説明

コルゲートチューブ

【課題】 ワイヤーハーネスを確実に保護するとともに、車両の振動に起因するワイヤーハーネスの摩耗、損傷を防止できるコルゲートチューブを提供する。
【解決手段】 ワイヤーハーネス11を挿入可能な幅で軸線方向に延びるスリット開口部12を有し、軸線と直交する断面形状が円弧状を呈する内側チューブ13と、軸線と直交する断面形状が円弧状を呈し、内側チューブ13のスリット開口部12を覆うように該内側チュープ13に被嵌される外側チュープ15とから構成されるコルゲートチューブ30において、内側チューブ13の全体もしくはその内周面を、ワイヤーハーネス11を構成する電線の外皮よりも軟質な材料で形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部にワイヤーハーネスを収容した状態で車両パネル等に配索されるコルゲートチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のコルゲートチューブとしては、例えば図3及び図4に示すように、小径部1と大径部2とが軸線方向に交互に連続して形成された可撓性を有するジャバラ状の合成樹脂製チューブ3に、その長手方向に沿ってスリット開口部4を形成したものが一般的である。しかし、このようなコルゲートチューブでは、スリット開口部4を押し拡げてワイヤーハーネス5をチューブ内に挿入するため、図4に断面図にて示すように、ワイヤーハーネス5を構成する電線の外皮がスリット開口部4の開口縁部と接触して傷付くことがある。また、コルゲートチューブを曲げた場合、特にスリット開口部4に沿って曲げた場合に、スリット開口部4の開口幅が大きくなり、収容したワイヤーハーネス5が露出し、ワイヤーハーネス5の保護機能が損なわれるという問題もある。
【0003】
そこで、このような不具合を解決するために、図5及び図6に示すコルゲートチューブが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このコルゲートチューブ10は、ワイヤーハーネス11を挿入可能な幅で軸線方向に延びるスリット開口部12を有し、軸線と直交する断面形状が円弧状を呈する内側チューブ13と、軸線と直交する断面形状が円弧状を呈し、内側チューブ13のスリット開口部12を覆うように内側チュープ13に被嵌される外側チュープ15とからなり、内側チューブ13のスリット開口部12を覆うように外側チューブ15を被嵌する構成となっている。また、内側チューブ13は小径部16と大径部17とが軸線方向に交互に配置された可撓性を有するジャバラ状の合成樹脂製チューブとされており、外側チューブ15も同様に、小径部18と大径部19とが軸線方向に交互に配置された可撓性を有するジャバラ状の合成樹脂製チューブとされている。
【0004】
また、内側チューブ13には、その外周面のスリット開口部12と対向する位置に、外側チューブ15のスリット開口部14の縁部が当接して外側チューブ15の周方向への回転を規制する突起状の回転規制手段20が設けられており、これにより、外側チューブ15が不用意に回転して内側チューブ13のスリット開口部12が露出するのを防止することができる。
【0005】
このような構成のコルゲートチューブ10では、組み付けは、図6に示すように、内側チュープ13の内部にスリット開口部12を通じてワイヤーハーネス11を挿入して収容した後、内側チューブ13のスリット開口部12と外側チューブ15のスリット開口部14とを対向させて外側チューブ15を内側チューブ13に被嵌して行う。このとき、内側チューブ13のスリット開口部12は、ワイヤーハーネス11を余裕をもって挿入できるように幅広に形成されているため、ワイヤーハーネス11を構成する電線の外皮がスリット開口部12の縁部で傷付けられる危険性が大幅に低減する。また、コルゲートチューブ10を曲げた場合でも、各スリット開口12、14が開くことがないため、ワイヤーハーネス11の保護機能を損なうこともない。
【特許文献1】特公平5−14497号公報(図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のコルゲートチューブ10では、ワイヤーハーネス11を保護することを目的に、内側チューブ13及び外側チューブ15共に比較的硬い樹脂材料(一般的にはポリプロピレン組成物)で形成されている。そのため、車両の振動に伴ってコルゲートチューブ10内のワイヤーハーネス11が振動すると、ワイヤーハーネス11がコルゲートチューブ10の内周面、特に内側チューブ13の小径部16の内周面と衝突して各電線の外皮が摩耗、損傷して品質が低下するという問題がある。
【0007】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、ワイヤーハーネスを確実に保護するとともに、車両の振動に起因するワイヤーハーネスの摩耗、損傷を防止できるコルゲートチューブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、ワイヤーハーネスを挿入可能な幅で軸線方向に延びるスリット開口部を有し、軸線と直交する断面形状が円弧状を呈する内側チューブと、軸線と直交する断面形状が円弧状を呈し、内側チューブのスリット開口部を覆うように該内側チュープに被嵌される外側チュープとから構成されるコルゲートチューブにおいて、内側チューブの全体もしくはその内周面を、ワイヤーハーネスを構成する電線の外皮よりも軟質な材料で形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコルゲートチューブは、ワイヤーハーネスを傷付けることなく収容でき、しかも車両の振動に伴ってワイヤーハーネスが振動してもワイヤーハーネスを構成する電線の外皮が摩耗したり、損傷することがない。更に、如何様に曲げてもスリット開口部が開口せず、ワイヤーハーネスが露出することもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に関して図面を参照して説明する。図1は本発明のコルゲートチューブの一実施形態を示す全体斜視図、図2は内側チューブと外側チューブとの結合方法を説明するための図である。
【0011】
図1及び図2に示すように、本発明のコルゲートチューブ30は、構造的には図5及び図6で説明したコルゲートチューブ10と同様であり、内側チューブ13と外側チューブ15とで構成される。尚、各部の寸法、例えば、内側チューブ13のスリット開口部12の幅、小径部16及び大径部17の直径、外側チューブ15のスリット開口部14の幅、小径部18及び大径部19の直径等については、収容されるワイヤーハーネス11に応じて適否設定される。また、外側チューブ15の周方向への回転を規制するために、内側チューブ13の外周面のスリット開口部12と対向する位置に、円弧状の突起からなる回転規制手段20が形成されている。
【0012】
本発明のコルゲートチューブ30は、内側チューブ13の全体あるいはその内周面を、ワイヤーハーネス11を構成する電線の外皮よりも軟質な材料で形成することを特徴としている。自動車用の電線として使用されているPVC電線は、JIS K7215で規定される硬度でHDD45〜90が使用され、特にHDD50〜60が一般的である。また、ホリオレフィン系の樹脂組成物で外皮を形成した電線では、JIS K7215で規定される硬度でHDD50〜90が使用され、特にHDD65〜70が一般的である。そこで、本発明では、内側チューブ13の全体あるいはその内周面を、JIS K7215で規定される硬度でHDA80〜HDD45、好ましくはHDD30〜40とする。
【0013】
このような硬度とするには、成形材料や成形条件を適宜選択すればよく、例えば、ポリプロピレンにエチレンプロピレンゴムまたはスチレン系エラストマー等を添加したものを用いることができる。また、ゴム材料を用いることによっても、目的の硬度を達成することができる。また、内側チューブ13の内周面のみを上記の硬度とするには、上記の成形材料で内層を成形し、外層を従来のポリプロピレンで成形して両層と接合すればよい。
【0014】
尚、外側チューブ15については制限がなく、従来と同様にポリプロピレンを成形して、コルゲートチューブとして一般的な硬度であるJIS K7215でHDD50〜90、好ましくはHDD60〜70とすればよい。
【0015】
本発明のコルゲートチューブ30は、上記の構成により、車両の振動によりワイヤーハーネス11が振動した場合でも、内側チューブ13が軟質材料からなるため、電線の外皮の摩耗や損傷を防止することができる。また、如何様に曲げてもスリット開口部12、14が開口することがないため、ワイヤーハーネス11の保護機能が損なわれることもない。
【実施例】
【0016】
以下に実施例及び比較例を挙げて更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
(試験用コルゲートチューブの作製)
図1及び図2に示したように、それぞれスリット開口部を有する内側チューブと外側チューブとから構成されるコルゲートチューブを作製した。その際、本発明品については、内側チューブをJIS K7215で規定される硬度でHDD35のポリプロピレン製とし、外側チューブをJIS K7215で規定される硬度でHDD70のポリプロピレン製とした。また、比較用に、内側チューブ及び外側チューブともにJIS K7215で規定される硬度でHDD70のポリプロピレン製コルゲートチューブを作製した。
【0017】
(耐久性試験)
上記で作製した各コルゲートチューブに、ポリエチレン製の外皮(JIS K7215で規定される硬度でHDD50)を有する外径20mmの電線を19本束ねたワイヤーハーネスを収容し、外部から50Hzの振動を300時間連続して加えた。そして、振動を止めて内部の電線を取り出し、外皮の状態を目視にて観察した。
【0018】
その結果、内側チューブを軟質とした本発明品では電線の表皮に殆ど摩耗や損傷が見られなかったのに対し、比較用のコルゲートチューブでは電線の表皮に多数の摩耗傷が付いていた。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のコルゲートチューブの一実施形態を示す全体斜視図である。
【図2】図1のコルゲートチューブの内側チューブと外側チューブとの結合方法を説明するための図である。
【図3】従来のコルゲートチューブを説明するための図である。
【図4】図3のコルゲートチューブ内にワイヤーハーネスを挿入する際の不具合を説明するための断面図である。
【図5】従来の他のコルゲートチューブを説明するための全体斜視図である。
【図6】図5のコルゲートチューブの内側チューブと外側チューブとの結合方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0020】
11 ワイヤーハーネス
12 スリット開口部
13 内側チューブ
14 スリット開口部
15 外側チューブ
20 突起(回転規制手段)
30 コルゲートチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネスを挿入可能な幅で軸線方向に延びるスリット開口部を有し、軸線と直交する断面形状が円弧状を呈する内側チューブと、軸線と直交する断面形状が円弧状を呈し、内側チューブのスリット開口部を覆うように該内側チュープに被嵌される外側チュープとから構成されるコルゲートチューブにおいて、
内側チューブの全体もしくはその内周面を、ワイヤーハーネスを構成する電線の外皮よりも軟質な材料で形成したことを特徴とするコルゲートチューブ。
【請求項2】
内側チューブを外側チューブに挿入した際に、外側チューブの回転を規制する回転規制手段を備えることを特徴とする請求項1記載のコルゲートチューブ。
【請求項3】
回転規制手段が、内側チューブの外周面のスリット開口部と対向する位置に突設された突起であることを特徴とする請求項2記載のコルゲートチューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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