コモンモードチョークコイル
【課題】 信号伝送の高速化が進んでおり、伝送ラインのノイズ対策に使う伝送ライン間の浮遊容量を小さく、ディファレンシャル電流で発生するディファレンシャルインダクタンスの発生の小さいコモンモードチョークコイルが必要である。
【解決手段】 コモンモードチョークコイルにおいて、両ラインの2つの線輪を交互ではなく、分離して略I字状のコアに上に巻き軸が直線状になるように配置する。2つの線輪はそれぞれの端の1ターンしか隣接しないので、浮遊容量が小さくなり、伝送信号波形の歪みを小さく押さえることができ、線輪の巻き数を増やしても比例して浮遊容量が増大することもない。また略I字状のコアに上に巻き軸が直線状になるように配置されているコアの中で2個の線輪のディファレンシャル信号電流で発生する磁束が打ち消される方向に巻き線されているので、巻き線周囲の空間に発生する磁束の方向も打ち消される方向に発生し、ディファレンシャルのインダクタンスが増大し信号波形の歪みを大きくすることもない。
【解決手段】 コモンモードチョークコイルにおいて、両ラインの2つの線輪を交互ではなく、分離して略I字状のコアに上に巻き軸が直線状になるように配置する。2つの線輪はそれぞれの端の1ターンしか隣接しないので、浮遊容量が小さくなり、伝送信号波形の歪みを小さく押さえることができ、線輪の巻き数を増やしても比例して浮遊容量が増大することもない。また略I字状のコアに上に巻き軸が直線状になるように配置されているコアの中で2個の線輪のディファレンシャル信号電流で発生する磁束が打ち消される方向に巻き線されているので、巻き線周囲の空間に発生する磁束の方向も打ち消される方向に発生し、ディファレンシャルのインダクタンスが増大し信号波形の歪みを大きくすることもない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁ノイズの対策などに使われる電子部品であるコモンモードチョークコイルの技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器や情報機器では信号が高速化、ブロードバンド化しつつあり、ノイズ対策が難しく、かつ重要になってきており、これらの機器ではノイズ対策にコモンモードチョークコイル広く使われるようになってきている。通常のシングルエンドドライブのデジタル信号は、ノイズを放射しやすく、また、外来ノイズの影響も受け、これに対し、差動伝送は、互いに正反対極性の信号波形が両ラインに伝送される方式で、ノイズに強い特性を有しており、高速デジタル機器においては、代表的なインターフェースであるUSB、LAN、LVDSなどで、差動信号伝送も広く使われるようになってきている。
【0003】
しかし、この差動信号伝送でも、伝送信号の処理回路や伝送路で両ラインの信号に位相差やレベル差などが生じるとノイズ放射の原因になるコモンモードノイズが発生する。また差動信号回路周辺のインピーダンスのバランスが崩れると、放射ノイズ等の外来ノイズの影響を受ける。
【0004】
こうした差動伝送のノイズ対策にも、コモンモードチョークコイルがよく使われるようになったが、現状のコモンモードチョークコイルでは使用上、問題がある。
【0005】
一般的によく使われるコモンモードチョークコイルの代表的な構造が例えば特許文献1に示されている。この構造を図1に示す。この構造においては、1つの磁性体コアにワイヤー3、6が交互に整列して巻回されて構成されている。
【0006】
こうしたタイプのコモンモードチョークコイルでは、信号伝送ラインにつながる2つの線輪3と6が同一の磁性体コア1に交互に巻かれ、両線輪は隣接している。このため3と6の線輪の間、あるいは線輪からコアを経由して3と6との線輪間に多くの電気力線が発生し、両ラインの線輪間には大きな浮遊容量が発生する。浮遊容量があると伝送する差動伝送信号の波形が歪む。特に、使われる差動信号が高速になり伝送信号の周波数が上がると、小さな浮遊容量でも影響が大きくなり、伝送する差動信号波形が大きく歪み、実用上使えなくなるという問題がある。この図1に示すような代表的な従来のコモンモードチョークコイルでは、線輪の巻き数を増やすと、巻き数に比例して浮遊容量も大きくなるので、必要なノイズ対策効果のあるコモンモードインピーダンスを有するコモンモードチョークコイルが使えていない。
【0007】
こうした問題を解決するため、浮遊容量の小さいコモンモードチョークコイルが、例えば特許文献2、特許文献3、特許文献4において提案されている。
【0008】
特許文献2ではトロイダルコアに2つの線輪を巻いた構造のコモンモードチョークコイルが示されている。この構造を図2に示す。しかしこの構造では、コアに囲まれた空間に線輪を巻かなければならず高速の巻き線機が無く、量産に向かず、また、面実装用の電極を設けにくいという欠点がある。
【0009】
特許文献3に示されている構造を図3に示す。この構造は、ボビンに巻かれた2個の線輪に、コの字状の2個の磁性体コアを両側から挿入したものである。この構造においては、ボビンに巻かれた2個の線輪を使い、この線輪にコの字状の2個のコアを両側から挿入する。このため、形状が大きくなり、コストも高くなるという欠点がある。
【0010】
特許文献4において提案されている構造は、図4に示すように、両ラインの線輪を2個のコアに分け、2個の線輪の距離を離すことにより、両ライン間に発生する浮遊容量を小さくするものである。電磁気的に対称な一対の磁性体コアに巻き線の方向が逆になるように巻いた2個の線輪をつくり、その2個の線輪を電磁気的に結合した構成とすることで、両ライン間に発生する浮遊容量を小さくすることができる。
【0011】
しかし、図2、図3、図4に示した両ラインの線輪間に発生する浮遊容量を小さくしたいずれのコモンモードチョークコイルにも共通する問題がある。それは、線輪の周囲の空間に発生する磁束が両線輪のディファレンシャル電流で磁束が足し合わさる方向に発生し、ディファレンシャルの信号電流に影響を与えるディファレンシャルのインダクタンスが増大し、ディファレンシャルの信号電流に障害を与えるという問題である。
【0012】
信号伝送ラインでノイズ対策に使われるコモンモードチョークコイルでは、ライン間に浮遊容量があると伝送インピーダンスが下がる。またディファレンシャル電流で発生するインダクタンスがあると伝送インピーダンスが高くなり、伝送波形が歪むという問題もある。そのため信号伝送のノイズ対策部品には、伝送線路間の浮遊容量が小さく、ディファレンシャル電流で発生するインダクタンスが小さいコモンモードチョークコイルが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】 特開2002−246244号公報
【特許文献2】 特開2002−198236号公報
【特許文献3】 特開2004−214334号公報
【特許文献4】 特開2010−153684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
理想的なコモンモードチョークコイルでは、図5に示すようにコモンモード電流で発生する磁束は足し合わさり、コモンモードのインダクタンスは拡大し、ディファレンシャル電流で発生する磁束は消し合わさり、ディファレンシャルのインダクタンスは発生せず、ディファレンシャルの信号は減衰あるいは歪ませずにコモンモードのノイズを減衰させる機能がある。
【0015】
図2、図3、および図4に示されるコモンモードチョークコイルにおいても、磁性体コアの中で発生するディファレンシャル電流で発生する磁束は消し合わさり、ディファレンシャルの信号電流に影響を与えるディファレンシャルのインダクタンスは発生しない。しかし図2、図3、および図4に示される構造のコモンモードチョークコイルのいずれにおいても、図6に例を示すように、線輪の周囲の空間に発生する磁束が両線輪のディファレンシャル電流で磁束が足し合わさる方向に発生し、ディファレンシャルの信号電流に影響を与えるディファレンシャルのインダクタンスが増大し、ディファレンシャルの信号電流に障害を与えるという問題がある。
【0016】
信号伝送の高速化が進んでおり、差動伝送ラインのノイズ対策などに使うコモンモードチョークコイルは、両伝送ライン間の浮遊容量が小さく、かつディファレンシャル信号電流で発生するディファレンシャルインダクタンスの発生が小さい、信号波形を歪ませないコモンモードチョークコイルが必要である。ディファレンシャル信号電流で発生するディファレンシャルインダクタンスの発生の抑制は磁性体コア内だけでなく線輪周囲の空間でもディファレンシャル電流で発生する磁束が消しあい、ディファレンシャルインダクタンスの発生を抑制できる構造が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、高速の信号でも波形を歪ませずに差動信号ラインのノイズ対策ができる、両ラインの間の浮遊容量が小さく、かつディファレンシャル信号電流で発生するディファレンシャルインダクタンスも小さく、コントロールもできるコモンモードチョークコイルを提供することを主要な目的とする。
【0018】
請求項1の発明は、両方の端部にそれぞれ一対の電極が形成された磁性体からなるコアに、直線状に配列分離した一対の同一巻線数の輪線が巻線されてなり、一方の線輪は主にコアの一方側に巻線され、他方の線輪は主にコアの他方側に巻線され、一方の線輪の両端は、コアの端部に形成された任意の2つの電極に接続され、他方の輪線の両端は残りの2つの電極に接続され、一方の線輪と他方の線輪はそれぞれ、ディファレンシャル電流が流れた場合にコアの中にできる磁束が逆向きとなる方向に巻線されているコモンモードチョークコイルである。ラインの間の浮遊容量が小さく、ディファレンシャル信号電流で発生するディファレンシャルインダクタンスも小さいコモンモードチョークコイルを提供する。このコモンモードチョークコイルは、ディファレンシャル電流でコアの中にできる磁束が逆向きに発生する方向に巻き線をした2個の線輪を磁性体コアに上に、巻き軸が直線状になるように配置することにより、ディファレンシャル電流で発生する磁束はコアの内部だけでなく、線輪周囲の空間でも2つの線輪でつくられる磁束は互いに打ち消す方向の磁束ができ、ディファレンシャル信号電流で発生するディファレンシャルインダクタンスを小さくすることができる。そして浮遊容量を発生する箇所は両線輪が隣接するのは端の1ターンだけにほぼ限定されるため、両線輪間の浮遊容量は小さく、また巻き数を増やすことによって浮遊容量が大きくなることもない。
【0019】
請求項2の発明は、請求項1に記載のコモンモードチョークコイルにおいて、一方の線輪の両端はそれぞれコアの一方の端部に形成された一対の電極に接続され、他方の線輪の両端はそれぞれコアの他方の端部に形成された一対の電極に接続されているコモンモードチョークコイルである。
【0020】
請求項3の発明は、請求項1に記載のコモンモードチョークコイルにおいて、一方の線輪の両端はそれぞれコアの一方の端部に形成された一対の電極の1つとコアの他方の端部に形成された一対の電極の1つに接続され、他方の線輪の両端はそれぞれコアの一方の端部に形成された一対の電極の残る電極とコアの他方の端部に形成された一対の電極の残る電極に接続されているコモンモードチョークコイルである。線輪の入出力の電極位置を、磁性体コアの長さ方向に配置させる電極配置である。
【0021】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のコモンモードチョークコイルにおいて、磁性体コアの両端が鍔状になった概ねI字形状をした磁性体コアであるコモンモードチョークコイルである。磁性体コアの両端に鍔を設けることにより、電極形成が容易となり、実装性が確実に向上される。
【0022】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のチップ・コモンモードチョークコイルにおいて、磁性体コアの両端の鍔と鍔を磁性体のバーコアで磁気的に短絡し閉磁路を形成したコモンモードチョークコイルである。I字形状の磁性体コアの両端の鍔と鍔を磁性体のバーコアで磁気的に短絡し閉磁路を形成することにより、2つの線輪間の浮遊容量が小さく、ディファレンシャル信号電流で発生するディファレンシャルインダクタンスも小さいチップ・コモンモードチョークコイルを構成する。小型でコモンモードインピーダンスが大きく、かつ浮遊容量が小さく、ディファレンシャル信号電流で発生するディファレンシャルインダクタンスも小さいコモンモードチョークコイルをつくることができる。
【0023】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のコモンモードチョークコイルにおいて、2つの分離した線輪の近接端で2つの線輪の巻き線を寄り合わしたコモンモードチョークコイルである。巻き線の乱れを防止するために2つの分離した線輪の近接端で二つの線輪を寄り合わしたコモンモードチョークコイルを提供する。巻き線の乱れがあると高い周波数でコモンモードインピーダンスが低下したり、巻き線の乱れが大きいと共振を起こす原因にもなるので、近接端で2つの線輪の巻き線を寄り合わせることにより、こうした問題が防止できる。
【0024】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のコモンモードチョークコイルにおいて、磁性体コアの略中央部において分離した2つの線輪の近接する巻き線を交差させ、巻き線の一部の位置を互いに入れ替え、入れ替えた量を調整した、チップ・コモンモードチョークコイルを提供する。コモンモードチョークコイルは両ラインの間の浮遊容量が少し大きかったり、ディファレンシャル信号電流で発生するディファレンシャルインダクタンスが少し大きくても、コモンモードチョークの入・出力回路の伝送インピーダンスと整合(マッチング)をとればディファレンシャルモードの信号は歪ませずにノイズ対策できる。請求項7の構成により、独立した線輪の隣接する2つの巻き線を交差させ、巻き線の一部の位置を互いに入れ替え二つの線輪間の浮遊容量とディファレンシャルインダクタンスを調整し、インピーダンスマッチングを調整できるコモンモードチョークが提供できる。
【0025】
請求項8の発明は、コモンモードチョークコイルと接続する回路とのインピーダンスをマッチングさせる調整方法を提供する。請求項8の発明は、両方の端部にそれぞれ一対の電極が形成された磁性体からなるコアに、直線状に配列分離した一対の同一巻線数の輪線が巻線されてなり、一方の線輪は主にコアの一方側に巻線され、他方の線輪は主にコアの他方側に巻線され、一方の線輪の両端は、コアの端部に形成された任意の2つの電極に接続され、他方の輪線の両端は残りの2つの電極に接続され、一方の線輪と他方の線輪はそれぞれ、ディファレンシャル電流が流れた場合にコアの中にできる磁束が逆向きとなる方向に巻線され、磁性体コアの略中央部において2つの線輪の近接する巻き線を交差させ、巻き線の一部の位置を互いに入れ替え、入れ替えた量を調整し、コモンモードチョークコイルの二つの線輪間の浮遊容量とディファレンシャルインダクタンスを調整することによって、コモンモードチョークコイルと接続する回路とのインピーダンスをマッチングさせる調整方法である。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、両方の端部にそれぞれ一対の電極が形成された磁性体からなるコアに、分離した一対の同一巻線数の輪線が直線状に巻線されてなり、一方の線輪は主にコアの一方側に巻線され、他方の線輪は主にコアの他方側に巻線され、一方の線輪の両端は、コアの端部に形成された任意の2つの電極に接続され、他方の輪線の両端は残りの2つの電極に接続され、一方の線輪と他方の線輪はそれぞれ、ディファレンシャル電流が流れた場合にコアの中にできる磁束が逆向きとなる方向に巻線されているコモンモードチョークコイルである。こうした構造により、ラインの間の浮遊容量が小さく、ディファレンシャル信号電流で発生するディファレンシャルインダクタンスも小さいコモンモードチョークコイルが実現できる。
【0027】
このコモンモードチョークコイルは、ディファレンシャル電流でコアの中にできる磁束が逆向きに発生する方向に巻き線をした2個の線輪を磁性体コアに上に、巻き軸が直線状になるように配置することにより、ディファレンシャル電流で発生する磁束はコアの内部だけでなく、線輪周囲の空間でも2つの線輪でつくられる磁束は互いに打ち消す方向の磁束ができ、ディファレンシャル信号電流で発生するディファレンシャルインダクタンスを小さくすることができる。そして浮遊容量を発生する箇所は両線輪が隣接するのは端の1ターンだけにほぼ限定されるため、両線輪間の浮遊容量は小さく、また巻き数を増やすことによって浮遊容量が大きくなることもない。表面実装用のチップ化も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】 従来の一般的に使われているバイファイラ巻きされたコモンモードチョークコイルの構造を示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は裏面図である。
【図2】 従来のリング型コモンモードチョークコイルの構造例を示す図である。
【図3】 従来のボビンに磁性体コアを差し込んだコモンモードチョークコイルの構造例を示す図である。
【図4】 従来の線輪を逆方向に巻いた対称のコイルを合わせたコモンモードチョークコイルの構造例を示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は裏面図である。
【図5】 コモンモードチョークコイルの原理を説明する図であり、コモンモードチョークコイルにおける電流と磁性体コア内の磁束の関係を示す。(A)はコモンモード電流と磁束を示しており、(B)はディファレンシャル電流と磁束を示す。
【図6】 従来のコモンモードチョークコイルにおけるコイル周囲空間の磁束の関係を示す図であり、(A)はコモンモード電流と磁束を、(B)はディファレンシャル電流と磁束を示す。
【図7】 本発明の実施例によるコモンモードチョークコイルの基本構造を示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は裏面図である。
【図8】 本発明の他の実施例によるコモンモードチョークコイルの構造を示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は裏面図である。
【図9】 本発明の他の実施例によるコモンモードチョークコイルの構造を示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は裏面図である。
【図10】 本発明の他の実施例によるコモンモードチョークコイルの構造を示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は裏面図である。
【図11】 本発明による分割巻きチップ・コモンモードチョークコイルにおいて、ディファレンシャル電流とそのディファレンシャル電流によって発生する磁束を説明する図であり、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は裏面図である。
【図12】 本発明によるコモンモードチョークコイルにおける浮遊容量と信号波形の関係を示す図である。
【図13】 シミュレーションに用いた回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図7〜図13を参照しながら、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0030】
図7に実施例1におけるコモンモードチョークコイルの基本的な構成を示す。フェライトなどの磁性体からなるコア1の両端部の鍔部にそれぞれ一対の電極4と5、および7と8を設ける。電極4と電極7にポリウレタンなどで被覆された2本のワイヤー3と6の先端を溶着などの方法で接続し、磁性体コアを回転させ、両端から分離した一対の同一巻線数の輪線を巻き、中央部から2本のワイヤーを他端の電極5と電極8に引き出し、溶着等で接続する。本実施例では、電極4、5を有する線輪3と電極7、8を有する巻線6の直線状に配列した線輪の一対が構成される。本実施例の構成によれば、両ラインの間の浮遊容量が小さく、ディファレンシャル信号電流で発生するディファレンシャルインダクタンスも小さいコモンモードチョークコイルが得られる。
【実施例2】
【0031】
実施例2の構成は図7に示す構成に基づいている。フェライトなどの磁性体からなるコア1の両端部の鍔部にそれぞれ一対の電極4と5、および7と8を設ける。電極4と電極7にポリウレタンなどで被覆された2本のワイヤー3と6の先端を溶着などの方法で接続し、磁性体コアを回転させ、両端から分離した一対の同一巻線数の輪線を巻き、中央部から2本のワイヤーを他端の電極8と電極5に引き出し、溶着等で接続する。本実施例では、4、8の電極配置を有する線輪3と7、8の電極配置を有する線輪6の一対が構成される。電極の配置は、例えば、4、7の電極配置の線輪と5、8の電極配置の線輪の一対でもよく、外部回路の配置により、最適配置を選択する。実装時の実装面積の低減が図れる電極配置を有するコモンモードチョークコイルの構成である。
【実施例3】
【0032】
実施例3におけるコモンモードチョークコイルの構成を図8に示す。フェライトなどの磁性体からなるコア1の両端部の鍔部にそれぞれ一対の電極4と5、および7と8を設ける。電極4と電極7にポリウレタンなどで被覆された2本のワイヤー3と6の先端を溶着などの方法で接続し、磁性体コアを回転させ、両端から分離した一対の同一巻線数の輪線を巻き、中央部から2本のワイヤーを他端の電極5と電極8に引き出し、溶着等で接続する。フェライトなどからなる磁性体コア1の両端の鍔と鍔を磁性体のバーコア2を接着剤等で接合して磁気的に短絡し閉磁路を形成する。磁性体コアの両端の鍔と磁性体のバーコアは接着剤等で接合される。
【0033】
本実施例では、4、5の電極配置を持つ線輪3と7、8の電極配置を持つ線輪の一対が構成される。
【0034】
フェライトなどからなる磁性体コア1の両端の鍔と鍔を磁性体のバーコア2で磁気的に短絡して閉磁路を形成した構造であるため、小型で、図7に示す実施例の構造よりも、より大きなコモンモードインピーダンスが得られる。
【0035】
本実施例におけるコモンモードチョークコイルの動作モデルを図11に示す。図11は2つのコイル位置の関係と信号電流であるディファレンシャル電流で発生する磁束を示した図である。
【0036】
本実施例のコモンモードチョークコイルにおいては、両ラインのコイル3とコイル6巻き線は交互ではなく、分離して磁性体コア上に巻き軸が直線状になるように配置されている。コイル3とコイル6はそれぞれの近接端の1ターンしか隣接せず、浮遊容量Cが小さく、差動伝送信号波形の歪みを小さく押さえることができ、本発明のコモンモードチョークコイルはコイルの巻き数を増やしても比例して浮遊容量Cを増大することはなく、信号波形の歪を大きくなることはない。
【0037】
また図11に示すように、本実施例においては、一対の線輪を磁性体コア上に巻き軸が直線状になるように配置し、一対の線輪をディファレンシャル電流でコアの中にできる磁束が逆向きに発生する方向に巻き線をしている。したがって、磁性体コアの中で2個の線輪のディファレンシャル信号電流で発生する磁束が打ち消され、線輪周囲の空間に発生する磁束の方向も打ち消される方向に発生するため、ディファレンシャルのインダクタンスが増大し信号波形の歪みが大きくなることもない。よって、ディファレンシャル信号電流で発生するディファレンシャルインダクタンスを小さくすることができる。
【実施例4】
【0038】
本発明の実施例4によるコモンモードチョークコイルの構成を図9に示す。フェライトなどの磁性体からなるコア1の両端部の鍔部にそれぞれ一対の電極4と5、および7と8を設ける。電極4と電極7にポリウレタンなどで被覆された2本のワイヤー3と6の先端を溶着などの方法で接続し、磁性体コアを回転させ、両端から分離した一対の同一巻線数の輪線を巻き、磁性体コアの略中央部の近接端で二つの線輪の巻き線を寄り合わせ、電極4に接続された線輪3からのワイヤーを電極5に、電極7に接続された線輪6からのワイヤーを電極8に引き出し、溶着等で接続する。本実施例によると、4、5の電極配置を持つ線輪3と7、8の電極配置を持つ線輪の一対が構成される。
【0039】
線輪の巻き線に乱れがあると、高い周波数ではコモンモードインピーダンスが低下することがある。またこの乱れが大きいと共振を起こす原因にもなり得る。本実施例の構造は、巻き線の乱れや緩みの防止や、製造の効率化に有効である。
【実施例5】
【0040】
本発明の実施例5によるコモンモードチョークコイルの構成を図10に示す。フェライトなどの磁性体からなるコア1の両端部の鍔部にそれぞれ一対の電極4と5、および7と8を設ける。電極4と電極7にポリウレタンなどで被覆された2本のワイヤー3と6の先端を溶着などの方法で接続し、磁性体コアを回転させ、両端から分離した一対の同一巻線数の輪線を巻き、2つの巻き線が隣接する磁性体コアの略中央部で線輪3と6を交差させ、巻き線の一部の位置を互いに入れ替え、2つのワイヤーをより合わせ、電極4に接続された線輪3からのワイヤーを電極5に、電極7に接続された線輪6からのワイヤーを電極8に引き出し、溶着等で接続する。磁性体コア1の両端の鍔と鍔を磁性体のバーコア2を接着剤等で接合して磁気的に短絡し閉磁路を形成する。磁性体コアの両端の鍔と磁性体のバーコアは接着剤等で接合される。
【0041】
コモンモードチョークコイルにおいて両ラインの間の浮遊容量が少し大きかったり、ディファレンシャル信号電流で発生するディファレンシャルインダクタンスが少し大きくても、コモンモードチョークの入・出力回路の伝送インピーダンスと整合(マッチング)をとれば、ディファレンシャルモードの信号は歪ませずにノイズ対策もできる。その場合、線輪間の浮遊容量やディファレンシャルインダクタンスを微調節できる構造が必要である。図10に示す実施例では、2つの巻き線が隣接する中央部で線輪3と6を交差させ、巻き線の一部の位置を互いに入れ替え、入れ替えた量を調整して、2つの線輪間の浮遊容量とディファレンシャルインダクタンスを調整したコモンモードチョークコイルを作ることができる。
【0042】
隣接線輪3と6の中央部での位置の互いに入れ替えは1〜2カ所だけでなく複数箇所で行い、ツイスト状にしてもよい。
【実施例6】
【0043】
本発明の実施例6によるコモンモードチョークコイルの構成は図10に基づいている。フェライトなどの磁性体からなるコア1の両端部の鍔部にそれぞれ一対の電極4と5、および7と8を設ける。電極4と電極7にポリウレタンなどで被覆された2本のワイヤー3と6の先端を溶着などの方法で接続し、磁性体コアを回転させ、両端から分離した一対の同一巻線数の輪線を巻き、2つの巻き線が隣接する磁性体コアの略中央部で線輪3と6を交差させ、巻き線の一部の位置を互いに入れ替え、2つのワイヤーをより合わせ、電極4に接続された線輪3からのワイヤーを電極5に、電極7に接続された線輪6からのワイヤーを電極8に引き出し、溶着等で接続する。磁性体コア1の両端の鍔と鍔を磁性体のバーコア2を接着剤等で接合して磁気的に短絡し閉磁路を形成する。磁性体コアの両端の鍔と磁性体のバーコアは接着剤等で接合される。
【0044】
2つの線輪間の浮遊容量とディファレンシャルインダクタンスの調整は、2つの巻き線が隣接する中央部で線輪3と6を交差させ、巻き線の一部の位置を互いに入れ替え、入れ替えた量を調整して行える。この調整方法により、コモンモードチョークコイルの入・出力回路の伝送インピーダンスと整合(マッチング)が取れ、ディファレンシャルモードの信号は歪ませずにノイズ対策もできる。
【0045】
線輪3と6間の浮遊容量が発生する箇所は両線輪が隣接している中央の1ターンだけにほぼ限定される。3と6の線輪の間、あるいは線輪からコアを経由して3と6との線輪間に多くの電気力線が発生し、両ラインの線輪間に浮遊容量が発生する。浮遊容量が隣接している中央の1ターンだけで発生するとした場合、最終の1ターンを全部入れ替えると2つの線輪が隣接する長さが3倍になり、最大、3倍程度までの浮遊容量を増やし、調整することが可能である。
【0046】
実施例6で作製したコモンモードチョークコイルを使い、伝送速度500MHzで、浮遊容量を微調整するシミュレーションを行い、信号波形の歪を、図12(B)に示すように、改善できることを確かめた。シミュレーションは図13に示す回路で行った。比較のために、図12(A)に基本的な構造の実施例6で試作した特性を示す。この浮遊容量をマッチングの条件に近い1.5pFでシュミレーションすると、図12(B)に示すように波形ひずみが少なくなる。また、もう少し浮遊容量を大きくして3pFでシミュレーションを行うと、図12(C)に示すように信号波形が鈍った。
【0047】
本実施例のコモンモードチョークコイルでは、両ラインの間の浮遊容量が少し大きかったり、ディファレンシャル信号電流で発生するディファレンシャルインダクタンスが少し大きくても、コモンモードチョークの入・出力回路の伝送インピーダンスと整合(マッチング)をとればディファレンシャルモードの信号を歪ませずにノイズ対策ができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
デジタル機器が多くの分野で使われて、そのデジタル機器には代表的なインターフェース、USB、LAN、LVDSなど、差動信号伝送が広く活用され、差動信号伝送の高速化が進んでいる。高速化に伴い、その差動信号伝送路では電磁ノイズ対策が必要であり、その対策にコモンモードチョークコイルは欠かすことの出来ない重要な部品となっている。しかし、高速の差動信号伝送の電磁ノイズの対策では、コモンモードチョークコイルの浮遊容量が問題となり、十分対策が撮れる対策部品がない。安価で効果的な解決が望まれている。
【0049】
本発明では、伝送信号が通る線輪を直線状に配置分離することにより、浮遊容量の小さなコモンモードチョークコイルを安価に提供することができ、デジタル電子機器の高速化、デジタル機器で産業への貢献が期待できる。
【0050】
また差動信号伝送の電磁ノイズ対策では、大きなノイズ対策効果を得るにはコモンモードチョークコイルの線輪を多く巻き、大きなコモンモードインピーダンスを得ることが必要である。従来のコモンモードチョークコイルは線輪を多く巻くと浮遊容量も大きくなりディファレンシャルモードの差動伝送信号が歪み使えなくなり、大きなコモンモードインピーダンスのコモンモードチョークコイルが得られない問題があった。しかし本発明によれば、巻き線数と浮遊容量は直接関係しないので大きいコモンモードインピーダンスのコモンモードチョークコイルが実現でき、大きなノイズ対策効果を得られる。この面でも産業面へ貢献も期待できる。
【符号の説明】
【0051】
1 磁性体コア
2 閉磁路を形成するための磁性体バーコアー
3 線輪
4 電極
5 電極
6 線輪
7 電極
8 電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁ノイズの対策などに使われる電子部品であるコモンモードチョークコイルの技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器や情報機器では信号が高速化、ブロードバンド化しつつあり、ノイズ対策が難しく、かつ重要になってきており、これらの機器ではノイズ対策にコモンモードチョークコイル広く使われるようになってきている。通常のシングルエンドドライブのデジタル信号は、ノイズを放射しやすく、また、外来ノイズの影響も受け、これに対し、差動伝送は、互いに正反対極性の信号波形が両ラインに伝送される方式で、ノイズに強い特性を有しており、高速デジタル機器においては、代表的なインターフェースであるUSB、LAN、LVDSなどで、差動信号伝送も広く使われるようになってきている。
【0003】
しかし、この差動信号伝送でも、伝送信号の処理回路や伝送路で両ラインの信号に位相差やレベル差などが生じるとノイズ放射の原因になるコモンモードノイズが発生する。また差動信号回路周辺のインピーダンスのバランスが崩れると、放射ノイズ等の外来ノイズの影響を受ける。
【0004】
こうした差動伝送のノイズ対策にも、コモンモードチョークコイルがよく使われるようになったが、現状のコモンモードチョークコイルでは使用上、問題がある。
【0005】
一般的によく使われるコモンモードチョークコイルの代表的な構造が例えば特許文献1に示されている。この構造を図1に示す。この構造においては、1つの磁性体コアにワイヤー3、6が交互に整列して巻回されて構成されている。
【0006】
こうしたタイプのコモンモードチョークコイルでは、信号伝送ラインにつながる2つの線輪3と6が同一の磁性体コア1に交互に巻かれ、両線輪は隣接している。このため3と6の線輪の間、あるいは線輪からコアを経由して3と6との線輪間に多くの電気力線が発生し、両ラインの線輪間には大きな浮遊容量が発生する。浮遊容量があると伝送する差動伝送信号の波形が歪む。特に、使われる差動信号が高速になり伝送信号の周波数が上がると、小さな浮遊容量でも影響が大きくなり、伝送する差動信号波形が大きく歪み、実用上使えなくなるという問題がある。この図1に示すような代表的な従来のコモンモードチョークコイルでは、線輪の巻き数を増やすと、巻き数に比例して浮遊容量も大きくなるので、必要なノイズ対策効果のあるコモンモードインピーダンスを有するコモンモードチョークコイルが使えていない。
【0007】
こうした問題を解決するため、浮遊容量の小さいコモンモードチョークコイルが、例えば特許文献2、特許文献3、特許文献4において提案されている。
【0008】
特許文献2ではトロイダルコアに2つの線輪を巻いた構造のコモンモードチョークコイルが示されている。この構造を図2に示す。しかしこの構造では、コアに囲まれた空間に線輪を巻かなければならず高速の巻き線機が無く、量産に向かず、また、面実装用の電極を設けにくいという欠点がある。
【0009】
特許文献3に示されている構造を図3に示す。この構造は、ボビンに巻かれた2個の線輪に、コの字状の2個の磁性体コアを両側から挿入したものである。この構造においては、ボビンに巻かれた2個の線輪を使い、この線輪にコの字状の2個のコアを両側から挿入する。このため、形状が大きくなり、コストも高くなるという欠点がある。
【0010】
特許文献4において提案されている構造は、図4に示すように、両ラインの線輪を2個のコアに分け、2個の線輪の距離を離すことにより、両ライン間に発生する浮遊容量を小さくするものである。電磁気的に対称な一対の磁性体コアに巻き線の方向が逆になるように巻いた2個の線輪をつくり、その2個の線輪を電磁気的に結合した構成とすることで、両ライン間に発生する浮遊容量を小さくすることができる。
【0011】
しかし、図2、図3、図4に示した両ラインの線輪間に発生する浮遊容量を小さくしたいずれのコモンモードチョークコイルにも共通する問題がある。それは、線輪の周囲の空間に発生する磁束が両線輪のディファレンシャル電流で磁束が足し合わさる方向に発生し、ディファレンシャルの信号電流に影響を与えるディファレンシャルのインダクタンスが増大し、ディファレンシャルの信号電流に障害を与えるという問題である。
【0012】
信号伝送ラインでノイズ対策に使われるコモンモードチョークコイルでは、ライン間に浮遊容量があると伝送インピーダンスが下がる。またディファレンシャル電流で発生するインダクタンスがあると伝送インピーダンスが高くなり、伝送波形が歪むという問題もある。そのため信号伝送のノイズ対策部品には、伝送線路間の浮遊容量が小さく、ディファレンシャル電流で発生するインダクタンスが小さいコモンモードチョークコイルが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】 特開2002−246244号公報
【特許文献2】 特開2002−198236号公報
【特許文献3】 特開2004−214334号公報
【特許文献4】 特開2010−153684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
理想的なコモンモードチョークコイルでは、図5に示すようにコモンモード電流で発生する磁束は足し合わさり、コモンモードのインダクタンスは拡大し、ディファレンシャル電流で発生する磁束は消し合わさり、ディファレンシャルのインダクタンスは発生せず、ディファレンシャルの信号は減衰あるいは歪ませずにコモンモードのノイズを減衰させる機能がある。
【0015】
図2、図3、および図4に示されるコモンモードチョークコイルにおいても、磁性体コアの中で発生するディファレンシャル電流で発生する磁束は消し合わさり、ディファレンシャルの信号電流に影響を与えるディファレンシャルのインダクタンスは発生しない。しかし図2、図3、および図4に示される構造のコモンモードチョークコイルのいずれにおいても、図6に例を示すように、線輪の周囲の空間に発生する磁束が両線輪のディファレンシャル電流で磁束が足し合わさる方向に発生し、ディファレンシャルの信号電流に影響を与えるディファレンシャルのインダクタンスが増大し、ディファレンシャルの信号電流に障害を与えるという問題がある。
【0016】
信号伝送の高速化が進んでおり、差動伝送ラインのノイズ対策などに使うコモンモードチョークコイルは、両伝送ライン間の浮遊容量が小さく、かつディファレンシャル信号電流で発生するディファレンシャルインダクタンスの発生が小さい、信号波形を歪ませないコモンモードチョークコイルが必要である。ディファレンシャル信号電流で発生するディファレンシャルインダクタンスの発生の抑制は磁性体コア内だけでなく線輪周囲の空間でもディファレンシャル電流で発生する磁束が消しあい、ディファレンシャルインダクタンスの発生を抑制できる構造が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、高速の信号でも波形を歪ませずに差動信号ラインのノイズ対策ができる、両ラインの間の浮遊容量が小さく、かつディファレンシャル信号電流で発生するディファレンシャルインダクタンスも小さく、コントロールもできるコモンモードチョークコイルを提供することを主要な目的とする。
【0018】
請求項1の発明は、両方の端部にそれぞれ一対の電極が形成された磁性体からなるコアに、直線状に配列分離した一対の同一巻線数の輪線が巻線されてなり、一方の線輪は主にコアの一方側に巻線され、他方の線輪は主にコアの他方側に巻線され、一方の線輪の両端は、コアの端部に形成された任意の2つの電極に接続され、他方の輪線の両端は残りの2つの電極に接続され、一方の線輪と他方の線輪はそれぞれ、ディファレンシャル電流が流れた場合にコアの中にできる磁束が逆向きとなる方向に巻線されているコモンモードチョークコイルである。ラインの間の浮遊容量が小さく、ディファレンシャル信号電流で発生するディファレンシャルインダクタンスも小さいコモンモードチョークコイルを提供する。このコモンモードチョークコイルは、ディファレンシャル電流でコアの中にできる磁束が逆向きに発生する方向に巻き線をした2個の線輪を磁性体コアに上に、巻き軸が直線状になるように配置することにより、ディファレンシャル電流で発生する磁束はコアの内部だけでなく、線輪周囲の空間でも2つの線輪でつくられる磁束は互いに打ち消す方向の磁束ができ、ディファレンシャル信号電流で発生するディファレンシャルインダクタンスを小さくすることができる。そして浮遊容量を発生する箇所は両線輪が隣接するのは端の1ターンだけにほぼ限定されるため、両線輪間の浮遊容量は小さく、また巻き数を増やすことによって浮遊容量が大きくなることもない。
【0019】
請求項2の発明は、請求項1に記載のコモンモードチョークコイルにおいて、一方の線輪の両端はそれぞれコアの一方の端部に形成された一対の電極に接続され、他方の線輪の両端はそれぞれコアの他方の端部に形成された一対の電極に接続されているコモンモードチョークコイルである。
【0020】
請求項3の発明は、請求項1に記載のコモンモードチョークコイルにおいて、一方の線輪の両端はそれぞれコアの一方の端部に形成された一対の電極の1つとコアの他方の端部に形成された一対の電極の1つに接続され、他方の線輪の両端はそれぞれコアの一方の端部に形成された一対の電極の残る電極とコアの他方の端部に形成された一対の電極の残る電極に接続されているコモンモードチョークコイルである。線輪の入出力の電極位置を、磁性体コアの長さ方向に配置させる電極配置である。
【0021】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のコモンモードチョークコイルにおいて、磁性体コアの両端が鍔状になった概ねI字形状をした磁性体コアであるコモンモードチョークコイルである。磁性体コアの両端に鍔を設けることにより、電極形成が容易となり、実装性が確実に向上される。
【0022】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のチップ・コモンモードチョークコイルにおいて、磁性体コアの両端の鍔と鍔を磁性体のバーコアで磁気的に短絡し閉磁路を形成したコモンモードチョークコイルである。I字形状の磁性体コアの両端の鍔と鍔を磁性体のバーコアで磁気的に短絡し閉磁路を形成することにより、2つの線輪間の浮遊容量が小さく、ディファレンシャル信号電流で発生するディファレンシャルインダクタンスも小さいチップ・コモンモードチョークコイルを構成する。小型でコモンモードインピーダンスが大きく、かつ浮遊容量が小さく、ディファレンシャル信号電流で発生するディファレンシャルインダクタンスも小さいコモンモードチョークコイルをつくることができる。
【0023】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のコモンモードチョークコイルにおいて、2つの分離した線輪の近接端で2つの線輪の巻き線を寄り合わしたコモンモードチョークコイルである。巻き線の乱れを防止するために2つの分離した線輪の近接端で二つの線輪を寄り合わしたコモンモードチョークコイルを提供する。巻き線の乱れがあると高い周波数でコモンモードインピーダンスが低下したり、巻き線の乱れが大きいと共振を起こす原因にもなるので、近接端で2つの線輪の巻き線を寄り合わせることにより、こうした問題が防止できる。
【0024】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のコモンモードチョークコイルにおいて、磁性体コアの略中央部において分離した2つの線輪の近接する巻き線を交差させ、巻き線の一部の位置を互いに入れ替え、入れ替えた量を調整した、チップ・コモンモードチョークコイルを提供する。コモンモードチョークコイルは両ラインの間の浮遊容量が少し大きかったり、ディファレンシャル信号電流で発生するディファレンシャルインダクタンスが少し大きくても、コモンモードチョークの入・出力回路の伝送インピーダンスと整合(マッチング)をとればディファレンシャルモードの信号は歪ませずにノイズ対策できる。請求項7の構成により、独立した線輪の隣接する2つの巻き線を交差させ、巻き線の一部の位置を互いに入れ替え二つの線輪間の浮遊容量とディファレンシャルインダクタンスを調整し、インピーダンスマッチングを調整できるコモンモードチョークが提供できる。
【0025】
請求項8の発明は、コモンモードチョークコイルと接続する回路とのインピーダンスをマッチングさせる調整方法を提供する。請求項8の発明は、両方の端部にそれぞれ一対の電極が形成された磁性体からなるコアに、直線状に配列分離した一対の同一巻線数の輪線が巻線されてなり、一方の線輪は主にコアの一方側に巻線され、他方の線輪は主にコアの他方側に巻線され、一方の線輪の両端は、コアの端部に形成された任意の2つの電極に接続され、他方の輪線の両端は残りの2つの電極に接続され、一方の線輪と他方の線輪はそれぞれ、ディファレンシャル電流が流れた場合にコアの中にできる磁束が逆向きとなる方向に巻線され、磁性体コアの略中央部において2つの線輪の近接する巻き線を交差させ、巻き線の一部の位置を互いに入れ替え、入れ替えた量を調整し、コモンモードチョークコイルの二つの線輪間の浮遊容量とディファレンシャルインダクタンスを調整することによって、コモンモードチョークコイルと接続する回路とのインピーダンスをマッチングさせる調整方法である。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、両方の端部にそれぞれ一対の電極が形成された磁性体からなるコアに、分離した一対の同一巻線数の輪線が直線状に巻線されてなり、一方の線輪は主にコアの一方側に巻線され、他方の線輪は主にコアの他方側に巻線され、一方の線輪の両端は、コアの端部に形成された任意の2つの電極に接続され、他方の輪線の両端は残りの2つの電極に接続され、一方の線輪と他方の線輪はそれぞれ、ディファレンシャル電流が流れた場合にコアの中にできる磁束が逆向きとなる方向に巻線されているコモンモードチョークコイルである。こうした構造により、ラインの間の浮遊容量が小さく、ディファレンシャル信号電流で発生するディファレンシャルインダクタンスも小さいコモンモードチョークコイルが実現できる。
【0027】
このコモンモードチョークコイルは、ディファレンシャル電流でコアの中にできる磁束が逆向きに発生する方向に巻き線をした2個の線輪を磁性体コアに上に、巻き軸が直線状になるように配置することにより、ディファレンシャル電流で発生する磁束はコアの内部だけでなく、線輪周囲の空間でも2つの線輪でつくられる磁束は互いに打ち消す方向の磁束ができ、ディファレンシャル信号電流で発生するディファレンシャルインダクタンスを小さくすることができる。そして浮遊容量を発生する箇所は両線輪が隣接するのは端の1ターンだけにほぼ限定されるため、両線輪間の浮遊容量は小さく、また巻き数を増やすことによって浮遊容量が大きくなることもない。表面実装用のチップ化も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】 従来の一般的に使われているバイファイラ巻きされたコモンモードチョークコイルの構造を示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は裏面図である。
【図2】 従来のリング型コモンモードチョークコイルの構造例を示す図である。
【図3】 従来のボビンに磁性体コアを差し込んだコモンモードチョークコイルの構造例を示す図である。
【図4】 従来の線輪を逆方向に巻いた対称のコイルを合わせたコモンモードチョークコイルの構造例を示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は裏面図である。
【図5】 コモンモードチョークコイルの原理を説明する図であり、コモンモードチョークコイルにおける電流と磁性体コア内の磁束の関係を示す。(A)はコモンモード電流と磁束を示しており、(B)はディファレンシャル電流と磁束を示す。
【図6】 従来のコモンモードチョークコイルにおけるコイル周囲空間の磁束の関係を示す図であり、(A)はコモンモード電流と磁束を、(B)はディファレンシャル電流と磁束を示す。
【図7】 本発明の実施例によるコモンモードチョークコイルの基本構造を示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は裏面図である。
【図8】 本発明の他の実施例によるコモンモードチョークコイルの構造を示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は裏面図である。
【図9】 本発明の他の実施例によるコモンモードチョークコイルの構造を示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は裏面図である。
【図10】 本発明の他の実施例によるコモンモードチョークコイルの構造を示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は裏面図である。
【図11】 本発明による分割巻きチップ・コモンモードチョークコイルにおいて、ディファレンシャル電流とそのディファレンシャル電流によって発生する磁束を説明する図であり、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は裏面図である。
【図12】 本発明によるコモンモードチョークコイルにおける浮遊容量と信号波形の関係を示す図である。
【図13】 シミュレーションに用いた回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図7〜図13を参照しながら、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0030】
図7に実施例1におけるコモンモードチョークコイルの基本的な構成を示す。フェライトなどの磁性体からなるコア1の両端部の鍔部にそれぞれ一対の電極4と5、および7と8を設ける。電極4と電極7にポリウレタンなどで被覆された2本のワイヤー3と6の先端を溶着などの方法で接続し、磁性体コアを回転させ、両端から分離した一対の同一巻線数の輪線を巻き、中央部から2本のワイヤーを他端の電極5と電極8に引き出し、溶着等で接続する。本実施例では、電極4、5を有する線輪3と電極7、8を有する巻線6の直線状に配列した線輪の一対が構成される。本実施例の構成によれば、両ラインの間の浮遊容量が小さく、ディファレンシャル信号電流で発生するディファレンシャルインダクタンスも小さいコモンモードチョークコイルが得られる。
【実施例2】
【0031】
実施例2の構成は図7に示す構成に基づいている。フェライトなどの磁性体からなるコア1の両端部の鍔部にそれぞれ一対の電極4と5、および7と8を設ける。電極4と電極7にポリウレタンなどで被覆された2本のワイヤー3と6の先端を溶着などの方法で接続し、磁性体コアを回転させ、両端から分離した一対の同一巻線数の輪線を巻き、中央部から2本のワイヤーを他端の電極8と電極5に引き出し、溶着等で接続する。本実施例では、4、8の電極配置を有する線輪3と7、8の電極配置を有する線輪6の一対が構成される。電極の配置は、例えば、4、7の電極配置の線輪と5、8の電極配置の線輪の一対でもよく、外部回路の配置により、最適配置を選択する。実装時の実装面積の低減が図れる電極配置を有するコモンモードチョークコイルの構成である。
【実施例3】
【0032】
実施例3におけるコモンモードチョークコイルの構成を図8に示す。フェライトなどの磁性体からなるコア1の両端部の鍔部にそれぞれ一対の電極4と5、および7と8を設ける。電極4と電極7にポリウレタンなどで被覆された2本のワイヤー3と6の先端を溶着などの方法で接続し、磁性体コアを回転させ、両端から分離した一対の同一巻線数の輪線を巻き、中央部から2本のワイヤーを他端の電極5と電極8に引き出し、溶着等で接続する。フェライトなどからなる磁性体コア1の両端の鍔と鍔を磁性体のバーコア2を接着剤等で接合して磁気的に短絡し閉磁路を形成する。磁性体コアの両端の鍔と磁性体のバーコアは接着剤等で接合される。
【0033】
本実施例では、4、5の電極配置を持つ線輪3と7、8の電極配置を持つ線輪の一対が構成される。
【0034】
フェライトなどからなる磁性体コア1の両端の鍔と鍔を磁性体のバーコア2で磁気的に短絡して閉磁路を形成した構造であるため、小型で、図7に示す実施例の構造よりも、より大きなコモンモードインピーダンスが得られる。
【0035】
本実施例におけるコモンモードチョークコイルの動作モデルを図11に示す。図11は2つのコイル位置の関係と信号電流であるディファレンシャル電流で発生する磁束を示した図である。
【0036】
本実施例のコモンモードチョークコイルにおいては、両ラインのコイル3とコイル6巻き線は交互ではなく、分離して磁性体コア上に巻き軸が直線状になるように配置されている。コイル3とコイル6はそれぞれの近接端の1ターンしか隣接せず、浮遊容量Cが小さく、差動伝送信号波形の歪みを小さく押さえることができ、本発明のコモンモードチョークコイルはコイルの巻き数を増やしても比例して浮遊容量Cを増大することはなく、信号波形の歪を大きくなることはない。
【0037】
また図11に示すように、本実施例においては、一対の線輪を磁性体コア上に巻き軸が直線状になるように配置し、一対の線輪をディファレンシャル電流でコアの中にできる磁束が逆向きに発生する方向に巻き線をしている。したがって、磁性体コアの中で2個の線輪のディファレンシャル信号電流で発生する磁束が打ち消され、線輪周囲の空間に発生する磁束の方向も打ち消される方向に発生するため、ディファレンシャルのインダクタンスが増大し信号波形の歪みが大きくなることもない。よって、ディファレンシャル信号電流で発生するディファレンシャルインダクタンスを小さくすることができる。
【実施例4】
【0038】
本発明の実施例4によるコモンモードチョークコイルの構成を図9に示す。フェライトなどの磁性体からなるコア1の両端部の鍔部にそれぞれ一対の電極4と5、および7と8を設ける。電極4と電極7にポリウレタンなどで被覆された2本のワイヤー3と6の先端を溶着などの方法で接続し、磁性体コアを回転させ、両端から分離した一対の同一巻線数の輪線を巻き、磁性体コアの略中央部の近接端で二つの線輪の巻き線を寄り合わせ、電極4に接続された線輪3からのワイヤーを電極5に、電極7に接続された線輪6からのワイヤーを電極8に引き出し、溶着等で接続する。本実施例によると、4、5の電極配置を持つ線輪3と7、8の電極配置を持つ線輪の一対が構成される。
【0039】
線輪の巻き線に乱れがあると、高い周波数ではコモンモードインピーダンスが低下することがある。またこの乱れが大きいと共振を起こす原因にもなり得る。本実施例の構造は、巻き線の乱れや緩みの防止や、製造の効率化に有効である。
【実施例5】
【0040】
本発明の実施例5によるコモンモードチョークコイルの構成を図10に示す。フェライトなどの磁性体からなるコア1の両端部の鍔部にそれぞれ一対の電極4と5、および7と8を設ける。電極4と電極7にポリウレタンなどで被覆された2本のワイヤー3と6の先端を溶着などの方法で接続し、磁性体コアを回転させ、両端から分離した一対の同一巻線数の輪線を巻き、2つの巻き線が隣接する磁性体コアの略中央部で線輪3と6を交差させ、巻き線の一部の位置を互いに入れ替え、2つのワイヤーをより合わせ、電極4に接続された線輪3からのワイヤーを電極5に、電極7に接続された線輪6からのワイヤーを電極8に引き出し、溶着等で接続する。磁性体コア1の両端の鍔と鍔を磁性体のバーコア2を接着剤等で接合して磁気的に短絡し閉磁路を形成する。磁性体コアの両端の鍔と磁性体のバーコアは接着剤等で接合される。
【0041】
コモンモードチョークコイルにおいて両ラインの間の浮遊容量が少し大きかったり、ディファレンシャル信号電流で発生するディファレンシャルインダクタンスが少し大きくても、コモンモードチョークの入・出力回路の伝送インピーダンスと整合(マッチング)をとれば、ディファレンシャルモードの信号は歪ませずにノイズ対策もできる。その場合、線輪間の浮遊容量やディファレンシャルインダクタンスを微調節できる構造が必要である。図10に示す実施例では、2つの巻き線が隣接する中央部で線輪3と6を交差させ、巻き線の一部の位置を互いに入れ替え、入れ替えた量を調整して、2つの線輪間の浮遊容量とディファレンシャルインダクタンスを調整したコモンモードチョークコイルを作ることができる。
【0042】
隣接線輪3と6の中央部での位置の互いに入れ替えは1〜2カ所だけでなく複数箇所で行い、ツイスト状にしてもよい。
【実施例6】
【0043】
本発明の実施例6によるコモンモードチョークコイルの構成は図10に基づいている。フェライトなどの磁性体からなるコア1の両端部の鍔部にそれぞれ一対の電極4と5、および7と8を設ける。電極4と電極7にポリウレタンなどで被覆された2本のワイヤー3と6の先端を溶着などの方法で接続し、磁性体コアを回転させ、両端から分離した一対の同一巻線数の輪線を巻き、2つの巻き線が隣接する磁性体コアの略中央部で線輪3と6を交差させ、巻き線の一部の位置を互いに入れ替え、2つのワイヤーをより合わせ、電極4に接続された線輪3からのワイヤーを電極5に、電極7に接続された線輪6からのワイヤーを電極8に引き出し、溶着等で接続する。磁性体コア1の両端の鍔と鍔を磁性体のバーコア2を接着剤等で接合して磁気的に短絡し閉磁路を形成する。磁性体コアの両端の鍔と磁性体のバーコアは接着剤等で接合される。
【0044】
2つの線輪間の浮遊容量とディファレンシャルインダクタンスの調整は、2つの巻き線が隣接する中央部で線輪3と6を交差させ、巻き線の一部の位置を互いに入れ替え、入れ替えた量を調整して行える。この調整方法により、コモンモードチョークコイルの入・出力回路の伝送インピーダンスと整合(マッチング)が取れ、ディファレンシャルモードの信号は歪ませずにノイズ対策もできる。
【0045】
線輪3と6間の浮遊容量が発生する箇所は両線輪が隣接している中央の1ターンだけにほぼ限定される。3と6の線輪の間、あるいは線輪からコアを経由して3と6との線輪間に多くの電気力線が発生し、両ラインの線輪間に浮遊容量が発生する。浮遊容量が隣接している中央の1ターンだけで発生するとした場合、最終の1ターンを全部入れ替えると2つの線輪が隣接する長さが3倍になり、最大、3倍程度までの浮遊容量を増やし、調整することが可能である。
【0046】
実施例6で作製したコモンモードチョークコイルを使い、伝送速度500MHzで、浮遊容量を微調整するシミュレーションを行い、信号波形の歪を、図12(B)に示すように、改善できることを確かめた。シミュレーションは図13に示す回路で行った。比較のために、図12(A)に基本的な構造の実施例6で試作した特性を示す。この浮遊容量をマッチングの条件に近い1.5pFでシュミレーションすると、図12(B)に示すように波形ひずみが少なくなる。また、もう少し浮遊容量を大きくして3pFでシミュレーションを行うと、図12(C)に示すように信号波形が鈍った。
【0047】
本実施例のコモンモードチョークコイルでは、両ラインの間の浮遊容量が少し大きかったり、ディファレンシャル信号電流で発生するディファレンシャルインダクタンスが少し大きくても、コモンモードチョークの入・出力回路の伝送インピーダンスと整合(マッチング)をとればディファレンシャルモードの信号を歪ませずにノイズ対策ができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
デジタル機器が多くの分野で使われて、そのデジタル機器には代表的なインターフェース、USB、LAN、LVDSなど、差動信号伝送が広く活用され、差動信号伝送の高速化が進んでいる。高速化に伴い、その差動信号伝送路では電磁ノイズ対策が必要であり、その対策にコモンモードチョークコイルは欠かすことの出来ない重要な部品となっている。しかし、高速の差動信号伝送の電磁ノイズの対策では、コモンモードチョークコイルの浮遊容量が問題となり、十分対策が撮れる対策部品がない。安価で効果的な解決が望まれている。
【0049】
本発明では、伝送信号が通る線輪を直線状に配置分離することにより、浮遊容量の小さなコモンモードチョークコイルを安価に提供することができ、デジタル電子機器の高速化、デジタル機器で産業への貢献が期待できる。
【0050】
また差動信号伝送の電磁ノイズ対策では、大きなノイズ対策効果を得るにはコモンモードチョークコイルの線輪を多く巻き、大きなコモンモードインピーダンスを得ることが必要である。従来のコモンモードチョークコイルは線輪を多く巻くと浮遊容量も大きくなりディファレンシャルモードの差動伝送信号が歪み使えなくなり、大きなコモンモードインピーダンスのコモンモードチョークコイルが得られない問題があった。しかし本発明によれば、巻き線数と浮遊容量は直接関係しないので大きいコモンモードインピーダンスのコモンモードチョークコイルが実現でき、大きなノイズ対策効果を得られる。この面でも産業面へ貢献も期待できる。
【符号の説明】
【0051】
1 磁性体コア
2 閉磁路を形成するための磁性体バーコアー
3 線輪
4 電極
5 電極
6 線輪
7 電極
8 電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両方の端部にそれぞれ一対の電極が形成された磁性体からなるコアに、直線状に配列分離した一対の同一巻線数の輪線が巻線されてなり、一方の線輪は主にコアの一方側に巻線され、他方の線輪は主にコアの他方側に巻線され、一方の線輪の両端は、コアの端部に形成された任意の2つの電極に接続され、他方の輪線の両端は残りの2つの電極に接続され、一方の線輪と他方の線輪はそれぞれ、ディファレンシャル電流が流れた場合にコアの中にできる磁束が逆向きとなる方向に巻線されていることを特徴とするコモンモードチョークコイル。
【請求項2】
一方の線輪の両端はそれぞれコアの一方の端部に形成された一対の電極に接続され、他方の線輪の両端はそれぞれコアの他方の端部に形成された一対の電極に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のコモンモードチョークコイル。
【請求項3】
一方の線輪の両端はそれぞれコアの一方の端部に形成された一対の電極の1つとコアの他方の端部に形成された一対の電極の1つに接続され、他方の線輪の両端はそれぞれコアの一方の端部に形成された一対の電極の残る電極とコアの他方の端部に形成された一対の電極の残る電極に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のコモンモードチョークコイル。
【請求項4】
磁性体コアの両端が鍔状になった概ねI字形状をしていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のコモンモードチョークコイル。
【請求項5】
磁性体コアの両端の鍔と鍔を磁性体のバーコアで磁気的に短絡し閉磁路を形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のコモンモードチョークコイル。
【請求項6】
2つの分離した線輪の近接端で2つの線輪の巻き線を寄り合わしたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のコモンモードチョークコイル。
【請求項7】
磁性体コアの略中央部において分離した2つの線輪の近接する巻き線を交差させ、巻き線の一部の位置を互いに入れ替え、入れ替えた量を調整し、2つの線輪間の浮遊容量とディファレンシャルインダクタンスを調整したことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のコモンモードチョークコイル。
【請求項8】
両方の端部にそれぞれ一対の電極が形成された磁性体からなるコアに、直線状に配列分雕した一対の同一巻線数の輪線が巻線されてなり、一方の線輪は主にコアの一方側に巻線され、他方の線輪は主にコアの他方側に巻線され、一方の線輪の両端は、コアの端部に形成された任意の2つの電極に接続され、他方の輪線の両端は残りの2つの電極に接続され、一方の線輪と他方の線輪はそれぞれ、ディファレンシャル電流が流れた場合にコアの中にできる磁束が逆向きとなる方向に巻線され、磁性体コアの略中央部において2つの線輪の近接する巻き線を交差させ、巻き線の一部の位置を互いに入れ替え、入れ替えた量を調整し、コモンモードチョークコイルの2つの線輪間の浮遊容量とディファレンシャルインダクタンスを調整することによって、コモンモードチョークコイルと接続する回路とのインピーダンスをマッチングさせる調整方法。
【請求項1】
両方の端部にそれぞれ一対の電極が形成された磁性体からなるコアに、直線状に配列分離した一対の同一巻線数の輪線が巻線されてなり、一方の線輪は主にコアの一方側に巻線され、他方の線輪は主にコアの他方側に巻線され、一方の線輪の両端は、コアの端部に形成された任意の2つの電極に接続され、他方の輪線の両端は残りの2つの電極に接続され、一方の線輪と他方の線輪はそれぞれ、ディファレンシャル電流が流れた場合にコアの中にできる磁束が逆向きとなる方向に巻線されていることを特徴とするコモンモードチョークコイル。
【請求項2】
一方の線輪の両端はそれぞれコアの一方の端部に形成された一対の電極に接続され、他方の線輪の両端はそれぞれコアの他方の端部に形成された一対の電極に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のコモンモードチョークコイル。
【請求項3】
一方の線輪の両端はそれぞれコアの一方の端部に形成された一対の電極の1つとコアの他方の端部に形成された一対の電極の1つに接続され、他方の線輪の両端はそれぞれコアの一方の端部に形成された一対の電極の残る電極とコアの他方の端部に形成された一対の電極の残る電極に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のコモンモードチョークコイル。
【請求項4】
磁性体コアの両端が鍔状になった概ねI字形状をしていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のコモンモードチョークコイル。
【請求項5】
磁性体コアの両端の鍔と鍔を磁性体のバーコアで磁気的に短絡し閉磁路を形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のコモンモードチョークコイル。
【請求項6】
2つの分離した線輪の近接端で2つの線輪の巻き線を寄り合わしたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のコモンモードチョークコイル。
【請求項7】
磁性体コアの略中央部において分離した2つの線輪の近接する巻き線を交差させ、巻き線の一部の位置を互いに入れ替え、入れ替えた量を調整し、2つの線輪間の浮遊容量とディファレンシャルインダクタンスを調整したことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のコモンモードチョークコイル。
【請求項8】
両方の端部にそれぞれ一対の電極が形成された磁性体からなるコアに、直線状に配列分雕した一対の同一巻線数の輪線が巻線されてなり、一方の線輪は主にコアの一方側に巻線され、他方の線輪は主にコアの他方側に巻線され、一方の線輪の両端は、コアの端部に形成された任意の2つの電極に接続され、他方の輪線の両端は残りの2つの電極に接続され、一方の線輪と他方の線輪はそれぞれ、ディファレンシャル電流が流れた場合にコアの中にできる磁束が逆向きとなる方向に巻線され、磁性体コアの略中央部において2つの線輪の近接する巻き線を交差させ、巻き線の一部の位置を互いに入れ替え、入れ替えた量を調整し、コモンモードチョークコイルの2つの線輪間の浮遊容量とディファレンシャルインダクタンスを調整することによって、コモンモードチョークコイルと接続する回路とのインピーダンスをマッチングさせる調整方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−62477(P2013−62477A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218205(P2011−218205)
【出願日】平成23年9月10日(2011.9.10)
【出願人】(307042743)株式会社 MODAテクノロジー (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月10日(2011.9.10)
【出願人】(307042743)株式会社 MODAテクノロジー (4)
【Fターム(参考)】
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