コラーゲン結合性合成ペプチドグリカン、調製及び使用方法
本発明は、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカン、及び、コラーゲンマトリックスとコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンとを含む改変コラーゲンマトリックスに関し、ここで、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、異常型であってもよいし、コラーゲン原線維形成を調節するタンパク質又はプロテオグリカンのアミノ酸配列の一部とのアミノ酸相同性を有してもよい。本発明は、また、そのようなコラーゲン結合性合成ペプチドグリカン又は改変コラーゲンマトリックスを含む、キット、化合物、組成物、及び改変グラフト作成物、並びにそれらの調製及び使用のための方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカン、並びにその形成及び使用方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは、多くの生物学的シグナルを表し、多くの異なる組織の機械的一体性を維持する、体内で最も豊富なタンパク質である。コラーゲンの分子組織がその機能を決定し、そのことが、コラーゲン原線維形成を多くの研究分野における興味深い話題にしている。コラーゲンは、三次元基質として作用することができるゲルを形成するインビトロ自己会合の能力を有し、細胞増殖の機械的及び生物学的シグナルを提供する。追加の細胞外マトリックス成分を用いる及び用いないコラーゲン原線維形成に対する研究は、コラーゲンと他の細胞外マトリックス分子との相互作用について多くの問題を提起した。現在確認されているだけで20種類を超えるコラーゲンが存在し、I型が最も一般的である。腱、靱帯、皮膚、及び骨を含む多くの組織は、主にI型コラーゲンから構成されている。これらの構造は、それぞれ他の種類のコラーゲンのプロテオグリカン及びグリコサミノグリカン、並びに骨の場合は無機質も含有するが、主要な成分はI型コラーゲンである。これらの構造がそれぞれ示す機械的一体性における顕著な差は、主にコラーゲンの入り組んだ組織及び他の非コラーゲンI型成分との相互作用に起因する。
【0003】
デコリンは、コラーゲン原線維形成に影響を及ぼすことが知られているプロテオグリカンであり、したがって、コラーゲンゲルにおいて機械的及び生物学的情報を修飾することができる。コラーゲン組織における構造変化によりもたらされるシグナル、並びにプロテオグリカンの一部であるグリコサミノグリカン鎖に含有されている特有のシグナルは、細胞挙動を変え、所望の細胞反応を提供するようにコラーゲンマトリックスを設計する機構をもたらす。そこで、発明者たちは、コラーゲン組織に分子レベルで影響を及ぼすコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを開発した。これらのコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、例えば、グリコサミノグリカン又は多糖のようなグリカンに結合しているコラーゲン結合性ペプチドに基づいて設計されており、これらの成分によって特定の用途に適合させることができる。本明細書に記載されているコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、コラーゲンマトリックスの形態学的、機械的、及び生物学的特性に影響を及ぼし、したがって細胞挙動を変えるので、そのことがこれらの分子を組織工学用途にとって有用なものとしている。
【発明の概要】
【0004】
一つの実施態様において、コラーゲンマトリックスとコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンとを含む改変コラーゲンマトリックスが提供される。この実施態様において、1)コラーゲンは、架橋されていてもよいし、非架橋であってもよい、2)コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、タンパク質の若しくはコラーゲン原線維形成を調節するプロテオグリカンのアミノ酸配列の一部とアミノ酸相同性を有してもよいし、又は、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、異常型コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンであってもよい、3)改変コラーゲンマトリックスは、外来性の細胞集団を更に含むことができる、4)外来性細胞集団は、非角化若しくは角化上皮細胞から選択されてもよいし、又は内皮細胞、中胚葉誘導細胞、中皮細胞、滑膜細胞、神経細胞、グリア細胞、骨芽細胞、線維芽細胞、軟骨細胞、腱細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、心筋細胞、多能性前駆細胞(例えば、骨髄前駆細胞を含む幹細胞)及び骨形成原細胞からなる群より選択される細胞集団から選択されてもよい、5)改変コラーゲンマトリックスは、少なくとも1つの多糖を更に含むことができる、6)コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、式:PnGxの化合物であることができ、ここで、nは1〜10であり、xは1〜10であり、Pは、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり、そしてGはグリカン(例えば、グリコサミノグリカン又は多糖)である、7)コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、式:(PnL)xGの化合物であることができ、ここで、nは1〜5であり、xは1〜10であり、Pは、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり、Lはリンカーであり、そしてGはグリカンである、8)コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、式:P(LGn)xの化合物であることができ、ここで、nは1〜5であり、xは1〜10であり、Pは、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり、Lはリンカーであり、そしてGはグリカンである、9)合成ペプチドは、小型でロイシンリッチなプロテオグリカン又は血小板レセプター配列のアミノ酸配列とのアミノ酸相同性を有することができる、10)合成ペプチドは、血小板コラーゲンレセプター配列のアミノ酸配列とのアミノ酸相同性を有することができる、11)ペプチドは、RRANAALKAGELYKSILYGC、RLDGNEIKRGC、AHEEISTTNEGVMGC、NGVFKYRPRYFLYKHAYFYPPLKRFPVQGC、CQDSETRTFY、TKKTLRTGC、GLRSKSKKFRRPDIQYPDATDEDITSHMGC、SQNPVQPGC、SYIRIADTNITGC、SYIRIADTNIT、KELNLVYT、KELNLVYTGC、GSITTIDVPWNV、及びGSITTIDVPWNVGCからなる群より選択されるアミノ酸配列を含むことができる、12)グリカンは、アルギン酸塩、アガロース、デキストラン、コンドロイチン、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパラン、ヘパリン、ケラチン、及びヒアルロナンからなる群より選択されることができる、13)グリカンは、デルマタン硫酸、デキストラン、及びヘパリンからなる群より選択されることができる、14)コラーゲンは、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されることができる、15)グリカンは、グリコサミノグリカン又は多糖であることができる、或いは、16)本発明は、この段落に記載された特徴の任意の組み合わせを含むことができる。
【0005】
別の例示的な実施態様において、改変コラーゲンマトリックスの調製方法が提供される。本方法は、コラーゲン溶液を提供する工程、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを提供する工程、そしてコラーゲンをコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンの存在下で重合して、改変コラーゲンマトリックスを形成させる工程を含む。この実施態様は、前段落に記載された特徴のいずれかを含むことができる。また、この実施態様において、コラーゲン溶液中のコラーゲンの量は、約0.4mg/mL〜約6mg/mLであることができ、コラーゲンとコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンのモル比は、約1:1〜約40:1であることができる。
【0006】
更に別の実施態様において、式:PnGxの化合物が提供され、ここで、nは1〜10であり、xは1〜10であり、Pは、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり、そしてGはグリカンである。
【0007】
更なる実施態様において、式:(PnL)xGの化合物が提供され、ここで、nは1〜5であり、xは1〜10であり、Pは、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり、Lはリンカーであり、そしてGはグリカンである。
【0008】
更に別の例示的な実施態様において、式:P(LGn)xの化合物が提供され、ここで、nは1〜5であり、xは1〜10であり、Pは、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり、Lはリンカーであり、そしてGはグリカンである。これらの化合物実施態様のいずれかにおいて、リンカーは、式:−SCH2CH2C(O)NHN=を含むことができ、グリカンは、グリコサミノグリカン又は多糖であることができ、そして上記に記載された任意の適用可能な特徴も含まれうる。
【0009】
別の態様において、改変コラーゲンマトリックスの構造又は機械的特性を変える方法が提供される。本方法は、コラーゲン溶液を提供する工程、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを提供する工程、そしてコラーゲンをコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンの存在下で重合して、変更された改変コラーゲンマトリックスを形成させる工程を含む。上記に記載された任意の適用可能な特徴も含まれうる。
【0010】
別の実施態様において、キットが提供される。本キットは、上記に記載された改変コラーゲンマトリックスのいずれかを含むことができる。この実施態様において、改変コラーゲンマトリックスを滅菌することができ、キットは更に細胞を含むことができ、ここで細胞は、中皮細胞、滑膜細胞、前駆細胞、線維芽細胞、神経細胞、グリア細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、腱細胞、内皮細胞、及び平滑筋細胞から選択されうる。改変コラーゲンマトリックスは、上記に記載された化合物のいずれかを含むことができる。
【0011】
一つの実施態様において、血小板の活性を阻害する方法が記載されるが、本方法は、コラーゲンに接触するコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを提供する工程を含み、ここで、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンがコラーゲンに結合し、血小板の活性が阻害される。別の実施態様において、コラーゲンへの血小板の接着を阻害する方法が記載されるが、本方法は、コラーゲンに接触するコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを提供する工程を含み、ここで、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンがコラーゲンに結合し、コラーゲンへの血小板の接着が阻害される。別の実施態様において、グリカンがヒアルロナン、ヘパリン、及びデキストランからなる群より選択される上記のいずれかの方法が提供される。更に別の実施態様において、上記の方法のいずれかに使用されるコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、RRANAALKAGELYKSILYGC、GSITTIDVPWNV、及びGSITTIDVPWNVGCからなる群より選択されるペプチドを含む。
【0012】
更に別の実施態様において、グラフト作成物が提供される。グラフト作成物は、上記に記載された改変コラーゲンマトリックスのいずれかを含む。
【0013】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国仮出願第61/039,933号(2008年3月27日出願)及び米国仮出願第61/081,984号(2008年7月18日出願)の優先権を請求し、この開示は全て参照として本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】コラーゲンマトリックスの機械的及び整列特性を決定するのに重要である、隣接トロポコラーゲン鎖に近接するプロテオグリカンの間の相互作用の概略図を示す。
【図2】エタノールで脱水した後、実施例16(10:1のコラーゲン:処理剤)のように調製したゲル試料の、窒化ケイ素接触モードチップのk=0.05N/mチップよる走査速度2Hz及び偏位設定ポイント:0〜1ボルトでの接触モードによって作製された、AFM画像である。試料は、コラーゲンのみ(コラーゲン)、並びにコラーゲンとデルマタン硫酸(DS)、コラーゲンとデコリン(デコリン)、デルマタン硫酸−RRANAALKAGELYKSILYGC結合体(DS−SILY)、及びデルマタン硫酸−SYIRIADTNIT結合体(DS−SYIR)である。
【図3】CM−3プレートに結合したコラーゲンに結合しているペプチドRRANAALKAGELYKSILYGC(SILY)の、会合モード及び解離モードでの表面プラスモン共鳴走査である。SILYを、100μM〜1.5μMの異なる濃度で1×HBS−EP緩衝液に2倍の希釈で溶解した。
【図4】96ウエル高結合型プレート(透明底で黒色(Costar))において測定された、ダンシル修飾ペプチドSILYの、コラーゲンへの結合である。PBS 緩衝液のみ;BSA BSA処理ウエル;コラーゲン コラーゲン処理ウエル。蛍光読み取り値は、励起/発光波長がそれぞれ335nm/490nmのM5 Spectramax Spectrophotometer(Molecular Devices)により得た。
【図5】図4に記載された蛍光データから誘導されたコラーゲン−ダンシル修飾SILY結合曲線である。
【図6】試薬であるPDPHと、最終工程において2−ピリジチオールの放出を示す、システイン含有ペプチドと酸化グリコシルアミノグリコシドの2工程結合の化学についての概略的記載である。
【図7】PDPHに結合している酸化デルマタン硫酸の、DTT処理前、及びDTTによる処理剤(結合体から2−ピリジチオールを放出する)処理後における、343nmでの吸光度の測定である。測定値は、PDPHと酸化デルマタン硫酸の比率の決定を可能にする。測定されたΔA=0.35は、1.1のPHPH分子/DSに相当する。
【図8】96ウエル高結合型プレート(透明底で黒色(Costar))において測定された、本明細書に記載されているデルマタン硫酸に結合したダンシル修飾ペプチドSILYの、コラーゲンへの結合である。PBS 緩衝液のみ;BSA BSA処理ウエル;コラーゲン コラーゲン処理ウエル。蛍光読み取り値は、励起/発光波長がそれぞれ335nm/490nmのM5 Spectramax Spectrophotometer(Molecular Devices)により得た。
【図9】20mmのステンレススチール平行平板配置のAR-G2レオメーター(TA Instruments, New Castle, DE)によるゲル試料(4mg/mLのコラーゲン、10:1のコラーゲン:処理剤)のせん断弾性係数の測定であり、20mmのステンレススチール平行平板配置は、0.25Nの垂直力制御を使用して間隙の幅が600μmになるまで低下させた。Col 処理剤なし、すなわちコラーゲンのみ;Col+DS コラーゲン+デルマタン硫酸;Col+デコリン コラーゲン+デコリン;Col+DS−SYIR コラーゲン+デルマタン硫酸−SYIR;Col+DS−SILY コラーゲン+デルマタン硫酸−SILY結合体;Col+SILY コラーゲン+SILYペプチド;Col+SYIR コラーゲン+SYIRIADTNIT(SYIR)ペプチド。
【図10】20mmのステンレススチール平行平板配置のAR-G2レオメーター(TA Instruments, New Castle, DE)によるゲル試料(4mg/mLのコラーゲン、5:1のコラーゲン:処理剤)のせん断弾性係数の測定であり、20mmのステンレススチール平行平板配置は、0.25Nの垂直力制御を使用して間隙の幅が600μmになるまで低下させた。Col 処理剤なし、すなわちコラーゲンのみ;Col+DS コラーゲン+デルマタン硫酸;Col+デコリン コラーゲン+デコリン;Col+DS−SYIR コラーゲン+デルマタン硫酸−SYIR;Col+DS−SILY コラーゲン+デルマタン硫酸−SILY結合体;Col+SILY コラーゲン+SILYペプチド;Col+SYIR コラーゲン+SYIRペプチド。
【図11】20mmのステンレススチール平行平板配置のAR-G2レオメーター(TA Instruments, New Castle, DE)によるゲル試料(4mg/mLのコラーゲン、30:1のコラーゲン:処理剤)のせん断弾性係数の測定であり、20mmのステンレススチール平行平板配置は、0.25Nの垂直力制御を使用して間隙の幅が600μmになるまで低下させた。Col 処理剤なし、すなわちコラーゲンのみ;Col+DS コラーゲン+デルマタン硫酸;Col+デコリン コラーゲン+デコリン;Col+DS−SYIR コラーゲン+デルマタン硫酸−SYIR結合体;Col+DS−SILY コラーゲン+デルマタン硫酸−SILY結合体;Col+SILY コラーゲン+SILYペプチド;Col+SYIR コラーゲン+SYIRペプチド。
【図12】20mmのステンレススチール平行平板配置のAR-G2レオメーター(TA Instruments, New Castle, DE)によるゲル試料(1.5mg/mLのコラーゲンIII、5:1のコラーゲン:処理剤)のせん断弾性係数の測定であり、20mmのステンレススチール平行平板配置は、0.25Nの垂直力制御を使用して間隙の幅が500μmになるまで低下させた。◆−処理剤なし、すなわちコラーゲンIIIのみ;■−コラーゲン+デルマタン硫酸(1:1);+−コラーゲン+デルマタン硫酸(5:1);×−コラーゲン+デルマタン硫酸−KELNLVYTGC(DS−KELN)結合体(1:1);▲−コラーゲン+デルマタン硫酸−KELN結合体(5:1);●−コラーゲン+KELNLVYTGC(KELN)ペプチド。
【図13】20mmのステンレススチール平行平板配置のAR-G2レオメーター(TA Instruments, New Castle, DE)によるゲル試料(1.5mg/mLのコラーゲンIII、5:1のコラーゲン:処理剤)のせん断弾性係数の測定であり、20mmのステンレススチール平行平板配置は、0.25Nの垂直力制御を使用して間隙の幅が500μmになるまで低下させた。◆−処理剤なし、すなわちコラーゲンIIIのみ;■−コラーゲン+デルマタン硫酸(1:1);+−コラーゲン+デルマタン硫酸(5:1);×−コラーゲン+デルマタン硫酸−GSIT(DS−GSIT)結合体(1:1);▲−コラーゲン+デルマタン硫酸−GSIT結合体(5:1);●−コラーゲン+GSITTIDVPWNVGC(GSIT)ペプチド。
【図14】混濁度測定である。ゲル溶液は、実施例16に記載されているとおり(特に指示のない限り、コラーゲン4mg/mL及びコラーゲン対処理剤10:1)に調製し、50μL/ウエルを4℃で384ウエルプレートに加えた。プレートを、原線維形成を開始する前に、4℃で4時間保持した。37℃でSpectraMax M5を使用して、313nmにより30秒間隔で6時間吸光度を測定した。Col 処理剤なし、すなわちコラーゲンのみ;DS コラーゲン+デルマタン硫酸;デコリン コラーゲン+デコリン;DS−SILY コラーゲン+デルマタン硫酸−SILY結合体;DS−SYIR コラーゲン+デルマタン硫酸−SYIR結合体。
【図15】混濁度測定である。ゲル溶液は、実施例16に記載されているとおり(特に指示のない限り、コラーゲン4mg/mL及びコラーゲン対処理剤10:1)に調製し、50μL/ウエルを4℃で384ウエルプレートに加えた。プレートを、原線維形成を開始する前に、4℃で4時間保持した。37℃でSpectraMax M5を使用して、313nmにより30秒間隔で6時間吸光度を測定した。Col 処理剤なし、すなわちコラーゲンのみ;DS コラーゲン+デルマタン硫酸;デコリン コラーゲン+デコリン;DS−SILY コラーゲン+デルマタン硫酸−SILY結合体。
【図16】混濁度測定である。ゲル溶液は、実施例16に記載されているとおり(特に指示のない限り、コラーゲン4mg/mL及びコラーゲン対処理剤1:1)に調製し、50μL/ウエルを4℃で384ウエルプレートに加えた。プレートを、原線維形成を開始する前に、4℃で4時間保持した。37℃でSpectraMax M5を使用して、313nmにより30秒間隔で6時間吸光度を測定した。Col 処理剤なし、すなわちコラーゲンのみ;DS コラーゲン+デルマタン硫酸10:1;SILY コラーゲン+SILYペプチド;SYIR コラーゲン+SYIRペプチド。
【図17】図14において表されたデータから測定した原線維形成の半減期である。Col 処理剤なし、すなわちコラーゲンのみ;DS コラーゲン+デルマタン硫酸;デコリン コラーゲン+デコリン;DS−SILY コラーゲン+デルマタン硫酸−SILY結合体;DS−SYIR コラーゲン+デルマタン硫酸−SYIR結合体。
【図18】60×で1.4NAの水浸レンズを使用するOlympus FV1000共焦点顕微鏡により記録された、実施例16に従って調製(4mg/mLのコラーゲン;10:1のコラーゲン:処理剤)したゲルの、共焦点反射顕微鏡画像である。試料を、488nmのレーザー光線で照らし、反射光を、青色反射フィルターを使用する光電子増倍管で検出した。それぞれのゲルをゲルの底から100μMで画像化し、代表的な試料採取を確実にするため3つの異なる場所を画像化した。コラーゲン 処理剤なし、すなわちコラーゲンのみ;Col+DS コラーゲン+デルマタン硫酸;Col+デコリン コラーゲン+デコリン;Col+DS−SILY コラーゲン+デルマタン硫酸−SILY結合体;Col+DS−SYIR コラーゲン+デルマタン硫酸−SYIR結合体。
【図19】ゲル構造の5000倍のクライオ走査電子顕微鏡画像である。クライオSEM用のゲルを、実施例16のとおりに(4mg/mLのコラーゲン;10:1のコラーゲン:処理剤)、SEM載物台の上に直接形成し、37℃で一晩インキュベートした。各試料を昇華条件下で20分間蒸発させた。試料を白金スパッター被覆により120分間被覆した。試料を−130℃でクライオ載物台に移し、同様の配向の各領域を、処理剤同士を比較するために画像化した。コラーゲン 処理剤なし、すなわちコラーゲンのみ;Col+DS コラーゲン+デルマタン硫酸;Col+デコリン コラーゲン+デコリン;Col+DS−SILY コラーゲン+デルマタン硫酸−SILY結合体;Col+DS−SYIR コラーゲン+デルマタン硫酸−SYIR結合体。
【図20】ゲル構造の5000倍のクライオ走査電子顕微鏡画像である。クライオSEM用のゲルを、実施例22に記載されているとおりに(1mg/mLのコラーゲン(III型);1:1のコラーゲン:処理剤)、SEM載物台の上に直接形成した。同様の配向の各領域を、処理剤同士を比較するために画像化した。パネルa、コラーゲン、処理剤なし、すなわちコラーゲンのみ;パネルb、コラーゲン+デルマタン硫酸;パネルc、コラーゲン+デルマタン硫酸−KELN結合体;パネルd、コラーゲン+デルマタン硫酸−GSIT結合体。
【図21】図20において示されたクライオSEM画像から測定された平均空間率である。a)コラーゲン、処理剤なし、すなわちコラーゲンのみ;b)コラーゲン+デルマタン硫酸;c)コラーゲン+デルマタン硫酸−KELN結合体;d)コラーゲン+デルマタン硫酸−GSIT結合体。全ての差はp=0.05で有意である。
【図22】図19において示されたクライオSEM画像から測定された平均原線維直径である。コラーゲン 処理剤なし、すなわちコラーゲンのみ;Col+DS コラーゲン+デルマタン硫酸;Col+デコリン コラーゲン+デコリン;Col+DS−SILY コラーゲン+デルマタン硫酸−SILY結合体;Col+DS−SYIR コラーゲン+デルマタン硫酸−SYIR結合体。
【図23】図19において示されたクライオSEM画像から測定されたコラーゲンシート間の平均間隔である。コラーゲン 処理剤なし、すなわちコラーゲンのみ;Col+DS コラーゲン+デルマタン硫酸;Col+デコリン コラーゲン+デコリン;Col+DS−SILY コラーゲン+デルマタン硫酸−SILY結合体;Col+DS−SYIR コラーゲン+デルマタン硫酸−SYIR結合体。
【図24】PDPHに結合した酸化ヘパリンの処理前、及びSILYによる処理(結合体から2−ピリジルチオールを放出し、酸化へパリンに結合したSILYペプチドの比率の決定を可能にする)の後の、343nmでの吸光度の測定である。測定されたΔAは、5.44のSILY分子/酸化ヘパリンに相当する。
【図25】コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンにより調製されたコラーゲンゲルにおける、ヒト冠動脈平滑筋細胞増殖の測定である。コラーゲン 処理剤なし、すなわちコラーゲンのみ;DS コラーゲン+デルマタン硫酸;DS−SILY コラーゲン+デルマタン硫酸−SILY結合体;DS−SYIR コラーゲン+デルマタン硫酸−SYIR結合体;SILY コラーゲン+SILYペプチド;及びSYIR コラーゲン+SYIRペプチド。
【図26】DS−SILY結合の特徴決定である。2時間後、最終ΔA343nmは、各DS分子1個に添加されたSILY分子の1.06個に相当した。注:t=0は、DS−PDPHへのSILYの添加と343nmでの溶液の測定との間の僅かな遅れのために、近似的なゼロ時点である。
【図27】Dc13のDSへの結合である。343nmでの吸光度の増加により測定されたピリジン−2−チオンの生成は、DSポリマー鎖あたり0.99個のDc13ペプチドを示す。
【図28】コラーゲンへのDS−ZDc13のマイクロプレート蛍光結合である。DS−ZDc13は、用量依存的にコラーゲン表面に特異的に結合した。
【図29】混濁度測定によるコラーゲン原線維形成である。DS−Dc13は、原線維形成を遅延し、全体的な吸光度を用量依存的に減少する。対照的に、遊離Dc13ペプチドは、コラーゲン:添加剤が1:1の高いモル比でのコラーゲンのみと比較したとき、原線維形成にほとんど影響を与えないように見受けられる。
【図30】クライオSEMによる平均原線維直径である。A.デコリン及び合成ペプチドグリカンは、コラーゲン又はコラーゲン+DSよりも原線維直径を有意に減少する。B.コラーゲンのみと比較すると、遊離ペプチドDc13は、原線維直径に影響を与えないが、SILYは、原線維直径の減少をもたらす。
【図31】ゲルの圧縮である。A.及びB.それぞれ3及び5日目:デコリン及びペプチドグリカンはコラーゲン及びDSと比べると有意であり、*は、DS−Dc13を示し、DSは、3日目には有意ではない。棒線は有意ではないことを示す。C.7日目:+デコリンは、全ての試料に対して有意であり、#DSは、コラーゲンと比較すると有意である。D.10日目:++コラーゲン及びDSは有意であり、‡DS−Dc13は、デコリン及びコラーゲンと比較すると有意である。
【図32】ファスチンアッセイによるエラスチン評価。A.DS−SILYは、全ての試料においてエラスチン生成を有意に増加させた。DS及びDS−Dc13は、コラーゲンよりもエラスチン生成を有意に低減させた。細胞のない対照試料のコラーゲンゲルは、エラスチン生成を示さなかった。B.遊離ペプチドは、コラーゲンと比較するとエラスチン生成に僅かな減少をもたらしたが、どの点においても有意ではなかった。
【図33】多血小板血漿のインキュベートされたスライドのSEM画像である。ヘパリン−SILY処理における矢印は、この処理に特有の原線維様構造を示す。尺度目盛り=100μm。
【図34】クライオSEMによる原線維密度である。原線維密度は、原線維含有領域と空間の比として定義される。DS−SILY及び遊離SILYペプチドは、有意に大きな原線維密度を有した一方、コラーゲンは有意に低い原線維密度を有した。DS−Dc13はコラーゲンと比較すると有意ではなかった。
【図35】コラーゲンゲルの貯蔵弾性係数(G′)である。A.5:1、B.10:1及びC.30:1のコラーゲン:添加剤のモル比で、それぞれの添加剤により形成されたコラーゲンゲルのレオロジー機械試験。1.0Paの制御圧力による0.1Hz〜1.0Hzの周波数掃引で実施した。G′の平均±標準誤差を表す。
【図36】細胞増殖及び細胞毒性アッセイである。A.CyQuant、B.生存及びC.死亡アッセイにおける全ての添加剤において有意な差は見られなかった。
【図37】原線維密度のクライオSEM画像である。コラーゲンゲルを、コラーゲン:添加剤のモル比が10:1の各添加剤の存在下で形成した。A.DS、デコリン又はペプチドグリカン。B.遊離ペプチド。画像を1,000×で撮り、尺度目盛りは5μmである。
【図38】コラーゲンゲルのAFM画像である。コラーゲンゲルを、コラーゲン:添加剤のモル比が10:1の各添加剤の存在下で形成した。Dバンド形成は、全ての添加剤において観察される。画像は1μm2である。
【図39】血小板活性化の阻害である。活性化因子である血小板第4因子(PF−4)及びβ−トロンボグロブリン(Nap−2)の放出を決定することにより測定される。96ウエルプレートの表面に固定されたコラーゲンを、それぞれの処理剤と共にプレインキュベートし、続いて多血小板血漿(PRP)と共にインキュベートした。値を、対照処理剤(リン酸緩衝食塩水、PBS)により放出された活性化因子の量と比較した、処理剤により放出された活性化因子の率として報告する。*は、未処理(リン酸緩衝食塩水、PBS)のコラーゲン表面に対して差が有意であることを示す。Dex デキストラン;Dex−SilY9 デキストラン−(SILY)9結合体;Hep ヘパリン;Hep−SILY ヘパリン−SILY結合体;HA ヒアルロナン;HA−SILY ヒアルロナン−SILY結合体;SILY SILYペプチド。溶解度の限界のために、Hep、Hep−SILY、HA、及びHA−SILYは25μMでインキュベートした。他の全ての処理剤は50μMであった(処理剤を除去した後、プレートを、PRPの添加の前にPBSで<1分間洗浄した)。Hep及びHA(ヒアルロン酸)結合体は、多糖1つあたりおよそ4つのペプチドを含有した。
【図40】血小板活性化の阻害である。活性化因子である血小板第4因子(PF−4)及びβ−トロンボグロブリン(Nap−2)の放出を決定することにより測定される。96ウエルプレートの表面に固定されたコラーゲンを、それぞれの処理剤と共にプレインキュベートし、続いて多血小板血漿(PRP)と共にインキュベートした。値を、対照処理剤(リン酸緩衝食塩水、PBS)により放出された活性化因子の量と比較した、処理剤により放出された活性化因子の率として報告する。Dex デキストラン;Dex−SILY6 デキストラン−(SILY)6結合体;Hep ヘパリン;Hep−GSIT ヘパリン−GSIT結合体、GSIT GSITペプチド、SILY SILYペプチド。全ての処理剤で測定した値は、PBSに対して有意である。Dex、SILY及びDex−SILY6は、25μMであり、他の全ての処理剤は50μMである。**は、Hep−GSIT処理の値が、Hep処理の値に対して有意であり、同様に、Dex−SILY6処理の値が、PF4のDex処理の値に対して有意であったことを示す。(処理剤を除去した後、プレートを20分間すすいだ)。Hep結合体は、多糖1つあたりおよそ4つのペプチドを含有した。
【図41】比色アッセイによるコラーゲンへの血小板結合の阻害である。96ウエルプレートの表面に固定されたコラーゲンを、それぞれの処理剤と共にプレインキュベートし、続いて多血小板血漿(PRP)と共にインキュベートした。記載されたように調製したマイクロプレートアッセイを、以下の各処理剤と共にプレインキュベートした:コラーゲン PBSのみ;デキストラン;Dex−SIL6 デキストラン−(SILY)6;SILY SILYペプチド。*コラーゲン(処理剤なし)に対して有意。
【図42】接着した血小板の蛍光画像である。接着血小板を、0.1%トリトンX−100を浸透させた4%パラホルムアルデヒドで固定し、血小板のアクチンをファロイジン−AlexaFluor 488で標識した。接着血小板を、DAPIフィルターを使用する直立型蛍光顕微鏡を使用して画像化した。処理剤なし、すなわちPBSで処理したコラーゲン。
【図43】接着した血小板の蛍光画像である。接着血小板を、0.1%トリトンX−100を浸透させた4%パラホルムアルデヒドで固定し、血小板のアクチンをファロイジン−AlexaFluor 488で標識した。接着血小板を、DAPIフィルターを使用する直立型蛍光顕微鏡を使用して画像化した。処理剤:デキストラン。
【図44】接着した血小板の蛍光画像である。接着血小板を、0.1%トリトンX−100を浸透させた4%パラホルムアルデヒドで固定し、血小板のアクチンをファロイジン−AlexaFluor 488で標識した。接着血小板を、DAPIフィルターを使用する直立型蛍光顕微鏡を使用して画像化した。処理剤:デキストラン−SILY9結合体。
【図45】接着した血小板の蛍光画像である。接着血小板を、0.1%トリトンX−100を浸透させた4%パラホルムアルデヒドで固定し、血小板のアクチンをファロイジン−AlexaFluor 488で標識した。接着血小板を、DAPIフィルターを使用する直立型蛍光顕微鏡を使用して画像化した。処理剤なし、すなわちPBSで処理したコラーゲン。
【図46】接着した血小板の蛍光画像である。接着血小板を、0.1%トリトンX−100を浸透させた4%パラホルムアルデヒドで固定し、血小板のアクチンをファロイジン−AlexaFluor 488で標識した。接着血小板を、DAPIフィルターを使用する直立型蛍光顕微鏡を使用して画像化した。処理剤:ヒアルロナン。
【図47】接着した血小板の蛍光画像である。接着血小板を、0.1%トリトンX−100を浸透させた4%パラホルムアルデヒドで固定し、血小板のアクチンをファロイジン−AlexaFluor 488で標識した。接着血小板を、DAPIフィルターを使用する直立型蛍光顕微鏡を使用して画像化した。処理剤:ヒアルロナン−SILY結合体。
【図48】接着した血小板の蛍光画像である。接着血小板を、0.1%トリトンX−100を浸透させた4%パラホルムアルデヒドで固定し、血小板のアクチンをファロイジン−AlexaFluor 488で標識した。接着血小板を、DAPIフィルターを使用する直立型蛍光顕微鏡を使用して画像化した。処理剤なし、すなわちPBSで処理したコラーゲン。
【図49】接着した血小板の蛍光画像である。接着血小板を、0.1%トリトンX−100を浸透させた4%パラホルムアルデヒドで固定し、血小板のアクチンをファロイジン−AlexaFluor 488で標識した。接着血小板を、DAPIフィルターを使用する直立型蛍光顕微鏡を使用して画像化した。処理剤:ヘパリン。
【図50】接着した血小板の蛍光画像である。接着血小板を、0.1%トリトンX−100を浸透させた4%パラホルムアルデヒドで固定し、血小板のアクチンをファロイジン−AlexaFluor 488で標識した。接着血小板を、DAPIフィルターを使用する直立型蛍光顕微鏡を使用して画像化した。処理剤:ヘパリン−SILY結合体。
【図51】接着した血小板の蛍光画像である。接着血小板を、0.1%トリトンX−100を浸透させた4%パラホルムアルデヒドで固定し、血小板のアクチンをファロイジン−AlexaFluor 488で標識した。接着血小板を、DAPIフィルターを使用する直立型蛍光顕微鏡を使用して画像化した。処理剤なし、すなわちPBSで処理したコラーゲン。
【図52】接着した血小板の蛍光画像である。接着血小板を、0.1%トリトンX−100を浸透させた4%パラホルムアルデヒドで固定し、血小板のアクチンをファロイジン−AlexaFluor 488で標識した。接着血小板を、DAPIフィルターを使用する直立型蛍光顕微鏡を使用して画像化した。処理剤:SILYペプチド。
【図53】ヒドロキシプロリンにより決定されるコラーゲン分解である。処理剤:Ctrl 添加された細胞なし;Col 処理剤の添加なしのコラーゲン;DS デルマタン硫酸;デコリン;DS−SILY デルマタン硫酸−SILY結合体;DS−Dc13 デルマタン硫酸−Dc13結合体;SILY SILYペプチド;Dc13 Dc13ペプチド。
【図54】血小板活性化の阻害である。活性化因子である血小板第4因子(PF−4)及びβ−トロンボグロブリン(Nap−2)の放出を決定することにより測定される。96ウエルプレートの表面のI及びIII型コラーゲンゲルを、各処理剤と共にプレインキュベートし、続いてPRPと共にインキュベートした。血小板活性化は、活性化因子PF−4及びNap−2の放出により測定した。処理剤:PBS 緩衝液のみ;Dex デキストラン;Dex−SILY デキストラン−SILY結合体;Dex−GSIT デキストラン−GSIT結合体;Dex−KELN デキストラン−KELN結合体;Dex−Dc13 デキストラン−Dc13結合体;SILY SILYペプチド;GSIT GSITペプチド;KELN KELNペプチド;Dc13 Dc13ペプチド;Dex−SILY+Dex−GSIT;デキストラン−SILY結合体とデキストラン−GSIT結合体の組み合わせ;SILY+GSIT;SILYペプチドとGSITペプチドの組み合わせ。*は、結果が処理剤なし(PBS)のコラーゲン表面に対して有意であることを示す。**は、結果がDexによるコラーゲン表面に対しても有意であることを示す。***は、結果が対応するペプチド対照によるコラーゲン表面に対しても有意であることを示す。全てのペプチドグリカンは、処理剤なし(PBS)又はデキストラン処理剤と比較して、NAP−2放出に有意な低下を引き起こし、同時に、Dex−GSITも、ペプチド対照(GSIT)よりも放出を減少した。Dex−GSIT及びDex−KELNは、処理剤なし(PBS)及びデキストラン処理剤に対してPF−4放出を有意に減少し、同時に、Dex−Dc13は、処理剤なし(PBS)よりもPF−4放出を有意に減少した。
【図55】比色アッセイによるコラーゲンへの血小板結合(接着)の阻害である。処理剤:PBS 緩衝液のみ;Dex デキストラン;Dex−SILY デキストラン−SILY結合体;Dex−GSIT デキストラン−GSIT結合体;Dex−KELN デキストラン−KELN結合体;Dex−Dc13 デキストラン−Dc13結合体;SILY SILYペプチド;GSIT GSITペプチド;KELN KELNペプチド;Dc13 Dc13ペプチド;Dex−SILY+Dex−GSIT;デキストラン−SILY結合体とデキストラン−GSIT結合体の組み合わせ;SILY+GSIT;SILYペプチドとGSITペプチドの組み合わせ。*処理剤なし(PBS)のコラーゲン表面に対して有意。**Dexによるコラーゲン表面に対しても有意。***対応するペプチド対照によるコラーゲン表面に対しても有意。Dex−SILY及びDex−KELNは、処理剤なし(PBS)又はデキストラン処理剤と比較して血小板接着を有意に減少し、同時に、Dex−GSITも、ペプチド対照処理剤(GSIT)よりも血小板接着を減少した。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明において使用されるとき、「コラーゲン結合性合成ペプチドグリカン」は、グリカンと合成ペプチドとのコラーゲン結合性の結合体を意味する。「コラーゲン結合性合成ペプチドグリカン」は、通常はコラーゲン原線維形成に関与しないタンパク質又はプロテオグリカンの一部とのアミノ酸相同性を有することができる。これらのコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを、本明細書において「異常型コラーゲン結合性合成ペプチドグリカン」と呼ぶ。異常型コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、コラーゲン原線維形成に影響を与える場合も、与えない場合もある。他のコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、通常はコラーゲン原線維形成に関与するタンパク質又はプロテオグリカンの一部とのアミノ酸相同性を有することができる。これらのコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを、本明細書において「原線維発生型コラーゲン結合性合成ペプチドグリカン」と呼ぶ。
【0016】
本明細書で使用されるとき、「改変コラーゲンマトリックス」は、コラーゲンが、所定の条件下で、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンと組み合わされてインビトロで重合される、コラーゲンマトリックスを意味し、ここで条件は、変わりうるものであって、pH、リン酸濃度、温度、緩衝液組成、イオン強度、並びにコラーゲンの組成及び濃度からなる群より選択されるが、これらに限定されない。
【0017】
本明細書で使用されるとき、「改変グラフト作成物」は、「改変コラーゲンマトリックス」を含むグラフト作成物を意味する。
【0018】
本発明の一つの態様において、改変コラーゲンマトリックスが提供される。改変コラーゲンマトリックスは、コラーゲン及びコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを含む。一つの実施態様において、改変コラーゲンマトリックは非架橋であることができる。別の実施態様において、マトリックスは架橋されていることができる。多様な例示的な実施態様において、カルボジイミド、アルデヒド、リシル−オキシダーゼ、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、イミドエステル、ヒドラジド、及びマレイミドのような架橋剤、並びにゲニピンなどを含む多様な天然の架橋剤を、溶液中のコラーゲンの重合の前に、その間に、又はその後に、添加することができる。
【0019】
多様な例示的な実施態様において、改変コラーゲンマトリックスを調製するために本明細書において使用されるコラーゲンは、I〜XXVIII型のコラーゲンを含む任意の種類のコラーゲンであることができ、単独で又は組み合わせを、例えば、I、II、III及び/若しくはIVを使用することができる。一つの実施態様において、改変コラーゲンマトリックスは、市販のコラーゲン(例えば、Sigma, St. Louis, MO)を使用して形成される。代替的な実施態様において、コラーゲンを、腸、膀胱又は胃の組織のような粘膜下組織物質から精製することができる。更なる実施態様において、コラーゲンを尾腱から精製することができる。追加的な実施態様において、コラーゲンを皮膚から精製することができる。多様な態様において、コラーゲンは、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンに加えて、フィブロネクチン、又は皮膚タンパク質、糖タンパク質、及び多糖類などのような、内在性又は外来的に加えられた非コラーゲン性タンパク質も含有することができる。本明細書に記載されている方法により調製される改変グラフト作成物又は改変コラーゲンマトリックスは、移植又は注射部位で関連する組織の特徴的形質をとることができる、移植部位の内在組織の再増殖(例えば、生物学的再構築)のための作成物として機能することができる。
【0020】
多様な例示的な態様において、本発明の改変グラフト作成物又は改変コラーゲンマトリックスを形成するのに使用されるコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドを含む。幾つかの実施態様において、これらのペプチドは、小型でロイシンリッチなプロテオグリカン又は血小板レセプター配列のアミノ酸配列に対する相同性を有する。多様な実施態様において、合成ペプチドは、RRANAALKAGELYKSILYGC、RLDGNEIKRGC、AHEEISTTNEGVMGC、NGVFKYRPRYFLYKHAYFYPPLKRFPVQGC、CQDSETRTFY、TKKTLRTGC、GLRSKSKKFRRPDIQYPDATDEDITSHMGC、SQNPVQPGC、SYIRIADTNITGC、SYIRIADTNIT、KELNLVYT、KELNLVYTGC、GSITTIDVPWNV、及びGSITTIDVPWNVGC、からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、合成ペプチドは、RRANAALKAGELYKSILYGC、RLDGNEIKRGC、AHEEISTTNEGVMGC、NGVFKYRPRYFLYKHAYFYPPLKRFPVQGC、CQDSETRTFY、TKKTLRTGC、GLRSKSKKFRRPDIQYPDATDEDITSHMGC、SQNPVQPGC、SYIRIADTNITGC、SYIRIADTNIT、KELNLVYT、KELNLVYTGC、GSITTIDVPWNV、GSITTIDVPWNVGC、及びこれらの14個のアミノ酸配列のいずれかと、80%、85%、90%、95%又は98%の相同性を有するアミノ酸配列、からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むことができる、又はこれらのいずれかであることができる。合成ペプチドは、コラーゲン結合活性を有し、且つ、フォンウィルブランド因子のコラーゲン結合ドメインと、又は、Chiang, et al.. J. Biol. Chem. 277: 34896-34901 (2002), Huizinga, et al., Structure 5: 1147-1156 (1997), Romijn, et al., J. Biol. Chem. 278: 15035-15039 (2003)及びChiang, et al., Cardio. & Haemato. Disorders-Drug Targets 7: 71-75 (2007)(それぞれ参照として本明細書に組み込まれる)に記載されている血小板コラーゲンレセプターのコラーゲン結合ドメインと、80%、85%、90%、95%、98%又は100%の相同性があるペプチドから選択される、5〜40個のアミノ酸の任意のペプチドであることもできる。
【0021】
合成ペプチドに結合しているグリカン(例えば、グリコサミノグリカン、略語GAG又は多糖)は、アルギン酸塩、アガロース、デキストラン、コンドロイチン、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパラン、ヘパリン、ケラチン、及びヒアルロナンからなる群より選択されうる。一つの実施態様において、グリカンは、デルマタン硫酸、デキストラン、及びヘパリンからなる群より選択される。
【0022】
一つの例示的な態様において、改変コラーゲンマトリックス又は改変グラフト作成物は、滅菌されていることができる。本明細書で使用されるとき、「滅菌」又は「滅菌する」又は「滅菌される」は、内毒素、核酸汚染物質、及び感染病原体が含まれるが、これらに限定されない不要な汚染物質を除去することによって、マトリックス又はグラフト作成物を殺菌することを意味する。
【0023】
多様な例示的な実施態様において、改変コラーゲンマトリックス又は改変グラフト作成物は、グルタルアルデヒドタンニング、酸性pHでのホルムアルデヒドタンニング、プロピレンオキシド又はエチレンオキシド処理、ガスプラズマ滅菌、ガンマ放射線、電子ビーム及び/又は過酢酸のような過酸による滅菌を含む、従来の滅菌技術を使用して、殺菌及び/又は滅菌することができる。マトリックス又は作成物の構造及びバイオトロピック(biotropic)特性に有害な影響を与えないような滅菌技術を使用することができる。例示的な滅菌技術は、改変グラフト作成物又は改変コラーゲンマトリックスを、過酢酸、1〜4Mラドのガンマ照射(又は1〜2.5Mラドのガンマ照射)、エチレンオキシド処理又はガスプラズマ滅菌に暴露することである。一つの実施態様において、改変グラフト作成物を、1つ以上の滅菌方法に付すことができる。例示的な実施態様において、溶液中のコラーゲンを滅菌又は殺菌することもできる。改変コラーゲンマトリックス又は改変グラフト作成物をプラスチックラップ又はホイルラップを含む任意の種類の容器で包むことができ、更に滅菌することができる。
【0024】
これらの実施態様のいずれかにおいて、改変グラフト作成物又は改変コラーゲンマトリックスは、追加の細胞集団を更に含むことができる。追加の細胞集団は、1つ以上の細胞集団を含むことができる。多様な実施態様において、細胞集団は、非角化若しくは角化上皮細胞の集団又は内皮細胞、中胚葉誘導細胞、中皮細胞、滑膜細胞、神経細胞、グリア細胞、骨芽細胞、線維芽細胞、軟骨細胞、腱細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、心筋細胞、多能性前駆細胞(例えば、骨髄前駆細胞を含む幹細胞)及び骨形成原細胞からなる群より選択される細胞集団を含む。多様な実施態様において、改変グラフト作成物又は改変コラーゲンマトリックスに、1種類以上の細胞の組み合わせを接種することができる。
【0025】
多様な態様において、本発明の改変コラーゲンマトリックス又は改変グラフト作成物を、ミネラル、アミノ酸、糖、ペプチド、タンパク質、ビタミン(例えば、アスコルビン酸)を含む栄養素、又はラミニン、フィブロネクチン、ヒアルロン酸、フィブリン、エラスチン若しくはアグレカン、又は上皮増殖因子、血小板誘導増殖因子、形質転換増殖因子ベータ若しくは線維芽細胞増殖因子のような増殖因子、及びデキサメタゾンのようなグルココルチコイド、又はイオン性及び非イオン性の水溶性ポリマーのような粘弾性変更剤;アクリル酸ポリマー;ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー及びポリビニルアルコールのような親水性ポリマー;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びエーテル化セルロースのようなセルロースポリマー、及びセルロースポリマー誘導体;ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、乳酸とグリコール酸のコポリマー、又は天然と合成の両方の他の高分子作用物質、と組み合わせることができる。他の例示的な実施態様において、カルボジイミド、アルデヒド、リシル−オキシダーゼ、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、イミドエステル、ヒドラジド、及びマレイミドのような架橋剤、並びにゲニピンなどを含む天然の架橋剤を、細胞の添加の前に、それと同時に、又はその後に、添加することができる。
【0026】
上記において考察したように、一つの実施態様によると、細胞を、コラーゲン重合の前又はコラーゲン重合の間に、改変コラーゲンマトリックス又は改変グラフト作成物に加えることができる。細胞を含む改変コラーゲンマトリックスを、改変グラフト作成物として使用するために、後に宿主に注射又は移植することができる。別の実施態様において、改変コラーゲンマトリックス上の又はその内の細胞を、所定の時間の長さで、インビトロにおいて培養して、宿主への移植又は注射の前に、細胞数を増加させる又は所望の再構築を誘導させることができる。
【0027】
一つの実施態様によると、改変コラーゲンマトリックス又は改変グラフト作成物を含むキットが提供される。キットそれ自体は、任意の種類の容器内にあることができ、キットは、キットの構成要素の使用説明書を含有することができる。一つの実施態様において、細胞は、キットの構成要素の1つを構成することができる。多様な実施態様において、改変コラーゲンマトリックスの特性は異なっていてよい。多様な例示的な実施態様において、キットにおける改変コラーゲンマトリックス又は改変グラフト作成物は、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンに加えて、非コラーゲンタンパク質及び多糖類を含む多様な他の構成要素も含むことができる。一つの実施態様において、キットは、例えば改変コラーゲンマトリックス又は改変グラフト作成物を含有する、器、バイアル、容器、バッグ又はラップを含む。別の実施態様において、キットは、別々の器(例えば、バイアル、容器、バッグ又はラップ)を含み、それぞれ1つ以上の以下の構成要素を含有する:コラーゲン溶液又は凍結乾燥コラーゲン、及び1種類以上のコラーゲン結合性合成ペプチドグリカン。別の実施態様において、キットは、別々の器を含み、それぞれ以下の構成要素を含有する:コラーゲン溶液又は凍結乾燥コラーゲン、緩衝液、及び1種類以上のコラーゲン結合性合成ペプチドグリカン。これらの実施態様のいずれかにおいて、キットは、緩衝液、滅菌若しくは殺菌剤、非コラーゲンタンパク質又は多糖類、及び/或いは、キット試薬の使用方法を記載する又は改変コラーゲンマトリックス若しくは改変グラフト作成物の使用方法を記載する指示資料、を更に含むことができる。キットは、改変コラーゲンマトリックス又は改変グラフト作成物の不在下で薬理学的作用物質として使用される、1種類以上のコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンも含有することができる。この実施態様において、キットは、任意の種類の容器内にあることができ、キットは、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンの使用説明書を含有することができる。
【0028】
更に別の実施態様において、キットは、非角化若しくは角化上皮細胞の集団、又は、内皮細胞、中胚葉誘導細胞、中皮細胞、滑膜細胞、神経細胞、グリア細胞、骨芽細胞、線維芽細胞、軟骨細胞、腱細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、心筋細胞、多能性前駆細胞(例えば、骨髄前駆細胞を含む幹細胞)及び骨形成原細胞からなる群より選択される細胞集団が含まれるが、これらに限定されない細胞の容器(例えば、例としてフラスコ、アンプル、バイアル、チューブ又はボトル)を更に含む。別の実施態様において、細胞はプレート上に存在することができる。一つの実施態様において、細胞の容器を1つ以上含むことができ、キットは、1種類以上の細胞及び細胞培養試薬を含むことができる。
【0029】
一つの例示的な態様において、改変コラーゲンマトリックスの調製方法が提供される。本方法は、コラーゲン溶液を提供する工程、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを提供する工程、そしてコラーゲンをコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンの存在下で重合して、改変コラーゲンマトリックスを形成させる工程を含む。多様な実施態様において、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、通常はコラーゲン原線維形成を調節するプロテオグリカンのアミノ酸配列の一部とのアミノ酸相同性を有する異常型コラーゲン結合性合成ペプチドグリカン、又は原線維発生型コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンであることができる。
【0030】
コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンが異常型コラーゲン結合性合成ペプチドグリカン又は原線維発生型コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンである実施態様において、コラーゲンマトリックスの構造又は機械的特性を変更する方法が提供される。本明細書で使用されるとき、「変更する」とは、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンの不在下で重合されたコラーゲンマトリックスと比べて、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンの存在下でインビトロにおいて重合されたコラーゲンマトリックスの機械的又は構造特性を変えることを意味する。本方法は、コラーゲン溶液を提供する工程、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを提供する工程、そしてコラーゲンをコラーゲン結合性合成ペプチドグリカン(例えば、異常型又は原線維発生型コラーゲン結合性合成ペプチドグリカン)の存在下で重合して、変更されたコラーゲンマトリックスを形成させる工程を含む。
【0031】
一つの例示的な実施態様において、提供されるコラーゲン溶液は、約0.4mg/ml〜約6mg/mlの範囲のコラーゲン濃度を有することができる。多様な実施態様において、コラーゲン濃度は、約0.5mg/ml〜約10mg/ml、約0.1mg/ml〜約6mg/ml、約0.5mg/ml〜約3mg/ml、約1mg/ml〜約3mg/ml、及び約2g/ml〜約4mg/mlの範囲であることができる。
【0032】
上記において考察されたように、多様な例示的な態様において、本発明の改変グラフト作成物又は改変コラーゲンマトリックスを形成するのに使用されるコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、小型でロイシンリッチなプロテオグリカン又は血小板レセプター配列のアミノ酸配列に対する相同性を有する約5〜約40個のアミノ酸のペプチドを含む。多様な実施態様において、合成ペプチドは、RRANAALKAGELYKSILYGC、RLDGNEIKRGC、AHEEISTTNEGVMGC、CQDSETRTFY、TKKTLRTGC、GLRSKSKKFRRPDIQYPDATDEDITSHMGC、SQNPVQPGC、SYIRIADTNITGC、SYIRIADTNIT、KELNLVYT、KELNLVYTGC、GSITTIDVPWNV、NGVFKYRPRYFLYKHAYFYPPLKRFPVQGC、及びGSITTIDVPWNVGC、からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、合成ペプチドは、RRANAALKAGELYKSILYGC、RLDGNEIKRGC、AHEEISTTNEGVMGC、NGVFKYRPRYFLYKHAYFYPPLKRFPVQGC、CQDSETRTFY、TKKTLRTGC、GLRSKSKKFRRPDIQYPDATDEDITSHMGC、SQNPVQPGC、SYIRIADTNITGC、SYIRIADTNIT、KELNLVYT、KELNLVYTGC、GSITTIDVPWNV、GSITTIDVPWNVGC、及びこれらの14個のアミノ酸配列のいずれかと、80%、85%、90%、95%又は98%の相同性を有するアミノ酸配列、からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むことができる、又はこれらのいずれかであることができる。合成ペプチドは、コラーゲン結合活性を有し、且つ、フォンウィルブランド因子のコラーゲン結合ドメインと、又はChiang, et al.. J. Biol. Chem. 277: 34896-34901 (2002), Huizinga, et al., Structure 5: 1147-1156 (1997), Romijn, et al., J. Biol. Chem. 278: 15035-15039 (2003)及びChiang, et al., Cardio. & Haemato. Disorders-Drug Targets 7: 71-75 (2007)(それぞれ参照として本明細書に組み込まれる)に記載されている血小板コラーゲンレセプターのコラーゲン結合ドメインと80%、85%、90%、95%、98%又は100%の相同性があるペプチドから選択される、5〜40個のアミノ酸の任意のペプチドであることもできる。
【0033】
合成ペプチドに結合しているグリカンは、アルギン酸塩、アガロース、デキストラン、コンドロイチン、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパラン、ヘパリン、ケラチン、及びヒアルロナンからなる群より選択されうる。一つの実施態様において、グリカンは、デルマタン硫酸、デキストラン、及びヘパリンからなる群より選択される。コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを、重合する前に、例えば緩衝液の中又は水中又は塩酸若しくは酢酸のような酸の中で凍結乾燥することができる。一つの例示的な態様において、コラーゲンとコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンのモル比は、約1:1〜約40:1であることができる。
【0034】
重合工程を異なる条件下で実施することができ、条件は、pH、リン酸濃度、温度、緩衝液組成、イオン強度、存在する特定の構成要素、及び、コラーゲン又は存在する他の構成要素の濃度、からなる群より選択される。一つの例示的な態様において、コラーゲン又はコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを含む他の構成要素を、重合の前に凍結乾燥することができる。コラーゲン又は他の構成要素を、塩酸又は酢酸のような酸の中で凍結乾燥することができる。
【0035】
多様な例示的な実施態様において、重合反応は、当業者に既知の生物学的に適合性のある任意の緩衝液を使用して緩衝した溶液の中で実施される。例えば、緩衝液は、リン酸緩衝食塩水(PBS)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩(トリス−HCl)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、ピペラジン−n,n′−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、〔n−(2−アセトアミド)〕−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、N−〔2−ヒドロキシエチル〕ピペラジン−N′−〔2−エタンスルホン酸〕(HEPES)及び1,3−ビス〔トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ〕プロパン(ビストリスプロパン)からなる群より選択されうる。一つの実施態様において、緩衝液は、PBS、トリス又はMOPSであり、一つの実施態様において、緩衝系はPBSである。
【0036】
多様な例示的な実施態様において、重合工程は、約5.0〜約11の範囲から選択されるpHで実施され、一つの実施態様において、重合は、約6.0〜約9.0の範囲から選択されるpHで実施され、一つの実施態様において、重合は、約6.5〜約8.5の範囲から選択されるpHで実施され、別の実施態様において、重合工程は、約7.0〜約8.5の範囲から選択されるpHで実施され、別の実施態様において、重合工程は、約7.3〜約7.4の範囲から選択されるpHで実施される。
【0037】
他の例示的な態様において、緩衝された溶液のイオン強度も調節される。一つの実施態様によると、緩衝液のイオン強度は、約0.05〜約1.5Mの範囲から選択され、別の実施態様において、イオン強度は、約0.10〜約0.90Mの範囲から選択され、別の実施態様において、イオン強度は、約0.14〜約0.30Mの範囲から選択され、別の実施態様において、イオン強度は、約0.14〜約0.17Mの範囲から選択される。
【0038】
更に他の例示的な実施態様において、重合工程は、約0℃〜約60℃の範囲から選択される温度で実施される。他の実施態様において、重合工程は、20℃を超える温度で実施され、典型的には、重合は、約20℃〜約40℃の範囲から選択される温度で実施され、より典型的には、温度は、約30〜約40℃の範囲から選択される。一つの例示的な実施態様において、重合は、約37で実施される。
【0039】
更に他の実施態様において、緩衝液のリン酸濃度は異なる。例えば、一つの実施態様において、リン酸濃度は、約.005M〜約0.5Mの範囲から選択される。別の例示的な実施態様において、リン酸濃度は、約0.01M〜約0.2Mの範囲から選択される。別の実施態様において、リン酸濃度は、約0.01M〜約0.1Mの範囲から選択される。別の例示的な実施態様において、リン酸濃度は、約0.01M〜約0.03Mの範囲から選択される。
【0040】
本発明の、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを含む改変コラーゲンマトリックスを、重合の前に、その間に、又はその後で、ミネラル、アミノ酸、糖、ペプチド、タンパク質、ビタミン(例えば、アスコルビン酸)を含む栄養素、又はラミニン、フィブロネクチン、ヒアルロン酸、フィブリン、エラスチン若しくはアグレカンのような他の化合物、又は上皮増殖因子、血小板誘導増殖因子、形質転換増殖因子ベータ、血管内皮増殖因子若しくは線維芽細胞増殖因子のような増殖因子、及びデキサメタゾンのようなグルココルチコイド、又はイオン性及び非イオン性の水溶性ポリマーのような粘弾性変更剤;アクリル酸ポリマー;ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー及びポリビニルアルコールのような親水性ポリマー;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びエーテル化セルロースのようなセルロースポリマー及びセルロースポリマー誘導体;ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、乳酸とグリコール酸のコポリマー、又は、天然と合成の両方の他の高分子作用物質、と組み合わせることができる。
【0041】
一つの実施態様によると、細胞を、改変コラーゲンマトリックスの重合の前又は重合の後の最終工程として添加することができる。他の例示的な実施態様において、カルボジイミド、アルデヒド、リシル−オキシダーゼ、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、イミドエステル、ヒドラジド、及びマレイミドなどのような架橋剤を、重合の前に、その間に、又はその後に、添加することができる。
【0042】
一つの実施態様において、改変コラーゲンマトリックスは、市販のコラーゲン(例えば、Sigma, St. Louis, MO)を使用して形成される。代替的な実施態様において、コラーゲンを、腸、膀胱又は胃の組織のような粘膜下組織物質から精製することができる。更なる実施態様において、コラーゲンを尾腱から精製することができる。更なる実施態様において、コラーゲンを皮膚から精製することができる。
【0043】
一つの実施態様において、通常はコラーゲン原線維形成を調節するプロテオグリカンのアミノ酸配列の一部とのアミノ酸相同性、又は通常は原線維形成を調節しないタンパク質若しくはペプチドの一部とのアミノ酸相同性を有する、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを使用して、所望の構造又は機械的特性を有する改変コラーゲンマトリックスを形成することができる。別の実施態様において、異常型コラーゲン結合性合成ペプチドグリカン又は原線維発生型コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを使用して、望ましいが変更されている構造又は機械的特性を有する改変コラーゲンマトリックスを形成することができる。
【0044】
所望の構造、微細構造、ナノ構造、又は機械的特性には、例示的に、原線維長、原線維直径、原線維密度、原線維体積率、原線維組織、三次元の形状又は形態、及び、粘弾性、引張、剪断又は圧縮挙動(例えば、破壊応力、破壊歪み、及び係数)、浸透性、分解率、膨張性、水和特性(例えば、速度及び膨張)、及びインビボ組織再構築特性、並びに所望のインビトロとインビボの細胞反応、が含まれうる。本明細書に記載されている改変グラフト作成物及び改変コラーゲンマトリックスは、他の所望の特性のうち、所望の生体適合性及びインビトロとインビボ再構築特性を有することができる。
【0045】
本明細書で使用されるとき、「係数」は、弾性又は直線係数(従来の機械的試験プロトコールを使用して得られた応力−歪み曲線の直線領域の傾き、すなわち剛性、として定義される)、圧縮弾性率、複素弾性係数、又は剪断貯蔵弾性係数であることができる。
【0046】
本明細書で使用されるとき、「原線維体積率」は、三次元のマトリックスの断面において原線維が占有する総面積の面積率として定義され、「空間率」は、三次元のマトリックスの断面において原線維が占有しない総面積の面積率として定義される。
【0047】
本明細書に記載されている改変コラーゲンマトリックスは、コラーゲン原線維を含み、これは典型的には、原線維にその軸に沿って特徴的な線条外観又は分岐状パターンを与える四分の一ねじれパターンで詰められている。多様な例示的な実施態様において、改変コラーゲンマトリックスの定性的及び定量的な微細構造特性は、走査電子顕微鏡検査法、透過型電子顕微鏡検査法、共焦点顕微鏡検査法、二次高周波発生多光子顕微鏡検査法により決定することができる。別の実施態様において、引張、圧縮、及び粘弾性特性は、流動測定又は引張試験により決定することができる。これらの方法は全て当該技術において既知であるか、又は、本出願の実施例の部分、若しくはRoeder et al., J. Biomech. Eng., vol. 124, pp. 214-222 (2002), in Pizzo et al., J. Appl. Physiol., vol. 98, pp. 1-13 (2004), Fulzele et al., Eur. J. Pharm. ScL, vol. 20, pp. 53-61 (2003), Griffey et al., J. Biomed. Mater. Res., vol. 58, pp. 10-15 (2001), Hunt et al., Am. J. Surg., vol. 114, pp. 302-307 (1967)及びSchilling et al., Surgery, vol. 46, pp. 702-710 (1959)(参照として本明細書に組み込まれる)において更に記載されている。
【0048】
上記に記載された改変コラーゲンマトリックス、改変グラフト作成物、キット又は方法実施例のいずれかにおいて、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、以下の式のいずれかの化合物であることができる:
A)PnGx、ここで式中、nは1〜10であり;
xは1〜10であり;
Pは、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;そして
Gはグリカンである。
或いは
B)(PnL)xG、ここで式中、nは1〜5であり;
xは1〜10であり;
Pは、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;
Lはリンカーであり;そして
Gはグリカンである。
或いは
C)P(LGn)x、ここで式中、nは1〜5であり;
xは1〜10であり;
Pは、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;
Lはリンカーであり;そして
Gはグリカンである。
【0049】
代替的な実施態様において、以下の式のいずれかの化合物が提供される:
A)PnGx、ここで式中、nは1〜10であり;
xは1〜10であり;
Pは、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;そして
Gはグリカンである。
或いは
B)(PnL)xG、ここで式中、nは1〜5であり;
xは1〜10であり;
Pは、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;
Lはリンカーであり;そして
Gはグリカンである。
或いは
C)P(LGn)x、ここで式中、nは1〜5であり;
xは1〜10であり;
Pは、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;
Lはリンカーであり;そして
Gはグリカンである。
【0050】
別の実施態様において、ヘパリン、デキストラン又はヒアルロナンに結合している、コラーゲン結合性ペプチド(例えば、コラーゲン結合性タンパク質又はプロテオグリカンのアミノ酸配列の一部)とアミノ酸配列相同性を有する約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドを含む、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを使用して、血小板活性化を阻害すること、コラーゲンへの血小板結合を阻害すること、若しくは血栓症を抑えること、又は改変コラーゲンマトリックスを形成することができる。これらの実施例のいずれにおいても、上記記載の化合物のいずれかも使用することができる。
【0051】
別の実施態様において、ヘパリン、デキストラン又はヒアルロナンに結合している、コラーゲン結合性ペプチド(例えば、コラーゲン結合性タンパク質又はプロテオグリカンのアミノ酸配列の一部)とアミノ酸配列相同性を有する約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドを含む、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを使用して、コラーゲンへの血小板結合、血小板活性化、又はその両方を阻害することができる。これらの実施例のいずれにおいても、上記記載の化合物のいずれかも使用することができる。
【0052】
別の実施態様において、本明細書に記載されている合成ペプチドを、1つ以上の保存的アミノ酸置換を含めることにより修飾することができる。当業者には周知であるように、保存的置換によりペプチドの任意の非重要アミノ酸を変更することは、置換するアミノ酸の側鎖が、置換されたアミノ酸の側鎖と同様の結合及び接触を形成することができるはずであるので、ペプチドの活性を有意に変更することはないはずである。
【0053】
ペプチドのコラーゲン結合活性に過剰に影響を与えない、及び/或いは、コラーゲンマトリックスの構造若しくは機械的特性の変更、血小板活性化の阻害、又はコラーゲンへの血小板接着(例えば、結合)の阻害におけるペプチドの有効性を低減させないのであれば、非保存的置換も可能である。
【0054】
当該技術において周知であるように、アミノ酸の「保存的置換」又はペプチドの「保存的置換変種」は、1)ペプチドの二次構造;2)アミノ酸の電荷若しくは疎水性;及び3)側鎖の嵩高、又はこれらの特性のいずれか1つ以上、を維持するアミノ酸置換を意味する。例示的には、周知の用語「親水性残基」は、セリン又はトレオニンに関する。「疎水性残基」は、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリン又はアラニンなどを意味する。「陽性荷電残基」は、リシン、アルギニン、オルニチン又はヒスチジンに関する。「陰性荷電残基」は、アルパラギン酸又はグルタミン酸を意味する。「嵩高側鎖」を有する残基は、フェニルアラニン、トリプトファン又はチロシンなどを意味する。例示的な保存的アミノ酸置換のリストを表1に提示する。
【0055】
【表1】
【0056】
別の実施態様において、ヘパリンに結合している、コラーゲン結合性ペプチドの一部とアミノ酸配列相同性を有する約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドを含む、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを使用して、血小板活性化を阻害すること、コラーゲンへの血小板結合(例えば、接着)を阻害すること、若しくは血栓症を抑えること、又は改変コラーゲンマトリックスを形成することができる。別の実施態様において、デキストランに結合しているコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを使用して、血小板活性化を阻害すること、コラーゲンへの血小板結合を阻害すること、若しくは血栓症を抑えること、又は改変コラーゲンマトリックスを形成することができる。更に別の実施態様において、ヒアルロナンに結合しているコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを使用して、血小板活性化を阻害すること、コラーゲンへの血小板結合を阻害すること、若しくは血栓症を抑えること、又は改変コラーゲンマトリックスを形成することができる。これらの実施例のいずれかおいても、上記記載の化合物のいずれかも使用することができる。
【0057】
別の実施態様において、例えばヘパリン、デキストラン又はヒアルロナンのような任意のグリカンに結合している、コラーゲン結合性ペプチド(例えば、コラーゲン結合性タンパク質又はプロテオグリカンのアミノ酸配列の一部)とアミノ酸配列相同性を有する約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドを含む、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを使用して、コラーゲンへの血小板結合を阻害すること、血小板活性化を阻害すること又は血栓症を抑えることができる。これらの実施例のいずれにおいても、上記記載の化合物のいずれかも使用することができる。
【0058】
一つの実施態様において、合成ペプチドは、当業者に周知の固相ペプチド合成プロトコールに従って合成される。一つの実施態様において、ペプチド前駆体は、周知のFmocプロトコールに従って固体支持体上に合成され、トリフルオロ酢酸により支持体から切断され、当業者に既知の方法に従ってクロマトグラフィーにより精製される。
【0059】
別の実施態様において、合成ペプチドは、当業者に周知のバイオテクノロジーの方法を利用して合成される。一つの実施態様において、所望のペプチドのアミノ酸配列情報をコードするDNA配列を、当業者に既知の組み換えDNA技術により、発現プラスミド(例えば、ペプチドのアフィニティー精製のためのアフィニティータグを組み込んだプラスミド)に連結し、プラスミドを発現のために宿主生物に形質移入し、次にペプチドを宿主生物又は増殖培地から当業者に既知の方法(例えば、アフィニティー精製)により単離する。組み換えDNA技術法は、Sambrook et al., "Molecular Cloning: A Laboratory Manual", 3rd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, (2001)(参照として本明細書に組み込まれる)に記載されており、当業者に周知である。
【0060】
一つの実施態様において、合成ペプチドは、ペプチドの遊離アミノ基をグリカンのアルデヒド官能基と、還元剤の存在下で、当業者に既知の方法を利用して反応させることにより、グリカンと結合され、ペプチドグリカン結合体を生じる。一つの実施態様において、グリカンのアルデヒド官能基(例えば、多糖又はグリコサミノグリカン)は、グリカンをメタ過ヨウ素酸ナトリウムと当業者に既知の方法に従って反応させることにより形成される。
【0061】
別の実施態様において、合成ペプチドは、グリカンのアルデヒド官能基を3−(2−ピリジルジチオ)プロピオニルヒドラジド(PDPH)と反応させて中間体グリカンを形成し、更にこの中間グリカンを遊離チオール基を含有するペプチドと反応させることにより、グリカンと結合されて、ペプチドグリカン結合体を生じる。更に別の実施態様において、ペプチドの配列を、グリシン−システインセグメントを含むように修飾して、グリカン又はグリカン−リンカー結合体のための結合点を提供することができる。
【0062】
特定の実施態様が先行の段落において記載されてきたが、本明細書に記載されているコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、ペプチドをグリカン(例えば、多糖又はグリコサミノグリカン)と結合するための当該技術で認められたあらゆる方法を使用して作製することができる。これには、直接的な、又は二価リンカーのような結合基を介する間接的な、共有、イオン又は水素結合を含むことができる。結合体は、典型的には、結合体の対応する構成要素上の、酸、アルデヒド、ヒドロキシ、アミノ又はヒドラゾ基の間のアミド、エステル又はイミノ結合の形成を介して、グリカンにペプチドを共有結合することにより形成される。これらの方法は全て、当該技術において既知であるか、又は、本出願の実施例の部分、若しくはHermanson G.T., Bioconjugate Techniques, Academic Press, pp.169-186 (1996)に更に記載されている。リンカーは、典型的には、約1〜約30個の炭素原子、より典型的には約2〜約20個の炭素原子を含む。低分子量リンカー(すなわち、約20〜約500のおよその分子量を有するもの)が典型的に用いられる。
【0063】
加えて、結合体のリンカー部分の修飾が本明細書において考慮される。例えば、天然に生じるアミノ酸、並びに、従来の合成方法により入手可能なものが含まれるがこれらに限定されないアミノ酸が、リンカーに含まれることができ、多数のアミノ酸置換が結合体のリンカー部分において実施されてもよい。別の態様において、ベータ、ガンマ、及びより長い鎖のアミノ酸を、1つ以上のアルファアミノ酸の代わりに使用することができる。別の態様において、リンカーは、それに含まれているアミノ酸の数を変えることにより又はより多くの若しくは少ないベータ、ガンマ若しくはより長い鎖のアミノ酸を含めることにより、短く又は長くなることができる。同様に、本明細書に記載されるリンカーの他の化学フラグメントの長さ及び形状を修飾することができる。
【0064】
一つの態様において、リンカーは、それぞれ場合により置換されていてもよいアルキレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、シクロへテロアルキレン、アリーレン、及びヘテロアリーレンからなる群よりそれぞれの場合に独立して選択される、1つ以上の二価フラグメントを含むことができる。本明細書で使用されるとき、ヘテロアルキレンとは、直鎖又は分岐鎖アルキレン基の1個以上の炭素原子が、酸素、窒素、リン、及び硫黄からなる群よりそれぞれの場合に独立して選択される原子に代えられていることによってもたらされる基を表す。
【0065】
一つの態様において、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを、患者(例えば、血栓症に関わるような血小板活性化を阻害する治療が必要な患者)に投与することができる。多様な実施態様において、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを、例えば静脈内に、又は筋肉内又は内臓に、投与することができる。非経口投与に適した経路には、静脈内、動脈内、及び筋肉内送達が含まれる。非経口投与に適した方法には、針(顕微針を含む)注射器、及び注入技術が含まれる。
【0066】
例示的な実施態様において、a)薬学的に活性な量のコラーゲン結合性合成ペプチドグリカン;b)約pH4.5〜約pH9の範囲のpHを提供する薬学的に許容されるpH緩衝剤;c)約0〜約300ミリモルの濃度範囲のイオン強度調整剤;及びd)製剤総重量の約0.25%〜約10%の濃度範囲の水溶性粘度調整剤、又はa)、b)、c)及びd)の組み合わせ、を含む、非経口投与用のコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンと共に使用される医薬製剤が提供される。
【0067】
多様な例示的な実施態様において、本明細書に記載されている組成物及び方法に使用されるpH緩衝剤は、当業者に既知の作用物質であり、例えば、酢酸、ホウ酸、炭酸、クエン酸、及びリン酸緩衝液、並びに塩酸、水酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、リン酸一カリウム、重炭酸塩、アンモニア、炭酸、塩酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸、酢酸、リン酸水素二ナトリウム、ホウ砂、ホウ酸、水酸化ナトリウム、ジエチルバルビツール酸、及びタンパク質、並びに多様な生物学的緩衝液、例えばTAPS、Bicine、トリス、トリシン、ヘペス、TES、MOPS、PIPES,カコジル酸塩又はMESが含まれる。
【0068】
別の例示的な実施態様において、イオン強度調節剤には、当該技術において既知の作用物質が含まれ、例えば、グリシン、プロピレングリコール、マンニトール、グルコース、デキストロース、ソルビトール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び他の電解質である。
【0069】
有用な粘度調節剤には、イオン性及び非イオン性の水溶性ポリマー;「カーボマー」ファミリーのポリマーのような架橋アクリル酸ポリマー、例えば、Carbopol(登録商標)の商標のもとで市販されているカルボキシポロアルキレン;ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、及びポリビニルアルコールのような親水性ポリマー;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びエーテル化セルロースのようなセルロースポリマー及びセルロースポリマー誘導体;トラガカント及びキサンタンガムのようなガム;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン、ヒアルロン酸、及びその塩、キトサン、ジェラン、又はこれらの任意の組み合わせ、が含まれるが、これらに限定されない。典型的には、中性又は塩基性作用物質のような非酸性粘度増強剤が、製剤の所望のpHを達成するのを促進するために用いられる。
【0070】
一つの例示的な態様において、非経口製剤を、滅菌非水性液剤として、又は発熱物質無含有滅菌水のような適切なビヒクルと一緒に使用される乾燥形態として、適切に処方することができる。例えば凍結乾燥により、滅菌条件下で非経口製剤を調製することは、当業者に周知の標準的な製剤技術を使用して容易に達成することができる。
【0071】
一つの実施態様において、非経口製剤の調製に使用されるコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンの溶解度は、溶解度増強剤の組み込みのような、適切な配合技術を使用して増加することができる。
【0072】
多様な実施態様において、非経口投与用の製剤を、即時の及び/又は調整された放出となるように処方することができる。調整放出製剤には、遅延、持続、間欠、制御、標的、及びプログラム放出製剤が含まれる。したがって、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを、活性化合物の調整放出をもたらす移植デポー剤としての投与のために、固体、半固体又はチキソトロピー液として処方することができる。そのような製剤の例示的な例には、薬剤被覆ステント及び共重合(DL−乳酸、グリコール)酸(PGLA)微小球が挙げられる。別の実施態様において、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカン又はコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを含む組成物を、適切であれば連続的に投与することができる。
【0073】
他の実施態様において、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカン及びそれらを含有する組成物を局所的に投与することができる。軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ゲル軟膏剤、プラスター剤(例えば、バップ剤、湿布剤)、液剤、粉末剤などのような多様な剤形、及び基剤を、局所調合剤に適用することができる。これらの調合剤は、下記に記載される従来の薬学的に許容される担体又は希釈剤を用いて、任意の従来の方法により調製することができる。
【0074】
例えば、軟膏剤の調製において、ワセリン、高級アルコール、ミツロウ、植物油、ポリエチレングリコールなどを使用することができる。クリーム製剤の調製において、油脂、ロウ、高級脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル、精製水、乳化剤などを使用することができる。ゲル製剤の調製において、ポリアクリル酸塩(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、精製水、低級アルコール、多価アルコール、ポリエチレングリコールなどのような従来のゲル化物質が使用される。ゲル軟膏調合剤の調製において、乳化剤(好ましくは、非イオン性界面活性剤)、油状物質(例えば、流体パラフィン、トリグリセリドなど)などが、上記に記述されたゲル化物質に加えて使用される。バップ剤又は湿布剤のようなプラスター剤は、上記に記述されたゲル調合剤を支持体(例えば、布、不織布)に塗布することにより調製することができる。上記の成分に加えて、パラフィン、スクアラン、ラノリン、コレステロールエステル、高級脂肪酸エステルなどを、場合により使用してもよい。更に、BHA、BHT、没食子酸プロピル、ピロガロール、トコフェロールなどのような酸化防止剤も組み込むことができる。上記の調合剤及び構成要素に加えて、場合により、任意の他の添加剤が組み込まれた任意の他の従来の製剤を使用してもよい。
【0075】
本明細書に記載されている製剤のいずれかを使用して、本明細書に記載されている改変コラーゲンマトリックスの不在下又は存在下で、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカン(例えば、1種類以上)を投与することができる。
【0076】
多様な実施態様において、改変コラーゲンマトリックスを伴う又は伴わないコラーゲン結合性合成ペプチドグリカングラフトの投与量は、患者の状態、治療される疾患状態、投与経路、及び組織分布、並びに他の治療処置の併用の可能性に応じて、有意に変わりうる。患者に投与される有効量は、体表面積、患者の体重、及び患者の状態に関する医師の評価に基づいている。多様な例示的な実施態様において、有効用量は、約1ng/kg〜約10mg/kg、100ng/kg〜約1mg/kg、約1μg/kg〜約500μg/kg又は約100μg/kg〜約400μg/kgの範囲であることができる。これらの実施態様のそれぞれにおいて、用量/kgとは、患者の体重1キログラムあたりの用量を意味する。他の例示的な態様において、有効用量は、1用量あたり約0.01μg〜約1000mg、1用量あたり1μg〜約100mg又は1用量あたり100μg〜約50mg又は1用量あたり500μg〜約10mg又は1用量あたり1mg〜約10mgの範囲であることができる。
【0077】
コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを投与する任意の有効なレジメンを使用することができる。例えば、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを、単回用量又は多回用量の毎日レジメンとして投与することができる。更に、時差レジメン、例えば1週間あたり1〜5日間を、毎日治療の代替案として使用することができる。
【0078】
本発明の一つの実施態様において、患者は、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンの複数回の注射で治療される。一つの実施態様において、患者には、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを、例えば12〜72時間間隔又は48〜72時間間隔で複数回(例えば、約2回から最大約50回まで)注射する。コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンの追加の注射を、最初の注射の後、数日間又は数か月の間隔を置いて患者に投与することができ、追加の注射は、疾患の再発を予防する。あるいは、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンの最初の注射が、疾患の再発を予防してもよい。
【0079】
本明細書に記載されている実施態様のいずれかにおいて、ペプチド部分、グリカン部分又はその両方が異なっている2つ以上のコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンの組み合わせを、単一のコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンの代わりに使用できることが理解されるべきである。
【0080】
前述の実施態様において、化合物、組成物、及び方法の特定の態様は、例示的には1つ以上のG及びPのいずれかにおける選択の場合のように、リストの選択肢として表されていることも理解される。したがって、本発明の多様な代替的実施態様は、これらのリストの個別のメンバー、並びにこれらのリストの多様なサブセットを含むことが理解されるべきである。これらの実施態様は、それぞれ、リストによって本明細書に記載されているということが理解されるべきである。
【0081】
以下の例示的な実施例において、用語「合成ペプチドグリカン」及び「結合体」は、用語「コラーゲン結合性合成ペプチドグリカン」と同義的に使用される。
【実施例】
【0082】
〔実施例1〕
ペプチド合成
全てのペプチドは、Knorr樹脂上でFMOCプロトコールを利用する、Symphonyペプチド合成機(Protein Technologies, Tucson, AZ)を使用して合成した。粗ペプチドをTFAにより樹脂から分離し、Grace-Vydac 218TP C-18逆相カラム及び水/アセトニトリル0.1%TFAの勾配を利用する、AKTAexplorer(GE Healthcare, Piscataway, NJ)の逆相クロマトグラフィーにより精製した。ダンシル修飾ペプチドを、樹脂から分離する前に、ダンシル−Gly(Sigma)との追加のカップリング工程を加えることにより調製した。ペプチド構造を質量分析により確認した。以下のペプチドを上記に記載されたように調製した:RRANAALKAGELYKSILYGC、SYIRIADTNIT、ダンシル−GRRANAALKAGELYKSILYGC及びダンシル−GSYIRIADTNIT。これらのペプチドは、SILY、SYIR、Z−SILY及びZ−SYIRと略される。追加のペプチドのKELNLVYTGC(略語KELN)及びGSITTIDVPWNVGC(略語GSIT)を、上記に記載されたように調製するか又は購入した(Genescript, Piscataway, NJ)。
【0083】
〔実施例2〕
デルマタン硫酸へのSYIRペプチドの結合
SYIRを、Hermansonの方法(Hermanson, 1996)を僅かに改変した方法によりoxDSに結合した。ペプチドSYIRを、0.05Mの炭酸ナトリウム、0.1Mのクエン酸ナトリウム緩衝液、pH9.5に濃度0.4mg/mLで溶解して5mLの最終容量にした。10倍のペプチドモル過剰で反応させるために、29mgのoxDS、MW41,000(41kDaの1.1アルデヒド/DS分子を含有する酸化デルマタン硫酸は、Celsus Laboratories, Cincinnati, OHから入手可能である)を、ペプチド溶液に溶解した。穏やかに撹拌しながら、50μLのシアノ水素化ホウ素ナトリウムを加え、反応を室温で一晩進行させた。
【0084】
過剰ペプチドを、Sephadex G-25媒体(GE Health)が充填され、脱イオン水(MiIIiQ)で平衡にしたXK 26-40カラムを使用するAkta Purifierのゲル濾過により分離した。溶離液を215nm、254nm及び280nmでモニタリングした。DS−SYIRを含有する最初の溶離ピークを収集し、更なる試験のために凍結乾燥した。
【0085】
〔実施例3〕
デルマタン硫酸へのSILYの結合
oxDSへのPDPH結合
スルフヒドリル及びアミン基に反応性である二官能架橋剤のPDPH(Pierce)を使用して、oxDSにSILYを結合した。反応の第1工程において、oxDSをカップリング緩衝液(0.1Mのリン酸ナトリウム、0.25Mの塩化ナトリウム、pH7.2)に溶解して、1.2mMの最終濃度にした。PDPHを10倍モル過剰で加え、反応を室温で2時間進行させた。過剰PDPH(MW229Da)を、Sephadex G-25媒体が充填され、MiIIiQ水で平衡にしたXK 26-40カラムを使用するAkta Purifier上でのゲル濾過により分離した。溶離液を215nm、254nm及び280nmでモニタリングした。DS−PDPHを含有する最初の溶離ピークを収集し、SILYへの結合のために凍結乾燥した。
【0086】
PDPH含有量の決定
oxDSと結合しているPDPH分子の数を決定するため、DS−PDPHを1.6mg/mLでカップリング緩衝液に溶解した。10μLのDTTを15mg/mLでDS−PDPH溶液に加え、反応を室温で15分間進行させた。PDPHのシステイン反応側のジスルフィド結合を還元すると、ピリジン−2−チオンを放出し、これは313nmで見ることができる。313nmでの吸光度を、DTT添加の前後に測定し、その差を、ピリジン−2−チオンの吸光係数を使用してPDPH分子/DS分子の数を計算するために使用した。図7の結果は、ΔA=0.35を示し、1.1のPHPH分子/DSに相当する。
【0087】
SILYの結合
ペプチドを5:1モル過剰でカップリング緩衝液に、最終ペプチド濃度のおよそ1mM(ペプチドの溶解度より限定される)で溶解した。反応を室温で一晩進行させ、過剰ペプチドを分離し、DS−SILY結合体を、上記に記載されたゲル濾過により単離した。カップリング後のSILY/DS比の1.06を示す、図26を参照すること。
【0088】
〔実施例4〕
デルマタン硫酸へのZ−SILYの結合
デルマタン硫酸を、実施例3の方法に従って、Z−SILYに結合した。
【0089】
〔実施例5〕
デルマタン硫酸へのKELNの結合
デルマタン硫酸を、実施例3の方法に従って、KELNに結合した。
【0090】
〔実施例6〕
デルマタン硫酸へのGSITの結合
デルマタン硫酸を、実施例3の方法に従って、GSITに結合した。
【0091】
〔実施例7〕
デルマタン硫酸へのZ−SYIRの結合
デルマタン硫酸を、実施例2の方法に従って、Z−SYIRに結合した。
【0092】
〔実施例8〕
ヘパリンへのSILYの結合
分子1個あたり1つのアルデヒドを含有する酸化ヘパリン(oxHep)(MW=19.7kDa)(Celsus Laboratories, Cincinnati, OHから購入した)。追加のアルデヒドを、以下のように、メタ過ヨウ素酸ナトリウムにおける更なる酸化により形成した。oxHepを0.1Mの酢酸ナトリウムに、pH5.5、濃度10mg/mLで溶解した。次にメタ過ヨウ素酸ナトリウムを2mg/mLの濃度で加え、遮光下にて室温で4時間反応させた。過剰メタ過ヨウ素酸ナトリウムを、HiTrapサイズ除去カラム(GE Healthcare)を使用して脱塩することにより除去し、oxHepを、凍結乾燥し、PDPHとの結合まで遮光した。
【0093】
oxHepを、実施例3のDS−PDPH結合について記載された方法により、PDPHに結合した。PDPHを50倍のモル過剰で反応させた。より高いPDPH濃度を達成するために、10mgのPDPHを75μLのDMSOに溶解し、1mLのoxHep含有カップリング緩衝液と混合した。反応は室温で2.5時間進行し、過剰PDPHを脱塩により除去した。ヘパリン含有PDPH(Hep−PDPH)を、SILYと反応させるまで、凍結乾燥粉末として保存した。
【0094】
SILYを、実施例3のDS−SILY結合について記載されたとおりに、10倍モル過剰でHep−PDPHと反応させた。反応を、実施例3のDS−SILYについて記載されたようにモニタリングしたところ、図24に示されているように、ヘパリン分子1個あたり5.44の結合したシリルペプチドを示した。
【0095】
〔実施例9〕
ヘパリンへのGSITの結合
ヘパリンを、実施例8に方法に従って、GSITと結合した(略語Hep−GSIT)。
【0096】
〔実施例10〕
デキストランへのSILYの結合
デキストランを、ヘパリンをデキストランに代えて実施例8の方法に従って、SILYと結合した。第1工程におけるメタ過ヨウ素酸ナトリウムによるデキストランの酸化条件の変更は、SILYとデキストランのモル比が異なる結合体の調製を可能にした。例えば、SILYとデキストランのモル比が約6のデキストラン−SILY結合体及びSILYとデキストランのモル比が約9のデキストラン−SILY結合体を調製した(略語Dex−SILY6及びDex−SILY9)。
【0097】
〔実施例11〕
ヒアルロナンへのSILYの結合
ヒアルロナンを、実施例8に方法に従って、SILYと結合した(略語HA−SILY)。
【0098】
〔実施例12〕
コラーゲンへのSILYの結合(Biacore)
Biacore分析を、CM-3チップを使用するBiacore 2000(Biacore, Inc., Piscataway, NJ)により実施した。CM-3チップは、共有結合カルボキシメチル化デキストランで被覆されており、これにより遊離アミン基を介した基質コラーゲンの結合が可能になる。フローセル(FC)1及び2を使用し、FC−1を基準セルとし、FC−2をコラーゲン固定化セルとした。各FCをEDC−NHSで活性化し、pH4の酢酸ナトリウム緩衝液中の1mg/mLのコラーゲンを5μL/分で10分間流し込むことにより、FC−2上に1500RUのコラーゲンを固定化した。未反応NHS−エステル部位をエタノールアミンでキャップし、対照FC−1を活性化し、エタノールアミンでキャップした。
【0099】
ペプチド結合親和性を決定するために、SILYを、100uM〜1.5μMの異なる濃度で1×HBS−EP緩衝液(Biacore)に2倍の希釈で溶解した。流速を、結合動態を決定するためにMyskaにより提案(Myska, 1997)された範囲内である90μL/分に保持した。最初の10回の注射は、系の始動を助ける緩衝液注射であり、続いて無作為な試料注射を3回ずつ行った。解析はBIAevaluationソフトウエア(Biacore)を使用して実施した。代表的な会合/解離曲線を図3に示し、これはSILYペプチドがコラーゲンに可逆的に結合することを実証している。KD=1.2μMであることが、オンオフ結合動態からの計算により得られた。
【0100】
〔実施例13〕
コラーゲンへのZ−SILYの結合
結合アッセイを、黒色で透明底の96ウエル高結合型プレート(Costar)で行った。コラーゲンを未処理ウエル及びBSA被覆ウエルと比較した。コラーゲン及びBSAを、10mMのHCl及び1×PBSそれぞれの中で2mg/mLの濃度で、90μL/ウエルずつインキュベートすることにより、37℃で1時間固定した。インキュベート後、各ウエルを1×PBSで3回洗浄した。Z−SILYを、100μM〜10nMの濃度で1×PBSに10倍の希釈で溶解した。ウエルを37℃で30分間インキュベートし、PBSで3回すすぎ、次に90μLの1×PBSを充填した。蛍光読み取り値は、励起/発光波長がそれぞれ335nm/490nmのM5 Spectramax Spectrophotometer(Molecular Devices)により得た。結果を図4及び5に示す。KD=0.86μMであることが、平衡動態からの計算により得られた。
【0101】
〔実施例14〕
DS−SILYの特徴決定
DSに結合したSILY分子の数を決定するために、ピリジン−2−チオンの生成を、Pierceにより提供された変更プロトコールを使用して測定した。1.1のPDPH分子が結合しているデルマタン硫酸を0.44mg/mLの濃度でカップリング緩衝液(0.1Mのリン酸ナトリウム、0.25Mの塩化ナトリウム)に溶解し、343nmでの吸光度を、SpectraMax M5(Molecular Devices)を使用して測定した。SILYを5倍モル過剰で反応させ、吸光度の測定を、SILYの添加の直後と、2時間反応させた後に、繰り返し行った。SILYそれ自体が343nmで吸収しないことを確実にするため、0.15mg/mLのSILYを含有するカップリング緩衝液を測定し、緩衝剤のみの吸光度と比較した。
【0102】
DSに結合したSILY分子の数を、次の式:(Abs343/8080)×(MWDS/DSmg/mL)を使用して、ピリジン−2−チオンの吸光係数により計算した。結果を図26に示す。
【0103】
〔実施例15〕
コラーゲン結合、蛍光データ−DS−SILY
ペプチド結合体が、DSへの複合の後で、コラーゲンに結合する能力を維持するかを決定するために、蛍光結合アッセイを実施した。蛍光標識型のSILYであるZ−SILYは、ダンシルグリシンをアミン末端に付加することにより合成した。このペプチドをDSと結合し、SILYについて記載されたものと同じ方法を使用して精製した。
【0104】
結合アッセイを、黒色で透明底の96ウエル高結合型プレート(Costar)で行った。コラーゲンを未処理ウエル及びBSA被覆ウエルと比較した。コラーゲン及びBSAを、10mMのHCl及び1×PBSそれぞれの中で2mg/mLの濃度で、90μL/ウエルずつインキュベートすることにより、37℃で1時間固定した。インキュベート後、各ウエルを1×PBSで3回洗浄した。
【0105】
ウエルをDSと共に37℃で30分間プレインキュベートして、コラーゲンへのDSの非特異的結合を排除した。ウエルを、DS−Z−SILYと共にインキュベートする前に、1×PBSで3回すすいだ。DS−Z−SILYを、100μM〜10nMの濃度で1×PBSに10倍の希釈で溶解した。ウエルを37℃で30分間インキュベートし、3回すすぎ、次に90μLの1×PBSを充填した。蛍光読み取り値は、励起/発光波長がそれぞれ335nm/490nmのM5 Spectramax Spectrophotometer(Molecular Devices)により得た。
【0106】
固定コラーゲン、BSA及び未処理ウエルへのDS−Z−SILYの蛍光結合を図8で比較する。結果は、DS−Z−SILYが、BSA処理ウェル及び未処理ウエルよりもコラーゲン処理ウエルに特異的に結合することを示す。高結合型プレートの未処理ウエルは、陽性対照として設計されたが、コラーゲン処理ウエルと比べてほとんど結合が観察されなかった。これらの結果は、SILYがDSへの結合の後でもコラーゲンに結合する能力を維持することを示唆している。DSとのプレインキュベーションは結合を防止せず、結合体がDSのみとは別に結合することを示唆している。
【0107】
〔実施例16〕
I型コラーゲンゲルの調製
ゲルを、4mg/mLの最終コラーゲン濃度でNutragenコラーゲン(Inamed, Freemont, CA)から作製した。Nutragen貯蔵溶液は、10mMのHCl中の6.4mg/mLである。ゲル調製を氷上で実施し、新鮮な試料をそれぞれの試験の前に作製した。コラーゲン溶液は、適切な容量の10×PBS(リン酸緩衝食塩水)、1×PBS及び1MのNaOHを加えることにより、生理学的pH及び塩濃度に調整した。大部分の実験において、DS、デコリン、DS−SILY又はSD−SYIRの試料を、試験試料を適切な濃度で溶解した最終1×PBS添加(各処理剤を通して等量)により、10:1のコラーゲン:試料モル比で加えた。この方法により、試料は、pH7.4及び生理学的塩濃度を常に保持する。コラーゲンのみの試料には、試料が溶解していない1×PBSを添加した。原線維形成は、中和コラーゲン溶液を、脱水を避けるために加湿チャンバーにおいて37℃で一晩インキュベートすることによって誘導する。コラーゲン:試料モル比が10:1以外のゲル溶液を、同様に調製した。
【0108】
〔実施例17〕
ゲルの粘弾性の特徴決定
コラーゲンゲルを実施例16に記載されたとおりに調製し、加熱する前に、200μLの各処理剤を疎水性印刷スライド(Tekdon)の可湿性表面にピペットで加えた。PTFE印刷はゲルを20mm直径の可湿性領域に限定した。機械的試験に先立ち、加湿インキュベーター中で37℃で一晩かけて、ゲルを形成した。
【0109】
スライドを、20mmのステンレススチール平行平板配置を有するAR-G2レオメーター(TA Instruments, New Castle, DE)のレオメーター載物台の上で挟み、20mmのステンレススチール平行平板配置を、形成されたゲルへの過剰な剪断を避けるために、0.25Nの垂直力制御を使用して間隙の幅が600μmになるまで低下させた。圧力及び周波数掃引の反復過程をコラーゲンのみのゲルに実施して、直線範囲を決定した。また、全ての試料を0.1Hz〜1.0Hzの周波数範囲及び1.0Paの制御圧力で試験した。Design Expertソフトウエア(StatEase, Minneapolis, MN)を使用する統計分析を、各周波数で実施し、5方向ANOVAを使用して、各試料を比較した。図9の10:1、図10の5:5及び図11の30:1で示されている結果は、合成ペプチドグリカンによる処理は、I型コラーゲンゲルの粘弾性挙動を変更しうることを実証している。
【0110】
〔実施例18〕
III型コラーゲン含有ゲルの粘弾性の特徴決定
III型コラーゲンを含有するゲルを、実施例16と同様に以下の変更を加えて調製した:処理済及び未処理ゲル溶液は、1.5mg/mLのコラーゲン濃度(90%コラーゲンIII(Millipore)、10%コラーゲンI)を使用して調製し、200μLの試料を、疎水性印刷スライドの20mm直径の可湿性表面にピペットで加えた。これらの溶液を、37℃で24時間ゲル化させた。対照としてのゲルは、コラーゲンのみ、デルマタン硫酸(1:1及び5:1のモル比)で処理したコラーゲン、及びコラーゲンIII結合ペプチドのみ(GSIT及びKELN、5:1モル比)で処理したコラーゲンから形成した。処理したゲルは、ペプチドグリカンを(DS−GSIT又はDS−KELNを1:1及び5:1のモル比で)含有した。全ての比は、コラーゲン:処理剤化合物の比である。試料を0.1Hz〜1.0Hzの周波数範囲、1.0Paの制御圧力で試験したこと以外は実施例17と同様のようにして、ゲルの特徴決定を行った。図12及び13に示されているように、デルマタン硫酸−GSIT結合体及びデルマタン硫酸−KELN結合体(合成ペプチドグリカン)は、III型コラーゲンから形成されたゲルの粘弾特性に影響を及ぼすことができる。
【0111】
〔実施例19〕
原線維形成
原線維形成の速度及び原線維の直径に関する情報を提供する、混濁度に関連のある313nmでの吸光度を測定することにより、コラーゲン原線維形成をモニタリングした。ゲル溶液は、実施例16に記載されているとおり(特に指示のない限り、4mg/mLのコラーゲン及び10:1のコラーゲン:処理剤)に調製し、50uL/ウエルを4℃で384ウエルプレートに加えた。プレートを、原線維形成を開始する前に、4℃で4時間保持した。37℃でSpectraMax M5を使用して、313nmにより30秒間隔で6時間吸光度を測定した。結果を図14、15及び16に示す。10:1モル比試料のゲル形成のT1/2を図17に示す。デルマタン硫酸−SILYは、原線維形成の速度を減少する。
【0112】
〔実施例20〕
共焦点反射顕微鏡検査法
ゲルを、上記の実施例16に記載されているように形成し、一晩インキュベートし、ゲルを、60×で1.4NAの水浸レンズを使用するOlympus FV1000共焦点顕微鏡により画像化した。試料を、488nmのレーザー光線で照らし、反射光を、青色反射フィルターを使用する光電子増倍管で検出した。それぞれのゲルをゲルの底から100μMで画像化し、代表的な試料採取を確実にするため3つの異なる場所を画像化した。結果を図18に示す。
【0113】
〔実施例21〕
コラーゲンIのクライオSEM測定
クライオSEM用のゲルを、実施例16のとおりにSEM載物台の上に直接形成し、37℃で一晩インキュベートした。次に載物台をクライオ保持器中に固定し、液体窒素スラッシの中に投入した。次に試料を、真空下で−170℃に冷却したGatan Alto 2500プレチャンバーに移した。自由破面を冷却メスにより作り出し、各試料を昇華条件下で20分間蒸発させた。試料を白金スパッター被覆により120秒間被覆した。試料を−130℃のクライオ載物台に移し、処理剤同士を比較するために、同様の配向の各領域を画像化した。5,000×で画像化した代表的な試料を図19に示す。画像を分析して平均原線維直径(図22)及びコラーゲンシート間の平均間隔(図23)を決定した。原線維直径は、手動で個別の原線維を測定(原線維を横断して線を引き、尺度を正確に設定した後、その長さを測定する)してImageJソフトウエア(NIH)を使用して計算した。3人の観察者が、1処理剤あたり3つの別々の画像について、画像1つあたり10本の原線維を記録し、1処理剤あたり合計で90の測定値を得た。シート間隔は、ここでも手動で測定するImageJを使用して計算した。1処理剤あたり1人の観察者で15の測定値であった。原線維直径及びコラーゲンシート間の間隔は、デルマタン硫酸−SILY合成ペプチドグリカンで処理されたゲルにおいて減少した。
【0114】
〔実施例22〕
コラーゲンIIIのクライオSEM測定
クライオSEM用のゲルを、実施例16と同様の方法に以下の変更を加え、SEM載物台の上に直接形成し、37℃で一晩インキュベートした。コラーゲン濃度は、1mg/mLであった(90%のコラーゲンIII、10%のコラーゲンI)コラーゲン:DSの比は1:1であり、コラーゲン:ペプチドグリカンの比は1:1であった。画像を実施例21のとおりに記録した。空間体積と原線維体積の比は、実施例21の方法の変形を使用して測定した。結果を図20及び21に示す。デルマタン硫酸−KELN及びデルマタン硫酸−GSITは、処理済コラーゲンゲルにおいて、空間を減少する(原線維直径及び分岐を増加する)。
【0115】
〔実施例23〕
Dバンド形成のAFM確認
ゲル溶液を実施例16に記載されたとおりに調製し、20μLの各試料をカバーガラスにピペットで加え、加湿インキュベーターにおいて一晩ゲル化させた。ゲルを段階的エタノール溶液(35%、70%、85%、95%、100%)により、各溶液で10分間処理した。走査速度2Hzの接触モード(Multimode SPM, Veeco Instruments, Santa Barbara, CA, USA、AFMチップ窒化ケイ素接触モードチップのk=0.05N/m、Veeco Instruments)、偏位設定ポイント:0〜1ボルトにて、AFM画像を作製した。Dバンド形成は、図2及び38に示されているように、全ての処理剤において確認された。
【0116】
〔実施例24〕
コラーゲン再構築
組織試料の調製
Grassl, et al.の方法(Grassl, et al., Journal of Biomedical Materials Research 2002, 60, (4), 607-612)(その全体が参照として本明細書に組み込まれる)に従って、合成PG模倣体を有する又は有さないコラーゲンゲルを、実施例16に記載されたとおりに形成した。ヒト大動脈平滑筋細胞(Cascade Biologies, Portland, OR)を、インキュベーションに先立って、中和コラーゲン溶液に4×106細胞/mLで加えることによりコラーゲンゲル内に接種した。細胞コラーゲン溶液を、8ウエルLab-Tekチャンバースライドにピペットで移し、加湿した37℃の5%CO2インキュベーターでインキュベートした。ゲル化した後、細胞コラーゲンゲルを、Cascadeにより処方された1mLの培地231で覆う。3〜4日毎に、培地を試料から取り出し、標準的ヒドロキシプロリンアッセイ(Reddy, 1996)によりヒドロキシプロリン含有量を測定した。
【0117】
ヒドロキシプロリン含有量
培地上清中の分解コラーゲンを測定するために、試料を凍結乾燥し、試料を2MのNaOHにより120℃で20分間加水分解した。冷却した後、クロラミンT(Sigma)を添加し、室温で25分間反応させることにより、遊離ヒドロキシプロリンを酸化した。エールリッヒアルデヒド試薬(Sigma)を加え、65℃で20分間反応させ、続いてM−5分光高度計(Molecular Devices)により550nmで吸光度を読み取った。培地中のヒドロキシプロリン含有量は、分解コラーゲン及び組織再構築可能性の間接的な測度である。培養を30日間までインキュベートし、各処理剤につき3つの試料を測定した。細胞を添加しないでインキュベートしたゲルを、対照として使用した。遊離ペプチドSILY及びDc13は、図53に示されているように、細胞培地中のヒドロキシプロリン含有量で測定すると、コラーゲンのみと比較してより大きなコラーゲン分解をもたらした。
【0118】
細胞生存率
細胞生存率は、生/死バイオレット生存/活力キット(Molecular Probes)を使用して決定した。本キットは、カルセイン−バイオレット染料(生細胞)及びアクア蛍光反応性染料(死細胞)を含む。試料を1×PBSで洗浄し、300μLの染料溶液と共に室温で1時間インキュベートした。未結合の染料を除去するために、試料を1×PBSですすいだ。20×対物レンズのOlympus FV1000共焦点顕微鏡によりフィルター400/452及び367/526で二次元切片を画像化した後、生細胞及び死細胞をカウントした。全ての試料について、ゲルを代表的な領域において走査し、3つの画像のセットを、ゲル中において等間隔で撮った。
【0119】
〔実施例25〕
ゲル中での細胞増殖
ゲル試料を実施例16のとおりに調製した(4mg/mLのコラーゲン;10:1のコラーゲン:処理剤)。細胞を1.5×104細胞/cm2で接種し、増殖培地において4時間インキュベートして細胞をゲルに接着させた。次に増殖培地を吸引除去し、細胞を24時間処理した。処理剤濃度は、ゲル中でのコラーゲン:処理剤の10:1モル比に等しかった。細胞を増殖培地において4時間インキュベートして、ゲルに接着させた。増殖培地を吸引により取り除き、新鮮な成長培地に代えた。試料を24時間インキュベートした。各試料中の細胞の数を、CyQuant細胞増殖アッセイ(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)を使用して測定した。図25に示されている結果は、合成ペプチドグリカン及びペプチドが細胞増殖に有害な影響を与えないことを示す。
【0120】
〔実施例26〕
DS−Dc13の調製
Dc13ペプチド配列は、SYIRIADTNITGCであり、その蛍光標識形態は、ZSYIRIADTNITGCであり、ここでZはダンシルグリシンを意味する。ヘテロ二官能架橋剤のPDPHを使用してデルマタン硫酸に結合することは、実施例3のDS−SILYについて記載されたとおりに実施される。図27に示されているように、結合体(DS−Dc13)におけるDc13とデルマタン硫酸のモル比は約1であった。
【0121】
〔実施例27〕
DS−ZSILYの蛍光結合アッセイ
DS−ZSILYについて記載された蛍光結合アッセイを、ペプチド配列ZSYIRIADTNITGC(ZDc13)を用いて実施した。結果を図28に表し、これはDS−ZDc13が用量依存的にコラーゲン表面に特異的に結合することを示しているが、飽和は、試験された最高率では達成されなかった。
【0122】
〔実施例28〕
DS−Dc13の原線維形成アッセイ
実施例19でDS−SILYについて記載された原線維形成アッセイを、結合体DS−Dc13を用いて実施した。図29に示されている結果は、DS−Dc13が原線維形成を遅延し、全体的な吸光度を用量依存的に減少することを示す。対照的に、遊離Dc13ペプチドは、高い1:1コラーゲン:添加剤モル比でコラーゲンのみの場合と比較したとき、原線維形成にほとんど影響を与えない。
【0123】
〔実施例29〕
原線維直径を測定するためのクライオSEM測定の使用
実施例21の変更した方法を使用して、原線維直径をクライオSEMにより測定した。20,000×で撮ったクライオSEM画像における原線維直径は、ImageJソフトウエア(NIH)を使用して測定した。少なくとも45本の原線維をそれぞれの処理剤について測定した。結果を平均±標準誤差で表す。統計分析を、α=0.05でDesignExpertソフトウエア(StatEase)を使用して実施した。結果を図30に示す。デコリン及び合成ペプチドグリカンは、コラーゲン又はコラーゲン+デルマタン硫酸よりも原線維直径を有意に減少する。コラーゲンのみと比較すると、遊離ペプチドDc13は、原線維直径に影響を与えないが、遊離SILYは、原線維直径の減少をもたらす。
【0124】
〔実施例30〕
細胞培養及びゲル圧縮
ヒト冠動脈平滑筋細胞(HCA SMC)(Cascade Biologies)を増殖培地(平滑筋増殖因子を添加した培地231)で培養した。第3継代の細胞を全ての実験に使用した。分化培地(1%FBS及び1×ペニシリン/ストレプトマイシンを添加した培地231)を、特に示されない限り、全ての実験に使用した。この培地は、ヘパリンを含有しない点において製造元のプロトコールと異なっている。
【0125】
コラーゲンゲルを、培地への細胞の添加に適応させるために1×PBS例の添加を省略したこと以外は上記のとおりに、それぞれの添加剤を用いて調製した。氷上で30分間インキュベートした後、分化培地中のHCA SMCを、最終濃度1×106細胞/mLとなるようゲル溶液に加えた。ゲルの形成を、500μL/ウエルの分化培地を加える6時間前に、48ウエルの組織培養処理無しプレート(Costar)を用いて四重に行った。24時間後に、ゲルをウエルの端から切り離した。培地を2〜3日毎に交換し、比較のための画像を、Gel Doc System(Bio-Rad)を使用して同じ時点で撮った。円形ゲルの断面積(圧縮の度合いに対応する)は、ImageJソフトウエア(NIH)を使用して決定した。細胞を含有しないゲルを陰性対照として使用し、添加剤無しのコラーゲンゲル中の細胞を陽性対照として使用した。結果を図31に示す。10日目までには、全てのゲルが元のゲル面積のおよそ10%圧縮され、添加剤の間の差は小さかった。DS−Dc13で処理したゲルの圧縮は、デコリン又はコラーゲンで処理したゲルの場合より僅かであるが有意に少なかったが、DSとDS−SILY処理済ゲルで見られるものとは統計的に同等であった。
【0126】
〔実施例31〕
エラスチンの測定
HCA SMCを接種したコラーゲンゲルを、実施例30に記載されたとおりに調製した。分化培地を3日毎に交換し、ゲルを10日間培養した。細胞を含有しないコラーゲンゲルを対照として使用した。ゲルを1×PBSで一晩すすいで、血漿タンパク質を除去し、製造元のプロトコール(Biocolor, County Atrim, U.K.)に従い、ファスチンエラスチンアッセイを使用して、ゲルをエラスチン含有量について試験した。簡潔には、ゲルを、100℃で1時間インキュベートすることにより、0.25Mのシュウ酸において可溶化した。エラスチンを沈殿させ、次に試料を11,000×gで10分間遠心分離した。可溶化したコラーゲンの上清を除去し、エラスチンペレットをファスチン染料試薬により室温で90分間染色した。試料を11,000×gで10分間遠心分離し、上清中の未結合の染料を除去した。ファスチン染料解離試薬によりエラスチンペレットから染料を放出させ、100μLの試料を96ウエルプレート(Costar)に移した。吸光度を513nmで測定し、エラスチン含有量を、α−エラスチン標準曲線から計算した。これらのアッセイの結果を図32に示す。DS−SILYによる処理は、全ての試料においてエラスチン生成を有意に増加させた。DS及びDS−Dc13による処理は、未処理コラーゲンよりもエラスチン生成を有意に低減させた。細胞のない対照試料のコラーゲンゲルは、エラスチン生成を示さなかった。
【0127】
〔実施例32〕
血小板相互作用に対するヘパリン又はヘパリン−SILYの効果
10mM HCl中2mg/mLのコラーゲンでスライドを37℃で1時間インキュベートすることにより、カバーガラススライド(18mm)上にコラーゲンを固定した。次にスライドを、1×PBSで洗浄し、更なる試験まで、1×PBS中に4℃で24時間保存した。未処理カバーガラススライドを陰性対照として使用した。スライドは、コラーゲン面を上に向けて、48ウエル無組織培養処理プレート(Costar)の中へ設置した。ヘパリン又はヘパリン−SILYを1×PBSに溶解して100μMの濃度にし、100μM/ウエルにて37℃で30分間インキュベートした。未結合のヘパリン又はヘパリン−SILYを吸引し、表面を1mLの1×PBSで洗浄した。添加剤を含有しない1×PBSでインキュベートしたコラーゲン固定化スライドを、陽性対照として使用した。
【0128】
ヒトの全血を800×gで15分間遠心分離し、100μLの多血小板血漿をバフィコート層から取り出し、各ウエルに加えた。37℃で1時間インキュベートした後、多血小板血漿をウエルから除去し、ウエルを1×PBSで穏やかに洗浄して、未結合細胞を除去した。スライドを5%グルタルアルデヒドにより室温で1時間固定し、すすぎ、画像化の前に凍結乾燥した。スライドを3分間金スパッター被覆し、JEOL 840 SEMにより200×で画像化した。結果を図33に示す。この画像は、ヘパリン−SILY結合体による処理が、血小板細胞のコラーゲンへの結合に影響を与えることを示す。
【0129】
〔実施例33〕
原線維密度のクライオSEMでの測定
コラーゲンを、実施例16に記載されたように、各添加剤の10:1モル比の存在下、SEM載物台の上に直接形成し、前記のように処理及び画像化した。原線維密度を計算するため、10,000×の画像を分析した。画像を8ビットの白黒に変換し、各画像の閾値を、ImageJソフトウエア(NIH)を使用して決定した。 閾値は、全ての可視原線維が白色となり、全ての空間が黒色となる値として定義した。白色と黒色の領域の比は、MatLabソフトウエアを使用して計算した。全ての測定値を3回ずつ取り、処理剤について関知しない観察者により閾値を決定した。ゲルの画像を図37に示し、測定された密度を図34に示す。
【0130】
〔実施例34〕
Dc13及びDS−Dc13を含有するゲルの粘弾性の特徴決定
コラーゲンを実施例16のとおりに調製した。粘弾性特徴決定を、コラーゲンと添加剤(処理剤)の異なる比率で形成されたゲルにおいて、実施例17に記載されたとおりに実施した。デルマタン硫酸又はデルマタン−Dc13結合体による処理は、図35に示されているように、未処理コラーゲンよりも、得られたコラーゲンゲルの剛性を増加させる。
【0131】
〔実施例35〕
細胞増殖及び細胞毒性アッセイ
実施例30で調製されたHCA SMCを、96ウエル組織培養用黒色/透明底プレート(Costar)上へ増殖培地にて4.8×104細胞/mLで接種し、4時間で接着させた。増殖培地を吸引し、コラーゲンゲル内での濃度と同等の濃度(1.4×106M)で各添加剤を含有する600μLの分化培地を、各ウエルに加えた。細胞を48時間インキュベートし、次に、製造元のプロトコールに従って、生死及びCyQuant(Invitrogen)アッセイを使用して、細胞毒性及び増殖についてそれぞれ試験した。添加剤を含有しない分化培地中の細胞を対照として使用した。結果を図36に示し、これは、いずれの処理剤も有意な細胞毒性効果を示さなかったことを示している。
【0132】
〔実施例36〕
I型コラーゲンに対する血小板結合及び血小板活性化の阻害
マイクロプレートの調製
I型原線維コラーゲン(Chronolog, Havertown, PA)を等張グルコースに希釈して、20〜100μg/mLの濃度にした。50μLのコラーゲン溶液を、高結合型96ウエルプレートの各ウエルに加えた。プレートを4℃で一晩インキュベートし、次に1×PBSで3回すすいだ。
【0133】
ペプチドグリカンを1×PBSにより25μM〜50μMの濃度に希釈し、50μLの溶液をコラーゲン被覆ウエルに加えた。対照のGAG、ペプチド又はPBSも、対照としてコラーゲン被覆ウエルに加えた。各処理剤を、200rpmで30分間振とうしながら、37℃でインキュベートした。次にウエルを、1×PBSにより3回すすいだ(200rpmの振とうによる20分間のすすぎで未結合の処理剤分子を除去することを含む)。
【0134】
血小板の調製及び活性化
認証されたPurdue IRBプロトコールに従い、インフォームドコンセントを得た健康な志願者から、ヒト全血を静脈穿刺により収集した。最初の5mLの血液は、コラーゲン及び他のタンパク質が混入している可能性があるので廃棄し、次におよそ15mLをクエン酸塩加ガラス製バキュテーナー(BD Bioscience)に収集した。血液をガラス管中で200×gにより20℃で20分間遠心分離した。遠心分離された血液の最上層、すなわち多血小板血漿(PRP)を、血小板試験に使用した。PRP(50μL/ウエル)をマイクロプレートに加え、振とうすることなく、室温で1時間インキュベートした。
【0135】
1時間のインキュベーションの後、PRPを各ウエルから取り出し、5μLのETP(107mMのEDTA、12mMのテオフィリン及び2.8μMのプロスタグランジンE1)を含有するマイクロ遠心分離管に加えて、更なる血小板活性化を阻害した。これらの管を1900×gにより4℃で30分間回転して、血小板をペレット化した。上清(血小板血漿)を、血小板活性化マーカーのPF−4及びNap−2の存在を試験するELISA分析のために収集した。
【0136】
血小板接着
PRPを、コラーゲン/処理剤で被覆したプレートのウエルから除去した後、ウエルを、200rpmで振とうしながら、0.9%NaClで5分間ずつ3回すすいだ。血小板接着を、比色的に定量化するか又は蛍光的に可視化した。
【0137】
比色アッセイ
0.1%のトリトンX−100及び1mg/mLのp−ニトロフェニルリン酸を含有する140μLのクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝液(0.1M、pH5.4)を、各ウエルに加えた。バックグラウンド吸光度を405nmで測定した。次にプレートを、200rmで振とうしながら、室温で40分間インキュベートした。トリトンX−100は、細胞に孔を開けるので、p−ニトロフェニルリン酸が血小板の酸性ホスファターゼと相互作用して、p−ニトロフェノールを生成することを可能にする。40分間のインキュベーションの後、100μLの2M NaOHを各ウエルに加えた。pHの変化は、酸性ホスファターゼを不活性化することにより反応を停止させ、また、p−ニトロフェノールを光学的に活性な化合物に変換する。次に吸光度を405nmで読み取り、接着した血小板の数と相関させた。結果を図41に示す。
【0138】
蛍光アッセイ
接着血小板を、4%パラホルムアルデヒドと共に室温で10分間インキュベートすることにより固定した。血小板に0.1%トリトンX−100を5分間浸透させた。血小板アクチンを、1%BSAを含有するファロイジン−AlexaFluor 488(Invitrogen)と共に30分間インキュベートすることにより標識した。ウエルを、1×PBSで3回すすぎ、接着血小板を、DAPIフィルターを使用する直立型蛍光顕微鏡を使用して画像化した。
【0139】
結果については図42〜52を参照すること。未処理コラーゲン表面上の血小板の凝集は、集塊した血小板によりもたらされるぼやけた像により示されている。理論に束縛されることなく、z方向(プレート表面に対して垂直)での血小板の集塊は、一焦点面において像をとらえることを妨げると考えられる。処理済みの表面では、低減された血小板凝集は、集塊の減少(z方向でのより少ない血小板)をもたらし、焦点の合った像をプレート表面においてとらえることができる。これらの画像は、合成ペプチドグリカンがコラーゲンへの血小板細胞の接着を低減することを示す。
【0140】
血小板活性化マーカーの検出
血小板のペレット化により得られた上清(血小板血漿)を使用して、放出された活性化因子を決定した。血小板因子4(PF−4)及びβ−トロンボグロブリン(Nap−2)は、血小板活性化により放出される血小板のアルファ顆粒内に含有されている2つのタンパク質である。それぞれのタンパク質を検出するために、サンドイッチELISAを利用した。両方のサンドイッチELISAの構成要素を(R&D Systems)から購入し、提供されたプロトコールに従った。値が直線範囲内になるように、血小板血漿の試料は、1×PBS中の1%BSAで1:10,000〜1:40,000に希釈した。図39及び40に示されている結果は、合成ペプチドグリカンによる処理が、コラーゲンIによる血小板の活性化を減少させることを示す。
【0141】
〔実施例37〕
III型及びI型コラーゲンに対する血小板結合及び血小板活性化の阻害
実施例36の方法に以下の変更を加えたものを使用した。
【0142】
マイクロプレートの調製
I型コラーゲン(ラット尾コラーゲン、BD Biosciences)及びIII型コラーゲン(Millipore)を、氷上でNaOH、1×PBS及び10×PBSと混合して、生理学的条件にした。総コラーゲン濃度は、70%のI型コラーゲンと30%のIII型コラーゲンの1mg/mLであった。30μLのコラーゲン溶液を、96ウエルプレートの各ウエルにピペットで加えた。プレートを加湿インキュベーターにより37℃で1時間インキュベートして、原線維コラーゲンから構成されるゲルをウエル中で形成させた。ウエルを1×PBSで3回すすいだ。
【0143】
ペプチドグリカンを1×PBSにより25μMの濃度に希釈し、50μLの溶液をコラーゲン被覆ウエルに加えた。対照のGAG、ペプチド又はPBSも、対照としてコラーゲン被覆ウエルに加えた。ペプチドグリカン又はペプチドの組み合わせは、1×PBS中の25μMの各分子から構成された。処理剤を、200rpmで30分間振とうしながら、37℃でインキュベートした。次にウエルを、1×PBSにより3回すすいだ(200rpmの振とうによる10分間のすすぎで未結合の処理剤分子を除去することを含む)。
【0144】
図54に示されている血小板活性化阻害測定の結果は、合成ペプチドグリカンが、I型とIII型のコラーゲン混合物による血小板細胞の活性化を阻害することを実証する。
【0145】
図55に示されている結果は、ペプチドグリカンが、I型とIII型のコラーゲン混合物への血小板細胞の結合を阻害することを実証する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカン、並びにその形成及び使用方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは、多くの生物学的シグナルを表し、多くの異なる組織の機械的一体性を維持する、体内で最も豊富なタンパク質である。コラーゲンの分子組織がその機能を決定し、そのことが、コラーゲン原線維形成を多くの研究分野における興味深い話題にしている。コラーゲンは、三次元基質として作用することができるゲルを形成するインビトロ自己会合の能力を有し、細胞増殖の機械的及び生物学的シグナルを提供する。追加の細胞外マトリックス成分を用いる及び用いないコラーゲン原線維形成に対する研究は、コラーゲンと他の細胞外マトリックス分子との相互作用について多くの問題を提起した。現在確認されているだけで20種類を超えるコラーゲンが存在し、I型が最も一般的である。腱、靱帯、皮膚、及び骨を含む多くの組織は、主にI型コラーゲンから構成されている。これらの構造は、それぞれ他の種類のコラーゲンのプロテオグリカン及びグリコサミノグリカン、並びに骨の場合は無機質も含有するが、主要な成分はI型コラーゲンである。これらの構造がそれぞれ示す機械的一体性における顕著な差は、主にコラーゲンの入り組んだ組織及び他の非コラーゲンI型成分との相互作用に起因する。
【0003】
デコリンは、コラーゲン原線維形成に影響を及ぼすことが知られているプロテオグリカンであり、したがって、コラーゲンゲルにおいて機械的及び生物学的情報を修飾することができる。コラーゲン組織における構造変化によりもたらされるシグナル、並びにプロテオグリカンの一部であるグリコサミノグリカン鎖に含有されている特有のシグナルは、細胞挙動を変え、所望の細胞反応を提供するようにコラーゲンマトリックスを設計する機構をもたらす。そこで、発明者たちは、コラーゲン組織に分子レベルで影響を及ぼすコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを開発した。これらのコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、例えば、グリコサミノグリカン又は多糖のようなグリカンに結合しているコラーゲン結合性ペプチドに基づいて設計されており、これらの成分によって特定の用途に適合させることができる。本明細書に記載されているコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、コラーゲンマトリックスの形態学的、機械的、及び生物学的特性に影響を及ぼし、したがって細胞挙動を変えるので、そのことがこれらの分子を組織工学用途にとって有用なものとしている。
【発明の概要】
【0004】
一つの実施態様において、コラーゲンマトリックスとコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンとを含む改変コラーゲンマトリックスが提供される。この実施態様において、1)コラーゲンは、架橋されていてもよいし、非架橋であってもよい、2)コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、タンパク質の若しくはコラーゲン原線維形成を調節するプロテオグリカンのアミノ酸配列の一部とアミノ酸相同性を有してもよいし、又は、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、異常型コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンであってもよい、3)改変コラーゲンマトリックスは、外来性の細胞集団を更に含むことができる、4)外来性細胞集団は、非角化若しくは角化上皮細胞から選択されてもよいし、又は内皮細胞、中胚葉誘導細胞、中皮細胞、滑膜細胞、神経細胞、グリア細胞、骨芽細胞、線維芽細胞、軟骨細胞、腱細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、心筋細胞、多能性前駆細胞(例えば、骨髄前駆細胞を含む幹細胞)及び骨形成原細胞からなる群より選択される細胞集団から選択されてもよい、5)改変コラーゲンマトリックスは、少なくとも1つの多糖を更に含むことができる、6)コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、式:PnGxの化合物であることができ、ここで、nは1〜10であり、xは1〜10であり、Pは、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり、そしてGはグリカン(例えば、グリコサミノグリカン又は多糖)である、7)コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、式:(PnL)xGの化合物であることができ、ここで、nは1〜5であり、xは1〜10であり、Pは、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり、Lはリンカーであり、そしてGはグリカンである、8)コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、式:P(LGn)xの化合物であることができ、ここで、nは1〜5であり、xは1〜10であり、Pは、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり、Lはリンカーであり、そしてGはグリカンである、9)合成ペプチドは、小型でロイシンリッチなプロテオグリカン又は血小板レセプター配列のアミノ酸配列とのアミノ酸相同性を有することができる、10)合成ペプチドは、血小板コラーゲンレセプター配列のアミノ酸配列とのアミノ酸相同性を有することができる、11)ペプチドは、RRANAALKAGELYKSILYGC、RLDGNEIKRGC、AHEEISTTNEGVMGC、NGVFKYRPRYFLYKHAYFYPPLKRFPVQGC、CQDSETRTFY、TKKTLRTGC、GLRSKSKKFRRPDIQYPDATDEDITSHMGC、SQNPVQPGC、SYIRIADTNITGC、SYIRIADTNIT、KELNLVYT、KELNLVYTGC、GSITTIDVPWNV、及びGSITTIDVPWNVGCからなる群より選択されるアミノ酸配列を含むことができる、12)グリカンは、アルギン酸塩、アガロース、デキストラン、コンドロイチン、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパラン、ヘパリン、ケラチン、及びヒアルロナンからなる群より選択されることができる、13)グリカンは、デルマタン硫酸、デキストラン、及びヘパリンからなる群より選択されることができる、14)コラーゲンは、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されることができる、15)グリカンは、グリコサミノグリカン又は多糖であることができる、或いは、16)本発明は、この段落に記載された特徴の任意の組み合わせを含むことができる。
【0005】
別の例示的な実施態様において、改変コラーゲンマトリックスの調製方法が提供される。本方法は、コラーゲン溶液を提供する工程、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを提供する工程、そしてコラーゲンをコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンの存在下で重合して、改変コラーゲンマトリックスを形成させる工程を含む。この実施態様は、前段落に記載された特徴のいずれかを含むことができる。また、この実施態様において、コラーゲン溶液中のコラーゲンの量は、約0.4mg/mL〜約6mg/mLであることができ、コラーゲンとコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンのモル比は、約1:1〜約40:1であることができる。
【0006】
更に別の実施態様において、式:PnGxの化合物が提供され、ここで、nは1〜10であり、xは1〜10であり、Pは、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり、そしてGはグリカンである。
【0007】
更なる実施態様において、式:(PnL)xGの化合物が提供され、ここで、nは1〜5であり、xは1〜10であり、Pは、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり、Lはリンカーであり、そしてGはグリカンである。
【0008】
更に別の例示的な実施態様において、式:P(LGn)xの化合物が提供され、ここで、nは1〜5であり、xは1〜10であり、Pは、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり、Lはリンカーであり、そしてGはグリカンである。これらの化合物実施態様のいずれかにおいて、リンカーは、式:−SCH2CH2C(O)NHN=を含むことができ、グリカンは、グリコサミノグリカン又は多糖であることができ、そして上記に記載された任意の適用可能な特徴も含まれうる。
【0009】
別の態様において、改変コラーゲンマトリックスの構造又は機械的特性を変える方法が提供される。本方法は、コラーゲン溶液を提供する工程、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを提供する工程、そしてコラーゲンをコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンの存在下で重合して、変更された改変コラーゲンマトリックスを形成させる工程を含む。上記に記載された任意の適用可能な特徴も含まれうる。
【0010】
別の実施態様において、キットが提供される。本キットは、上記に記載された改変コラーゲンマトリックスのいずれかを含むことができる。この実施態様において、改変コラーゲンマトリックスを滅菌することができ、キットは更に細胞を含むことができ、ここで細胞は、中皮細胞、滑膜細胞、前駆細胞、線維芽細胞、神経細胞、グリア細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、腱細胞、内皮細胞、及び平滑筋細胞から選択されうる。改変コラーゲンマトリックスは、上記に記載された化合物のいずれかを含むことができる。
【0011】
一つの実施態様において、血小板の活性を阻害する方法が記載されるが、本方法は、コラーゲンに接触するコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを提供する工程を含み、ここで、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンがコラーゲンに結合し、血小板の活性が阻害される。別の実施態様において、コラーゲンへの血小板の接着を阻害する方法が記載されるが、本方法は、コラーゲンに接触するコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを提供する工程を含み、ここで、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンがコラーゲンに結合し、コラーゲンへの血小板の接着が阻害される。別の実施態様において、グリカンがヒアルロナン、ヘパリン、及びデキストランからなる群より選択される上記のいずれかの方法が提供される。更に別の実施態様において、上記の方法のいずれかに使用されるコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、RRANAALKAGELYKSILYGC、GSITTIDVPWNV、及びGSITTIDVPWNVGCからなる群より選択されるペプチドを含む。
【0012】
更に別の実施態様において、グラフト作成物が提供される。グラフト作成物は、上記に記載された改変コラーゲンマトリックスのいずれかを含む。
【0013】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国仮出願第61/039,933号(2008年3月27日出願)及び米国仮出願第61/081,984号(2008年7月18日出願)の優先権を請求し、この開示は全て参照として本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】コラーゲンマトリックスの機械的及び整列特性を決定するのに重要である、隣接トロポコラーゲン鎖に近接するプロテオグリカンの間の相互作用の概略図を示す。
【図2】エタノールで脱水した後、実施例16(10:1のコラーゲン:処理剤)のように調製したゲル試料の、窒化ケイ素接触モードチップのk=0.05N/mチップよる走査速度2Hz及び偏位設定ポイント:0〜1ボルトでの接触モードによって作製された、AFM画像である。試料は、コラーゲンのみ(コラーゲン)、並びにコラーゲンとデルマタン硫酸(DS)、コラーゲンとデコリン(デコリン)、デルマタン硫酸−RRANAALKAGELYKSILYGC結合体(DS−SILY)、及びデルマタン硫酸−SYIRIADTNIT結合体(DS−SYIR)である。
【図3】CM−3プレートに結合したコラーゲンに結合しているペプチドRRANAALKAGELYKSILYGC(SILY)の、会合モード及び解離モードでの表面プラスモン共鳴走査である。SILYを、100μM〜1.5μMの異なる濃度で1×HBS−EP緩衝液に2倍の希釈で溶解した。
【図4】96ウエル高結合型プレート(透明底で黒色(Costar))において測定された、ダンシル修飾ペプチドSILYの、コラーゲンへの結合である。PBS 緩衝液のみ;BSA BSA処理ウエル;コラーゲン コラーゲン処理ウエル。蛍光読み取り値は、励起/発光波長がそれぞれ335nm/490nmのM5 Spectramax Spectrophotometer(Molecular Devices)により得た。
【図5】図4に記載された蛍光データから誘導されたコラーゲン−ダンシル修飾SILY結合曲線である。
【図6】試薬であるPDPHと、最終工程において2−ピリジチオールの放出を示す、システイン含有ペプチドと酸化グリコシルアミノグリコシドの2工程結合の化学についての概略的記載である。
【図7】PDPHに結合している酸化デルマタン硫酸の、DTT処理前、及びDTTによる処理剤(結合体から2−ピリジチオールを放出する)処理後における、343nmでの吸光度の測定である。測定値は、PDPHと酸化デルマタン硫酸の比率の決定を可能にする。測定されたΔA=0.35は、1.1のPHPH分子/DSに相当する。
【図8】96ウエル高結合型プレート(透明底で黒色(Costar))において測定された、本明細書に記載されているデルマタン硫酸に結合したダンシル修飾ペプチドSILYの、コラーゲンへの結合である。PBS 緩衝液のみ;BSA BSA処理ウエル;コラーゲン コラーゲン処理ウエル。蛍光読み取り値は、励起/発光波長がそれぞれ335nm/490nmのM5 Spectramax Spectrophotometer(Molecular Devices)により得た。
【図9】20mmのステンレススチール平行平板配置のAR-G2レオメーター(TA Instruments, New Castle, DE)によるゲル試料(4mg/mLのコラーゲン、10:1のコラーゲン:処理剤)のせん断弾性係数の測定であり、20mmのステンレススチール平行平板配置は、0.25Nの垂直力制御を使用して間隙の幅が600μmになるまで低下させた。Col 処理剤なし、すなわちコラーゲンのみ;Col+DS コラーゲン+デルマタン硫酸;Col+デコリン コラーゲン+デコリン;Col+DS−SYIR コラーゲン+デルマタン硫酸−SYIR;Col+DS−SILY コラーゲン+デルマタン硫酸−SILY結合体;Col+SILY コラーゲン+SILYペプチド;Col+SYIR コラーゲン+SYIRIADTNIT(SYIR)ペプチド。
【図10】20mmのステンレススチール平行平板配置のAR-G2レオメーター(TA Instruments, New Castle, DE)によるゲル試料(4mg/mLのコラーゲン、5:1のコラーゲン:処理剤)のせん断弾性係数の測定であり、20mmのステンレススチール平行平板配置は、0.25Nの垂直力制御を使用して間隙の幅が600μmになるまで低下させた。Col 処理剤なし、すなわちコラーゲンのみ;Col+DS コラーゲン+デルマタン硫酸;Col+デコリン コラーゲン+デコリン;Col+DS−SYIR コラーゲン+デルマタン硫酸−SYIR;Col+DS−SILY コラーゲン+デルマタン硫酸−SILY結合体;Col+SILY コラーゲン+SILYペプチド;Col+SYIR コラーゲン+SYIRペプチド。
【図11】20mmのステンレススチール平行平板配置のAR-G2レオメーター(TA Instruments, New Castle, DE)によるゲル試料(4mg/mLのコラーゲン、30:1のコラーゲン:処理剤)のせん断弾性係数の測定であり、20mmのステンレススチール平行平板配置は、0.25Nの垂直力制御を使用して間隙の幅が600μmになるまで低下させた。Col 処理剤なし、すなわちコラーゲンのみ;Col+DS コラーゲン+デルマタン硫酸;Col+デコリン コラーゲン+デコリン;Col+DS−SYIR コラーゲン+デルマタン硫酸−SYIR結合体;Col+DS−SILY コラーゲン+デルマタン硫酸−SILY結合体;Col+SILY コラーゲン+SILYペプチド;Col+SYIR コラーゲン+SYIRペプチド。
【図12】20mmのステンレススチール平行平板配置のAR-G2レオメーター(TA Instruments, New Castle, DE)によるゲル試料(1.5mg/mLのコラーゲンIII、5:1のコラーゲン:処理剤)のせん断弾性係数の測定であり、20mmのステンレススチール平行平板配置は、0.25Nの垂直力制御を使用して間隙の幅が500μmになるまで低下させた。◆−処理剤なし、すなわちコラーゲンIIIのみ;■−コラーゲン+デルマタン硫酸(1:1);+−コラーゲン+デルマタン硫酸(5:1);×−コラーゲン+デルマタン硫酸−KELNLVYTGC(DS−KELN)結合体(1:1);▲−コラーゲン+デルマタン硫酸−KELN結合体(5:1);●−コラーゲン+KELNLVYTGC(KELN)ペプチド。
【図13】20mmのステンレススチール平行平板配置のAR-G2レオメーター(TA Instruments, New Castle, DE)によるゲル試料(1.5mg/mLのコラーゲンIII、5:1のコラーゲン:処理剤)のせん断弾性係数の測定であり、20mmのステンレススチール平行平板配置は、0.25Nの垂直力制御を使用して間隙の幅が500μmになるまで低下させた。◆−処理剤なし、すなわちコラーゲンIIIのみ;■−コラーゲン+デルマタン硫酸(1:1);+−コラーゲン+デルマタン硫酸(5:1);×−コラーゲン+デルマタン硫酸−GSIT(DS−GSIT)結合体(1:1);▲−コラーゲン+デルマタン硫酸−GSIT結合体(5:1);●−コラーゲン+GSITTIDVPWNVGC(GSIT)ペプチド。
【図14】混濁度測定である。ゲル溶液は、実施例16に記載されているとおり(特に指示のない限り、コラーゲン4mg/mL及びコラーゲン対処理剤10:1)に調製し、50μL/ウエルを4℃で384ウエルプレートに加えた。プレートを、原線維形成を開始する前に、4℃で4時間保持した。37℃でSpectraMax M5を使用して、313nmにより30秒間隔で6時間吸光度を測定した。Col 処理剤なし、すなわちコラーゲンのみ;DS コラーゲン+デルマタン硫酸;デコリン コラーゲン+デコリン;DS−SILY コラーゲン+デルマタン硫酸−SILY結合体;DS−SYIR コラーゲン+デルマタン硫酸−SYIR結合体。
【図15】混濁度測定である。ゲル溶液は、実施例16に記載されているとおり(特に指示のない限り、コラーゲン4mg/mL及びコラーゲン対処理剤10:1)に調製し、50μL/ウエルを4℃で384ウエルプレートに加えた。プレートを、原線維形成を開始する前に、4℃で4時間保持した。37℃でSpectraMax M5を使用して、313nmにより30秒間隔で6時間吸光度を測定した。Col 処理剤なし、すなわちコラーゲンのみ;DS コラーゲン+デルマタン硫酸;デコリン コラーゲン+デコリン;DS−SILY コラーゲン+デルマタン硫酸−SILY結合体。
【図16】混濁度測定である。ゲル溶液は、実施例16に記載されているとおり(特に指示のない限り、コラーゲン4mg/mL及びコラーゲン対処理剤1:1)に調製し、50μL/ウエルを4℃で384ウエルプレートに加えた。プレートを、原線維形成を開始する前に、4℃で4時間保持した。37℃でSpectraMax M5を使用して、313nmにより30秒間隔で6時間吸光度を測定した。Col 処理剤なし、すなわちコラーゲンのみ;DS コラーゲン+デルマタン硫酸10:1;SILY コラーゲン+SILYペプチド;SYIR コラーゲン+SYIRペプチド。
【図17】図14において表されたデータから測定した原線維形成の半減期である。Col 処理剤なし、すなわちコラーゲンのみ;DS コラーゲン+デルマタン硫酸;デコリン コラーゲン+デコリン;DS−SILY コラーゲン+デルマタン硫酸−SILY結合体;DS−SYIR コラーゲン+デルマタン硫酸−SYIR結合体。
【図18】60×で1.4NAの水浸レンズを使用するOlympus FV1000共焦点顕微鏡により記録された、実施例16に従って調製(4mg/mLのコラーゲン;10:1のコラーゲン:処理剤)したゲルの、共焦点反射顕微鏡画像である。試料を、488nmのレーザー光線で照らし、反射光を、青色反射フィルターを使用する光電子増倍管で検出した。それぞれのゲルをゲルの底から100μMで画像化し、代表的な試料採取を確実にするため3つの異なる場所を画像化した。コラーゲン 処理剤なし、すなわちコラーゲンのみ;Col+DS コラーゲン+デルマタン硫酸;Col+デコリン コラーゲン+デコリン;Col+DS−SILY コラーゲン+デルマタン硫酸−SILY結合体;Col+DS−SYIR コラーゲン+デルマタン硫酸−SYIR結合体。
【図19】ゲル構造の5000倍のクライオ走査電子顕微鏡画像である。クライオSEM用のゲルを、実施例16のとおりに(4mg/mLのコラーゲン;10:1のコラーゲン:処理剤)、SEM載物台の上に直接形成し、37℃で一晩インキュベートした。各試料を昇華条件下で20分間蒸発させた。試料を白金スパッター被覆により120分間被覆した。試料を−130℃でクライオ載物台に移し、同様の配向の各領域を、処理剤同士を比較するために画像化した。コラーゲン 処理剤なし、すなわちコラーゲンのみ;Col+DS コラーゲン+デルマタン硫酸;Col+デコリン コラーゲン+デコリン;Col+DS−SILY コラーゲン+デルマタン硫酸−SILY結合体;Col+DS−SYIR コラーゲン+デルマタン硫酸−SYIR結合体。
【図20】ゲル構造の5000倍のクライオ走査電子顕微鏡画像である。クライオSEM用のゲルを、実施例22に記載されているとおりに(1mg/mLのコラーゲン(III型);1:1のコラーゲン:処理剤)、SEM載物台の上に直接形成した。同様の配向の各領域を、処理剤同士を比較するために画像化した。パネルa、コラーゲン、処理剤なし、すなわちコラーゲンのみ;パネルb、コラーゲン+デルマタン硫酸;パネルc、コラーゲン+デルマタン硫酸−KELN結合体;パネルd、コラーゲン+デルマタン硫酸−GSIT結合体。
【図21】図20において示されたクライオSEM画像から測定された平均空間率である。a)コラーゲン、処理剤なし、すなわちコラーゲンのみ;b)コラーゲン+デルマタン硫酸;c)コラーゲン+デルマタン硫酸−KELN結合体;d)コラーゲン+デルマタン硫酸−GSIT結合体。全ての差はp=0.05で有意である。
【図22】図19において示されたクライオSEM画像から測定された平均原線維直径である。コラーゲン 処理剤なし、すなわちコラーゲンのみ;Col+DS コラーゲン+デルマタン硫酸;Col+デコリン コラーゲン+デコリン;Col+DS−SILY コラーゲン+デルマタン硫酸−SILY結合体;Col+DS−SYIR コラーゲン+デルマタン硫酸−SYIR結合体。
【図23】図19において示されたクライオSEM画像から測定されたコラーゲンシート間の平均間隔である。コラーゲン 処理剤なし、すなわちコラーゲンのみ;Col+DS コラーゲン+デルマタン硫酸;Col+デコリン コラーゲン+デコリン;Col+DS−SILY コラーゲン+デルマタン硫酸−SILY結合体;Col+DS−SYIR コラーゲン+デルマタン硫酸−SYIR結合体。
【図24】PDPHに結合した酸化ヘパリンの処理前、及びSILYによる処理(結合体から2−ピリジルチオールを放出し、酸化へパリンに結合したSILYペプチドの比率の決定を可能にする)の後の、343nmでの吸光度の測定である。測定されたΔAは、5.44のSILY分子/酸化ヘパリンに相当する。
【図25】コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンにより調製されたコラーゲンゲルにおける、ヒト冠動脈平滑筋細胞増殖の測定である。コラーゲン 処理剤なし、すなわちコラーゲンのみ;DS コラーゲン+デルマタン硫酸;DS−SILY コラーゲン+デルマタン硫酸−SILY結合体;DS−SYIR コラーゲン+デルマタン硫酸−SYIR結合体;SILY コラーゲン+SILYペプチド;及びSYIR コラーゲン+SYIRペプチド。
【図26】DS−SILY結合の特徴決定である。2時間後、最終ΔA343nmは、各DS分子1個に添加されたSILY分子の1.06個に相当した。注:t=0は、DS−PDPHへのSILYの添加と343nmでの溶液の測定との間の僅かな遅れのために、近似的なゼロ時点である。
【図27】Dc13のDSへの結合である。343nmでの吸光度の増加により測定されたピリジン−2−チオンの生成は、DSポリマー鎖あたり0.99個のDc13ペプチドを示す。
【図28】コラーゲンへのDS−ZDc13のマイクロプレート蛍光結合である。DS−ZDc13は、用量依存的にコラーゲン表面に特異的に結合した。
【図29】混濁度測定によるコラーゲン原線維形成である。DS−Dc13は、原線維形成を遅延し、全体的な吸光度を用量依存的に減少する。対照的に、遊離Dc13ペプチドは、コラーゲン:添加剤が1:1の高いモル比でのコラーゲンのみと比較したとき、原線維形成にほとんど影響を与えないように見受けられる。
【図30】クライオSEMによる平均原線維直径である。A.デコリン及び合成ペプチドグリカンは、コラーゲン又はコラーゲン+DSよりも原線維直径を有意に減少する。B.コラーゲンのみと比較すると、遊離ペプチドDc13は、原線維直径に影響を与えないが、SILYは、原線維直径の減少をもたらす。
【図31】ゲルの圧縮である。A.及びB.それぞれ3及び5日目:デコリン及びペプチドグリカンはコラーゲン及びDSと比べると有意であり、*は、DS−Dc13を示し、DSは、3日目には有意ではない。棒線は有意ではないことを示す。C.7日目:+デコリンは、全ての試料に対して有意であり、#DSは、コラーゲンと比較すると有意である。D.10日目:++コラーゲン及びDSは有意であり、‡DS−Dc13は、デコリン及びコラーゲンと比較すると有意である。
【図32】ファスチンアッセイによるエラスチン評価。A.DS−SILYは、全ての試料においてエラスチン生成を有意に増加させた。DS及びDS−Dc13は、コラーゲンよりもエラスチン生成を有意に低減させた。細胞のない対照試料のコラーゲンゲルは、エラスチン生成を示さなかった。B.遊離ペプチドは、コラーゲンと比較するとエラスチン生成に僅かな減少をもたらしたが、どの点においても有意ではなかった。
【図33】多血小板血漿のインキュベートされたスライドのSEM画像である。ヘパリン−SILY処理における矢印は、この処理に特有の原線維様構造を示す。尺度目盛り=100μm。
【図34】クライオSEMによる原線維密度である。原線維密度は、原線維含有領域と空間の比として定義される。DS−SILY及び遊離SILYペプチドは、有意に大きな原線維密度を有した一方、コラーゲンは有意に低い原線維密度を有した。DS−Dc13はコラーゲンと比較すると有意ではなかった。
【図35】コラーゲンゲルの貯蔵弾性係数(G′)である。A.5:1、B.10:1及びC.30:1のコラーゲン:添加剤のモル比で、それぞれの添加剤により形成されたコラーゲンゲルのレオロジー機械試験。1.0Paの制御圧力による0.1Hz〜1.0Hzの周波数掃引で実施した。G′の平均±標準誤差を表す。
【図36】細胞増殖及び細胞毒性アッセイである。A.CyQuant、B.生存及びC.死亡アッセイにおける全ての添加剤において有意な差は見られなかった。
【図37】原線維密度のクライオSEM画像である。コラーゲンゲルを、コラーゲン:添加剤のモル比が10:1の各添加剤の存在下で形成した。A.DS、デコリン又はペプチドグリカン。B.遊離ペプチド。画像を1,000×で撮り、尺度目盛りは5μmである。
【図38】コラーゲンゲルのAFM画像である。コラーゲンゲルを、コラーゲン:添加剤のモル比が10:1の各添加剤の存在下で形成した。Dバンド形成は、全ての添加剤において観察される。画像は1μm2である。
【図39】血小板活性化の阻害である。活性化因子である血小板第4因子(PF−4)及びβ−トロンボグロブリン(Nap−2)の放出を決定することにより測定される。96ウエルプレートの表面に固定されたコラーゲンを、それぞれの処理剤と共にプレインキュベートし、続いて多血小板血漿(PRP)と共にインキュベートした。値を、対照処理剤(リン酸緩衝食塩水、PBS)により放出された活性化因子の量と比較した、処理剤により放出された活性化因子の率として報告する。*は、未処理(リン酸緩衝食塩水、PBS)のコラーゲン表面に対して差が有意であることを示す。Dex デキストラン;Dex−SilY9 デキストラン−(SILY)9結合体;Hep ヘパリン;Hep−SILY ヘパリン−SILY結合体;HA ヒアルロナン;HA−SILY ヒアルロナン−SILY結合体;SILY SILYペプチド。溶解度の限界のために、Hep、Hep−SILY、HA、及びHA−SILYは25μMでインキュベートした。他の全ての処理剤は50μMであった(処理剤を除去した後、プレートを、PRPの添加の前にPBSで<1分間洗浄した)。Hep及びHA(ヒアルロン酸)結合体は、多糖1つあたりおよそ4つのペプチドを含有した。
【図40】血小板活性化の阻害である。活性化因子である血小板第4因子(PF−4)及びβ−トロンボグロブリン(Nap−2)の放出を決定することにより測定される。96ウエルプレートの表面に固定されたコラーゲンを、それぞれの処理剤と共にプレインキュベートし、続いて多血小板血漿(PRP)と共にインキュベートした。値を、対照処理剤(リン酸緩衝食塩水、PBS)により放出された活性化因子の量と比較した、処理剤により放出された活性化因子の率として報告する。Dex デキストラン;Dex−SILY6 デキストラン−(SILY)6結合体;Hep ヘパリン;Hep−GSIT ヘパリン−GSIT結合体、GSIT GSITペプチド、SILY SILYペプチド。全ての処理剤で測定した値は、PBSに対して有意である。Dex、SILY及びDex−SILY6は、25μMであり、他の全ての処理剤は50μMである。**は、Hep−GSIT処理の値が、Hep処理の値に対して有意であり、同様に、Dex−SILY6処理の値が、PF4のDex処理の値に対して有意であったことを示す。(処理剤を除去した後、プレートを20分間すすいだ)。Hep結合体は、多糖1つあたりおよそ4つのペプチドを含有した。
【図41】比色アッセイによるコラーゲンへの血小板結合の阻害である。96ウエルプレートの表面に固定されたコラーゲンを、それぞれの処理剤と共にプレインキュベートし、続いて多血小板血漿(PRP)と共にインキュベートした。記載されたように調製したマイクロプレートアッセイを、以下の各処理剤と共にプレインキュベートした:コラーゲン PBSのみ;デキストラン;Dex−SIL6 デキストラン−(SILY)6;SILY SILYペプチド。*コラーゲン(処理剤なし)に対して有意。
【図42】接着した血小板の蛍光画像である。接着血小板を、0.1%トリトンX−100を浸透させた4%パラホルムアルデヒドで固定し、血小板のアクチンをファロイジン−AlexaFluor 488で標識した。接着血小板を、DAPIフィルターを使用する直立型蛍光顕微鏡を使用して画像化した。処理剤なし、すなわちPBSで処理したコラーゲン。
【図43】接着した血小板の蛍光画像である。接着血小板を、0.1%トリトンX−100を浸透させた4%パラホルムアルデヒドで固定し、血小板のアクチンをファロイジン−AlexaFluor 488で標識した。接着血小板を、DAPIフィルターを使用する直立型蛍光顕微鏡を使用して画像化した。処理剤:デキストラン。
【図44】接着した血小板の蛍光画像である。接着血小板を、0.1%トリトンX−100を浸透させた4%パラホルムアルデヒドで固定し、血小板のアクチンをファロイジン−AlexaFluor 488で標識した。接着血小板を、DAPIフィルターを使用する直立型蛍光顕微鏡を使用して画像化した。処理剤:デキストラン−SILY9結合体。
【図45】接着した血小板の蛍光画像である。接着血小板を、0.1%トリトンX−100を浸透させた4%パラホルムアルデヒドで固定し、血小板のアクチンをファロイジン−AlexaFluor 488で標識した。接着血小板を、DAPIフィルターを使用する直立型蛍光顕微鏡を使用して画像化した。処理剤なし、すなわちPBSで処理したコラーゲン。
【図46】接着した血小板の蛍光画像である。接着血小板を、0.1%トリトンX−100を浸透させた4%パラホルムアルデヒドで固定し、血小板のアクチンをファロイジン−AlexaFluor 488で標識した。接着血小板を、DAPIフィルターを使用する直立型蛍光顕微鏡を使用して画像化した。処理剤:ヒアルロナン。
【図47】接着した血小板の蛍光画像である。接着血小板を、0.1%トリトンX−100を浸透させた4%パラホルムアルデヒドで固定し、血小板のアクチンをファロイジン−AlexaFluor 488で標識した。接着血小板を、DAPIフィルターを使用する直立型蛍光顕微鏡を使用して画像化した。処理剤:ヒアルロナン−SILY結合体。
【図48】接着した血小板の蛍光画像である。接着血小板を、0.1%トリトンX−100を浸透させた4%パラホルムアルデヒドで固定し、血小板のアクチンをファロイジン−AlexaFluor 488で標識した。接着血小板を、DAPIフィルターを使用する直立型蛍光顕微鏡を使用して画像化した。処理剤なし、すなわちPBSで処理したコラーゲン。
【図49】接着した血小板の蛍光画像である。接着血小板を、0.1%トリトンX−100を浸透させた4%パラホルムアルデヒドで固定し、血小板のアクチンをファロイジン−AlexaFluor 488で標識した。接着血小板を、DAPIフィルターを使用する直立型蛍光顕微鏡を使用して画像化した。処理剤:ヘパリン。
【図50】接着した血小板の蛍光画像である。接着血小板を、0.1%トリトンX−100を浸透させた4%パラホルムアルデヒドで固定し、血小板のアクチンをファロイジン−AlexaFluor 488で標識した。接着血小板を、DAPIフィルターを使用する直立型蛍光顕微鏡を使用して画像化した。処理剤:ヘパリン−SILY結合体。
【図51】接着した血小板の蛍光画像である。接着血小板を、0.1%トリトンX−100を浸透させた4%パラホルムアルデヒドで固定し、血小板のアクチンをファロイジン−AlexaFluor 488で標識した。接着血小板を、DAPIフィルターを使用する直立型蛍光顕微鏡を使用して画像化した。処理剤なし、すなわちPBSで処理したコラーゲン。
【図52】接着した血小板の蛍光画像である。接着血小板を、0.1%トリトンX−100を浸透させた4%パラホルムアルデヒドで固定し、血小板のアクチンをファロイジン−AlexaFluor 488で標識した。接着血小板を、DAPIフィルターを使用する直立型蛍光顕微鏡を使用して画像化した。処理剤:SILYペプチド。
【図53】ヒドロキシプロリンにより決定されるコラーゲン分解である。処理剤:Ctrl 添加された細胞なし;Col 処理剤の添加なしのコラーゲン;DS デルマタン硫酸;デコリン;DS−SILY デルマタン硫酸−SILY結合体;DS−Dc13 デルマタン硫酸−Dc13結合体;SILY SILYペプチド;Dc13 Dc13ペプチド。
【図54】血小板活性化の阻害である。活性化因子である血小板第4因子(PF−4)及びβ−トロンボグロブリン(Nap−2)の放出を決定することにより測定される。96ウエルプレートの表面のI及びIII型コラーゲンゲルを、各処理剤と共にプレインキュベートし、続いてPRPと共にインキュベートした。血小板活性化は、活性化因子PF−4及びNap−2の放出により測定した。処理剤:PBS 緩衝液のみ;Dex デキストラン;Dex−SILY デキストラン−SILY結合体;Dex−GSIT デキストラン−GSIT結合体;Dex−KELN デキストラン−KELN結合体;Dex−Dc13 デキストラン−Dc13結合体;SILY SILYペプチド;GSIT GSITペプチド;KELN KELNペプチド;Dc13 Dc13ペプチド;Dex−SILY+Dex−GSIT;デキストラン−SILY結合体とデキストラン−GSIT結合体の組み合わせ;SILY+GSIT;SILYペプチドとGSITペプチドの組み合わせ。*は、結果が処理剤なし(PBS)のコラーゲン表面に対して有意であることを示す。**は、結果がDexによるコラーゲン表面に対しても有意であることを示す。***は、結果が対応するペプチド対照によるコラーゲン表面に対しても有意であることを示す。全てのペプチドグリカンは、処理剤なし(PBS)又はデキストラン処理剤と比較して、NAP−2放出に有意な低下を引き起こし、同時に、Dex−GSITも、ペプチド対照(GSIT)よりも放出を減少した。Dex−GSIT及びDex−KELNは、処理剤なし(PBS)及びデキストラン処理剤に対してPF−4放出を有意に減少し、同時に、Dex−Dc13は、処理剤なし(PBS)よりもPF−4放出を有意に減少した。
【図55】比色アッセイによるコラーゲンへの血小板結合(接着)の阻害である。処理剤:PBS 緩衝液のみ;Dex デキストラン;Dex−SILY デキストラン−SILY結合体;Dex−GSIT デキストラン−GSIT結合体;Dex−KELN デキストラン−KELN結合体;Dex−Dc13 デキストラン−Dc13結合体;SILY SILYペプチド;GSIT GSITペプチド;KELN KELNペプチド;Dc13 Dc13ペプチド;Dex−SILY+Dex−GSIT;デキストラン−SILY結合体とデキストラン−GSIT結合体の組み合わせ;SILY+GSIT;SILYペプチドとGSITペプチドの組み合わせ。*処理剤なし(PBS)のコラーゲン表面に対して有意。**Dexによるコラーゲン表面に対しても有意。***対応するペプチド対照によるコラーゲン表面に対しても有意。Dex−SILY及びDex−KELNは、処理剤なし(PBS)又はデキストラン処理剤と比較して血小板接着を有意に減少し、同時に、Dex−GSITも、ペプチド対照処理剤(GSIT)よりも血小板接着を減少した。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明において使用されるとき、「コラーゲン結合性合成ペプチドグリカン」は、グリカンと合成ペプチドとのコラーゲン結合性の結合体を意味する。「コラーゲン結合性合成ペプチドグリカン」は、通常はコラーゲン原線維形成に関与しないタンパク質又はプロテオグリカンの一部とのアミノ酸相同性を有することができる。これらのコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを、本明細書において「異常型コラーゲン結合性合成ペプチドグリカン」と呼ぶ。異常型コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、コラーゲン原線維形成に影響を与える場合も、与えない場合もある。他のコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、通常はコラーゲン原線維形成に関与するタンパク質又はプロテオグリカンの一部とのアミノ酸相同性を有することができる。これらのコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを、本明細書において「原線維発生型コラーゲン結合性合成ペプチドグリカン」と呼ぶ。
【0016】
本明細書で使用されるとき、「改変コラーゲンマトリックス」は、コラーゲンが、所定の条件下で、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンと組み合わされてインビトロで重合される、コラーゲンマトリックスを意味し、ここで条件は、変わりうるものであって、pH、リン酸濃度、温度、緩衝液組成、イオン強度、並びにコラーゲンの組成及び濃度からなる群より選択されるが、これらに限定されない。
【0017】
本明細書で使用されるとき、「改変グラフト作成物」は、「改変コラーゲンマトリックス」を含むグラフト作成物を意味する。
【0018】
本発明の一つの態様において、改変コラーゲンマトリックスが提供される。改変コラーゲンマトリックスは、コラーゲン及びコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを含む。一つの実施態様において、改変コラーゲンマトリックは非架橋であることができる。別の実施態様において、マトリックスは架橋されていることができる。多様な例示的な実施態様において、カルボジイミド、アルデヒド、リシル−オキシダーゼ、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、イミドエステル、ヒドラジド、及びマレイミドのような架橋剤、並びにゲニピンなどを含む多様な天然の架橋剤を、溶液中のコラーゲンの重合の前に、その間に、又はその後に、添加することができる。
【0019】
多様な例示的な実施態様において、改変コラーゲンマトリックスを調製するために本明細書において使用されるコラーゲンは、I〜XXVIII型のコラーゲンを含む任意の種類のコラーゲンであることができ、単独で又は組み合わせを、例えば、I、II、III及び/若しくはIVを使用することができる。一つの実施態様において、改変コラーゲンマトリックスは、市販のコラーゲン(例えば、Sigma, St. Louis, MO)を使用して形成される。代替的な実施態様において、コラーゲンを、腸、膀胱又は胃の組織のような粘膜下組織物質から精製することができる。更なる実施態様において、コラーゲンを尾腱から精製することができる。追加的な実施態様において、コラーゲンを皮膚から精製することができる。多様な態様において、コラーゲンは、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンに加えて、フィブロネクチン、又は皮膚タンパク質、糖タンパク質、及び多糖類などのような、内在性又は外来的に加えられた非コラーゲン性タンパク質も含有することができる。本明細書に記載されている方法により調製される改変グラフト作成物又は改変コラーゲンマトリックスは、移植又は注射部位で関連する組織の特徴的形質をとることができる、移植部位の内在組織の再増殖(例えば、生物学的再構築)のための作成物として機能することができる。
【0020】
多様な例示的な態様において、本発明の改変グラフト作成物又は改変コラーゲンマトリックスを形成するのに使用されるコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドを含む。幾つかの実施態様において、これらのペプチドは、小型でロイシンリッチなプロテオグリカン又は血小板レセプター配列のアミノ酸配列に対する相同性を有する。多様な実施態様において、合成ペプチドは、RRANAALKAGELYKSILYGC、RLDGNEIKRGC、AHEEISTTNEGVMGC、NGVFKYRPRYFLYKHAYFYPPLKRFPVQGC、CQDSETRTFY、TKKTLRTGC、GLRSKSKKFRRPDIQYPDATDEDITSHMGC、SQNPVQPGC、SYIRIADTNITGC、SYIRIADTNIT、KELNLVYT、KELNLVYTGC、GSITTIDVPWNV、及びGSITTIDVPWNVGC、からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、合成ペプチドは、RRANAALKAGELYKSILYGC、RLDGNEIKRGC、AHEEISTTNEGVMGC、NGVFKYRPRYFLYKHAYFYPPLKRFPVQGC、CQDSETRTFY、TKKTLRTGC、GLRSKSKKFRRPDIQYPDATDEDITSHMGC、SQNPVQPGC、SYIRIADTNITGC、SYIRIADTNIT、KELNLVYT、KELNLVYTGC、GSITTIDVPWNV、GSITTIDVPWNVGC、及びこれらの14個のアミノ酸配列のいずれかと、80%、85%、90%、95%又は98%の相同性を有するアミノ酸配列、からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むことができる、又はこれらのいずれかであることができる。合成ペプチドは、コラーゲン結合活性を有し、且つ、フォンウィルブランド因子のコラーゲン結合ドメインと、又は、Chiang, et al.. J. Biol. Chem. 277: 34896-34901 (2002), Huizinga, et al., Structure 5: 1147-1156 (1997), Romijn, et al., J. Biol. Chem. 278: 15035-15039 (2003)及びChiang, et al., Cardio. & Haemato. Disorders-Drug Targets 7: 71-75 (2007)(それぞれ参照として本明細書に組み込まれる)に記載されている血小板コラーゲンレセプターのコラーゲン結合ドメインと、80%、85%、90%、95%、98%又は100%の相同性があるペプチドから選択される、5〜40個のアミノ酸の任意のペプチドであることもできる。
【0021】
合成ペプチドに結合しているグリカン(例えば、グリコサミノグリカン、略語GAG又は多糖)は、アルギン酸塩、アガロース、デキストラン、コンドロイチン、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパラン、ヘパリン、ケラチン、及びヒアルロナンからなる群より選択されうる。一つの実施態様において、グリカンは、デルマタン硫酸、デキストラン、及びヘパリンからなる群より選択される。
【0022】
一つの例示的な態様において、改変コラーゲンマトリックス又は改変グラフト作成物は、滅菌されていることができる。本明細書で使用されるとき、「滅菌」又は「滅菌する」又は「滅菌される」は、内毒素、核酸汚染物質、及び感染病原体が含まれるが、これらに限定されない不要な汚染物質を除去することによって、マトリックス又はグラフト作成物を殺菌することを意味する。
【0023】
多様な例示的な実施態様において、改変コラーゲンマトリックス又は改変グラフト作成物は、グルタルアルデヒドタンニング、酸性pHでのホルムアルデヒドタンニング、プロピレンオキシド又はエチレンオキシド処理、ガスプラズマ滅菌、ガンマ放射線、電子ビーム及び/又は過酢酸のような過酸による滅菌を含む、従来の滅菌技術を使用して、殺菌及び/又は滅菌することができる。マトリックス又は作成物の構造及びバイオトロピック(biotropic)特性に有害な影響を与えないような滅菌技術を使用することができる。例示的な滅菌技術は、改変グラフト作成物又は改変コラーゲンマトリックスを、過酢酸、1〜4Mラドのガンマ照射(又は1〜2.5Mラドのガンマ照射)、エチレンオキシド処理又はガスプラズマ滅菌に暴露することである。一つの実施態様において、改変グラフト作成物を、1つ以上の滅菌方法に付すことができる。例示的な実施態様において、溶液中のコラーゲンを滅菌又は殺菌することもできる。改変コラーゲンマトリックス又は改変グラフト作成物をプラスチックラップ又はホイルラップを含む任意の種類の容器で包むことができ、更に滅菌することができる。
【0024】
これらの実施態様のいずれかにおいて、改変グラフト作成物又は改変コラーゲンマトリックスは、追加の細胞集団を更に含むことができる。追加の細胞集団は、1つ以上の細胞集団を含むことができる。多様な実施態様において、細胞集団は、非角化若しくは角化上皮細胞の集団又は内皮細胞、中胚葉誘導細胞、中皮細胞、滑膜細胞、神経細胞、グリア細胞、骨芽細胞、線維芽細胞、軟骨細胞、腱細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、心筋細胞、多能性前駆細胞(例えば、骨髄前駆細胞を含む幹細胞)及び骨形成原細胞からなる群より選択される細胞集団を含む。多様な実施態様において、改変グラフト作成物又は改変コラーゲンマトリックスに、1種類以上の細胞の組み合わせを接種することができる。
【0025】
多様な態様において、本発明の改変コラーゲンマトリックス又は改変グラフト作成物を、ミネラル、アミノ酸、糖、ペプチド、タンパク質、ビタミン(例えば、アスコルビン酸)を含む栄養素、又はラミニン、フィブロネクチン、ヒアルロン酸、フィブリン、エラスチン若しくはアグレカン、又は上皮増殖因子、血小板誘導増殖因子、形質転換増殖因子ベータ若しくは線維芽細胞増殖因子のような増殖因子、及びデキサメタゾンのようなグルココルチコイド、又はイオン性及び非イオン性の水溶性ポリマーのような粘弾性変更剤;アクリル酸ポリマー;ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー及びポリビニルアルコールのような親水性ポリマー;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びエーテル化セルロースのようなセルロースポリマー、及びセルロースポリマー誘導体;ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、乳酸とグリコール酸のコポリマー、又は天然と合成の両方の他の高分子作用物質、と組み合わせることができる。他の例示的な実施態様において、カルボジイミド、アルデヒド、リシル−オキシダーゼ、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、イミドエステル、ヒドラジド、及びマレイミドのような架橋剤、並びにゲニピンなどを含む天然の架橋剤を、細胞の添加の前に、それと同時に、又はその後に、添加することができる。
【0026】
上記において考察したように、一つの実施態様によると、細胞を、コラーゲン重合の前又はコラーゲン重合の間に、改変コラーゲンマトリックス又は改変グラフト作成物に加えることができる。細胞を含む改変コラーゲンマトリックスを、改変グラフト作成物として使用するために、後に宿主に注射又は移植することができる。別の実施態様において、改変コラーゲンマトリックス上の又はその内の細胞を、所定の時間の長さで、インビトロにおいて培養して、宿主への移植又は注射の前に、細胞数を増加させる又は所望の再構築を誘導させることができる。
【0027】
一つの実施態様によると、改変コラーゲンマトリックス又は改変グラフト作成物を含むキットが提供される。キットそれ自体は、任意の種類の容器内にあることができ、キットは、キットの構成要素の使用説明書を含有することができる。一つの実施態様において、細胞は、キットの構成要素の1つを構成することができる。多様な実施態様において、改変コラーゲンマトリックスの特性は異なっていてよい。多様な例示的な実施態様において、キットにおける改変コラーゲンマトリックス又は改変グラフト作成物は、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンに加えて、非コラーゲンタンパク質及び多糖類を含む多様な他の構成要素も含むことができる。一つの実施態様において、キットは、例えば改変コラーゲンマトリックス又は改変グラフト作成物を含有する、器、バイアル、容器、バッグ又はラップを含む。別の実施態様において、キットは、別々の器(例えば、バイアル、容器、バッグ又はラップ)を含み、それぞれ1つ以上の以下の構成要素を含有する:コラーゲン溶液又は凍結乾燥コラーゲン、及び1種類以上のコラーゲン結合性合成ペプチドグリカン。別の実施態様において、キットは、別々の器を含み、それぞれ以下の構成要素を含有する:コラーゲン溶液又は凍結乾燥コラーゲン、緩衝液、及び1種類以上のコラーゲン結合性合成ペプチドグリカン。これらの実施態様のいずれかにおいて、キットは、緩衝液、滅菌若しくは殺菌剤、非コラーゲンタンパク質又は多糖類、及び/或いは、キット試薬の使用方法を記載する又は改変コラーゲンマトリックス若しくは改変グラフト作成物の使用方法を記載する指示資料、を更に含むことができる。キットは、改変コラーゲンマトリックス又は改変グラフト作成物の不在下で薬理学的作用物質として使用される、1種類以上のコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンも含有することができる。この実施態様において、キットは、任意の種類の容器内にあることができ、キットは、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンの使用説明書を含有することができる。
【0028】
更に別の実施態様において、キットは、非角化若しくは角化上皮細胞の集団、又は、内皮細胞、中胚葉誘導細胞、中皮細胞、滑膜細胞、神経細胞、グリア細胞、骨芽細胞、線維芽細胞、軟骨細胞、腱細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、心筋細胞、多能性前駆細胞(例えば、骨髄前駆細胞を含む幹細胞)及び骨形成原細胞からなる群より選択される細胞集団が含まれるが、これらに限定されない細胞の容器(例えば、例としてフラスコ、アンプル、バイアル、チューブ又はボトル)を更に含む。別の実施態様において、細胞はプレート上に存在することができる。一つの実施態様において、細胞の容器を1つ以上含むことができ、キットは、1種類以上の細胞及び細胞培養試薬を含むことができる。
【0029】
一つの例示的な態様において、改変コラーゲンマトリックスの調製方法が提供される。本方法は、コラーゲン溶液を提供する工程、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを提供する工程、そしてコラーゲンをコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンの存在下で重合して、改変コラーゲンマトリックスを形成させる工程を含む。多様な実施態様において、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、通常はコラーゲン原線維形成を調節するプロテオグリカンのアミノ酸配列の一部とのアミノ酸相同性を有する異常型コラーゲン結合性合成ペプチドグリカン、又は原線維発生型コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンであることができる。
【0030】
コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンが異常型コラーゲン結合性合成ペプチドグリカン又は原線維発生型コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンである実施態様において、コラーゲンマトリックスの構造又は機械的特性を変更する方法が提供される。本明細書で使用されるとき、「変更する」とは、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンの不在下で重合されたコラーゲンマトリックスと比べて、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンの存在下でインビトロにおいて重合されたコラーゲンマトリックスの機械的又は構造特性を変えることを意味する。本方法は、コラーゲン溶液を提供する工程、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを提供する工程、そしてコラーゲンをコラーゲン結合性合成ペプチドグリカン(例えば、異常型又は原線維発生型コラーゲン結合性合成ペプチドグリカン)の存在下で重合して、変更されたコラーゲンマトリックスを形成させる工程を含む。
【0031】
一つの例示的な実施態様において、提供されるコラーゲン溶液は、約0.4mg/ml〜約6mg/mlの範囲のコラーゲン濃度を有することができる。多様な実施態様において、コラーゲン濃度は、約0.5mg/ml〜約10mg/ml、約0.1mg/ml〜約6mg/ml、約0.5mg/ml〜約3mg/ml、約1mg/ml〜約3mg/ml、及び約2g/ml〜約4mg/mlの範囲であることができる。
【0032】
上記において考察されたように、多様な例示的な態様において、本発明の改変グラフト作成物又は改変コラーゲンマトリックスを形成するのに使用されるコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、小型でロイシンリッチなプロテオグリカン又は血小板レセプター配列のアミノ酸配列に対する相同性を有する約5〜約40個のアミノ酸のペプチドを含む。多様な実施態様において、合成ペプチドは、RRANAALKAGELYKSILYGC、RLDGNEIKRGC、AHEEISTTNEGVMGC、CQDSETRTFY、TKKTLRTGC、GLRSKSKKFRRPDIQYPDATDEDITSHMGC、SQNPVQPGC、SYIRIADTNITGC、SYIRIADTNIT、KELNLVYT、KELNLVYTGC、GSITTIDVPWNV、NGVFKYRPRYFLYKHAYFYPPLKRFPVQGC、及びGSITTIDVPWNVGC、からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、合成ペプチドは、RRANAALKAGELYKSILYGC、RLDGNEIKRGC、AHEEISTTNEGVMGC、NGVFKYRPRYFLYKHAYFYPPLKRFPVQGC、CQDSETRTFY、TKKTLRTGC、GLRSKSKKFRRPDIQYPDATDEDITSHMGC、SQNPVQPGC、SYIRIADTNITGC、SYIRIADTNIT、KELNLVYT、KELNLVYTGC、GSITTIDVPWNV、GSITTIDVPWNVGC、及びこれらの14個のアミノ酸配列のいずれかと、80%、85%、90%、95%又は98%の相同性を有するアミノ酸配列、からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むことができる、又はこれらのいずれかであることができる。合成ペプチドは、コラーゲン結合活性を有し、且つ、フォンウィルブランド因子のコラーゲン結合ドメインと、又はChiang, et al.. J. Biol. Chem. 277: 34896-34901 (2002), Huizinga, et al., Structure 5: 1147-1156 (1997), Romijn, et al., J. Biol. Chem. 278: 15035-15039 (2003)及びChiang, et al., Cardio. & Haemato. Disorders-Drug Targets 7: 71-75 (2007)(それぞれ参照として本明細書に組み込まれる)に記載されている血小板コラーゲンレセプターのコラーゲン結合ドメインと80%、85%、90%、95%、98%又は100%の相同性があるペプチドから選択される、5〜40個のアミノ酸の任意のペプチドであることもできる。
【0033】
合成ペプチドに結合しているグリカンは、アルギン酸塩、アガロース、デキストラン、コンドロイチン、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパラン、ヘパリン、ケラチン、及びヒアルロナンからなる群より選択されうる。一つの実施態様において、グリカンは、デルマタン硫酸、デキストラン、及びヘパリンからなる群より選択される。コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを、重合する前に、例えば緩衝液の中又は水中又は塩酸若しくは酢酸のような酸の中で凍結乾燥することができる。一つの例示的な態様において、コラーゲンとコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンのモル比は、約1:1〜約40:1であることができる。
【0034】
重合工程を異なる条件下で実施することができ、条件は、pH、リン酸濃度、温度、緩衝液組成、イオン強度、存在する特定の構成要素、及び、コラーゲン又は存在する他の構成要素の濃度、からなる群より選択される。一つの例示的な態様において、コラーゲン又はコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを含む他の構成要素を、重合の前に凍結乾燥することができる。コラーゲン又は他の構成要素を、塩酸又は酢酸のような酸の中で凍結乾燥することができる。
【0035】
多様な例示的な実施態様において、重合反応は、当業者に既知の生物学的に適合性のある任意の緩衝液を使用して緩衝した溶液の中で実施される。例えば、緩衝液は、リン酸緩衝食塩水(PBS)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩(トリス−HCl)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、ピペラジン−n,n′−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、〔n−(2−アセトアミド)〕−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、N−〔2−ヒドロキシエチル〕ピペラジン−N′−〔2−エタンスルホン酸〕(HEPES)及び1,3−ビス〔トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ〕プロパン(ビストリスプロパン)からなる群より選択されうる。一つの実施態様において、緩衝液は、PBS、トリス又はMOPSであり、一つの実施態様において、緩衝系はPBSである。
【0036】
多様な例示的な実施態様において、重合工程は、約5.0〜約11の範囲から選択されるpHで実施され、一つの実施態様において、重合は、約6.0〜約9.0の範囲から選択されるpHで実施され、一つの実施態様において、重合は、約6.5〜約8.5の範囲から選択されるpHで実施され、別の実施態様において、重合工程は、約7.0〜約8.5の範囲から選択されるpHで実施され、別の実施態様において、重合工程は、約7.3〜約7.4の範囲から選択されるpHで実施される。
【0037】
他の例示的な態様において、緩衝された溶液のイオン強度も調節される。一つの実施態様によると、緩衝液のイオン強度は、約0.05〜約1.5Mの範囲から選択され、別の実施態様において、イオン強度は、約0.10〜約0.90Mの範囲から選択され、別の実施態様において、イオン強度は、約0.14〜約0.30Mの範囲から選択され、別の実施態様において、イオン強度は、約0.14〜約0.17Mの範囲から選択される。
【0038】
更に他の例示的な実施態様において、重合工程は、約0℃〜約60℃の範囲から選択される温度で実施される。他の実施態様において、重合工程は、20℃を超える温度で実施され、典型的には、重合は、約20℃〜約40℃の範囲から選択される温度で実施され、より典型的には、温度は、約30〜約40℃の範囲から選択される。一つの例示的な実施態様において、重合は、約37で実施される。
【0039】
更に他の実施態様において、緩衝液のリン酸濃度は異なる。例えば、一つの実施態様において、リン酸濃度は、約.005M〜約0.5Mの範囲から選択される。別の例示的な実施態様において、リン酸濃度は、約0.01M〜約0.2Mの範囲から選択される。別の実施態様において、リン酸濃度は、約0.01M〜約0.1Mの範囲から選択される。別の例示的な実施態様において、リン酸濃度は、約0.01M〜約0.03Mの範囲から選択される。
【0040】
本発明の、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを含む改変コラーゲンマトリックスを、重合の前に、その間に、又はその後で、ミネラル、アミノ酸、糖、ペプチド、タンパク質、ビタミン(例えば、アスコルビン酸)を含む栄養素、又はラミニン、フィブロネクチン、ヒアルロン酸、フィブリン、エラスチン若しくはアグレカンのような他の化合物、又は上皮増殖因子、血小板誘導増殖因子、形質転換増殖因子ベータ、血管内皮増殖因子若しくは線維芽細胞増殖因子のような増殖因子、及びデキサメタゾンのようなグルココルチコイド、又はイオン性及び非イオン性の水溶性ポリマーのような粘弾性変更剤;アクリル酸ポリマー;ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー及びポリビニルアルコールのような親水性ポリマー;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びエーテル化セルロースのようなセルロースポリマー及びセルロースポリマー誘導体;ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、乳酸とグリコール酸のコポリマー、又は、天然と合成の両方の他の高分子作用物質、と組み合わせることができる。
【0041】
一つの実施態様によると、細胞を、改変コラーゲンマトリックスの重合の前又は重合の後の最終工程として添加することができる。他の例示的な実施態様において、カルボジイミド、アルデヒド、リシル−オキシダーゼ、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、イミドエステル、ヒドラジド、及びマレイミドなどのような架橋剤を、重合の前に、その間に、又はその後に、添加することができる。
【0042】
一つの実施態様において、改変コラーゲンマトリックスは、市販のコラーゲン(例えば、Sigma, St. Louis, MO)を使用して形成される。代替的な実施態様において、コラーゲンを、腸、膀胱又は胃の組織のような粘膜下組織物質から精製することができる。更なる実施態様において、コラーゲンを尾腱から精製することができる。更なる実施態様において、コラーゲンを皮膚から精製することができる。
【0043】
一つの実施態様において、通常はコラーゲン原線維形成を調節するプロテオグリカンのアミノ酸配列の一部とのアミノ酸相同性、又は通常は原線維形成を調節しないタンパク質若しくはペプチドの一部とのアミノ酸相同性を有する、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを使用して、所望の構造又は機械的特性を有する改変コラーゲンマトリックスを形成することができる。別の実施態様において、異常型コラーゲン結合性合成ペプチドグリカン又は原線維発生型コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを使用して、望ましいが変更されている構造又は機械的特性を有する改変コラーゲンマトリックスを形成することができる。
【0044】
所望の構造、微細構造、ナノ構造、又は機械的特性には、例示的に、原線維長、原線維直径、原線維密度、原線維体積率、原線維組織、三次元の形状又は形態、及び、粘弾性、引張、剪断又は圧縮挙動(例えば、破壊応力、破壊歪み、及び係数)、浸透性、分解率、膨張性、水和特性(例えば、速度及び膨張)、及びインビボ組織再構築特性、並びに所望のインビトロとインビボの細胞反応、が含まれうる。本明細書に記載されている改変グラフト作成物及び改変コラーゲンマトリックスは、他の所望の特性のうち、所望の生体適合性及びインビトロとインビボ再構築特性を有することができる。
【0045】
本明細書で使用されるとき、「係数」は、弾性又は直線係数(従来の機械的試験プロトコールを使用して得られた応力−歪み曲線の直線領域の傾き、すなわち剛性、として定義される)、圧縮弾性率、複素弾性係数、又は剪断貯蔵弾性係数であることができる。
【0046】
本明細書で使用されるとき、「原線維体積率」は、三次元のマトリックスの断面において原線維が占有する総面積の面積率として定義され、「空間率」は、三次元のマトリックスの断面において原線維が占有しない総面積の面積率として定義される。
【0047】
本明細書に記載されている改変コラーゲンマトリックスは、コラーゲン原線維を含み、これは典型的には、原線維にその軸に沿って特徴的な線条外観又は分岐状パターンを与える四分の一ねじれパターンで詰められている。多様な例示的な実施態様において、改変コラーゲンマトリックスの定性的及び定量的な微細構造特性は、走査電子顕微鏡検査法、透過型電子顕微鏡検査法、共焦点顕微鏡検査法、二次高周波発生多光子顕微鏡検査法により決定することができる。別の実施態様において、引張、圧縮、及び粘弾性特性は、流動測定又は引張試験により決定することができる。これらの方法は全て当該技術において既知であるか、又は、本出願の実施例の部分、若しくはRoeder et al., J. Biomech. Eng., vol. 124, pp. 214-222 (2002), in Pizzo et al., J. Appl. Physiol., vol. 98, pp. 1-13 (2004), Fulzele et al., Eur. J. Pharm. ScL, vol. 20, pp. 53-61 (2003), Griffey et al., J. Biomed. Mater. Res., vol. 58, pp. 10-15 (2001), Hunt et al., Am. J. Surg., vol. 114, pp. 302-307 (1967)及びSchilling et al., Surgery, vol. 46, pp. 702-710 (1959)(参照として本明細書に組み込まれる)において更に記載されている。
【0048】
上記に記載された改変コラーゲンマトリックス、改変グラフト作成物、キット又は方法実施例のいずれかにおいて、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、以下の式のいずれかの化合物であることができる:
A)PnGx、ここで式中、nは1〜10であり;
xは1〜10であり;
Pは、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;そして
Gはグリカンである。
或いは
B)(PnL)xG、ここで式中、nは1〜5であり;
xは1〜10であり;
Pは、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;
Lはリンカーであり;そして
Gはグリカンである。
或いは
C)P(LGn)x、ここで式中、nは1〜5であり;
xは1〜10であり;
Pは、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;
Lはリンカーであり;そして
Gはグリカンである。
【0049】
代替的な実施態様において、以下の式のいずれかの化合物が提供される:
A)PnGx、ここで式中、nは1〜10であり;
xは1〜10であり;
Pは、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;そして
Gはグリカンである。
或いは
B)(PnL)xG、ここで式中、nは1〜5であり;
xは1〜10であり;
Pは、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;
Lはリンカーであり;そして
Gはグリカンである。
或いは
C)P(LGn)x、ここで式中、nは1〜5であり;
xは1〜10であり;
Pは、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;
Lはリンカーであり;そして
Gはグリカンである。
【0050】
別の実施態様において、ヘパリン、デキストラン又はヒアルロナンに結合している、コラーゲン結合性ペプチド(例えば、コラーゲン結合性タンパク質又はプロテオグリカンのアミノ酸配列の一部)とアミノ酸配列相同性を有する約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドを含む、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを使用して、血小板活性化を阻害すること、コラーゲンへの血小板結合を阻害すること、若しくは血栓症を抑えること、又は改変コラーゲンマトリックスを形成することができる。これらの実施例のいずれにおいても、上記記載の化合物のいずれかも使用することができる。
【0051】
別の実施態様において、ヘパリン、デキストラン又はヒアルロナンに結合している、コラーゲン結合性ペプチド(例えば、コラーゲン結合性タンパク質又はプロテオグリカンのアミノ酸配列の一部)とアミノ酸配列相同性を有する約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドを含む、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを使用して、コラーゲンへの血小板結合、血小板活性化、又はその両方を阻害することができる。これらの実施例のいずれにおいても、上記記載の化合物のいずれかも使用することができる。
【0052】
別の実施態様において、本明細書に記載されている合成ペプチドを、1つ以上の保存的アミノ酸置換を含めることにより修飾することができる。当業者には周知であるように、保存的置換によりペプチドの任意の非重要アミノ酸を変更することは、置換するアミノ酸の側鎖が、置換されたアミノ酸の側鎖と同様の結合及び接触を形成することができるはずであるので、ペプチドの活性を有意に変更することはないはずである。
【0053】
ペプチドのコラーゲン結合活性に過剰に影響を与えない、及び/或いは、コラーゲンマトリックスの構造若しくは機械的特性の変更、血小板活性化の阻害、又はコラーゲンへの血小板接着(例えば、結合)の阻害におけるペプチドの有効性を低減させないのであれば、非保存的置換も可能である。
【0054】
当該技術において周知であるように、アミノ酸の「保存的置換」又はペプチドの「保存的置換変種」は、1)ペプチドの二次構造;2)アミノ酸の電荷若しくは疎水性;及び3)側鎖の嵩高、又はこれらの特性のいずれか1つ以上、を維持するアミノ酸置換を意味する。例示的には、周知の用語「親水性残基」は、セリン又はトレオニンに関する。「疎水性残基」は、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリン又はアラニンなどを意味する。「陽性荷電残基」は、リシン、アルギニン、オルニチン又はヒスチジンに関する。「陰性荷電残基」は、アルパラギン酸又はグルタミン酸を意味する。「嵩高側鎖」を有する残基は、フェニルアラニン、トリプトファン又はチロシンなどを意味する。例示的な保存的アミノ酸置換のリストを表1に提示する。
【0055】
【表1】
【0056】
別の実施態様において、ヘパリンに結合している、コラーゲン結合性ペプチドの一部とアミノ酸配列相同性を有する約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドを含む、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを使用して、血小板活性化を阻害すること、コラーゲンへの血小板結合(例えば、接着)を阻害すること、若しくは血栓症を抑えること、又は改変コラーゲンマトリックスを形成することができる。別の実施態様において、デキストランに結合しているコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを使用して、血小板活性化を阻害すること、コラーゲンへの血小板結合を阻害すること、若しくは血栓症を抑えること、又は改変コラーゲンマトリックスを形成することができる。更に別の実施態様において、ヒアルロナンに結合しているコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを使用して、血小板活性化を阻害すること、コラーゲンへの血小板結合を阻害すること、若しくは血栓症を抑えること、又は改変コラーゲンマトリックスを形成することができる。これらの実施例のいずれかおいても、上記記載の化合物のいずれかも使用することができる。
【0057】
別の実施態様において、例えばヘパリン、デキストラン又はヒアルロナンのような任意のグリカンに結合している、コラーゲン結合性ペプチド(例えば、コラーゲン結合性タンパク質又はプロテオグリカンのアミノ酸配列の一部)とアミノ酸配列相同性を有する約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドを含む、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを使用して、コラーゲンへの血小板結合を阻害すること、血小板活性化を阻害すること又は血栓症を抑えることができる。これらの実施例のいずれにおいても、上記記載の化合物のいずれかも使用することができる。
【0058】
一つの実施態様において、合成ペプチドは、当業者に周知の固相ペプチド合成プロトコールに従って合成される。一つの実施態様において、ペプチド前駆体は、周知のFmocプロトコールに従って固体支持体上に合成され、トリフルオロ酢酸により支持体から切断され、当業者に既知の方法に従ってクロマトグラフィーにより精製される。
【0059】
別の実施態様において、合成ペプチドは、当業者に周知のバイオテクノロジーの方法を利用して合成される。一つの実施態様において、所望のペプチドのアミノ酸配列情報をコードするDNA配列を、当業者に既知の組み換えDNA技術により、発現プラスミド(例えば、ペプチドのアフィニティー精製のためのアフィニティータグを組み込んだプラスミド)に連結し、プラスミドを発現のために宿主生物に形質移入し、次にペプチドを宿主生物又は増殖培地から当業者に既知の方法(例えば、アフィニティー精製)により単離する。組み換えDNA技術法は、Sambrook et al., "Molecular Cloning: A Laboratory Manual", 3rd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, (2001)(参照として本明細書に組み込まれる)に記載されており、当業者に周知である。
【0060】
一つの実施態様において、合成ペプチドは、ペプチドの遊離アミノ基をグリカンのアルデヒド官能基と、還元剤の存在下で、当業者に既知の方法を利用して反応させることにより、グリカンと結合され、ペプチドグリカン結合体を生じる。一つの実施態様において、グリカンのアルデヒド官能基(例えば、多糖又はグリコサミノグリカン)は、グリカンをメタ過ヨウ素酸ナトリウムと当業者に既知の方法に従って反応させることにより形成される。
【0061】
別の実施態様において、合成ペプチドは、グリカンのアルデヒド官能基を3−(2−ピリジルジチオ)プロピオニルヒドラジド(PDPH)と反応させて中間体グリカンを形成し、更にこの中間グリカンを遊離チオール基を含有するペプチドと反応させることにより、グリカンと結合されて、ペプチドグリカン結合体を生じる。更に別の実施態様において、ペプチドの配列を、グリシン−システインセグメントを含むように修飾して、グリカン又はグリカン−リンカー結合体のための結合点を提供することができる。
【0062】
特定の実施態様が先行の段落において記載されてきたが、本明細書に記載されているコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンは、ペプチドをグリカン(例えば、多糖又はグリコサミノグリカン)と結合するための当該技術で認められたあらゆる方法を使用して作製することができる。これには、直接的な、又は二価リンカーのような結合基を介する間接的な、共有、イオン又は水素結合を含むことができる。結合体は、典型的には、結合体の対応する構成要素上の、酸、アルデヒド、ヒドロキシ、アミノ又はヒドラゾ基の間のアミド、エステル又はイミノ結合の形成を介して、グリカンにペプチドを共有結合することにより形成される。これらの方法は全て、当該技術において既知であるか、又は、本出願の実施例の部分、若しくはHermanson G.T., Bioconjugate Techniques, Academic Press, pp.169-186 (1996)に更に記載されている。リンカーは、典型的には、約1〜約30個の炭素原子、より典型的には約2〜約20個の炭素原子を含む。低分子量リンカー(すなわち、約20〜約500のおよその分子量を有するもの)が典型的に用いられる。
【0063】
加えて、結合体のリンカー部分の修飾が本明細書において考慮される。例えば、天然に生じるアミノ酸、並びに、従来の合成方法により入手可能なものが含まれるがこれらに限定されないアミノ酸が、リンカーに含まれることができ、多数のアミノ酸置換が結合体のリンカー部分において実施されてもよい。別の態様において、ベータ、ガンマ、及びより長い鎖のアミノ酸を、1つ以上のアルファアミノ酸の代わりに使用することができる。別の態様において、リンカーは、それに含まれているアミノ酸の数を変えることにより又はより多くの若しくは少ないベータ、ガンマ若しくはより長い鎖のアミノ酸を含めることにより、短く又は長くなることができる。同様に、本明細書に記載されるリンカーの他の化学フラグメントの長さ及び形状を修飾することができる。
【0064】
一つの態様において、リンカーは、それぞれ場合により置換されていてもよいアルキレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、シクロへテロアルキレン、アリーレン、及びヘテロアリーレンからなる群よりそれぞれの場合に独立して選択される、1つ以上の二価フラグメントを含むことができる。本明細書で使用されるとき、ヘテロアルキレンとは、直鎖又は分岐鎖アルキレン基の1個以上の炭素原子が、酸素、窒素、リン、及び硫黄からなる群よりそれぞれの場合に独立して選択される原子に代えられていることによってもたらされる基を表す。
【0065】
一つの態様において、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを、患者(例えば、血栓症に関わるような血小板活性化を阻害する治療が必要な患者)に投与することができる。多様な実施態様において、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを、例えば静脈内に、又は筋肉内又は内臓に、投与することができる。非経口投与に適した経路には、静脈内、動脈内、及び筋肉内送達が含まれる。非経口投与に適した方法には、針(顕微針を含む)注射器、及び注入技術が含まれる。
【0066】
例示的な実施態様において、a)薬学的に活性な量のコラーゲン結合性合成ペプチドグリカン;b)約pH4.5〜約pH9の範囲のpHを提供する薬学的に許容されるpH緩衝剤;c)約0〜約300ミリモルの濃度範囲のイオン強度調整剤;及びd)製剤総重量の約0.25%〜約10%の濃度範囲の水溶性粘度調整剤、又はa)、b)、c)及びd)の組み合わせ、を含む、非経口投与用のコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンと共に使用される医薬製剤が提供される。
【0067】
多様な例示的な実施態様において、本明細書に記載されている組成物及び方法に使用されるpH緩衝剤は、当業者に既知の作用物質であり、例えば、酢酸、ホウ酸、炭酸、クエン酸、及びリン酸緩衝液、並びに塩酸、水酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、リン酸一カリウム、重炭酸塩、アンモニア、炭酸、塩酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸、酢酸、リン酸水素二ナトリウム、ホウ砂、ホウ酸、水酸化ナトリウム、ジエチルバルビツール酸、及びタンパク質、並びに多様な生物学的緩衝液、例えばTAPS、Bicine、トリス、トリシン、ヘペス、TES、MOPS、PIPES,カコジル酸塩又はMESが含まれる。
【0068】
別の例示的な実施態様において、イオン強度調節剤には、当該技術において既知の作用物質が含まれ、例えば、グリシン、プロピレングリコール、マンニトール、グルコース、デキストロース、ソルビトール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び他の電解質である。
【0069】
有用な粘度調節剤には、イオン性及び非イオン性の水溶性ポリマー;「カーボマー」ファミリーのポリマーのような架橋アクリル酸ポリマー、例えば、Carbopol(登録商標)の商標のもとで市販されているカルボキシポロアルキレン;ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、及びポリビニルアルコールのような親水性ポリマー;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びエーテル化セルロースのようなセルロースポリマー及びセルロースポリマー誘導体;トラガカント及びキサンタンガムのようなガム;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン、ヒアルロン酸、及びその塩、キトサン、ジェラン、又はこれらの任意の組み合わせ、が含まれるが、これらに限定されない。典型的には、中性又は塩基性作用物質のような非酸性粘度増強剤が、製剤の所望のpHを達成するのを促進するために用いられる。
【0070】
一つの例示的な態様において、非経口製剤を、滅菌非水性液剤として、又は発熱物質無含有滅菌水のような適切なビヒクルと一緒に使用される乾燥形態として、適切に処方することができる。例えば凍結乾燥により、滅菌条件下で非経口製剤を調製することは、当業者に周知の標準的な製剤技術を使用して容易に達成することができる。
【0071】
一つの実施態様において、非経口製剤の調製に使用されるコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンの溶解度は、溶解度増強剤の組み込みのような、適切な配合技術を使用して増加することができる。
【0072】
多様な実施態様において、非経口投与用の製剤を、即時の及び/又は調整された放出となるように処方することができる。調整放出製剤には、遅延、持続、間欠、制御、標的、及びプログラム放出製剤が含まれる。したがって、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを、活性化合物の調整放出をもたらす移植デポー剤としての投与のために、固体、半固体又はチキソトロピー液として処方することができる。そのような製剤の例示的な例には、薬剤被覆ステント及び共重合(DL−乳酸、グリコール)酸(PGLA)微小球が挙げられる。別の実施態様において、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカン又はコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを含む組成物を、適切であれば連続的に投与することができる。
【0073】
他の実施態様において、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカン及びそれらを含有する組成物を局所的に投与することができる。軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ゲル軟膏剤、プラスター剤(例えば、バップ剤、湿布剤)、液剤、粉末剤などのような多様な剤形、及び基剤を、局所調合剤に適用することができる。これらの調合剤は、下記に記載される従来の薬学的に許容される担体又は希釈剤を用いて、任意の従来の方法により調製することができる。
【0074】
例えば、軟膏剤の調製において、ワセリン、高級アルコール、ミツロウ、植物油、ポリエチレングリコールなどを使用することができる。クリーム製剤の調製において、油脂、ロウ、高級脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル、精製水、乳化剤などを使用することができる。ゲル製剤の調製において、ポリアクリル酸塩(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、精製水、低級アルコール、多価アルコール、ポリエチレングリコールなどのような従来のゲル化物質が使用される。ゲル軟膏調合剤の調製において、乳化剤(好ましくは、非イオン性界面活性剤)、油状物質(例えば、流体パラフィン、トリグリセリドなど)などが、上記に記述されたゲル化物質に加えて使用される。バップ剤又は湿布剤のようなプラスター剤は、上記に記述されたゲル調合剤を支持体(例えば、布、不織布)に塗布することにより調製することができる。上記の成分に加えて、パラフィン、スクアラン、ラノリン、コレステロールエステル、高級脂肪酸エステルなどを、場合により使用してもよい。更に、BHA、BHT、没食子酸プロピル、ピロガロール、トコフェロールなどのような酸化防止剤も組み込むことができる。上記の調合剤及び構成要素に加えて、場合により、任意の他の添加剤が組み込まれた任意の他の従来の製剤を使用してもよい。
【0075】
本明細書に記載されている製剤のいずれかを使用して、本明細書に記載されている改変コラーゲンマトリックスの不在下又は存在下で、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカン(例えば、1種類以上)を投与することができる。
【0076】
多様な実施態様において、改変コラーゲンマトリックスを伴う又は伴わないコラーゲン結合性合成ペプチドグリカングラフトの投与量は、患者の状態、治療される疾患状態、投与経路、及び組織分布、並びに他の治療処置の併用の可能性に応じて、有意に変わりうる。患者に投与される有効量は、体表面積、患者の体重、及び患者の状態に関する医師の評価に基づいている。多様な例示的な実施態様において、有効用量は、約1ng/kg〜約10mg/kg、100ng/kg〜約1mg/kg、約1μg/kg〜約500μg/kg又は約100μg/kg〜約400μg/kgの範囲であることができる。これらの実施態様のそれぞれにおいて、用量/kgとは、患者の体重1キログラムあたりの用量を意味する。他の例示的な態様において、有効用量は、1用量あたり約0.01μg〜約1000mg、1用量あたり1μg〜約100mg又は1用量あたり100μg〜約50mg又は1用量あたり500μg〜約10mg又は1用量あたり1mg〜約10mgの範囲であることができる。
【0077】
コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを投与する任意の有効なレジメンを使用することができる。例えば、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを、単回用量又は多回用量の毎日レジメンとして投与することができる。更に、時差レジメン、例えば1週間あたり1〜5日間を、毎日治療の代替案として使用することができる。
【0078】
本発明の一つの実施態様において、患者は、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンの複数回の注射で治療される。一つの実施態様において、患者には、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを、例えば12〜72時間間隔又は48〜72時間間隔で複数回(例えば、約2回から最大約50回まで)注射する。コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンの追加の注射を、最初の注射の後、数日間又は数か月の間隔を置いて患者に投与することができ、追加の注射は、疾患の再発を予防する。あるいは、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンの最初の注射が、疾患の再発を予防してもよい。
【0079】
本明細書に記載されている実施態様のいずれかにおいて、ペプチド部分、グリカン部分又はその両方が異なっている2つ以上のコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンの組み合わせを、単一のコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンの代わりに使用できることが理解されるべきである。
【0080】
前述の実施態様において、化合物、組成物、及び方法の特定の態様は、例示的には1つ以上のG及びPのいずれかにおける選択の場合のように、リストの選択肢として表されていることも理解される。したがって、本発明の多様な代替的実施態様は、これらのリストの個別のメンバー、並びにこれらのリストの多様なサブセットを含むことが理解されるべきである。これらの実施態様は、それぞれ、リストによって本明細書に記載されているということが理解されるべきである。
【0081】
以下の例示的な実施例において、用語「合成ペプチドグリカン」及び「結合体」は、用語「コラーゲン結合性合成ペプチドグリカン」と同義的に使用される。
【実施例】
【0082】
〔実施例1〕
ペプチド合成
全てのペプチドは、Knorr樹脂上でFMOCプロトコールを利用する、Symphonyペプチド合成機(Protein Technologies, Tucson, AZ)を使用して合成した。粗ペプチドをTFAにより樹脂から分離し、Grace-Vydac 218TP C-18逆相カラム及び水/アセトニトリル0.1%TFAの勾配を利用する、AKTAexplorer(GE Healthcare, Piscataway, NJ)の逆相クロマトグラフィーにより精製した。ダンシル修飾ペプチドを、樹脂から分離する前に、ダンシル−Gly(Sigma)との追加のカップリング工程を加えることにより調製した。ペプチド構造を質量分析により確認した。以下のペプチドを上記に記載されたように調製した:RRANAALKAGELYKSILYGC、SYIRIADTNIT、ダンシル−GRRANAALKAGELYKSILYGC及びダンシル−GSYIRIADTNIT。これらのペプチドは、SILY、SYIR、Z−SILY及びZ−SYIRと略される。追加のペプチドのKELNLVYTGC(略語KELN)及びGSITTIDVPWNVGC(略語GSIT)を、上記に記載されたように調製するか又は購入した(Genescript, Piscataway, NJ)。
【0083】
〔実施例2〕
デルマタン硫酸へのSYIRペプチドの結合
SYIRを、Hermansonの方法(Hermanson, 1996)を僅かに改変した方法によりoxDSに結合した。ペプチドSYIRを、0.05Mの炭酸ナトリウム、0.1Mのクエン酸ナトリウム緩衝液、pH9.5に濃度0.4mg/mLで溶解して5mLの最終容量にした。10倍のペプチドモル過剰で反応させるために、29mgのoxDS、MW41,000(41kDaの1.1アルデヒド/DS分子を含有する酸化デルマタン硫酸は、Celsus Laboratories, Cincinnati, OHから入手可能である)を、ペプチド溶液に溶解した。穏やかに撹拌しながら、50μLのシアノ水素化ホウ素ナトリウムを加え、反応を室温で一晩進行させた。
【0084】
過剰ペプチドを、Sephadex G-25媒体(GE Health)が充填され、脱イオン水(MiIIiQ)で平衡にしたXK 26-40カラムを使用するAkta Purifierのゲル濾過により分離した。溶離液を215nm、254nm及び280nmでモニタリングした。DS−SYIRを含有する最初の溶離ピークを収集し、更なる試験のために凍結乾燥した。
【0085】
〔実施例3〕
デルマタン硫酸へのSILYの結合
oxDSへのPDPH結合
スルフヒドリル及びアミン基に反応性である二官能架橋剤のPDPH(Pierce)を使用して、oxDSにSILYを結合した。反応の第1工程において、oxDSをカップリング緩衝液(0.1Mのリン酸ナトリウム、0.25Mの塩化ナトリウム、pH7.2)に溶解して、1.2mMの最終濃度にした。PDPHを10倍モル過剰で加え、反応を室温で2時間進行させた。過剰PDPH(MW229Da)を、Sephadex G-25媒体が充填され、MiIIiQ水で平衡にしたXK 26-40カラムを使用するAkta Purifier上でのゲル濾過により分離した。溶離液を215nm、254nm及び280nmでモニタリングした。DS−PDPHを含有する最初の溶離ピークを収集し、SILYへの結合のために凍結乾燥した。
【0086】
PDPH含有量の決定
oxDSと結合しているPDPH分子の数を決定するため、DS−PDPHを1.6mg/mLでカップリング緩衝液に溶解した。10μLのDTTを15mg/mLでDS−PDPH溶液に加え、反応を室温で15分間進行させた。PDPHのシステイン反応側のジスルフィド結合を還元すると、ピリジン−2−チオンを放出し、これは313nmで見ることができる。313nmでの吸光度を、DTT添加の前後に測定し、その差を、ピリジン−2−チオンの吸光係数を使用してPDPH分子/DS分子の数を計算するために使用した。図7の結果は、ΔA=0.35を示し、1.1のPHPH分子/DSに相当する。
【0087】
SILYの結合
ペプチドを5:1モル過剰でカップリング緩衝液に、最終ペプチド濃度のおよそ1mM(ペプチドの溶解度より限定される)で溶解した。反応を室温で一晩進行させ、過剰ペプチドを分離し、DS−SILY結合体を、上記に記載されたゲル濾過により単離した。カップリング後のSILY/DS比の1.06を示す、図26を参照すること。
【0088】
〔実施例4〕
デルマタン硫酸へのZ−SILYの結合
デルマタン硫酸を、実施例3の方法に従って、Z−SILYに結合した。
【0089】
〔実施例5〕
デルマタン硫酸へのKELNの結合
デルマタン硫酸を、実施例3の方法に従って、KELNに結合した。
【0090】
〔実施例6〕
デルマタン硫酸へのGSITの結合
デルマタン硫酸を、実施例3の方法に従って、GSITに結合した。
【0091】
〔実施例7〕
デルマタン硫酸へのZ−SYIRの結合
デルマタン硫酸を、実施例2の方法に従って、Z−SYIRに結合した。
【0092】
〔実施例8〕
ヘパリンへのSILYの結合
分子1個あたり1つのアルデヒドを含有する酸化ヘパリン(oxHep)(MW=19.7kDa)(Celsus Laboratories, Cincinnati, OHから購入した)。追加のアルデヒドを、以下のように、メタ過ヨウ素酸ナトリウムにおける更なる酸化により形成した。oxHepを0.1Mの酢酸ナトリウムに、pH5.5、濃度10mg/mLで溶解した。次にメタ過ヨウ素酸ナトリウムを2mg/mLの濃度で加え、遮光下にて室温で4時間反応させた。過剰メタ過ヨウ素酸ナトリウムを、HiTrapサイズ除去カラム(GE Healthcare)を使用して脱塩することにより除去し、oxHepを、凍結乾燥し、PDPHとの結合まで遮光した。
【0093】
oxHepを、実施例3のDS−PDPH結合について記載された方法により、PDPHに結合した。PDPHを50倍のモル過剰で反応させた。より高いPDPH濃度を達成するために、10mgのPDPHを75μLのDMSOに溶解し、1mLのoxHep含有カップリング緩衝液と混合した。反応は室温で2.5時間進行し、過剰PDPHを脱塩により除去した。ヘパリン含有PDPH(Hep−PDPH)を、SILYと反応させるまで、凍結乾燥粉末として保存した。
【0094】
SILYを、実施例3のDS−SILY結合について記載されたとおりに、10倍モル過剰でHep−PDPHと反応させた。反応を、実施例3のDS−SILYについて記載されたようにモニタリングしたところ、図24に示されているように、ヘパリン分子1個あたり5.44の結合したシリルペプチドを示した。
【0095】
〔実施例9〕
ヘパリンへのGSITの結合
ヘパリンを、実施例8に方法に従って、GSITと結合した(略語Hep−GSIT)。
【0096】
〔実施例10〕
デキストランへのSILYの結合
デキストランを、ヘパリンをデキストランに代えて実施例8の方法に従って、SILYと結合した。第1工程におけるメタ過ヨウ素酸ナトリウムによるデキストランの酸化条件の変更は、SILYとデキストランのモル比が異なる結合体の調製を可能にした。例えば、SILYとデキストランのモル比が約6のデキストラン−SILY結合体及びSILYとデキストランのモル比が約9のデキストラン−SILY結合体を調製した(略語Dex−SILY6及びDex−SILY9)。
【0097】
〔実施例11〕
ヒアルロナンへのSILYの結合
ヒアルロナンを、実施例8に方法に従って、SILYと結合した(略語HA−SILY)。
【0098】
〔実施例12〕
コラーゲンへのSILYの結合(Biacore)
Biacore分析を、CM-3チップを使用するBiacore 2000(Biacore, Inc., Piscataway, NJ)により実施した。CM-3チップは、共有結合カルボキシメチル化デキストランで被覆されており、これにより遊離アミン基を介した基質コラーゲンの結合が可能になる。フローセル(FC)1及び2を使用し、FC−1を基準セルとし、FC−2をコラーゲン固定化セルとした。各FCをEDC−NHSで活性化し、pH4の酢酸ナトリウム緩衝液中の1mg/mLのコラーゲンを5μL/分で10分間流し込むことにより、FC−2上に1500RUのコラーゲンを固定化した。未反応NHS−エステル部位をエタノールアミンでキャップし、対照FC−1を活性化し、エタノールアミンでキャップした。
【0099】
ペプチド結合親和性を決定するために、SILYを、100uM〜1.5μMの異なる濃度で1×HBS−EP緩衝液(Biacore)に2倍の希釈で溶解した。流速を、結合動態を決定するためにMyskaにより提案(Myska, 1997)された範囲内である90μL/分に保持した。最初の10回の注射は、系の始動を助ける緩衝液注射であり、続いて無作為な試料注射を3回ずつ行った。解析はBIAevaluationソフトウエア(Biacore)を使用して実施した。代表的な会合/解離曲線を図3に示し、これはSILYペプチドがコラーゲンに可逆的に結合することを実証している。KD=1.2μMであることが、オンオフ結合動態からの計算により得られた。
【0100】
〔実施例13〕
コラーゲンへのZ−SILYの結合
結合アッセイを、黒色で透明底の96ウエル高結合型プレート(Costar)で行った。コラーゲンを未処理ウエル及びBSA被覆ウエルと比較した。コラーゲン及びBSAを、10mMのHCl及び1×PBSそれぞれの中で2mg/mLの濃度で、90μL/ウエルずつインキュベートすることにより、37℃で1時間固定した。インキュベート後、各ウエルを1×PBSで3回洗浄した。Z−SILYを、100μM〜10nMの濃度で1×PBSに10倍の希釈で溶解した。ウエルを37℃で30分間インキュベートし、PBSで3回すすぎ、次に90μLの1×PBSを充填した。蛍光読み取り値は、励起/発光波長がそれぞれ335nm/490nmのM5 Spectramax Spectrophotometer(Molecular Devices)により得た。結果を図4及び5に示す。KD=0.86μMであることが、平衡動態からの計算により得られた。
【0101】
〔実施例14〕
DS−SILYの特徴決定
DSに結合したSILY分子の数を決定するために、ピリジン−2−チオンの生成を、Pierceにより提供された変更プロトコールを使用して測定した。1.1のPDPH分子が結合しているデルマタン硫酸を0.44mg/mLの濃度でカップリング緩衝液(0.1Mのリン酸ナトリウム、0.25Mの塩化ナトリウム)に溶解し、343nmでの吸光度を、SpectraMax M5(Molecular Devices)を使用して測定した。SILYを5倍モル過剰で反応させ、吸光度の測定を、SILYの添加の直後と、2時間反応させた後に、繰り返し行った。SILYそれ自体が343nmで吸収しないことを確実にするため、0.15mg/mLのSILYを含有するカップリング緩衝液を測定し、緩衝剤のみの吸光度と比較した。
【0102】
DSに結合したSILY分子の数を、次の式:(Abs343/8080)×(MWDS/DSmg/mL)を使用して、ピリジン−2−チオンの吸光係数により計算した。結果を図26に示す。
【0103】
〔実施例15〕
コラーゲン結合、蛍光データ−DS−SILY
ペプチド結合体が、DSへの複合の後で、コラーゲンに結合する能力を維持するかを決定するために、蛍光結合アッセイを実施した。蛍光標識型のSILYであるZ−SILYは、ダンシルグリシンをアミン末端に付加することにより合成した。このペプチドをDSと結合し、SILYについて記載されたものと同じ方法を使用して精製した。
【0104】
結合アッセイを、黒色で透明底の96ウエル高結合型プレート(Costar)で行った。コラーゲンを未処理ウエル及びBSA被覆ウエルと比較した。コラーゲン及びBSAを、10mMのHCl及び1×PBSそれぞれの中で2mg/mLの濃度で、90μL/ウエルずつインキュベートすることにより、37℃で1時間固定した。インキュベート後、各ウエルを1×PBSで3回洗浄した。
【0105】
ウエルをDSと共に37℃で30分間プレインキュベートして、コラーゲンへのDSの非特異的結合を排除した。ウエルを、DS−Z−SILYと共にインキュベートする前に、1×PBSで3回すすいだ。DS−Z−SILYを、100μM〜10nMの濃度で1×PBSに10倍の希釈で溶解した。ウエルを37℃で30分間インキュベートし、3回すすぎ、次に90μLの1×PBSを充填した。蛍光読み取り値は、励起/発光波長がそれぞれ335nm/490nmのM5 Spectramax Spectrophotometer(Molecular Devices)により得た。
【0106】
固定コラーゲン、BSA及び未処理ウエルへのDS−Z−SILYの蛍光結合を図8で比較する。結果は、DS−Z−SILYが、BSA処理ウェル及び未処理ウエルよりもコラーゲン処理ウエルに特異的に結合することを示す。高結合型プレートの未処理ウエルは、陽性対照として設計されたが、コラーゲン処理ウエルと比べてほとんど結合が観察されなかった。これらの結果は、SILYがDSへの結合の後でもコラーゲンに結合する能力を維持することを示唆している。DSとのプレインキュベーションは結合を防止せず、結合体がDSのみとは別に結合することを示唆している。
【0107】
〔実施例16〕
I型コラーゲンゲルの調製
ゲルを、4mg/mLの最終コラーゲン濃度でNutragenコラーゲン(Inamed, Freemont, CA)から作製した。Nutragen貯蔵溶液は、10mMのHCl中の6.4mg/mLである。ゲル調製を氷上で実施し、新鮮な試料をそれぞれの試験の前に作製した。コラーゲン溶液は、適切な容量の10×PBS(リン酸緩衝食塩水)、1×PBS及び1MのNaOHを加えることにより、生理学的pH及び塩濃度に調整した。大部分の実験において、DS、デコリン、DS−SILY又はSD−SYIRの試料を、試験試料を適切な濃度で溶解した最終1×PBS添加(各処理剤を通して等量)により、10:1のコラーゲン:試料モル比で加えた。この方法により、試料は、pH7.4及び生理学的塩濃度を常に保持する。コラーゲンのみの試料には、試料が溶解していない1×PBSを添加した。原線維形成は、中和コラーゲン溶液を、脱水を避けるために加湿チャンバーにおいて37℃で一晩インキュベートすることによって誘導する。コラーゲン:試料モル比が10:1以外のゲル溶液を、同様に調製した。
【0108】
〔実施例17〕
ゲルの粘弾性の特徴決定
コラーゲンゲルを実施例16に記載されたとおりに調製し、加熱する前に、200μLの各処理剤を疎水性印刷スライド(Tekdon)の可湿性表面にピペットで加えた。PTFE印刷はゲルを20mm直径の可湿性領域に限定した。機械的試験に先立ち、加湿インキュベーター中で37℃で一晩かけて、ゲルを形成した。
【0109】
スライドを、20mmのステンレススチール平行平板配置を有するAR-G2レオメーター(TA Instruments, New Castle, DE)のレオメーター載物台の上で挟み、20mmのステンレススチール平行平板配置を、形成されたゲルへの過剰な剪断を避けるために、0.25Nの垂直力制御を使用して間隙の幅が600μmになるまで低下させた。圧力及び周波数掃引の反復過程をコラーゲンのみのゲルに実施して、直線範囲を決定した。また、全ての試料を0.1Hz〜1.0Hzの周波数範囲及び1.0Paの制御圧力で試験した。Design Expertソフトウエア(StatEase, Minneapolis, MN)を使用する統計分析を、各周波数で実施し、5方向ANOVAを使用して、各試料を比較した。図9の10:1、図10の5:5及び図11の30:1で示されている結果は、合成ペプチドグリカンによる処理は、I型コラーゲンゲルの粘弾性挙動を変更しうることを実証している。
【0110】
〔実施例18〕
III型コラーゲン含有ゲルの粘弾性の特徴決定
III型コラーゲンを含有するゲルを、実施例16と同様に以下の変更を加えて調製した:処理済及び未処理ゲル溶液は、1.5mg/mLのコラーゲン濃度(90%コラーゲンIII(Millipore)、10%コラーゲンI)を使用して調製し、200μLの試料を、疎水性印刷スライドの20mm直径の可湿性表面にピペットで加えた。これらの溶液を、37℃で24時間ゲル化させた。対照としてのゲルは、コラーゲンのみ、デルマタン硫酸(1:1及び5:1のモル比)で処理したコラーゲン、及びコラーゲンIII結合ペプチドのみ(GSIT及びKELN、5:1モル比)で処理したコラーゲンから形成した。処理したゲルは、ペプチドグリカンを(DS−GSIT又はDS−KELNを1:1及び5:1のモル比で)含有した。全ての比は、コラーゲン:処理剤化合物の比である。試料を0.1Hz〜1.0Hzの周波数範囲、1.0Paの制御圧力で試験したこと以外は実施例17と同様のようにして、ゲルの特徴決定を行った。図12及び13に示されているように、デルマタン硫酸−GSIT結合体及びデルマタン硫酸−KELN結合体(合成ペプチドグリカン)は、III型コラーゲンから形成されたゲルの粘弾特性に影響を及ぼすことができる。
【0111】
〔実施例19〕
原線維形成
原線維形成の速度及び原線維の直径に関する情報を提供する、混濁度に関連のある313nmでの吸光度を測定することにより、コラーゲン原線維形成をモニタリングした。ゲル溶液は、実施例16に記載されているとおり(特に指示のない限り、4mg/mLのコラーゲン及び10:1のコラーゲン:処理剤)に調製し、50uL/ウエルを4℃で384ウエルプレートに加えた。プレートを、原線維形成を開始する前に、4℃で4時間保持した。37℃でSpectraMax M5を使用して、313nmにより30秒間隔で6時間吸光度を測定した。結果を図14、15及び16に示す。10:1モル比試料のゲル形成のT1/2を図17に示す。デルマタン硫酸−SILYは、原線維形成の速度を減少する。
【0112】
〔実施例20〕
共焦点反射顕微鏡検査法
ゲルを、上記の実施例16に記載されているように形成し、一晩インキュベートし、ゲルを、60×で1.4NAの水浸レンズを使用するOlympus FV1000共焦点顕微鏡により画像化した。試料を、488nmのレーザー光線で照らし、反射光を、青色反射フィルターを使用する光電子増倍管で検出した。それぞれのゲルをゲルの底から100μMで画像化し、代表的な試料採取を確実にするため3つの異なる場所を画像化した。結果を図18に示す。
【0113】
〔実施例21〕
コラーゲンIのクライオSEM測定
クライオSEM用のゲルを、実施例16のとおりにSEM載物台の上に直接形成し、37℃で一晩インキュベートした。次に載物台をクライオ保持器中に固定し、液体窒素スラッシの中に投入した。次に試料を、真空下で−170℃に冷却したGatan Alto 2500プレチャンバーに移した。自由破面を冷却メスにより作り出し、各試料を昇華条件下で20分間蒸発させた。試料を白金スパッター被覆により120秒間被覆した。試料を−130℃のクライオ載物台に移し、処理剤同士を比較するために、同様の配向の各領域を画像化した。5,000×で画像化した代表的な試料を図19に示す。画像を分析して平均原線維直径(図22)及びコラーゲンシート間の平均間隔(図23)を決定した。原線維直径は、手動で個別の原線維を測定(原線維を横断して線を引き、尺度を正確に設定した後、その長さを測定する)してImageJソフトウエア(NIH)を使用して計算した。3人の観察者が、1処理剤あたり3つの別々の画像について、画像1つあたり10本の原線維を記録し、1処理剤あたり合計で90の測定値を得た。シート間隔は、ここでも手動で測定するImageJを使用して計算した。1処理剤あたり1人の観察者で15の測定値であった。原線維直径及びコラーゲンシート間の間隔は、デルマタン硫酸−SILY合成ペプチドグリカンで処理されたゲルにおいて減少した。
【0114】
〔実施例22〕
コラーゲンIIIのクライオSEM測定
クライオSEM用のゲルを、実施例16と同様の方法に以下の変更を加え、SEM載物台の上に直接形成し、37℃で一晩インキュベートした。コラーゲン濃度は、1mg/mLであった(90%のコラーゲンIII、10%のコラーゲンI)コラーゲン:DSの比は1:1であり、コラーゲン:ペプチドグリカンの比は1:1であった。画像を実施例21のとおりに記録した。空間体積と原線維体積の比は、実施例21の方法の変形を使用して測定した。結果を図20及び21に示す。デルマタン硫酸−KELN及びデルマタン硫酸−GSITは、処理済コラーゲンゲルにおいて、空間を減少する(原線維直径及び分岐を増加する)。
【0115】
〔実施例23〕
Dバンド形成のAFM確認
ゲル溶液を実施例16に記載されたとおりに調製し、20μLの各試料をカバーガラスにピペットで加え、加湿インキュベーターにおいて一晩ゲル化させた。ゲルを段階的エタノール溶液(35%、70%、85%、95%、100%)により、各溶液で10分間処理した。走査速度2Hzの接触モード(Multimode SPM, Veeco Instruments, Santa Barbara, CA, USA、AFMチップ窒化ケイ素接触モードチップのk=0.05N/m、Veeco Instruments)、偏位設定ポイント:0〜1ボルトにて、AFM画像を作製した。Dバンド形成は、図2及び38に示されているように、全ての処理剤において確認された。
【0116】
〔実施例24〕
コラーゲン再構築
組織試料の調製
Grassl, et al.の方法(Grassl, et al., Journal of Biomedical Materials Research 2002, 60, (4), 607-612)(その全体が参照として本明細書に組み込まれる)に従って、合成PG模倣体を有する又は有さないコラーゲンゲルを、実施例16に記載されたとおりに形成した。ヒト大動脈平滑筋細胞(Cascade Biologies, Portland, OR)を、インキュベーションに先立って、中和コラーゲン溶液に4×106細胞/mLで加えることによりコラーゲンゲル内に接種した。細胞コラーゲン溶液を、8ウエルLab-Tekチャンバースライドにピペットで移し、加湿した37℃の5%CO2インキュベーターでインキュベートした。ゲル化した後、細胞コラーゲンゲルを、Cascadeにより処方された1mLの培地231で覆う。3〜4日毎に、培地を試料から取り出し、標準的ヒドロキシプロリンアッセイ(Reddy, 1996)によりヒドロキシプロリン含有量を測定した。
【0117】
ヒドロキシプロリン含有量
培地上清中の分解コラーゲンを測定するために、試料を凍結乾燥し、試料を2MのNaOHにより120℃で20分間加水分解した。冷却した後、クロラミンT(Sigma)を添加し、室温で25分間反応させることにより、遊離ヒドロキシプロリンを酸化した。エールリッヒアルデヒド試薬(Sigma)を加え、65℃で20分間反応させ、続いてM−5分光高度計(Molecular Devices)により550nmで吸光度を読み取った。培地中のヒドロキシプロリン含有量は、分解コラーゲン及び組織再構築可能性の間接的な測度である。培養を30日間までインキュベートし、各処理剤につき3つの試料を測定した。細胞を添加しないでインキュベートしたゲルを、対照として使用した。遊離ペプチドSILY及びDc13は、図53に示されているように、細胞培地中のヒドロキシプロリン含有量で測定すると、コラーゲンのみと比較してより大きなコラーゲン分解をもたらした。
【0118】
細胞生存率
細胞生存率は、生/死バイオレット生存/活力キット(Molecular Probes)を使用して決定した。本キットは、カルセイン−バイオレット染料(生細胞)及びアクア蛍光反応性染料(死細胞)を含む。試料を1×PBSで洗浄し、300μLの染料溶液と共に室温で1時間インキュベートした。未結合の染料を除去するために、試料を1×PBSですすいだ。20×対物レンズのOlympus FV1000共焦点顕微鏡によりフィルター400/452及び367/526で二次元切片を画像化した後、生細胞及び死細胞をカウントした。全ての試料について、ゲルを代表的な領域において走査し、3つの画像のセットを、ゲル中において等間隔で撮った。
【0119】
〔実施例25〕
ゲル中での細胞増殖
ゲル試料を実施例16のとおりに調製した(4mg/mLのコラーゲン;10:1のコラーゲン:処理剤)。細胞を1.5×104細胞/cm2で接種し、増殖培地において4時間インキュベートして細胞をゲルに接着させた。次に増殖培地を吸引除去し、細胞を24時間処理した。処理剤濃度は、ゲル中でのコラーゲン:処理剤の10:1モル比に等しかった。細胞を増殖培地において4時間インキュベートして、ゲルに接着させた。増殖培地を吸引により取り除き、新鮮な成長培地に代えた。試料を24時間インキュベートした。各試料中の細胞の数を、CyQuant細胞増殖アッセイ(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)を使用して測定した。図25に示されている結果は、合成ペプチドグリカン及びペプチドが細胞増殖に有害な影響を与えないことを示す。
【0120】
〔実施例26〕
DS−Dc13の調製
Dc13ペプチド配列は、SYIRIADTNITGCであり、その蛍光標識形態は、ZSYIRIADTNITGCであり、ここでZはダンシルグリシンを意味する。ヘテロ二官能架橋剤のPDPHを使用してデルマタン硫酸に結合することは、実施例3のDS−SILYについて記載されたとおりに実施される。図27に示されているように、結合体(DS−Dc13)におけるDc13とデルマタン硫酸のモル比は約1であった。
【0121】
〔実施例27〕
DS−ZSILYの蛍光結合アッセイ
DS−ZSILYについて記載された蛍光結合アッセイを、ペプチド配列ZSYIRIADTNITGC(ZDc13)を用いて実施した。結果を図28に表し、これはDS−ZDc13が用量依存的にコラーゲン表面に特異的に結合することを示しているが、飽和は、試験された最高率では達成されなかった。
【0122】
〔実施例28〕
DS−Dc13の原線維形成アッセイ
実施例19でDS−SILYについて記載された原線維形成アッセイを、結合体DS−Dc13を用いて実施した。図29に示されている結果は、DS−Dc13が原線維形成を遅延し、全体的な吸光度を用量依存的に減少することを示す。対照的に、遊離Dc13ペプチドは、高い1:1コラーゲン:添加剤モル比でコラーゲンのみの場合と比較したとき、原線維形成にほとんど影響を与えない。
【0123】
〔実施例29〕
原線維直径を測定するためのクライオSEM測定の使用
実施例21の変更した方法を使用して、原線維直径をクライオSEMにより測定した。20,000×で撮ったクライオSEM画像における原線維直径は、ImageJソフトウエア(NIH)を使用して測定した。少なくとも45本の原線維をそれぞれの処理剤について測定した。結果を平均±標準誤差で表す。統計分析を、α=0.05でDesignExpertソフトウエア(StatEase)を使用して実施した。結果を図30に示す。デコリン及び合成ペプチドグリカンは、コラーゲン又はコラーゲン+デルマタン硫酸よりも原線維直径を有意に減少する。コラーゲンのみと比較すると、遊離ペプチドDc13は、原線維直径に影響を与えないが、遊離SILYは、原線維直径の減少をもたらす。
【0124】
〔実施例30〕
細胞培養及びゲル圧縮
ヒト冠動脈平滑筋細胞(HCA SMC)(Cascade Biologies)を増殖培地(平滑筋増殖因子を添加した培地231)で培養した。第3継代の細胞を全ての実験に使用した。分化培地(1%FBS及び1×ペニシリン/ストレプトマイシンを添加した培地231)を、特に示されない限り、全ての実験に使用した。この培地は、ヘパリンを含有しない点において製造元のプロトコールと異なっている。
【0125】
コラーゲンゲルを、培地への細胞の添加に適応させるために1×PBS例の添加を省略したこと以外は上記のとおりに、それぞれの添加剤を用いて調製した。氷上で30分間インキュベートした後、分化培地中のHCA SMCを、最終濃度1×106細胞/mLとなるようゲル溶液に加えた。ゲルの形成を、500μL/ウエルの分化培地を加える6時間前に、48ウエルの組織培養処理無しプレート(Costar)を用いて四重に行った。24時間後に、ゲルをウエルの端から切り離した。培地を2〜3日毎に交換し、比較のための画像を、Gel Doc System(Bio-Rad)を使用して同じ時点で撮った。円形ゲルの断面積(圧縮の度合いに対応する)は、ImageJソフトウエア(NIH)を使用して決定した。細胞を含有しないゲルを陰性対照として使用し、添加剤無しのコラーゲンゲル中の細胞を陽性対照として使用した。結果を図31に示す。10日目までには、全てのゲルが元のゲル面積のおよそ10%圧縮され、添加剤の間の差は小さかった。DS−Dc13で処理したゲルの圧縮は、デコリン又はコラーゲンで処理したゲルの場合より僅かであるが有意に少なかったが、DSとDS−SILY処理済ゲルで見られるものとは統計的に同等であった。
【0126】
〔実施例31〕
エラスチンの測定
HCA SMCを接種したコラーゲンゲルを、実施例30に記載されたとおりに調製した。分化培地を3日毎に交換し、ゲルを10日間培養した。細胞を含有しないコラーゲンゲルを対照として使用した。ゲルを1×PBSで一晩すすいで、血漿タンパク質を除去し、製造元のプロトコール(Biocolor, County Atrim, U.K.)に従い、ファスチンエラスチンアッセイを使用して、ゲルをエラスチン含有量について試験した。簡潔には、ゲルを、100℃で1時間インキュベートすることにより、0.25Mのシュウ酸において可溶化した。エラスチンを沈殿させ、次に試料を11,000×gで10分間遠心分離した。可溶化したコラーゲンの上清を除去し、エラスチンペレットをファスチン染料試薬により室温で90分間染色した。試料を11,000×gで10分間遠心分離し、上清中の未結合の染料を除去した。ファスチン染料解離試薬によりエラスチンペレットから染料を放出させ、100μLの試料を96ウエルプレート(Costar)に移した。吸光度を513nmで測定し、エラスチン含有量を、α−エラスチン標準曲線から計算した。これらのアッセイの結果を図32に示す。DS−SILYによる処理は、全ての試料においてエラスチン生成を有意に増加させた。DS及びDS−Dc13による処理は、未処理コラーゲンよりもエラスチン生成を有意に低減させた。細胞のない対照試料のコラーゲンゲルは、エラスチン生成を示さなかった。
【0127】
〔実施例32〕
血小板相互作用に対するヘパリン又はヘパリン−SILYの効果
10mM HCl中2mg/mLのコラーゲンでスライドを37℃で1時間インキュベートすることにより、カバーガラススライド(18mm)上にコラーゲンを固定した。次にスライドを、1×PBSで洗浄し、更なる試験まで、1×PBS中に4℃で24時間保存した。未処理カバーガラススライドを陰性対照として使用した。スライドは、コラーゲン面を上に向けて、48ウエル無組織培養処理プレート(Costar)の中へ設置した。ヘパリン又はヘパリン−SILYを1×PBSに溶解して100μMの濃度にし、100μM/ウエルにて37℃で30分間インキュベートした。未結合のヘパリン又はヘパリン−SILYを吸引し、表面を1mLの1×PBSで洗浄した。添加剤を含有しない1×PBSでインキュベートしたコラーゲン固定化スライドを、陽性対照として使用した。
【0128】
ヒトの全血を800×gで15分間遠心分離し、100μLの多血小板血漿をバフィコート層から取り出し、各ウエルに加えた。37℃で1時間インキュベートした後、多血小板血漿をウエルから除去し、ウエルを1×PBSで穏やかに洗浄して、未結合細胞を除去した。スライドを5%グルタルアルデヒドにより室温で1時間固定し、すすぎ、画像化の前に凍結乾燥した。スライドを3分間金スパッター被覆し、JEOL 840 SEMにより200×で画像化した。結果を図33に示す。この画像は、ヘパリン−SILY結合体による処理が、血小板細胞のコラーゲンへの結合に影響を与えることを示す。
【0129】
〔実施例33〕
原線維密度のクライオSEMでの測定
コラーゲンを、実施例16に記載されたように、各添加剤の10:1モル比の存在下、SEM載物台の上に直接形成し、前記のように処理及び画像化した。原線維密度を計算するため、10,000×の画像を分析した。画像を8ビットの白黒に変換し、各画像の閾値を、ImageJソフトウエア(NIH)を使用して決定した。 閾値は、全ての可視原線維が白色となり、全ての空間が黒色となる値として定義した。白色と黒色の領域の比は、MatLabソフトウエアを使用して計算した。全ての測定値を3回ずつ取り、処理剤について関知しない観察者により閾値を決定した。ゲルの画像を図37に示し、測定された密度を図34に示す。
【0130】
〔実施例34〕
Dc13及びDS−Dc13を含有するゲルの粘弾性の特徴決定
コラーゲンを実施例16のとおりに調製した。粘弾性特徴決定を、コラーゲンと添加剤(処理剤)の異なる比率で形成されたゲルにおいて、実施例17に記載されたとおりに実施した。デルマタン硫酸又はデルマタン−Dc13結合体による処理は、図35に示されているように、未処理コラーゲンよりも、得られたコラーゲンゲルの剛性を増加させる。
【0131】
〔実施例35〕
細胞増殖及び細胞毒性アッセイ
実施例30で調製されたHCA SMCを、96ウエル組織培養用黒色/透明底プレート(Costar)上へ増殖培地にて4.8×104細胞/mLで接種し、4時間で接着させた。増殖培地を吸引し、コラーゲンゲル内での濃度と同等の濃度(1.4×106M)で各添加剤を含有する600μLの分化培地を、各ウエルに加えた。細胞を48時間インキュベートし、次に、製造元のプロトコールに従って、生死及びCyQuant(Invitrogen)アッセイを使用して、細胞毒性及び増殖についてそれぞれ試験した。添加剤を含有しない分化培地中の細胞を対照として使用した。結果を図36に示し、これは、いずれの処理剤も有意な細胞毒性効果を示さなかったことを示している。
【0132】
〔実施例36〕
I型コラーゲンに対する血小板結合及び血小板活性化の阻害
マイクロプレートの調製
I型原線維コラーゲン(Chronolog, Havertown, PA)を等張グルコースに希釈して、20〜100μg/mLの濃度にした。50μLのコラーゲン溶液を、高結合型96ウエルプレートの各ウエルに加えた。プレートを4℃で一晩インキュベートし、次に1×PBSで3回すすいだ。
【0133】
ペプチドグリカンを1×PBSにより25μM〜50μMの濃度に希釈し、50μLの溶液をコラーゲン被覆ウエルに加えた。対照のGAG、ペプチド又はPBSも、対照としてコラーゲン被覆ウエルに加えた。各処理剤を、200rpmで30分間振とうしながら、37℃でインキュベートした。次にウエルを、1×PBSにより3回すすいだ(200rpmの振とうによる20分間のすすぎで未結合の処理剤分子を除去することを含む)。
【0134】
血小板の調製及び活性化
認証されたPurdue IRBプロトコールに従い、インフォームドコンセントを得た健康な志願者から、ヒト全血を静脈穿刺により収集した。最初の5mLの血液は、コラーゲン及び他のタンパク質が混入している可能性があるので廃棄し、次におよそ15mLをクエン酸塩加ガラス製バキュテーナー(BD Bioscience)に収集した。血液をガラス管中で200×gにより20℃で20分間遠心分離した。遠心分離された血液の最上層、すなわち多血小板血漿(PRP)を、血小板試験に使用した。PRP(50μL/ウエル)をマイクロプレートに加え、振とうすることなく、室温で1時間インキュベートした。
【0135】
1時間のインキュベーションの後、PRPを各ウエルから取り出し、5μLのETP(107mMのEDTA、12mMのテオフィリン及び2.8μMのプロスタグランジンE1)を含有するマイクロ遠心分離管に加えて、更なる血小板活性化を阻害した。これらの管を1900×gにより4℃で30分間回転して、血小板をペレット化した。上清(血小板血漿)を、血小板活性化マーカーのPF−4及びNap−2の存在を試験するELISA分析のために収集した。
【0136】
血小板接着
PRPを、コラーゲン/処理剤で被覆したプレートのウエルから除去した後、ウエルを、200rpmで振とうしながら、0.9%NaClで5分間ずつ3回すすいだ。血小板接着を、比色的に定量化するか又は蛍光的に可視化した。
【0137】
比色アッセイ
0.1%のトリトンX−100及び1mg/mLのp−ニトロフェニルリン酸を含有する140μLのクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝液(0.1M、pH5.4)を、各ウエルに加えた。バックグラウンド吸光度を405nmで測定した。次にプレートを、200rmで振とうしながら、室温で40分間インキュベートした。トリトンX−100は、細胞に孔を開けるので、p−ニトロフェニルリン酸が血小板の酸性ホスファターゼと相互作用して、p−ニトロフェノールを生成することを可能にする。40分間のインキュベーションの後、100μLの2M NaOHを各ウエルに加えた。pHの変化は、酸性ホスファターゼを不活性化することにより反応を停止させ、また、p−ニトロフェノールを光学的に活性な化合物に変換する。次に吸光度を405nmで読み取り、接着した血小板の数と相関させた。結果を図41に示す。
【0138】
蛍光アッセイ
接着血小板を、4%パラホルムアルデヒドと共に室温で10分間インキュベートすることにより固定した。血小板に0.1%トリトンX−100を5分間浸透させた。血小板アクチンを、1%BSAを含有するファロイジン−AlexaFluor 488(Invitrogen)と共に30分間インキュベートすることにより標識した。ウエルを、1×PBSで3回すすぎ、接着血小板を、DAPIフィルターを使用する直立型蛍光顕微鏡を使用して画像化した。
【0139】
結果については図42〜52を参照すること。未処理コラーゲン表面上の血小板の凝集は、集塊した血小板によりもたらされるぼやけた像により示されている。理論に束縛されることなく、z方向(プレート表面に対して垂直)での血小板の集塊は、一焦点面において像をとらえることを妨げると考えられる。処理済みの表面では、低減された血小板凝集は、集塊の減少(z方向でのより少ない血小板)をもたらし、焦点の合った像をプレート表面においてとらえることができる。これらの画像は、合成ペプチドグリカンがコラーゲンへの血小板細胞の接着を低減することを示す。
【0140】
血小板活性化マーカーの検出
血小板のペレット化により得られた上清(血小板血漿)を使用して、放出された活性化因子を決定した。血小板因子4(PF−4)及びβ−トロンボグロブリン(Nap−2)は、血小板活性化により放出される血小板のアルファ顆粒内に含有されている2つのタンパク質である。それぞれのタンパク質を検出するために、サンドイッチELISAを利用した。両方のサンドイッチELISAの構成要素を(R&D Systems)から購入し、提供されたプロトコールに従った。値が直線範囲内になるように、血小板血漿の試料は、1×PBS中の1%BSAで1:10,000〜1:40,000に希釈した。図39及び40に示されている結果は、合成ペプチドグリカンによる処理が、コラーゲンIによる血小板の活性化を減少させることを示す。
【0141】
〔実施例37〕
III型及びI型コラーゲンに対する血小板結合及び血小板活性化の阻害
実施例36の方法に以下の変更を加えたものを使用した。
【0142】
マイクロプレートの調製
I型コラーゲン(ラット尾コラーゲン、BD Biosciences)及びIII型コラーゲン(Millipore)を、氷上でNaOH、1×PBS及び10×PBSと混合して、生理学的条件にした。総コラーゲン濃度は、70%のI型コラーゲンと30%のIII型コラーゲンの1mg/mLであった。30μLのコラーゲン溶液を、96ウエルプレートの各ウエルにピペットで加えた。プレートを加湿インキュベーターにより37℃で1時間インキュベートして、原線維コラーゲンから構成されるゲルをウエル中で形成させた。ウエルを1×PBSで3回すすいだ。
【0143】
ペプチドグリカンを1×PBSにより25μMの濃度に希釈し、50μLの溶液をコラーゲン被覆ウエルに加えた。対照のGAG、ペプチド又はPBSも、対照としてコラーゲン被覆ウエルに加えた。ペプチドグリカン又はペプチドの組み合わせは、1×PBS中の25μMの各分子から構成された。処理剤を、200rpmで30分間振とうしながら、37℃でインキュベートした。次にウエルを、1×PBSにより3回すすいだ(200rpmの振とうによる10分間のすすぎで未結合の処理剤分子を除去することを含む)。
【0144】
図54に示されている血小板活性化阻害測定の結果は、合成ペプチドグリカンが、I型とIII型のコラーゲン混合物による血小板細胞の活性化を阻害することを実証する。
【0145】
図55に示されている結果は、ペプチドグリカンが、I型とIII型のコラーゲン混合物への血小板細胞の結合を阻害することを実証する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲンマトリックスとコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンとを含む改変コラーゲンマトリックス。
【請求項2】
コラーゲンが架橋されている、請求項1記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項3】
コラーゲンが非架橋である、請求項1記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項4】
コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンが、コラーゲン原線維形成を調節するプロテオグリカン又はタンパク質のアミノ酸配列の一部とのアミノ酸相同性を有する、請求項1記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項5】
コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンが、コラーゲン原線維形成を調節しないコラーゲン結合性タンパク質の一部とのアミノ酸相同性を有する、請求項1記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項6】
外来性細胞集団を更に含む、請求項1記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項7】
外来性細胞集団が、非角化上皮細胞、角化上皮細胞、内皮細胞、神経細胞、骨芽細胞、線維芽細胞、軟骨細胞、腱細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、心筋細胞、前駆細胞、多能性前駆細胞、グリア細胞、滑膜細胞、中胚葉誘導細胞、中皮細胞、幹細胞、及び骨形成原細胞からなる群より選択される、請求項6記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項8】
少なくとも1つの多糖を更に含む、請求項1記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項9】
コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンが、式:PnGxの化合物であって、式中、nが1〜10であり、
xが1〜10であり;
Pが、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;そして
Gがグリカンである、
請求項1記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項10】
コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンが、式:(PnL)xGの化合物であって、式中、nが1〜5であり、
xが1〜10であり;
Pが、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;
Lがリンカーであり;そして
Gがグリカンである、
請求項1記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項11】
コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンが、式:P(LGn)xの化合物であって、式中、nが1〜5であり、
xが、1〜10であり;
Pが、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;
Lがリンカーであり;そして
Gがグリカンである、
請求項1記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項12】
グリカンがグリコサミノグリカンである、請求項9、10又は11に記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項13】
合成ペプチドが、小型ロイシンリッチプロテオグリカン又は血小板コラーゲンレセプター配列のアミノ酸配列とのアミノ酸相同性を有する、請求項9〜11のいずれか1項に記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項14】
合成ペプチドが、血小板コラーゲンレセプター配列のアミノ酸配列とのアミノ酸相同性を有する、請求項9〜11のいずれか1項に記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項15】
ペプチドが、RRANAALKAGELYKSILYGC、RLDGNEIKRGC、AHEEISTTNEGVMGC、NGVFKYRPRYFLYKHAYFYPPLKRFPVQGC、CQDSETRTFY、TKKTLRTGC、GLRSKSKKFRRPDIQYPDATDEDITSHMGC、SQNPVQPGC、SYIRIADTNITGC、SYIRIADTNIT、KELNLVYT、KELNLVYTGC、GSITTIDVPWNV、及びGSITTIDVPWNVGCからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項9〜11のいずれか1項に記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項16】
グリカンが、アルギン酸塩、アガロース、デキストラン、コンドロイチン、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパラン、ヘパリン、ケラチン、及びヒアルロナンからなる群より選択される、請求項9〜15のいずれか1項に記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項17】
グリカンが、デルマタン硫酸、デキストラン、及びヘパリンからなる群より選択される、請求項9〜16のいずれか1項に記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項18】
改変コラーゲンマトリックスを調製する方法であって、
コラーゲン溶液を提供する工程;
コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを提供する工程;及び
コラーゲンをコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンの存在下で重合して、改変コラーゲンマトリックスを形成させる工程
を含む方法。
【請求項19】
コラーゲンが、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
コラーゲン溶液中のコラーゲンの量が、約0.4mg/mL〜約6mg/mLである、請求項18又は19記載の方法。
【請求項21】
コラーゲンとコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンのモル比が、約1:1〜約40:1である、請求項18〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンが、式:PnGxの化合物であって、式中、
nが1〜10であり;
xが、1〜10であり;
Pが、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;そして
Gがグリカンである、
請求項18〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンが、式:(PnL)xGの化合物であって、式中、nが1〜5であり;
xが、1〜10であり;
Pが、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;
Lがリンカーであり;そして
Gがグリカンである、
請求項18〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンが、式:P(LGn)xの化合物であって、式中、nが1〜5であり、
xが、1〜10であり;
Pが、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;
Lがリンカーであり;そして
Gがグリカンである、
請求項18〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
グリカンがグリコサミノグリカン又は多糖である、請求項22〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
nが1〜10であり;
xが、1〜10であり;
Pが、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;そして
Gがグリカンである、
式:PnGxの化合物。
【請求項27】
nが1〜5であり;
xが、1〜10であり;
Pが、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;
Lがリンカーであり;そして
Gがグリカンである、
式:(PnL)xGの化合物。
【請求項28】
nが1〜5であり;
xが、1〜10であり;
Pが、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;
Lがリンカーであり;そして
Gがグリカンである、
式:P(LGn)xの化合物。
【請求項29】
グリカンがグリコサミノグリカン又は多糖である、請求項26〜28のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項30】
合成ペプチドが、小型ロイシンリッチプロテオグリカン又は血小板コラーゲンレセプター配列のアミノ酸配列とのアミノ酸相同性を有する、請求項26〜29のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項31】
合成ペプチドが、血小板コラーゲンレセプター配列のアミノ酸配列とのアミノ酸相同性を有する、請求項26〜29のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項32】
ペプチドが、RRANAALKAGELYKSILYGC、RLDGNEIKRGC、AHEEISTTNEGVMGC、NGVFKYRPRYFLYKHAYFYPPLKRFPVQGC、CQDSETRTFY、TKKTLRTGC、GLRSKSKKFRRPDIQYPDATDEDITSHMGC、SQNPVQPGC、SYIRIADTNITGC、SYIRIADTNIT、KELNLVYT、KELNLVYTGC、GSITTIDVPWNV、及びGSITTIDVPWNVGCからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項26〜29のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項33】
グリカンが、アルギン酸塩、アガロース、デキストラン、コンドロイチン、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパラン、ヘパリン、ケラチン、及びヒアルロナンからなる群より選択される、請求項26〜32のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項34】
グリカンが、デルマタン硫酸、デキストラン、及びヘパリンからなる群より選択される、請求項26〜33のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項35】
リンカーが、式:−SCH2CH2C(O)NHN=を含む、請求項26〜34のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項36】
改変コラーゲンマトリックスの構造又は機械的特性を変更する方法であって、
コラーゲン溶液を提供する工程;
コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを提供する工程;
コラーゲンをコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンの存在下で重合して、変更された改変コラーゲンマトリックスを形成させる工程
を含む方法。
【請求項37】
コラーゲンが、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項36記載の方法。
【請求項38】
コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンが、請求項26〜35のいずれか1項に記載の化合物である、請求項36記載の方法。
【請求項39】
コラーゲン溶液中のコラーゲンの量が、約0.4mg/mL〜約6mg/mLである、請求項36〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
コラーゲンとコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンのモル比が、約1:1〜約40:1である、請求項36〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
請求項1〜5又は8〜17のいずれか1項に記載の改変コラーゲンマトリックスを含むキット。
【請求項42】
改変コラーゲンマトリックスが滅菌されている、請求項41記載のキット。
【請求項43】
細胞を更に含む、請求項41〜42のいずれか1項に記載のキット。
【請求項44】
細胞が、フラスコ、アンプル、バイアル、チューブ又はボトルの中にある、請求項43記載のキット。
【請求項45】
細胞がプレート上にある、請求項43記載のキット。
【請求項46】
容器の中にある、請求項41記載のキット。
【請求項47】
細胞が、前駆細胞、線維芽細胞、神経細胞、骨芽細胞、グリア細胞、滑膜細胞、中皮細胞、軟骨細胞、腱細胞、内皮細胞、及び平滑筋細胞からなる群より選択される、請求項43記載のキット。
【請求項48】
請求項26〜35のいずれか1項に記載の化合物を含む、請求項41記載のキット。
【請求項49】
使用説明書を更に含む、請求項41記載のキット。
【請求項50】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の改変コラーゲンマトリックスを含む改変グラフト作成物。
【請求項51】
請求項26〜35のいずれか1項に記載の化合物と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤若しくは希釈剤又はその組み合わせとを含む組成物。
【請求項52】
局所使用に適合された形態の、請求項51記載の組成物。
【請求項53】
局所用形態が、粉末剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、プラスター剤、及び局所液剤からなる群より選択される、請求項52記載の組成物。
【請求項54】
非経口投与に適合された、請求項51記載の組成物。
【請求項55】
非経口投与が、静脈内又は動脈内への投与である、請求項54記載の組成物。
【請求項56】
血小板の活性を阻害する方法であって、
コラーゲンに接触するコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを提供する工程を含み、ここで、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンがコラーゲンに結合し、血小板の活性が阻害されている、方法。
【請求項57】
ペプチドグリカンのグリカン成分が、ヒアルロナン、ヘパリン、及びデキストランからなる群より選択される、請求項56記載の方法。
【請求項58】
ペプチドグリカンのペプチド成分が、RRANAALKAGELYKSILYGC、GSITTIDVPWNV、及びGSITTIDVPWNVGCからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項56記載の方法。
【請求項59】
ペプチドグリカンのペプチド成分が、RRANAALKAGELYKSILYGC、RLDGNEIKRGC、AHEEISTTNEGVMGC、NGVFKYRPRYFLYKHAYFYPPLKRFPVQGC、CQDSETRTFY、TKKTLRTGC、GLRSKSKKFRRPDIQYPDATDEDITSHMGC、SQNPVQPGC、SYIRIADTNITGC、SYIRIADTNIT、KELNLVYT、KELNLVYTGC、GSITTIDVPWNV、及びGSITTIDVPWNVGCからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項36項記載の方法。
【請求項60】
コラーゲンへの血小板の接着を阻害する方法であって、
コラーゲンに接触するコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを提供する工程を含み、ここで、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンがコラーゲンに結合し、コラーゲンへの血小板の接着が阻害されている、方法。
【請求項61】
ペプチドグリカンのグリカン成分が、ヒアルロナン、ヘパリン、及びデキストランからなる群より選択される、請求項60記載の方法。
【請求項62】
ペプチドグリカンのペプチド構成要素が、RRANAALKAGELYKSILYGC、GSITTIDVPWNV、及びGSITTIDVPWNVGCからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項60記載の方法。
【請求項1】
コラーゲンマトリックスとコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンとを含む改変コラーゲンマトリックス。
【請求項2】
コラーゲンが架橋されている、請求項1記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項3】
コラーゲンが非架橋である、請求項1記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項4】
コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンが、コラーゲン原線維形成を調節するプロテオグリカン又はタンパク質のアミノ酸配列の一部とのアミノ酸相同性を有する、請求項1記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項5】
コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンが、コラーゲン原線維形成を調節しないコラーゲン結合性タンパク質の一部とのアミノ酸相同性を有する、請求項1記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項6】
外来性細胞集団を更に含む、請求項1記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項7】
外来性細胞集団が、非角化上皮細胞、角化上皮細胞、内皮細胞、神経細胞、骨芽細胞、線維芽細胞、軟骨細胞、腱細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、心筋細胞、前駆細胞、多能性前駆細胞、グリア細胞、滑膜細胞、中胚葉誘導細胞、中皮細胞、幹細胞、及び骨形成原細胞からなる群より選択される、請求項6記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項8】
少なくとも1つの多糖を更に含む、請求項1記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項9】
コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンが、式:PnGxの化合物であって、式中、nが1〜10であり、
xが1〜10であり;
Pが、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;そして
Gがグリカンである、
請求項1記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項10】
コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンが、式:(PnL)xGの化合物であって、式中、nが1〜5であり、
xが1〜10であり;
Pが、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;
Lがリンカーであり;そして
Gがグリカンである、
請求項1記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項11】
コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンが、式:P(LGn)xの化合物であって、式中、nが1〜5であり、
xが、1〜10であり;
Pが、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;
Lがリンカーであり;そして
Gがグリカンである、
請求項1記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項12】
グリカンがグリコサミノグリカンである、請求項9、10又は11に記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項13】
合成ペプチドが、小型ロイシンリッチプロテオグリカン又は血小板コラーゲンレセプター配列のアミノ酸配列とのアミノ酸相同性を有する、請求項9〜11のいずれか1項に記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項14】
合成ペプチドが、血小板コラーゲンレセプター配列のアミノ酸配列とのアミノ酸相同性を有する、請求項9〜11のいずれか1項に記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項15】
ペプチドが、RRANAALKAGELYKSILYGC、RLDGNEIKRGC、AHEEISTTNEGVMGC、NGVFKYRPRYFLYKHAYFYPPLKRFPVQGC、CQDSETRTFY、TKKTLRTGC、GLRSKSKKFRRPDIQYPDATDEDITSHMGC、SQNPVQPGC、SYIRIADTNITGC、SYIRIADTNIT、KELNLVYT、KELNLVYTGC、GSITTIDVPWNV、及びGSITTIDVPWNVGCからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項9〜11のいずれか1項に記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項16】
グリカンが、アルギン酸塩、アガロース、デキストラン、コンドロイチン、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパラン、ヘパリン、ケラチン、及びヒアルロナンからなる群より選択される、請求項9〜15のいずれか1項に記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項17】
グリカンが、デルマタン硫酸、デキストラン、及びヘパリンからなる群より選択される、請求項9〜16のいずれか1項に記載の改変コラーゲンマトリックス。
【請求項18】
改変コラーゲンマトリックスを調製する方法であって、
コラーゲン溶液を提供する工程;
コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを提供する工程;及び
コラーゲンをコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンの存在下で重合して、改変コラーゲンマトリックスを形成させる工程
を含む方法。
【請求項19】
コラーゲンが、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
コラーゲン溶液中のコラーゲンの量が、約0.4mg/mL〜約6mg/mLである、請求項18又は19記載の方法。
【請求項21】
コラーゲンとコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンのモル比が、約1:1〜約40:1である、請求項18〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンが、式:PnGxの化合物であって、式中、
nが1〜10であり;
xが、1〜10であり;
Pが、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;そして
Gがグリカンである、
請求項18〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンが、式:(PnL)xGの化合物であって、式中、nが1〜5であり;
xが、1〜10であり;
Pが、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;
Lがリンカーであり;そして
Gがグリカンである、
請求項18〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンが、式:P(LGn)xの化合物であって、式中、nが1〜5であり、
xが、1〜10であり;
Pが、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;
Lがリンカーであり;そして
Gがグリカンである、
請求項18〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
グリカンがグリコサミノグリカン又は多糖である、請求項22〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
nが1〜10であり;
xが、1〜10であり;
Pが、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;そして
Gがグリカンである、
式:PnGxの化合物。
【請求項27】
nが1〜5であり;
xが、1〜10であり;
Pが、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;
Lがリンカーであり;そして
Gがグリカンである、
式:(PnL)xGの化合物。
【請求項28】
nが1〜5であり;
xが、1〜10であり;
Pが、コラーゲン結合ドメインの配列を含む約5〜約40個のアミノ酸の合成ペプチドであり;
Lがリンカーであり;そして
Gがグリカンである、
式:P(LGn)xの化合物。
【請求項29】
グリカンがグリコサミノグリカン又は多糖である、請求項26〜28のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項30】
合成ペプチドが、小型ロイシンリッチプロテオグリカン又は血小板コラーゲンレセプター配列のアミノ酸配列とのアミノ酸相同性を有する、請求項26〜29のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項31】
合成ペプチドが、血小板コラーゲンレセプター配列のアミノ酸配列とのアミノ酸相同性を有する、請求項26〜29のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項32】
ペプチドが、RRANAALKAGELYKSILYGC、RLDGNEIKRGC、AHEEISTTNEGVMGC、NGVFKYRPRYFLYKHAYFYPPLKRFPVQGC、CQDSETRTFY、TKKTLRTGC、GLRSKSKKFRRPDIQYPDATDEDITSHMGC、SQNPVQPGC、SYIRIADTNITGC、SYIRIADTNIT、KELNLVYT、KELNLVYTGC、GSITTIDVPWNV、及びGSITTIDVPWNVGCからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項26〜29のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項33】
グリカンが、アルギン酸塩、アガロース、デキストラン、コンドロイチン、デルマタン、デルマタン硫酸、ヘパラン、ヘパリン、ケラチン、及びヒアルロナンからなる群より選択される、請求項26〜32のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項34】
グリカンが、デルマタン硫酸、デキストラン、及びヘパリンからなる群より選択される、請求項26〜33のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項35】
リンカーが、式:−SCH2CH2C(O)NHN=を含む、請求項26〜34のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項36】
改変コラーゲンマトリックスの構造又は機械的特性を変更する方法であって、
コラーゲン溶液を提供する工程;
コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを提供する工程;
コラーゲンをコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンの存在下で重合して、変更された改変コラーゲンマトリックスを形成させる工程
を含む方法。
【請求項37】
コラーゲンが、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項36記載の方法。
【請求項38】
コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンが、請求項26〜35のいずれか1項に記載の化合物である、請求項36記載の方法。
【請求項39】
コラーゲン溶液中のコラーゲンの量が、約0.4mg/mL〜約6mg/mLである、請求項36〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
コラーゲンとコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンのモル比が、約1:1〜約40:1である、請求項36〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
請求項1〜5又は8〜17のいずれか1項に記載の改変コラーゲンマトリックスを含むキット。
【請求項42】
改変コラーゲンマトリックスが滅菌されている、請求項41記載のキット。
【請求項43】
細胞を更に含む、請求項41〜42のいずれか1項に記載のキット。
【請求項44】
細胞が、フラスコ、アンプル、バイアル、チューブ又はボトルの中にある、請求項43記載のキット。
【請求項45】
細胞がプレート上にある、請求項43記載のキット。
【請求項46】
容器の中にある、請求項41記載のキット。
【請求項47】
細胞が、前駆細胞、線維芽細胞、神経細胞、骨芽細胞、グリア細胞、滑膜細胞、中皮細胞、軟骨細胞、腱細胞、内皮細胞、及び平滑筋細胞からなる群より選択される、請求項43記載のキット。
【請求項48】
請求項26〜35のいずれか1項に記載の化合物を含む、請求項41記載のキット。
【請求項49】
使用説明書を更に含む、請求項41記載のキット。
【請求項50】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の改変コラーゲンマトリックスを含む改変グラフト作成物。
【請求項51】
請求項26〜35のいずれか1項に記載の化合物と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤若しくは希釈剤又はその組み合わせとを含む組成物。
【請求項52】
局所使用に適合された形態の、請求項51記載の組成物。
【請求項53】
局所用形態が、粉末剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、プラスター剤、及び局所液剤からなる群より選択される、請求項52記載の組成物。
【請求項54】
非経口投与に適合された、請求項51記載の組成物。
【請求項55】
非経口投与が、静脈内又は動脈内への投与である、請求項54記載の組成物。
【請求項56】
血小板の活性を阻害する方法であって、
コラーゲンに接触するコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを提供する工程を含み、ここで、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンがコラーゲンに結合し、血小板の活性が阻害されている、方法。
【請求項57】
ペプチドグリカンのグリカン成分が、ヒアルロナン、ヘパリン、及びデキストランからなる群より選択される、請求項56記載の方法。
【請求項58】
ペプチドグリカンのペプチド成分が、RRANAALKAGELYKSILYGC、GSITTIDVPWNV、及びGSITTIDVPWNVGCからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項56記載の方法。
【請求項59】
ペプチドグリカンのペプチド成分が、RRANAALKAGELYKSILYGC、RLDGNEIKRGC、AHEEISTTNEGVMGC、NGVFKYRPRYFLYKHAYFYPPLKRFPVQGC、CQDSETRTFY、TKKTLRTGC、GLRSKSKKFRRPDIQYPDATDEDITSHMGC、SQNPVQPGC、SYIRIADTNITGC、SYIRIADTNIT、KELNLVYT、KELNLVYTGC、GSITTIDVPWNV、及びGSITTIDVPWNVGCからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項36項記載の方法。
【請求項60】
コラーゲンへの血小板の接着を阻害する方法であって、
コラーゲンに接触するコラーゲン結合性合成ペプチドグリカンを提供する工程を含み、ここで、コラーゲン結合性合成ペプチドグリカンがコラーゲンに結合し、コラーゲンへの血小板の接着が阻害されている、方法。
【請求項61】
ペプチドグリカンのグリカン成分が、ヒアルロナン、ヘパリン、及びデキストランからなる群より選択される、請求項60記載の方法。
【請求項62】
ペプチドグリカンのペプチド構成要素が、RRANAALKAGELYKSILYGC、GSITTIDVPWNV、及びGSITTIDVPWNVGCからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項60記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図28】
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【図53】
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【図55】
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【図7】
【図8】
【図9】
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【図11】
【図12】
【図13】
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【図16】
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【図29】
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【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
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【図44】
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【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【公表番号】特表2011−515499(P2011−515499A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502107(P2011−502107)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/038624
【国際公開番号】WO2009/120995
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(598063203)パーデュー・リサーチ・ファウンデーション (59)
【氏名又は名称原語表記】PURDUE RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/038624
【国際公開番号】WO2009/120995
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(598063203)パーデュー・リサーチ・ファウンデーション (59)
【氏名又は名称原語表記】PURDUE RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】
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