説明

コモディティケミカルの生合成

バイオマス等に由来する好適な単糖類またはオリゴ糖、および様々なアルデヒドおよび/またはケトンを、生物燃料などのコモディティケミカルに変換するための、方法、酵素、組換え微生物および微生物系を提供する。また、本明細書中に記載される方法により生産されるコモディティケミカルを提供する。さらに前記コモディティケミカルによって品質が工場する、精錬所で生産される石油製品、およびその製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、アルデヒドおよび/またはケトンを、イソオクタンのような、様々なコモディティケミカルまたは生物燃料に変換するための、組換え微生物および化学/酵素システムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
石油は世界的に埋蔵量の減少に直面しており、地球温暖化が進む原因である温室効果ガス排出の30%以上に寄与している。世界中で、年間8000億バレルの輸送燃料が消費されている。ディーゼル燃料およびジェット燃料が、世界中の輸送燃料の50%以上を占めている。
【0003】
重要な法律が可決され、燃料生産企業は、輸送燃料の生産および使用からの炭素排出を制限または削減しなければならなくなっている。燃料生産企業は、既存のインフラ(例えば、精錬所、パイプライン、タンカー)によりブレンドし、供給し得る、本質的に同様の低炭素燃料を求めている。
【0004】
石油のコストが上昇し、石油化学原料に対する信頼が高まっているため、化学工業はさらにマージンと価格の安定性を改善する方法を模索しており、一方で、環境フットプリントを縮小している。化学工業においては、現在の製品よりエネルギー効率、水効率、およびCO効率の良い環境に配慮した製品を開発するための努力が行われている。バイオマスのような生物源から生産された燃料は、その過程の一面を表わしている。
【0005】
バイオマスを生物燃料に変換する現行の方法の多くが、リグノセルロース系バイオマスの使用に重点を置いている。しかし、この方法の使用には、付随する問題が多い。リグノセルロース系バイオマスを大規模開発するには、相当な量の耕地が必要である。そしてそれは、食用作物生産の代わりにエネルギー用作物生産や森林伐採を行い、さらに現在未開の土地を新たに耕作することによってのみ達成することができる。さらに、別の問題として、水の供給が少なくなり、水質が低下していることや、殺虫剤や肥料の使用が増えていることがある。
【0006】
生物システムを使用するリグノセルロース系バイオマスの分解は、その本質的な機械的強度および複雑な化学成分のため、重要な課題となっている。リグノセルロースを単糖に変換するためには、約30種類もの様々な酵素が必要である。この複雑なアプローチに取って代わる唯一の方法においては、相当量の熱、圧力および強酸が必要である。したがって、当該技術には、バイオマスを、生物燃料またはバイオガソリンとして使用する炭化水素に変換するための、経済的で、技術的に単純な方法が必要である。米国特許出願第12/245,537号および同第12/245,540には、バイオマスから様々な生物燃料を生産するための組換え微生物の使用、および、バイオマス由来の糖類からブチルアルデヒドやイソブチルアルデヒドといった様々なアルデヒドを生産するための、このような組換え微生物の使用が記載されている。
【0007】
イソオクタンとして知られている2,2,4−トリメチルペンタンは、オクタン価参照で100ポイントを規定するオクタン異性体である。イソオクタンは、ガソリンの重要な成分である。イソオクタンは、しばしば、関連する炭化水素との混合物として、石油産業において大量生産されている。イソオクタンを生産するため、石油産業は、典型的にはアルキル化プロセスに依存している。これは、強酸触媒を使用して、イソブチレンでイソブタンをアルキル化するものである。
【0008】
その上、既存の石油備蓄は、オクタン含有量が低いため、ガソリン用としてはますます有用性が低くなっており、オクタンを追加する能力があれば、現在の石油備蓄の有用性を高めることができる。したがって、当技術分野では、イソオクタンおよびその他の関連する生物燃料を生産するための、環境にやさしく、技術的に簡便な方法を必要としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願第12/245,537号
【特許文献2】米国特許出願第12/245,540号
【発明の概要】
【0010】
本発明の実施形態は、一般に、コモディティケミカルまたはその中間体を生産する方法に関する。この方法は、アルデヒド、ケトン、またはその両方の供与源によって、組換え微生物を増殖させることを含む。そして、この組換え微生物は、(i)アルドラーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチド、および(ii)アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチドを含み、このポリヌクレオチドの少なくとも1つが外来性で、それによって、コモディティケミカルまたはその中間体を生産する。
【0011】
ある実施形態では、このコモディティケミカルまたはその中間体は、下記式から選択される。

(式中、R1は、CHCH、CHCH(CH)、CH(CHCH、CHCH(CH)(CHCH、およびCHCHCH(CH)(CHCHからなる群から選択され、R2は、H、CH、CHCH、CHCH(CH)、CH(CHCH、CHCH(CH)(CHCH、CHCHCH(CH)(CHCHからなる群から選択され、nは0〜30である。)
【0012】
ある実施形態では、このコモディティケミカルはさらに、酵素的または化学的に、対応するアルカンに変換される。
【0013】
ある実施形態では、このコモディティケミカルが、3−ヒドロキシ−2、2、4、トリメチルペンタナール、および2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールからなる群から選択される。ある実施形態では、この2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールはさらに、酵素的または化学的に、2,2,4−トリメチルペンタンに変換される。
【0014】
ある実施形態では、このコモディティケミカルは、3−ヒドロキシ−2−エチルヘキサナール、2−エチル−2−ヘキセン−1−アール、2‐エチルヘキサナール、および2−エチルヘキサノールからなる群から選択される。ある実施形態では、2−エチルヘキサノールはさらに、酵素的または化学的に、2−エチルヘキサンに変換される。
【0015】
ある実施形態では、このコモディティケミカルは、3−ヒドロキシ−2−ブチル−1−オクタノール、2−ブチル−2−オクテン−1−アール、2−ブチル−オクタナール、および2−ブチル−オクタノールからなる群から選択される。ある実施形態では、この2−ブチル−オクタノールは、さらに、酵素的または化学的に、2−ブチル−オクタンに変換される。
【0016】
ある実施形態では、アルデヒド、ケトン、またはその両方の供与源は、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、グルタールアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、2−メチル−ブチルアルデヒド、3−メチル−ブチルアルデヒド、4−メチルペントアルデヒド、ヘキサンアルデヒド、オクタンアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、2−フェニルアセトアルデヒド、2−(4−ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド、2−インドール−3−アセトアルデヒド、5−アミノ−ペントアルデヒド、コハク酸セミアルデヒド、およびスクシナート4−ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド生合成経路、およびそれらの組み合わせから選択されるアルデヒドおよび/またはケトン生合成経路を含む組換え微生物である。
【0017】
ある実施形態では、このアルデヒドおよび/またはケトン生合成経路を含む組換え微生物は、コモディティケミカルを産生または合成する組換え微生物と同じである。ある実施形態では、このアルデヒドおよび/またはケトン生合成経路を含む組換え微生物は、コモディティケミカルを産生または合成する組換え微生物と異なる。
【0018】
ある実施形態では、このアルデヒドおよび/またはケトン生合成経路は、イソブチルアルデヒド生合成経路を含み、このアルデヒドはイソブチルアルデヒドである。ある実施形態では、このアルデヒドおよび/またはケトン生合成経路は、ブチルアルデヒド生合成経路を含み、このアルデヒドはブチルアルデヒドである。ある実施形態では、このアルデヒドおよび/またはケトン生合成経路は、ヘキサンアルデヒド生合成経路を含み、このアルデヒドはヘキサンアルデヒドである。
【0019】
ある実施形態では、アルドラーゼ活性を有するポリペプチドをコードし、かつ発現する少なくとも1つの外来性ポリヌクレオチドが、(i)配列番号51〜82に示される少なくとも1つのヌクレオチド配列と、少なくとも80%、90%、95%、98%、もしくは99%同一であるヌクレオチド配列、または、(ii)配列番号51〜82に示される少なくとも1つのヌクレオチド配列またはその相補配列に、中ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、を含む。ある実施形態では、アルドラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号223−244、255−260に示されるアミノ酸配列から選択される少なくとも1つの生物学的に活性なモチーフを含む。
【0020】
ある実施形態では、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチドは、(i) 配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、30、31、33、もしくは83〜96に示される少なくとも1つのヌクレオチド配列と少なくとも80%、90%、95%、98%、もしくは99%同一であるヌクレオチド配列、または、(ii)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、30、31、もしくは83〜96に示される少なくとも1つのヌクレオチド配列またはその相補配列に、中ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、を含む。ある実施形態では、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)、NADH、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)、またはNADPH結合モチーフのうち少なくとも1つを含む。ある実施形態では、このNAD+、NADH、NADP+、またはNADPH結合モチーフが、Y−X−G−G−X−Y(配列番号245)、Y−X−X−G−G−X−Y(配列番号246)、Y−X−X−X−G−G−X−Y(配列番号247)、Y−X−G−X−X−Y(配列番号248)、Y−X−X−G−G−X−X−Y(配列番号249)、Y−X−X−X−G−X−X−Y(配列番号250)、Y−X−G−X−Y(配列番号251)、Y−X−XG−X−Y(配列番号252)、Y−X−X−X−G−X−Y(配列番号253)、およびY−X−X−X−X−G−X−Y(配列番号254)からなる群から選択され、ここで、Yはアラニン、グリシン、およびセリンから、独立に選択され、Gはグリシンで、Xは遺伝学的にコードされるアミノ酸から独立に選択される。
【0021】
ある実施形態では、この組換え微生物は、さらに、二重結合還元酵素活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチド、および/またはデヒドラターゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも一つのポリヌクレオチドを含む。ある実施形態では、この二重結合還元酵素活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチドは、(i)配列番号35〜50に示される少なくとも1つのヌクレオチド配列と少なくとも80%、90%、95%、98%、もしくは99%同一であるヌクレオチド配列、または、(ii)配列番号35〜50に示される少なくとも1つのヌクレオチド配列またはその相補配列に、中ストリンジェンシー条の件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、を含む。
【0022】
本発明の実施形態はまた、一般に、組換え微生物に関する。この組換え微生物は、(i)アルドラーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチド、および(ii)アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む。
【0023】
ある実施形態では、この微生物は、アルデヒド、ケトン、またはその両方の供与源を、コモディティケミカルまたはその中間体に変換することができる。ここで、このコモディティケミカルまたはその中間体は、下記式から選ばれる。

(式中、R1は、CHCH、CHCH(CH)、CH(CHCH、CHCH(CH)(CHCH、および CHCHCH(CH)(CHCHからなる群から選択され、R2は、H、CH、CHCH、CHCH(CH)、CH(CHCH、CHCH(CH)(CHCH、CHCHCH(CH)(CHCHからなる群から選択され、nは0〜30である。)
【0024】
ある実施形態では、この組換え微生物は、さらに、(iii)アルデヒドおよび/またはケトン生合成経路をコードし発現する少なくとも1つの外来性ポリヌクレオチドを含む。ある実施形態では、このアルデヒドおよび/またはケトン生合成経路を含む微生物は、適切な単糖類または好適なオリゴ糖を、コモディティケミカルまたはその中間体に変換することができる。ここで、このコモディティケミカルまたはその中間体は、下記式から選択される。

(式中、R1は、CHCH、CHCH(CH)、CH(CHCH、CHCH(CH)(CHCH、 および CHCHCH(CH)(CHCHからなる群から選択され、R2は、H、CH、CHCH、CHCH(CH)、CH(CHCH、CHCH(CH)(CHCH、CHCHCH(CH)(CHCHからなる群から選択され、nは0〜30である。)
【0025】
ある実施形態では、アルデヒドおよび/またはケトン生合成経路をコードし発現する少なくとも1つの外来性ポリヌクレオチドが、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、グルタールアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、2−メチル−ブチルアルデヒド、3−メチル−ブチルアルデヒド、4−メチルペントアルデヒド、ヘキサンアルデヒド、オクタンアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、2−フェニルアセトアルデヒド、2−(4−ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド、2−インドール−3−アセトアルデヒド、5−アミノ−ペントアルデヒド、コハク酸セミアルデヒド、およびスクシナート4−ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド生合成経路、およびそれらの組み合わせから選択される経路を含む。
【0026】
ある実施形態では、アルデヒドおよび/またはケトン生合成経路は、イソブチルアルデヒド生合成経路を含み、このアルデヒドはイソブチルアルデヒドである。ある実施形態では、このアルデヒドおよび/またはケトン生合成経路は、ブチルアルデヒド生合成経路を含み、このアルデヒドはブチルアルデヒドである。ある実施形態では、このアルデヒドおよび/またはケトン生合成経路は、ヘキサンアルデヒド生合成経路を含み、このアルデヒドはヘキサンアルデヒドである。
【0027】
ある実施形態では、アルドラーゼ活性を有するポリペプチドをコードしかつ発現する少なくとも1つの外来性ポリヌクレオチドは、(i)配列番号51〜82に示される少なくとも1つのヌクレオチド配列と、少なくとも80%、90%、95%、98%、もしくは99%同じであるヌクレオチド配列、または(ii)配列番号51〜82に示される少なくとも1つのヌクレオチド配列またはその相補配列に、中ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、を含む。ある実施形態では、アルドラーゼ活性を有するこのポリペプチドは、配列番号223〜244、255〜260に示されるアミノ酸配列から選択される少なくとも1つの生物学的に活性なモチーフを含む。
【0028】
ある実施形態では、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチドは、i)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、30、31、33、もしくは83〜96に示される少なくとも1つのヌクレオチド配列と、少なくとも80%、90%、95%、98%、もしくは99%同じであるヌクレオチド配列、または、(ii)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、30、31、もしくは83〜96に示される少なくとも1つのヌクレオチド配列またはその相補配列に、中ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、を含む。ある実施形態では、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)、NADH、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)、またはNADPH結合モチーフのうち少なくとも1つを含む。ある実施形態では、このNAD+、NADH、NADP+、またはNADPH結合モチーフは、 Y−X−G−G−X−Y(配列番号245)、Y−X−X‐G−G−X−Y(配列番号246)、Y−X−X−X−G−G−X−Y(配列番号247)、Y−X−G−X−X−Y(配列番号248)、Y−X−X−G−G−X−X−Y(配列番号249)、Y−X−X−X−G−X−X−Y(配列番号250)、Y−X−G−X−Y(配列番号251)、Y−X−X−G−X−Y(配列番号252)、Y−X−X−X−G−X−Y(配列番号253)およびY−X−X−X−X−G−X−Y(配列番号254)からなる群から選択され、ここで、Yはアラニン、グリシン、およびセリンから、独立に選択され、Gはグリシンで、Xは遺伝学的にコードされるアミノ酸から独立に選択される。
【0029】
ある実施形態では、この組換え微生物は、二重結合還元酵素活性を有するポリペプチドをコードしかつ発現する少なくとも1つのポリヌクレオチド、および/またはデヒドラターゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む。ある実施形態では、二重結合還元酵素活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチドは、(i)配列番号35〜50に示される少なくとも1つのヌクレオチド配列と、少なくとも80%、90%、95%、98%、または99%同じであるヌクレオチド配列、または(ii)配列番号35〜50に示される少なくとも1つのヌクレオチド配列またはその相補配列に、中ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズする。
【0030】
本発明の実施形態はまた、一般にコモディティケミカルまたはその中間体を生産する方法に関する。この方法は、適切な単糖類またはオリゴ糖の供与源によって、第一の組換え微生物を増殖させることを含む。ここで、この第一の組換え微生物は、(i)アルデヒドまたはケトンの生合成経路、(ii)アルドラーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチド、および(iii)アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチドを含み、このポリヌクレオチドの少なくとも1つが外来性で、それによって、コモディティケミカルまたはその中間体を生産する。ある実施形態では、この適切な単糖類またはオリゴ糖の供与源は、炭素の唯一の供与源としてバイオマス由来の多糖類で増殖することができる、第2の組換え微生物を含む、ある実施形態では、このバイオマス由来の多糖類は、アルギナートおよびペクチンから選択される。
【0031】
本発明の実施形態はまた一般にコモディティケミカルまたはその中間体を生産する方法に関する。この方法は、バイオマス由来の多糖類で組換え微生物を増殖させることを含む。ここで、この組換え微生物は、炭素の唯一の供与源としてバイオマス由来の多糖類で増殖することができ、かつこの組換え微生物は、(i)アルデヒドまたはケトンの生合成経路、(ii)アルドラーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチド、および(iii)アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチドを含み、 このポリヌクレオチドの少なくとも1つが外来性で、それによって、コモディティケミカルまたはその中間体を生産する。ある実施形態では、このバイオマス由来の多糖類は、アルギナートおよびペクチンから選択される。
【0032】
本発明の実施形態はまた、組換え微生物に関する。この組換え微生物は、
(i)アルデヒドまたはケトンの生合成経路、
(ii)アルドラーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つの外来性ポリヌクレオチド、および
(iii)アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つの外来性ポリヌクレオチドを含む。ある実施形態では、この組換え微生物は、炭素の唯一の供与源としてバイオマス由来の多糖類で増殖することができる。
【0033】
ある実施形態では、この微生物は、Acetobacter aceti、 Achromobacter、 Acidiphilium、 Acinetobacter、 Actinomadura、 Actinoplanes、 Aeropyrum pernix、 Agrobacterium、 Alcaligenes、 Ananas comosus (M)、 Arthrobacter、 Aspargillus niger、 Aspargillus oryze、 Aspergillus melleus、 Aspergillus pulverulentus、 Aspergillus saitoi、 Aspergillus sojea、 Aspergillus usamii、 Bacillus alcalophilus、 Bacillus amyloliquefaciens、 Bacillus brevis、 Bacillus circulans、 Bacillus clausii、 Bacillus lentus、 Bacillus licheniformis、 Bacillus macerans、 Bacillus stearothermophilus、 Bacillus subtilis、 Bifidobacterium、 Brevibacillus brevis、 Burkholderia cepacia、 Candida cylindracea、 Candida rugosa、 Carica papaya (L)、 Cellulosimicrobium、 Cephalosporium、 Chaetomium erraticum、 Chaetomium gracile、 Clostridium、 Clostridium butyricum、 Clostridium acetobutylicum、 Clostridium thermocellum、 Corynebacterium (glutamicum)、 Corynebacterium efficiens、 Escherichia coli、 Enterococcus、 Erwina chrysanthemi、 Gliconobacter、 Gluconacetobacter、 Haloarcula、 Humicola insolens、 Humicola nsolens、 Kitasatospora setae、 Klebsiella、 Klebsiella oxytoca、 Kluyveromyces、 Kluyveromyces fragilis、 Kluyveromyces lactis、 Kocuria、 Lactlactis、 Lactobacillus、 Lactobacillus fermentum、 Lactobacillus sake、 Lactococcus、 Lactococcus lactis、 Leuconostoc、 Methylocystis、 Methanolobus siciliae、 Methanogenium organophilum、 Methanobacterium bryantii、 Microbacterium imperiale、 Micrococcus lysodeikticus、 Microlunatus、 Mucor javanicus、 Mycobacterium、 Myrothecium、 Nitrobacter、 Nitrosomonas、 Nocardia、 Papaya carica、 Pediococcus、 Pediococcus halophilus、 Penicillium、 Penicillium camemberti、 Penicillium citrinum、 Penicillium emersonii、 Penicillium roqueforti、 Penicillum lilactinum、 Penicillum multicolor、 Paracoccus pantotrophus、 Propionibacterium、 Pseudomonas、 Pseudomonas fluorescens、 Pseudomonas denitrificans、 Pyrococcus、 Pyrococcus furiosus、 Pyrococcus horikoshii、 Rhizobium、 Rhizomucor miehei、 Rhizomucor pusillus Lindt、 Rhizopus、 Rhizopus delemar、 Rhizopus japonicus、 Rhizopus niveus、 Rhizopus oryzae、 Rhizopus oligosporus、 Rhodococcus、 Saccharophagus degradans、 Sccharomyces cerevisiae、 Sclerotina libertina、 Sphingobacterium multivorum、 Sphingobium、 Sphingomonas、 Streptococcus、 Streptococcus thermophilus Y-1、 Streptomyces、 Streptomyces griseus、 Streptomyces lividans、 Streptomyces murinus、 Streptomyces rubiginosus、 Streptomyces violaceoruber、 Streptoverticillium mobaraense、 Tetragenococcus、 Thermus、 Thiosphaera pantotropha、 Trametes、 Trichoderma、 Trichoderma longibrachiatum、 Trichoderma reesei、 Trichoderma viride、 Trichosporon penicillatum、 Vibrio alginolyticus、 Vibrio splendidus、 Xanthomonas、 yeast、 Yarrowia lipolytica、 Zygosaccharomyces rouxii、 Zymomonas、 およびZymomonus mobilisからなる群から選択される。
【0034】
本発明の実施形態はまた、一般に、本明細書に記載の方法または組換え微生物により生産されるコモディティケミカルに関する。ある実施形態は、本明細書に記載のコモディティケミカルおよび精錬所生産石油製品を含有するブレンドコモディティケミカルを包含する。ある実施形態では、このコモディティケミカルが、イソオクタン、2‐エチルヘキサンおよび2−ブチル−オクタンから選択される。ある実施形態では、この精錬所生産石油製品が、ガソリン、ジェット燃料、およびディーゼル燃料から選択される。
【0035】
本発明はまた、コモディティケミカルで富化した精錬所生産石油製品の生産方法に関する。この方法は、(a)精錬所生産石油製品に、本明細書に記載される方法または組換え微生物により生産されるコモディティケミカルをブレンドすることを含み、それによって、このコモディティケミカルで富化された精錬所生産石油製品を生産する。
【0036】
[関連文献とのクロスリファレンス〕
本出願は、2008年12月11日付けで出願した米国仮出願第61/121,869号に基づく優先権を主張する。この出願の全体を、参照により本明細書に援用する。
[配列表に関する記載]
本出願に付随する配列表は、紙の写しの代わりにテキスト形式で提供され、参照として本明細書に援用される。配列表を含むテキストファイル名は、910180_420PC_SEQUENCE_LISTING.txtである。このテキストファイルは、178KBであり、2009年12月11日に作成され、EFS−Webを介して電子提出されている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、イソブチルアルデヒドをin vivoで2,4,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールに変換し得る典型的な経路を示す。
【図2】図2は、GC−MSによって測定される、pTrcTM1559(A)を有するDH10B株およびそのコントロール・プラスミド(B)からの3−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチルペンタナールの産生を示す。
【図3】図3は、GC−MSによって測定される、pTrcTM1559(A)を含んでいる DH10B株およびそのコントロール・プラスミド(B)からの2−エチル−2−ヘキセン−1−アールの産生を示す。
【図4】図4は、GC−MSによって測定される、pTrcTM1559(A)を含んでいるDH10B株およびそのコントロール・プラスミド(B)からの2−ブチル−2−オクテン−1−アールの産生を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の実施形態は、様々なコモディティケミカルまたは生物燃料を製造する際に、組換え微生物を、様々なアルデヒドおよび/またはケトンを利用するよう改変することができる、という発見に関する。例えば、アルドラーゼ活性を有する酵素をコードする、外来性の1つ以上のポリヌクレオチド、およびアルコールデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする、外来性の1つ以上のポリヌクレオチドを挿入すると、微生物が、アルデヒドおよび/またはケトンを、様々なコモディティケミカルまたはその中間体に変換することが可能になり得る。ある態様では、これらのコモディティケミカルはさらに化学的または酵素的に、生物燃料を含む他のコモディティケミカルに変換されてもよい。そのような生物燃料としては、例えば、イソオクタンおよび2‐エチルヘキサンなどの中鎖から長鎖のアルカンが挙げられる。
【0039】
ある実施形態では、本明細書中で提供される方法および組換え微生物は、様々なコモディティケミカル、特に長連から中鎖の炭化水素を製造するために利用してもよい。例えば、本発明の組換え微生物は、次の反応を触媒するために一般に利用してもよい。

(式中、R1は、CHCH、CHCH(CH)、CH(CHCH、 CHCH(CH)(CHCH、およびCHCHCH(CH)(CHCHからなる群から選択され、R2は、H、CH、CHCH、CHCH(CH)、CH(CHCH、CHCH(CH)(CHCH、CHCHCH(CH)(CHCH、nは0〜30であり、そして、それらから生産される対応するアルカンである。)
【0040】
典型的には、上記に例示される反応において、左から右へ数えて一番目の化学物質は、2つのアルデヒドおよび/またはケトン(同じ種類でも異なる種類でも可)の縮合により生産され、本明細書中に記載されかつ当技術分野で既知のように、アルドラーゼ活性を有する酵素によって触媒され得る。
【0041】
このアルドラーゼ縮合ステップの後、典型的には、上記に例示した反応の第一のステップが自然に生じるが、デヒドラターゼにより触媒されてもよい。
【0042】
第2の反応は、内在性二重結合還元酵素によって触媒され得るが、外来性二重結合還元酵素の追加によって増強されてもよい。ジオールまたはアルコールを生産する第三の反応は。本明細書中に記載され当該分野で周知のように、アルコールデヒドロゲナーゼによって触媒され得る。よって、本発明の、ある組換え微生物は外来性のアルドラーゼ、そして付加的に、外来性二重結合還元酵素、および/または外来性アルコールデヒドロゲナーゼを含んでもよい。
【0043】
上述の通り、イソオクタンとして知られている2,2,4−トリメチルペンタンは、オクタン価が100であるオクタン異性体であるイソオクタンは、ガソリンの重要な成分である。この分子をin vivoで生物学的に生産する1つの特定の例を挙げると、イソブチルアルデヒドの供与源を利用し得る組換え微生物中で、イソオクタンを生産する生合成経路を開始してもよい。ある実施形態では、イソブチルアルデヒドは、本明細書中に記載されるように、イソブチルアルデヒド生合成経路を含み、かつ、適切な単糖類またはオリゴ糖をイソブチルアルデヒドに変換することができる組換え微生物から得てもよい。
【0044】
簡潔に述べると、イソブチルアルデヒドの供与源を問わず、本発明の組換え微生物は、イソブチルアルデヒド分子2個を縮合して3−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチルペンタナールを生成するために利用してもよく、それは、アルドラーゼ活性を有する外来性酵素を含む組換え微生物によってin vivoで触媒されることが、本明細書中で示されている。ある実施形態では、3−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチルペンタナールは、次いで、アルコールデヒドロゲナーゼ(Adh)活性を有する外来性酵素を含む組換え微生物によって2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールに容易にin vivoで還元し得る。よって、ある実施形態では、アルドラーゼ酵素をコードする1つ以上のポリヌクレオチド、およびアルコールデヒドロゲナーゼ酵素をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む組換え微生物を、イソブチルアルデヒドの供与源から3−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチルペンタナールおよび2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールを合成し、次いでそれらをイソオクタンに変換するのに利用してもよい。
【0045】
イソオクタン製造の最終工程として、所望であれば、その後、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールを化学的方法や酵素的方法などの様々な方法によって、2,2,4−トリメチルペンタン(すなわちイソオクタン)に変換してもよい。そのような方法の1つの例として、本明細書中に記載され、かつ当該分野で周知の「水素処理法」が挙げられる。
【0046】
アルデヒドまたはケトンをコモディティケミカルに変換する別の例としては本明細書中で提供される組換え微生物を、ブチルアルデヒド2分子を縮合して3−ヒドロキシ−2−エチルヘキサナールが生成するために利用してもよく、これは、アルドラーゼ活性を有する外来性酵素を含む組換え微生物によってin vivoで触媒されることが、本明細書中で示されている。次いで、本明細書に記載のように、3−ヒドロキシ−2−エチルヘキサナールを、自然にまたは酵素的に脱水して、2−エチル−2−ヘキセン−1−アールを生成させてもよい。ある実施形態では、その後、2−エチル−2−ヘキセン−1−アールを連続的に還元して、2‐エチルヘキサナールおよび2−エチルヘキサノールを形成してもよい。前者は二重結合還元酵素によって、後者はアルコールデヒドロゲナーゼによってそれぞれ触媒される(実施例4を参照)。最終工程として、所望であれば、その後、2−エチルヘキサノールを化学的方法や酵素的方法などの様々な方法によって、当技術分野で周知であり本明細書に記載の技術を用いて、2‐エチルヘキサンに変換してもよい。
【0047】
よって、ある実施形態では、アルドラーゼ酵素をコードする外来性の1つ以上のポリヌクレオチドおよびアルコールデヒドロゲナーゼ酵素をコードする1つ以上の外来性のポリヌクレオチドを含む組換え微生物を利用して、ブチルアルデヒドの供与源から2−エチル−2−ヘキセン−1−アールおよび2−エチルヘキサノールを合成し、それからこれらを2‐エチルヘキサンに変換してもよい。ある実施形態では、ブチルアルデヒドは、本明細書中に記載のように、ブチルアルデヒド生合成経路を含み、単糖類またはオリゴ糖をブチルアルデヒドに変換することができる組換え微生物から得てもよい。
【0048】
本明細書中に記載の方法によれは、他の生物燃料と比較してはるかに利点が大きい生物燃料を生産することができる。特に、イソオクタンおよび中鎖から長鎖のアルカンは、エタノールやブタノールといった既存の一般的な生物燃料とくらべて多くの重要な利点を提供し、そして、将来的には、ガソリン、ディーゼル油、灯油、および重油などの石油系燃料に、長期にわたって取って代わる魅力的な燃料となる。一例として、イソオクタン、および他の中鎖から長鎖のアルカンおよびアルコールは、あらゆる石油製品およびとりわけジェット燃料中の主成分であり、従って、我々が生産するアルカンは、既存のエンジンに直接利用することができる。さらに例を挙げると、中鎖から長鎖のアルコールはエタノールよりはるかに良い燃料であり、ガソリンにほぼ匹敵するエネルギー密度を有する。上述の通り、イソオクタンはガソリンの主成分である。
【0049】
さらに別の例として、n‐アルカンは、ガソリン、ディーゼル油、灯油、および重油を含むすべての石油製品の主成分である。たとえば、C7からC20以上にわたる異なる炭素鎖長のn‐アルカンを生産するため、組換え微生物を利用してもよい。すなわち、C7はガソリン(例えば自動車)に、C10からC15はディーゼル油(例えば自動車、列車、および船舶船)に、C8からC16は、灯油(例えば航空機や船舶)およびすべての重油にというように、である。
【0050】
本発明のある実施形態は、一般に、バイオマス由来の供給原料からイソオクタンおよびその他の中鎖から長鎖のアルカンを生産し、それによって、生物燃料の低炭素源を提供する方法に関する。例えば、バイオマスからコモディティケミカルまたは生物燃料(例えばイソオクタン)を生産する際、炭素の唯一の供与源としてペクチンまたはアルギナートなどのバイオマス由来多糖類で増殖することができる微生物などの任意の入手可能な供与源から直接、適切なバイオマス由来単糖またはオリゴ糖を最初に得てもよい。次いで、この単糖またはオリゴ糖を、アルデヒドおよび/またはケトン生合成経路を含む組換え微生物に接触させることにより、アルデヒドおよび/またはケトンに変換してもよい。
【0051】
次いで、そのような組換え微生物が生産するアルデヒドおよび/またはケトンを、アルドラーゼ酵素およびアルコールデヒドロゲナーゼ酵素の両方を含む微生物といった本発明の組換え微生物に接触させることによって、コモディティケミカルまたは生物燃料に変換してもよい。ある実施形態では、アルデヒドおよび/またはケトン生合成経路を含む組換え微生物は、前述のアルドラーゼ酵素およびアルコールデヒドロゲナーゼ酵素を有する組換え微生物と同じでも異なっていてもよい。
【0052】
当業者に明白なその他の用途のなかでもとりわけ、コモディティケミカルで富化した精錬所生産石油製品を生産するために、本明細書中に記載の方法および組換え微生物により生産されるコモディティケミカルおよび生物燃料を、従来の製油方法によって生産される石油製品とブレンドするための既存の精錬所において利用してもよい。この目的のため、上述の通り、燃料生産者は既存のインフラストラクチャー(精錬所、パイプライン、タンカー)によってブレンドし供給することができる実質的に同様の低炭素燃料を求めている。炭化水素として、本明細書中の方法により生産されるコモディティケミカルは、石油由来燃料と実質的に同様である、石油由来燃料からの温室効果ガスの排出量を80%以上削減し、そのうえ、石油工業・ガス工業における既存のインフラと互換性をもつ。
【0053】
例えば、本出願により生産されるコモディティケミカルのうち、とりわけイソオクタンのような特定のものは、ガソリン、ジェット燃料、およびディーゼル燃料といった精錬所生産石油製品、に直接ブレンドすることができる。そのような生物学的に製造されるコモディティケミカルを、ガソリン、ジェット燃料、およびディーゼル燃料用のブレンド基材として利用することによって、精錬所は温室効果ガス排出量を80%以上削減し得る。
【0054】
本発明を実施するにあたっては、特に反対のことを指示していない限り、当該技術分野の熟練の範囲内である、分子生物学、組換えDNAテクノロジーの様々な慣用的方法を用いる。そのような方法の多くが、説明目的で、以下に記載される。そのような技術は、文献において詳細に説明される。例えば、Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Edition, 1989); Maniatis et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (1982); DNA Cloning: A Practical Approach, vol. I & II (D. Glover, ed.); Oligonucleotide Synthesis (N. Gait, ed., 1984); Nucleic Acid Hybridization (B. Hames & S. Higgins, eds., 1985); Transcription and Translation (B. Hames & S. Higgins, eds., 1984); A Practical Guide to Molecular Cloning (B. Perbal, ed., 1984)を参照されたい。
【0055】
[定義]
別段に定義しない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は本発明が属する分野の当業者が普通に理解している意味と同じ意味を有する。本明細書に記載するものと同等または等価の任意の方法および材料を本発明の実施および試験に使用することができるが、好適な方法および材料を本明細書では記載する。本発明の目的のため、以下に次の用語を定義する。本明細書で参照した各文献を、参照によりその全体を本明細書に援用する。
【0056】
本明細書で使用する冠詞「a」および「an」は、1以上(すなわち少なくとも1つ)の、その冠詞を付した対象を文法的に指す。例えば「要素(an element)」は、1つ以上の要素を意味する。
【0057】
「約」とは、参照となる量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、重量、または長さに対し、30、25、20、25、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1%の範囲で変動する量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量、または長さを意味する。
【0058】
「生物学的に活性のある断片」という用語は、参照となるポリヌクレオチド断片またはポリペプチド配列の断片に適用され、参照配列の活性の、少なくとも約0.1、0.5、1、2、5、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、100、110、120、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000%、またはそれ以上を有する断片をいう。
【0059】
「参照配列」という用語は、本明細書中に記載される生物学的活性を有する、任意のポリペプチドまたは酵素(例えば、アルドラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、デヒドラターゼ、ジオールデヒドロゲナーゼ、二重結合還元酵素など)の、核酸がコードする配列、すなわちアミノ酸配列を一般に指し、その例としては、配列番号1〜96および215〜222で例示されるポリヌクレオチド参照配列およびポリペプチド参照配列、さらに配列番号223〜260で例示されるモチーフ配列を含む「野生型」配列が挙げられる。参照配列としてはまた、本明細書中に記載の配列の天然の機能的変異体(すなわちオーソログまたはホモログ)が挙げられ得る。
【0060】
本発明の範囲には、少なくとも約18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、500、600個またはそれ以上の連続するヌクレオチド長またはアミノ酸残基長で(各数字の間のすべての整数を含めて)、かつ参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの酵素活性を有するポリペプチドを含むかまたはコードする、生物学的に活性な断片が含まれる。代表的な生物学的に活性な断片は、一般に、例えば分子内または分子間の相互作用などの相互作用に関与する。分子間相互作用は特異的結合相互作用または酵素的相互作用であってもよい。酵素的相互作用または活性の例としては、本明細書中に記載するものの中でも特に、アルドラーゼ活性、アルコールデヒドロゲナーゼ活性、デヒドラターゼ活性、リアーゼ活性、輸送体活性、イソメラーゼ活性、キナーゼ活性が挙げられる。生物学的に活性な断片は、典型的には、本明細書中に記載され当業者にも周知の、1つ以上の活性部位または酵素的/結合モチーフが含まれる。
【0061】
「生体分子」とは、一般に、生体により産生される有機分子をいい、例えば、
タンパク質、多糖類および核酸などの大きな重合体分子(生体高分子)のほか、
一次・二次代謝産物、脂質、リン脂質、糖脂質、ステロール、グリセロ脂質、ビタミンおよびホルモンなどの小分子が挙げられる。有機分子(例えば生体分子)は主として、炭素および水素、窒素、および酸素、そして割合は低いが、リンおよび硫黄から成るが、さらにほかの要素も生体分子に組み込み得る。
【0062】
「生体重合体」とは、一般に、反復構造単位で構成される大きな分子すなわち巨大分子をいい、典型的には、共有結合による化学的結合で連結され、生体により産生され得る。生体重合体の例としては、多糖類、核酸、およびタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
「コード配列」とは、遺伝子のポリペプチド産物のコードに寄与するあらゆる核酸配列を意味する。それに対し、「非コード配列」とは、遺伝子のポリペプチド産物のコードに寄与しない任意の核酸配列を指す。
【0064】
本明細書の全体を通じて、文脈が別のものを要求しない限り、「含む(comprise(s)」および「含んでいる(comprising)」という語は、記述された工程もしくは要素、または工程もしくは要素の群を包含するが、他のどのような工程または要素も、工程または要素の群も除外しないことを意味するということが理解されよう。
【0065】
「からなる(consisting of)」とは、「からなる」という語句の後に続くいかなるものも含み、限定されることを意味する。したがって、「からなる」という語句は、列記される要素が必要または必須であり、他の要素は存在してはならないということを表している。
【0066】
「本質的に〜からなる(consisting essentially of)」とは、この句の後に列記されるあらゆる要素、および記載された要素の開示において特定される活性または作用に対して干渉も寄与もしない他の要素に限定された要素を含むことを意味する。したがって、「本質的に〜からなる」という語句は、列記される要素は必要または必須であるが、他の要素は選択的であって、列記される要素の活性または作用に影響を及ぼすか否かに応じて存在することもあれば存在してもよいし、しなくてもよいということを表している。
【0067】
「相補的」および「相補性」という用語は、塩基対合則によって関連づけられたポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)をいう。例えば、配列「A−G−T」は、配列「T−C−A」に対して相補的である。相補性は「部分的」、つまり核酸の塩基の数個のみが塩基対合則に従ってマッチするものであってもよい。または、核酸間に「完全な」または「全体的な」相補性があってもよい。核酸鎖間の相補性の度合いは、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率および強度に大きな影響を及ぼす。
【0068】
「に対応する」または「に対応している」とは、(a)参照ポリヌクレオチド配列の全体、もしくは一部に対して実質的に同一、もしくは相補的であるか、またはペプチド、もしくはタンパク質のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、または(b)参照ペプチド、もしくはタンパク質のアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸配列を有するペプチド、またはポリペプチドを意味する。
【0069】
「誘導体」という用語は、当該技術分野で理解されるであろうように、修飾によって、例えばその他の化学的部分との結合(conjugation)(例えば、ペグ化)もしくは錯化、または翻訳後修飾技術によって、塩基配列に由来したポリペプチドを意味する。また、「誘導体」という用語には、その範囲内に、機能的に同等な分子を提供する付加、または欠失といった、親配列に加えられる変化を含む。
【0070】
「酵素反応条件」とは、酵素の機能を可能にする環境(すなわち、温度、pH、阻害物質の欠如などの要因)において、任意の必要条件を利用できることを意味する。酵素反応性条件は、試験管内などのin vitroでも、細胞内などのin vivoでもよい。
【0071】
本明細書で使用する、「機能」、「機能的である」などの用語は、生物学的または酵素的機能を意味する。
【0072】
「遺伝子」とは、染色体上の特定遺伝子座を占め、かつ、転写および/もしくは翻訳調節配列、ならびに/またはコード領域および/または非翻訳配列(すなわち、イントロン、5’および3’非翻訳配列)からなる、遺伝の単位を意味する。
【0073】
「相同性」とは、同一であるか、または保存的置換を構成するアミノ酸のパーセンテージ数をいう。相同性は、GAP(Deveraux et al., 1984, Nucleic Acids Research 12, 387-395)などの配列比較プログラムによって決定してもよく、この文献を参照することにより本明細書に援用する。この方法では、本明細書中に引用されたものと類似の、または実質的に異なる配列を、アラインメント中へのギャップの挿入によって比較することが可能となり、そのようなギャップは例えば、GAPで使用される比較アルゴリズムによって決定される。
【0074】
「宿主細胞」という用語は、本発明の任意の組換えベクターまたは単離されたポリヌクレオチドのレシピエントとなりうる、またはレシピエントとなった個々の細胞または細胞培養物を含む。宿主細胞には単一の宿主細胞の子孫が含まれるが、この子孫は、自然の、偶発的または意図的な変異および/または変化が理由で元の親細胞と(形態または総DNA相補配列において)、必ずしも完全に同一でなくてもよい。宿主細胞には、in vivoまたはin vitroで、本発明の組換えベクターまたはポリヌクレチドによりトランスフェクト、形質転換、または感染した細胞が含まれる。本発明の組換えベクターを含む宿主細胞は、組換え宿主細胞、組換え細胞、または組換え微生物である。
【0075】
「単離された」とは、その天然の状態において通常それを伴う成分が、実質的に、または本質的に無い材料を意味する。例えば、本明細書で使用される「単離されたポリヌクレオチド」とは、天然に存在する状態においてその両端に位置する配列から精製されたポリヌクレオチド、例えば、その断片に通常隣接する配列から取り出されたDNA断片をいう。あるいは、「単離されたペプチド」または「単離されたポリペプチド」などは、本明細書で使用するように、その天然の細胞環境、および細胞の他の成分との関連から、ペプチドまたはポリペプチドの分子がin vitroで単離および/または精製されること、つまり、それはin vivoの物質が付随していないことを意味する。
【0076】
「増強する(enhance)」「増強している(enhancing)」「増加する(increase)」、または「増加している(increasing)」とは、未改変の微生物、または異なる改変がされた微生物などの対照微生物と比較して、1つ以上の組換え微生物が、より大量の特定の産物、または分子(例えば、コモディティケミカル、生物燃料、またはその中間代謝物)を産生する能力を意味する。「増加した」量とは、典型的には、「統計的に有意な」量であり、未改変の微生物、または異なる改変がされた微生物によって産生される量の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100倍またはそれ以上(全ての間の整数、および少数、例えば1.5、1.6、1.7、1.8などを含めて)の増加を含み得る。増加量は、当技術分野の日頃よく使う技術によって測定してよい。例えば、コモディティケミカルの「増加」量は、論理上の最大収量に対する比率に従って測定してよい。例えば、ある実施形態では、本発明の方法が、標的分子(例えばコモディティケミカル)の産出を、理論上の最大収量の少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%まで増強し得る。ある実施形態では、この方法は、標的分子の理論上の最大収量の割合を、対照条件下または異なる条件下の同じ組換え微生物をインキュベートすることと比較して、または同様もしくは類似条件下で対照(例えば、未改変もしくは異なる改変をした)微生物をインキュベートすることと比較して、少なくとも約10%(例えば、理論上の最大収量の約30%から約40%に)、15%(例えば、約30%から約45%に)、20% 、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、または90% 増加させることを特徴としてもよい。
【0077】
「減少させる(reduce)」という用語は一般に、診断技術における慣習的方法により測定されるように、NADHまたはアセテート産生などの関連する細胞性応答の「減少(decrease)」に関する。他の関連する細胞性応答(in vivoまたはin vitro)は当業者には明白である。応答の「減少」は、未改変の微生物もしくは異なる改変をされた微生物、または異なる条件下で増殖させた微生物により生じる反応と比較して「統計的に有意」な量であってよく、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%(間のすべての整数も含め)の減少であってよい。
【0078】
「から得られる」とは、例えばポリヌクレオチド抽出物、またはポリペプチド抽出物などの試料が所望の生物体、典型的には微生物などの特定の供与源から単離されるか、またはそれに由来することを意味する。「から得られる」はまた、ポリヌクレオチド、またはポリペプチド配列が特定の生物体、もしくは微生物から単離されるか、またはそれに由来する状況を意味してもよい。例えば、ベンズアルデヒドリアーゼ酵素をコードするポリヌクレオチド配列は、シュードモナス属などの様々な原核生物、または真核生物の微生物から単離され得る。別の例として、アルドラーゼ酵素をコードするポリヌクレオチド配列は、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritime)および大腸菌DH10Bなどの様々な原核生物または真核生物の微生物から単離され得る。
【0079】
本明細書で使用する「操作可能に連結される」という用語は、遺伝子をプロモーターの調節制御下に置き、次いでそのプロモーターが遺伝子の転写および場合により翻訳を制御することを意味する。異種プロモーター/構造遺伝子の組み合わせの構築においては、遺伝的配列またはプロモーターと、その天然の状況でそれが制御する遺伝子、すなわちその遺伝的配列またはプロモーターが由来する遺伝子との間の距離とほぼ同じである、遺伝子転写開始部位からの距離に、遺伝的配列またはプロモーターを配置することが一般に好ましい。当技術分野で公知であるように、この距離のある程度の変化は、機能の喪失を伴うことなく受け入れることが可能である。同様に、調節配列エレメントの、その制御下に配置される異種遺伝子に対する好ましい配置は、その天然の状況、すなわちその由来となる遺伝子におけるエレメントの配置によって規定される。「構成的プロモーター」は、典型的には、大部分の条件下で活性である、すなわち転写を促進する。「誘導性プロモーター」は、典型的には、特定の分子因子(例えば、IPTG)、または特定の環境条件(例えば、CO濃度、栄養水準、光、熱)の存在下などの特定の状況下のみにおいて活性である。そのような条件の非存在下では、誘導性プロモーターは、典型的には、転写活性の有意なレベルにも測定可能なレベルにもならない。
【0080】
本明細書で使用する「ポリヌクレオチド」、または「核酸」という記述は、mRNA、RNA、cRNA、rRNA、cDNA、またはDNAを示す。この用語は、典型的には、リボヌクレオチド、もしくはデオキシヌクレオチドのいずれか、または修飾形態のいずれかのタイプのヌクレオチドの、長さが少なくとも10塩基のヌクレオチドの重合体形態をいう。この用語は、DNAの一本鎖、および二本鎖形態を含む。
【0081】
当業者によって理解されるように、本発明のポリヌクレオチド配列は、ゲノム配列、ゲノム外およびプラスミドでコードされた配列、並びにタンパク質、ポリペプチド、ペプチド等を発現するか、または発現するようにされている、より小さな改変された遺伝子セグメントを含んでもよい。このようなセグメントは、天然において単離されていても、またはヒトの手によって合成的に修飾されていてもよい。
ポリヌクレオチドは、一本鎖(コーディングもしくはアンチセンス)であっても、二本鎖であってもよく、さらにDNA分子(ゲノム、cDNA、もしくは合成)であっても、またはRNA分子であってもよい。付加的なコード配列または非コード配列が、本発明のポリヌクレオチド内に存在してもよいが、必須ではない。また、ポリヌクレオチドは、その他の分子、および/または補助物質に結合していてもよいが、必須ではない。
【0082】
ポリヌクレオチドは、天然の配列を含んでいてもよく、またはこのような配列の変異体、もしくは生物学的に機能的な等価物を含んでいてもよい。ポリヌクレオチド変異体は、更に下記に記載する通り、好ましくは、コードされたポリペプチドの酵素活性が修飾されていないポリペプチドと比較して、実質的に減弱しないように、かつ、好ましくは、コードされたポリペプチドの酵素活性が修飾されていないポリペプチドと比較して、改善される(例えば、最適化される)ように、1つ以上の置換、付加、欠失、および/もしくは挿入を含んでいてもよい。コードされたポリペプチドの酵素活性に対する効果は、一般に本明細書に記述したとおりに評価してもよい。
【0083】
ある実施形態においては、本発明は、本明細書中に記載するなかでも特に、アルドラーゼまたはアルコールデヒドロゲナーゼと同一または相補的である配列の、様々な長さの連続ストレッチを含む、単離したポリヌクレオチドを提供する。この単離したポリヌクレオチドは、生物学的に活性な、短くされた酵素をコードする。
【0084】
本出願の酵素をコードするヌクレオチド配列の例としては、完全長アルドラーゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼ、ならびにこれらの遺伝子の完全長もしくは実質的に完全長ヌクレオチド配列の一部分、またはそれらの転写物あるいはこれらの転写物のDNAコピーが挙げられる。ヌクレオチド配列の一部分が、参照ポリペプチドの生物学的活性を保持するポリペプチド部分またはセグメントをコードしてもよい。本明細書中で提供される酵素の生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチド配列の一部は、少なくとも約20、21、22、23、24、25、30、40、50、60、70、80、90、100、120、150、200、300、400、500、600個またはそれ以上、すなわち、完全長酵素中に存在するアミノ酸のほぼ総数の連続するアミノ酸残基をコードし得る。この文脈、および本明細書中で用いられるあらゆる文脈での、「中間の長さ」とは、引用された値の中間の任意の長さ、例えば、101、102、103など、151、152、153など、201、202、203などを意味するということは、容易に理解されよう。
【0085】
本発明のポリヌクレオチドは、コード配列それ自体の長さに関係なく、これらの全長がかなり変化し得るように、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、付加的な制限酵素部位、マルチクローニングサイト、その他のコードセグメント等の他のDNA配列と組み合わせてもよい。従って、ほとんど任意の長さのポリヌクレオチド断片が使用されることが考えられ、全長は、好ましくは、所定の組換えDNAプロトコールで調製し易く使い易いかどうかにより限定される。
【0086】
「ポリヌクレオチド変異体」、および「変異体」などの用語は、本明細書に記載される任意の参照ポリヌクレオチド配列または遺伝子と実質的な配列同一性を示すポリヌクレオチド、および本明細書に記述された任意の参照ポリヌクレオチド配列、または本明細書で言及した任意の遺伝子もしくはタンパク質の任意のポリヌクレオチドコード配列、さらに、以下に定義しかつ当技術分野において公知の低ストリンジェンシー、中ストリンジェンシー、高ストリンジェンシー、または非常に高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドをいう。これらの用語は、少なくとも1つのヌクレオチドの付加、欠失、または置換によって参照ポリヌクレオチドと区別されるポリヌクレオチドも包含している。したがって、「ポリヌクレオチド変異体」および「変異体」という用語には、1つ以上のヌクレオチドが付加された、もしくは欠失した、または異なるヌクレオチドで置き換えられたポリヌクレオチドが含まれる。この点に関して、参照ポリヌクレオチドに対して突然変異、付加、欠失、および置換を含む特定の改変を加え、それにより、その改変されたポリヌクレオチドが、参照ポリヌクレオチドの生物学的機能もしくは活性を保持したり、または参照配列と比べて活性が増加(すなわち、最適化)し得るということは、当技術分野で十分に理解されている。ポリヌクレオチド変異体は、例えば、本明細書に記載の参照ポリヌクレオチドと少なくとも50%(および少なくとも51%〜少なくとも99%、ならびに間の全ての整数パーセンテージ)の配列同一性を有するポリヌクレオチドを含む。
【0087】
また、「ポリヌクレオチド変異体」および「変異体」という用語は、これらの酵素をコードする天然の対立遺伝子変異体を含む。天然の変異体の例としては、対立遺伝子変異体(同じ遺伝子座)、ホモログ(異なる遺伝子座)、およびオーソログ(異なる生物体)が挙げられる。このような天然の変異体は、例えば当技術分野で既知である様々なポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)およびハイブリダイゼーションに基づく技術を含む、周知の分子生物学技術を用いて同定および単離することができる。天然の変異体は、本明細書に記載の適切な酵素活性を有する1つ以上の遺伝子(例えば、C−Cリガーゼ、アルドラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、還元酵素、など)をコードするいかなる生物体からも単離することができる。
【0088】
非天然の変異体は、ポリヌクレオチド、細胞、または生物体に応用される技術を含む突然変異誘発技術によって作製することができる。変異体は、ヌクレオチド置換、欠失、反転、および挿入を含むことができる。変異は、コード領域、および非コード領域のいずれか、または両方に存在することができる。ある態様において、非天然の変異体は、活性、安定性、またはその他のあらゆる望ましい特色を増大させるため、酵素を操作したりスクリーニングするなどして、特定の微生物(例えば、大腸菌)に使用するために最適化してもよい。このような変異により、(元のコードされる産物と比較して)保存的、および非保存的アミノ酸置換が生じることがある。ヌクレオチド配列については、保存的変異体は、遺伝暗号の縮重のため、参照ポリペプチドのアミノ酸配列をコードする配列を含む。また、変異体ヌクレオチド配列は、例えば部位特異的突然変異誘発を用いて作製されながら、なおも生物学的に活性なポリペプチドをコードする配列といった、合成に由来するヌクレオチド配列を含む。
【0089】
一般に、特定の参照ヌクレオチド配列の変異体は、デフォルトパラメーターを使用して、本明細書の別の箇所に記載の配列アラインメントプログラムによって決定されるように、その特定のヌクレオチド配列に対して少なくとも約30%、40% 50% 、55%、60%、65%、70%、一般に少なくとも約75%、80%、85%、90%〜95%以上、更に約97%、または98%以上もの配列同一性を有し得る。
【0090】
既知のアルドラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、二重結合還元酵素および他のヌクレオチド参照配列を、他の生物、特に他の微生物から、対応する配列および対立遺伝子を単離するために、使用してもよい。核酸配列のハイブリダイゼーション方法は、当技術分野で容易に利用可能である。他の生物からのコード配列は、本明細書中に示すコード配列との配列同一性に基づいた周知の技術に従って単離できる。そのような技術では、既知のコード配列の全体または部分が、選択された生物からクローニングしたゲノムDNA断片またはcDNA断片(すなわちゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリー)の集団の中にある、他の参照コード配列に選択的にハイブリダイズするプローブとして使用される。
【0091】
本発明ではまた、以下に記載するストリンジェンシー条件下において、基準アルドラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、二重結合還元酵素、もしくは他のヌクレオチド配列、またはそれらの相補配列に、ハイブリダイズする、ポリヌクレオチドを想定している。本明細書中で使用する「低ストリンジェンシー、中ストリンジェンシー、高ストリンジェンシー、または非常に高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする。」という用語は、ハイブリダイゼーション、および洗浄のための条件を表す。ハイブリダイゼーション反応を行うための手引きは、Ausubel et al. “Current Protocols in Molecular Biology”, John Wiley & Sons Inc, 1994-1998, Sections 6.3.1-6.3.6.中に見出すことができる。この文献には、水性および非水性の方法が記載されており、いずれを使用してもよい。
【0092】
本明細書中の「低ストリンジェンシー」条件についての言及は、42℃におけるハイブリダイゼーションについて、少なくとも約1%v/v〜少なくとも約15%v/vのホルムアミド、および少なくとも約1M〜少なくとも約2Mの塩、並びに42℃における洗浄について、少なくとも約1M〜少なくとも約2Mの塩を含み、かつ包含する。また、低ストリンジェンシー条件は、65℃におけるハイブリダイゼーションについて、1% ウシ血清アルブミン(BSA)、1mM EDTA、0.5M NaHPO(pH 7.2)、7% SDS、および室温での洗浄について、(i)2×SSC、0.1% SDS;または(ii)0.5% BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO(pH 7.2)、5% SDSを含んでいてもよい。低ストリンジェンシー条件の一つの実施形態には、少なくとも約45℃における6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)によるハイブリダイゼーションと、それに続く少なくとも50℃での0.2×SSC、0.1% SDSにおける2回の洗浄を含む(洗浄液の温度は、低ストリンジェンシー条件について、55℃に増加することができる)。
【0093】
「中ストリンジェンシー」条件は、42℃におけるハイブリダイゼーションについて、少なくとも約16%v/v〜少なくとも約30%v/vホルムアミド、および少なくとも約0.5M〜少なくとも約0.9Mの塩、並びに55℃における洗浄について、少なくとも約0.1M〜少なくとも約0.2Mの塩を含み、かつ包含する。また、中ストリンジェンシーの条件は、65℃におけるハイブリダイゼーションについて1% ウシ血清アルブミン(BSA)、1mM EDTA、0.5のM NaHPO(pH 7.2)、7% SDS、および60〜65℃における洗浄について、(i)2×SSC、0.1% SDS;または(ii)0.5% BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO(pH 7.2)、5% SDSを含んでいてもよい。中ストリンジェンシーの条件の一つの実施形態は、約45℃にて6×SSC中でハイブリダイゼーションと、それに続く60℃での、0.2×SSC、0.1%SDSでの1回以上の洗浄を含む。
【0094】
「高ストリンジェンシー」条件は、42℃におけるハイブリダイゼーションについて、少なくとも約31%v/v〜少なくとも約50%v/vホルムアミド、および約0.01M〜約0.15Mの塩、並びに55℃における洗浄について、約0.01M〜約0.02Mの塩を含み、かつ包含する。また、高ストリンジェンシー条件は、65℃におけるハイブリダイゼーションについて、1% BSA、1mM EDTA、0.5M NaHPO(pH 7.2)、7% SDS、および65℃を超える温度における洗浄について、(i)0.2×SSC、0.1% SDS;または(ii)0.5% BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO(pH 7.2)、1% SDSを含んでいてもよい。高ストリンジェンシー条件の一つの実施形態は、約45℃で6×SSC中でのハイブリダイゼーションと、それに続く65℃での1回以上の0.2×SSC、0.1% SDS中での洗浄を含む。
【0095】
「非常に高ストリンジェンシー」条件の1つの実施形態は、65℃で0.5Mのリン酸ナトリウム、7% SDS中でのハイブリダイゼーションと、それに続く65℃での0.2×SSC、1% SDS中の1回以上の洗浄である、
その他のストリンジェンシー条件は、当技術分野において周知であり、当業者であれば、ハイブリダイゼーションの特異性を最適化するため、様々な要因を操作してよいということを認識するであろう。最終洗浄のストリンジェンシーを最適化することにより、高度なハイブリダイゼーションを保証することができる。詳細な例については、Ausubelらの上記文献の2.10.1〜2.10.16ページ、およびSambrookらの文献Current Protocols in Molecular Biology(1989)、1.101〜1.104節を参照されたい。
【0096】
ストリンジェントな洗浄は、典型的には約42℃〜68℃の温度で実施されるが、当業者であれば、そのその他の温度もストリンジェント条件に適し得ることを認識するであろう。DNA−DNAハイブリッド形成のための最大ハイブリダイゼーション化は、典型的にはTmの約20℃〜25℃下で生じる。Tmとは、融解温度、すなわち2つの相補的ポリヌクレオチド配列が分離する温度であることは、当技術分野において周知である。Tmを見積もるための方法は、当該技術分野において周知である(Ausubelらの上記の文献2.10.8ページを参照されたい)。
【0097】
一般に、完全に対合したDNAの二重鎖のTは、式:T=81.5+16.6(log10M)+0.41(%G+C)−0.63(%ホルムアミド)−(600/長さ)により、近似値として予測され得る(式中:Mは、Na+の濃度で、好ましくは0.01モル〜0.4モルの範囲であり;%G+Cは、塩基の総数の割合としてのグアノシンおよびシトシン塩基の合計で、30%〜75% G+C間の範囲であり;% ホルムアミドは、容積パーセントホルムアミド濃度であり;長さは、DNA二重鎖における塩基対の数である)。二重鎖DNAのTは、ランダムにミスマッチの塩基対の数が1%増加する毎に、およそ1℃ずつ下がる。洗浄は、一般に 高ストリンジェンシーでT−15℃で、または中ストリンジェンシーでT−30℃で行う。
【0098】
ハイブリダイゼーション手順の一例では、固定されたDNAを含む膜(例えば、ニトロセルロース膜またはナイロン膜)を、標識されたプローブを含むハイブリダイゼーションバッファー(50% 脱イオン化ホルムアミド、5×SSC、5×Reinhardt溶液[(0.1%フィコール、0.1% ポリビニルピロリドン、および0.1% ウシ血清アルブミン)、0.1% SDS、および200mg/ml変性サケ精子DNA)中で42℃で一晩ハイブリダイズさせる。次いで、この膜を2回連続して中ストリンジェンシー(すなわち、45℃で15分間の2×SSC、0.1% SDS、50℃で15分間の2×SSC、0.1% SDS)で洗浄した後、2回連続してより高いストリンジェンシー(すなわち、55℃で12分間の0.2×SSC、0.1% SDS、続いて65〜68℃で12分間の0.2×SSC、0.1% SDS溶液)で洗浄する。上記に基づき、本明細書中に記載され当技術分野で既知のように、本発明の実施形態は、アルドラーゼまたはアルコールデヒドロゲナーゼ酵素をコードするポリヌクレオチド配列などの、本明細書中に記載されたいずれの参照ポリヌクレオチド配列の相補配列にも中、高、または非常に高いストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を含む、組換え微生物を包含する。
【0099】
ポリヌクレオチドおよびその融合物は、当技術分野において既知で利用可能な様々な十分確立された技術のいかなるものを用いても、調製し、操作し、かつ/あるいは発現させてよい。例えば、本発明のポリペプチド、またはその融合タンパク質もしくは機能的な同等物をコードするポリヌクレオチド配列を、組換えDNA分子で使用して適切な宿主細胞における選択された酵素を直接発現させてもよい。遺伝暗号の固有の縮重に起因し、同じか、または機能的に等価なアミノ酸配列を実質的にコードするその他のDNA配列を作製してもよく、これらの配列を、特定のポリペプチドをクローニングし発現させるために使用してもよい。
【0100】
当業者が理解するように、非天然のコドンを有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を作製することが有利になる場合もあり得る。例えば、特定の原核生物宿主または真核生物宿主に好まれるコドンを選択し、タンパク質発現の速度を増加させたり、あるいは、例えば、天然の配列から生成される転写物の半減期よりも長い半減期といった望ましい特性を有する組換えRNA転写物を生成させてもよい。このようなヌクレオチドは、典型的には「コドン最適化」といわれる。本明細書に記載のいかなるヌクレオチド配列も、このような「コドン最適化」形態に利用してよい。
【0101】
その上、本発明のポリヌクレオチド配列は、遺伝子産物のクローニング、プロセシング、発現、および/または活性を修飾する改変を含む(それらに限定されない)様々な理由のために、ポリペプチドをコードする配列を改変するため、一般に当技術分野において既知の方法を使用して操作することができる。
【0102】
所望のポリペプチドを発現させるため、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、または機能的な等価物を、適切な発現ベクター、すなわち挿入されたコード配列の転写および翻訳のために必要なエレメントを含むベクターに挿入してもよい。当業者に周知である方法を用いて、目的のポリペプチドをコードする配列と、適切な転写および翻訳調節エレメントと、を含む発現ベクターを構築してもよい。そのような方法としては、in vitro組換えDNA技術、合成技術、およびin vivo遺伝子組換えが挙げられる。このような技術は Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual (1989), and Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (1989)に記載されている。
【0103】
目的とするポリヌクレオチド配列で形質転換された宿主細胞を、細胞培養物からタンパク質を発現および回収するのに好適な条件下で培養してもよい。組換え細胞により産生されるタンパク質は、配列および/または使用するベクターに応じて、分泌されても、または細胞内に含まれていてもよい。当業者が理解するように、本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、コードされたポリペプチドが細胞内の所望の部位に局在するように指示する信号配列を含むよう、設計してもよい。他の組換え構築物を、目的のポリペプチドをコードする配列と、コードされたタンパク質の分泌を指図するであろうポリペプチド・ドメインをコードするヌクレオチド配列とを連結するために使用してもよい。
【0104】
本発明の実施形態では、コモディティケミカルを生産するための、アルドラーゼ活性、アルコールデヒドロゲナーゼ活性、二重結合還元酵素活性、または本発明に記載のその他の活性を有する、切断型、変異型および/または修飾型を含む「ポリペプチド」を含む組換え微生物の使用を想定している。「ポリペプチド」、「ポリペプチド断片」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、アミノ酸残基の重合体、並びにそれらの変異体、およびアナログをいうのに、本明細書では同義的に使用される。よって、これらの用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然アミノ酸の化学的アナログなどの合成非天然アミノ酸であるようなアミノ酸重合体、並びに天然アミノ酸重合体に適用される。ある態様において、ポリペプチドは、典型的には様々な化学反応を触媒する(すなわち、速度を増加させる)酵素的ポリペプチド、または「酵素」を含んでいてもよい。
【0105】
ポリペプチド「変異体」という記述は、少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、欠失、または置換によって参照ポリペプチド配列から区別されるポリペプチドをいう。ある実施態様において、ポリペプチド変異体は、1つ以上の置換によって参照ポリペプチドから区別されるが、この置換は、保存的でも非保存的でもよい。ある実施態様において、ポリペプチド変異体は、保存的置換を含む。この点に関して、いくつかのアミノ酸を、ポリペプチドの活性の性質を変えることなく広く同様の特性をもつその他のものに変えてもよいことは、当技術分野においてよく理解されている。さらに、ポリペプチド変異体は、1つ以上のアミノ酸が付加もしくは欠失され、または異なるアミノ酸残基で置換されたポリペプチドも包含する。
【0106】
本出願が包含する変異体タンパク質は、「生物学的に活性である」すなわち、参照ポリペプチドの酵素活性を有し続けている。そのような変異体は、例えば、遺伝的多型により生じてもよいし、または人為的操作によって生じてもよい。参照ポリペプチド配列またはその断片の生物学的に活性な変異体は、デフォルトパラメーターを使用して本明細書の別の箇所に記載した配列アラインメントプログラムによって決定されるように、参照タンパク質のための特定のアミノ酸配列に対して少なくとも約40%、50%、60%、70%、一般に少なくとも約75%、80%、85%、通常は、90%〜95%以上、典型的には約98%以上の配列類似性または同一性を有し得る。参照ポリペプチドの生物学的に活性な変異体において、そのタンパク質とのアミノ酸残基数の違いは、一般に、200、100、または20という多数であってもよいし、または適切には、1〜15,6〜10のような1〜10、5、4、3、2、またはわずか1という少数であってもよい。いくつかの実施形態では、変異体ポリペプチドの参照ポリペプチド配列とのアミノ酸残基との違いは、少なくとも1つ、しかし、15、10,または5未満である。他の実施形態では、変異体ポリペプチドの参照配列との違いは、少なくとも1残基、しかし20%、15%、10%、または5%未満である。
【0107】
本発明は、本明細書に記載の任意の酵素活性(例えばアルドラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、二重結合還元酵素など)を有する完全長ポリペプチドの変異体、これらの完全長ポリペプチドの切断型断片、切断型断片の変異体、並びにこれらに関連する生物学的に活性な断片の、本明細書に記載する方法における使用を想定している。典型的には、ポリペプチドの生物学的に活性な断片は、相互作用、例えば分子内または分子間の相互作用に関与してもよい。分子間相互作用は、特異的結合相互作用、または酵素的相互作用であってもよい(例えば、相互作用は、一過性であってもよく、共有結合が形成され、または壊される)。本明細書に記載の酵素活性を有するポリペプチド/酵素の生物学的に活性な断片は、(推定上の)完全長参照ポリペプチドのアミノ酸配列に十分に類似するか、またはそれに由来するアミノ酸配列を含むペプチドを含む。典型的には、生物学的に活性な断片は、少なくとも1つの酵素活性を有するドメインまたはモチーフを含み、さらに、様々な活性なドメインの1つ以上(および、場合によっては全て)を含んでいてもよい。酵素の生物学的に活性な断片は、例えば、参照ポリペプチド配列の、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、450、500、600、(これらの間の全ての整数を含め)またはそれ以上の隣接するアミノ酸であるポリペプチド断片であってよい。特定の実施態様において、生物学的に活性な断片は、本明細書の別の箇所に記載され当技術分野において公知の、保存された酵素の配列、ドメイン、またはモチーフを含む。適切には、生物学的に活性な断片は、それが由来する野生型ポリペプチドの活性の約1%、10%、25%、50%以上を有する。
【0108】
アルドラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、二重結合還元酵素、または他の参照ポリペプチドは、アミノ酸の置換、欠失、短縮、および挿入を含むさまざまな方法で改変することができる。そのような操作のための方法は当技術分野において一般に既知である。例えば、参照ポリペプチドのアミノ酸配列変異体は、DNA中の突然変異によって調製することができる。突然変異誘発およびヌクレオチド配列の改変の方法は当技術分野において周知である。例えば、Kunkel(1985, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 82: 488-492)、Kunkel et al., (1987, Methods in Enzymol, 154: 367-382)、米国特許第4,873,192号、Watson, J. D. et al., (“Molecular Biology of the Gene”), Fourth Edition, Benjamin/Cummings, Menlo Park, Calif., 1987)およびそこれらの中に引用されている参考文献を参照されたい。目的のタンパク質の生物活性に影響を及ぼさない適切なアミノ酸置換に関する手引きは、Dayhoff et al., (1978) Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl. Biomed. Res. Found., Washington, D.C.)のモデルに見出すことができる。
【0109】
点突然変異または短縮により作成されたコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングする方法、および選択された特性を有する遺伝子産物をcDNAライブラリーからスクリーニングする方法は、当技術分野において既知である。そのような方法は、アルドラーゼまたはアルコールデヒドロゲナーゼのポリペプチドのコンビナトリアル突然変異誘発によって作製された遺伝子ライブラリーの迅速スクリーニングに利用することができる。ライブラリー中の機能的突然変異体の頻度を高める手法である再帰的アンサンブル突然変異誘発(Recursive ensemble mutagenesis; REM)を、ポリペプチド変異体を同定するためのスクリーニングアッセイと組み合わせて用いることができる(Arkin and Yourvan (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 7811-7815; Delgrave et al., (1993) Protein Engineering, 6: 327-331)。以下により詳細に考察するように、1つのアミノ酸を類似の特性を有する別のものと交換するなどの保存的置換が望ましいかもしれない。
【0110】
ポリペプチド変異体は、参照アミノ酸配列と比較して、これらの配列に沿った様々な位置に保存的アミノ酸置換を含んでいてもよい。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されているものである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において定義されており、一般に以下のように下位分類することができる。
【0111】
酸性:この残基は生理的pHでHイオンの喪失のために負の電荷を有し、かつ、この残基は、ペプチドが生理的pHの水性媒体中にある場合、内部にそれが含まれるペプチドの構造において表面の位置を求めようとして、水性溶液に誘引される。酸性側鎖を有するアミノ酸には、グルタミン酸およびアスパラギン酸が含まれる。
塩基性:この残基は、生理的pHで、またはその1つもしくは2つのpH単位内で(例えば、ヒスチジン)、Hイオンと会合するため、正電荷を有し、かつこの残基は、ペプチドが生理的pHにて水性培地中にあるときに、それが含まれるペプチドの構造において表面の位置を求めようとして、水性溶液によって引きつけられる。塩基性側鎖を有するアミノ酸には、アルギニン、リジン、およびヒスチジンが含まれる。
【0112】
荷電性:この残基は、生理的pHで荷電している。従って、酸性または塩基性側鎖を有するアミノ酸(すなわちグルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、リジン、およびヒスチジン)が含まれる。
【0113】
疎水性:この残基は、生理的pHで荷電しておら、かつこの残基は、ペプチドが水性培地中にあるときに、それが含まれるペプチドの構造において内側の位置を求めようとして、水性溶液に対し反発するに。疎水性側鎖を有するアミノ酸には、チロシン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、およびトリプトファンが含まれる。
【0114】
中性/極性:この残基は、生理的pHで荷電しておらず、残基は、ペプチドが水性培地中にあるときに、その結果それが含まれるペプチドの構造において内側の位置を求めようとして、水性溶液によって十分に引き寄せられる。中性/極性側鎖を有するアミノ酸には、アスパラギン、グルタミン、システイン、ヒスチジン、セリン、およびスレオニンが含まれる。
【0115】
また、この説明によれば、ある種のアミノ酸は、その側鎖がたとえ極性基を有しなくても、疎水性を付与するほど十分な大きさではないため、「小型」と特徴付けられる。プロリンを例外として、「小型」アミノ酸とは、少なくとも1つの極性基が側鎖に存在する場合は炭素4個またはそれ未満、そうでない場合は炭素3個またはそれ未満のアミノ酸のことである。小型の側鎖を有するアミノ酸には、グリシン、セリン、アラニンおよびトレオニンが含まれる。遺伝子にコードされる第二級アミノ酸であるプロリンは、ペプチド鎖の二次構造に対する既知の作用のために特殊な事例である。プロリンの構造は、その側鎖がα炭素のみならずαアミノ基の窒素にも結合しているという点で、他のすべての天然アミノ酸と異なる。しかし、いくつかのアミノ酸類似性マトリックス(例えば、Dayhoff et al., (1978), A model of evolutionary change in proteins. Matrices for determining distance relationships In M. O. Dayhoff, (ed.), Atlas of protein sequence and structure, Vol. 5, pp. 345-358, National Biomedical Research Foundation, Washington DC;およびGonnet et al., (1992, Science, 256(5062): 14430-1445によって開示されているPAM120マトリックスおよびPAM250マトリックス)においては、プロリンを、グリシン、セリン、アラニンおよびトレオニンと同じグループに含めている。したがって、本発明の目的のため、プロリンを「小型」アミノ酸と分類する。
【0116】
極性または非極性としての分類をするため必要な誘引または反発の度合いは、自由に決めて構わない。したがって、本発明によって具体的に想定されているアミノ酸はそのいずれか一方に分類されている。具体的に名前が挙げられていないアミノ酸の殆どが、既知の挙動に基づき分類することができる。
【0117】
アミノ酸残基はさらに、残基の側鎖置換基に関する自明の分類である、環状または非環状、芳香族または非芳香族のほか、小型または大型として下位分類することができる。その残基は、別に極性置換基が存在する場合には、カルボキシル炭素を含めて全体で4個またはそれ未満の炭素原子を含む場合に小型とみなされ、置換基が存在しない場合には3個またはそれ未満を含む場合に小型とみなされる。当然ながら、小型残基は常に非芳香族である。アミノ酸残基は、その構造的特性により、2つ以上のクラスに該当することもある。天然タンパク質のアミノ酸に関し、このスキームに従う細分類を表Aに示す。
【表1】

【0118】
保存的アミノ酸置換もまた、側鎖に基づくグループ分けを伴う。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸のグループは、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンであり、脂肪族−ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸のグループは、セリンおよびトレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸のグループは、アスパラギンおよびグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸のグループは、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸のグループは、リジン、アルギニンおよびヒスチジンであり、ならびにイオウ含有側鎖を有するアミノ酸のグループは、システインおよびメチオニンである。例えば、イソロイシンもしくはバリンでのロイシンの置き換え、グルタミン酸でのアスパラギン酸の置き換え、セリンでのトレオニンの置き換え、または構造的に関連したアミノ酸でのアミノ酸の同様の置き換えは、結果として生じる変異体ポリペプチドの特性に重大な影響を及ぼさないであろうと予想するのが妥当である。アミノ酸が変化した結果、機能的短縮型および/または変異体ポリペプチドが生じるか否かは、本明細書に記述したように(例えば、実施例2〜4を参照)、その酵素活性をアッセイすることによって容易に判定することができる。保存的置換を、以下の表Bの例示的な置換の見出しの下に示す。本発明の範囲のアミノ酸置換は、一般に、(a)その置換領域内のペプチド骨格の構造、(b)標的部位の分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の嵩、を維持するにあたり、その影響が大きくは異ならない置換を選択することにより達成される。置換が導入された後に、変異体を生物活性についてスクリーニングする。
【表2】

【0119】
あるいは、保存的置換を行うための類似したアミノ酸を、その側鎖の同一性に基づき3つのカテゴリーにグループ分けすることもできる。Zubay, G., Biochemistry, third edition, Wm. C. Brown Publishers (1993)に記載されているように、第1のグループには、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、リジン、ヒスチジンが含まれ、これらはすべて荷電側鎖を有する。第2のグループにはグリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、グルタミン、アスパラギンが含まれ、第3のグループには、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニンが含まれる。
【0120】
このようにして、アルドラーゼまたはアルコールデヒドロゲナーゼのポリペプチド中の予測される非必須アミノ酸残基が、典型的には、同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基で置換される。あるいは、飽和突然変異誘発などによってコード配列の全体または一部に沿ってランダムに突然変異を導入し、結果として生じた突然変異体を、親ポリペプチドの活性についてスクリーニングすることで、その活性を保持している突然変異体を同定することもできる。コード配列の突然変異誘発の後に、コードされるペプチドを組換え体として発現させて、そのポリペプチドの活性を決定することができる。「非必須」アミノ酸残基とは、実施形態のポリペプチドの野生型配列から、その活性の1つ以上を消失させることも実質的に変更することもなく改変することのできる残基のことである。好適には、その改変は、これらの活性の1つを実質的に消失させず、活性が、例えば、野生型の少なくとも20%、40%、60%、70%もしくは80%、100%、500%、1000%またはそれ以上である。「必須」アミノ酸残基とは、参照ポリペプチドの野生型配列で改変した場合、その結果として、野生型活性の20%未満が存在するように親分子の活性を消失させる残基のことである。例えば、このような必須なアミノ酸残基には、異なる種にわたって、アルドラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、二重結合還元酵素、またはその他の参照ポリペプチドに保存されているもの、例えば、様々な供与源からのポリペプチドの酵素部位において保存されている配列が含まれる。
【0121】
したがって、本発明ではまた、天然の参照ポリペプチド配列の変異体またはそれらの生物活性断片を想定しており、この変異体は、1つ以上のアミノ酸残基の付加、欠失、もしくは置換によって天然の配列とは区別される。一般に、変異体は、参照ポリペプチド配列に対して少なくとも約30、40、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の類似性または配列同一性を示す。さらに、天然もしくは親配列とは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100またはそれ以上のアミノ酸の付加、欠失または置換による違いがあるものの、親ポリペプチドまたは参照ポリペプチドの特性を保持している配列が考えられる。
【0122】
いくつかの実施形態において、変異体ポリペプチドは、アルドラーゼまたはアルコールデヒドロゲナーゼポリペプチド配列と、少なくとも1つの、しかし50、40、30、20、15、10、8、6、5、4、3または2未満のアミノ酸残基が異なる。他の態様において、変異体ポリペプチドは、参照配列と、残基の少なくとも1%、しかし20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満が異なる。(この比較にアラインメントが必要であれば、類似性が最大になるように配列のアラインメントを行うべきである。欠失もしくは挿入、またはミスマッチによるループアウト配列は、差異とみなされる)
【0123】
ある実施形態では、変異体ポリペプチドは、参照ポリペプチドの対応する配列に対して少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含み、かつその参照配列の酵素活性を有する。本明細書で用いる「配列同一性」、または例えば「に対する50%同じ配列」を含む記述は、配列が、比較のウィンドウにわたって、ヌクレオチド単位、またはアミノ酸単位で、どの程度同一性があるかということをいう。このため、「配列一致度」は、最適にアライメントが行われた2つの配列を比較ウィンドウにわたって比較し、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、およびMet)が両方の配列に存在する位置の数を決定してマッチする位置の数を得て、そのマッチする位置の数を比較のウィンドウにおける位置の総数(すなわち、ウィンドウのサイズ)で割り、さらに、その結果に100を掛けて配列一致度を得ることによって算出してもよい。
【0124】
2つ以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチド間の配列の関係を記述するために用いられる用語には、「参照配列」、「比較のウィンドウ」、「配列同一性」、「配列一致度」、および「実質的な同一性」が含まれる。「参照配列」は、長さにして、ヌクレオチドおよびアミノ酸残基を含めて、少なくとも12モノマー単位、しかししばしば15モノマー単位から18モノマー単位、多くの場合は少なくとも25モノマー単位である。2つのポリヌクレオチドはそれぞれ(1)その2つのポリヌクレオチド間で類似している配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列の一部分のみ)、および(2)その2つのポリヌクレオチド間で異なっている配列、を含みうるため、2つの(またはそれ以上の)ポリヌクレオチド間の配列比較は、典型的には、2つのポリヌクレオチドの配列を「比較のウィンドウ」にわたって比較して、配列類似性のある局所領域を同定して比較することによって行う。「比較のウィンドウ」とは、2つの配列の最適なアラインメントを行った後に、配列が同数の隣接する位置の参照配列と比較される、少なくとも6個、通常は約50〜約100個、より通常は約100〜約150個の隣接した位置の概念上のセグメントをいう。比較のウィンドウは、2つの配列の最適アラインメントを得るため、参照配列(付加も欠失も含まない)と比較して約20%以下の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでもよい。
【0125】
比較のウィンドウのアラインメントを行うための配列の最適なアラインメントは、アルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, Genetics Computer Group, 575 Science Drive Madison, WI, USA中のGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)をコンピュータで実行することにより、または試験および選択した様々な任意の方法により生成される最良のアラインメント(すなわち、結果として、比較のウィンドウにわたって最も高い相同度となるということ)によって行うことができる。例えばAltschul et al., 1997, Nucl. Acids Res. 25: 3389によって開示されているような、BLASTファミリーのプログラムを参照してもよい。配列解析に関する詳細な考察は、Ausubel et al., “Current Protocols in Molecular Biology”, John Wiley & Sons Inc. 1994-1998, Chapter 15のUnit 19.3に見出される。
【0126】
「内在性」という用語は、一般に、遺伝的に改変されていない野生型の細胞または生物体の中に見出され得る天然のポリヌクレオチド配列またはポリペプチドをいう。例えば、ある天然の細菌、または酵母種は、典型的には、アルドラーゼ遺伝子を持たず、したがって、アルドラーゼ酵素をコードする「内在性の」ポリヌクレオチド配列は持っていない。
【0127】
「外来性」という用語は、一般に、野生型の細胞にも生物体にも天然には存在しないが、典型的には、分子生物学的技術、すなわち組換え微生物を作製するための改変により細胞に導入される遺伝子のコピー、ポリヌクレオチド配列もしくは核酸分子のコピー、またはポリペプチドをいう。「外来性」遺伝子またはポリヌクレオチドの例としては、所望のタンパク質もしくは酵素をコードするベクター、プラスミド、および/または人工核酸構築物が挙げられる。
【0128】
この点に関してまた、注意すべきは、生物体が、特定のポリヌクレオチド配列または遺伝子の内在性すなわち天然の複製を含んでいても、コードされるポリペプチドを過剰発現するか、またはさもなければその発現を調節するといった目的で、その配列をコードするプラスミドまたはベクターを導入すると、その遺伝子またはポリヌクレオチド配列の「外来性」のコピーを意味することになる、という点である。さらに、ある実施形態では、別の状況下では内在性である遺伝子またはポリヌクレオチドを、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターなどの外来性のプロモーター配列の制御下に置いて、この内在性遺伝子の発現量を増加させることは、本発明の意味の範囲内では、外来性遺伝子またはポリヌクレオチドと考えられても良い。同様に、別の条件下では内在性である遺伝子またはポリヌクレオチドに、キメラ遺伝子またはキメラポリペプチドを作製するといった目的で、非天然の配列を付加することにより修飾することも、本発明の意味の範囲内では、外来性遺伝子またはポリヌクレオチドと考えられても良い。
【0129】
本明細書に記載する任意の経路、遺伝子、ポリヌクレオチド、核酸分子、または酵素は、「内在性」配列を利用するか、もしくはそれに依拠してもよく、あるいは、1つ以上の「外来性」配列として提供してもよい。
【0130】
本発明はさらに、キメラポリペプチドまたは融合ポリペプチドを考える。本明細書で使用する、「キメラ蛋白質」、「融合タンパク質」、または「融合ポリペプチド」には、(たとえば、複合断片を作製するために)第2、第3、もしくは第4(あるいはさらにそれ以上)のポリペプチド、またはそれらの断片に結合した第1のポリペプチドが含まれてもよいが、これらに限定されない。第2、第3、または4番目のポリペプチドとは、第1のポリペプチドと同じポリペプチドを意味してもよく、この場合、その第1のポリペプチドの、ある断片を一緒に選択的に結合させる目的などのために用いられる。あるいは、第2、第3、または4番目のポリペプチドとは、典型的には、第1のポリペプチドとは異なり、かつ、同じまたは異なる生物体に由来し得るタンパク質に対応するアミノ酸配列を有する「異種ポリペプチド」を意味してもよい。ある実施形態では、融合タンパク質には、特定のポリペプチドタンパク質の少なくとも1つの(または、2、3、もしくは4以上の)生物学的に活性な部分が含まれる。融合タンパク質を構成するポリペプチドは、C末端からC末端方向、N末端からN末端方向、またはN末端からC末端方向へ連結してもよいが、典型的には、N末端からC末端方向への連結である。融合タンパク質のポリペプチドは、いかなる順序でもよい。
【0131】
ポリペプチドの活性に悪影響を及ぼさないという条件で、事実上いかなる所望の目的のためにも、融合パートナーを設計しかつ組み込んでよい。 例えば、1つの実施形態では、融合パートナーは、ネイティブ組換え型タンパク質より高い収率でそのタンパク質を発現させることを助ける配列(発現エンハンサー)を含んでもよい。他の融合パートナーは、そのタンパク質の溶解度を増加させるか、所望の細胞内区画へそのタンパク質を向けさせるか、そのタンパク質を分泌するか、または、細胞表面にそのタンパク質を繋ぎ止める目的で、選択され得る。一例として、融合タンパク質はそのN末端に、異種のシグナルペプチド配列を含むことができる。特定の宿主細胞では、融合ポリペプチドの分泌または細胞表面への繋ぎ止めは、1つ以上の異種のシグナルペプチド配列(典型的には、そのポリペプチドのN末端、またはその近傍に融合している)を使用することで、増加させることができる。
【0132】
「組換え」微生物は、典型的には、プラスミドまたはベクター内などに、1つ以上の外来性の遺伝子またはポリヌクレオチド配列を含む。組換え微生物として利用することができる微生物の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。Escherichia coli、 Acetobacter aceti、 Achromobacter、 Acidiphilium、 Acinetobacter、 Actinomadura、 Actinoplanes、 Aeropyrum pernix、 Agrobacterium、 Alcaligenes、 Ananas comosus (M)、 Arthrobacter、 Aspargillus niger、 Aspargillus oryze、 Aspergillus melleus、 Aspergillus pulverulentus、 Aspergillus saitoi、 Aspergillus sojea、 Aspergillus usamii、 Bacillus alcalophilus、 Bacillus amyloliquefaciens、 Bacillus brevis、 Bacillus circulans、 Bacillus clausii、 Bacillus lentus、 Bacillus licheniformis、 Bacillus macerans、 Bacillus stearothermophilus、 Bacillus subtilis、 Bifidobacterium、 Brevibacillus brevis、 Burkholderia cepacia、 Candida cylindracea、 Candida rugosa、 Carica papaya (L)、 Cellulosimicrobium、 Cephalosporium、 Chaetomium erraticum、 Chaetomium gracile、 Clostridium、 Clostridium butyricum、 Clostridium acetobutylicum、 Clostridium thermocellum、 Corynebacterium (glutamicum)、 Corynebacterium effic
iens、 Enterococcus、 Erwina chrysanthemi、 Gliconobacter、 Gluconacetobacter、 Haloarcula、 Humicola insolens、 Humicola nsolens、 Kitasatospora setae、 Klebsiella、 Klebsiella oxytoca、 Kluyveromyces、 Kluyveromyces fragilis、 Kluyveromyces lactis、 Kocuria、 Lactlactis、 Lactobacillus、 Lactobacillus fermentum、 Lactobacillus sake、 Lactococcus、 Lactococcus lactis、 Leuconostoc、 Methylocystis、 Methanolobus siciliae、 Methanogenium organophilum、 Methanobacterium bryantii、 Microbacterium imperiale、 Micrococcus lysodeikticus、 Microlunatus、 Mucor javanicus、 Mycobacterium、 Myrothecium、 Nitrobacter、 Nitrosomonas、 Nocardia、 Papaya carica、 Pediococcus、 Pediococcus halophilus、 Penicillium、 Penicillium camemberti、 Penicillium citrinum、 Penicillium emersonii、 Penicillium roqueforti、 Penicillum lilactinum、 Penicillum multicolor、 Paracoccus pantotrophus、 Propionibacterium、 Pseudomonas、 Pseudomonas fluorescens、 Pseudomonas denitrificans、 Pyrococcus、 Pyrococcus furiosus、 Pyrococcus horikoshii、 Rhizobium、 Rhizomucor miehei、 Rhizomucor pusillus Lindt、 Rhizopus、 Rhizopus delemar、 Rhizopus japonicus、 Rhizopus niveus、 Rhizopus oryzae、 Rhizopus oligosporus、 Rhodococcus、 Saccharophagus degradans、 Sccharomyces cerevisiae、 Sclerotina libertina、 Sphingobacterium multivorum、 Sphingobium、 Sphingomonas、 Streptococcus、 Streptococcus thermophilus Y-1、 Streptomyces、 Streptomyces griseus、 Streptomyces lividans、 Streptomyces murinus、 Streptomyces rubiginosus、 Streptomyces violaceoruber、 Streptoverticillium mobaraense、 Tetragenococcus、 Thermus、 Thiosphaera pantotropha、 Trametes、 Trichoderma、 Trichoderma longibrachiatum、 Trichoderma reesei、 Trichoderma viride、 Trichosporon penicillatum、 Vibrio alginolyticus、 Vibrio splendidus、 Xanthomonas、 yeast、 Yarrowia lipolytica、 Zygosaccharomyces rouxii、 Zymomonas、または Zymomonus mobilis。
【0133】
「形質転換」とは、一般に、宿主細胞ゲノムへの外来性DNAの取り込みおよび組み込みの結果として起こる細胞の永久的な遺伝的変化、さらには、ある生物体から別の生物体のゲノムへの外来性遺伝子の移動をいう。
【0134】
「ベクター」とは、例えばプラスミド、バクテリオファージ、酵母またはウイルスに由来するポリヌクレオチド分子、好ましくはDNA分子で、その内部にポリヌクレオチドを挿入またはクローニングすることのできるものを意味する。ベクターは、好ましくは、1つ以上の固有の制限部位を含み、標的細胞もしくは組織または前駆細胞もしくはその組織を含む特定の宿主細胞内で自律複製すること、またはクローニングされた配列が複製可能なように特定の宿主のゲノムに組み込むことができる。したがって、ベクターは自律複製するベクター、すなわち染色体外のものとして存在し、その複製が染色体の複製から独立しているベクター、例えば、直鎖状もしくは閉環状プラスミド、染色体外エレメント、ミニ染色体、または人工染色体などでありうる。ベクターは自己複製を確実にするためのあらゆる手段を含みうる。または、ベクターは、細胞内に導入された場合にゲノム中に組み込まれて、それが組み込まれた染色体とともに複製されるものであってもよい。そのようなベクターは、宿主染色体の特定の、所望の部位に組換えさせる特異的配列を含んでも良い。
【0135】
ベクター系は、トランスポゾンや、宿主細胞のゲノム中に導入しようとする全DNAを共に含む単一のベクターもしくはプラスミド、2つもしくはそれ以上のベクターもしくはプラスミドを含んでもよい。ベクターの選択は、典型的には、ベクターとそのベクターを導入しようとする細胞との適合性によって決まる。本発明の場合、ベクターは、好ましくは、シアノバクテリア細胞などの細菌細胞において操作可能に機能的なものである。ベクターは、緑色蛍光タンパク質(GFP)などのレポーター遺伝子を含むことができ、それはコードされるポリペプチドの1つ以上にインフレームで融合させてもよいし、または別々に発現させてもよい。ベクターはさらに、好適な形質転換体の選択に使用することができる抗生物質耐性遺伝子などの選択マーカーを含んでもよい。
【0136】
「野生型」および「天然の」という用語は、天然の源から単離された場合の遺伝子または遺伝子産物の特徴を有する遺伝子または遺伝子産物を意味するために、互換可能に用いられる。野生型遺伝子または野生型遺伝子産物(例えば、ポリペプチド)とは、集団内で極めて高頻度で観察され、そのため、任意でその遺伝子の「正常」または「野生型」形態として意図されるものである。
【0137】
「バイオマス」の例としては、とりわけ、水性、または海洋バイオマス、果実廃棄物などの果実系バイオマス、および野菜廃棄物などの野菜系バイオマスが挙げられる。水性、または海洋バイオマスの例は、ケルプ、ジャイアントケルプ、海藻、藻類、および海洋微生物相、微細藻類、海草などが挙げられるが、これらに限定されない。果実系バイオマス、および/または野菜系バイオマスの例は、とりわけ、植物の皮、柑橘、オレンジ、グレープフルーツ、いも、トマト、葡萄、マンゴ、グーズベリー、ニンジン、サトウキビ、りんご等のしぼりかすのような、ペクチンの原料を挙げることができるが、それらに限定されない。ある態様では、バイオマスは、典型的には地殻の表層内で発見される炭化水素などの化石化された炭素の供与源(例えば、天然ガス、無煙炭石炭のようなほぼ純粋な炭素で構成される不揮発性材料)を含まない。
【0138】
「コモディティケミカル」または「その中間体」は、一般に、次の式を有する、生物燃料などのケミカル類、及びそれらから生産される任意の対応するアルカンに関する。

【0139】
(式中、R1は、CHCH、CHCH(CH)、CH(CHCH、CHCH(CH)(CHCH、およびCHCHCH(CH)(CHCHからなる群から選択され、R2は、H、CH、CHCH、CHCH(CH)、CH(CHCH、CHCH(CH)(CHCH、CHCHCH(CH)(CHCHからなる群から選択され、nは0〜30である。)
【0140】
ある実施形態では、コモディティケミカルは、3−ヒドロキシ−2、2、4、トリメチルペンタナール、および/または2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールであってよい。ある実施形態では、コモディティケミカルは3−ヒドロキシ−2−エチルヘキサナール、2−エチル−2−ヘキセン−1−アール、2‐エチルヘキサナール、2−エチルヘキサノール、および/または2‐エチルヘキサンであってよい。ある実施形態では、コモディティケミカルは3−ヒドロキシ−2−ブチル−1−オクタノール、2−ブチル−2−オクテン−1−アール、2−ブチル−オクタナール、または2−ブチル−オクタノールであってよい。
【0141】
ある態様では、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールまたは2−エチルヘキサノールなどの、ジオールまたはアルコールが、それぞれ、2,2,4−トリメチルペンタンまたは2‐エチルヘキサンなどの化学的または酵素的にその対応するアルカンに変換されてもよい。そのような方法の1つの例として、「水素添加」としても知られている「水素処理法」が挙げられる。例えば、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチルヘキサノール、および2−ブチル−オクタノール、などのアルコールを、水素処理し、それぞれ、対応するアルカン、すなわち2,2,4−トリメチルペンタン、2‐エチルヘキサン、および2−ブチル−オクタンを生成させてもよい。石油精製系における「水素処理法」という方法は一般に、官能基を含む分子への水素の触媒的付加をいう。水素処理法用触媒は、一般に、焼アルミナ粒子に、モリブデンと、ニッケルと、コバルト酸化物とのある組み合わせを付加することにより調製される。アルミナ粒子は、次いで、きわめて高い内部表面積を有する(非常に多孔性)よう調製しかつ製造してもよく、触媒金属を、粒子の内部表面に「単原子的に(mono−atomically)」蒸着させ分配してもよい。水素処理法(「水素化分解法」対して)では、アルミナ表面が、典型的には、できるだけ不活化(すなわち、化学的に受動)であるよう調製し、かつ製造する。
【0142】
「バイオマス由来多糖類」の一般的な例としては、アルギン酸、寒天、カラギーナン、フコイダン、ペクチン、ポリガラクツロネート、セルロース、ヘミセルロース、キシラン、アラビナン、およびマンナンが挙げられるが、これらに限定されない。バイオマスの、多糖類、オリゴ糖、単糖類、またはその他の糖成分の例としては、アルギナート(例えば、polyG、polyMG、polyM)、アルギン酸オリゴ糖(例えばΔM、ΔG、ΔMM、ΔMG、ΔGM、ΔGG、MM、MG、GM、GG、MMM、MGM、MMG、MGG、GMM、GMG、GGM、GGG)、寒天、カラギーナン、フコイダン、ペクチン、グルコン酸、グルロナート、マンヌロナート、マンニトール、リキソース、セルロース、ヘミセルロース、セロビオース、グリセリン、キシリトール、グルコース、マンノース、ガラクトース、キシロース、キシラン、マンナン、アラビナン、アラビノース、グロクロナート、ガラクツロナート(ジガラクツロナートおよびトリガラクツロナートを含む)、ラムノース、などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0143】
アルギナート由来多糖類の例としては、β−D−マンヌロナート、α−Lグルロナート、ジアルギナート、トリアルギナート、ペントアルギナート、ヘキサアルギナート、ヘプタアルギナート、オクタアルギナート、ノナアルギナート、デカアルギナート、ウンデカアルギナート、ドデカアルギナート、およびポリアルギナートなどの飽和多糖類、並びに4−デオキシ−L−エリスロ−5−ヘキソースウロースウロン酸、4−(4−デオキシ−β−D−マン−4−エヌロノシル)−D−マンヌロナート、またはL−グルロナート、4−(4−デオキシ−β−D−マン−4−エヌロノシル)−ジアルギナート、4−(4−デオキシ−β−D−マン−4−エヌロノシル)−トリアルギナート、4−(4−デオキシ−β−D−マン−4−エヌロノシル)−テトラアルギナート、4−(4−デオキシ−β−D−マン−4−エヌロノシル)−ペントアルギナート、4−(4−デオキシ−β−D−マン−4−エヌロノシル)−ヘキサアルギナート、4−(4−デオキシ−β−D−マン−4−エヌロノシル)−ヘプタアルギナート、4−(4−デオキシ−β−D−マン−4−エヌロノシル)−オクタアルギナート、4−(4−デオキシ−β−D−マン−4−エヌロノシル)−ノナアルギナート、4−(4−デオキシ−β−D−マン−4−エヌロノシル)−ウンデカアルギナート、および4−(4−デオキシ−β−D−マン−4−エヌロノシル)−ドデカアルギナートなどの不飽和多糖類が挙げられる。
【0144】
ペクチン由来多糖類の例としては、ガラクツロナート、ジガラクツロナート、トリガラクツロナート、テトラガラクツロナート、ペンタガラクツロナート、ヘキサガラクツロナート、ヘプタガラクツロナート、オクタガラクツロナート、ノナガラクツロナート、デカガラクツロナート、ドデカガラクツロナート、ポリガラクツロナート、およびラムノポリガラクツロナートなどの飽和多糖類、並びに4−デオキシ−L−スレオ−5−ヘキソースウロースウロナート、4−(4−デオキシ−α−D−グルコ−4−エヌロノシル)−D−ガラクツロナート、4−(4−デオキシ−α−D−グルコ−4−エヌロノシル)−D−ジガラクツロナート、4−(4−デオキシ−α−D−グルコ−4−エヌロノシル)−D−トリガラクツロナート、4−(4−デオキシ−α−D−グルコ−4−エヌロノシル)−D−テトラガラクツロナート、4−(4−デオキシ−α−D−グルコ−4−エヌロノシル)−D−ペンタガラクツロナート、4−(4−デオキシ−α−D−グルコ−4−エヌロノシル)−D−ヘキサガラクツロナート、4−(4−デオキシ−α−D−グルコ−4−エヌロノシル)−D−ヘプタガラクツロナート、4−(4−デオキシ−α−D−グルコ−4−エヌロノシル)−D−オクタガラクツロナート、4−(4−デオキシ−α−D−グルコ−4−エヌロノシル)−D−ノナガラクツロナート、4−(4−デオキシ−α−D−グルコ−4−エヌロノシル)−D−デカガラクツロナート、および4−(4−デオキシ−α−D−グルコ−4−エヌロノシル)−D−ドデカガラクツロナートなどの飽和多糖類が挙げられる。
【0145】
「好適な単糖」、または「好適な糖類」とは、一般に、供与源、または唯一の炭素源としてペクチン、アルギナート、またはその他の糖類(例えば、ガラクツロナート、セルロース、ヘミセルロースなどのバイオマス由来多糖類)で増殖する組換え微生物によって産生され得る任意の糖類をいい、さらに、一般に、生物燃料、またはバイオガソリンなどの炭化水素を産生するために本発明の生物燃料生合成経路に利用し得る任意の糖類をいう。好適な単糖またはオリゴ糖の例としては、2−ケト−3−デオキシD−グルコナート(KDG)、D−マンニトール、グルロナート、マンヌロナート、マンニトール、リキソース、グリセロール、キシリトール、グルコース、マンノース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、グルクロナート、ガラクツロナート、およびラムノースなどが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で言及したように、本明細書で使用する「好適な単糖類」または「好適な糖類」は、米国特許出願第12/245,537号および12/245,540号を中に記載されている(そのような微生物の開示のため、これらを本明細書に援用する)改変または組換え微生物により産生させてもよいし、あるいは、市販の供与源から得てもよい。
【0146】
本明細書で使用する「最適化された」という記述は、本来の分子、または本来の細胞の環境(例えば、特定のポリペプチドまたは野生型微生物の、野生型配列)に関連してその機能的特徴を改善する目的で、ポリペプチドのアミノ酸配列の遺伝的改変、またはポリペプチドの周囲の細胞環境の改変/修飾などの方法により改変された、生物活性を有する経路、遺伝子、ポリペプチド、酵素、またはその他の分子をいう。本明細書に記載したポリペプチドまたは酵素はどれでも、任意に「最適化」してよい。また、本明細書に記載した遺伝子またはヌクレオチド配列はどれでも、最適化されたポリペプチドまたは酵素を任意にコードしてよい。本明細書に記載した経路はどれも、任意に、1つ以上の「最適化された」酵素、または最適化された酵素もしくはポリペプチドをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含んでよい。
【0147】
典型的には、ポリペプチド、酵素、またはその他の分子の改善された機能的特性は、アルデヒドおよび/またはケトンを、イソオクタンなどの生物燃料に変換するための、生物学的経路(例えばアルデヒドおよび/またはケトン生合成経路、アルドラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ)で使用するための、ポリペプチドまたはその他の分子の適合性に関する。したがって、ある実施形態では、「最適化された」生物学的経路の使用を意図している。例示的な「最適化された」ポリペプチドは、そのアミノ酸コード配列に、特定の微生物の系または微生物における、改善された発現および/または安定性を容易にし、所望の基質に関連するポリペプチド活性(例えば、誘導可能なまたは抑制可能な活性)の調節を可能にし、細胞内のポリペプチドの局在化(例えば、細胞内局在化、細胞外分泌)を調節し、および/または所望の基質に関連するポリペプチド活性全体のレベルに効果を及ぼす(例えば、酵素活性を減少させる、または増加させる)、1つ以上の改変または突然変異(例えば点突然変異、欠失、異種配列の付加)を含んでもよい。また、ポリペプチド、またはその他の分子は、その他の変化の中でも特に、「最適化」されたポリペプチド、もしくはその他の分子の発現(例えば、アップレギュレーション)、局在化、および/もしくは活性を調節する経路を改変するという方法、または、とりわけ、望ましくない副産物の産生を最小化する経路を改変するという方法などにより、その系、または生体内の1つ以上の経路を改変することによって、特定の微生物系、または微生物で使用するために「最適化されて」いてもよい。このように、ポリペプチドまたはその他の分子は「最適化」してよいが、その場合、その野生型アミノ酸配列または本来の化学構造を改変してもしなくてもよい。最適化されたポリペプチドまたは生物学的経路は、例えば、当技術分野で既知の技術に従って、所望の表現型を得るため、直接突然変異誘発によって、または自然選択によって得てもよい。
【0148】
ある態様では、「最適化された」遺伝子、またはポリペプチドは、参照(例えば、野生型)遺伝子、またはポリペプチドのヌクレオチド配列、またはアミノ酸配列と50%〜99%(間の全ての整数を含む)同じであるヌクレオチドコード配列、またはアミノ酸配列を含んでよい。ある態様において、「最適化」されたポリペプチド酵素は、参照ポリペプチドの生物活性の、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100倍(その間の全ての整数、および1.2、1.3、1.4、1.5、5.5、5.6、5.7、60、70などの小数点を含む)、またはそれ以上の生物活性を有してもよい。
【0149】
また、本発明のある態様には、本明細書に記載する方法および組換え微生物に従って産生される生物燃料などのコモディティケミカルが含まれる。
【0150】
このような生物燃料(例えば、中鎖から長鎖アルカン、イソオクタン)は、放射性炭素年代測定技術により、従来の精練所によって粗製炭素源から生産される燃料などのその他の燃料から識別し得る。例えば、炭素は、2つの安定な、非放射性同位元素、炭素12(12C)と炭素13(13C)とを有する。加えて、極微量の不安定同位元素である炭素14(14C)が地球上に存在する。炭素14は、5730年の半減期を有しており、この同位元素が地上より多く発生する大気中で、宇宙線が窒素に絶え間なく衝撃していなかったら、はるか昔に地球から消え去っていたであろう。宇宙線相互作用によって生じる中性子は、大気中の窒素分子(N2)の原子に対する以下の核反応に関与する:

【0151】
植物およびその他の光合成生物は、光合成によって大気中の二酸化炭素を吸収する。多くの植物が動物により摂取されるため、地球上のあらゆる生きた生物は、その存在期間にわたって、その環境と常に炭素14を交換する。しかし、一旦生物体が死ぬと、この交換が停止し、炭素14の量は、放射性β崩壊により時間とともに段階的に減少する。
【0152】
採掘作業から得られる粗製油および天然ガスなどの、炭化水素系燃料の殆どは、圧縮、および地質時代にわたる古代有機材料(すなわち、油母)の加熱の成果物である。石油の形成は、典型的には、大部分が高温、および/または圧力における様々な吸熱反応において、炭化水素熱分解から生じる。今日の油は、無酸素条件下で大量に海底または湖底に沈殿した有史以前の動物プランクトン、および藻類の保存された残骸から形成された(一方、有史以前の陸上植物の残骸は、石炭を形成する傾向があった)。地質時代にわたり、有機物は、汚泥と混合し、沈降物の重い層の下に埋まった結果、高レベルの熱と圧力を生じた(続成作用として知られる)。有機物は、この過程によって化学的に変化し、最初に、世界中の種々のオイルシェール中に見出される油母として知られている蝋質材料になり、次いで、更に加熱することで、カタゲネシスとして知られている過程で液体およびガス状炭化水素になる。粗製油を原料とする炭化水素系燃料は、地質時代にわたって炭素14崩壊過程を経ており、したがって、検出可能な炭素14は、殆ど全く含んでいないと考えられる。それに対し、本発明の生きている微生物によって産生される特定の生物燃料は、他のあらゆる現在生きているものに匹敵するレベル(すなわち、平衡レベル)で炭素14を含む。このように、本発明の炭化水素系生物燃料の炭素12対炭素14の比を測定し、その比を粗製油を原料とする炭化水素系燃料と比較することにより、本明細書に提供される方法により産生される生物燃料は、炭化水素系燃料の典型的な供与源から構造的に区別することができる。
【0153】
本発明の実施形態には、コモディティケミカルを製造する方法が含まれる。この方法は、アルデヒド、ケトン、またはその両方の供与源で組換え微生物を増殖させることを含み、この組換え微生物が、(i)アルドラーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチド(すなわち、1つ以上のポリヌクレオチド)、および(ii)アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチド(すなわち、1つ以上のポリヌクレオチド)を含み、それによって、コモディティケミカルを産生する。ある実施形態では、この組換え微生物は、さらに二重結合還元酵素活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチド(すなわち1つ以上のポリヌクレオチド)、ならびに/または、デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチドを含んでもよい。ある実施形態では、このポリヌクレオチドの少なくとも1つまたは2つが、外来性のポリヌクレオチドである。ある実施形態では、このポリヌクレオチドのどれも、外来性である。
【0154】
本発明の実施形態にはまた、(i)アルドラーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチド、および(ii)アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む組換え微生物が含まれる。ある実施形態では、そのような微生物はさらに、二重結合還元酵素活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチドを含んでもよい。ある実施形態では、このポリヌクレオチドの少なくとも1つまたは2つが、外来性のポリヌクレオチドである。ある実施形態では、このポリヌクレオチドのどれも、外来性である。これらの組換え微生物は、典型的には、アルデヒド、ケトンまたはその両方の供与源から、コモディティケミカルまたはその中間体を産生することができる。
【0155】
本発明の実施形態にはまた、(i)アルデヒドおよび/またはケトン生合成経路をコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチドと、(ii)アルドラーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチドと、(ii)アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチドと、を含む組換え微生物が含まれる。ある実施形態では、そのような微生物はまた、二重結合還元酵素活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチドを含んでもよい。ある実施形態では、そのポリヌクレオチドの少なくとも1つまたは2つが外来性のポリヌクレオチドである。ある実施形態では、そのポリヌクレオチドのどれも外来性である。これらの組換え微生物は、典型的に、アルデヒド、ケトン、またはその両方の供与源から、コモディティケミカルまたはその中間体を産生することができ、かつ、好適な単糖類またはオリゴ糖から、アルデヒド、ケトン、またはその両方の前述の供与源を産生することができる。
【0156】
上述の通り、ある実施形態では、組換え微生物はまた、二重結合還元酵素活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つの外来性ポリヌクレオチド、および/または、デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドを含んでもよい。これらの関連する実施形態では、所望の産物(例えば、イソオクタン)を得るために、外来性の二重結合還元酵素またはデヒドラターゼの存在または過剰発現は必要ではないであろう。そのような反応は、内在性の還元酵素およびデヒドラターゼ酵素によって触媒し得るからであるが、組換え微生物によって生産された所望の産物の量を増加させるために、使用してもよい。
【0157】
本明細書中で使用する「アルドラーゼ」活性を有する酵素またはポリペプチドとは、一般に、D−フルクトース−1,6−ビスリン酸を切断する可逆反応を触媒し、ジヒドロキシアセトンリン酸およびD−グリセルアルデヒド−3−リン酸を生成させる酵素のクラスをいう。アルドラーゼ酵素は、すべての動物および植物組織、およびほとんどの微生物中に存在する。動物および高等植物組織に見出されるクラスIアルドラーゼは、典型的には、二価金属共因子(cofactor)を必要としないこと、および基質ジヒドロキシアセトンリン酸によるケチミンシッフ塩基中間体の形成という特徴がある。クラスIIアルドラーゼは、典型的には、酵母および細菌などの微生物中に見出され、金属共因子を必要とし、EDTAで阻害され得る。
【0158】
1つの典型的なアルドラーゼとして、フルクトース1、6−ビスリン酸アルドラーゼ(アルドラーゼA)があるが、これは解糖およびエネルギー生産における重要な反応を触媒する。アルドラーゼBはアルドラーゼAのイソ酵素であり、フルクトース1リン酸を切断して、グリセルアルデヒドおよびジヒドロキシアセトンリン酸を生成させる。しかし、この反応は可逆的で、グリセルアルデヒドおよびジヒドロキシアセトンリン酸を縮合するために利用することができる。
【0159】
グリセルアルデヒドおよびジヒドロキシアセトンのリン酸縮合に加え、アルドラーゼ酵素はアルデヒドおよび/またはケトン間の他の有用な縮合反応を触媒することが発見されている。特に、アルドラーゼ酵素の触媒活性の可逆的な性質が、アルデヒドおよび/またはケトンの様々な組み合わせの縮合産物から様々なコモディティケミカル、またはその中間体を生成させるのに有用であること、が本明細書中で明らかにされている。例えば、本発明のアルドラーゼ酵素は、イソブチルアルデヒドの2つの分子の縮合を触媒し、3−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチルペンタナールを生成させることが可能であり得る。別の例として、本発明のアルドラーゼ酵素は、2つのブチルアルデヒド分子の縮合を触媒し、3−ヒドロキシ−2−エチルヘキサナールを生成させることが可能であり得る。別の例として、本発明のアルドラーゼ酵素は、2つのヘキサン分子の縮合を触媒し、2−ブチル−オクタナールを生成させることが可能であり得る。
【0160】
よって、ある態様では、「アルドラーゼ」はという記述は、様々なアルデヒドおよび/またはケトンの縮合を触媒することができる酵素をいう。様々なアルデヒドおよび/またはケトンとしては、特に、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、グルタールアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、2−メチル−ブチルアルデヒド、3−メチル−ブチルアルデヒド、4−メチルペントアルデヒド、ヘキサンアルデヒド、ヘプタンアルデヒド、オクタンアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、2−フェニルアセトアルデヒド、2−(4−ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド、2−インドール−3−アセトアルデヒド、5−アミノ−ペントアルデヒド、コハク酸セミアルデヒド、および/またはスクシナート4−ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド、さらにそれらの組み合わせがある。アルデヒドおよび/またはケトンの縮合は、当業者に認知されているものの中でも特に、プロパナール、ブタナール、イソブタナール、ペンタナール、2−メチルブタナール、3−メチルブタナール、ヘキサナール、2−メチルペンタナール、3−メチルペンタナール、4−メチルペンタナール、ヘプタナール、オクタナール、2−メチルヘプタナール、ノナナール、デカナール、ウンデカナール、ドデカナールのようなケミカルを生産するために利用してよい。
【0161】
本明細書で使用する「アルドラーゼ」酵素または「アルドラーゼ」には、ACPチオエステラーゼ活性などのアシル‐アシル輸送タンパク質(ACP)活性を有する酵素が含まれる。そのようなACPエステラーゼは、典型的には、酵素反応条件下で、脂肪アシル−ACP基質(例えば、C8−C14)からの遊離脂肪酸(類)の産生を触媒する能力を有する。しかし、アシル−ACPエステラーゼはまた、イソブチルアルデヒドおよびブチルアルデヒドなどの、2種類のアルデヒドおよび/またはケトンの縮合を触媒し、それぞれ、3−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチルペンタナールと2−エチル−2−ヘキセン−1−アールなどの対応するアルキルアルデヒドを生成させることができると考えられる。
【0162】
そのようなエステラーゼは、本明細書中に提供される特定の例示配列、および関連する情報源から入手可能である。例えば、クヘア (Cuphea) 属の中のいくつかの種、例えば、プロクンベンス (procumbens) 、ルテア (lutea)、フーケリアナ (hookeriana) 、ヒッソピフォリア (hyssopifolia) 、ライチイ (wrightii) およびインフラータ (inflata)は、その種子中に、中位鎖脂肪酸を含有するトリグリセリドを蓄積する。もう一つの、中位鎖脂肪酸の天然植物源は、クスノキ科(Lauraceae)(例えば、ピサ (Pisa)(Actinodophne hookeri) およびゲッケイジュ (Laurus nobilis)) の種子である。その他の植物源としては、ニレ科 (Ulmaceae)(ニレ) 、ニクズク科 (Myristicaceae)、ニガキ科 (Simarubaceae) 、ウォキシア科 (Vochysiaceae)、 およびニレ科 (Salvadoraceae)、ならびにエリスマ (Erisma) 、ピクランニア (Picramnia)、およびビロラ (Virola) の雨林種が挙げられ、C14脂肪酸を蓄積するという報告がある。FATB1およびFATB2などのアルドラーゼ活性を有する典型的なエステラーゼは、米国特許第5,298,421号、5,304,481号、5,344,771号、5,455,167号、および5,667,997号のほか、Yuan et al.(PNAS USA 92:10639-634, 1995)に記載されており、これらの文献を、それらのACP‐アシルチオエステラーゼのポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列について、本明細書に援用する。
【0163】
ある実施形態では、組換え微生物は、アルドラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする1つ以上のポリヌクレオチド配列を含んでよい。ここで、このポリヌクレオチドは、配列番号215〜222、または本明細書中に記載され当技術分野で既知である条件下でその相補配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列と、80%、90%、95%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する。配列番号215は、クフェア・フーケリアナ(Cuphea hookeriana)由来のFATB2酵素をコードする。配列番号216は、クフェア・ランケオラータ(Cuphea lanceolata)由来のFATB3酵素をコードする。配列番号217および218は、それぞれに、クフェア・ランケオラータ(Cuphea lanceolata)由来のケトアシルketoacyl−ACPシンターゼIV(KASIV)をコードする。配列番号219は、クフェア・ランケオラータ(Cuphea lanceolata)由来のACP1−2酵素をコードし、配列番号220は、クフェア・ランケオラータ(Cuphea lanceolata)由来のACP1−3酵素をコードし、配列番号221は、クフェア・ランケオラータ(Cuphea lanceolata)由来のACP1−1酵素をコードする。配列番号222は、クフェア・ランケオラータ(Cuphea lanceolata)由来のAcl1をコードする。
【0164】
アルドラーゼ酵素はまた、特に、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)および大腸菌DH10Bなどの生物から得てもよい。例えば、ある実施形態では、アルドラーゼ酵素は配列番号51〜82に示されるポリヌクレオチド参照配列、および/またはこれらのポリヌクレオチド参照配列によってコードされるポリペプチド参照配列に基づいてもよい。よって、本発明のある組換え微生物は、本明細書に記載され当技術分野で既知のように、配列番号51〜82に示される1つ以上のヌクレオチド配列と、少なくとも80%、90%、95%、98%、もしくは99%同じであるポリヌクレオチド配列、またはそれらの相補配列に、中ストリンジェンシーまたは高ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、を含む。
【0165】
本発明のある「アルドラーゼ」酵素、またはそのような酵素をコードするポリヌクレオチド配列はまた、特定の保存されたモチーフまたはドメインという特徴を有してもよい。この点に関し、大腸菌DH10β由来の20種類のアルドラーゼ酵素を含む様々なアミノ酸配列を、共通配列モチーフについて、PROSITEデータベースを使用して解析した。これらの配列の多くが、既知の配列プロフィルと強いマッチを示した。例えばECDH10B0008(配列番号63)によってコードされるALDOL1、EC ECDH10B0894(配列番号64)によってコードされるALDOL2、ECDH10B2629(配列番号72)によってコードされるALDOL10、およびおよびECDH10B4135(配列番号81)によってコードされるALDOL19は、モチーフ「トランスアルドラーゼ署名配列1」および「トランスアルドラーゼ署名配列2」を共通に有していた(下記の表4を参照)。さらにECDH10B1991(配列番号67)によってコードされるALDOL 5は、2つのモチーフ、「KDPGおよびKHGアルドラーゼ活性部位」のモチーフならびに「KDPGおよびKHGアルドラーゼシッフ塩基形成残基」のモチーフを含む。(下記の表4を参照)さらに、ECDH10B2249(配列番号68)によってコードされるALDOL6ECDH10B3100(配列番号74)によってコードされるALDOL12、およびECDH10B3310(配列番号78)によってコードされるALDOL16は、モチーフ、「フルクトース二リン酸アルドラーゼクラスII署名配列1」および「フルクトース二リン酸アルドラーゼクラスII署名配列2」を共通に有する(下記の表4を参照)。
【0166】
典型的なアルドラーゼ・モチーフを、下記の表3に、また、マッチングしたECDH10B(大腸菌DH10B)アルドール配列断片を、表4に示す。
【表3】

【表4】

【0167】
このように、ある実施形態では、本発明の組換え微生物は、アルドラーゼ酵素またはポリペプチドをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含んでよい。ここで、このアルドラーゼ酵素またはポリペプチドは、表3および4に例示したドメインもしくはモチーフ、または、アルデヒドおよび/またはケトンの様々な組み合わせの縮合の触媒作用を促進することができるこれらのモチーフの生物学的に活性な変異体、の1つ以上を含む。
【0168】
「アルコールデヒドロゲナーゼ」活性を有する酵素またはポリペプチドとは、一般に、アルデヒドまたはケトンの置換基のアルコールまたはジオールへの変換を触媒する酵素をいい、第二級アルコールデヒドロゲナーゼを含んでもよい。例えば、2,2,4−トリメチルペンタナールは、アルコールデヒドロゲナーゼ(Adh)活性を有する酵素により、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタナールに還元してもよいが、これは、イソブチルアルデヒドをイソオクタンに変換する際の一つの工程である。
【0169】
ある態様では、組換え微生物は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、30、31、および83〜96から選択されるヌクレオチド参照配列によってコードされる1つ以上のアルコールデヒドロゲナーゼ、またはこれらのポリヌクレオチド配列のうち任意のものによってコードされるポリペプチドもしくは酵素を含んでよい。ここでこのポリペプチドは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、および34から選択されるポリペプチド配列などで、その生物学的に活性な断片もしくは最適化された変異体などの変異体を包含する。本発明のある組換え微生物は、配列番号1〜34または83〜96と、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%の配列同一性を有する、1つ以上のヌクレオチド配列もしくはポリペプチド配列を含んでよい。
【0170】
上記に言及したアルコールデヒドロゲナーゼ配列として、配列番号1は、シュードモナス・ブチダ(Pseudomonas putida)KT2440から単離された第二級アルコールデヒドロゲナーゼ(2adh−1: PP_1946)のヌクレオチド配列で、配列番号2は、同酵素のポリペプチド配列である。配列番号3は、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)KT2440から単離された第二級アルコールデヒドロゲナーゼ(2adh−2: PP_1817)のヌクレオチド配列で、配列番号4は、同酵素のポリペプチド配列である。
【0171】
配列番号5は、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)KT2440から単離された第二級アルコールデヒドロゲナーゼ(2adh‐3: PP_1953)のヌクレオチド配列で、配列番号6は、同酵素のポリペプチド配列である。配列番号7は、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)KT2440から単離された第二級アルコールデヒドロゲナーゼ(2adh‐4: PP_3037)のヌクレオチド配列で、配列番号8は、同酵素のポリペプチド配列である。
【0172】
配列番号9は、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)KT2440から単離された第二級アルコールデヒドロゲナーゼ(2adh‐5: PP_1852)のヌクレオチド配列で、配列番号10は、同酵素のポリペプチド配列である。配列番号11は、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)KT2440から単離された第二級アルコールデヒドロゲナーゼ(2adh‐6: PP_2723)のヌクレオチド配列で、配列番号12は、同酵素のポリペプチド配列である
配列番号13は、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)KT2440から単離された第二級アルコールデヒドロゲナーゼ(2adh‐7: PP_2002)のヌクレオチド配列で、配列番号14は、同酵素のポリペプチド配列である。配列番号15は、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)KT2440から単離された第二級アルコールデヒドロゲナーゼ(2adh‐8: PP_1914)のヌクレオチド配列で、配列番号16は、同酵素のポリペプチド配列である。
【0173】
配列番号17は、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)KT2440から単離された第二級アルコールデヒドロゲナーゼ(2adh‐9: PP_1914)のヌクレオチド配列で、配列番号18は、同酵素のポリペプチド配列である。配列番号19は、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)KT2440から単離された第二級アルコールデヒドロゲナーゼ(2adh‐10: PP_3926)のヌクレオチド配列で、配列番号20は、同酵素のポリペプチド配列である。
【0174】
配列番号21は、シュードモナス・ルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)Pf−5から単離された第二級アルコールデヒドロゲナーゼ(2adh‐11: PP_1756)のヌクレオチド配列で、配列番号22は、同酵素のポリペプチド配列である。配列番号23は、クレブシエラ・ニューモニエ亜種ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae subsp. pneumoniae)MGH 78578から単離された第二級アルコールデヒドロゲナーゼ(2adh‐12: KPN_01694)のヌクレオチド配列で、配列番号24は、同酵素のポリペプチド配列である。
【0175】
配列番号25は、クレブシエラ・ニューモニエ亜種ニューモニエ (Klebsiella pneumoniae subsp. pneumoniae)MGH 78578から単離された第二級アルコールデヒドロゲナーゼ(2adh‐13: KPN_02061)のヌクレオチド配列で、配列番号26は、同酵素のポリペプチド配列である。配列番号27は、クレブシエラ・ニューモニエ亜種ニューモニエ (Klebsiella pneumoniae subsp. pneumoniae)MGH 78578から単離された第二級アルコールデヒドロゲナーゼ(2adh‐14:KPN_00827)のヌクレオチド配列で、配列番号28は、同酵素のポリペプチド配列である。
【0176】
配列番号29は、クレブシエラ・ニューモニエ亜種ニューモニエ (Klebsiella pneumoniae subsp. pneumoniae)MGH 78578から単離された第二級アルコールデヒドロゲナーゼ(2adh‐16:KPN_01350)のヌクレオチド配列で、配列番号30は、同酵素のポリペプチド配列である。配列番号31は、クレブシエラ・ニューモニエ亜種ニューモニエ (Klebsiella pneumoniae subsp. pneumoniae)MGH 78578から単離された第二級アルコールデヒドロゲナーゼ(2adh‐17:KPN_03369)のヌクレオチド配列で、配列番号32は、同酵素のポリペプチド配列である。配列番号33は、クレブシエラ・ニューモニエ亜種ニューモニエ (Klebsiella pneumoniae subsp. pneumoniae)MGH 78578から単離された第二級アルコールデヒドロゲナーゼ(2adh‐18:PP_03363)のヌクレオチド配列で、配列番号34は、同酵素のポリペプチド配列である。
【0177】
配列番号83〜96のアルコールデヒドロゲナーゼをコードするポリヌクレオチド配列は、シュードモナス−プチダ(Pseudomonas putida)から得た。
【0178】
ある態様では、アルコールデヒドロゲナーゼ(adh)、第二級アルコールデヒドロゲナーゼ(2adh)、またはその断片、変異体、誘導体、あるいは、そのような活性な部位を利用するその他の酵素は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)、NADH、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)、またはNADPHの結合モチーフの少なくとも1つを含んでもよい。ある実施形態では、NAD+、NADH、NADP+またはNADPHの結合モチーフは、Y−X−G−G−X−Y(配列番号:245)、Y−X−X−G−G−X−Y(配列番号:246)、Y−X−X−X−G−G−X−Y(配列番号:247)、Y−X−G−X−X−Y(配列番号248)、Y−X−X−G−G−X−X−Y(配列番号:249)、Y−X−X−X−G−X−X−Y(配列番号:250)、Y−X−G−X−Y(配列番号:251)、Y−X−XG−X−Y(配列番号:252)、Y−X−X−X−G−X−Y(配列番号:253)およびY−X−X−X−X−G−X−Y(配列番号:254)からなる群から選択してもよく、ここで、Yはアラニン、グリシン、およびセリンから、独立に選択され、Gはグリシンで、Xは遺伝学的にコードされるアミノ酸から独立に選択される。
【0179】
ある実施形態では、微生物システムまたは組換え微生物は、シュードモナス(Pseudomonads)、ロドコッカス・エリスポリス(Rhodococcus erythropolis)ATCC4277、ノルカディア・フスカ(Norcadia fusca)AKU2123、クレブシエラ(Klebsialla)、またはその他の好適な生物由来の天然のまたは最適化されたアルコールデヒドロゲナーゼを含んでもよい。当技術分野で既知の技術に従い、これらおよびその他の生物から、アルコールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を単離し、本明細書に記載のように、組換え微生物に導入してもよい。
【0180】
「二重結合還元酵素」活性を有する酵素またはポリペプチドとは、一般に、次の一般的な反応を触媒する酵素をいう。

【0181】
本明細書中で言及したように、ある実施形態では、本発明を実行するのに、二重結合還元酵素活性を有する外来性酵素を付加する必要がないように、上記の反応を、特定の微生物の中で、内在性酵素によって触媒してもよい。とは言え、ある態様では、二重結合還元酵素酵素を過剰発現させること、または、意図された特異的反応の構成要素に対する親和性が増加した特定の二重結合還元酵素を発現させることで、所望のコモディティケミカルまたはその中間体の生産を増加させることができる。
【0182】
二重結合還元酵素は、特に、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・アングスタ(Pichia angusta)、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)、大腸菌、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、およびシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)のような生物から得てもよい。
【0183】
ある実施形態では、二重結合還元酵素は配列番号35〜50に示すポリヌクレオチド参照配列、および/またはこれらのポリヌクレオチドによりコードされる対応するポリペプチド参照配列に基づいてよい。よって、本発明のある組換え微生物は、配列番号35〜50と、少なくとも80%、90%、95%、98%、もしくは99%同じである1つ以上のポリヌクレオチド配列、または本明細書に記載され当技術分野で既知の条件で、それらの相補配列にハイブリダイズするポリヌクレオチド、を含んでもよい。
【0184】
本発明の「二重結合還元酵素」酵素、またはそのような酵素をコードするポリヌクレオチド配列はまた、本明細書中に記載され当技術分野で既知のように、特定の保存されたモチーフまたはドメインによって特徴付けられ得る。
【0185】
ある実施形態では、コモディティケミカルまたはその中間体を形成するためアルドラーゼ活性を有する酵素によって縮合されるアルデヒド、ケトン、またはその両方の供与源が、アルデヒドおよび/またはケトン生合成経路を含む組換え微生物を含んでもよい。ある実施形態では、そのような生合成経路としては、アルデヒド生合成経路、ケトン生合成経路、またはその両方が挙げられる。
【0186】
ある実施形態では、生合成経路としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、グルタールアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、2−メチル−ブチルアルデヒド、3−メチル−ブチルアルデヒド、4−メチルペントアルデヒド、ヘキサンアルデヒド、オクタンアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、2−フェニルアセトアルデヒド、2−(4−ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド、2−インドール−3−アセトアルデヒド、5−アミノ−ペントアルデヒド、コハク酸セミアルデヒド、および/またはスクシナート4−ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド生合成経路、さらにこれらの様々な組み合わせのなかから1つ以上が含まれ得る。
【0187】
ある態様では、生合成経路には、ブチルアルデヒドまたはイソブチルアルデヒド生合成経路が含まれる。典型的なアルデヒドおよびケトン生合成経路は、本明細書中および米国特許出願第12/245,537および同12/245,540号に記載されており、これらの文献を、アルデヒド/ケトン生合成経路に関する記載について、参照することにより、本明細書に援用する。
【0188】
ある態様では、プロピオンアルデヒド生合成経路として、大腸菌などの生物由来のスレオニンデアミナーゼ(ilvA)遺伝子、およびラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis),などの生物由来のケトイソ吉草酸デカルボキシラーゼ(kivd)遺伝子、ならびに/または、これらの酵素の機能的変異体、さらにそのホモログまたはオーソログに加えて、その最適化された変異体を含み得る。これらの酵素は、一般に、L−スレオニンをプロピオンアルデヒドに変換するために利用してもよい。
【0189】
ある態様では、ブチルアルデヒド生合成経路は、大腸菌のような生物由来のチオラーゼ(atoB)遺伝子、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutyricum)(例えば、ATCC824)などの生物由来のベータ・ヒドロキシ・ブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ(hbd)遺伝子、クロトナーゼ(crt)遺伝子、ブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ(bcd)遺伝子、電子伝達フラビン蛋白質A(etfA)遺伝子、および/または、電子伝達フラビン蛋白質B(etfB)遺伝子、さらには、クロストリジウム・ベエイジェリンキー・アセトブチリカム(Clostridium beijerinckii acetobutyricum)ATCC824などの生物由来の、補酵素共役ブチルアルデヒド・デヒドロゲナーゼ(ald)遺伝子の少なくとも1つを含み得る。ある態様では、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutyricum)ATCC824などの生物由来の補酵素A共役アルコールデヒドロゲナーゼ(adhE2)遺伝子を、ald遺伝子の代用として使用してもよい。
【0190】
ある態様では、イソブチルアルデヒド生合成経路は、バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)などの生物由来のアセト乳酸シンターゼ(alsS)、またはクレブシエラ・ニューモニエ亜種ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae subsp. Pneumoniae)MGH78578(大腸菌タンパク質発現のためコドン使用頻度を最適化してよい)などの生物からのals遺伝子を含んでもよい。そのような経路はまた、大腸菌などの生物由来のアセト乳酸リダクトイソメラーゼ(ilvC)および/または2,3−ジヒドロキシイソ吉草酸塩デヒドラターゼ(ilvD)遺伝子のほか、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)などの生物由来のケトイソ吉草酸デカルボキシラーゼ(kivd)遺伝子を含んでもよい。
【0191】
ある態様では、3−メチルブチルアルデヒドおよび2−メチルブチルアルデヒド生合成経路は、バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)などの生物由来のアセト乳酸シンターゼ(alsS)、またはクレブシエラ・ニューモニエ亜種ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae subsp. Pneumoniae)MGH78578(大腸菌タンパク質発現のためコドン使用頻度を最適化してよい)などの生物からのals遺伝子を含んでもよい。そのような経路のある態様はまた、大腸菌などの生物由来のアセト乳酸リダクトイソメラーゼ(ilvC)、2,3−ジヒドロキシイソ吉草酸塩デヒドラターゼ(ilvD)、イソプロピルリンゴ酸シンターゼ(LeuA)、イソプロピルリンゴ酸イソメラーゼ(LeuCとLeuD)、および3−イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(LeuB)遺伝子のほか、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)などの生物由来のケトイソ吉草酸デカルボキシラーゼ(kivd)遺伝子を含んでもよい。
【0192】
ある態様では、フェニルアセトアルデヒドおよび4−ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド生合成経路は、大腸菌などの生物由来の3−デオキシ−7−ホスホヘプツロン酸合成酵素(aroF、aroGおよびaroH)、3−デヒドロキナ酸シンターゼ(aroB)、3−デヒドロキナ酸デヒドラターゼ(aroD)、デヒドロシキミ酸レダクターゼ(aroE)、シキミ酸キナーゼII(aroL)、シキミ酸キナーゼ(aroK)、5−エノルピルビルシキマート‐3‐リン酸シンターゼ(aroA)、コリスミ酸シンターゼ(aroC)、融合コリスミ酸ムターゼP/プレフェン酸デヒドラターゼ(pheA)、および/または融合コリスミ酸ムターゼT/プレフェン酸デヒドロゲナーゼ(tyrA)遺伝子のほか、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)などの生物由来のケトイソ吉草酸デカルボキシラーゼ(kivd)遺伝子のうち1つ以上を含んでよい。
【0193】
ある実施形態では、アルデヒド、ケトン、またはその両方の供与源である組換え微生物が、アルデヒドまたはケトンをコモディティケミカルに変換する組換え微生物と同じでもよい。例えば、イソオクタンの生産においては、そのような組換え微生物は、イソブチルアルデヒド生合成経路、アルドラーゼ酵素、場合により二重結合還元酵素、およびアルコールデヒドロゲナーゼを含んでよく、好適な単糖類をイソブチルアルデヒドに変換し、次いで、3−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチルペンタナールおよび2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールに変換することができるであろう。これらの態様および関連する態様において、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールはさらに、本明細書中に記載され当技術分野で既知である「水素処理法」などの方法によりイソオクタンに変換され得る。
【0194】
また別の例として、2−エチルヘキサノールおよび2‐エチルヘキサンなどのコモディティケミカルの生産においては、そのような組換え微生物は、ブチルアルデヒド生合成経路、アルドラーゼ酵素、場合により二重結合還元酵素、およびアルコールデヒドロゲナーゼを含んでよく、好適な単糖類をブチルアルデヒドに変換し、次いで3−ヒドロキシ−2−エチルヘキサナール、2−エチル−2−ヘキセン−1−アール、2−エチルヘキサナール、そして最終的には2−エチルヘキサノールに変換できるであろう。これらの態様および関連する態様において、2−エチルヘキサノールはさらに本明細書中に記載され当技術分野で既知である「水素処理法」などの方法により2‐エチルヘキサンに変換されてもよい。
【0195】
ある実施形態では、アルデヒド、ケトンまたはその両方の供与源である組換え微生物が、アルデヒドまたはケトンをコモディティケミカルに変換する組換え微生物と異なってもよい。これらの態様および関連する態様において、
アルデヒドおよび/またはケトン生合成経路を含む、第1の組換え微生物を、1種類以上のアルデヒドまたはケトンを生産するための供与源または原料として利用し、次いで、このアルデヒドアルドラーゼ、場合により外来性の二重結合還元酵素、およびアルコールデヒドロゲナーゼを含む第2の組換え微生物によって、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールまたは2−エチルヘキサノールなどの所望のコモディティケミカルに変換してもよい。これらの実施形態および関連する実施形態では、2つの組換え微生物を共培養してもよい。別の方法としては、アルデヒド、ケトンまたはその両方を、第一の組換え微生物によって別々に産生させ、次いで、アルドラーゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼを含む第2の組換え微生物でインキュベートしてもよい。この点に関し、様々な他の組み合わせおよび本発明の態様が当業者に明白である。
【0196】
他の実施形態では、イソブチルアルデヒドなどのアルデヒドおよび/またはケトンの供与源は市販の供与源などの他の好適な供与源であってもよい。これらおよび任意の実施形態では、アルデヒド、ケトンまたはその両方の「供与源」は、アルデヒドまたはケトン自体を含んでいてもよく、このアルデヒドまたはケトンは、必要に応じて、微生物培養系に直接加えてもよい。
【0197】
本明細書中に記載したすべての経路および酵素に関しては、アルドラーゼ、オプションとして二重結合還元酵素、およびアルコールデヒドロゲナーゼ、ならびに、本明細書中に記載したアルデヒドおよび/またはケトン生合成経路の各々のための構成要素は、内在的か外来的かに関わらず、組換え微生物に存在してよい。特定の生合成経路の効率を改善するため、例えば、内在性遺伝子を、他の条件下でなら内在性である遺伝子の追加のコピー(すなわち外来性遺伝子)を組換え微生物中に導入するという方法などによって、アップレギュレートまたは過剰発現させてもよい。そのような経路はまた、機能性を改善するため、突然変異誘発によって、遺伝子の内在性バージョンを改変することにより最適化し、次いで、この改変遺伝子を微生物中へ導入してもよい。内在性遺伝子の発現は、当技術分野で既知であり本明細書中に記載した技術に従い、アップレギュレート、ダウンレギュレート、あるい消失させることができる。同様に、外来性の遺伝子またはポリヌクレオチド配列の発現量を、様々な構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターの使用などの方法により、所望のように調節できる。そのような遺伝子またはポリヌクレオチドはまた、本明細書中に記載され当技術分野で既知のように、「コドン最適化」してもよい。さらに、本明細書中で記載された遺伝子および酵素/ポリペプチドの機能的天然変異体も、そのホモログまたはオーソログを含めて包含される。
【0198】
いかなる微生物も、本発明に従い、利用できる。ある態様では、微生物は真核微生物または原核微生物である。ある態様では、微生物はS.セレビシエ(S.cerevisiae)などの酵母である。ある態様では、微生物は、グラム陽性菌または、グラム陰性菌などの細菌である。増殖率が速く、遺伝学的に研究が進み、様々な遺伝学的ツールが利用でき、しかも異種タンパク質の生産能を有する、ということから判断すれば、遺伝的に改変された大腸菌を、本明細書中に記載した微生物システムの実施形態において使用してもよく、この場合、アルギン酸もしくはペクチンなどの多糖類の分解および代謝などのためでも、生物燃料などのコモディティケミカルの生成または生合成のためでもよい。
【0199】
本発明に従い、その他の微生物を、宿主生物との酵素および代謝産物の親和性を一つの基準として、使用してもよい。例えば、Escherichia coli、 Acetobacter aceti、 Achromobacter、 Acidiphilium、 Acinetobacter、 Actinomadura、 Actinoplanes、 Aeropyrum pernix、 Agrobacterium、 Alcaligenes、 Ananas comosus (M)、 Arthrobacter、 Aspargillus niger、 Aspargillus oryze、 Aspergillus melleus、 Aspergillus pulverulentus、 Aspergillus saitoi、 Aspergillus sojea、 Aspergillus usamii、 Bacillus alcalophilus、 Bacillus amyloliquefaciens、 Bacillus brevis、 Bacillus circulans、 Bacillus clausii、 Bacillus lentus、 Bacillus licheniformis、 Bacillus macerans、 Bacillus stearothermophilus、 Bacillus subtilis、 Bifidobacterium、 Brevibacillus brevis、 Burkholderia cepacia、 Candida cylindracea、 Candida rugosa、 Carica papaya (L)、 Cellulosimicrobium、 Cephalosporium、 Chaetomium erraticum、 Chaetomium gracile、 Clostridium、 Clostridium butyricum、 Clostridium acetobutylicum、 Clostridium thermocellum、 Corynebacterium (glutamicum)、 Corynebacterium efficiens、 Enterococcus、 Erwina chrysanthemi、 Gliconobacter、 Gl
uconacetobacter、 Haloarcula、 Humicola insolens、 Humicola nsolens、 Kitasatospora setae、 Klebsiella、 Klebsiella oxytoca、 Kluyveromyces、 Kluyveromyces fragilis、 Kluyveromyces lactis、 Kocuria、 Lactlactis、 Lactobacillus、 Lactobacillus fermentum、 Lactobacillus sake、 Lactococcus、 Lactococcus lactis、 Leuconostoc、 Methylocystis、 Methanolobus siciliae、 Methanogenium organophilum、 Methanobacterium bryantii、 Microbacterium imperiale、 Micrococcus lysodeikticus、 Microlunatus、 Mucor javanicus、 Mycobacterium、 Myrothecium、 Nitrobacter、 Nitrosomonas、 Nocardia、 Papaya carica、 Pediococcus、 Pediococcus halophilus、 Penicillium、 Penicillium camemberti、 Penicillium citrinum、 Penicillium emersonii、 Penicillium roqueforti、 Penicillum lilactinum、 Penicillum multicolor、 Paracoccus pantotrophus、 Propionibacterium、 Pseudomonas、 Pseudomonas fluorescens、 Pseudomonas denitrificans、 Pyrococcus、 Pyrococcus furiosus、 Pyrococcus horikoshii、 Rhizobium、 Rhizomucor miehei、 Rhizomucor pusillus Lindt、 Rhizopus、 Rhizopus delemar、 Rhizopus japonicus、 Rhizopus niveus、 Rhizopus oryzae、 Rhizopus oligosporus、 Rhodococcus、 Saccharophagus degradans、 Sccharomyces cerevisiae、 Sclerotina libertina、 Sphingobacterium multivorum、 Sphingobium、 Sphingomonas、 Streptococcus、 Streptococcus thermophilus Y-1、 Streptomyces、 Streptomyces griseus、 Streptomyces lividans、 Streptomyces murinus、 Streptomyces rubiginosus、 Streptomyces violaceoruber、 Streptoverticillium mobaraense、 Tetragenococcus、 Thermus、 Thiosphaera pantotropha、 Trametes、 Trichoderma、 Trichoderma longibrachiatum、 Trichoderma reesei、 Trichoderma viride、 Trichosporon penicillatum、 Vibrio alginolyticus、 Vibrio splendidus、 Xanthomonas、 yeast、 Yarrowia lipolytica、 Zygosaccharomyces rouxii、 Zymomonas、 および Zymomonus mobilis を、本明細書中で提供される組換え微生物として利用してもよく、よって、本発明の様々な方法に従い利用してよい。
【0200】
本明細書中に記載した様々な実施形態は、さらに進んだ実施形態を提供するために組み合わせてよい。本明細書中で言及され、かつ/あるいは出願データシートに列挙されている米国特許、米国特許出願公開公報、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、および非特許刊行物は全て、その全体を参照することにより本明細書に援用する。実施形態の諸態様は、さらに進んだ実施形態を提供するための様々な特許、出願、および出版物の概念を使用するため、必要であれば変更することができる。
【0201】
上記の詳細な記載内容に鑑みて、実施形態に変更を加えてよい。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、この特許請求の範囲をある実施形態の開示内容に限定すると解釈されるべきではなく、この特許請求の範囲が権利を与えられている等価物の全範囲と併せて、すべの可能な実施形態を包含すると解釈されるべきである。したがって、その特許請求の範囲は、開示内容により限定されない。
【0202】
以下の実施例は、限定ではなく例示として提示するものである。
【実施例】
【0203】
[実施例1]
アルデヒド/ケトン生合成経路
ブチルアルデヒドおよびイソブチルアルデヒドなどのアルデヒド類ならびに/またはケトン類の有用な供与源を提供するために、アルデヒドおよび/またはケトン生合成経路を含み、かつ好適な単糖類またはオリゴ糖をアルデヒドまたはケトンに変換することができる組換え微生物を構築した。
【0204】
大腸菌由来のチオラーゼ(atoB)遺伝子、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutyricum)ATCC824由来ベータ・ヒドロキシ・ブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ(hbd)、クロトナーゼ(crt)、ブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ(bcd)、電子伝達フラビン蛋白質A(etfA)および電子伝達フラビン蛋白質B(etfB)遺伝子、クロストリジウム・ベエイジェリンキー・アセトブチリカムATCC824(Clostridium beijerinckii acetobutyricum)ATCC824由来の補酵素A共役ブチルアルデヒド・デヒドロゲナーゼ(ald)遺伝子を含むブチルアルデヒド生合成経路を大腸菌内で構築し、そのブチルアルデヒド生産能を試験した。また、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutyricum)ATCC824由来の補酵素A共役アルコールデヒドロゲナーゼ(adhE2)遺伝子をaldの代わりに用いて、ブタノール生産能を試験した。
【0205】
バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)由来のアセト乳酸シンターゼ(alsS)、またはクレブシエラ・ニューモニエ亜種ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae subsp. Pneumoniae)MGH78578(大腸菌タンパク質発現のためコドン使用頻度を最適化してよい)由来のアセト乳酸シンターゼ(als)、ならびに大腸菌由来のアセト乳酸リダクトイソメラーゼ(ilvC)および2,3−ジヒドロキシイソ吉草酸塩デヒドラターゼ(ilvD)遺伝子のほか、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)由来のケトイソ吉草酸デカルボキシラーゼ(kivd)遺伝子を含む、イソブチルアルデヒド生合成経路を構築し、イソブチルアルデヒド生産能を試験し、イソブタナール生産により測定した。
【0206】
pBADButPの構築
クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutyricum)ATCC824のhbd、crt、bcd、etfA、およびetfBをコードするDNA配列を、50ngのクロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutyricum)ATCC824ゲノム(ATCC)から、50μlで、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅した。増幅したDNA断片は、BamHIおよびXbaIで消化し、これらの制限酵素によりあらかじめ切断しておいたpBAD33にライゲートした。
【0207】
pBADButP−atoBの構築
大腸菌DH10BのatoBをコードするDNA配列を、50ngの大腸菌DH10Bから、50μlで、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅した。増幅したDNA断片はXbaIおよびPstIで消化し、これらの制限酵素によりあらかじめ切断しておいたpBADButPにライゲートした。
【0208】
pBADatoB−aldの構築
大腸菌DH10BのatoBおよびクロストリジウム・ベエイジェリンキー(Clostridium beijerinckii)由来のaldをコードするDNA配列を、50μlの大腸菌DH10BのatoBまたはクロストリジウム・ベエイジェリンキー(Clostridium beijerinckii)から、それぞれ50μlで、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅した。増幅したDNA断片をゲルで精製し、30μlのEBバッファー(Qiagen)に溶出した。それぞれのDNA溶液から5μlずつを混合し、それぞれのDNA断片を、2回目のPCRを行って結合した。結合した断片は、SacIおよびHindIIIで消化し、これらの制限酵素であらかじめ消化しておいたpBADButPにライゲートした。
【0209】
pBADButP−atoB−ALDの構築
大腸菌DH10Bのクロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(CAT)、P15複製起点、araBADプロモーター、atoB、およびクロストリジウム・ベエイジェリンキー(Clostridium beijerinckii)のaldをコードするDNA断片1ならびにaraBADプロモーター、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutyricum)ATCC824のhbd、crt、bcd、etfA、およびetfBをコードするDNA断片2を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって50ngのpBADatoB−aldまたはpBADButPのいずれかから、別々に、50μlで、それぞれ増幅した。増幅したDNA断片は、NotIおよびKpnIで消化し、互いにライゲートした。
【0210】
pBADals−ilvCDの構築
大腸菌での過剰発現のためにそのコドン使用頻度を最適化された、クレブシエラ‐ニューモニエ亜種ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae subsp. pneumoniae)MGH78578のalsをコードするDNA断片を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、50ngのpETalsから、50μlで増幅した。増幅したDNA断片は、SacIおよびXbaIで消化し、これらの制限酵素によりあらかじめ切断しておいたpBADilvCDにライゲートした。
【0211】
pBADalsS−ilvCDの構築
バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)B26のalsSの前半と後半をそれぞれコードするDNA断片を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、50ngのバシラス・サチリス(Bacillus subtilis)B26ゲノム(ATCC)から、50μlで、増幅した。増幅したDNA断片をゲル精製し、30μlのEBバッファー(Qiagen)に溶出した。それぞれのDNA溶液から5μlずつを混合し、2回目のPCRを行うことによって、それぞれのDNA断片を結合した。結合した断片は、内部にXbaI部位が存在せず、よってSacIおよびXbaIで消化し、さらにこれらの制限酵素によってあらかじめ消化しておいたpBADilvCDにライゲートした。
【0212】
pTrcBALKの構築
ラクトコッカス・ラブティス(Lactococcus lavtis)のケトイソ吉草酸塩デカルボキシラーゼ(kivd)をコードするDNA配列を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、50ngのpETBALから、50μlで増幅した。増幅したDNA断片は、SacIおよびXbaIで消化し、これらの制限酵素によりあらかじめ切断しておいたpTrcBALにライゲートした。
【0213】
pTrcBALDの構築
クロストリジウム・ベエイジェリンキー(Clostridium beijerinckii)の補酵素A共役アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ald)をコードするDNA配列を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、50ngのpETBALから、50μlで増幅した。増幅したDNA断片は、SacIおよびHndIIIで消化し、これらの制限酵素によりあらかじめ切断しておいたpTrcBALにライゲートした。
【0214】
pBBRPduCDEGHの構築
クレブシエラ・ニューモニエ亜種ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae subsp. pneumoniae)MGH78578のプロパンジオールデヒドラターゼの中(pduD)および小(pduE)サブユニット、並びにプロパンジオールデヒドラターゼの大(pduG)および小(pduH)サブユニットをコードするDNA配列を、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)によって、50ngのクレブシエラ・ニューモニエ亜種ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae subsp. pneumoniae)MGH78578から、50μlで増幅した。増幅したDNA断片は、SacIIおよびXbaIで消化し、これらの制限酵素によりあらかじめ切断しておいたpTrc99Aにライゲートし、pBBRPduDEGHを合成した。
【0215】
クレブシエラ・ニューモニエ亜種ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae subsp. pneumoniae)MGH78578のプロパンジオールデヒドラターゼの大(pduG)サブユニットをコードするDNA配列を、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)によって、50ngのクレブシエラ・ニューモニエ亜種ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae subsp. pneumoniae)MGH78578から、50μlで増幅した。増幅したDNA断片は、XhoIおよびXbaIで消化し、これらの制限酵素によりあらかじめ切断しておいたpBBRPduDEGHにライゲートした。
【0216】
ブチルアルデヒド生合成経路を試験するために、pBADButP−atoB/pTrcBALD、およびpBADButP−atoB−ALD/pTrcB2DH/pBBRpduCDEGHを有するDH10Bを37℃、200rpmにて、50μg/mlのクロラムフェニコール(Cm50)、および100μg/mlのアンピシリン(Amp100)を含むLB培地で一晩増殖させた。各少量の種培養物を、Cm50、およびAmp100を含む新鮮なTB培地に接種し、37℃にて、200rpmのインキュベーションシェーカー中で増殖させた。接種の3時間後に、培養物を13.3mMアラビノース、および1mM IPTGで誘導して、一晩増殖させた。この培養物700μlを等量の酢酸エチルで抽出して、GC−MSで解析した。
【0217】
イソブチルアルデヒド生合成経路を試験するために、pBADals−ilvCD/pTrcBALK、またはpBADalsS−ilvCD/pTrcBALKを有するDH10B細胞を、37℃、200rpmにて、50μg/mlのクロラムフェニコール(Cm50)、および100μg/mlのアンピシリン(Amp100)を含むLB培地において一晩増殖させた。各少量の種培養物を、Cm50、およびAmp100を含む新鮮なTB培地に接種し、37℃、200rpmにて、インキュベーションシェーカーにおいて増殖させた。接種の3時間後に、培養物を13.3mMアラビノース、および1mM IPTGで誘導して、一晩増殖させた。この培養物700μlを等量の酢酸エチルで抽出して、イソブチルアルデヒドの産生についてGC−MSで解析した。図2は、これらの培養物からのイソブタナールの産生を示す。この株はまた、微量成分(示さず)として2−メチルブチルアルデヒドと3−メチルブチルアルデヒドをも生産した。
【0218】
[実施例2]
イソブチルアルデヒドからの、3−ヒドロキシ−2,2,4およびトリメチルペンタナールの生産
アルドラーゼ活性を有する酵素の、イソブチルアルデヒドの2分子を縮合させて3−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチルペンタナールを生成させる能力を、in vivoで試験した。以下の実施例5に記載するように、プラスミドTrcTM1559を構築し、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)から得られたアルドースをコードするポリヌクレオチド配列を組み込んだ。
【0219】
pTrcTM1559を有する大腸菌DH10Bの単一コロニーを、Amp100を含む新鮮なLB培地に接種し、37℃にて、撹拌培養機中で一晩増幅させた。この培養物の1パーセントをAmp100を含む新鮮なTB培地に接種し、培養物を37℃にて撹拌培養機中で増殖させた。培養物が0.6のOD600nmに増殖したとき、培養物に0.5mM のIPTGによって誘導をかけた。50mMのイソブチルアルデヒドを添加し、培養物を1日間増殖させた。500μlの培養物を、500μlの酢酸エチルで抽出し、抽出物をGC−MSにより解析した。3−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチルペンタナールの生成が観察された(図2参照)。
【0220】
[実施例3]
イソブチルアルデヒドからの2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールの生産
アルドラーゼ酵素およびアルコールデヒドロゲナーゼを含む組換え微生物の、イソブチルアルデヒドを2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールに変換する能力を試験する。プラスミドTrcTM1559は、上記の実施例2に記載されている。様々なアルコールデヒドロゲナーゼを、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)KT2440、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)Pf−5、およびクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)MGH78578(配列番号1〜34を参照)から単離し、米国特許出願第12/245,537号および同第12/245,540号に記載されている通りに、発現プラスミドにクローニングした。これらの文献を参照することにより、アルコールデヒドロゲナーゼについてのそれらの記載、構築、および試験に関して、本明細書に援用する。追加のアルコールデヒドロゲナーゼもまた、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)(配列番号83〜96を参照)から得た。
【0221】
pTrcTM1559およびアルコールデヒドロゲナーゼを発現するプラスミドの両方を有する大腸菌DH10B株の単一コロニーをAmp100を含む新鮮なLB培地に接種し、37℃にて、撹拌培養機中で一晩増幅させる。この培養物の1パーセントをAmp100を含む新鮮なTB培地に播種し、培養物を37℃にて撹拌培養機中で増殖させる。培養物が0.6のOD600nmに増殖したら、培養物に0.5mMのIPTGによって誘導をかける。50mMのイソブチルアルデヒドを添加し、培養物を1日間増殖させる。500μlの培養物を、500μlの酢酸エチルで抽出し、抽出物をGC−MSにより解析する。2,2,4−トリメチルペンタンジオールの生成が観察される。
【0222】
[実施例4]
その他の中鎖から長鎖の炭化水素の生産
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、次いで2,2,4,トリメチルペンタン(イソオクタン)を生産するために、上述の経路に加え、酵素的アルドール縮合に続いてアルコール脱水素を行なうことにより、出発物質としての様々なアルデヒドおよびケトンから、様々な中鎖から長鎖の炭化水素を産出することができる。これらのアルデヒドおよび/またはケトンは、米国特許出願第12/245,537号および同第12/245,540号に記載されているアルデヒドおよび/またはケトン生合成経路による組換え微生物によって生産することができる。これらの経路の記述、構築、および試験に関してこれらの文献を参照することにより、本明細書に援用する。
【0223】
一例が本明細書中に示される。ここでは、ブチルアルデヒドの2分子をアルドラーゼで縮合して、3−ヒドロキシ−2−エチルヘキサナールを生成させた。ついで、この分子を自然にまたは酵素的に脱水して2−エチル−2−ヘキセン−1−アールを生成させた。次いでこれを二重結合還元酵素およびアルコールデヒドロゲナーゼを触媒として、連続的に還元して、2‐エチルヘキサナールルおよび2−エチルヘキサノールを生成させてもよい。
【0224】
さらに、本明細書中には、アルドラーゼによりヘキサンアルデヒドの2つの分子を縮合させて3−ヒドロキシ−2−ブチル−1−オクタナールを生成させる反応が例として示されている。次いで、この分子を自然にまたは酵素的に脱水し、2−ブチル−2−オクテン−1−アールを生成させた。次いでこれを連続的に還元して、2−ブチル−オクタナールおよび2‐ブチル‐オクタノールを生成させてもよい。
【0225】
2−エチル−2−ヘキセン−1−アールの生産を試験するため、pTrcTM1559を有する大腸菌DH10Bの単一コロニーを、Amp100を含む新鮮なLB培地に接種し、37℃にて、撹拌培養機中で一晩増殖させた。この培養物の1パーセントをAmp100を含む新鮮なTB培地に接種し、培養物を37℃の撹拌培養機内で増殖させた。培養物が0.6のOD600nmに増殖したとき、培養物に0.5mMのIPTGによって誘導をかけた。50mMのイソブチルアルデヒドまたは50mmのヘキサンアルデヒドのいずれかを添加し、培養物を1日間増殖させた。500μlの培養物を、500μlの酢酸エチルで抽出し、抽出物をGC−MSにより解析した。2−エチル−2−ヘキセン−1−アールの生成が観察された(図3を参照)。さらに、2−ブチル−2−オクテン−1−アールの生成も観察された。(図4を参照)
[実施例5]
アルドラーゼの単離およびクローニング
アルドラーゼ活性を有する酵素をコードするポリヌクレオチド配列を、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)および大腸菌DH10Bから単離して、発現ベクターにクローニングした。
【0226】
pTrcTM0040、pTrcTM0066、pTrcTM0273、pTrcTM0283、pTrcTM0295、pTrcTM0343、pTrcTM0720、pTrcTM1072、pTrcTM1419、pTrcTM1521、pTrcTM1559、およびpTrcTM1744の構築
TM0273、TM0283、TM0720、TM1559、およびTM1744をコードするDNA配列は、内部NcoI部位を含んでいるため、各遺伝子のNcoI部位のフランキング領域をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別々に増幅した。98℃にて10秒、60℃にて15秒、および72℃にて30分を、30回繰り返した。反応液は、1×Phusion緩衝液(NEB)、2mM dNTP、0.5μM フォワードプライマーおよびリバースプライマー(表5参照)、1U Phusion High Fidelity DNAポリメラーゼ(NEB)、および50ngのサーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)ゲノムを、50μL中に含んでいた。
【表5】

サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)のTM0040、TM0066、TM0273、TM0283、TM0295、TM0343、TM0720、TM1072、TM1419、TM1521、TM1559、およびTM1744をコードするDNA配列を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅した。98℃にて10秒、60℃にて15秒、および72℃にて1分を、30回繰り返した。反応液は、1×Phusion緩衝液(NEB)、2mM dNTP、0.5μM フォワードプライマーおよびリバースプライマー(表5参照)、1U Phusion High Fidelity DNAポリメラーゼ(NEB)、および50ngのサーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)ゲノムを、50μLに含んでいた((注:TM0273、TM0283、TM0720、TM1559、およびTM1744については、前の項目に記載のとおりに調製した断片を使用した)。増幅されたDNA断片は、NcoIおおびXbaIで消化し、同じ制限酵素であらかじめ消化しておいたpTrc99Aにライゲートした。
【表6】

【0227】
pTrcDH10Bxxxの構築
EC1648およびEC4071をコードするDNA配列は、内部NcoI部位を含み、EC2249をコードするDNA配列は、XbaI部位を含んでいた。それぞれの遺伝子の制限部位のフランキング領域を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別々に増幅した。98℃にて30秒、55℃にて15秒間、および72℃にて45秒間を、30回繰り返した。反応液は、1×Phusion緩衝液(NEB)、2mM dNTP、0.5μMフォワードプライマーおよびリバースプライマー(表7参照)、1U Phusion High Fidelity DNAポリメラーゼ(NEB)、および20ngの大腸菌DH10βを含んでいた。
【表7】

【0228】
大腸菌DH10βの、EC0008、EC0894、EC0940、EC1648、EC1991、EC2249、EC2250、EC2465、EC2629、EC2969、EC3100、EC3233、EC3299、EC3305、EC3310、EC4071、EC4092、EC4135、およびEC4539をコードするDNA配列を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅した。98℃にて30秒、55℃にて30秒、および72℃にて45秒を、30回繰り返した。反応液は、1×Phusion緩衝液(NEB)、2mM dNTP、0.3μM フォワードプライマーおよびリバースプライマー(表8参照)、1U Phusion High Fidelity DNAポリメラーゼ(NEB)、および20ngの大腸菌DH10βゲノムを、50μlに含んでいた(注:EC1648については、前の項目で調製したEC2249およびEC4071の断片を用いた)。
【表8】

【0229】
EC3305およびEC3310をコードする増幅された断片を、オーバーラップPCR方法を用いて、ともにライゲートした。(PCR):98℃にて30秒、55℃にて30秒、および72℃にて1分を、30回繰り返した。反応液は、1×Phusion緩衝液(NEB)、2mM dNTP、0.3μM フォワードプライマーおよびリバースプライマー(フォワードプライマー:catgccatggggatgaaacatctgacagaaatg(配列番号189)、リバースプライマー:gctctagattatgctgaaattcgattcg(配列番号190))、1U Phusion High Fidelity DNAポリメラーゼ(NEB)、および3μLのPCR産物を含んでいた。
【0230】
増幅したDNA断片を、NcoIおよびXbaIにより切断し、同じ制限酵素によってあらかじめ切断しておいたpTrc99Aにライゲートした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コモディティケミカルまたはその中間体を生産する方法であって、アルデヒド、ケトン、またはその両方の供与源で、組換え微生物を増殖させることを含み、
前記組換え微生物が、
(i)アルドラーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチド、および
(ii)アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドの少なくとも1つが外来性で、
それによって、コモディティケミカルまたはその中間体を生産することを特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記コモディティケミカルまたはその中間体が、下記式から選択され、

式中、R1は、CHCH、CHCH(CH)、CH(CHCH、CHCH(CH)(CHCH、およびCHCHCH(CH)(CHCHからなる群から選択され、
R2は、H、CH、CHCH、CHCH(CH)、CH(CHCH、CHCH(CH)(CHCH、CHCHCH(CH)(CHCH、およびそれらから生産される任意の対応するアルカン類からなる群から選択され、
ここで、nが0〜30であることを特徴とする、方法。
【請求項3】
前記コモディティケミカルが、さらに、酵素的または化学的に、対応するアルカンに変換されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記コモディティケミカルが、3−ヒドロキシ−2、2、4、トリメチルペンタナール、および2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールが、さらに、酵素的または化学的に、2,2,4−トリメチルペンタンに変換されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記コモディティケミカルが、3−ヒドロキシ−2−エチルヘキサナール、2−エチル−2−ヘキセン−1−アール、2‐エチルヘキサナール、および2−エチルヘキサノールからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記コモディティケミカルが、さらに、酵素的または化学的に、2−エチルヘキサンに変換されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記コモディティケミカルが、3−ヒドロキシ−2−ブチル−1−オクタノール、2−ブチル−2−オクテン−1−アール、2−ブチル−オクタナール、および2−ブチル−オクタノールからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記2−ブチル−オクタノールが、さらに、酵素的または化学的に、2−ブチル−オクタンに変換されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、アルデヒド、ケトン、またはその両方の前記供与源が、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、グルタールアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、2−メチル−ブチルアルデヒド、3−メチル−ブチルアルデヒド、4−メチルペントアルデヒド、ヘキサンアルデヒド、オクタンアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、2−フェニルアセトアルデヒド、2−(4−ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド、2−インドール−3−アセトアルデヒド、5−アミノ−ペントアルデヒド、コハク酸セミアルデヒド、およびスクシナート4−ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド生合成経路、およびそれらの組み合わせから選択されるアルデヒドおよび/またはケトン生合成経路を含む組換え微生物であることを特徴とする、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記アルデヒドおよび/またはケトン生合成経路を含む前記組換え微生物が、請求項1の前記組換え微生物と同じであることを特徴とする、方法。
【請求項12】
前記アルデヒドおよび/またはケトン生合成経路を含む前記組換え微生物が、請求項1の前記組換え微生物と異なることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記アルデヒドおよび/またはケトン生合成経路が、イソブチルアルデヒド生合成経路を含み、前記アルデヒドがイソブチルアルデヒドであることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記アルデヒドおよび/またはケトン生合成経路が、ブチルアルデヒド生合成経路を含み、前記アルデヒドがブチルアルデヒドであることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、前記アルドラーゼ活性を有するポリペプチドをコードし、かつ発現する前記少なくとも1つのポリヌクレオチドが、
(i)配列番号51〜82に示される少なくとも1つのヌクレオチド配列と、少なくとも80%、90%、95%、98%、もしくは99%同じであるヌクレオチド配列、または、
(ii)配列番号51〜82に示される少なくとも1つのヌクレオチド配列またはその相補配列に、中ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項16】
前記アルドラーゼ活性を有する前記ポリペプチドが、配列番号223−244、255−260に示されるアミノ酸配列から選択される少なくとも1つの生物学的に活性なモチーフを含むことを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、前記アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する前記少なくとも1つのポリヌクレオチドが、
(i)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、30、31、33、もしくは83〜96に示される少なくとも1つのヌクレオチド配列と少なくとも80%、90%、95%、98%、もしくは99%同じであるヌクレオチド配列、または、
(ii)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、30、31、もしくは83〜96に示される少なくとも1つのヌクレオチド配列またはその相補配列に、中ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項18】
前記アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有する前記ポリペプチドが、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)、NADH、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)、またはNADPH結合モチーフのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記NAD+、NADH、NADP+、またはNADPH結合モチーフが、Y−X−G−G−X−Y(配列番号245)、Y−X−X−G−G−X−Y(配列番号246)、Y−X−X−X−G−G−X−Y(配列番号247)、Y−X−G−X−X−Y(配列番号248)、Y−X−X−G−G−X−X−Y(配列番号249)、Y−X−X−X−G−X−X−Y(配列番号250)、Y−X−G−X−Y(配列番号251)、Y−X−XG−X−Y(配列番号252)、Y−X−X−X−G−X−Y(配列番号253)、およびY−X−X−X−X−G−X−Y(配列番号254)からなる群から選択され、
ここで、Yはアラニン、グリシン、およびセリンから、独立に選択され、Gはグリシンで、Xは遺伝学的にコードされるアミノ酸から独立に選択されることを特徴とする、方法。
【請求項20】
前記組換え微生物が、さらに、二重結合還元酵素活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチド、および/またはデヒドラターゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも一つのポリヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、前記二重結合還元酵素活性を有するポリペプチドをコードし発現する前記少なくとも1つのポリヌクレオチドが、
(i)配列番号35〜50に示される少なくとも1つのヌクレオチド配列と少なくとも80%、90%、95%、98%、もしくは99%同じである ヌクレオチド配列、または、
(ii)配列番号35〜50に示される少なくとも1つのヌクレオチド配列またはその相補配列に、中ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項22】
組換え微生物であって、
(i)アルドラーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチド、および
(ii)アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチド
を含むことを特徴とする、組換え微生物。
【請求項23】
請求項22に記載の組換え微生物であって、前記微生物が、アルデヒド、ケトン、またはその両方の供与源を、コモディティケミカルまたはその中間体に変換することができ、前記コモディティケミカルまたはその中間体が、下記式から選ばれ、

式中、R1は、CHCH、CHCH(CH)、CH(CHCH、CHCH(CH)(CHCH、および CHCHCH(CH)(CHCHからなる群から選択され、
R2は、H、CH、CHCH、CHCH(CH)、CH(CHCH、CHCH(CH)(CHCH、CHCHCH(CH)(CHCH、およびそれらから生産される任意の対応するアルカン類からなる群から選択され、ここで、nが0〜30であることを特徴とする、組換え微生物。
【請求項24】
さらに、(iii)アルデヒドおよび/またはケトン生合成経路をコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項22に記載の組換え微生物。
【請求項25】
請求項24に記載の組換え微生物であって、前記微生物が、適切な単糖類または好適なオリゴ糖を、コモディティケミカルまたはその中間体に変換することができ、前記コモディティケミカルまたはその中間体が、下記式から選択され、

式中、R1は、CHCH、CHCH(CH)、CH(CHCH、CHCH(CH)(CHCH、 および CHCHCH(CH)(CHCHからなる群から選択され、
R2は、H、CH、CHCH、CHCH(CH)、CH(CHCH、CHCH(CH)(CHCH、 CHCHCH(CH)(CHCH、およびそれらから生産される任意の対応するアルカン類からなる群から選択され、ここで、nが0〜30であることを特徴とする、組換え微生物。
【請求項26】
請求項22に記載の組換え微生物であって、アルデヒドおよび/またはケトン生合成経路をコードし発現する前記少なくとも1つのポリヌクレオチドが、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、グルタールアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、2−メチル−ブチルアルデヒド、3−メチル−ブチルアルデヒド、4−メチルペントアルデヒド、ヘキサンアルデヒド、オクタンアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、2−フェニルアセトアルデヒド、2−(4−ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド、2−インドール−3−アセトアルデヒド、5−アミノ−ペントアルデヒド、コハク酸セミアルデヒド、およびスクシナート4−ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド生合成経路、およびそれらの組み合わせから選択されるアルデヒドおよび/またはケトン生合成経路を含むことを特徴とする、組換え微生物。
【請求項27】
前記アルデヒドおよび/またはケトン生合成経路が、イソブチルアルデヒド生合成経路を含み、前記アルデヒドがイソブチルアルデヒドであることを特徴とする、請求項26に記載の組換え微生物。
【請求項28】
前記アルデヒドおよび/またはケトン生合成経路が、ブチルアルデヒド生合成経路を含み、前記アルデヒドがブチルアルデヒドであることを特徴とする、請求項6に記載の組換え微生物。
【請求項29】
前記アルデヒドおよび/またはケトン生合成経路が、ヘキサンアルデヒド生合成経路を含み、前記アルデヒドがヘキサンアルデヒドであることを特徴とする、請求項6に記載の組換え微生物。
【請求項30】
請求項22に記載の組換え微生物であって、前記アルドラーゼ活性を有するポリペプチドをコードしかつ発現する前記少なくとも1つのポリヌクレオチドが、
(i)配列番号51〜82に示される少なくとも1つのヌクレオチド配列と、少なくとも80%、90%、95%、98%、もしくは99%同じであるヌクレオチド配列、または
(ii)配列番号51〜82に示される少なくとも1つのヌクレオチド配列またはその相補配列に、中ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、
を含むことを特徴とする、組換え微生物。
【請求項31】
前記アルドラーゼ活性を有する前記ポリペプチドが、配列番号223〜244、255〜260に示されるアミノ酸配列から選択される少なくとも1つの生物学的に活性なモチーフを含むことを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
請求項22に記載の組換え微生物であって、前記アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する前記少なくとも1つのポリヌクレオチドが、
(i)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、30、31、33、もしくは83〜96に示される少なくとも1つのヌクレオチド配列と、少なくとも80%、90%、95%、98%、もしくは99%同じであるヌクレオチド配列、または、
(ii)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、30、31、もしくは83〜96に示される少なくとも1つのヌクレオチド配列またはその相補配列に、中ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、
を含むことを特徴とする、組換え微生物。
【請求項33】
前記アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有する前記ポリペプチドが、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)、NADH、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)、またはNADPH結合モチーフのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項34】
請求項33に記載の組換え微生物であって、
前記NAD+、NADH、NADP+、またはNADPH結合モチーフが、Y−X−G−G−X−Y(配列番号245)、Y−X−X‐G−G−X−Y(配列番号246)、Y−X−X−X−G−G−X−Y(配列番号247)、Y−X−G−X−X−Y(配列番号248)、Y−X−X−G−G−X−X−Y(配列番号249)、Y−X−X−X−G−X−X−Y(配列番号250)、Y−X−G−X−Y(配列番号251)、Y−X−X−G−X−Y(配列番号252)、Y−X−X−X−G−X−Y(配列番号253)およびY−X−X−X−X−G−X−Y(配列番号254)からなる群から選択され、
ここで、Yはアラニン、グリシン、およびセリンから、独立に選択され、Gはグリシンで、Xは遺伝学的にコードされるアミノ酸から独立に選択されることを特徴とする、組換え微生物。
【請求項35】
二重結合還元酵素活性を有するポリペプチドをコードしかつ発現する少なくとも1つのポリヌクレオチド、および/またはデヒドラターゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項22に記載の組換え微生物。
【請求項36】
請求項35に記載の組換え微生物であって、前記二重結合還元酵素活性を有するポリペプチドをコードし発現する前記少なくとも1つのポリヌクレオチドが、
(i)配列番号35〜50に示される少なくとも1つのヌクレオチド配列と、少なくとも80%、90%、95%、98%、または99%同じであるヌクレオチド配列、または
(ii)配列番号35〜50に示される少なくとも1つのヌクレオチド配列またはその相補配列に、中ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズすることを特徴とする、組換え微生物。
【請求項37】
コモディティケミカルまたはその中間体を生産する方法であって、
適切な単糖類またはオリゴ糖の供与源で、第一の組換え微生物を増殖させることを含み、前記第一の組換え微生物が、
(i)アルデヒドまたはケトンの生合成経路、
(ii)アルドラーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチド、および
(iii)アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチドを含み、
前記ポリヌクレオチドの少なくとも1つが外来性で、
それによって、コモディティケミカルまたはその中間体を生産することを特徴とする、方法。
【請求項38】
前記適切な単糖類またはオリゴ糖の供与源が、炭素の唯一の供与源としてバイオマス由来の多糖類上で増殖することができる、第2の組換え微生物を含むことを特徴とする、請求項37に記載の方法、
【請求項39】
前記バイオマス由来の多糖類が、アルギナートおよびペクチンから選択されることを特徴とする、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
コモディティケミカルまたはその中間体を生産する方法であって、バイオマス由来の多糖類で組換え微生物を増殖させることを含み、前記組換え微生物が、炭素の唯一の供与源としてバイオマス由来の多糖類上で増殖することができ、かつ前記組換え微生物が、
(i) アルデヒドまたはケトンの生合成経路、
(ii)アルドラーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチド、および
(iii)アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチドを含み、
前記ポリヌクレオチドの少なくとも1つが外来性で、
それによって、コモディティケミカルまたはその中間体を生産することを特徴とする、方法。
【請求項41】
前記バイオマス由来の多糖類が、アルギナートおよびペクチンから選択されることを特徴とする、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
組換え微生物であって、
(i)アルデヒドまたはケトンの生合成経路、
(ii)アルドラーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチド、および
(iii)アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードし発現する少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むことを特徴とする、組換え微生物。
【請求項43】
前記組換え微生が、炭素の唯一の供与源としてバイオマス由来の多糖類上で増殖することができることを特徴とする、請求項37に記載の組換え微生物。
【請求項44】
請求項1乃至40のいずれか一項に記載の組換え微生物であって、前記微生物が、Escherichia coli、 Acetobacter aceti、 Achromobacter、 Acidiphilium、 Acinetobacter、 Actinomadura、 Actinoplanes、 Aeropyrum pernix、 Agrobacterium、 Alcaligenes、 Ananas comosus (M)、 Arthrobacter、 Aspargillus niger、 Aspargillus oryze、 Aspergillus melleus、 Aspergillus verulentus、 Aspergillus saitoi、 Aspergillus sojea、 Aspergillus usamii、 Bacillus alcalophilus、 Bacillus amyloliquefaciens、 Bacillus brevis、 Bacillus circulans、 Bacillus clausii、 Bacillus lentus、 Bacillus licheniformis、 Bacillus macerans、 Bacillus stearothermophilus、 Bacillus subtilis、 Bifidobacterium、 Brevibacillus brevis、 Burkholderia cepacia、 Candida cylindracea、 Candida rugosa、 Carica papaya (L)、 Cellulosimicrobium、 Cephalosporium、 Chaetomium erraticum、 Chaetomium gracile、 Clostridium、 Clostridium butyricum、 Clostridium acetobutylicum、 Clostridium thermocellum、 Corynebacterium (glutamicum)、 Corynebacterium efficiens、 Enterococcus、 Erwina chrysanthemi、 Gliconobacter、 Gluconacetobacter、 Haloarcula、 Humicola insolens、 Humicola nsolens、 Kitasatospora setae、 Klebsiella、 Klebsiella oxytoca、 Kluyveromyces、 Kluyveromyces fragilis、 Kluyveromyces lactis、 Kocuria、 Lactlactis、 Lactobacillus、 Lactobacillus fermentum、 Lactobacillus sake、 Lactococcus、 Lactococcus lactis、 Leuconostoc、 Methylocystis、 Methanolobus siciliae、 Methanogenium organophilum、 Methanobacterium bryantii、 Microbacterium imperiale、 Micrococcus lysodeikticus、 Microlunatus、 Mucor javanicus、 Mycobacterium、 Myrothecium、 Nitrobacter、 Nitrosomonas、 Nocardia、 Papaya carica、 Pediococcus、 Pediococcus halophilus、 Penicillium、 Penicillium camemberti、 Penicillium citrinum、 Penicillium emersonii、 Penicillium roqueforti、 Penicillum lilactinum、 Penicillum multicolor、 Paracoccus pantotrophus、 Propionibacterium、 Pseudomonas、 Pseudomonas fluorescens、 Pseudomonas denitrificans、 Pyrococcus、 Pyrococcus furiosus、 Pyrococcus horikoshii、 Rhizobium、 Rhizomucor miehei、 Rhizomucor pusillus Lindt、 Rhizopus、 Rhizopus delemar、 Rhizopus japonicus、 Rhizopus niveus、 Rhizopus oryzae、 Rhizopus oligosporus、 Rhodococcus、 Saccharophagus degradans、 Sccharomyces cerevisiae、 Sclerotina libertina、 Sphingobacterium multivorum、 Sphingobium、 Sphingomonas、 Streptococcus、 Streptococcus thermophilus Y-1、 Streptomyces、 Streptomyces griseus、 Streptomyces lividans、 Streptomyces murinus、 Streptomyces rubiginosus、 Streptomyces violaceoruber、 Streptoverticillium mobaraense、 Tetragenococcus、 Thermus、 Thiosphaera pantotropha、 Trametes、 Trichoderma、 Trichoderma longibrachiatum、 Trichoderma reesei、 Trichoderma viride、 Trichosporon penicillatum、 Vibrio alginolyticus、 Vibrio splendidus、 Xanthomonas、 yeast、 Yarrowia lipolytica、 Zygosaccharomyces rouxii、 Zymomonas、 およびZymomonus mobilisからなる群から選択されることを特徴とする、組換え微生物。
【請求項45】
請求項1、37、または40のうちいずれか1項に記載の方法により生産される、コモディティケミカル。
【請求項46】
請求項45に記載のコモディティケミカル、および精錬所生産石油製品を含有することを特徴とする、ブレンドコモディティケミカル。
【請求項47】
前記コモディティケミカルが、イソオクタン、2‐エチルヘキサンおよび2−ブチル−オクタンから選択されることを特徴とする、請求項46に記載のブレンドコモディティケミカル。
【請求項48】
前記精錬所生産石油製品が、ガソリン、ジェット燃料、およびディーゼル燃料から選択されることを特徴とする、請求項46に記載のブレンドコモディティケミカル。
【請求項49】
コモディティケミカルで富化した精錬所生産石油製品の生産方法であって、
(a)前記精錬所生産石油製品に、請求項1、37、または40のいずれかに記載の方法により生産されるコモディティケミカルをブレンドすることを含み、
それによって、前記コモディティケミカル富化精錬所生産石油製品を生産することを特徴とする、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−511908(P2012−511908A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540939(P2011−540939)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/067750
【国際公開番号】WO2010/068921
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(511142039)バイオ アーキテクチャー ラボ インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】BIO ARCHITECTURE LAB,INC.
【住所又は居所原語表記】604 Bancroft Way,Suite C, Berkeley,CA 94710(US).
【Fターム(参考)】