説明

コレステリック液晶を含む表示素子の駆動方法およびコレステリック液晶表示装置

【課題】温度が変化しても安定した表示が行えるコレステリック液晶の駆動方法およびコレステリック液晶表示装置の実現。
【解決手段】コレステリック液晶表示素子10と、表示素子を駆動するセグメントドライバおよびコモンドライバ28,29と、セグメントドライバおよびコモンドライバに供給する電源を生成する多電源生成回路23と、温度センサ30と、制御回路27と、を有し、制御回路は、リセット期間、スイッチング期間および維持期間を有するダイナミック駆動シーケンスを行なうように制御し、維持期間におけるコレステリック液晶への印加電圧を温度に応じて変化させるコレステリック液晶表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コレステリック液晶を含む表示素子の駆動方法およびコレステリック液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置として、例えば電子ペーパー等の、液晶を用いた表示装置が開発されている。例えば、コレステリック液晶を用いた表示素子は、印加する電場強度の調整により、特定の波長の光を反射するプレーナ状態、光を透過するフォーカルコニック状態、プレーナ状態とフォーカルコニック状態との中間状態をとることができ、各画素の液晶をいずれかの状態に設定して画像を表示する。
【0003】
液晶を用いた表示装置の駆動方法として、例えばダイナミック駆動方式(DDS)が用いられている。DDSを用いることにより、高コントラストの画像を高速に書換えることができる。
【0004】
DDSによる駆動期間は、3つのステージに大別され、先頭から、「リセット(Preparation)」期間、「スイッチング(Selection)」期間および「維持(Evolution)」期間を含む。Preparation期間、Selection期間およびEvolution期間の前後には、非選択期間が設けられる。なお、リセット期間は準備期間とも呼ばれ、スイッチング期間は選択期間とも呼ばれ、維持期間は展開期間とも呼ばれる場合がある。
【0005】
Preparation期間は、液晶をホメオトロピック状態に初期化する期間である。Preparation期間では、比較的高電圧の複数のリセット(Preparation)パルスが印加される。
【0006】
Selection期間は、最終的な状態をプレーナ状態(明状態:白表示)かフォーカルコニック状態(暗状態:黒表示)に分岐するきっかけを与える期間である。Selection期間では、最終的にプレーナ状態にスイッチングする場合はホメオトロピック状態、フォーカルコニック状態にスイッチングする場合は過渡プレーナ状態がほぼ形成される。Selection期間では、プレーナ状態にスイッチングする時には相対的に高電圧の選択(Selection)パルスが印加され、フォーカルコニック状態にスイッチングする時には相対的に低電圧のSelectionパルスが印加される。
【0007】
Evolution期間は、直前のSelection期間での過渡状態への変化を受けて、プレーナ状態またはフォーカルコニック状態に確定させる。Evolution期間では、PreparationパルスとSelectionパルスの間の電圧の複数の維持(Evolution)パルスが印加される。
【0008】
液晶の駆動電圧には温度依存があり、コレステリック液晶においても同様であり、ダイナミック駆動方式でのコレステリック液晶の駆動電圧の温度補償を行うことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−140114号公報
【特許文献2】特開2007−128043号公報
【特許文献3】米国特許第5748277号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】J. Ruth, et.al.: “LOW COST DYNAMIC DRIVE SCHEME FOR REFLECTIVE BISTABLE CHOLESTERIC LIQUID CRYSTAL DISPLAYS”, Flat Panel Display ’97.
【非特許文献2】J.Gandhi and D.K.Yang “Temperature Compensation of the Dynamic Drive Scheme for Bistable Cholesteric Displays”, SID Symposium Digest of Technical Papers, May 1998, Volume 29, Issue 1, pp. 794-797
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
実施形態によれば、温度が変化しても安定した表示が行えるコレステリック液晶を含む表示素子の駆動方法およびコレステリック液晶表示装置が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の一観点によれば、コレステリック液晶を含む表示素子の駆動方法であって、コレステリック液晶をホメオトロピック状態にするリセット期間と、コレステリック液晶の最終的な状態を選択するスイッチング期間と、コレステリック液晶を前記スイッチング期間で選択した状態に遷移させる維持期間と、を有し、維持期間におけるコレステリック液晶への印加電圧を温度に応じて変化させることを特徴とするコレステリック液晶を含む表示素子の駆動方法。が提供される。
【0013】
発明の別の一観点によれば、コレステリック液晶表示素子と、コレステリック液晶に電圧を印加するセグメントドライバおよびコモンドライバと、複数の電圧の電源を生成し、セグメントドライバおよびコモンドライバに供給する多電源生成回路と、温度センサと、セグメントドライバ、およびコモンドライバおよび多電源生成回路制御回路を制御する制御回路と、を有し、制御回路は、コレステリック液晶をホメオトロピック状態にするリセット期間、コレステリック液晶の最終的な状態を選択するスイッチング期間およびコレステリック液晶を前記スイッチング期間で選択した状態に遷移させる維持期間を有するダイナミック駆動シーケンスを行なうようにセグメントドライバおよびコモンドライバを制御し、維持期間におけるコレステリック液晶への印加電圧を温度に応じて変化させるコレステリック液晶表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
上記の観点によれば、温度変化にかかわらず、良好な表示が行えるコレステリック液晶を含む表示素子の駆動方法およびコレステリック液晶表示装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、コレステリック液晶の電圧応答特性を示す図である。
【図2】図2は、コンベンショナル駆動方式およびダイナミック駆動方式における状態遷移を説明する図である。
【図3】図3は、ダイナミック駆動方式における印加波形を示す図である。
【図4】図4は、ダイナミック駆動方式におけるスキャン動作を説明する図である。
【図5】図5は、ダイナミック駆動方式で画像を書き込む場合の、各画素に印加される電圧波形の分布を示す図である。
【図6】図6は、液晶分子へ印加される電圧波形を、より具体的に示す図である。
【図7】図7は、実施形態のコレステリック液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【図8】図8は、実施形態で使用する表示素子10の構成を示す図である。
【図9】図9は、1枚のパネル10Aの基本構成を示す図である。
【図10】図10は、セグメントドライバおよびコモンドライバの構成を示す図である。
【図11】図11は、単純マトリクス方式のコレステリック液晶表示装置において、セグメントドライバ(SEG)およびコモンドライバ(COM)に供給する電源電圧の一般的な例を示す図である。
【図12】図12は、セグメントドライバ(SEG)がpreparation/selection/evolution/non-selectに出力する電圧波形、コモンドライバ(COM)が白および黒表示に応じて出力する電圧波形、および液晶に印加される電圧波形を示す図である。
【図13】図13は、Evolution期間の駆動電圧の温度依存性を示す図であり、(A)が25℃の場合、(B)が10℃の場合の、Evolution期間の駆動電圧に対する表示素子の反射率の変化特性を、最大反射率を1として正規化して示す図である。
【図14】図14は、Evolution期間の駆動電圧を18Vにするためにコモンドライバおよびセグメントドライバに供給する電圧を示す図である。
【図15】図15は、図14の電圧が供給される場合の、セグメントドライバ(SEG)およびコモンドライバ(COM)の出力する電圧波形、および液晶に印加される電圧波形を示す図である。
【図16】図16は、実施形態において、低温時に、コモンドライバおよびセグメントドライバに供給する電圧の例を示す図である。
【図17】図17は、実施形態において、低温時に、セグメントドライバ(SEG)およびコモンドライバ(COM)の出力する電圧波形、および液晶に印加される電圧波形の例を示す図である。
【図18】図18は、実施形態のコレステリック液晶表示装置の10℃の低温時における反射率特性を示す図であり、横軸がSelection期間の駆動電圧を、縦軸が反射率を示す。
【図19】図19は、ドライバ制御回路の内部構成と、関連する部分と、を示す図である。
【図20】図20は、多電圧生成部における電圧生成回路の例を示す図である。
【図21】図21は、常温時用テーブルCOM電圧LUT1、低温時用テーブルCOM電圧LUT2およびセグメントドライバ用テーブルSEG電圧LUTの構成を示す図である。
【図22】図22は、Evolution電圧温度テーブルを示す図である。
【図23】図23は、常温時用テーブルCOM電圧LUT1と低温時用テーブルCOM電圧LUT2のいずれを使用すべきかの決定処理およびVP3,VP2,VP1,VN1,VN2,VN3の6種類の電圧の決定の処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0017】
図1は、コレステリック液晶の電圧応答特性を示す図であり、(A)は60msのパルスを印加した場合の特性を、(B)は10msのパルスを印加した場合の特性を、示す。一般に、液晶の印加電圧は、液晶の分極を防止するために、正負のパルスを一組として印加する。以下の説明では、正負の一組のパルスを合わせてパルスと称する場合があり、正負の一組のパルスを合わせた期間をパルス幅と称する場合がある。
【0018】
図1に示すように、線Pで示すように、初期状態がプレーナ状態の場合には、パルス電圧をある範囲に上げるとフォーカルコニック状態への駆動帯域となり、さらにパルス電圧を上げると再度プレーナ状態への駆動帯域へとなる。線Fで示すように、初期状態がフォーカルコニック状態の場合には、パルス電圧を上げるにつれて次第にプレーナ状態への駆動帯域へとなる。
【0019】
パルス幅の短いパルスを印加する場合は、与えるエネルギーが小さくなるため、パルス幅が大きなパルスを印加した場合に比べて変化量は小さくなり、電圧特性は高電圧側へシフトする。
【0020】
コレステリック液晶表示装置の駆動方法は、コンベンショナル駆動方式とダイナミック駆動方式に大別できる。
【0021】
図2は、コンベンショナル駆動方式およびダイナミック駆動方式における状態遷移を説明する図であり、(A)がコンベンショナル駆動方式における状態遷移を、(B)がダイナミック駆動方式における状態遷移を示す。
【0022】
図2の(A)に示すように、コンベンショナル駆動方式は、上記のプレーナ状態(PL)、フォーカルコニック状態(FC)およびホメオトロピック状態(HT)の3状態間の遷移を、図1の特性にしたがって、パルス波高とパルス幅で制御するものである。フォーカルコニック状態への遷移には長い時間を要するため、表示の高速化が一般的な課題である。
【0023】
図2の(B)に示すように、ダイナミック駆動方式は、上記の3状態に加えて、トランジェントプレーナ状態(TP)を用いる。トランジェントプレーナ状態は、プレーナ状態と同様に、液晶のらせん軸が基板(電極)に垂直な方向に配向しているが、らせん軸のピッチがプレーナ状態の約2倍である。トランジェントプレーナ状態は、所定の強度の電界を印加するとフォーカルコニック状態に変化する。
【0024】
ダイナミック駆動方式は、図1の電圧応答特性の右側の斜線部を用い、最終的な状態がプレーナ状態かフォーカルコニック状態かを1ライン毎に設定し、そのラインの状態確定を待たずに次ラインの処理に進む方式である。各ラインの設定に要する時間は1ms程度であり、この設定をパイプライン的に行うので、表示パネルのライン数を1000ラインとすると、約1秒で表示を書換えることが可能である。
【0025】
図3は、ダイナミック駆動方式における印加波形を示す図であり、(A)が黒画素にする場合の波形を、(B)が白画素にする場合の波形を、示す。
【0026】
図3に示すように、ダイナミック駆動方式における印加波形は、「リセット(Preparation)」期間、「スイッチング(Selection)」期間および「維持(Evolution)」期間を含む。
【0027】
Preparation期間では、液晶をホメオトロピック状態に対応する電圧が印加される。その後、短時間のSelection期間において低電圧のパルスを与えることで、ホメオトロピック状態を維持するか、それともトランジェントプレーナ状態に緩和するかが設定される。その後のEvolution期間では、プレーナ状態からフォーカルコニック状態への移行に適した電圧が印加される。ホメオトロピック状態にある画素は、Evolution期間中これを維持し、Evolution期間終了時にプレーナ状態に移行する。トランジェントプレーナ状態にある画素は、Evolution期間中にフォーカルコニック状態に遷移する。Selection期間においては、プレーナとフォーカルコニックのいずれかの状態に遷移するかを設定するだけであるから、極めて短い時間で行える。このため、高速表示が可能である。
【0028】
図4は、ダイナミック駆動方式におけるスキャン動作を説明する図である。液晶表示装置などのフラットパネルディスプレイの駆動方法には、単純マトリクス方式とTFT方式がある。コレステリック液晶表示装置は、製造コストの点などから、単純マトリクス方式を用いるのが一般的である。単純マトリクス方式の表示装置では、スキャン電極をコモンドライバ28で駆動し、データ電極をセグメントドライバ29で駆動する。
【0029】
図4では、Selection期間の前後に、Selection期間の5倍の長さのPreparation期間およびEvolution期間が設けられている例を示している。図4の(A)は、0ライン目がSelection期間である場合を示している。この場合、1ライン目〜5ライン目はPreparation期間であり、0ライン目〜5ライン目以外のラインはNon-Select期間である。図4の(B)は、1ライン目がSelection期間である場合を示している。この場合、2ライン目〜6ライン目はPreparation期間であり、0ライン目はEvolution期間であり、0ライン目〜6ライン目以外のラインはNon-Select期間である。図4の(C)は、2ライン目がSelection期間である場合を示している。この場合、3ライン目〜7ライン目はPreparation期間であり、0〜1ライン目はEvolution期間であり、0ライン目〜7ライン目以外のラインはNon-Select期間である。以下、Selection期間のラインをシフトしながら書込みを行う。
【0030】
Selection期間の前後のPreparation期間およびEvolution期間は、黒表示の状態であり、黒帯がシフトするように見える。上記の例では、Preparation期間およびEvolution期間は、Selection期間の5倍の長さであるとして示したが、実際には数十倍から百倍程度であり、画像の書換え中は、太い黒帯がシフトするように見える。
【0031】
図5の(A)は、“F”を書き込む様子を示す図である。図5の(A)に示すように、Selection期間のラインが、“F”の途中まで進んだ状態で、Selection期間の前後にPreparation期間の4ラインとEvolution期間の4ラインが存在し、それ以外のラインはNon-Select期間である。この時、セグメントドライバ29は、Selection期間の画像(白黒)データに対応する電圧信号を出力する。
【0032】
図5の(B)は、図5の(A)の状態で、各画素に印加される電圧波形の分布を示す図である。画素の印加波形は、Non-Select期間、Selection期間、Evolution期間およびPreparation期間の4種のコモンドライバ28の出力に、白表示および黒表示の2種のセグメントドライバ29の出力で、8種類ある。この8種類の波形を、NW(Non-Selectと白)、NB(Non-Selectと黒)、SW(Selectionと白)、SB(Selectionと黒)、EW(Evolutionと白)、EB(Evolutionと黒)、PW(Preparationと白)、PB(Preparationと黒)で表す。図5の(B)に示すように、8種類の電圧波形NW、NB、SW、SB、EW、EB、PW、PBが印加される画素が存在する。
【0033】
図6は、液晶分子へ印加される電圧波形を、より具体的に示す図である。この電圧波形が、1つのスキャンラインの各画素に印加され、画素データに応じて、Selection期間の波形が異なる。液晶表示装置では、液晶の分極を防止するために、正負のパルスを一組として印加するのが一般的であり、図6でも正負のパルスを例として示している。
【0034】
図7は、実施形態のコレステリック液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【0035】
液晶表示装置などのフラットパネルディスプレイの駆動方法には、例えば単純マトリクス方式とTFT方式がある。コレステリック液晶表示装置は、製造コストの点などから、単純マトリクス方式を用いるのが一般的であり、実施形態のコレステリック液晶表示装置も単純マトリクス方式を用いる。
【0036】
実施形態のコレステリック液晶表示装置は、表示素子10と、電源21と、昇圧部22と、多電圧生成部23と、クロック部24と、ドライバ制御回路27と、コモンドライバ28と、セグメントドライバ29と、温度センサ30と、を含む。温度センサ30は、表示素子10に近接して設けられる。
【0037】
電源21は、例えば3V〜5Vの電圧を出力する。昇圧部22は、DC−DCコンバータなどのレギュレータにより、電源21からの入力電圧を+36V〜+40Vに昇圧する。多電圧生成部23は、昇圧された電源から、コモンドライバ28およびセグメントドライバ29に供給する各種の電圧を生成する。多電圧生成部23は、ドライバ制御回路27からの制御信号にしたがって、生成する電圧を変化させる。
【0038】
クロック部24は、動作の基本となる基本クロックを発生し、発生した基本クロックから動作に必要な各種クロックを生成する。
【0039】
表示素子10は、例えばRGBの3枚のコレステリック液晶パネルを積層したカラー表示可能な表示素子である。表示素子10は、例えば、A4判XGA仕様で、1024×768画素を有する。ここでは1024本のスキャン電極と768本のデータ電極が設けられ、コモンドライバ28が1024本のスキャン電極を、セグメントドライバ29が768本のデータ電極を、駆動する。RGBの各画素に与える画像データが異なるため、セグメントドライバ29は各データ電極を独立して駆動する。コモンドライバ28は、RGBのスキャン電極を共通に駆動する。画面の最上部のスキャン電極に対応するスキャンラインを0ライン目とし、画面の最下部のスキャン電極に対応するスキャンラインを1023ライン目とする。
【0040】
制御回路27は、基本クロック、各種クロックおよび画像データDに基づいて制御信号を生成して、コモンドライバ28およびセグメントドライバ29に供給する。ライン選択データは、コモンドライバ28に、Preparation期間、Selection期間およびEvolution期間のスキャンラインを指示するデータであり、ここでは2ビットのデータである。画像データは、各画素の中間調表示を指示するデータであり、セグメントドライバ29は、画像データに基づいて各データ電極に印加する信号を出力する。データ取り込みクロックは、画像データ転送用クロックであり、セグメントドライバ29は画像データ転送用クロックに同期して画像データを内部で転送する。フレーム開始信号は、書換える表示画面のデータ転送の開始を指示する信号で、コモンドライバ28は、フレーム開始信号に応じて内部をリセットする。データラッチ信号は、セグメントドライバ29における画像データの転送終了を指示する信号で、セグメントドライバ29は、この信号に応じて転送された画像データをラッチする。また、コモンドライバ28は、データラッチ信号に応じて、ライン選択データをラッチすると同時に1ラインシフトする。ドライバ出力オフ信号/DSPOFは、印加電圧の強制オフ(OFF)信号である。フェーズ信号は、Selection期間を4等分した信号であり、セグメントドライバ29は画像データに応じて各フェーズにおいてSelectionパルスを出力するか否か(オン・オフ)制御し、コモンドライバ28は、フェーズ信号に応じて4回同じ出力を繰り返す。
【0041】
図8は、実施形態で使用する表示素子10の構成を示す図である。図8に示すように、表示素子10は、見る側から順番に、青(ブルー)用パネル10B、緑(グリーン)用パネル10G、および赤(レッド)用パネル10Rの3枚のパネルが積層されており、レッド用パネル10Rの下側には光吸収層17が設けられている。パネル10B、10Gおよび10Rは、ほぼ同じ構成を有するが、パネル10Bは反射の中心波長が青色(約480nm)、パネル10Gは反射の中心波長が緑色(約550nm)、パネル10Rは反射の中心波長が緑色(約630nm)になるように、液晶材料およびカイラル材が選択され、カイラル材の含有率が決定されている。パネル10B、10Gおよび10Rのスキャン電極およびデータ電極は、コモンドライバ28およびセグメントドライバ29により駆動される。
【0042】
パネル10B、10Gおよび10Rは、反射の中心波長が異なる以外ほぼ同じ構成を有する。以下、パネル10B、10Gおよび10Rの代表例を、パネル10Aとして表し、その構成を説明する。
【0043】
図9は、1枚のパネル10Aの構成を示す図である。
【0044】
図9に示すように、パネル10Aは、上側基板11と、上側基板11の表面に設けられた上側電極層14と、下側基板13の表面に設けられた下側電極層15と、シール材16と、を含む。上側基板11と下側基板13は、電極が対向するように配置され、間に液晶材料を封入した後シール材16で封止される。なお、液晶層12内にスペーサが配置されるが図示は省略している。上側電極層14と下側電極層15の電極には、電圧パルス信号が印加され、それにより液晶層12に電圧が印加される。液晶層12に電圧を印加して、液晶層12の液晶分子をプレーナ状態またはフォーカルコニック状態にして表示を行う。複数のスキャン電極および複数のデータ電極は、上側電極層14と下側電極層15に形成される。
【0045】
コレステリック液晶表示素子のパネル構成については広く知られているので、これ以上の説明は省略する。
【0046】
実施形態では、コモンドライバ28およびセグメントドライバ29は、汎用STNドライバで実現する。
【0047】
図10の(A)は、セグメントドライバ29の構成を示し、図10の(B)は、コモンドライバ28の構成を示す。
【0048】
セグメントドライバ29は、データレジスタ31と、ラッチレジスタ32と、ロジック電圧・LCD電圧変換回路33と、出力ドライバ34と、を含む。データレジスタ31は、データ取込みクロックに応じて画像データを取り込み、1段ずつシフトする。ラッチレジスタ32は、データラッチ・スキャンシフト信号に応じて、データレジスタ31に取り込まれた1ライン分のデータをラッチする。データレジスタ31およびラッチレジスタ32は、2ライン分のバッファを有するため、ラッチレジスタ32のデータが電圧出力されている間に次のラインのデータをデータレジスタ31に格納することができる。ロジック電圧・LCD電圧変換回路33は、ラッチレジスタ32の出力する各データラインの画像データに応じて各データラインに印加する電圧を生成する。出力ドライバ34は、電圧データ・LCD電圧変換回路33の出力する電圧を、各データラインに出力する。したがって、データレジスタ31、ラッチレジスタ32、電圧データ・LCD電圧変換回路33および出力ドライバ34は、それぞれデータ電極の本数分の出力、実施例1では、768個の出力を有する。
【0049】
コモンドライバ28は、シフトレジスタ41と、ラッチレジスタ42と、ロジック電圧・LCD電圧変換回路43と、出力ドライバ44と、を含む。コモンドライバ28がセグメントドライバ29と異なる点は、データレジスタ31の代わりにシフトレジスタ41が設けられていることと、出力の本数がスキャン電極の本数分の出力、実施形態では、1024個の出力を有することである。したがって、データレジスタ41、ラッチレジスタ42、電圧データ・LCD電圧変換回路43および出力ドライバ44は、それぞれ1024個の出力を有する。シフトレジスタ41は、フレーム開始信号に応じて内部をリセットし、データラッチ信号に応じてライン選択データを取り込み、1段ずつシフトする。ラッチレジスタ42は、データラッチ信号に応じてシフトレジスタ41の出力をラッチする。
【0050】
図6を参照して説明したように、ダイナミック駆動方式ではpreparation/selection/evolution/non-selectの期間があり、それぞれ異なる4種類の電圧を印加し、さらに正極性と負極性の電圧があるので電圧の種類は2倍になり、合計8種類の電圧を使用する。コレステリック液晶の駆動には高電圧が必要であり、高電圧かつ8種類の電圧が出力可能なドライバは現時点では商品化されておらず、たとえ商品化されても回路規模が大きくなるのでその分コスト増となる。
【0051】
実施形態では、コモンドライバおよびセグメントドライバを商品化されている6種類(値)の出力が可能な汎用ドライバで実現する。例えば、動作モード切替により、コモンドライバとして使用することも、セグメントドライバとして使用することも可能なドライバが商品化されており、それを利用してコモンドライバおよびセグメントドライバを実現してもよい。
【0052】
したがって、コモンドライバおよびセグメントドライバは、6種類の電圧の電源が供給される6種類の電源入力端子を有する。1つの電圧の電源入力端子の個数は、1個には限られず、2個以上有する場合もある。なお、いずれのドライバも、グランドGND端子を有しており、GND(0V)を出力することも可能である。言い換えれば、コモンドライバは6値+GNDを出力可能であり、コモンドライバは6値+GNDを出力可能である。
【0053】
図11は、単純マトリクス方式のコレステリック液晶表示装置において、セグメントドライバ(SEG)およびコモンドライバ(COM)に供給する電源電圧の一般的な例を示す図である。
【0054】
図12は、セグメントドライバ(SEG)がPreparation/Selection/Evolution/Non-Selectに出力する電圧波形、コモンドライバ(COM)が白および黒表示に応じて出力する電圧波形、および液晶に印加される電圧波形を示す図である。
【0055】
図12に示すように、1個のパルスは正と負の期間に分けられ、正と負の期間はさらに2つのフェーズに分割される。したがって、1個のパルスは4つのフェーズを有する。
【0056】
コモンドライバ28は、画像データに依存せず、Praparation/Evolution/Selection/Non-Selectの期間の電圧を出力する。コモンドライバ28は、例えば、Non-Select期間では、4サイクルで+14V、+14V、−14V、−14Vに変化する駆動波形を出力し、Selection期間では、4サイクルで+8V、+20V、−9V、−20Vに変化する駆動波形を出力する。さらに、コモンドライバ28は、Evolution期間では、4サイクルで−8V、−8V、+8V、+8Vに変化する駆動波形を出力し、Preparation期間では、4サイクルで−20V、−20V、+20V、+20Vに変化する駆動波形を出力する。
【0057】
セグメントドライバ29は、ライン単位で画像データの白および黒表示に対応させてSelection期間のON/OFFを出力させる。セグメントドライバ29は、例えば、白表示の場合は4サイクルで+20V、+8V、−20V、−8Vに変化する駆動波形を出力し、黒表示の場合は4サイクルで+8V、+20V、−8V、−20Vに変化する駆動波形を出力する。したがって、セグメントドライバ29は、+14Vおよび−14Vを出力しない。これにより、図12に示すような8種類の電圧波形が、各画素の状態に応じて印加される。すなわち、図11に示すように、Evolution期間の正のパルスの電圧は、コモンドライバ28の出力する−8Vと、セグメントドライバ29の出力する+20Vと+8Vの平均値である+14Vとの差電圧である。負のパルスの電圧は、正負逆転して、コモンドライバ28の出力する+8Vと、セグメントドライバ29の出力する−20Vと−8Vの平均値である−14Vとの差電圧である。また、Preparation期間の正のパルスの電圧は、コモンドライバ28の出力する−20Vと、セグメントドライバ29の出力する+20Vと+8Vの平均値である+14Vとの差電圧である。負のパルスの電圧は、正負逆転して、コモンドライバ28の出力する+20Vと、セグメントドライバ29の出力する−20Vと−8Vの平均値である−14Vとの差電圧である。また、Non-selection(非選択)期間の正のパルスの電圧は、コモンドライバ28の出力する+14Vと、セグメントドライバ29の出力する+20Vと+8Vとの差電圧である。負のパルスの電圧は、コモンドライバ28の出力する−14Vと、セグメントドライバ29の出力する−20Vと−8Vとの差電圧である。
【0058】
Evolution期間の白表示および黒表示の波形は、2つのフェーズの±28Vと±16Vの波形を合わせたもので、平均値である±22Vのパルスを近似する波形である。Preparation期間の白表示および黒表示の波形は、±40Vと±28Vの波形を合わせたもので、平均値である±34Vのパルスを近似する波形である。同様に、Selection期間の白表示の波形は、±12Vのパルスを近似し、Non-selection期間の波形は、±6Vのパルスを近似する。Selection期間の黒表示の波形は、4つのフェーズとの0Vである。
【0059】
前述のように、コレステリック液晶の駆動電圧には温度依存があり、ダイナミック駆動方式でコレステリック液晶を駆動する場合に、駆動電圧の温度補償を行うことが望ましい。現在使用しているコレステリック液晶の温度特性を調査したところ、各期間の駆動電圧のうち、Evolution期間の駆動電圧に大きな温度依存性が見られた。
【0060】
図13は、Evolution期間の駆動電圧の温度依存性を示す図であり、(A)が25℃の場合、(B)が10℃の場合の、Evolution期間の駆動電圧に対する表示素子の反射率の変化特性を、最大反射率を1として正規化して示す図である。Evolution期間以外の期間の駆動電圧は、上記と同じである。
【0061】
図13の温度特性から、Evolution期間の最適な駆動電圧は、25℃においては22Vであるが、10℃においては18Vとなり、低温では低電圧側にシフトする傾向がある。これは低温になることで液晶の応答が遅くなることに対応しており、温度に応じてEvolution期間の駆動電圧を最適値になるように変化させることが望ましいことを示している。
【0062】
第1実施形態では、Evolution期間の駆動電圧を温度に応じて変化させる。上記のように、第1実施形態では、図11および図12に示す複数の電圧の電源がコモンドライバ28およびセグメントドライバ29に供給される。コモンドライバ28およびセグメントドライバ29は、供給された複数の電圧を選択的に出力して各期間の駆動波形を生成している。Evolution期間の駆動電圧を変化させるには、コモンドライバ28およびセグメントドライバ29に供給する電圧を変化させるが、その場合、他の期間の駆動電圧も変化することになる。
【0063】
図11および図12に示す複数の電圧の電源をコモンドライバ28およびセグメントドライバ29に供給することにより、Evolution期間の駆動電圧は22Vとなり、25℃の場合の最適な値である。10℃の場合の最適な駆動電圧は18Vであり、このような駆動電圧は、以下のようにして実現できる。
【0064】
図14は、Evolution期間の駆動電圧を18Vにするためにコモンドライバ28およびセグメントドライバ29に供給する電圧を示す図である。図15は、図14の電圧が供給される場合の、セグメントドライバ(SEG)29およびコモンドライバ(COM)28の出力する電圧波形、および液晶に印加される電圧波形を示す図である。
【0065】
この場合、Evolution期間の駆動電圧は、±24Vと±12Vの平均の±18Vとなるが、このときPreparation期間の駆動電圧は、±36Vと±24Vの平均の±30Vとなり、Evolution期間の駆動電圧と共に低くなってしまう。Preparation期間は、ダイナミック駆動方式においてコレステリック液晶をホメオトロピック状態にする初期化フェーズであり、約32V以上の高電圧を必要とする。そのため、Evolution期間の駆動電圧と共にPreparation期間の駆動電圧が低くなってしまうこの方法では、Evolution期間の駆動電圧が18Vになった時には、Preparation期間の駆動電圧が不足してしまい、ダイナミック駆動が成り立たなくなってしまう。この場合、Selection期間の駆動電圧をどのように変化させても表示素子の反射率が高くならず、真っ黒の表示になってしまう。
【0066】
実施形態では、温度に応じてEvolution期間の駆動電圧を変化させるように、コモンドライバ28およびセグメントドライバ29に供給する電圧を変化させる。これに応じて他の期間の駆動電圧も変化するが、低温時にPreparation期間の駆動電圧が所定値以下になり不足する場合には、コモンドライバ28は、供給される電圧から出力する電圧を選択する場合の選択数を増加させる。言い換えれば、コモンドライバ28は、6種類の電源供給端子とGND端子を有し、6種類の電源供給端子にはVP3_C, VP2_C, VP1_C, VN3_C, VN2_C, VN1_Cの6種類の電圧が供給され、低温時でなければ、6種類の電圧からいずれかを選択して出力する。これに対して、低温時には、コモンドライバ28は、6種類の電源供給端子に供給される6種類の電圧VP3_C, VP2_C, VP1_C, VN3_C, VN2_C, VN1_Cに加えて、GNDも出力するように、選択先を増加させる。
【0067】
図16は、実施形態において、低温時に、コモンドライバ28およびセグメントドライバ29に供給する電圧の例を示す図である。図17は、実施形態において、低温時に、セグメントドライバ(SEG)29およびコモンドライバ(COM)28の出力する電圧波形、および液晶に印加される電圧波形の例を示す図である。
【0068】
前述のように、実施形態において、常温時には、図11に示すように、±20V、±14Vおよび±8Vの電源がコモンドライバ28およびセグメントドライバ29に供給される。これに対して、低温時には、図16に示すように、±24V、±18Vおよび±12Vの電源がコモンドライバ28およびセグメントドライバ29に供給される。そして、低温時には、コモンドライバ28およびセグメントドライバ29は、Preparation/Evolution/Selection/Non-Selectの期間に図17に示すような電圧波形を出力する。常温時の図12と比べると、低温時のPreparation/Selection/Non-Selectの期間のコモンドライバ28の電圧波形およびセグメントドライバ29の電圧波形は、供給される電圧が異なるのに対応して電圧値が異なる点を除けば、常温時と同じである。一方、コモンドライバ28は、Evolution期間において、常温時に±8Vの電圧波形を出力するのに対して、低温時4つのフェーズでGND(0V)を出力することが異なる。言い換えれば、コモンドライバ28は、常温時には、電源供給端子に供給される6種類の電圧から選択した電圧を出力するのに対して、低温時には、6種類の電圧とGND(0V)から選択した電圧を出力する。
【0069】
したがって、低温時のEvolution期間では、コモンドライバ28の出力する0Vと、セグメントドライバ29の出力する±24Vと±12Vの平均値である±18Vとの差電圧である±18Vのパルスが液晶に印加される。また、低温時のPreparation期間では、実質的に±42Vパルスが液晶に印加され、Non-Select期間では実質的に±6Vのパルスが印加され、Selection期間では実質的に±12Vまたは0Vのパルスが印加される。すなわち、Non-SelectおよびSelection期間の駆動電圧は、常温時と同じである。
【0070】
このように、実施形態では、低温時のEvolution期間では、最適な±18Vのパルスが液晶に印加されると共に、Preparation期間では±42Vパルスが液晶に印加され、電圧不足は生じず、良好な表示が行える。
【0071】
図18は、実施形態のコレステリック液晶表示装置の10℃の低温時における反射率特性を示す図であり、横軸がSelection期間の駆動電圧を、縦軸が反射率を示す。低温時においても、Selection期間の駆動電圧を変化させることにより反射率が変化し、反射率は、黒表示用の0Vでは約3%、白表示用の12Vでは約35%になる。したがって、良好な表示が行える。
【0072】
以上、実施形態におけるコモンドライバ28およびセグメントドライバ29に供給する電源電圧、およびコモンドライバ28およびセグメントドライバ29の出力する駆動電圧を変化させる基本原理について説明した。次に、このような動作を行なうためのドライバ制御回路27における制御動作を説明する。
【0073】
図19は、ドライバ制御回路27の内部構成と、関連する部分と、を示す図である。図19に示すように、ドライバ制御回路27は、CPU51と、コントローラ52と、を有する。CPU51は、Evolution電圧温度テーブルを有する。コントローラ52は、セグメント電圧ルックアップテーブル(SEG電圧LUT)と、第1コモン電圧ルックアップテーブル(COM電圧LUT1)と、第2コモン電圧ルックアップテーブル(COM電圧LUT2)と、を有する。
【0074】
多電圧生成部23は、VP3,VP2,VP1,VN1,VN2,VN3の6種類の電圧を生成してコモンドライバ28およびセグメントドライバ29に供給する。実施形態では、コモンドライバ28およびセグメントドライバ29には同じ電圧が供給されるが、異なる電圧を供給することも可能である。
【0075】
多電圧生成部23は、生成する6種類の電圧の電圧値を、ドライバ制御回路27(コントローラ52)の制御信号に応じて変更する。多電圧生成部23は、例えば、オペアンプを含むボルテージフォロア回路を使用し、基準となる電位に対して所定の電圧差を有する電圧を生成する。基準となる電位は、コントローラ52からの制御信号をデジタルデータとし、多電圧生成部23に設けたD/A変換器でデジタルデータをアナログ電圧に変換して生成する。なお、多電圧生成部23における複数電圧の生成回路はこれに限定されず、コントローラ52からの制御信号に応じて所望の複数の電圧が生成できればどのような回路でもよい。
【0076】
図20は、多電圧生成部23における電圧生成回路の例を示す図であり、(A)は正電圧生成回路を、(B)は負電圧生成回路を、示す。ドライバ制御回路27からの電圧設定値をD/A変換器(DAC)にてアナログ電圧へ変換する。一般的なDACは正電圧のみを生成するので、OPアンプによるボルテージフォロアもしくは反転増幅回路を用いて、正または負電圧を生成する。その後、トランジスタ等により電流増幅を行う、図20の(A)の正電圧生成回路を6回路用いて、VP3_S,VP2_S,VP1_S,VP3_C,VP2_C,VP1_Cを生成し、図20の(B)の負電圧生成回路を6回路用いて、VN3_S,VN2_S,VN1_S,VN3_C,VN2_C,VN1_Cを生成する。
【0077】
図21の(A)はCOM電圧LUT1を、図21の(B)はCOM電圧LUT2を、図21の(C)はSEG電圧LUTを、それぞれ示す。COM電圧LUT1は、常温を含む第1の温度条件で、コモンドライバ28が、Preparation/Evolution/Selection/Non-Selectの期間の4つのフェーズ(phase)で、電源供給端子に供給される電圧のうちのいずれの電圧を出力するかを示す。例えば、Preparation期間では、コモンドライバ28は、フェーズ0および1でVN3を、フェーズ2および3でVP3を出力する。VN3_Cは、コモンドライバ28に供給されるVN3であることを意味する。
【0078】
COM電圧LUT2は、低温を含む第2の温度条件で、コモンドライバ28が、Preparation/Evolution/Selection/Non-Selectの期間の4つのフェーズ(phase)で、電源供給端子に供給される電圧のうちのいずれの電圧を出力するかを示す。COM電圧LUT2は、Evolution期間のフェーズ0−3においてGND(0V)を出力することが、COM電圧LUT1と異なる。
【0079】
SEG電圧LUTは、常温および低温において、セグメントドライバ29が、Selection期間の1行分の白表示および黒表示の画素に対して、4つのフェーズ(phase)で、電源供給端子に供給される電圧のうちのいずれの電圧を出力するかを示す。VN3_Sは、セグメントドライバ29に供給されるVN3であることを意味する。
【0080】
図22は、Evolution電圧温度テーブルを示す図であり、(A)が温度変化に対する最適なEvolution電圧の変化を示すグラフであり、(B)が各温度に対する最適なEvolution電圧および非選択電圧を記憶したテーブルを示す。CPU51は、温度センサ30から温度を読み取り、読み取った温度に基づいて最適なEvolution電圧および非選択電圧を決定する。さらに、CPU51は、決定したEvolution電圧および非選択電圧に基づいて、COM電圧LUT1とCOM電圧LUT2のいずれを使用すべきかを決定し、その後VP3,VP2,VP1,VN1,VN2,VN3の6種類の電圧を決定し、決定した結果をコントローラ52に送信する。コントローラ52は、決定したVP3,VP2,VP1,VN1,VN2,VN3を生成するように指示する制御信号を生成して多電圧生成部23に出力する。これに応じて、多電圧生成部23は指示されたVP3,VP2,VP1,VN1,VN2,VN3を生成して、コモンドライバ28およびセグメントドライバ29に供給する。コントローラ52は、使用が決定されたCOM電圧LUT1とCOM電圧LUT2のいずれかおよびSEG電圧LUTに基づいて、コモンドライバ28およびセグメントドライバ29を制御して表示素子10に表示を行う。
【0081】
次に、CPU51において、決定したEvolution電圧および非選択電圧に基づいて、COM電圧LUT1とCOM電圧LUT2のいずれを使用すべきかの決定処理およびVP3,VP2,VP1,VN1,VN2,VN3の6種類の電圧の決定処理、および描画処理を説明する。
【0082】
図23は、上記処理の処理フローを示す図である。
ステップS11で、描画動作を開始する。
ステップS12では、CPU51が、温度センサ30から温度を読み取る。
【0083】
ステップS13では、CPU51が、読み取った温度から、Evolution電圧温度テーブルに基づいて、Evolution電圧および非選択電圧を決定する。例えば、図22の(B)に示すように、温度が25℃であれば、Evolution電圧=22.0V、非選択電圧=6.0Vと決定する。また、温度が10℃であれば、Evolution電圧=18.0V、非選択電圧=6.0Vと決定する。
【0084】
ステップS14では、CPU51が、暫定Preparation電圧=Evolution電圧+2×非選択電圧の式で、暫定Preparation電圧を計算する。
ステップS15で、CPU51が、暫定Preparation電圧が閾値32Vより小さいかを判定する。この閾値は、これより低いPreparation電圧では表示が行われず、全面黒表示になる限界値にある程度の余裕を加えて決定される。暫定Preparation電圧が閾値32Vより小さい場合はステップS18に進み、それ以外の場合はステップS16に進む。暫定Preparation電圧が閾値32Vより小さくなるのは低温時である。
【0085】
ステップS16では、CPU51が、COM電圧LUT1を使用することを決定し、以下の式にしたがってVP3,VP2,VP1,VN1,VN2,VN3を計算し、それらの情報をコントローラ52に送信する。コントローラ52がこれらの情報に基づいて多電圧生成部23に制御信号を出力し、多電圧生成部23がVP3,VP2,VP1,VN1,VN2,VN3を発生する。
【0086】
ここで、VP3,VP2,VP1,VN1,VN2,VN3は、決定したEvolution電圧および非選択電圧から以下の計算式にしたがって計算される。
VP3_S = (Evolution電圧 + 3 x 非選択電圧) ÷ 2
VP2_S = VP3_S - 非選択電圧
VP1_S = VP2_S - 非選択電圧
VN1_S = -1 x VP1_S
VN2_S = -1 x VP2_S
VN3_S = -1 x VP3_S
VP3_C = VP3_S
VP2_C = VP2_S
VP1_C = VP1_S
VN1_C = VN1_S
VN2_C = VN2_S
VN2_C = VN3_S
【0087】
ステップS17では、コントローラ52が、COM電圧LUT1およびSEF電圧LUTを使用して、コモンドライバ28およびセグメントドライバ29を制御して表示素子10に表示を行う。
【0088】
ステップS18では、CPU51が、COM電圧LUT2を使用することを決定し、以下の式にしたがってVP3,VP2,VP1,VN1,VN2,VN3を計算し、それらの情報をコントローラ52に送信する。コントローラ52がこれらの情報に基づいて多電圧生成部23に制御信号を出力し、多電圧生成部23がVP3,VP2,VP1,VN1,VN2,VN3を発生する。
【0089】
ここで、VP3,VP2,VP1,VN1,VN2,VN3は、決定したEvolution電圧および非選択電圧から以下の計算式にしたがって計算される。
VP3_S = VP2_S + 非選択電圧
VP2_S = Evolution電圧
VP1_S = VP2_S - 非選択電圧
VN1_S = -1 x VP1_S
VN2_S = -1 x VP2_S
VN3_S = -1 x VP3_S
VP3_C = VP3_S
VP2_C = VP2_S
VP1_C = VP1_S
VN1_C = VN1_S
VN2_C = VN2_S
VN2_C = VN3_S
【0090】
ステップS19では、コントローラ52が、COM電圧LUT2およびSEF電圧LUTを使用して、コモンドライバ28およびセグメントドライバ29を制御して表示素子10に表示を行う。
【0091】
なお、上記の処理では、暫定Preparation電圧を算出して閾値より小さいか否かを判定し、その判定結果に基づいてCOM電圧LUT1とCOM電圧LUT2のいずれを使用するかを決定した。しかし、温度に応じてCOM電圧LUT1とCOM電圧LUT2のいずれを使用するかを決定することも可能である。この場合、ステップS14は削除可能である。さらに、温度に対応させてVP3,VP2,VP1,VN1,VN2,VN3を記憶したテーブルを準備しておくことも可能であり、その場合にはさらにステップS16およびS18を削除可能である。
【0092】
また、上記の例では、非選択電圧は6Vで一定であり、VP2=VP3−非選択電圧、VP1=VP2−非選択電圧、VN3=−VP3、VN2=VP3+非選択電圧、VN1=VN2+非選択電圧の関係がある。そのため、多電圧生成部23で、VP3がコントローラ52からの制御信号に従って生成され、VP2およびVP1をVP3から非選択電圧(6V)および非選択電圧の2倍(12V)を減じて生成する回路を設ければ、VP3のみを決定して指示すればよい。これはVN3、VN2およびVN1についても同様であり、VN3のみを決定して指示すればよく、VN3がVP3から発生できる場合には、VP3のみを決定して指示すればよい。
【0093】
COM電圧LUT1とCOM電圧LUT2のいずれを使用するかを決定するための暫定Preparation電圧の閾値は、パネルに応じて決定され、積層型のカラー表示素子の場合には、この閾値を赤・青・緑の各パネルで異ならせてもよい。
以上説明したように、実施形態によれば、低温時でもダイナミック駆動方式での描画が可能となり、適用温度範囲を拡大することが可能となる。
【0094】
以上、実施形態を説明したが、ここに記載したすべての例や条件は、発明および技術に適用する発明の概念の理解を助ける目的で記載されたものであり、特に記載された例や条件は発明の範囲を制限することを意図するものではなく、明細書のそのような例の構成は発明の利点および欠点を示すものではない。発明の実施形態を詳細に記載したが、各種の変更、置き換え、変形が発明の精神および範囲を逸脱することなく行えることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0095】
10 表示素子
23 多電圧生成部
27 制御回路
28 コモンドライバ
29 セグメントドライバ
30 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コレステリック液晶を含む表示素子の駆動方法であって、
前記コレステリック液晶をホメオトロピック状態にするリセット期間と、
前記コレステリック液晶の最終的な状態を選択するスイッチング期間と、
前記コレステリック液晶を前記スイッチング期間で選択した状態に遷移させる維持期間と、を備え、
前記維持期間における前記コレステリック液晶への印加電圧を温度に応じて変化させることを特徴とするコレステリック液晶を含む表示素子の駆動方法。
【請求項2】
前記コレステリック液晶への電圧印加は、セグメントドライバおよびコモンドライバにより行なわれ、
前記コモンドライバは、N種類の電源入力端子および複数組の出力端子を備え、前記N種類の電源入力端子供給されるN(正の整数)種類の電圧からM(M:正の整数、M<N)種類の電圧を選択的に前記複数組の出力端子から出力し、前記N種類の電圧が変化することにより、前記維持期間における前記コレステリック液晶への印加電圧が変化し、
前記リセット期間における前記コレステリック液晶への印加電圧が、前記維持期間における前記コレステリック液晶への印加電圧の変化に応じて変化する請求項1記載のコレステリック液晶を含む表示素子の駆動方法。
【請求項3】
前記リセット期間における前記コレステリック液晶への印加電圧が、所定値より小さくなる場合には、前記Mを増加させ、前記リセット期間における前記コレステリック液晶への印加電圧が、前記所定値より大きくなるようにする請求項2記載のコレステリック液晶を含む表示素子の駆動方法。
【請求項4】
前記Mの増加により増加する電圧は、グランドである請求項3記載のコレステリック液晶を含む表示素子の駆動方法。
【請求項5】
コレステリック液晶表示素子と、
前記コレステリック液晶に電圧を印加するセグメントドライバおよびコモンドライバ
と、
複数の電圧の電源を生成し、前記セグメントドライバおよびコモンドライバに供給する多電源生成回路と、
温度センサと、
前記セグメントドライバ、および前記コモンドライバおよび前記多電源生成回路制御回路を制御する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、
前記コレステリック液晶をホメオトロピック状態にするリセット期間、前記コレステリック液晶の最終的な状態を選択するスイッチング期間および前記コレステリック液晶を前記スイッチング期間で選択した状態に遷移させる維持期間を有するダイナミック駆動シーケンスを行なうように前記セグメントドライバおよび前記コモンドライバを制御し、
前記維持期間における前記コレステリック液晶への印加電圧を温度に応じて変化させることを特徴とするコレステリック液晶表示装置。
【請求項6】
前記コモンドライバは、N種類の電源入力端子および複数組の出力端子を備え、前記N種類の電源入力端子供給されるN(正の整数)種類の電圧からM(M:正の整数、M<N)種類の電圧を選択的に前記複数組の出力端子から出力し、前記N種類の電圧が変化されることにより、前記維持期間における前記コレステリック液晶への印加電圧を変化させ、
前記リセット期間における前記コレステリック液晶への印加電圧が、前記維持期間における前記コレステリック液晶への印加電圧の変化に応じて変化する請求項5記載のコレステリック液晶表示装置。
【請求項7】
前記制御回路は、
前記リセット期間における前記コレステリック液晶への印加電圧が、所定値より小さくなる場合には、前記コモンドライバが前記Mを増加させるように制御して、前記リセット期間における前記コレステリック液晶への印加電圧が、前記所定値より大きくなるようにする請求項6記載のコレステリック液晶表示装置。
【請求項8】
前記Mの増加により増加する電圧は、グランドである請求項7記載のコレステリック液晶表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2013−45065(P2013−45065A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184811(P2011−184811)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】