説明

コポリマーラテックスと、その製造方法と、その紙・厚紙加工での使用

少なくとも一種の下記式1の連鎖移動剤の存在下で、ビニルモノマーと、非共役ジエンと、任意成分のコモノマー、特にアクリルコモノマーとから製造されるコポリマーラテックス。このラテックスは紙および厚紙の加工に特に適している。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連鎖移動剤または分子量調整剤を用いて製造したハロゲンを含まないコポリマーのラテックスに関するものである。このコポリマーラテックスは紙、特に臭いに敏感な用途(例えば食品包装)の分野で使用される紙の加工(couchage)で使用できる。
【背景技術】
【0002】
紙および厚紙の加工(couchage)で使用されるラテックスは良好な機械特性(印刷適性、コーティングの耐ピック性(resistance a l'arrachage du couchage))を有していなければならない。そのためには連鎖移動剤(CTA)または調整剤を用いて重合中にコポリマーのラテックスの分子量を調節する必要がある。
【0003】
これまでは連鎖移動剤として有機ハロゲン化合物(例えば四塩化炭素、四臭化炭素)が広く用いられていたが、これらは生態学的な影響から数年前に禁止され、代わりにメルカプタンタイプの硫黄含有移動剤、特にtert-ドデシルメルカプタン(TDM)が用いられている。メルカプタンはコポリマーのラテックス中の鎖の分子量を調節する役目をうまく果たし、良好なドライまたはウェットでのピック耐性(resistance a l'arrachage)を有するラテックスを得ることができる。
【0004】
しかし、メルカプタンの主たる欠点は不快臭がひどいことである。その悪臭はラテックスだけでなく、そのラテックスで作った紙および/または厚紙に残り、紙・厚紙の使用およびその分野での開発が制限される。
【0005】
従って、他の技術的解決法が提案されている。特許文献1(米国特許第5,837,762号明細書)にはコポリマーラテックスの製造でのロジン由来の連鎖移動剤の使用が記載されている。しかし、ロジンの調整効率はメルカプタンの調整効率よりはるかに低いため、コート紙のドライピック耐性の許容値を達成するためには、ラテックス重合中に9%ロジンを用いる必要がある。しかも、ロジンは天然物であり、その量は起源によって大きく異なる。また、ロジンは固有の強い色(黄色から褐色)を呈する。ロジンの使用量を考慮するとこれはコート紙では欠点になるということは理解できよう。
【0006】
特許文献2(フランス国特許第2,665,450号公報)には不快な残臭が全くあるいはほとんどなく、臭いの少ないラテックスの調製で移動剤として用いることが可能な置換した二硫化ジフェニルから成る非常に大きな有機硫黄移動剤群が記載されている。しかし、この特許には二硫化ジフェニルのみではCTAとして充分に効果的ではないということが記載されており、分子量調整剤として他の有機二硫化物、例えば二硫化チウラム、二硫化ジエチルキサントゲン、アミンで置換された二硫化ジフェニルが記載されている。これらの添加剤の大部分は不快臭を発する抑制剤として知られている。この特許が勧めている、TDMで処理された紙と同様の満足のいく特性(印刷適性、コーティングの耐ピック性)を有する紙を得るための重合用移動剤の量は0.5%〜10%で、最適には0.5〜5%である。
【0007】
特許文献3〜5にはコート紙用途のラテックスの移動剤としてα−メチルスチレンダイマーを単独または混合物として用いることが記載されている。しかし、これは効果が低いため材料の良好な最終特性を得るには通常の使用量よりもはるかに多くの量を用いなければならない。
【0008】
特許文献6(欧州特許第1,380,597号公報)には連鎖移動剤として複数のタイプの過酸化物(例えば、ジ−tert−ブチル過酸化物、クミルヒドロペルオキシドまたはジ−tert−ブチルヒドロペルオキシド等)を用いることが記載されている。しかし、類似の性能(粒径、ガラス転移温度(Tg)、ゲル含有量およびコート紙の固有特性)を得るのに使用する過酸化物量はTDMの量より2倍以上多くしなければならない。また、生成物の臭いに関する記述はない。
【0009】
特許文献7(米国特許第6,369,158号明細書)にはタイヤ用途で圧倒的に用いられている高分子量のSBR(スチレン−ブタジエンゴム)型ラテックスの合成でのジベンジルトリチオカルボネート(DBTTC)の使用が記載されている。このエラストマータイプの製品はガラス転移温度が低いという特徴を有し、エラストマータイプの化合物が望まれない用途には適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,837,762号明細書
【特許文献2】フランス国特許第2,665,450号公報
【特許文献3】日本国特許第7166496号公報
【特許文献4】日本国特許第7278213号公報
【特許文献5】日本国特許第2001/003298号公報
【特許文献6】欧州特許第1,380,597号公報
【特許文献7】米国特許第6,369,158号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、ハロゲンを含まず、メルカプタンのようなひどい不快臭を発せず、臭いに敏感な用途分野で使用される紙や厚紙の加工で使用可能で、しかも、充分な接着強度(すなわち耐ピック性)を有するコポリマーラテックスの製造に適した調整剤系を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の対象は、少なくとも一種の連鎖移動剤を用いて製造された、下記(a)〜(c):
(a)10〜80重量%の一種または複数のビニルモノマー、
(b)20〜70重量%の一種または複数の共役ジエンモノマー、
(c)アクリルモノマー、エチレン型不飽和ジカルボン酸モノマー、少なくとも一種のニトリル官能基をさらに含むモノマー、ビニルエステルモノマーおよび(メタ)アクリルアミドモノマーの中から選択される、共重合可能な少なくとも一種の不飽和エチレン基を含む70重量%以下の任意成分の一種または複数のモノマー、
を重合した形で含み、ガラス転移温度が−30℃〜70℃、好ましくは−20℃〜40℃のコポリマーのラテックスであって、上記の少なくとも一種の連鎖移動剤が下記式1で示されることを特徴とするコポリマーのラテックスにある:
【化1】

【0013】
[ここで、
Rは−CH2R1、−CHR1R’1および−CR1R’1R’’1の中から選択され、ここで、R1、R’1、R’’1は互いに同一でも異なっていてもよく、互いに独立して、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよい飽和、不飽和または芳香族炭素環または複素環、置換されていてもよいアルキルチオ、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいジアルキルアミノ、有機金属基、アシル、アシルオキシ、カルボキシ(およびそのエステルおよび/または塩)、スルホン酸(およびその塩および/またはスルホネート)、アルコキシカルボニルまたはアリールオキシカルボニル、および任意の重合機構で調製されたポリマー鎖の中から選択される基を表し、
Zは水素、ハロゲン(塩素、臭素、ヨウ素)、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよい複素環、置換されていてもよいアルキルチオ−SR(Rは上記定義のもの)、置換されていてもよいアルコキシカルボニル、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル(−COOR2)、カルボキシ(−COOH)、置換されていてもよいアシルオキシ(−OCOR2)、置換されていてもよいカルバモイル(−CONHR2、−CONHR2R3)、シアノ(−CN)、ジアルキルホスホネートまたはジアリールホスホネート[−P(=O)OR22]、ジアルキルホスフィネートまたはジアリールホスフィネート[−P(=O)R22]、任意の重合機構で調製されたポリマー鎖、OR2基および−NR2R3基の中から選択され、ここで、R2およびR3は互いに同一でも異なっていてもよく、C1〜C18のアルキル、C2〜C18のアルケニル、C6〜C18のアリール、複素環式、アラルキルまたはアルカリルからなる群の中から選択され、これらの群はそれぞれ置換されていてもよく、この置換基はエポキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、カルボキシ(およびそのエステルおよび/または塩)、スルホン酸(およびその塩および/またはスルホネート)、アルコキシカルボニルまたはアリールオキシカルボニル、イソシアネート、シアノ、シリル、ハロおよびジアルキルアミノの中から選択される]
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記定義のR基はラジカルR・の形で遊離し、これによってフリーラジカル重合が開始する。
連鎖移動剤の中では特にジチオエステル(少なくとも一つの−C(=S)S−単位を含む化合物)、ジチオカルボネートまたはキサンテート(少なくとも一つの−O−C(=S)S−単位を含む化合物)、ジチオカルバメート(少なくとも一つの−N−C(=S)S−単位を含む化合物)およびトリチオカルボネート(少なくとも一つの−S−C(=S)S−単位を含む化合物)が挙げられる。
【0015】
本発明で有利に使用可能なジチオエステルは式(I)に対応するものである:
【化2】

【0016】
(ここで、Zは−C65、−CH3、ピロール基、−OC65、ピロリジノン基、−OC65、−OC25、−N(C252、有利には式(II)の−S−CH2−C65基(ジベンジルトリチオカルボネートまたはDBTTC)の中から選択される基を表す)。
【化3】

【0017】
脂溶性で且つ水に溶けないか、あまり溶けない上記定義の連鎖移動剤が特に好ましい。式(II)の連鎖移動剤はこれらの条件に特に一致する。
連鎖移動剤としては、ジベンジルトリチオカルボネート(DBTTC)およびその誘導体が特に適している。
【0018】
連鎖移動剤の使用量は一般に、100重量%のモノマー(a)〜(c)に対して0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、特に0.1〜3重量%である。
【0019】
上記の連鎖移動剤の量によって、遊離したコポリマー(コポリマーから室温でトルエンで24時間で抽出された画分)が下記の特徴を有するコポリマーのラテックスを合成することができる:
5000≦Mn≦80000、好ましくは5000≦Mn≦50000、
10000≦Mw≦270000、好ましくは10000≦Mw≦200000
(ここで、MnおよびMwはそれぞれ数平均分子量と重量平均分子量を表す)。
【0020】
驚くことに、上記定義の連鎖移動剤の使用量を一般に用いられる連鎖移動剤(メルカプタン、ジチオールおよびトリチオール等)の使用量よりも減らしても、コポリマーの機械特性(例えば、接着強度、耐ピック性等)が維持できる、ということを本発明者は見出した。
【0021】
ビニルモノマー(a)としては特にビニル芳香族モノマー、例えばスチレン、α-メチルスチレン、パラ−エチルスチレン、tert-ブチルスチレンおよび/またはビニルトルエンを含む。一種または複数のビニルモノマーの混合物を用いることもできる。好ましいモノマーはスチレンおよびα−メチルスチレンである。一種または複数のモノマー(a)は一般にモノマーの全重量の10〜80重量%、好ましくは25〜75重量%、大抵は好ましくは35〜70重量%の範囲で用いられる。
【0022】
ラテックスの製造に適した共役ジエンモノマー(b)は例えば1,3−ブタジエン、イソプレンおよび2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンのような共役ジエンモノマーである。本発明では1.3−ブタジエンが好ましい。一般に、ポリマー相中に存在する共役ジエンモノマーの量はモノマーの全重量の20〜70重量%、好ましくは20〜65重量%、さらに好ましくは20〜55重量%、さらに好ましくは30〜50重量%、大抵は30〜45重量%である。
【0023】
共重合可能なコモノマーとして本発明で使用可能なアクリルモノマー(c)には特にアクリル酸、メタクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよび/またはアルコキシアルキル(メタ)アクリレート(ここで、アルキル(n−アルキル、イソ−アルキルまたはtert-アルキル)のアルキル基は1〜20個の炭素原子を有し、少なくとも一種のエポキシまたはアミド基および/または少なくとも一種のアミン基で置換されていてもよい)、(メタ)アクリル酸とグリシジルエステル、ネオデカン酸またはピバル酸、ベルサチック酸(Versatic acid)のようなネオ酸との反応物およびこれらの混合物がある。
【0024】
好ましいアクリルモノマーはアクリル酸、メタクリル酸、アルキル(メタ)アクリレートおよび/またはヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよび/またはアルコキシアルキル(メタ)アクリレート(ここで、アルキル基はC1〜C10、有利にはC1〜C8アルキル基である)。好ましいアクリルモノマーの例としては特にアクリル酸、メタクリル酸、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、エチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、4−メチル−2−ペンチルアクリレート、2−メチルブチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、セチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、メトキシブチルアクリレート、メトキシエトキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートおよび/またはヒドロキシブチルアクリレートが挙げられる。
極めて好ましいアクリルモノマーはアクリル酸、メタクリル酸、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよびメチルメタクリレートである。
【0025】
ポリマー相中に存在する任意成分のアクリルモノマーの量は選択した一種または複数のモノマーの量に依存するが、一般的な範囲はモノマーの全重量の70重量%以下、好ましくは1〜70重量%、有利には1〜60重量%であり、大抵は0〜51重量%にするのが好ましい。
【0026】
本発明の共重合可能なコモノマー(c)として使用可能なエチレン型不飽和ジカルボン酸モノマーは不飽和エチレンジカルボン酸の他に、そのモノエステルおよび/または無水物を含む。エチレン系不飽和ジカルボン酸モノマーの例としてはフマル酸、クロトン酸、マレイン酸および無水マレイン酸が挙げられる。
【0027】
本発明の共重合可能なコモノマー(c)として使用可能なニトリルモノマーは2〜4の炭素原子を直鎖または分岐鎖の配置で含み且つアセチル基または追加のニトリル基で置換されていてもよい重合可能な不飽和脂肪族ニトリルモノマーを含む。このニトリルモノマーには例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびフマロニトリルがあり、アクリロニトリルが好ましい。このニトリルモノマー(用いる場合)は100重量部のモノマーに対して約25重量部以下、好ましくは0〜15重量部で含むことができる。
【0028】
共重合可能なモノマー(c)として使用可能なビニルエステルモノマーには、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニル−2−エチルヘキサノエート、ステアリン酸ビニルおよびベルサチック酸ビニルがある。本発明での使用に好ましいビニルエステルモノマーは酢酸ビニルである。一般に、ポリマー相中に存在するビニルエステルモノマー(用いる場合)の量はモノマーの全重量の0〜45重量%、好ましくは0〜35重量%である。
【0029】
共重合可能なモノマー(c)として使用可能な(メタ)アクリルアミドには、α,β−オレフィン−不飽和カルボン酸のアミド、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびジアセトンアクリルアミドがある。好ましい(メタ)アクリルアミドモノマーはアクリルアミドである。一般に、ポリマー相中に存在する(メタ)アクリルアミドモノマー(用いる場合)の量は選択したモノマーに依存するが、一般的な範囲はモノマーの全重量の0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%、最も好ましくは0〜2重量%である。
【0030】
本発明の別の対象は、下記(A)〜(D):
(A)10〜80重量%の一種または複数のビニルモノマー(a)、
(B)20〜70重量%の一種または複数の共役ジエンモノマー(b)、
(C)任意成分としての、アクリルモノマー、エチレン系不飽和ジカルボン酸モノマー、ニトリルモノマー、ビニルエステルモノマーおよび(メタ)アクリルアミドモノマーの中から選択される70重量%以下の一種または複数の共重合可能なモノマー(c)、
(D)下記式で示される少なくとも一種の連鎖移動剤(CTA):
【化4】

【0031】
(ここで、RおよびZは上記定義のもの)
から、0〜130℃、好ましくは20〜130℃、さらに好ましくは60〜130℃、特に60〜100℃、特に75〜100℃の温度で、一種または複数の乳化剤または界面活性剤および/または一種または複数の開始剤および/または一種または複数の保護コロイドおよび/または一種または複数の添加剤、例えば消泡剤、湿潤剤、増粘剤、可塑剤、充填剤、顔料、架橋剤、酸化防止剤および金属キレート剤の存在下で、上記のコポリマーのラテックスを製造する方法にある。
【0032】
光散乱で測定したラテックス粒子の寸法または平均直径は一般に50〜200nmである。
【0033】
本発明のコポリマーラテックスの組成物は重合分野で周知の重合方法、特にラテックス乳化重合法、特に種ラテックスを用いて行なうラテックス重合に従って製造できる。代表的な方法には下記文献に記載されている。
【特許文献8】米国特許第4,478,974号
【特許文献9】米国特許第4,751,111号明細書
【特許文献10】米国特許第4,968,740号明細書
【特許文献11】米国特許第3,563,946号明細書
【特許文献12】米国特許第3,575,913号明細書
【特許文献13】ドイツ国特許第DE−A−1905256号公報
【0034】
これらの方法を必要に応じて上記モノマーの重合に適合させることができる。モノマー、その他の成分、例えば重合添加剤の導入方法はあまり重要ではない。重合は所望の重合度を得られるまで標準状態で行なう。ラテックスの重合で周知な架橋剤および添加剤、例えば開始剤、界面活性剤および乳化剤を必要に応じて使用できる。
【0035】
本発明で使用可能な開始剤には水溶性および/または脂溶性の開始剤があり、これらは重合の目的で有効である。代表的な開始剤は当業者に周知であり、例えばアゾ化合物(例えば、AIBN)および過硫酸塩(例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムおよび過硫酸アンモニウム)が挙げられる。
【0036】
一種または複数の開始剤は所望速度で重合の形成を開始するのに充分な量で用いられる。一般に、全ポリマーの重量に対して0.05〜5重量%、好ましくは1〜4重量%の開始剤の量が十分である。有利には、開始剤の量はポリマーの全重量の0.1〜3重量%に達する。
【0037】
本発明に適した界面活性剤または乳化剤の中では重合法の分野で周知な任意の通常の界面活性剤を用いることができる。一種または複数の界面活性剤を水相および/または一種または複数のモノマー相に添加できる。一種または複数の界面活性剤の量は一般にコロイド形態の粒子の安定化に有利に働くようにおよび/または粒子間の接触を減らすようにおよび/または凝固を防止するように選択する。種を用いない方法では、一種または複数の界面活性剤の量は一般に粒子の粒径に影響を与えるように選択する。
【0038】
界面活性剤の例としては下記が挙げられる:飽和および不飽和エチレンスルホン酸またはその塩、例えばヒドロキシカルボン/スルホン酸、例えばビニルスルホン酸、アリルスルホン酸およびメタリルスルホン酸、およびその塩、芳香族ヒドロキシカルボン酸、例えばパラ−スチレンスルホン酸、イソ−プロペニルベンゼンスルホン酸およびビニルオキシベンゼンスルホン酸およびその塩、アクリル酸およびメタクリル酸のスルホアルキルエステル、例えばスルホエチルメタクリレートおよびスルホプロピルメタクリレートおよびその塩、および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその塩、酸化ジフェニル二硫酸アルキル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、および、スルホコハク酸ナトリウムのジヘキシルエステル、エトキシ化アルキルフェノールおよびエトキシ化アルコールおよび脂肪アルコール(ポリ)エーテル硫酸塩。
【0039】
一種または複数の界面活性剤の型および濃度は一般に固体ポリマーの含有量に依存する。すなわち、固体ポリマーの含有量が高ければ、一般に一種または複数の界面活性剤の必要性も増す。一般に、一種または複数の界面活性剤はモノマーの全重量の0.05〜20、好ましくは0.05〜10、さらに好ましくは0.05〜5重量部の濃度で用いる。
【0040】
上記の界面活性剤の代わりに、または、この界面活性剤に加えて、種々の保護コロイドを用いることもできる。適したコロイドとしては、部分的にアセチル化されたポリビニルアルコール、カゼイン、ヒドロキシエチルでんぷん、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびアラビアゴムが挙げられる。好ましい保護コロイドはカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースである。一般に、これらの保護コロイドはモノマーの全重量の0〜10、好ましくは0〜5、さらに好ましくは0〜2重量部の含有量で用いる。
【0041】
本発明のラテックス組成物を製造するために重合分野の当業者に周知な種々の他の添加剤を混和することができる。これらの添加剤には例えば消泡剤、湿潤剤、増粘剤、可塑剤、充填剤、顔料、架橋剤、酸化防止剤および金属キレート剤がある。周知な消泡剤にはシリコン油およびアセチレングリコールがある。通常の周知な湿潤剤にはアルキルフェノールエトキシレート、ジアルキルスルホコハク酸アルカリ金属、アセチレングリコールおよびアルキル硫酸アルカリ金属がある。一般的な増粘剤には、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、キサンタンゴム、変性セルまたは粒子状増粘剤、例えば珪藻土および粘土がある。一般的な可塑剤には鉱油、液体ポリブテン、液体ポリアクリレートおよびラノリンがある。酸化亜鉛、二酸化チタン、アルミニウム水和物および炭酸カルシウムおよび粘土が一般に用いられる充填剤である。
【0042】
本発明の別の対象は上記コポリマーのラテックスの紙および厚紙の加工での使用にある。
【0043】
本発明者は、少なくとも一種のエチレン系不飽和カルボン酸モノマーを含む一種または複数のコポリマーのラテックスが、アクリルモノマーであっても、および/またはエチレン系不飽和ジカルボン酸モノマーであっても、ラテックスの安定性およびラテックス膜の接着性を大幅に改善し、紙加工配合物での使用に特に適しているということを見出した。本発明の実施例では、3〜5個の炭素原子を含む一種または複数のエチレン系不飽和脂肪族モノカルボン酸またはジカルボン酸または一種または複数の酸無水物を用いるのが好ましい。モノカルボン酸モノマーの例としては例えばアクリル酸およびメタクリル酸が挙げられ、ジカルボン酸モノマーの例としてはフマル酸、クロトン酸、マレイン酸および無水マレイン酸が挙げられる。
【0044】
上述のように、一種または複数の不飽和エチレンカルボン酸モノマーは一般に不飽和エチレンカルボン酸モノマーの量がモノマーの全重量に対して1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%であるときに、ポリマー分散特性およびこのモノマーから製造されるコーティングに影響を与える。
【0045】
好ましい一つの実施例では、本発明のコポリマーのラテックスの組成物がスチレン、ブタジエンおよびアクリル酸、好ましくは連鎖移動剤としてのDBTTCの存在下で共重合されたものから製造される。
以下、本発明の実施例を説明する。
特に説明の無い限り、量および比率は重量を表す。
【実施例】
【0046】
実施例1(比較例)−スチレンラテックス
65℃でのスチレンのバッチ乳化重合の手順
(1)0.24gのHCO3Na(緩衝液)と、8gのSLS(ラウリル硫酸ナトリウム)界面活性剤と、540gの蒸留水とを含む溶液を調製する。この混合物を撹拌下に加熱し(約50℃)、界面活性剤を完全に溶解させる。
(2)移動剤(DBTTCまたはTDM)/モノマー(スチレン)混合物を調製し、CTAを[表1]に示す比率で導入する。
(3)上記の2つの混合物を、予め真空下に置いた1リットルのジャケット付き反応器中に150回転/分で撹拌しながら導入し、65℃に加熱する。
(4)真空下に置いた後、窒素下に置いて反応器を不活性化するサイクルを3回行なってこの媒体から酸素を奪い、65℃で真空下に置いた後に開始剤を導入する。
(5)開始剤を含む溶液、すなわち0.2gのPRSを15gの水に溶かしたもの(すなわち、DBTTCに対して82.6mol%のPRS)を調製する。
(6)この混合物を窒素パージ下にエアロックに導入し、次いで窒素の圧力を介して反応器に注入し、エアロックを依然として窒素下で45gの水で洗浄し、この水を反応器に注入する。
(7)次いで、反応器の圧力を窒素で0.15MPaに調整する。この時間を重合開始時間T=0とみなす。直ぐに氷で冷却した抽出サンプルによって変換をモニターし、その固形分を140℃の熱天秤で分析する(Mettler Toledo HB43)。
(8)3時間後、重合を停止する。抽出したサンプルを100℃の換気オーブンで一晩乾燥する。
(9)乾燥ポリマーを、屈折率検出器および紫外線検出器を備えた、2つのPlgel MIXED Bカラム(30cm)からなるセット、1ml/分の流量、1g/lで40℃のTHF中でサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって分析する。分子量および分布の結果はポリスチレン(PS)当量で表す。
(10)最終ラテックスの粒径および分布をMarvern Zetameter(Zetasizer 5000)を用いて測定する。
【0047】
各試験ごとに得られたコポリマーのラテックスの、用いたCTAの種類および量(全モノマーに対する%)、変換率(固形分によって測定)、ポリスチレン較正を用いたSECによって測定された数平均分子量、および、多分散度指数Mw/Mnは[表1]に示してある。
【表1】

【0048】
実施例2−スチレン/ブタジエン/アクリル酸ラテックス
80℃、50%固形分でのスチレン/ブタジエンの半連続乳化合成の手順
(1)室温の1,3−ブタジエンガスのシリンダーから、予め−18℃に冷却された容器で300gのブタジエンを調製する。「蒸留」段階として知られるこの段階によって冷却を介して液体ブタジエンを得ることができる。
(2)1.2MPaに設定された安全弁を備え且つ天秤に置かれた容器に、真空下、室温で下記のモノマー混合物(50g過剰に供給)を導入する(重合開始直前に):
303.3gのスチレン/24.1gのアクリル酸および[表2]に示す量の連鎖移動剤(DBTTCまたはTDC)。
(3)再び容器を真空下に置き、液体ブタジエン容器を窒素で加圧する(0.3MPa)。モノマーを含む容器を載せた天秤にタラを載せ、次いで、209.5gのブタジエンを導入する。
(4)モノマーを含むこの容器を、次いで窒素によって1MPaに加圧する。
(5)ブタジエン容器を窒素フラッシングによって脱気し、この容器の冷却を停止する。
(6)下記の混合物を調製し、1lのジャケット付き反応器に50℃で、真空下に、150回転/分で撹拌しながら導入する:
205gの水/0.03gのEDTA/1.55gの濃度が25重量%のNaOH水溶液/3.97gの濃度が29.7重量%のSLS。
【0049】
(7)反応器を再び真空下に置き、次いで、容器を載せた天秤にタラを載せた後に秤量することによって、30%のモノマー(すなわち82.5gのスチレン/57.1gのブタジエン/6.6gのアクリル酸/1.21gのDBTTCと同等)を反応器に導入する。
(8)反応器を80℃に加熱し、1.46gのNa228と15gの水で開始剤を調製する。
(9)80℃で、N2下にエアロックを介して開始剤を導入する。次いで、エアロックを20gの水で洗浄し、この水も媒体に導入する。この時、圧力は0.57MPaに近い。
(10)重合を開始させ、「種」が得られると、約30分にわたって0.02MPaの圧力降下が観察される。
(11)次いで、下記の3つの混合物を、半連続モードで2時間にわたって反応器に同時に導入する:
(a)容器のモノマーの70%、すなわち、192.5gのスチレン/133gのブタジエン/15.3gのアクリル酸および2.83gのDBTTCを2.9g/分の流量で、2時間かけて、微小制御弁を介して導入、
(b)3.41gのNa228に水を追加して120gにした混合物も1.08ml/分の流量で、2時間かけて、弁ポンプを介して導入、
(c)110gの水/3.73gの濃度が25重量%のNaOH水溶液/9.28gの濃度が29.7重量%のSLSを含む混合物も1.1ml/分の流量で、2時間かけて、弁ポンプを介して導入し、その後、10gの水でラインを洗浄。
【0050】
(12)半連続モードでの添加終了後、圧力は0.73MPaであり、次いで、反応器出口弁を洗浄した後にサンプル(5〜10g)を、「重合停止剤」、すなわち0.1〜0.2gの1.5重量%ジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液が入った隔壁を備えたフラスコに抽出する。次いで、変換率をMettler Toledo HB43熱天秤を用いて固形分によって測定する(変換率=43%)。
(13)重合を2時間続け(P=0.55MPa)、サンプル抽出を上述のように繰り返し、変換率を測定する(74%)。
(14)さらに1時間30分(P=0.39MPa)続けた後に、同じ操作を繰り返し、変換率は95%である。
(15)10gの1.5%ジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液をエアロックを介してN2下に反応器に導入して反応を停止する。
(16)次いで、反応器を脱気して、加熱設定点を20℃に下げ、混合を15〜30分続けた後、ドラフトの排気下にラテックスを除去する。フラスコを排気下に一晩、開けたままにして残留ブタジエンを脱気する。
(17)反応器を70℃の湯、次いで50℃のTHFで洗浄した後、乾燥、分解して手で掃除する。残留モノマーが入った容器は脱気し、アセトン洗浄によって掃除する。
【0051】
得られたSBAAラテックスの特徴
粒径
最終ラテックスの分布を、ラテックスの希釈後に、Marvern Zetameter(Zetasizer 5000)を用いて測定し、装置の測定セルに必要な濃度に調整する。粒径はCHDFによって測定することもできる。一般に、Zetasizerを用いて測定する場合は171nmの値、CHDFを介した場合は156nmの値が得られる。
【0052】
ラテックスフィルムの調製
最終粗ラテックスをポリテトラフルオロエチレンコップ(直径70mm)に入れ、6〜7gの乾燥製品を得る。1コップ当たり、約14gのラテックスのサンプルを抽出する。ラテックスを3日間ドラフト下に蒸発によってゆっくり乾燥させる。次いで、乾燥を50℃の換気オーブンで一日続ける。得られたフィルムを丁寧に持ち上げ、裏返してやはり50℃のオーブンでさらに一日乾燥する。
【0053】
ラテックスの低温凝固
1/5に希釈した後、−10℃で24時間置く。20gの粗ラテックスを取って80gの水に希釈する。次いで、これを解凍、洗浄、および、「沈降/濾過」して、凝固ラテックスを晶析装置で可能な限り回収する。これを50℃のオーブンで24時間乾燥し、次いで、「晶析装置」から「持ち上げ」て裏返し、再度、50℃で24時間乾燥する。
【0054】
g(ガラス転移温度)の測定
ラテックスフィルムと凝固ラテックスから、Mettler DSC30を用いて、60〜70mgのサンプルをるつぼに抽出する。10℃/分の速度で−100から+150℃に2回移行した後に、Tgを測定する。ラテックスフィルムTg=2.3℃、凝固ラテックスTg=−1.6℃が得られる。ガラス転移温度はDSC曲線の変曲点の形で示される。
【0055】
遊離ポリマーの含有量
これは、ソックスレー抽出器で高温で24時間抽出した後のトルエン中に溶解したポリマーの量に対応する。約3gのラテックスフィルムまたは凝固ラテックスを10-4gの誤差で秤量し、ソックスレーシンブルに入れる(寸法が37×130mmの抽出器のDuriexモデル)。ソックスレー抽出器の下部では、500mlのフラスコにトルエンを充填し、24時間還流させる。こうして抽出されたフリーポリマーをトルエンを入れたフラスコに回収する。
フリーポリマーの量は、最初に120℃のオーブンで一晩乾燥した後のシンブルの重量と、日中室温で放置(吸湿)したシンブルの重量の差から測定する。フリーポリマーの百分比はラテックスフィルムの場合は53%であり、凝固ラテックスの場合は100%である。
【0056】
DBTTCを用いた試験の計算例
【表2】

【0057】
ゲル含有量および膨潤指数
所定の溶剤中のポリマーの不溶画分およびコポリマーのラテックスの架橋をゲル含有量の測定値を用いて求める。これは低温で24時間の後にトルエンに溶解していないポリマーのゲル部分に対応する。溶剤としてトルエンを用いる。上記のように製造したフィルムを膨潤させる。トルエンに不溶なゲルを濾過によって分離、乾燥、秤量する。ゲル含有量は乾燥ゲルの重量を初期ラテックスフィルム(トルエンによる膨潤の前)の重量で割った商と定義し、%で表す。
非常に細かく切断した0.5gのラテックス膜または凝固ラテックスを、幅が25mm、高さが60mmの非常に目の細かい(40μmのワイヤを用いた50μmの開口部)金属製バスケット中に、10-4gの誤差で秤量する。このバスケットを75mlのトルエンを入れた100mlのビーカーに、トルエン飽和空気中のガラス鐘下で室温で浸漬し、次いで、膨潤ポリマーを24時間放置する。バスケットをトルエンから取り出し、液体を1時間排出させ、秤量する。この測定値が膨潤指数である。得られた膨潤指数はラテックスフィルムでは26、凝固ラテックスでは17である。
バスケットを次いで、120℃の換気オーブンで一晩乾燥する。乾燥バスケットの重量によって、トルエンに溶解しなかったポリマーのゲル含有量の値が得られる。これによって、ゲル含有量はラテックスフィルムで37%、凝固ラテックスで1%である。
【0058】
DBTTCを用いた試験の計算例
【表3】

【0059】
サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を用いた分子量および分布
ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)を用いて、ポリマーが使用溶剤(ここではTHF)に完全に溶解するという条件で、ポリマーの分子量を求めることができる。
PTFEコップ中で、遊離ポリマー(上記でソックスレー抽出器中で24時間還流後トルエン中に抽出された)を、50℃の換気オーブンで2日間トルエンを蒸発させて回収する。分子量および分布を、屈折率検出器および紫外線検出器を備えた、2つのPlgel MIXED Bカラム(30cm)からなるセット、1ml/分の流量、1g/lで40℃のTHF中でサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって求める。分子量および分布の結果はPS当量で表す。
【0060】
下記のものが得られた:
【表4】

【0061】
各試験ごとに得られたフィルムの、用いたCTAの種類および量(全モノマーに対する%)、変換率(固形分によって測定)、ガラス転移温度(Tg)、ゲル含有量、ポリスチレン較正を用いたSECによって測定された数平均分子量Mnおよび多分散度指数Mw/Mnは[表5]に示してある。
【0062】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種の連鎖移動剤を用いて製造された、下記(a)〜(c):
(a)10〜80重量%の一種または複数のビニルモノマー、
(b)20〜70重量%の一種または複数の共役ジエンモノマー、
(c)任意成分としての、アクリルモノマー、エチレン系不飽和ジカルボン酸モノマー、少なくとも一つのニトリル官能基をさらに含むモノマー、ビニルエステルモノマーおよび(メタ)アクリルアミドモノマーの中から選択される少なくとも一種の共重合可能な不飽和エチレン基を含む70重量%以下の一種または複数のモノマー、
を重合した形で含む、ガラス転移温度が−30℃〜70℃、好ましくは−20℃〜40℃であるコポリマーのラテックスであって、
上記の少なくとも一種の連鎖移動剤が下記式で表されることを特徴とするコポリマーのラテックス:
【化1】

[ここで、
Rは−CH2R1、−CHR1R’1および−CR1R’1R’’1の中から選択され、ここで、R1、R’1、R’’1は互いに同一でも異なっていてもよく、互いに独立して、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよい飽和、不飽和または芳香族の炭素環または複素環、置換されていてもよいアルキルチオ、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいジアルキルアミノ、有機金属基、アシル、アシルオキシ、カルボキシ(およびそのエステルおよび/または塩)、スルホン酸(およびその塩および/またはスルホネート)、アルコキシカルボニルまたはアリールオキシカルボニルおよび任意の重合機構で調製されたポリマー鎖の中から選択される基を表し、
Zは水素、ハロゲン(塩素、臭素、ヨウ素)、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよい複素環、置換されていてもよいアルキルチオ−SR(Rは上記定義のもの)、置換されていてもよいアルコキシカルボニル、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル(−COOR2)、カルボキシ(−COOH)、置換されていてもよいアシルオキシ(−OCOR2)、置換されていてもよいカルバモイル(−CONHR2、−CONHR2R3)、シアノ(−CN)、ジアルキルホスホネートまたはジアリールホスホネート[−P(=O)OR22]、ジアルキルホスフィネートまたはジアリールホスフィネート[−P(=O)R22]、任意の重合機構で調製されたポリマー鎖、OR2基および−NR2R3基の中から選択され、ここで、R2およびR3は互いに同一でも異なっていてもよく、C1〜C18アルキル、C2〜C18アルケニル、C6〜C18アリール、複素環、アラルキルまたはアルカリルからなる群の中から選択され、これらの群はそれぞれ置換されていてもよく、その置換基はエポキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、カルボキシ(およびそのエステルおよび/または塩)、スルホン酸(およびその塩および/またはスルホネート)、アルコキシカルボニルまたはアリールオキシカルボニル、イソシアネート、シアノ、シリル、ハロおよびジアルキルアミノの中から選択される]
【請求項2】
少なくとも一種の連鎖移動剤がジチオエステル、ジチオカルボネートまたはキサンテート、ジチオカルバメートおよび/またはトリチオカルボネートの中から選択され、好ましくはジベンジルトリチオカルボネート(DBTTC)を含む請求項1に記載のコポリマーのラテックス。
【請求項3】
少なくとも一種の連鎖移動剤の使用量が100重量%のモノマー(a)〜(c)に対して0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、特に0.1〜3重量%である請求項1または2に記載のコポリマーのラテックス。
【請求項4】
遊離コポリマー(コポリマーから室温でトルエンによって24時間に抽出された画分)が下記の特徴を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のコポリマーのラテックス:
5000≦Mn≦80000、好ましくは5000≦Mn≦50000、
10000≦Mw≦270000、好ましくは10000≦Mw≦200000、
(ここで、MnおよびMwはそれぞれ数平均分子量および重量平均分子量を表す)。
【請求項5】
一種または複数のビニルモノマー(a)がスチレン、α-メチルスチレン、パラ−エチルスチレン、tert-ブチルスチレンおよび/またはビニルトルエンの中から選択され、好ましくはスチレンおよび/またはα-メチルスチレンの中から選択される請求項1〜4のいずれか一項に記載のコポリマーのラテックス。
【請求項6】
一種または複数の共役ジエンモノマー(b)が1,3−ブタジエン、イソプレンおよび2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンの中から選択され、好ましくは1.3ブタジエンである請求項1〜5のいずれか一項に記載のコポリマーのラテックス。
【請求項7】
一種または複数のアクリルモノマー(c)がアクリル酸、メタクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよび/またはアルコキシアルキル(メタ)アクリレート[ここで、アルキル(n−アルキル、イソ−アルキルまたはtert-アルキル)基のアルキルは1〜20個の炭素原子を有し、必要に応じて少なくとも一種のエポキシ、アミンまたはアミド基および/または少なくとも一種のアミン基で置換されていてもよい]、(メタ)アクリル酸とグリシジルエステル、ネオデカン酸、ピバル酸、ネオ酸、例えばバーサチック酸(Versatic acid)およびこれらの混合物との反応物、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよびメチルメタクリレートの中から選択される請求項1〜6のいずれか一項に記載のコポリマーのラテックス。
【請求項8】
光散乱で測定したラテックス粒子の平均直径が50〜200nmである請求項1〜7のいずれか一項に記載のコポリマーのラテックス。
【請求項9】
下記(A)〜(D):
(A)10〜80重量%の一種または複数のビニルモノマー(a)、
(B)20〜70重量%の一種または複数の共役ジエンモノマー(b)、
(C)任意成分としての、アクリルモノマー、エチレン型不飽和ジカルボン酸モノマー、ニトリルモノマー、ビニルエステルモノマーおよび(メタ)アクリルアミドモノマーの中から選択される70重量%以下の一種または複数の共重合可能なモノマー(c)、
(D)下記式で表される少なくとも一種の連鎖移動剤(CTA):
【化2】

(ここで、RおよびZは請求項1に記載のもの)、
から、0〜130℃、好ましくは20〜130℃、さらに好ましくは60〜130℃、特に60〜100℃、特に75〜100℃の温度で、一種または複数の乳化剤または界面活性剤および/または一種または複数の開始剤および/または一種または複数の保護コロイドおよび/または一種または複数の添加剤、例えば消泡剤、湿潤剤、増粘剤、可塑剤、充填剤、顔料、架橋剤、酸化防止剤および金属キレート剤の存在下で、請求項1〜8のいずれか一項に記載のコポリマーのラテックスを製造する方法。
【請求項10】
好ましくはスチレン、ブタジエン、アクリル酸および連鎖移動剤のDBTTCを含む請求項1〜9のいずれか一項に記載のコポリマーのラテックスの、紙および厚紙の加工での使用。

【公表番号】特表2010−534264(P2010−534264A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517464(P2010−517464)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際出願番号】PCT/FR2008/051390
【国際公開番号】WO2009/016320
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】