説明

コピー装置

【課題】コピー元記録媒体に記録されているデータとコピー先記録媒体に記録されているデータとの同一性を早期に確認できるようにする。
【解決手段】コピー元ハードディスクドライブ装置6M(以下「コピー元HD」)からコピー先ハードディスクドライブ装置6T1(以下「コピー先HD」)へデジタルデータをコピーする際に、コピー元HD6Mからバスライン20に出力されるデータを、コピー先HD6T1へ書き込むと同時に、同じバスライン20に接続されている制御手段3T2の演算部31でハッシュ値を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルデータを記録媒体の間で転送した場合に、転送前のデータ内容と転送後のデータの内容とが同一であることを保証するデジタルデータ固有値を算出する機能を備えたコピー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
記録媒体の記憶容量が増大している。大容量の記録媒体の間で、記録されているデータを転送してコピーするためのコピー装置が提案されている。このようなコピー装置によって記録データが同じ記録媒体を多数作ることが可能となったが、コピー装置でデータを転送した際に、データの一部が壊れる場合がある。
そこで、コピー元とコピー先の記録媒体の間で、記録されているデータが同一であることを確認するため、ハッシュ値を照合するといった方法が採られる。
このハッシュ関数(hash function)によって、デジタルデータから得られたハッシュ値は、そのデジタルデータの固有値であり、ハッシュ値が同じデジタルデータは、内容の同一が担保されているものと推定できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、記録媒体の容量は、近年増大しているため、記録媒体に記録されている全てのデジタルデータを読み出して、そのハッシュ値を算出すると、ハッシュ値を得るための演算時間が長期化するという問題がある。特に、データがコピーされた記録媒体間でデータの同一性を確認する場合には、コピー作業の後に、ハッシュ値を算出する作業を行うため、特に作業時間が長期化するといった問題があった。
この発明は、記録媒体間でデータのコピーを行う場合に、コピー元記録媒体に記録されているデータとコピー先記録媒体に記録されているデータとの同一性を早期に確認できるデータ固有値算出機能を有するコピー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以上のような目的は、以下の本発明により達成される。
(1) コピー元ハードディスクドライブ装置に記録されているデータを分割して順に読み取る読取手段と、
前記読取手段で読み取られたデータをコピー先ハードディスクドライブ装置へ読み出された順に書き込む書き込み手段と、
前記読取手段で読み取ったデータを前記書き込み手段へ供給するデータ供給手段と、
前記データ供給手段がデータを書き込み手段へ供給した際に、同時に供給されたデータを受け取り、順に受け取ったデータに基づいてデジタルデータ固有値を順に算出していく固有値算出手段とを備えたコピー装置。
(2) デジタルデータ固有値はハッシュ値である上記(1)に記載のコピー装置。
(3) 前記固有値算出手段が算出したデジタルデータ固有値を、前記コピー先ハードディスクドライブ装置において、データが書き込まれていない空き記憶領域に記録する固有値記録手段を有する上記(1)又は(2)に記載のコピー装置。
【発明の効果】
【0005】
本発明のコピー装置によれば、コピー元ハードディスクドライブ装置からコピー先ハードディスクドライブ装置にデータコピー処理を行っている際に、そのコピーされるデータの固有値の算出処理が同時に行われているので、コピー処理が完了した時点で、固有値が算出されており、即座に、コピー元ハードディスクドライブ装置に記録されているデータとコピー先ハードディスクドライブ装置に記録されているデータの同一性を確認することが可能となり、コピー作業の効率化を図ることができる。また、算出した固有値をコピー先ハードディスクの空き領域に記録することにより、固有値の管理が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明のコピー装置1の好適実施形態について添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0007】
本発明のコピー装置1は、マスター側ハードディスクドライブ装置6Mとの間で、コマンドやデータの送受信を行うマスター制御手段3Mと、第1のターゲット側ハードディスクドライブ装置6T1との間で、コマンドやデータの送受信を行う第1のターゲット制御手段3T1と、第2のターゲット側ハードディスクドライブ装置6T2との間で、コマンドやデータの送受信を行う第2のターゲット制御手段3T2と、各制御手段3M、3T1、3T2へ制御内容を指示する中央制御手段2と、これらの制御手段2、3M、3T1、3T2を相互に通信可能に接続するバスライン20とを備えている。
【0008】
マスター側制御手段3Mには、外部メモリ4Mと、マスター側(コピー元)ハードディスクドライブ装置6Mを接続するための接続部(コネクタ)5Mとが接続されている。外部メモリ4Mには、マスター側ハードディスクドライブ装置6Mから読み取ったデータが、一時格納される。
ターゲット側制御手段3T1には、外部メモリ4T1と、ターゲット側(コピー先)ハードディスクドライブ装置6T1を接続するための接続部(コネクタ)5T1とが接続されている。外部メモリ4T1には、ターゲット側ハードディスクドライブ装置6T1に書き込まれるデータが、一時格納される。
同様に、ターゲット側制御手段3T2には、外部メモリ4T2と、ターゲット側(コピー先)ハードディスクドライブ装置6T2を接続するための接続部(コネクタ)5T2とが接続されている。外部メモリ4T2には、ターゲット側ハードディスクドライブ装置6T2に書き込まれるデータが、一時格納される。
【0009】
図2に示されているように、ターゲット側制御手段3T2には、内部に演算部31と、内部メモリ32を備えている。内部メモリ32は、ハッシュ値を演算するための演算プログラムや、ハードディスクドライブ装置との間で送受信されるコマンドなどを記憶したROMや、ハッシュ関数によって算出されたハッシュ値を記憶する書き換え可能なRAM、ワーキングエリアとしてのRAMなどを有している。
中央制御手段2は、処理部とメモリとを備え、処理部によってコピー動作指示や、ハッシュ値計算指示等が行われ、メモリには、コピー処理をおこなうためのプログラムや、他の制御手段3T1、3T2等へ送信する指示コマンド等が記録されているほか、ワーキングエリアとしてのメモリが備えられている。
【0010】
これらの制御手段2、3M、3T1、3T2は、マイクロコンピュータやPLD(Programmable Logic Device)などの集積回路で構成される。この装置1は、マスター側ハードディスクドライブ装置6Mに記録されているデータを、2つのターゲット側ハードディスクドライブ装置6T1、6T2にコピーするモードと、2つのターゲット側ハードディスクドライブ装置6T1、6T2の一方にデータをコピーし、コピーとして作成されたターゲット側ハードディスクドライブ装置のハッシュ値を同時に演算できるモードの2つのモードを備えている。
【0011】
このように構成されたコピー装置1の動作について、図3〜図5に示されているフローチャートに基づいて説明する。図3は、ハッシュ値演算モードにおける、中央制御手段2の制御フローチャートを示すものである。
最初に接続されたマスター側ハードディスクドライブ装置6Mの容量を確認する(ステップS101)。次に、マスター側ハードディスクドライブ装置6Mに接続されている制御手段3Mの外部メモリ4Mの記憶容量で、ステップS101で読み取った容量を除して、マスター側ハードディスクドライブ装置の記憶容量の全領域を読み出すために必要な読取回数Nを算出する(ステップS103)。
【0012】
制御手段3Mに対して、読み出し命令を出力する(ステップS105)。これに基づき、制御手段3Mは、マスター側ハードディスクドライブ装置6Mの記憶領域から、外部メモリ4Mの容量分のデータを読み出し、読み出したデータを外部メモリ4Mに記録する。具体的なデータが書き込まれる領域か否かにかかわりなく、物理的に設定された全記憶領域を読み出すミラーコピーを行うための処理であるため、実際のデータが書き込まれていない領域を読み出した場合の信号であっても、この読み出したときに得られた信号をデータとみなして処理を行う。
【0013】
次に制御手段3Mに対して、送信命令を出力する(ステップS107)。これによって、制御手段3Mは、ステップS105に基づき外部メモリ4Mに記録されていたデータをバスライン20に出力する。バスイラン20を介して、各制御手段3T1、3T2は、データを取り込み、外部メモリ4T1、4T2にそれぞれ取り込んだデータを記録する。
そして、制御手段3T1、3T2に対して、ターゲット側ハードディスクドライブ装置6T1、6T2にデータを書き込むことを指令する書き込み命令を出力すし(ステップS109)、読み出し回数mをインクリメントする(ステップS111)。さらに、読み出し回数mがステップS103で求めたコピー終了読み出し回数Nに到達したか判断し(ステップS113)、到達していない場合には(ステップS113:N)、ステップS105〜113を繰り返し実行する。到達した場合には(ステップS113:Y)、終了コマンドを制御手段3T1、3T2へ出力する(ステップS115)。
【0014】
通常のコピーモードでは、ここで処理が終了する。ハッシュ値算出モードでは、ステップS115の次に、制御手段3T2で算出されているハッシュ値を読み込む(ステップS117)。このハッシュ値は、ターゲット側ハードディスクドライブ装置6T1にデータを書き込む処理が実行されている際に、同時に算出されているので、ターゲット側ハードディスクドライブ装置6T1へのデータのコピーが終了した時点で、既に最終的なハッシュ値は算出されている。
読み取ったハッシュ値は、制御手段2に接続されている出力装置(図示しない)から、出力される(ステップS119)。出力装置は、例えば、ディスプレイ装置やプリンタであり、ディスプレイ装置に表示され、或いは、プリンタに印刷されることにより出力される。プリンタに印刷する場合には、粘着面を備えたシールに印刷すれば、ハッシュ値が印刷されたシールを、そのハッシュ値を固有値とするデータが書き込まれたターゲット側ハードディスクドライブ装置に貼り付けることで、データ固有値を常時記録媒体に表示させることができる。
【0015】
次に、図4に基づいて、ターゲット側ハードディスクドライブ装置6T1に接続された制御手段3T1の処理について説明する。図4に示されているフローチャートは、図3の処理に平行して行われる。
ステップS107の送信命令によって、バスライン20に出力されたデータを受信したか判断する(ステップS201)。受信しない場合には、この処理を繰り返す。受信した場合には、外部メモリ4T1に、取り込んだデータを記録する(ステップS203)。次にステップS109の書き込み命令を受信したか判断し(ステップS205)、受信した場合には、ターゲット側ハードディスクドライブ装置6T1へ、外部メモリ4T1に記録されていたデータを書き込む(ステップS207)。そして、ステップS115の終了コマンドを受信したか判断し(ステップS209)、受信していない場合には(ステップS209:N)、ステップS201〜209を繰り返す。受信した場合には(ステップS209:Y)、処理を終了する。このような処理は、コピーモードの場合には、ターゲット側ハードディスクドライブ装置6T2に接続された制御手段3T2においても同時に行われる。バスライン20に出力されたデータは、同時に制御手段3T1、3T2に供給されるからである。
【0016】
図5に示されているフローチャートに基づいて、データ固有値演算処理について説明する。この実施形態では、ターゲット側ハードディスクドライブ装置6T2に接続される制御手段3T2が、データ固有値算出手段とて機能する。
ステップS107の送信命令によって、バスライン20に出力されたデータを受信したか判断する(ステップS301)。受信しない場合には、この処理を繰り返す。受信した場合には、外部メモリ4T2に、取り込んだデータを記録する(ステップS303)。次にステップS109の書き込み命令を受信したか判断し(ステップS305)、受信した場合には、演算部31で外部メモリ4T2のデータのハッシュ値を演算する(ステップS307)。算出されたハッシュ値は、一旦内部メモリ32内にストアされる(ステップS309)。そして、ステップS115の終了コマンドを受信したか判断し(ステップS311)、受信していない場合には(ステップS311:N)、ステップS301〜311を繰り返す。この場合に、外部メモリ4T2には、マスター側ハードディスクドライブ装置6Mから順に読み出されたデータが上書きれていく。このデータを、ステップS301〜311の処理を繰り返す度に、ステップS307のハッシュ値計算において、順に組み込んで計算されていく。このため、制御手段3T2にデータを送信すれば、その度毎に、送られた全データのハッシュ値(固有値)が演算されていくこととなる。
【0017】
最終的に、最後に送られたデータを組み込んだハッシュ値の計算が終了した時点で、ターゲット側ハードディスクドライブ装置6T1に記録された全データのハッシュ値の計算が終了していることとなる。
そして、ステップS115の終了コマンドを受信した場合には(ステップS311:Y)、内部メモリ32に記録されている最終的に算出されたハッシュ値を制御手段2へ供給する(ステップS313)。更に、ターゲット側ハードディスクドライブ装置6T2の空き領域に、最終的に算出されているハッシュ値をテキストファイルとして記録する。ここで空き領域とは、コピーされたデジタルデータが記録されていない領域である。空き領域は、ターゲット側ハードディスクドライブ装置6T2の記録領域において、例えば、ミーラーコピーされた領域以外の領域として、検出することができる。この場合、ハードディスクは、FAT32方式でフォーマットされており、記録されたハッシュ値をオペレーションシステムで管理することが可能である。
なお、上記図5に示されたフローチャートにおいて、ステップS303、305を省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のコピー装置の構成を示すブロック図である。
【図2】制御手段の構成を示すブロック図である。
【図3】処理内容を示すフローチャートである。
【図4】書き込み処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図5】ハッシュ値計算処理の内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0019】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コピー元ハードディスクドライブ装置に記録されているデータを分割して順に読み取る読取手段と、
前記読取手段で読み取られたデータをコピー先ハードディスクドライブ装置へ読み出された順に書き込む書き込み手段と、
前記読取手段で読み取ったデータを前記書き込み手段へ供給するデータ供給手段と、
前記データ供給手段がデータを書き込み手段へ供給した際に、同時に供給されたデータを受け取り、順に受け取ったデータに基づいてデジタルデータ固有値を順に算出していく固有値算出手段とを備えたコピー装置。
【請求項2】
デジタルデータ固有値はハッシュ値である請求項1に記載のコピー装置。
【請求項3】
前記固有値算出手段が算出したデジタルデータ固有値を、前記コピー先ハードディスクドライブ装置において、データが書き込まれていない空き記憶領域に記録する固有値記録手段を有する請求項1又は2に記載のコピー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−108410(P2008−108410A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216760(P2007−216760)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(396014636)株式会社ワイ・イー・シー (13)
【Fターム(参考)】