説明

コレステロールを低下させる調製物、食品サプリメントおよび食品、ならびにそれらの製造法

本発明は、コレステロールを低下させる調製物、特に血中コレステロールレベルを低下させるための薬物として使用するための細菌調製物に関する。本発明は、特に、コレステロール低下特性を有する、ロドスピリルムspp.(Rhodospirillum spp.) および/またはファエオスピリルムspp.(Phaeospirillum spp.)の調製物、該調製物を含む食品サプリメントおよび食品、ならびにそれらの製造法および使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コレステロールを低下させる調製物、特に血漿コレステロールレベルを低下させるための薬物として使用するための細菌性調製物に関する。本発明はさらに、薬剤調製物、この調製物を含む食品サプリメント、この食品サプリメントを含む食品、およびそれらの製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓血管疾患は、多数の相乗因子によって引き起こされる。最も重要なことは、高過ぎるコレステロールレベルである。コレステロールは、細胞膜の成分であるため、動物およびヒトの細胞のための必須の基本成分である。ヒトの細胞は、細胞自身のコレステロールを合成し得るが、コレステロールはまた、食物から同化される。両方のプロセスは、コレステロール代謝において重要な部分である。
【0003】
細胞膜のための基本成分としての必須の生物学的役割を別として、コレステロールは、心臓血管疾患(例えば、心筋梗塞、脳卒中および末梢血管疾患など)の原因として、特に血管壁におけるアテローム性動脈硬化症の病変の発生に関して、ヒトの健康に負の影響をも及ぼす。高められた血漿コレステロールレベルは、心臓血管疾患およびアテローム性動脈硬化症の発生に関する最も重要な予示的危険因子である。
【0004】
血漿中では、コレステロールは、いわゆるリポタンパク質において輸送される。リポタンパク質は、その直径および特定の密度に基づいて、多数の種々の組にサブ分割され得る。極低密度リポタンパク質(VLDL)、中密度リポタンパク質(IDL)、低密度リポタンパク質(LDL)および高密度リポタンパク質(HDL)がリポタンパク質の最も重要な組を構成する。
【0005】
実験および臨床研究は、VLDL、IDLおよびLDLの組のリポタンパク質において輸送されるコレステロール(いわゆるプロアテローム形成性コレステロール)の量が、心臓血管疾患の発生の危険因子であることを示した。これに対して、HDL粒子において輸送されるコレステロールは、心臓血管疾患の発生に対して保護する(抗アテローム形成性コレステロール)。
【0006】
無作為に選ばれた、プラセボー制御された、見込みのある(prospective)臨床研究は、血漿コレステロールを低下させることが、心臓血管疾患の発生率および死亡率に好ましい効果を及ぼすことを示したが、コレステロールの低下は、VLDL、IDLおよびLDLに存在するプロアテローム形成性コレステロールの低下故であるべきであることが必要条件である。したがって、心臓血管疾患の治療および予防に関して、プロアテローム形成性コレステロールを低下させることおよび抗アテローム形成性コレステロールを絶対的または相対的割合で増加させることが重要である。血漿コレステロールを低下させるために多くの方法が利用可能である。最も重要なことは、
コレステロールの生合成を抑制すること、
組織から腸管へのコレステロール(および/またはその代謝物、特に胆汁酸)の除去を増加させること、
胃腸管からのコレステロールおよび胆汁酸の吸収を低下させること、
である。
【0007】
コレステロール合成を抑制するために今日使用される薬物は、しばしば、酵素ヒドロキシメチル−グルタリル−コエンザイムAレダクターゼ(HMGCoA レダクターゼ)の抑制剤、コレステロールへの合成経路における速度制限酵素、である。これらのいわゆる「スタチン」は、酵素作用を競合的に抑制する分子である。例は、シンバスタチン(simvastatin)(「Zocor(商標)」)、プラバスタチン(pravastatin)(「Pravachol(商標)」)およびアトルバスタチン(atorvastatin)(「Lipitor(商標)」)である。スタチンは一般に、天然に存在する真菌性代謝産物の化学的に合成された誘導体である。
【0008】
コレステロール除去を増加させるために、胆汁酸を吸着する樹脂が使用され得る(例えば、コレスチラミン(cholestyramine)(「Questran(商標)」))。胆汁酸の上記樹脂への吸着故に、便中でのその分泌が増加され、そして腸から血液中へのその再吸収が低下され、その結果、体からの胆汁酸の相対的な損失を生じる。その結果、肝臓がコレステロールの胆汁酸への転化を増加させ、その結果、体からのコレステロール(代謝産物)の分泌の正味の増加を生じる。管腔から腸組織へのコレステロールの取り込みのためには胆汁酸(コレステロールを溶解することによる)が必須であるので、腸管における胆汁酸含量の低下もコレステロールの取り込みの低下を生じるであろう。
【0009】
腸上皮細胞中のコレステロール(および関連するステロール)のための細胞輸送系を阻害することによる腸管から血液へのコレステロールの能動輸送を阻害する薬物はまだ開発中である。1つのそのような化合物(「Ezetimibe(商標)」)が最近、いくつかの国で登録された。他の関連する薬物はまだ臨床実験中である。
【0010】
薬物の使用に加えて、上記目的は、天然に存在する化合物または天然産物から誘導される化合物の使用によっても達成され得る(ハッセル、1998)。スタチン様化合物はいわゆる「レッドライス」(ロバスタチンを製造する型を有するライス菌株)において自然に生じる。この真菌性代謝産物は、コレステロールを低下させる薬物「Mevacor(商標)」と一致する。別の例は、植物におけるいわゆるフィトステロールの存在である。これは、コレステロールおよび胆汁酸の腸の取り込みを競合的に抑制する。フィトステロールは、マーガリン「Benecol(商標)」および「Becel Pro-actif(商標)」においてコレステロール低下剤として今日使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、コレステロールを低下させる調製物、特に食品産業での、好ましくはヒトの栄養補給を目的とする使用のための調製物が依然として望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚いたことに、本発明者らは、実験動物の餌にロドスピリルム ルブラム(R.ルブラム)(Rhodospirillum rubrum(R. rubrum))の凍結乾燥した調製物を添加すると、これらの動物の血中コレステロールレベルがかなり低下することを見出した。
【0013】
本発明は、第一の局面において、今、薬物としての使用のためのロドスピリルムspp.(Rhodospirillum spp.) および/またはファエオスピリルムspp.(Phaeospirillum spp.)の調製物を提供する。上記調製物は、細胞化合物のみ、好ましくは膜画分、を含む無細胞調製物または生きているもしくは死んだロドスピリルムspp.および/またはファエオスピリルムspp.を含む調製物などの任意の型の調製物であり得る。
【0014】
別の局面では、本発明は、 ロドスピリルムspp. および/またはファエオスピリルムspp.の調製物ならびに1以上の賦形剤を含む薬剤調製物を提供する。
【0015】
さらに別の局面では、本発明は、ロドスピリルムspp. および/またはファエオスピリルムspp.の調製物を含む、血漿コレステロールを低下させる剤を提供する。
【0016】
さらに別の局面では、本発明は、ロドスピリルムspp. および/またはファエオスピリルムspp.の調製物を、血漿コレステロールを低下させるための薬物を製造するために使用する方法に関する。
【0017】
本発明は、さらに別の局面において、ロドスピリルムspp.および/またはファエオスピリルムspp.の調製物を含む、コレステロール低下特性を有する食品サプリメントを提供する。
【0018】
別の局面では、本発明は、生きているロドスピリルムspp.および/またはファエオスピリルムspp.の調製物を含む、コレステロール低下特性を有するプロビオティック(probiotic)を提供する。
【0019】
別の局面では、本発明は、本発明に従う食品サプリメントを含む食品を提供する。
【0020】
別の局面では、本発明は、ロドスピリルムspp. および/またはファエオスピリルムspp.の調製物の製造法を提供し、上記方法は、ロドスピリルムspp.および/またはファエオスピリルムspp.の1以上の細胞を培養して多細胞培養物にすること、該培養物を採取すること、および該培養物の細胞を調製物に加工することを含む。そのような方法の好ましい実施態様は、該培養物の細胞を、生きているロドスピリルムspp.および/またはファエオスピリルムspp.の調製物に加工することを含む。
【0021】
別の局面では、本発明は、本発明に従う食品サプリメントの製造法を提供し、上記方法は、本発明に従う薬物としての使用のために意図されたロドスピリルムspp. および/またはファエオスピリルムspp.の調製物を消費に適するものにすることを含む。
【0022】
別の局面では、本発明は、本発明に従う食品の製造法を提供し、上記方法は、食品サプリメントを食品に組み入れることを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
ロドスピリルムは、ロドスピリラレス(Rhodospirillales)目およびアルファ−プロテオバクテリア綱の紅色無硫黄細菌科であるロドスピリラセアエ(Rhodospirillaceae)科における属である。ロドスピリラセアエは、とりわけ、光を栄養とすること、および光をエネルギー源として使用して、好気的にも嫌気的にも増殖することを特徴とする。その目的のために、上記細菌は、クロロフィルbを含む。ロドスピリルム属の中で、3つの種が区別される。例えば、ロドスピリルム ルブラム(Rhodospirillum rubrum) (インホフおよびトリパー、1992)、ロドスピリルム センテナム(Rhodospirillum centenum)およびロドスピリルム フォトメトリカム(Rhodospirillum photometricum)である。さらに、4つの種が公式ではないが確認されている。すなわち、ロドスピリルム サレキシゲンズ(Rhodospirillum salexigens)、ロドスピリルム サリナルム(Rhodospirillum salinarum)、ロドスピリルム ソドメンス(Rhodospirillum sodomense)およびロドスピリルム テヌエ(Rhodospirillum tenue)である。ファエオスピリルム属(ロドスピリラセアエ科の他の属)には、2つの種が含まれる。すなわち、ファエオスピリルム フルブム(Phaeospirillum fulvum)およびファエオスピリルム モリシアヌム(Phaeospirillum molischianum (P. molischianum ))である(命名に関しては、インホフら、1998;オイゼビー、2003;および参考文献1を参照)。
【0024】
ロドスピリルム ルブラムは、なかでも、天然水中、泥中、および下水処理植物中に見出される。上記細菌は、下水の精製において、動物の食品(例えば、家禽および魚の餌として)のバイオマス製造のために、および化学肥料として、使用される。光栄養細菌のバイオマスは、ビタミンおよびアミノ酸の高い含量故に、動物の餌のための優れた原料であると考えられる。
【0025】
ロドスピリルム ルブラムを動物の餌として使用することは、以前より実施されている(インホフおよびトリパー、1992)。しかし、本発明者らは、驚いたことに、R.ルブラムが、血漿および/または血清(血液)中のコレステロールレベルを低下させることにより心臓血管疾患の予防に大きく寄与し得ることを見出した。
【0026】
本明細書において、コレステロール低下特性は、組成物、調製物、食品サプリメントまたは食品が被験者の体に適切なやり方で投与されるとき、被験者の血中コレステロールレベルを低下させるその能力として定義される。血中コレステロールのレベルを測定する方法は当業者に公知である。
【0027】
本明細書において、ロドスピリルムspp. および/またはファエオスピリルムspp.の調製物は、何らかの方法で加工されたロドスピリルムspp.および/またはファエオスピリルムspp.の細胞物質の量として定義される。ロドスピリルムspp. および/またはファエオスピリルムspp.の調製物は、本発明のいくつかの実施態様によれば、細胞抽出物、または細胞から単離された、コレステロール低下特性を有する成分、または全細胞の濃縮物、または破壊された細胞断片の濃縮物を含み得る。そのような調製物は、好ましくは、膜画分を含み得る。さらに、本発明によれば、調製物は、凍結乾燥されたロドスピリルムspp.および/またはファエオスピリルムspp.を含み得る。これらの細胞は、なおも大部分が生きており、より好ましい環境下では細胞分割を再開することができる。
【0028】
本発明に従う調製物は、ロドスピリルム属の1つの種から非常にうまく成り得るが、種々のロドスピリルムspp.の混合物、例えば、ロドスピリルム ルブラム、 ロドスピリルム センテナム、 ロドスピリルム テヌエ、 ロドスピリルム フォトメトリカム、ロドスピリルム サレキシゲンス、ロドスピリルム サリナルムおよび/またはロドスピリルム ソドメンス、あるいはファエオスピリルムspp.の混合物、例えば、ファエオスピリルム フルブムおよびファエオスピリルム モリシアヌム、も使用され得る。ロドスピリルムspp.およびファエオスピリルムspp.の組み合わせも本発明に包含される。
【0029】
好ましくは、ロドスピリルムspp. および/またはファエオスピリルムspp.の調製物は、ロドスピリルム ルブラムおよび/またはファエオスピリルム モリシアヌムを含み、さらにより好ましくは、ロドスピリルム ルブラム菌株ATCC11170(菌株DSM467)または菌株ATCC25903および/またはファエオスピリルム モリシアヌム菌株DSM120を含む(ATCC: American Type Culture Collection; DSMZ: Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen)。
【0030】
本発明の実施態様におけるロドスピリルムspp. および/またはファエオスピリルムspp.の調製物は、ロドスピリルムspp.および/またはファエオスピリルムspp.からの細胞物質を20〜100%(w/w)、好ましくは40〜100%(w/w)、より好ましくは60〜100%(w/w)、所望により80〜100%(w/w)含み得る。上記細胞物質は、好ましくは、膜画分、または生きているもしくは凍結乾燥された全細胞である。さらに、調製物は、選択された調製物が製造されるべき方法に依存して、他の成分を含み得る。例えば、調製物は水をさらに含み得、または凍結乾燥された調製物の場合にはグリセロールまたはスクロースを含み得る。
【0031】
好ましい実施態様では、ロドスピリルムspp. および/またはファエオスピリルムspp.の凍結乾燥された調製物が、バインダー、例えばヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、および/または滑剤、例えばステアリン酸および/または他の賦形剤、とともに、充填物質、例えば微結晶セルロース(MCC)またはマンニトール、と混合され、そして乾燥粉末としてペレット化され、または異なるやり方での適用のために調製される。
【0032】
そのようなロドスピリルムspp. および/またはファエオスピリルムspp.の調製物は、血漿の、好ましくはヒト血漿のコレステロールレベルを低下させるための薬物または薬剤調製物としての使用のために非常に適する。上記調製物は、ロドスピリルムspp.および/またはファエオスピリルムspp.の生きている細胞、または死んだ細胞、または細胞残存組織などをも含み得る。
【0033】
本発明に従う調製物の別の実施態様が同様に可能である。例えば、調製物が、水様流体中に懸濁された、分散されたまたは乳化された固体成分を含む流体調製物として供給され得る。そのような組成物は、本発明に従う調製物として直接使用され得、または別の実施態様において食品サプリメントに加工され得る。
【0034】
本発明では、食品サプリメントは、通常の食餌に加えて消費され得、かつ通常の食餌には存在しないか少量でもしくは不十分な量で存在するが、その十分なまたは増加された消費が望ましいところの成分を含む調製物として定義される。好ましくは、食品サプリメントは、ヒトの消費に適するように構成される。その結果、本発明で定義される食品サプリメントは、好ましくは、テクスチャ、味覚および匂いを有するべきであるが、ヒトの消費に適する食品サプリメントにする栄養価値をも有するべきである。
【0035】
本発明の実施態様では、コレステロール低下特性を有する食品サプリメントが、ロドスピリルムspp. および/またはファエオスピリルムspp.の調製物を含む。
【0036】
本発明に従う食品サプリメントは、適切には、ロドスピリルムspp. の調製物を0.1〜99.9%(w/w)含み得る。好ましくは、食品サプリメントが、10%〜90%(w/w)、より好ましくは30%〜75%(w/w)のロドスピリルムspp.および/またはファエオスピリルムspp.の調製物を含む。
【0037】
ロドスピリルムspp. および/またはファエオスピリルムspp.の調製物を含む食品サプリメントを消費に適するものにするために、例えばテクスチャ、味覚または匂いを改善するための成分が添加され得る。その結果、本発明に従う食品サプリメントは、タンパク質、炭水化物および脂肪の(追加の)源、およびビタミン、ミネラル、電解質、微量元素および他の適する成分を含み得、その結果、食品サプリメントは、それ自体で滋養食物として使用され得る。
【0038】
タンパク質源として、栄養調製物での使用に適するどのタンパク質もが、ならびにこれらの混合物が、本発明に従う食品サプリメントにおいて使用され得る。この種のタンパク質は、例えば、動物性タンパク質、例えば乳清タンパク質、乳清タンパク質濃縮物、乳清粉末、卵タンパク質、卵アルブミン、カゼインまたは乳アルブミン、および植物性タンパク質、例えば大豆タンパク、大豆粉、または豆乳からのタンパク質、を包含する。使用されるベきタンパク源を選択するために、タンパク質の生物学的価値が重要な基準を構成し得る。例えば、カゼイン塩、例えばカゼインカルシウム、ならびに乳清、乳アルブミン、卵アルブミンおよび全卵タンパク質は、大きい割合の必須アミノ酸を含むので、非常に高い生物学的価値を有するタンパク質である。
【0039】
本発明に従う食品サプリメントにおいて使用されるべき適する炭水化物は、例えば、単純な短鎖炭水化物、例えばモノ−およびジサッカライド、ならびにポリサッカライドであり得、あるいは両方の組み合わせであり得る。炭水化物は、その適する感覚受容特性故に選択され得る。適切には、複合糖質が、食物繊維として使用され得る。
【0040】
本発明に従う食品サプリメントは、いくつかの実施態様では、単炭水化物および複合糖質の両方の組み合わせを含み得る。脂肪としては、全ての食用油脂が使用され得る。
【0041】
管理衛生局(the regulatory health authorities)の規則に従ってビタミンおよびミネラルが添加され得、そして、上記局によって是認された全てのビタミンおよびミネラル、例えば、ビタミンA、B1、B2、B12、C、D、EおよびK、ならびに葉酸、ナイアシン、パントテン酸およびビオチン、を含み得る。ミネラルとしては、例えば、鉄、亜鉛、ヨウ素、カルシウム、マグネシウム、クロムおよびセレンが添加され得る。
【0042】
電解質、例えばナトリウム、カリウム、およびクロライド、ならびに微量元素および他の添加剤も、本発明に従う食品サプリメントの一部を形成し得る。そのような成分は、存在するならば、好ましくは、推奨される濃度で使用される。さらに、本発明に従う食品サプリメントは、そのテクスチュアを改善する成分、着色剤、風味剤、芳香物質、スパイス、フィラー、乳化剤、安定化合物、保存剤、酸化防止剤、繊維および他の補助剤、例えばアミノ酸、塩素、レシチン、脂肪酸などを含み得る。そのような成分の選択は、組成、設計および好みに依存するであろう。添加され得るそのような成分の量は当業者に公知であるが、添加されるべき量の選択は、子供および大人のための推奨される1日量(RDA)を考慮することによって導かれ得る。
【0043】
乳化剤は、最終生成物を安定化するために添加され得る。許容され得る乳化剤の例は、レシチン(例えば、大豆または卵)、および/またはモノおよびジグリセリドである。安定剤としては、例えば、キャロブ(イナゴマメ)、グアーまたはカラゲナンが使用され得る。
【0044】
保存剤は、生成物の貯蔵寿命を増加させるために添加され得る。好ましくは、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウムまたはEDTAカルシウム二ナトリウムなどの保存剤が使用される。
【0045】
上記した炭水化物に加えて、天然のまたは合成の甘味料、例えばサッカライド、シクラメート、アスパルタミン、アセスルファムカリウム、および/またはソルビトールが食品サプリメントに添加され得る。
【0046】
消費されるべき食品サプリメントの量は、大きさがさまざまであり得、忠告された用量において言及された用量に必ずしも限定されるべきでない。用語「食品サプリメント」は、特定の重量または食品サプリメントの特定の用量に制限されることを意味しない。
【0047】
本発明に従う食品サプリメントの組成物は、原則として、ヒトまたは動物の消費に適する任意の形態を取り得る。好ましい実施態様では、食品サプリメントは、水性流体、例えばコーヒー、紅茶、だし汁または果汁中に懸濁され、分散され、または乳化されるのに適する乾燥粉末である。そのために、粉末はディスペンサーにおいて供給され得る。
【0048】
別の好ましい実施態様では、食品サプリメントが、乾燥粉末から出発して、錠剤として作られる。このために、本発明に従う食品サプリメントの組成物が、適切には、フィラー、例えば微結晶セルロース(MCC)およびマンニトール、バインダー、例えばヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、滑剤、例えばステアリン酸、および他の賦形剤とともに供給され得る。
【0049】
本発明に従う食品サプリメントは、固体成分がその中に懸濁、分散または乳化されているところの流体としても供給され得る。そのような組成物は、食品中に直接混合され得、または例えば、顆粒または他の形態に押し出されそしてフォーマットされ得る。
【0050】
別の実施態様では、食品サプリメントが、固体形態、例えばバー、ビスケット、またはロールの形態で作られ得る。
【0051】
食品サプリメントは、好ましくは、許容され得る担体とおそらく組み合わせて、カプセル、錠剤、水混和性粉末または、投与のために許容され得る他の形態などの、経口消費のために調製されるが、食品に加工することもできる。
【0052】
本発明の他の局面は、本発明に従う調製物、食品サプリメント、または食品を製造する方法に関する。
【0053】
本発明に従う調製物の製造法は、適切には、1以上のロドスピリルムspp. および/またはファエオスピリルムspp.の細胞を培養し、該培養物を採取し、そして該培養物の細胞を調製物に加工するために必要な工程を含み得る。
【0054】
そのような方法の詳細は、特に、下記の実施例において記載される。当業者は、種々の代替法が使用され得ることを理解するであろう。
【0055】
ロドスピリルムspp. および/またはファエオスピリルムspp.の細胞を培養する間、嫌気的かつ光栄養的条件が適用される。炭素源として、種々の有機栄養素が使用され得る。ロドスピリルムspp.および/またはファエオスピリルムspp.の細胞のために非常に適する培養培地および増殖条件は、例えば、「セガーズ−ヴェルストラエテ(Segersand Verstraete)培地」(セガーズおよびヴェルストラエテ、1983)であり、炭素源として乳酸(約2.7g/リットル)を使用し、約6.8〜6.9のpHおよび25〜37℃の温度で、好ましくは、関与する微生物の特定要件に適合され、例えば管状蛍光灯による照明からの一定の光強度(光強度300μM量子(quanta)・m−2・s−1)で嫌気的に行われる。ロドスピリルムspp.および/またはファエオスピリルムspp.を培養するために適する他の培地は、例えば、「改良されたロドスピリラセアエ(Rhodospirillaceae)培地」(DSMZ培地#27、DMSZ BmbH、ドイツ国ブラウンシュワイク)、またはセンス(Cens)培地(DSMZ培地#748)である。上記細胞は、0.01〜50mg/ml、好ましくは1〜5mg湿重量/mlの密度に培養されるのに適する。
【0056】
同様に、細胞は、生水中の3.1ml/リットルの60%DL−ラクテート溶液、3g/リットルの細菌学的ペプトンおよび3g/リットルの酵母エキスから構成された培地を含む1リットルフラスコ中で30℃で、6.8の培地pHで、40Wの3つのタングステンランプを使用して50μM量子・m−2・s−1の平均光子照射強度で照射されて嫌気的に増殖され得る。3日間の増殖の後、660nmでの光学密度は3.5(1.2g/kg乾燥重量)になった。
【0057】
細胞は、いったん適切な細胞密度に達すると、増殖培地からの分離を使用して、あるいは例えば遠心分離または濾過による採取を行って、本発明に従う調製物へ加工され得る。濃縮された細胞の塊は次いで、直接にまたは更なる加工の後に、本発明に従う調製物として使用され得る。
【0058】
使用可能な調製物を得るためのロドスピリルムspp. および/またはファエオスピリルムspp.の細胞物質の加工における更なる工程は、例えば洗浄工程を含み得るが、抽出による細胞のさらなる加工または凍結乾燥をも含み得る。
【0059】
使用可能な調製物を得るためのロドスピリルムspp. および/またはファエオスピリルムspp.の細胞物質の加工における更なる工程は、細胞の音波処理、その後の遠心分離による細胞質物質からの膜物質の分離、およびその後の更なる洗浄および再遠心分離工程を包含し得る。本発明に従う食品サプリメントは、腸のコレステロール吸収を低下させ、したがって血漿のコレステロールレベルを低下させるために適切に使用され得る。
【0060】
本発明の別の実施態様は、コレステロール低下特性を有する食品における食品サプリメントの適用を含む。
【0061】
コレステロール低下食品を製造するための方法は、食品サプリメントを組み入れている食品の製造を含む。そのような方法は、最初に食品が通常の方法で製造され、次いでロドスピリルムspp. および/またはファエオスピリルムspp.の調製物が上記製造された食品に添加されるところの工程を含み得る。また、ロドスピリルムspp.および/またはファエオスピリルムspp.の調製物を食品の製造中に食品に添加することも可能である。
【0062】
本発明に従うコレステロール低下特性を有する食品は、特徴として、上記した食品サプリメントを0.1〜20%(w/w)、好ましくは1〜10%(w/w)含む。
【0063】
本発明は、最終的に、血漿のコレステロールレベルを低下させるための薬物において使用されるべきロドスピリルムspp. および/またはファエオスピリルムspp.の調製物を含む。好ましくは、そのような調製物は、ロドスピリルム ルブラムおよび/またはファエオスピリルム モリシアヌムの種を含むべきである。
【0064】
次に、本発明を下記実施例によって説明するが、以下の実施例は、本発明を限定するものとして決して解釈されるべきでない。
【実施例1】
【0065】
ロドスピリルム ルブラムの製造
実験で使用されるバイオマスの製造のためにR.ルブラム菌株 ATCC 25903 が使用された。凍結乾燥された細胞を培地R8AH(ATCC培地550)に再水和させ、そして「セガーズ−ヴェルストラエテ培地」(上記を参照)中で、炭素源として乳酸(2.7g/リットル)を使用し、pH6.9±0.1で培養した。実験で使用されたバイオマスの最終培養は、20リットルのバイオリアクター中、同じ培養培地中、30±1℃、pH6.8±0.1および一定の光強度(管状蛍光灯による照明;300μM量子・m−2・s−1)で、嫌気的条件下で行われた。5日間培養した後、バイオマス(3.4g湿重量/リットル)が連続遠心分離によって採取され、−40℃で貯蔵され、そして凍結乾燥された。
【実施例2】
【0066】
ロドスピリルム ルブラムを製造する別の方法
コレステロールレベルを低下させる効果に対する培養条件の影響を調べるために、R.ルブラムATCC 25903がまた、生水中の3.1ml/リットルの60%DL−ラクテート溶液、3g/リットルの細菌学的ペプトンおよび3g/リットルの酵母エキスから構成された培地を含む1リットルフラスコ中で30℃で嫌気的に増殖された。培地のpHは6.8であった。フラスコを磁気撹拌機(Variomag multipoint HP15)上のインキュベーター(New Brunschwick Scientific、モデル G 25)中でインキュベートした。フラスコは、40Wの3つのタングステンランプを使用して50μM量子・m−2・s−1の平均光子照射強度で照射された。3日間の増殖の後、660nmでの光学密度が3.5(1.2g/kgの乾燥重量)になり、細胞が6500gでの遠心分離によって採取され、脱イオン水で洗浄され、そして凍結乾燥された(VirTis freezemobile 24)。こうして培養されたR.ルブラム(R. rubrum) は、血漿コレステロールレベルに対して、実施例1に記載されたように培養されたR.ルブラム(R. rubrum) 細胞(この細胞がほとんどの実施例において使用された)と同様の効果を生じた。
【実施例3】
【0067】
ロドスピリルム ルブラムの別の菌株の適用性
別のR.ルブラム菌株DSM467が、25℃で嫌気的に実施例2に関して記載されたのと同じ方法で同じ培地で増殖された。3日間の増殖の後、実施例2に関して記載されたように、4.5の660nmでの光学密度(乾燥重量1.4g/kg)で細胞を採取し、そして乾燥した。菌株DSM467は、血漿コレステロールレベルに対して、ほとんどの実施例で使用された菌株ATCC25903と同様の効果を生じた。
【実施例4】
【0068】
ファエオスピリルム モリシアヌム種の適用性
別の光合成細菌ファエオスピリルム モリシアヌムDSM120が、ATCC550培地を有する1リットルフラスコ中で25℃で実施例2に関して記載されたように嫌気的条件下で増殖された。3日間の増殖の後、実施例2に関して記載されたように、4.0の660nmでの光学密度(乾燥重量1.2g/kg)で細胞を採取し、そして乾燥した。
【実施例5】
【0069】
食餌を与えられたラットに対するR.ルブラムの効果
雄のウイスターラットに、栄養所要量(参考文献9において定義されている)を満たす半合成のラットの食餌を与えた(Hope Farms、Woerden、オランダ国)。8匹のラットの1群にこの基本食餌を与えた。8匹のラットの第2群に、同じ食餌であるが、(ショ糖の代わりに)凍結乾燥されたR.ルブラム10%(w/w)をさらに含む食餌を与えた。両方の群は、ほぼ同じ量の食物(31±7g/日)を消費し、同じ経時的体重増加を示した。8週間後、測定された全ての臨床化学パラメーター(血漿グルコース、尿酸、尿、クレアチニン、GOT、GPT、ヘマトクリットおよびヘモグロビン、ならびに尿グルコースおよびタンパク)は、血漿コレステロールおよび血漿トリグリセリドを除いて、両方の群で同様であった。血漿コレステロールレベルは、R.ルブラムを含む食餌を与えられた群において有意に低く(1.2±0.1ミリモル/リットル対1.6±0.1ミリモル/リットル;t−検定、p<0.0001)、血漿トリグリセリドも同様であった(0.5±0.1ミリモル/リットル対1.4±0.6ミリモル/リットル;p<0.001)(図1)。
【0070】
高速タンパク質液体クロマトグラフィー(fplc、Pharmacia-AmershamのÅKTAシステム)による血漿リポタンパク質の分離によって、コレステロールおよびトリグリセリドにおける低下は血漿LDL画分の減少故であり、一方、HDL画分はR.ルブラムを与えられた動物において不変のままであることが示された(図2)。すなわち、血漿コレステロールにおけるR.ルブラム誘発された低下は、特にLDL−コレステロールの低下故であった。コレステロールおよびトリグリセリドを測定するために使用された方法およびfplcによってリポタンパク質を分離するために使用された方法は、ファン ブリメンら、1996およびポストら、2000に記載されている。
【実施例6】
【0071】
食餌を与えられたマウスに対するR.ルブラムの効果
10匹のC57Black/6マウスに、通常の半合成のマウスの食餌を7日間与えた。次いで、5匹のマウスに同じ食餌をさらに7日間与え、一方、残りの5匹のマウスには、同じマウスの食餌であるが、10%(w/w)のR.ルブラムを含む食餌を与えた。食物摂取量は群の間で有意な差はなく、平均して2.6〜2.8g/マウス・日であった。7日後、血漿コレステロールレベルは、R.ルブラムを与えられたマウスにおいて1.52±0.07ミリモル/リットルであり、対照群における血漿コレステロールレベル(1.86±0.15ミリモル/リットル;t−検定、p=0.003)より有意に低かった(図3)。血漿トリグリセリドレベルは不変であった。
【実施例7】
【0072】
「西洋型」食餌を与えられたマウスにおけるR.ルブラムの効果
10匹のC57Black/6マウスに、半合成の食餌、いわゆる「西洋型」食餌、すなわち15%(w/w)の脂質および0.25%(w/w)のコレステロールを含む食餌を3週間与えた(ニシナら、1990)。次いで、5匹のマウスに同じ食餌を7日間与え、一方残りの5匹のマウスには、同じ食餌であるが、10%(w/w)のR.ルブラムをさらに含む食餌(コレステロール含量を0.25%に保つためにこの食餌にコレステロールもいくらか添加された)を与えた。この7日間の後、対照群におけるコレステロールレベルは3.07±0.18ミリモル/リットルであり、一方、R.ルブラムを含む食餌を与えられた群では、コレステロールレベルが2.26±0.21ミリモル/リットル(t−検定;p=0.0003)であった(図4)。血漿トリグリセリドは低下しなかった。fplcによるリポタンパク質の分離によって、LDL−コレステロールは、R.ルブラムを含む西洋型の食餌を与えられたマウスの血漿から実質的に消えたが、HDL−コレステロールは群の間で相違を示さないことが示された(図5)。
【実施例8】
【0073】
「西洋型」食餌を与えられたトランスジェニックAPOE3ライデン(Leiden)マウスにおけるR.ルブラムの効果
この実験では、アポリポタンパク質E3のいわゆるライデン突然変異のためのヒト遺伝子(APOE3Leiden)が遺伝子導入によって組み入れられたマウスが使用された。このトランスジェニック変化故に、このようないわゆるAPOEライデンマウスは、ヒト化されたリポタンパク質プロファイルを有し、リポタンパク質代謝に対する化合物の効果を研究するのに極めて適する(ファン ブリメンら、1996;ファン ブリメンら、1998)。
【0074】
研究設計は以下の通りであった。すなわち、マウス群に0.25%(w/w)のコレステロールを含む「西洋型」食餌(上記を参照)を5週間与えた。この食餌は、血漿コレステロールレベルを13〜14ミリモル/リットルに増加させた。次いで、マウスを、血漿コレステロールレベルに基づいて無作為に選んで、各6匹のマウスの群にした。これらの群に、同じ食餌であるが、凍結乾燥されたR.ルブラムをさらに0、0.625、1.25、2.5、5または10%(w/w)含む食餌を与えた。食餌のコレステロール含量は、必要なだけコレステロールを添加することにより0.25%で保持された。
【0075】
実験中、体重および食物摂取量がモニターされた。食餌を代えた後、血液を毎週採取して血漿コレステロールおよびトリグリセリドレベルを決定した。また、血漿リポタンパク質パターンを、fplcにより、プールされたサンプルにおいて群に関して決定された。さらに、群ベースで、糞便を毎週集めた。3週間後、VLDL分泌が、0%および10%のR.ルブラムを与えられた群において測定された(最終実験)。0.625%のR.ルブラムを与えられた群は次いで、0%のR.ルブラムを含む食餌に変えられ、2.5%のR.ルブラムを与えられた群は5%のR.ルブラムに変えられ、5%のR.ルブラムを与えられた群は10%のR.ルブラムに変えられて、犠牲にされた2つの群に取って代わった。さらに1週間後、再び血液を4つの残りの群からサンプリングした。結果は、以下のようにまとめられ得る。
血漿コレステロールレベルは、5%または10%R.ルブラムを与えられた群において有意に低下された。
コレステロールの低下は、10%R.ルブラム群(p<0.0001)では1週間後にすでに非常に有意であり、5%R.ルブラム群(p<0.001)でも2週間後にそうであり、3週間の間そのままであった(図6)。
このより低いコレステロールレベルは、VLDLおよびLDL画分におけるコレステロールの低下故であり、一方、HDL画分におけるコレステロールの量は変わらなかった(図7)
【0076】
コレステロール低下がコレステロール合成の抑制故であるかどうかを決定するために、コレステロール合成経路の副生物であるラトステロールの血漿濃度を測定した(ケンペンら、1988)。血漿ラトステロールレベルは、0、5または10%のR.ルブラムを与えられた群の間では有意な差はなかった。一方、上記したように、血漿コレステロールレベルは、5%および10%の群で有意に低かった(図8)。血漿ラトステロールと血漿コレステロールとの比は、R.ルブラムを与えられたマウスでは有意に増加すらした(ANOVA<p<0.026)。(相対的な)ラトステロール濃度はコレステロール合成の速度を良好に反映しているので(ケンペンら、1988)、5%および10%のR.ルブラムを与えられた群における血漿コレステロールの低下は、コレステロール合成の低下された速度故ではないと結論され得る。
【0077】
カンポステロールおよびβ−シトステロールは、植物においてのみ存在し、したがって腸からの吸収の後の血漿において存在し得るのみであるが、これらのステロールの血漿レベルは、5%または10%のいずれかのR.ルブラムを与えられた群では有意に低下した(図9)。しかし、β−シトステロールとコレステロールの血漿濃度の比は有意には変化しなかった(ANOVA、p=0.26)し、血漿のカンポステロールとコレステロールとの比も有意には変化しなかった(ANOVA、p=0.98)。コレステロールの血漿濃度は、その合成速度および腸からのその吸収速度によって決定されるので、これらの比が同じままである(カンポステロール、β−シトステロール;ミエッティネンら、1990を比較)か増加する(ラトステロール)という事実は、血漿コレステロール濃度における低下が、コレステロール合成における低下故ではなく、むしろ腸管からのステロールの低下された吸収の結果であるに違いないことを示す。
【0078】
肝臓によるVLDLの合成(ポストら、2000によって記載されたように測定される)は、対照群に対して、10%のR.ルブラムを与えられた群において有意には相違しなかった(図10a、b)。Triton WR1339の注入の後、血漿トリグリセリド濃度は、対照群においてよりも10%のR.ルブラムを与えられた群の方が急速に増加したが(図10a)、これは、肝臓によるVLDL粒子の分泌の増加の結果というよりもむしろ、R.ルブラムを与えられたマウスのVLDL画分におけるトリグリセリドのより高い量の結果であるはずである(図10b)。
【0079】
中性ステロール(特にコレステロール)の糞便排出は、R.ルブラムで処理されたマウスにおいて増加し(図11)、一方、胆汁酸の糞便排出もわずかに増加した(図12)。その結果、全てのステロールを合わせた糞便排出(中性ステロール+胆汁酸)は増加した(図13)(表1aおよびbも参照)。
【実施例9】
【0080】
APOE3ライデンマウスにおける血漿コレステロールレベルに対するロドスピリルム ルブラムの膜画分の効果
5gの凍結乾燥されたR.ルブラムを25mlの水に懸濁し、Branson Sonifier B-12において最大強度で1分間、音波処理した。音波処理したものを次いで、21,000rpmで遠心分離し、上清およびペレットを分離した。ペレットを再懸濁し、そして再遠心分離した。ペレットおよび上清を別々に、0.25%〜10%(w/w)のコレステロールを含む西洋化型食餌(W-食餌)(上記を参照)中に混合した。ここで、ペレットおよび上清の両方が5gの凍結乾燥されたR.ルブラム(すなわち、出発物質)に等しいと仮定する。6匹のAPOE3ライデンマウスの群に食餌W、またはペレット(膜質)物質をも含む食餌W、または細胞質物質をも含む食餌Wを2週間与えた。2週間で、血漿コレステロールが、対照の食餌Wを与えられたマウスでは15.7±1.6ミリモル/リットルであり、細胞質物質をも含む食餌Wを与えられたマウスでは14.4±2.1ミリモル/リットルであったが、膜質物質をも含む食餌Wを与えられたマウスでは、血漿コレステロールが6.7±0.9ミリモル/リットルであり、対照群に対して57%の有意な低下であった(t−検定;p<0.001)。
【実施例10】
【0081】
APOE3ライデンマウスにおける血漿コレステロールレベルに対するファエオスピリルム モリシアヌムの効果
11匹のAPOE3ライデンマウスに0.25%(w/w)のコレステロールを含む「西洋化型」食餌(上記を参照)を与えた。この食餌は、血漿コレステロールレベルを9±3ミリモル/リットルに増加させた。次いで、マウスを、血漿コレステロールレベルに基づいて無作為に選び、各6匹のマウスの群にした。2つの群に、同じ食餌であるが、R.ルブラムに関して上記したように、0または10%(w/w)の凍結乾燥されたファエオスピリルム モリシアヌムをさらに含む食餌を与えた。10日間飼育した後、P.モリシアヌム(P. molischianum)を与えられなかった群では血漿コレステロールが平均10±4ミリモル/リットルであり(対応のあるt−検定;有意でない)、飼育において10%のP.モリシアヌムを与えられた群では5±2ミリモル/リットルであった(対応のあるt−検定:p<0.05)。
【0082】
まとめ
これらの実験は、「西洋型」食餌に5%(w/w)または10%(w/w)のR.ルブラムを添加することは、APOE3ライデンマウスにおいて、血漿コレステロールレベルを有意に低下させることを示す。この低下は、
1.(プロアテローム形成性)VLDLおよびLDL粒子において運ばれるコレステロールの低下に完全に帰すことができ、一方、(抗アテローム形成性)HDLコレステロールは不変のままであり;
2.血漿ラトステロールレベルが変わらず、一方、肝臓によるVLDLの合成/分泌も不変であるので、コレステロール合成における低下によって引き起こされるのではなく;
3.ほんのわずかに増加した胆汁酸の増加された排出故ではなく;
4.したがって、糞便中のコレステロールの増加された排出(表1aを参照)ならびに血漿カンポステロールおよびβ−シトステロール濃度における低下によって反映されるように、恐らく腸からのステロールの低下された吸収故である。
5.可溶性の細胞質細胞物質によってではなく、膜質細胞物質によって引き起こされる。
【0083】
コレステロール低下効果は、種々の条件下で培養されたR.ルブラムによって引き起こされ、R.ルブラムの少なくとも2の異なる菌株(ATCC25903およびDSM467)によって引き起こされ、関連する種、P.モリシアヌムによっても引き起こされる。
【0084】
【表1a】

【0085】
【表1b】

【0086】
参考文献
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http://www.dsmz.de/bactnom/bactname. htm.

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【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1は、実施例2で説明されるように、通常の餌または10%(w/w)のR.ルブラムを含む餌を与えられたウイスターラットにおける、血漿コレステロールおよびトリグリセリドに対する影響を示す。ここで、*は対照に関してp<0.001を意味する。
【図2】図2は、実施例2で説明されるように、通常の食餌を与えられたウイスターラットからの、および10%(w/w)のR.ルブラムを含む食餌を与えられたウイスターラットからの血漿中のリポタンパク質パターンを示す(高速タンパク質液体クロマトグラフィーによる分離)。
【図3】図3は、実施例3で説明されるように、通常の食餌を与えられたC57Bl/6マウスおよび10%(w/w)のR.ルブラムを含む食餌を与えられたC57Bl/6マウスにおける、血漿コレステロールおよびトリグリセリドに対する影響を示す。ここで、*は対照に関してp<0.003を意味する。
【図4】図4は、実施例4で説明されるように、高コレステロール血症性の「西洋型」食餌を与えられたC57Bl/6マウスおよび10%(w/w)のR.ルブラムを含む高コレステロール血症性の「西洋型」食餌を与えられたC57Bl/6マウスにおける、血漿コレステロールおよびトリグリセリドに対する影響を示す。ここで、*は対照に関してp<0.0003を意味し、**は対照に関してp<0.011を意味する。
【図5】図5は、実施例4で説明されるように、高コレステロール血症性の「西洋型」食餌を与えられたC57Bl/6マウスからの、および10%(w/w)のR.ルブラムを含む高コレステロール血症性の「西洋型」食餌を与えられたC57Bl/6マウスからの血漿中のリポタンパク質パターンを示す(高速タンパク質液体クロマトグラフィーによる分離)。
【図6】図6は、実施例5で説明されるように、1週間後および2週間後の、血漿コレステロールに対する「西洋型」食餌中のR.ルブラムの種々の濃度の影響を示す。ここで、*は2週間後に対照と有意に異なることを意味し(対照に関してp<0.001)、**は、1週間後に0%R.ルブラムと有意に異なることを意味する(対照に関してp<0.001)(示されるデータは、平均±s.d.である)。
【図7】図7は、実施例5で説明されるように、高コレステロール血症性の「西洋型」食餌を与えられた APOE3ライデンマウスおよび種々の濃度のR.ルブラムを含む高コレステロール血症性の「西洋型」食餌を与えられた APOE3ライデンマウスのリポタンパク質パターンを示す(高速タンパク質液体クロマトグラフィーによる分離)。
【図8】図8は、実施例5で説明されるように、2週間後の血漿コレステロールおよびラトステロールに対する「西洋型」食餌中の種々の濃度のR.ルブラムの影響を示す。*は対照と有意に異なることを示す(示されるデータは、平均±s.d.である)。
【図9】図9は、実施例5で説明されるように、2週間後の血漿コレステロールおよびβ−シトステロールに対する「西洋型」食餌中の種々の濃度のR.ルブラムの影響を示す(示されるデータは、平均±s.d.である)。
【図10】図10は、実施例5で説明されるように、種々の濃度のR.ルブラムを含む「西洋型」食餌を与えられたマウスにおけるVLDL−トリグリセリドの合成(a)およびVLDLの脂質組成(b)を示す。
【図11】図11は、実施例5で説明されるように、種々の濃度のR.ルブラムを含む「西洋型」食餌を与えられたマウスの糞便中での中性ステロールの排出を示す。
【図12】図12は、実施例5で説明されるように、種々の濃度のR.ルブラムを含む「西洋型」食餌を与えられたマウスの糞便中での胆汁酸の排出を示す。
【図13】図13は、実施例5で説明されるように、種々の濃度のR.ルブラムを含む「西洋型」食餌を与えられたマウスの糞便中での中性ステロールおよび胆汁酸の排出を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物として使用するためのロドスピリルムspp.(Rhodospirillum spp.) および/またはファエオスピリルムspp.(Phaeospirillum spp.) の調製物。
【請求項2】
生きているロドスピリルムspp. および/またはファエオスピリルムspp. あるいは該細菌の膜画分を含む、請求項1記載の調製物。
【請求項3】
ロドスピリルムspp. および/またはファエオスピリルムspp. の調製物および1以上の賦形剤を含む薬剤調製物。
【請求項4】
ロドスピリルムspp. および/またはファエオスピリルムspp. の調製物を含む、血漿コレステロールを低下させる剤。
【請求項5】
ロドスピリルムspp. および/またはファエオスピリルムspp. の調製物を、血漿コレステロールを低下させるための薬物の製造のために使用する方法。
【請求項6】
ロドスピリルムspp. および/またはファエオスピリルムspp. の調製物を含む、コレステロール低下特性を有する食品サプリメント。
【請求項7】
該調製物が、膜画分または生きているもしくは凍結乾燥された細菌を含む、請求項6記載の食品サプリメント。
【請求項8】
生きているロドスピリルムspp. および/またはファエオスピリルムspp. の調製物を含む、コレステロール低下特性を有するプロビオティック。
【請求項9】
請求項6または7記載の食品サプリメントを含む食品。
【請求項10】
ロドスピリルムspp. および/またはファエオスピリルムspp. の1以上の細胞を培養して多細胞培養物にすること、該培養物を採取すること、および該培養物の細胞を調製物に加工することを含む、ロドスピリルムspp. および/またはファエオスピリルムspp. の調製物の製造法。
【請求項11】
該培養物の細胞を生きているロドスピリルムspp. および/またはファエオスピリルムspp. の調製物に加工することを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
請求項1または2記載の調製物を消費に適するものにすることを含む、請求項6または7記載の食品サプリメントの製造法。
【請求項13】
請求項6または7記載の食品サプリメントを食品に組み入れることを含む、請求項9記載の食品の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2006−513176(P2006−513176A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558565(P2004−558565)
【出願日】平成15年12月12日(2003.12.12)
【国際出願番号】PCT/NL2003/000884
【国際公開番号】WO2004/052380
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(502015784)ネーデルランドセ オルガニサティエ フォール トエゲパストナトールヴェテンシャッペリク オンデルゾエク ティエヌオー (41)
【Fターム(参考)】