。
そのため、固定金具20の半田付け部が破壊されて基板用コネクタ10が位置ずれし、ひいては端子金具15の半田付け部分が損傷を受けるといったことを未然に防止することができる。
【0033】
係止部61,62が設けられたホルダ50は雌ハウジング31とは別体に形成され、しかもホルダ50側のみにロックアーム57A,57Bを設けた構造としたから、雌ハウジング31の製造金型は既存のままに留めて、ホルダ50側の製造金型のみを新たに起こせばよく、安価に対応することができる。
【0034】
仮にホルダ50に設けられた係止部61,62が雌ハウジング31と一体的に設けられた構造であると、サイドタイプのリテーナ37を雌ハウジング31に設ける場合に、係止部61,62と干渉する可能性があって設けることができないか、その配設位置に制約を受けるが、係止部61,62は、雌ハウジング31とは別体に形成された後付けされるホルダ50に設けたから、サイドタイプのリテーナ37の配設位置について任意に設定することができる。
【0035】
<関連技術>
基板用コネクタ10では、低背化の要求により薄肉化される傾向にある。そのような場合、相手のハーネス側コネクタ30から引き出された電線34が上方に引っ張られて同コネクタ30が傾動すると、薄肉化されたフード部12の上面が破損に到ることが懸念される。
その防止対策の一例として、図12に示すように、高強度のフィルム70や金属箔をフード部12の上面に貼り付けて補強するとよい。別部品で補強するのであるから、基板用コネクタ10における雄ハウジング11の設計変更は不要にできる。
【0036】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)ホルダに設ける基板挿入溝の位置は、上記実施形態に例示した位置に限らず、例えば側壁の高さ方向の途中位置等の他の位置でもよく、側壁の高さ方向の途中位置であっても、その上下両側に基板を挟む係止部を構成することができる。
(2)ホルダに設ける係止部について、基板の上面側に係止する上側係止部についてはこれを割愛してもよく、そのようなものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0037】
(3)ホルダの押し込みを停止するべくホルダに設けられる突当部の形状や配設位置は、雌ハウジングの既存の部位に当てる限りは、任意の形状、配設位置とすることができる。
(4)ホルダを抜け止めするべくホルダに設けるロックアームの形状や配設位置は、雌ハウジングの既存の部位に係止できる限りは、任意の形状、配設位置とすることができる。
(5)上記実施形態では、ホルダが概ね枠状をなし、雌ハウジングに対しては前方から外嵌して装着した場合を例示したが、雌ハウジングの形状等の条件に応じて、ホルダの形状や装着方法は任意に設定できる。
【符号の説明】
【0038】
P…プリント配線基板(基板)
10…基板用コネクタ
11…雄ハウジング
12…フード部
15…端子金具
20…固定金具
22…取付板
30…ハーネス側コネクタ
31…雌ハウジング(ハウジング)
34…電線
35…雌端子
37…リテーナ
38…リテーナ装着孔
44…フランジ(被突当部)
46…指掛部
50…ホルダ
54A〜54C…突当部
57A,57B…ロックアーム(ロック部材)
60…基板挿入溝
61…下側係止部
62…上側係止部
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田付けにより基板の上面に固定された基板用コネクタに対して嵌合されるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の基板用コネクタ装置の一例として、特許文献1に記載されたものが知られている。基板用コネクタは、前面に開口したフード部を設けた雄ハウジングを有し、この雄ハウジングには、一端が基板の導電路に半田付けされるタブ状の端子金具がそれぞれの他端をフード部内に臨ませた形態で収容されているとともに、雄ハウジングの左右両側面に固定金具が装着された構造であって、両固定金具が半田付けされることにより基板の端縁部の上面に固定されている。一方、基板用コネクタと嵌合されるコネクタは、ワイヤハーネスの端末に接続された形態であり、詳細には複数の電線の端末に接続された雌端子が後方から挿入されて収容された雌ハウジングを有しており、同雌ハウジングが基板用コネクタの雄ハウジングのフード部内に嵌合されることで、雌雄の端子金具同士が接続されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−87903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような基板用コネクタ装置では、コネクタ(雌ハウジング)の後面から電線が引き出された構造であるから、配線の取り回し中等において、例えば電線が上方に引っ張られるようなことがあると、基板用コネクタの雄ハウジングが引き上げられてそれに伴い固定金具の半田付け部分に過大な応力が作用し、クラックが入ってついには破壊に到るおそれがあった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、基板用コネクタにおける固定金具の半田付け部分に過大な応力が作用することを防ぐところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、フード部を有するとともに両側面に設けられた固定金具が半田付けにより基板の上面に固定された基板用コネクタに対して嵌合されるコネクタであって、ワイヤハーネスの端末に接続され前記基板用コネクタの前記フード部の内部に嵌合可能なハウジングと、このハウジングとは別体に形成されたホルダと、が備えられ、このホルダには、前記ハウジングに弾性的に係合して当該ホルダが前記ハウジングに装着された状態にロックするロック部材が設けられるとともに、当該ホルダが前記ハウジングに装着された上でこのハウジングが前記基板用コネクタの前記フード部に嵌合された場合に前記基板の下面に係止する係止部が設けられているところに特徴を有する。
【0006】
ホルダをハウジングに装着した状態で同ハウジングを基板用コネクタのフード部内に嵌合すると、ホルダに設けられた係止部が基板の下面に係止する。そのため、コネクタの後面側に引き出された電線が基板の上方に引っ張られたとしても、係止部が基板に係止することで、ハウジングさらには基板用コネクタが傾動することが規制され、ひいては固定金具の半田付け部分に過大な応力が作用することが防がれる。
ホルダはハウジングとは別体に形成され、しかもホルダ側のみにロック部材を設けた構造としたから、ハウジングの製造金型は既存のままに留めて、ホルダ側の製造金型のみを新たに起こせばよく、安価に対応することが可能となる。
【0007】
また、以下のような構成としてもよい。
(1)前記係止部は、前記基板を上下両面から挟持可能となっている。
基板用コネクタのフード部が基板の端縁から大きく突出している場合等、条件によってはワイヤハーネスが基板の下方に引っ張られたときにも、ハウジングひいては基板用コネクタが傾動する可能性があるが、ホルダに設けられた係止部が基板を上下両面から挟持するようになっているから、下方への傾動も規制することができる。
【0008】
(2)前記ホルダは前記ハウジングに対して前方から外嵌可能な枠状に形成され、このホルダには、前記ハウジングに設定された被突当部に当たって押し込みを規制する突当部と、この突当部が前記被突当部に当たったところで前記ハウジングの後面に弾性的に係止して抜け止めするロックアームとが設けられている。
枠状をなすホルダがハウジングに対して前方から外嵌されて押し込まれると、正規位置まで押し込まれたところで突当部が相手の被突当部に当たることで押し込みが停止され、そのときロックアームがハウジングの後面に弾性的に係止して抜け止めされることで、ホルダがハウジングに対して正規位置に装着された状態にロックされる。
【0009】
(3)前記ハウジングの側面には、このハウジングに収容された端子金具に係止して抜け止めするリテーナが装着されるリテーナ装着孔が開口されている。
仮にホルダに設けられた係止部がハウジングと一体的に設けられた構造であると、いわゆるサイドリテーナをハウジング設ける場合に、干渉を避けるために配設位置に制約を受けるが、係止部は、ハウジングとは別体で後付けされるホルダに設けたから、サイドリテーナの配設位置について設計上の自由度を大幅に広げることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板用コネクタにおける固定金具の半田付け部分に過大な応力が作用することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るハーネス側コネクタを基板用コネクタに嵌合する動作を示す側断面図
【図2】基板用コネクタが基板上に固定された状態の斜視図
【図3】基板用コネクタの背面図
【図4】ハーネス側コネクタの分解側断面図
【図5】雌ハウジングとホルダの平面図
【図6】同側面図
【図7】雌ハウジングの正面図
【図8】ホルダの背面から視た斜視図
【図9】ホルダの背面図
【図10】ハーネス側コネクタが基板用コネクタに嵌合された状態の側断面図
【図11】その側面図
【図12】関連技術の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図11に基づいて説明する。
この実施形態では、図1に示すように、プリント配線基板P(以下、単に基板Pという)の端縁部に固定された基板用コネクタ10に対し、ワイヤハーネスの端末に接続されたハーネス側コネクタ30(本発明のコネクタに相当)を嵌合する部分を例示する。
【0013】
基板用コネクタ10は、図1ないし図3に示すように、合成樹脂製の雄ハウジング11を有している。この雄ハウジング11は、前面に開口した扁平な角筒状をなすフード部12を備えており、このフード部12の厚肉の背面壁が端子保持部13となっている。
端子保持部13には、複数の端子金具15が、上下2段に亘り横方向に整列して装着されている。端子金具15は、タブを概ねクランク状に屈曲して形成されており、主にタブの太さを異にした大小2種類が備えられている。
各端子金具15は、上記した端子保持部13に形成された端子圧入口14に後方から圧入されて装着されている。各端子金具15の一端側の端子接続部16は、フード部12内に突出して上下2段に亘って横方向に並んだ形態を採り、他端側の基板接続部17は横一列に並んで、それぞれ基板P上に形成された対応する導電路に半田付けにより接続されるようになっている。
【0014】
雄ハウジング11の左右両側面には、固定金具20が装着されている。固定金具20は、金属板を略L字形に曲げ加工することにより、本体板21の下端部に外側に直角曲げされた取付板22が形成された形状である。一方、雄ハウジング11の左右両側面には、装着溝25が上下に貫通した形状で形成されており、固定金具20の本体板21の両側縁が、装着溝25の両側縁に沿って圧入されることで、抜け止めされて固定されるようになっている。このとき、固定金具20の取付板22は、雄ハウジング11の下面の僅か下方に位置し、基板P上に設けられた固定ランドに半田付けにより固定されるようになっている。
【0015】
雄ハウジング11のフード部12における天井壁には、前縁の幅方向の中央位置にロック突部27が形成されている。また、両側壁の内面の下部位置には、前縁からガイド溝28が切り込み形成されている。
【0016】
ハーネス側コネクタ30は、図4ないし図6に示すように、雌ハウジング31とホルダ50とから構成されている。
雌ハウジング31は合成樹脂製であって、図7にも示すように、扁平な横長のブロック状に形成されており、前側の略2/3の長さ領域が、上記した基板用コネクタ10の雄ハウジング11のフード部12内に嵌合可能となっている。
【0017】
雌ハウジング31内には、前後方向に貫通した複数のキャビティ32が、上記した基板用コネクタ10に装着された端子金具15の端子接続部16の配列と対応して、上下2段に亘って横方向に並んで形成されている。キャビティ32についても大小2種類が備えられ、基板用コネクタ10側の端子金具15の大小と対応した位置に配されている。
各キャビティ32内には、電線34の端末に接続された雌端子35が収容されるようになっており、雌端子35についても大小2種類が備えられている。図4の矢線aに示すように、雌端子35は対応するキャビティ32内に後方から挿入され、正規位置まで挿入されると、キャビティ32の底面に設けられたランス33に弾性的に係止されて抜け止めされるようになっている。
【0018】
雌ハウジング31の下面側には、雌端子35を二重係止するためのサイドタイプのリテーナ37が装着されている。そのため雌ハウジング31の下面における前後方向の中央位置には、リテーナ装着孔38が、ほぼ全幅に亘って各キャビティ32を貫通するようにして形成されている。
リテーナ37は同じく合成樹脂製であって、全体としては上記したリテーナ装着孔38に下方から緊密に挿入可能な格子状に形成され、雌端子35の被係止部35A(あご部)に係止する係止突部37Aが、キャビティ32の配置と対応した配置で設けられている。そしてリテーナ37は、図4に示すように、各係止突部37Aがキャビティ32の下方に退避して雌端子35の挿入を許容する仮係止位置と、図1に示すように、各係止突部37Aが雌端子35に係止可能にキャビティ32内に進入した本係止位置とに、それぞれ組み付け可能とされている。
【0019】
雌ハウジング31の上面における幅方向の中央部には、基板用コネクタ10の雄ハウジング11のロック突部27に係止する突起41を備えたロックレバー40が、前縁から後方を向いて延出した形態で撓み変位可能に設けられている。ロックレバー40の延出端は操作部42となっており、同操作部42を押圧することでロックレバー40を強制的に撓み変位できるようになっている。
【0020】
雌ハウジング31の後面には、図7に示すように、全周に亘ってフランジ44が形成されている。このうち上フランジ44Aは、幅方向の中央部の上端部が前方に張り出して形成され、ロックレバー40の操作部42の前端側の上部を横切った形態の保護壁45を構成している。一方、ロックレバー40の左右両側には保護壁46が立てられており、これらの保護壁45,46により、ロックレバー40に対して電線34が噛み込むこと等から保護するようになっている。
【0021】
フランジ44のうち下フランジが指掛部46となっており、同指掛部46に指を掛けることにより、上記したロックレバー40の操作部42の押圧操作や、それに続く雌ハウジング31の引き抜き動作の便宜が図られている。
雌ハウジング31の左右の外側面における後縁部には、左右のフランジ44Bの前面に突出するようにして、上記した相手の雄ハウジング11における両側壁の内面に形成されたガイド溝28に進入可能なガイドリブ47が形成されている。
【0022】
さて、雌ハウジング31には、同雌ハウジング31とは別体に形成されたホルダ50が装着可能となっている。
ホルダ50は同じく合成樹脂製であって、大まかには図8にも示すように、雌ハウジング31の後端側に外嵌可能なように、奥行のある横長の方形の枠状に形成されている。ホルダ50の天井壁の後縁における幅方向の中央部には、雌ハウジング31の保護壁45を嵌めて逃がす逃がし凹部51が形成されている。
【0023】
また、ホルダ50における後端の内周縁には、内側に所定寸法張り出すようにして後面壁52が形成されている。なお、下部側の後面壁52Aは背が高く、かつ下部領域が凹んだ段差状に形成されている。
ホルダ50の後面壁52には、詳しくは後記するように、当該ホルダ50を雌ハウジング31の前方から外嵌した場合に、概ね雌ハウジング31のフランジ44に当たってそれ以上の押し込みを規制する突当部54A〜54Cが形成されている。
【0024】
より詳細には、上部側の後面壁52には、上フランジ44Aに当たる横長の左右一対の第1突当部54Aが形成されている。左右の後面壁52には、左右のフランジ44Bに当たる背の低い第2突当部54Bが形成されている。両第2突当部54Bには、雌ハウジング31の左右の外側面に形成されたガイドリブ47を挿通して逃がす逃がし溝55が形成されている。下部側の後面壁52Aのうち上側の領域には、下フランジすなわち指掛部46に当たる第3突当部54Cが、ほぼ全幅に亘って形成されている。これらの突当部54A〜54Cが当たる雌ハウジング31のフランジ44の各部位が、本発明にいう被突当部となる。
【0025】
ホルダ50の後面からは、同ホルダ50が雌ハウジング31に対して正規位置まで押し込まれて押し込みが停止したところで、雌ハウジング31に係止して抜け止めを図るための弾性変位可能なロックアーム57A,57Bが突設されている。
2本の第1ロックアーム57Aは、ホルダ50における左右の後面壁52の第2突当部54Bの上方位置から突出形成され、先端の鈎部58が、雌ハウジング31の左右のフランジ44Bの上部位置の裏面に係止するようになっている。
一方、同じく2本の第2ロックアーム57Bは、下部側の後面壁52Aのうち下側の領域における左右両端部から突出形成され、先端の鈎部58が雌ハウジング31の後面下端に形成された指掛部46の左右両端部に寄った位置の裏面にそれぞれ係止するようになっている。
【0026】
ホルダ50の左右の側壁における前縁の下部位置には、基板Pの端縁がほぼ緊密に挿入される基板挿入溝60が形成されている。基板挿入溝60は詳細には、ホルダ50の下面壁の上面と面一となる位置において、側壁の前縁から奥に向けて切り込み形成されており、詳しくは後記するように、ホルダ50が装着された雌ハウジング31が相手の雄ハウジング11のフード部12内に正規嵌合された場合に、基板Pの端縁が奥に達するまでの深さを有している。
上記のように基板挿入溝60が形成されたことにより、ホルダ50の下面壁が全幅にわたって、基板Pの下面に係止する下側係止部61として機能する。一方、ホルダ50の側壁における基板挿入溝60の上側の側縁部が、基板Pの上面に係止する上側係止部62として機能するようになっている。
【0027】
続いて、本実施形態の作用を説明する。
基板用コネクタ10は、図1及び図2に示すように、基板Pの端縁寄りの所定位置において、雄ハウジング11の先端部を基板Pの端縁から所定寸法突出させた形態で載置され、表面実装により、各端子金具15の基板接続部17が半田付けで対応する導電路に接続され、併せて左右の固定金具20の取付板22が半田付けで基板Pに固定される。
【0028】
ハーネス側コネクタ30では、図4に示すように、リテーナ37が仮係止位置にある状態で、雌ハウジング31に設けられた各キャビティ32に対し、電線34の端末に接続された雌端子35が後方から挿入され、ランス33により一次係止される。続いてリテーナ37が本係止位置に押し込まれることで、各雌端子35が二重係止される(図1参照)。ここで、雌ハウジング31の後面から引き出された電線34は適宜に束ねられ、ワイヤハーネスが構成される。
【0029】
次に、上記のように雌端子35が収容されて二重係止された雌ハウジング31に対し、図4の矢線bに示すように、ホルダ50が前方から外嵌される。ホルダ50が押し込まれてその終盤になると、ガイドリブ47が逃がし溝55に挿入されて案内され、また、各ロックアーム57A,57Bが、左右のフランジ44B並びに指掛部46に当たって弾性撓みしつつ押し込まれる。ホルダ50側の突当部54A〜54Cが雌ハウジング31のフランジ44に設定された被突当部に当たったところで押し込みが停止され、このときロックアーム57A,57Bの鈎部58が、左右のフランジ44B並びに指掛部46を通過することで、ロックアーム57A,57Bが復元変位しつつそれらに係止し、これにより図1に示すように、ホルダ50が雌ハウジング31の後端部の正規位置に装着された状態となる。
【0030】
このように組み付けられたハーネス側コネクタ30が、図1の矢線cに示すように、基板用コネクタ10に対して嵌合される。詳細には、雌ハウジング31が相手の雄ハウジング11のフード部12内に嵌合され、嵌合が進むと、フード部12の先端側がホルダ50内に進入し、またロックレバー40を弾性撓みさせつつ押し込まれ、雌ハウジング31の先端が端子保持部13に当たる正規位置まで押し込まれると、図10に示すように、ロックレバー40が復元変位しつつ雄雌のハウジング11,31が正規に嵌合した状態にロックされる。これに伴い、対応する端子金具15と雌端子35同士が正規に電気接続された状態になる。
またこの間に、基板Pの端縁がホルダ50に設けられた基板挿入溝60に挿入され、両ハウジング11,31が正規嵌合されたところで、基板挿入溝60の奥端まで進入した状態となる。
【0031】
図11に示すように、両コネクタ10,30の嵌合接続が完了した状態において、例えば同図の矢線xに示すように、ハーネス側コネクタ30の後方に引き出された電線34の束(ワイヤハーネス)が上方に引っ張られたとしても、ホルダ50に設けられた下側係止部61が、広い範囲に亘って基板Pの下面側の端縁に係止することで、雌ハウジング31さらにはこれに嵌合された基板用コネクタ10が傾動することが規制され、ひいては固定金具20の半田付け部分に過大な応力が作用することが防がれる。
また、同図の矢線yに示すように、電線34の束(ワイヤハーネス)が下方に引っ張られると、雌ハウジング31が同図の時計回り方向に多少なりとも傾動しようとするが、左右の上側係止部62が基板Pの上面側の端縁に係止することで、雌ハウジング31さらにはこれに嵌合された基板用コネクタ10が同方向に傾動することがより確実に規制される。
【0032】
以上のように本実施形態によれば、ハーネス側コネクタ30に装着されたホルダ50に対し、同コネクタ30が相手の基板用コネクタ10に正規に嵌合された際に、基板Pの端縁が進入する基板挿入溝60を設けて、同基板挿入溝60の下側と上側に設けられた係止部61,62で基板Pの端縁を挟むようにしたから、ハーネス側コネクタ30の後面側に引き出された電線34の束(ワイヤハーネス)が上方または下方に引っ張られたとしても、係止部61,62が基板Pに係止することで、雌ハウジング31さらには相手の基板用コネクタ10が傾動することが規制され、ひいては固定金具20の半田付け部分に過大な応力が作用することが防がれる。
そのため、固定金具20の半田付け部が破壊されて基板用コネクタ10が位置ずれし、ひいては端子金具15の半田付け部分が損傷を受けるといったことを未然に防止することができる。
【0033】
係止部61,62が設けられたホルダ50は雌ハウジング31とは別体に形成され、しかもホルダ50側のみにロックアーム57A,57Bを設けた構造としたから、雌ハウジング31の製造金型は既存のままに留めて、ホルダ50側の製造金型のみを新たに起こせばよく、安価に対応することができる。
【0034】
仮にホルダ50に設けられた係止部61,62が雌ハウジング31と一体的に設けられた構造であると、サイドタイプのリテーナ37を雌ハウジング31に設ける場合に、係止部61,62と干渉する可能性があって設けることができないか、その配設位置に制約を受けるが、係止部61,62は、雌ハウジング31とは別体に形成された後付けされるホルダ50に設けたから、サイドタイプのリテーナ37の配設位置について任意に設定することができる。
【0035】
<関連技術>
基板用コネクタ10では、低背化の要求により薄肉化される傾向にある。そのような場合、相手のハーネス側コネクタ30から引き出された電線34が上方に引っ張られて同コネクタ30が傾動すると、薄肉化されたフード部12の上面が破損に到ることが懸念される。
その防止対策の一例として、図12に示すように、高強度のフィルム70や金属箔をフード部12の上面に貼り付けて補強するとよい。別部品で補強するのであるから、基板用コネクタ10における雄ハウジング11の設計変更は不要にできる。
【0036】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)ホルダに設ける基板挿入溝の位置は、上記実施形態に例示した位置に限らず、例えば側壁の高さ方向の途中位置等の他の位置でもよく、側壁の高さ方向の途中位置であっても、その上下両側に基板を挟む係止部を構成することができる。
(2)ホルダに設ける係止部について、基板の上面側に係止する上側係止部についてはこれを割愛してもよく、そのようなものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0037】
(3)ホルダの押し込みを停止するべくホルダに設けられる突当部の形状や配設位置は、雌ハウジングの既存の部位に当てる限りは、任意の形状、配設位置とすることができる。
(4)ホルダを抜け止めするべくホルダに設けるロックアームの形状や配設位置は、雌ハウジングの既存の部位に係止できる限りは、任意の形状、配設位置とすることができる。
(5)上記実施形態では、ホルダが概ね枠状をなし、雌ハウジングに対しては前方から外嵌して装着した場合を例示したが、雌ハウジングの形状等の条件に応じて、ホルダの形状や装着方法は任意に設定できる。
【符号の説明】
【0038】
P…プリント配線基板(基板)
10…基板用コネクタ
11…雄ハウジング
12…フード部
15…端子金具
20…固定金具
22…取付板
30…ハーネス側コネクタ
31…雌ハウジング(ハウジング)
34…電線
35…雌端子
37…リテーナ
38…リテーナ装着孔
44…フランジ(被突当部)
46…指掛部
50…ホルダ
54A〜54C…突当部
57A,57B…ロックアーム(ロック部材)
60…基板挿入溝
61…下側係止部
62…上側係止部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フード部を有するとともに両側面に設けられた固定金具が半田付けにより基板の上面に固定された基板用コネクタに対して嵌合されるコネクタであって、
ワイヤハーネスの端末に接続され前記基板用コネクタの前記フード部の内部に嵌合可能なハウジングと、
このハウジングとは別体に形成されたホルダと、が備えられ、
このホルダには、前記ハウジングに弾性的に係合して当該ホルダが前記ハウジングに装着された状態にロックするロック部材が設けられるとともに、
当該ホルダが前記ハウジングに装着された上でこのハウジングが前記基板用コネクタの前記フード部に嵌合された場合に前記基板の下面に係止する係止部が設けられていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記係止部は、前記基板を上下両面から挟持可能となっていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ホルダは前記ハウジングに対して前方から外嵌可能な枠状に形成され、このホルダには、前記ハウジングに設定された被突当部に当たって押し込みを規制する突当部と、この突当部が前記被突当部に当たったところで前記ハウジングの後面に弾性的に係止して抜け止めするロックアームとが設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングの側面には、このハウジングに収容された端子金具に係止して抜け止めするリテーナが装着されるリテーナ装着孔が開口されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項1】
フード部を有するとともに両側面に設けられた固定金具が半田付けにより基板の上面に固定された基板用コネクタに対して嵌合されるコネクタであって、
ワイヤハーネスの端末に接続され前記基板用コネクタの前記フード部の内部に嵌合可能なハウジングと、
このハウジングとは別体に形成されたホルダと、が備えられ、
このホルダには、前記ハウジングに弾性的に係合して当該ホルダが前記ハウジングに装着された状態にロックするロック部材が設けられるとともに、
当該ホルダが前記ハウジングに装着された上でこのハウジングが前記基板用コネクタの前記フード部に嵌合された場合に前記基板の下面に係止する係止部が設けられていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記係止部は、前記基板を上下両面から挟持可能となっていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ホルダは前記ハウジングに対して前方から外嵌可能な枠状に形成され、このホルダには、前記ハウジングに設定された被突当部に当たって押し込みを規制する突当部と、この突当部が前記被突当部に当たったところで前記ハウジングの後面に弾性的に係止して抜け止めするロックアームとが設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングの側面には、このハウジングに収容された端子金具に係止して抜け止めするリテーナが装着されるリテーナ装着孔が開口されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−59501(P2012−59501A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200904(P2010−200904)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
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