説明

コンクリートパイルの接合構造及び方法

【課題】 接合すべきコンクリートパイルの位置決めを精度よく実行することが可能なコンクリートパイルの接合方法を提供する
【解決手段】
一のコンクリートパイル11の端面11aに取り付けられた端板13を、他のコンクリートパイル12の端面12aに取り付けられた端板14と当接させることにより、これらを互いに接合する際に、第1の当接面15と第1の当接面15の縁端部16において他の端板14側へ突出させた突出部17とを有する一の端板13に対して、第1の当接面15と当接可能な第2の当接面21と第2の当接面21の縁端部において凹設された凹段部24とを有するとともに第2の当接面21から凹段部24にかけて案内面18が形成されている他の端板14を、その案内面18により突出部17を案内させることにより当接させ、当接により突出部17と凹段部24との間に形成される間隙23を、さらに溶接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一のコンクリートパイルの端面に取り付けられた一の端板を、他のコンクリートパイルの端面に取り付けられた他の端板と当接させることにより、これらを互いに接合するコンクリートパイルの接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、一のコンクリートパイル51と他のコンクリートパイル52を互いに接合するためには、図4に示すように、コンクリートパイル51の端面51aに取り付けられた端板53と、コンクリートパイル52の端面52aに取り付けられた端板54を互いに当接させ、さらに端板53、54の外周部55を環状に溶接することにより実行する(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
コンクリートパイル51、52の内部には、プレストレスを導入するためにPC鋼線61が緊張された状態で配設されている。このPC鋼線61の端部を端板53、54に係止するために、端板53、54に鋼線挿通孔62、63がそれぞれ形成されている。この鋼線挿通孔62、63は、端板53、54の当接面53a、54a側が大径部62a、63aとされ、そこから小径部62b、63bへと小径化されている。さらに、端板53、54の外周面の外面側に溶接凹部67が圧延形成されている。
【0004】
コンクリートパイル51、52を接合する際には、コンクリートパイル51、52に取り付けられた端板53、54を互いに当接させるとともに、この当接させた状態において形成される溶接凹部67を溶接材69にて溶接することによりこれを実行することとなる。
【特許文献1】特開平10−252059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の開示技術では、接合すべきコンクリートパイルの位置決めを実行する際に、例えば、一方のコンクリートパイルに位置決め用のスペーサを設け、他方のコンクリートパイルをその位置決め用のスペーサに沿わせて嵌合させなければならない。このため、労力の負担が過大となり、施工性の観点において改善の要請があった。
【0006】
特に、これら接合すべきコンクリートパイル51、52の位置ズレが生じると、構築すべき橋梁全体の建築精度に影響を与えることから、具体的には、センチメートルオーダの誤差範囲で位置ズレを抑えていく必要があった。
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、接合すべきコンクリートパイルの位置決めを精度よく実行することが可能なコンクリートパイルの接合構造及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るコンクリートパイルの接合構造は、上述した課題を解決するために、 一のコンクリートパイルの端面に取り付けられた一の端板を、他のコンクリートパイルの端面に取り付けられた他の端板と当接させることにより、これらを互いに接合するコンクリートパイルの接合構造において、上記一の端板は、上記他の端板と当接可能な第1の当接面と、上記第1の当接面縁端部において上記他の端板側へ突出させた突出部とを有し、 上記他の端板は、上記一の端板と当接可能な第2の当接面と、上記第2の当接面縁端部において、上記突出部との間で少なくとも間隙が形成されるように凹設された凹段部とを有し、上記一の端板の当接時において上記突出部を案内可能な案内面が、上記第2の当接面から上記凹段部にかけて形成され、さらに、上記突出部と上記凹段部との間隙は、溶接されてなることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るコンクリートパイルの接合方法は、上述した課題を解決するために、 一のコンクリートパイルの端面に取り付けられた一の端板を、他のコンクリートパイルの端面に取り付けられた他の端板と当接させることにより、これらを互いに接合するコンクリートパイルの接合方法において、第1の当接面と上記第1の当接面縁端部において上記他の端板側へ突出させた突出部とを有する上記一の端板に対して、上記第1の当接面と当接可能な第2の当接面と上記第2の当接面縁端部において凹設された凹段部とを有するとともに上記第2の当接面から上記凹段部にかけて案内面が形成されている他の端板を、その上記案内面により上記突出部を案内させることにより当接させ、上記当接により上記突出部と上記凹段部との間に形成される間隙を、さらに溶接する。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、 一のコンクリートパイルの端面に取り付けられた一の端板を、他のコンクリートパイルの端面に取り付けられた他の端板と当接させることにより、これらを互いに接合する際に、第1の当接面とその縁端部において他の端板側へ突出させた突出部とを有する一の端板に対して、第1の当接面と当接可能な第2の当接面とその縁端部において凹設された凹段部とを有するとともに第2の当接面から凹段部にかけて案内面が形成されている他の端板を、その案内面により突出部を案内させることにより当接させ、上記当接により突出部と凹段部との間に形成される間隙を、さらに溶接する。
【0011】
このため、接合すべきコンクリートパイルの位置決めをセンチメートルオーダで精度よく実行することが可能となり、これらを互いに強固に接合することが可能となる。また、突出部を第1の当接面よりも下側へ突出させているため、間隙には、第1の当接面並びに第2の当接面の境界が現れることがなくなる。即ち、この間隙には、突出部と案内面との境界が現れるに過ぎないため、これを隅肉溶接することにより溶接固着することができ、その施工性をより高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態として、位置決めを精度よく実行可能なコンクリートパイルの接合構造につき、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
本発明を適用した接合構造1は、例えば、図1に示すように、トラス構造又はアーチ構造を構成する管状のコンクリートパイル2に適用されるものである。このコンクリートパイル2は、管壁部3と、この管壁部3により囲まれる管路部4とを備えている。接合構造1は、このコンクリートパイル2における管壁部3同士の接合部に設けられる。
【0014】
接合構造1は、図2に示すように、コンクリートパイル11の端面11aに取り付けられた一の端板13を、他のコンクリートパイル12の端面12aに取り付けられた他の端板14と当接させる。
【0015】
端板13は、上記端板14と当接可能な第1の当接面15と、上記第1の当接面15の縁端部16において、端板14側へ突出させた突出部17とを有している。
【0016】
端板14は、端板13と当接可能な第2の当接面21と、第2の当接面21の縁端部22において、突出部17との間で少なくとも間隙23が形成されるように凹設された凹段部24とを有している。さらに、この端板14は、第2の当接面21から凹段部24にかけて案内面26が形成されている。
【0017】
ちなみに、端板13における突出部17には、上記案内面26と当接可能なガイドキー18が形成されている。このガイドキー18は、案内面26と係合自在とされていてもよい。
【0018】
また、端板13、14には、それぞれ鋼線31、32を係止するための鋼線挿通孔33、34が形成されている。鋼線挿通孔33、34は、鋼線31、32の端部を係合するための大径部33a、34aと、鋼線31、32を挿通させるための小径部33b、34bとが形成されている。この鋼線挿通孔33、34における大径部33a、34aに鋼線31、32の端部を係合させてこれを緊張させることにより、コンクリートパイル11、12それぞれに対してプレストレスを導入することが可能となり、さらに端板13、14をコンクリートパイル11、12の端面11a、12aに固定することが可能となる。
【0019】
次に、この端板13、14が端面11a、12aに固定されたコンクリートパイル11、12を互いに接合する際には、この端板13における突出部17に形成されたガイドキー18を、端板14に形成された案内面26により案内させる。具体的には、ガイドキー18を案内面26に当接させることにより、互いに位置合わせを行う。その結果、コンクリートパイル11、12間の位置決めを実現することが可能となる。
【0020】
このようにガイドキー18と案内面26との当接により位置決めされた状態で、第1の当接面15と第2の当接面21とを当接させる。その結果、突出部17と凹段部24との間に間隙23が形成されることになる。なお、この当接時において、間隙23が形成されるようにするためには、突出部26の突出長さや、凹段部24の段差がより最適に調整されている必要がある。
【0021】
最後に、この間隙23に対して溶接を施す。間隙23への溶接に関しては、例えば溶接材にて溶接して接合するようにしてもよい。これにより、コンクリートパイル11、12が互いに接合された上で、互いに強固に接合することが可能となる。また、この接合構造1においては、突出部17を第1の当接面15よりも下側へ突出させている。このため、この間隙23には、第1の当接面15並びに第2の当接面21の境界が現れることがなくなる。即ち、この間隙23には、突出部17と案内面26との境界が現れるに過ぎないため、これを隅肉溶接することにより溶接固着することができ、その施工性をより高めることが可能となる。
【0022】
図3は、本発明を適用した他の接合構造5の間隙23周辺を示す拡大図である。この接合構造5では、第2の当接面21に対して角度φ40〜80°の範囲で傾斜されてなる案内面29が形成されている。また、突出部17と第1の当接面にいたるまでに、同様に角度φとして40〜80°の範囲で傾斜面30が形成されている。当接時においては、この傾斜面30を案内面29により案内することにより、位置合わせを行うことができる。特に、接合構造5では、このように案内面29と第2の当接面21とが、いわば面取りされている状態とすることが可能となる。このため、接合時において角部分が潰れるのを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用したコンクリートパイルの接合構造の全体構成につき示す図である。
【図2】本発明を適用したコンクリートパイルの接合構造につき詳細に説明するための図である。
【図3】本発明を適用した接合構造の間隙周辺を示す拡大図である。
【図4】従来のコンクリートパイルの接合構造を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1 接合構造
2 コンクリートパイル
3 管壁部
4 管路部
11、12 コンクリートパイル
13、14 端板
15 第1の当接面
16 縁端部
17 突出部
18 案内面
21 第2の当接面
22 縁端部
23 間隙
24 凹段部
26 案内面
31、32 鋼線
33、34 鋼線挿通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一のコンクリートパイルの端面に取り付けられた一の端板を、他のコンクリートパイルの端面に取り付けられた他の端板と当接させることにより、これらを互いに接合するコンクリートパイルの接合構造において、
上記一の端板は、上記他の端板と当接可能な第1の当接面と、上記第1の当接面縁端部において上記他の端板側へ突出させた突出部とを有し、
上記他の端板は、上記一の端板と当接可能な第2の当接面と、上記第2の当接面縁端部において、上記突出部との間で少なくとも間隙が形成されるように凹設された凹段部とを有し、上記一の端板の当接時において上記突出部を案内可能な案内面が、上記第2の当接面から上記凹段部にかけて形成され、
さらに、上記突出部と上記凹段部との間隙は、溶接されてなること
を特徴とするコンクリートパイルの接合構造。
【請求項2】
上記案内面は、上記第2の当接面に対して40〜80°の範囲で傾斜されてなること
を特徴とする請求項1記載のコンクリートパイルの接合構造。
【請求項3】
一のコンクリートパイルの端面に取り付けられた一の端板を、他のコンクリートパイルの端面に取り付けられた他の端板と当接させることにより、これらを互いに接合するコンクリートパイルの接合方法において、
第1の当接面と上記第1の当接面縁端部において上記他の端板側へ突出させた突出部とを有する上記一の端板に対して、上記第1の当接面と当接可能な第2の当接面と上記第2の当接面縁端部において凹設された凹段部とを有するとともに上記第2の当接面から上記凹段部にかけて案内面が形成されている他の端板を、その上記案内面により上記突出部を案内させることにより当接させ、
上記当接により上記突出部と上記凹段部との間に形成される間隙を、さらに溶接すること
を特徴とするコンクリートパイルの接合方法。
【請求項4】
上記第2の当接面に対して40〜80°の範囲で傾斜されてなる案内面により上記突出部を案内すること
を特徴とする請求項3記載のコンクリートパイルの接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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