コンクリートブロック及びコンクリートブロックの印刷方法
【課題】下塗り塗装とその乾燥にかかる作業工程を省略するために、インク受理層を設けることなくインクジェット印刷を施すことができるコンクリートブロック及びコンクリートブロックの印刷方法を提供する。
【解決手段】ゼロスランプのコンクリートを型枠に投入して締め固めた後に即時脱形して製造したコンクリートブロック10を使用し、前記コンクリートブロック10のフェイスシェル面10dに直接インクジェット印刷を施すようにした。
【解決手段】ゼロスランプのコンクリートを型枠に投入して締め固めた後に即時脱形して製造したコンクリートブロック10を使用し、前記コンクリートブロック10のフェイスシェル面10dに直接インクジェット印刷を施すようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリートブロック及びコンクリートブロックの印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築材にインクジェット印刷を施すことで、様々なデザインの建築材を提供することが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、インクジェットプリントにて画像が形成された建築板に係る発明が開示されている。
【0004】
このような建築材へのインクジェット印刷においては、インクの密着性を確保するために、まず建築材に合成樹脂塗料を用いた下塗り塗装を行う。そして、下塗り塗料を乾燥させることによりインク受理層を形成し、このインク受理層に対してインクジェット印刷を行うこととしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−167334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記したようなインクジェット印刷を建築用のコンクリートブロックに適用しようとした場合、コンクリートブロックのフェイスシェルの両面に印刷することが要求される。
【0007】
すなわち、現在販売されているフェイスシェルの化粧を施した建築ブロック(化粧ブロック)のうち、片面のみに化粧を施したものは10〜20%程度に止まっており、圧倒的に両面に化粧したものが多くなっている。さらにコーナー用のブロックは、コーナー部分にも化粧を施す必要がある。
【0008】
このように、複数の面に印刷を行うことが求められるコンクリートブロックにおいては、下塗り塗装とその乾燥にかかる作業工程の増加が無視できないものであり、事業化における大きな障害となっていた。
【0009】
そこで、本発明は、インク受理層を設けることなくインクジェット印刷を施すことができるコンクリートブロック及びコンクリートブロックの印刷方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、以下を特徴とする。
(請求項1)
【0011】
請求項1に記載の発明は、以下の点を特徴とする。
【0012】
すなわち、請求項1に記載のコンクリートブロックの印刷方法は、ゼロスランプのコンクリートを型枠に投入して締め固めた後に即時脱形して製造したコンクリートブロックを使用し、前記コンクリートブロックのフェイスシェル面に直接インクジェット印刷を施したことを特徴とする。
(請求項2)
【0013】
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0014】
すなわち、前記コンクリートブロックは、空隙率が5〜18%の範囲であることを特徴とする。
(請求項3)
【0015】
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1又は2記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0016】
すなわち、前記インクジェット印刷によるインクの塗膜厚を前記コンクリートブロックのフェイスシェル面から50μm以下としたことを特徴とする。
(請求項4)
【0017】
請求項4に記載の発明は、上記した請求項1〜3のいずれかに記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0018】
すなわち、前記コンクリートブロックを加熱し、前記コンクリートブロックのフェイスシェル面の温度を5℃以上に上げてから前記インクジェット印刷を行うことを特徴とする。
(請求項5)
【0019】
請求項5に記載の発明は、上記した請求項1〜4のいずれかに記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0020】
すなわち、前記インクジェット印刷を行う前に前記コンクリートブロックを乾燥させて水分率を4%以下としたことを特徴とする。
(請求項6)
【0021】
請求項6に記載の発明は、上記した請求項1〜5のいずれかに記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0022】
すなわち、前記コンクリートブロックのフェイスシェル面に試薬を滴下し、前記試薬が前記コンクリートブロックに完全に浸透するまでの浸透時間が所定値以下であることを検査する検査工程を含み、前記検査工程によって浸透時間が所定値以下であることが検査されたのちにインクジェット印刷を行うようにしたこと特徴とする。
(請求項7)
【0023】
請求項7に記載の発明は、上記した請求項6記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0024】
すなわち、前記試薬として、JIS K 6768に規定する30.0mN/mのぬれ張力を測定するための試験用混合液を使用し、前記検査工程においては、前記コンクリートブロック及び前記試験用混合液の温度を30〜50℃とした環境において、前記試験用混合液を前記コンクリートブロックの表面に0.025〜0.035ml滴下し、前記試験用混合液が前記コンクリートブロックに完全に浸透するまでの浸透時間が10秒以下であることを測定することを特徴とする。
(請求項8)
【0025】
請求項8に記載の発明は、上記した請求項1〜5のいずれかに記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0026】
すなわち、前記コンクリートブロックは、下記の方法で測定したときの浸透時間が10秒以下であることを特徴とする。
(1)JIS K 6768に規定する30.0mN/mのぬれ張力を測定するための試験用混合液を用意する。
(2)前記コンクリートブロック及び前記試験用混合液の温度を30〜50℃とした環境において、前記試験用混合液を前記コンクリートブロックの表面に0.025〜0.035ml滴下する。
(3)前記試験用混合液が前記コンクリートブロックに完全に浸透するまでの浸透時間を測定する。
(請求項9)
【0027】
請求項9に記載の発明は、上記した請求項1〜8のいずれかに記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0028】
すなわち、前記インクジェット印刷は、前記コンクリートブロックを一方のフェイスシェル面を上にして印刷機に搬入する第1搬入工程と、前記一方のフェイスシェル面にUV硬化インクを使って印刷を行う第1印刷工程と、前記一方のフェイスシェル面に紫外線を当ててインクを硬化させる第1照射工程と、前記コンクリートブロックを180度回転させるブロック反転工程と、前記コンクリートブロックを他方のフェイスシェル面を上にして印刷機に搬入する第2搬入工程と、前記他方のフェイスシェル面にUV硬化インクを使って印刷を行う第2印刷工程と、前記他方のフェイスシェル面に紫外線を当ててインクを硬化させる第2照射工程と、を備えて実行されることを特徴とする。
(請求項10)
【0029】
請求項10に記載の発明は、上記した請求項9記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0030】
すなわち、前記第1印刷工程及び前記第2印刷工程における印刷は、予めデジタル化されて保存された画像データを用いて実行され、前記第2印刷工程において使用する画像は、前記第1印刷工程において使用する画像の上下及び左右の少なくともいずれかを反転させた画像であることを特徴とする。
(請求項11)
【0031】
請求項11に記載の発明は、上記した請求項1〜10のいずれかに記載のコンクリートブロックの印刷方法を使用して印刷を施したコンクリートブロックである。
【発明の効果】
【0032】
本発明は上記の通りであり、ゼロスランプのコンクリートを型枠に投入して締め固めた後に即時脱形して製造したコンクリートブロックを使用し、前記コンクリートブロックのフェイスシェル面に直接インクジェット印刷を施したものである。即時脱形して製造したコンクリートブロックは、表面が凹凸した粗面となっており、また、脱型の際に離型剤を用いることもないため、離型剤による撥水性が発生したり、離型剤の膜ができたりといったこともない。このため、インク受理層を設けることなく、フェイスシェル面に直接インクジェット印刷を施したとしても、十分な耐久性を得ることができる。
【0033】
なお、インク保持力を発揮するには、空隙率が5〜18%の範囲のコンクリートブロックを使用することが望ましい。ここで言う空隙率とは、「空隙率(%)=100−充填率」で求められる値である。また、「充填率」は、「充填率=(ブロックの単位容積質量)÷(コンクリートの理論単位容積質量)×100」で求められる。また、「コンクリートの理論単位容積質量」は、コンクリートの空気量(空隙)をゼロとした単位容積質量のことである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】コンクリートブロックの(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図である。
【図2】コンクリートブロックの印刷工程(前半)を説明する図である。
【図3】コンクリートブロックの印刷工程を説明する図であって、作業ラインを上から見た図である。
【図4】印刷済みコンクリートブロックを(a)A面側から見た透視斜視図、(b)B面側から見た透視斜視図である。
【図5】第1の変形例に係る図であって、(a)コンクリートブロックで壁面を形成した状態を示す図、(b)A面側から見た各コンクリートブロックの構成を示す図、(c)B面側から見た各コンクリートブロックの構成を示す図である。
【図6】第1の変形例に係るコンクリートブロック「b」を示す図であって、(a)A面側から見た図、(b)B面側から見た図、(c)A面側から見た透視斜視図である。
【図7】第2の変形例に係る図であって、(a)A面側から見た各コンクリートブロックの構成を示す図、(b)B面側から見た各コンクリートブロックの構成を示す図である。
【図8】第2の変形例に係るコンクリートブロック「b」を示す図であって、(a)A面側から見た図、(b)B面側から見た図、(c)A面側から見た透視斜視図である。
【図9】コーナーを有するコンクリートブロックの(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図である。
【図10】コンクリートブロックの印刷工程(前半)を説明する図であって、コーナーを有するコンクリートブロックに印刷を施す様子を示す図である。
【図11】ぬれ張力試験の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、ゼロスランプのコンクリートを型枠に投入して締め固めた後に即時脱形して製造したコンクリートブロック(いわゆる「即脱式のコンクリートブロック」)を使用することで、インク受理層を設けることなく、フェイスシェル面に直接インクジェット印刷を施したとしても、十分な耐久性を得ることができることを見出したものである。
【0036】
また、本発明者らは、インク保持力を発揮するには、空隙率が5〜18%の範囲のコンクリートブロックを使用することが望ましいことを見出した。なお、ここで言う空隙率とは、「空隙率(%)=100−充填率」で求められる値である。また、「充填率」は、「充填率=(ブロックの単位容積質量)÷(コンクリートの理論単位容積質量)×100」で求められる。また、「コンクリートの理論単位容積質量」は、コンクリートの空気量(空隙)をゼロとした単位容積質量のことである。
【0037】
すなわち、本発明者は、以下に説明するように、コンクリートブロックにインクジェット印刷を行うに当たり、インク受理層を省略してもインク保持力を発揮する構成を検討した結果、即時脱形して製造したコンクリートブロック、特に、空隙率が5〜18%の範囲のコンクリートブロックを使用することが望ましいことを見出した。
【0038】
ここで、コンクリートブロックとしては、流動性のあるコンクリートを型枠に流し込み、硬化後に脱型してコンクリートブロックを得る「流し込み式」と、ゼロスランプのコンクリートを型枠に投入して締め固めた後に即時脱形してコンクリートブロックを得る「即脱式」とが存在する。発明者は、流し込み式で得たコンクリートブロックと、振動締め固めによる即脱式で得たコンクリートブロックとを用意し、その表面にUV硬化インクを使用してインクジェット印刷を行い、付着性を調べた。UV硬化インクとしては、例えば特開2010−167334号に開示されているような、表面張力が20〜30dyne/cmのものを使用した。なお、印刷前のコンクリートの含水率は4%以下に統一した。また、コンクリートブロックは、空隙率を変えたものを複数用意し、流し込み式のコンクリートブロックでは空隙率を2%から20%までの範囲で変化させた。また、即脱式のコンクリートブロックでも同様に空隙率を2%から20%までの範囲で変化させた。なお、流し込み式のコンクリートブロックでは型枠からの脱型を容易にするため、離型剤を使用した。
【0039】
上記した複数のコンクリートブロックにインクジェット印刷を施した後、インクの付着性を調べるため、各コンクリートブロックに対してガムテープを用いたピーリング試験を行った。ピーリング試験とは、印刷面にガムテープを貼り付け、一方の端を持ち、一気に引きはがして、ガムテープに付着する塗膜の量で付着力を判定する方法である。
【0040】
まず、流し込み式のコンクリートブロックと即脱式のコンクリートブロックでは、空隙率の範囲全体にわたって、流し込み式のコンクリートブロックの付着性の方が劣っていた。特に、空隙率が2〜7%の範囲では、ガムテープのほぼ全面にインクが付着し、付着力が極端に劣る結果となった。空隙率が8〜12%の範囲では、ガムテープの30〜50%くらいの面積にインクが付着した。空隙率が13%以上では、コンクリートの表面が剥離する結果となった。これは、流し込み式のコンクリートブロックの場合、表面が平滑であることと、離型剤を使用するため、コンクリート表面がインクをはじくことによる。
【0041】
一方、即脱式のコンクリートブロックにおいては、空隙率が2〜4%の範囲では、ガムテープの一部(10〜30%程度)にインクが付着した。空隙率が5〜18%の範囲では、ガムテープへのインクの付着は全く見られなかった。空隙率が20%のコンクリートブロックでは、強度不足のためコンクリート表面の一部が剥離した。
【0042】
このように、空隙率が4%以下の場合は、コンクリート表面が平滑になることと、空隙が小さいためにインクを吸い込む力が弱く、充分な付着力が得られない。また、空隙率が18%を超えると、コンクリートそのものの強度が小さくなり、インクを保持することが出来なくなる。
【0043】
以上のことから、インク受理層を設けることなくインクジェット印刷を行い、充分な付着力を得るためには、即脱式のコンクリートブロックを用いることが望ましく、特に、空隙率が5〜18%の即脱式のコンクリートブロックを使用することが望ましいとの結論を得た。
【0044】
なお、インクのコンクリートブロックへの付着性を高めるためには、コンクリートブロックのぬれ張力を高めることも重要である。ここで、ぬれ張力の試験方法としては、JIS K 6768「プラスチック−フィルム及びシート−ぬれ張力試験方法」が存在するが、この試験方法はプラスチックフィルム及びシートの試験方法であるため、そのままコンクリートブロックに応用することはできない。すなわち、JIS K 6768の試験方法では、滴下した試験用混合液の液膜が破れるか否かでぬれ張力を試験しているが、この試験方法をコンクリートブロックにそのまま応用すると、試験用混合液が浸透してしまうために測定結果を得ることができない。
【0045】
そこで、本発明者らは、コンクリートブロックのフェイスシェル面に試薬を滴下し、試薬がコンクリートブロックに完全に浸透するまでの浸透時間が所定値以下であることを検査することによって、コンクリートブロックのぬれ張力を検査することとした。
【0046】
具体的には、JIS K 6768に規定する30.0mN/mのぬれ張力を測定するための試験用混合液(エチレングリコールモノエチルエーテル)を使用し、コンクリートブロック及び試験用混合液の温度を30〜50℃とした環境において、試験用混合液をコンクリートブロックの表面に0.025〜0.035ml滴下し、試験用混合液がコンクリートブロックに完全に浸透するまでの浸透時間が10秒以下であることを測定することとした。そして、この浸透時間が10秒以下であることが検査されたのちにインクジェット印刷を行うようにすることで、コンクリートブロックの品質管理基準として運用可能とした。なお、このぬれ張力試験は、インクジェット印刷を行うすべてのコンクリートブロックに対して行う必要はなく、一部を抽出して検査することとしてもよい。
【0047】
なお、30.0mN/mのぬれ張力を測定するための試験用混合液を使用したのは、UV硬化インクの表面張力よりも高いぬれ張力を試験するための試験用混合液を使用したためである。
【0048】
また、試験用混合液をコンクリートブロックの表面に滴下する前には、試験用混合液の浸透時間の測定精度を高めるために、フェイスシェル面をディスククラインダーを使ってダイヤモンド砥石#60で約2mm研磨した。これは、研磨しない状態で滴下すると、表面の凹凸の凹部を伝って試験用混合液が横に流れてしまい、浸透時間を正確に測定できないためである。
【0049】
また、試験用混合液をコンクリートブロックの表面に滴下する際には、フェイスシェル面の端部付近を避けて(例えば、端縁から40cmの範囲を避けて)3箇所に素早くスポイトで滴下し、その浸透時間をストップウォッチにて測定した。浸透時間の測定は、3箇所すべてに滴下が完了した時点からスタートし、3箇所すべての試薬が完全に浸透した時点の時間を測定した。
【0050】
図11は、コンクリートブロックに対して上記したぬれ張力試験を実行した結果を示す表である。この図11が示すように、コンクリートブロックのぬれ張力は、温度と水分率に対して相関関係があることが分かる。すなわち、コンクリートブロックのぬれ張力は、温度が高いほど高く(温度が高いほど試験用混合液の浸透時間が短い)、水分率が低いほど高くなる(水分率が低いほど試験用混合液の浸透時間が短い)傾向がある。
【0051】
なお、ぬれ張力とインクの付着性との関係を調べるため、JIS K 5600で規格化されたテープテスト法により、インクの付着性を検査した。テープテストを実施するにあたっては、結果をより定量的に評価するために、カッターを用いて碁盤の目状に膜に切れ込みを入れた後にテープテストを実施し(JIS K 5600に規定する「クロスカット法」に準ずる)、剥離数や剥離状態のランク分けを行った。ランク分けについては「良い」「やや悪い」「悪い」の3段階とし、クロスカット法における6段階の分類のうち、「分類0」と「分類1」とに当たる場合を「良い」、「分類2」に当たる場合を「やや悪い」、「分類3」と「分類4」と「分類5」とに当たる場合を「悪い」として評価した。この結果、試験用混合液の浸透時間が10秒以下であればインクの付着性が「良い」という結果が得られた(図11参照)。これにより、ぬれ張力(試験用混合液の浸透時間)とインクの付着性との関係性が実証された。
【0052】
よって、コンクリートブロックが5℃以下の低温になる可能性がある冬季の製造では、インクジェット印刷を施す前工程でフェイスシェル面を加熱し、フェイスシェル面の温度を上げてからインクジェット印刷を行うことが望ましい。これにより、インクジェット印刷の実行時におけるコンクリートブロックのぬれ張力を適切に保つことができる。
【0053】
また、インクジェット印刷を行う前にコンクリートブロックを乾燥させて水分率を4%以下とすることが望ましい。より望ましくは、水分率を3%以下とすることが望ましい。これによっても、インクジェット印刷の実行時におけるコンクリートブロックのぬれ張力を適切に保つことができる。
【0054】
なお、コンクリートブロックの水分率は、JIS A 5406に規定する吸水率試験により計測する。水分率の計測を簡易的に行いたい場合は、JIS A 5406に規定する吸水率試験に代えて、例えばケット科学研究所社製コンクリート・モルタル水分計HI−520にて、材料選択モード「コンクリート」で測定することとしてもよい。なお、HI−520で測定する際の厚さモードはコンクリートブロックの正味肉厚に応じて適宜設定すればよく、例えば正味肉厚30mmのコンクリートブロックの場合には「30mm」とすればよい。HI−520を上記モードで使用した場合、JIS A 5406に規定する吸水率試験による値よりも水分率が1%程度大きく表示されることが分かっているため、水分計HI−520の測定で4.0%未満であれば水分率を4.0%以下とする基準を十分に満足することになる。
【0055】
このように最適なぬれ張力を維持することで、インクジェット印刷によるインクの塗膜厚をごく薄くすることができ、このごく薄い塗膜を確実にコンクリートブロック表面に付着させることができる。具体的には、インクジェット印刷によるインクの塗膜厚をコンクリートブロックのフェイスシェル面から50μm以下とすることができる。
【0056】
以下、本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
【0057】
図1は、本実施形態に係るコンクリートブロック10を示す図であり、空隙率が5〜18%の即脱式のコンクリートブロックである。このコンクリートブロック10は、この図1に示すように、表裏にフェイスシェル面10dを有している。以下の説明においては、当該フェイスシェル面10dのうちの一方の面をA面、他方の面をB面として説明する。
【0058】
このコンクリートブロック10は、図1に示すように、上部に鉄筋を通すための窪み10aを有しており、上下が決まったものとなっている。
【0059】
このコンクリートブロック10にインクジェット印刷を行う際には、印刷の前工程として、コンクリートブロック10を乾燥させて水分率を4%以下とする。
【0060】
また、コンクリートブロック10が5℃以下の低温になる可能性がある冬季の製造では、インクジェット印刷を施す前工程でフェイスシェル面10dを加熱し、フェイスシェル面10dの温度を5℃以上に上げてからインクジェット印刷を行う。
【0061】
そして、上記したコンクリートブロック10のぬれ張力試験を必要に応じて実施し、ぬれ張力試験に合格することを確認する。
【0062】
このように前工程を施され、インクジェット印刷に適した状態となったコンクリートブロック10は、例えば図2に示すような装置によってインクジェット印刷が施される。
【0063】
この装置においては、ベルトコンベア20上にコンクリートブロック10を順次供給することで、一方のフェイスシェル面10dを上にしてコンクリートブロック10が印刷機に搬入される。すると、当該コンクリートブロック10は、ベルトコンベア20によってインクジェット印刷機21の下にまで運ばれる。コンクリートブロック10がインクジェット印刷機21の下にまでくると、インクジェット印刷機21によって一方のフェイスシェル面10dにUV硬化インクを使って印刷が行われる。そして、更にベルトコンベア20が作動すると、コンクリートブロック10は紫外線照射装置22の下にまで運ばれる。コンクリートブロック10が紫外線照射装置22の下にまでくると、紫外線照射装置22によって、一方のフェイスシェル面10dに紫外線を当ててインクを硬化させる工程が実行される。この紫外線照射によりインクが硬化するため、図2に示すように、印刷を施したコンクリートブロック10をすぐに互いに接して保管したり、段積みして保管したり、運搬したりすることができる。
【0064】
なお、コンクリートブロック10の両面に印刷を行う場合には、図3に示すように、まずコンクリートブロック10のA面を上にしてインクジェット印刷機21に搬入し、A面にUV硬化インクを使って印刷を行うとともに、A面に紫外線を当ててインクを硬化させる。そして、コンクリートブロック10を180度回転させ(このとき、コンクリートブロック10の上縁10bと下縁10cとが逆転するように、短手方向に回転させる)、B面を上にして印刷機に搬入する。その後、B面にUV硬化インクを使って印刷を行うとともに、B面に紫外線を当ててインクを硬化させるようにすればよい。この印刷方法によれば、紫外線照射によりインクが硬化するため、A面の印刷を乾燥させるための時間を設けなくても、連続して両面の印刷を行うことができる。
【0065】
なお、インクジェット印刷機21による印刷に使用される画像は、予めデジタル化されて保存された画像データを用いることが望ましい。すなわち、インクジェット印刷機21にコンピュータ端末などを接続し、このコンピュータ端末が送信した画像データを基に印刷を実行することとすれば、様々に加工した画像を使用して印刷ができるので、画像の反転や分割、色調の補正、画像の加工、画像の合成などを簡単に行うことができる。
【0066】
本実施形態においては、図4に示すように、上下左右が一意に定まった図柄を、A面とB面とに同じように印刷するとする。上記したように、A面とB面とでは上下が逆転するように180度回転されるため、画像の上下左右を揃えるためには、画像の上下左右を反転させた画像を印刷する必要がある。このため、デジタル化した画像データをコンピュータ端末で画像処理をすることで、A面の印刷において使用する画像と、このA面の印刷において使用する画像の上下左右を反転させた画像とを予め用意しておき、当該反転させた画像をB面の印刷に使用する。このように、デジタル化した画像データをコンピュータ端末で画像処理することとすれば、反転させた画像は簡単に作ることができる。
【0067】
この図4に示すような印刷を行えば、コンクリートブロック10のA面とB面とで同じデザインとなるため、コンクリートブロック10の表裏を意識する必要がないので、施工が容易となる。
【0068】
なお、上記においては、A面とB面とに同じように印刷を施すこととしたが、これに限らず、デジタル化した画像データをコンピュータ端末で画像処理すれば、様々な印刷を施すことができる。例えば、図5に示すように、複数のブロックで組積したブロック塀を形成し、この組積下ブロック塀で一枚の絵を形作るようにしてもよい。このとき、塀の裏表で同じ向きの絵とするには、図5(b)及び図5(c)に示すように、各コンクリートブロック10のA面とB面とで異なる画像を印刷することとなる。
【0069】
具体的には、ブロックbを例にすると、図6に示すように、ブロックbのA面には塀の左中段の画像(B面側から見たときのブロックhに印刷される画像)が印刷され、ブロックbのB面には塀の右中段の画像(A面側から見たときのブロックhに印刷される画像)が印刷される。なお、この場合にも、B面を印刷する際には、A面で使用した画像の上下左右を反転させた画像が使用される。すなわち、ブロックbを例にすると、ブロックbのB面に印刷される画像は、ブロックhのA面に印刷される画像の上下左右を反転させた画像である。
【0070】
この他にも、図7に示すように、複数のブロックで形成した組積したブロック塀に印刷を施すに際し、鏡面画像となるようにしてもよい。この場合、各コンクリートブロック10のA面及びB面に印刷される画像は同じ画像を左右反転させたものとなる。
【0071】
具体的には、ブロックbを例にすると、図8に示すように、ブロックbのA面及びB面に印刷される画像は、同じ画像を互いに鏡面反転させたものとなる。言い換えると、B面を印刷する際には、A面で使用した画像の左右を反転させた画像が使用される。
【0072】
なお、上記説明においては、A面及びB面に印刷を行うことについて説明したが、これに限らず、図9に示すような、壁面の角部において露出するコーナー面10eを有するコンクリートブロック10においては、このコーナー面10eに印刷を行うこととしてもよい。すなわち、図10に示すように、コーナー面10eを上にしてコンクリートブロック10を印刷機に搬入し、インクジェット印刷機21によってこのコーナー面10eに印刷を行うとともに、紫外線照射装置22によってこのコーナー面10eに紫外線を当ててインクを硬化させることとしてもよい。また、このコーナー面10eの印刷は、上記したA面及びB面の印刷と組み合わせて、連続的に行うことができる。
【符号の説明】
【0073】
10 コンクリートブロック
10a 窪み
10b 上縁
10c 下縁
10d フェイスシェル面
10e コーナー面
20 ベルトコンベア
21 インクジェット印刷機
22 紫外線照射装置
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリートブロック及びコンクリートブロックの印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築材にインクジェット印刷を施すことで、様々なデザインの建築材を提供することが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、インクジェットプリントにて画像が形成された建築板に係る発明が開示されている。
【0004】
このような建築材へのインクジェット印刷においては、インクの密着性を確保するために、まず建築材に合成樹脂塗料を用いた下塗り塗装を行う。そして、下塗り塗料を乾燥させることによりインク受理層を形成し、このインク受理層に対してインクジェット印刷を行うこととしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−167334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記したようなインクジェット印刷を建築用のコンクリートブロックに適用しようとした場合、コンクリートブロックのフェイスシェルの両面に印刷することが要求される。
【0007】
すなわち、現在販売されているフェイスシェルの化粧を施した建築ブロック(化粧ブロック)のうち、片面のみに化粧を施したものは10〜20%程度に止まっており、圧倒的に両面に化粧したものが多くなっている。さらにコーナー用のブロックは、コーナー部分にも化粧を施す必要がある。
【0008】
このように、複数の面に印刷を行うことが求められるコンクリートブロックにおいては、下塗り塗装とその乾燥にかかる作業工程の増加が無視できないものであり、事業化における大きな障害となっていた。
【0009】
そこで、本発明は、インク受理層を設けることなくインクジェット印刷を施すことができるコンクリートブロック及びコンクリートブロックの印刷方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、以下を特徴とする。
(請求項1)
【0011】
請求項1に記載の発明は、以下の点を特徴とする。
【0012】
すなわち、請求項1に記載のコンクリートブロックの印刷方法は、ゼロスランプのコンクリートを型枠に投入して締め固めた後に即時脱形して製造したコンクリートブロックを使用し、前記コンクリートブロックのフェイスシェル面に直接インクジェット印刷を施したことを特徴とする。
(請求項2)
【0013】
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0014】
すなわち、前記コンクリートブロックは、空隙率が5〜18%の範囲であることを特徴とする。
(請求項3)
【0015】
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1又は2記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0016】
すなわち、前記インクジェット印刷によるインクの塗膜厚を前記コンクリートブロックのフェイスシェル面から50μm以下としたことを特徴とする。
(請求項4)
【0017】
請求項4に記載の発明は、上記した請求項1〜3のいずれかに記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0018】
すなわち、前記コンクリートブロックを加熱し、前記コンクリートブロックのフェイスシェル面の温度を5℃以上に上げてから前記インクジェット印刷を行うことを特徴とする。
(請求項5)
【0019】
請求項5に記載の発明は、上記した請求項1〜4のいずれかに記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0020】
すなわち、前記インクジェット印刷を行う前に前記コンクリートブロックを乾燥させて水分率を4%以下としたことを特徴とする。
(請求項6)
【0021】
請求項6に記載の発明は、上記した請求項1〜5のいずれかに記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0022】
すなわち、前記コンクリートブロックのフェイスシェル面に試薬を滴下し、前記試薬が前記コンクリートブロックに完全に浸透するまでの浸透時間が所定値以下であることを検査する検査工程を含み、前記検査工程によって浸透時間が所定値以下であることが検査されたのちにインクジェット印刷を行うようにしたこと特徴とする。
(請求項7)
【0023】
請求項7に記載の発明は、上記した請求項6記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0024】
すなわち、前記試薬として、JIS K 6768に規定する30.0mN/mのぬれ張力を測定するための試験用混合液を使用し、前記検査工程においては、前記コンクリートブロック及び前記試験用混合液の温度を30〜50℃とした環境において、前記試験用混合液を前記コンクリートブロックの表面に0.025〜0.035ml滴下し、前記試験用混合液が前記コンクリートブロックに完全に浸透するまでの浸透時間が10秒以下であることを測定することを特徴とする。
(請求項8)
【0025】
請求項8に記載の発明は、上記した請求項1〜5のいずれかに記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0026】
すなわち、前記コンクリートブロックは、下記の方法で測定したときの浸透時間が10秒以下であることを特徴とする。
(1)JIS K 6768に規定する30.0mN/mのぬれ張力を測定するための試験用混合液を用意する。
(2)前記コンクリートブロック及び前記試験用混合液の温度を30〜50℃とした環境において、前記試験用混合液を前記コンクリートブロックの表面に0.025〜0.035ml滴下する。
(3)前記試験用混合液が前記コンクリートブロックに完全に浸透するまでの浸透時間を測定する。
(請求項9)
【0027】
請求項9に記載の発明は、上記した請求項1〜8のいずれかに記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0028】
すなわち、前記インクジェット印刷は、前記コンクリートブロックを一方のフェイスシェル面を上にして印刷機に搬入する第1搬入工程と、前記一方のフェイスシェル面にUV硬化インクを使って印刷を行う第1印刷工程と、前記一方のフェイスシェル面に紫外線を当ててインクを硬化させる第1照射工程と、前記コンクリートブロックを180度回転させるブロック反転工程と、前記コンクリートブロックを他方のフェイスシェル面を上にして印刷機に搬入する第2搬入工程と、前記他方のフェイスシェル面にUV硬化インクを使って印刷を行う第2印刷工程と、前記他方のフェイスシェル面に紫外線を当ててインクを硬化させる第2照射工程と、を備えて実行されることを特徴とする。
(請求項10)
【0029】
請求項10に記載の発明は、上記した請求項9記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0030】
すなわち、前記第1印刷工程及び前記第2印刷工程における印刷は、予めデジタル化されて保存された画像データを用いて実行され、前記第2印刷工程において使用する画像は、前記第1印刷工程において使用する画像の上下及び左右の少なくともいずれかを反転させた画像であることを特徴とする。
(請求項11)
【0031】
請求項11に記載の発明は、上記した請求項1〜10のいずれかに記載のコンクリートブロックの印刷方法を使用して印刷を施したコンクリートブロックである。
【発明の効果】
【0032】
本発明は上記の通りであり、ゼロスランプのコンクリートを型枠に投入して締め固めた後に即時脱形して製造したコンクリートブロックを使用し、前記コンクリートブロックのフェイスシェル面に直接インクジェット印刷を施したものである。即時脱形して製造したコンクリートブロックは、表面が凹凸した粗面となっており、また、脱型の際に離型剤を用いることもないため、離型剤による撥水性が発生したり、離型剤の膜ができたりといったこともない。このため、インク受理層を設けることなく、フェイスシェル面に直接インクジェット印刷を施したとしても、十分な耐久性を得ることができる。
【0033】
なお、インク保持力を発揮するには、空隙率が5〜18%の範囲のコンクリートブロックを使用することが望ましい。ここで言う空隙率とは、「空隙率(%)=100−充填率」で求められる値である。また、「充填率」は、「充填率=(ブロックの単位容積質量)÷(コンクリートの理論単位容積質量)×100」で求められる。また、「コンクリートの理論単位容積質量」は、コンクリートの空気量(空隙)をゼロとした単位容積質量のことである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】コンクリートブロックの(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図である。
【図2】コンクリートブロックの印刷工程(前半)を説明する図である。
【図3】コンクリートブロックの印刷工程を説明する図であって、作業ラインを上から見た図である。
【図4】印刷済みコンクリートブロックを(a)A面側から見た透視斜視図、(b)B面側から見た透視斜視図である。
【図5】第1の変形例に係る図であって、(a)コンクリートブロックで壁面を形成した状態を示す図、(b)A面側から見た各コンクリートブロックの構成を示す図、(c)B面側から見た各コンクリートブロックの構成を示す図である。
【図6】第1の変形例に係るコンクリートブロック「b」を示す図であって、(a)A面側から見た図、(b)B面側から見た図、(c)A面側から見た透視斜視図である。
【図7】第2の変形例に係る図であって、(a)A面側から見た各コンクリートブロックの構成を示す図、(b)B面側から見た各コンクリートブロックの構成を示す図である。
【図8】第2の変形例に係るコンクリートブロック「b」を示す図であって、(a)A面側から見た図、(b)B面側から見た図、(c)A面側から見た透視斜視図である。
【図9】コーナーを有するコンクリートブロックの(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図である。
【図10】コンクリートブロックの印刷工程(前半)を説明する図であって、コーナーを有するコンクリートブロックに印刷を施す様子を示す図である。
【図11】ぬれ張力試験の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、ゼロスランプのコンクリートを型枠に投入して締め固めた後に即時脱形して製造したコンクリートブロック(いわゆる「即脱式のコンクリートブロック」)を使用することで、インク受理層を設けることなく、フェイスシェル面に直接インクジェット印刷を施したとしても、十分な耐久性を得ることができることを見出したものである。
【0036】
また、本発明者らは、インク保持力を発揮するには、空隙率が5〜18%の範囲のコンクリートブロックを使用することが望ましいことを見出した。なお、ここで言う空隙率とは、「空隙率(%)=100−充填率」で求められる値である。また、「充填率」は、「充填率=(ブロックの単位容積質量)÷(コンクリートの理論単位容積質量)×100」で求められる。また、「コンクリートの理論単位容積質量」は、コンクリートの空気量(空隙)をゼロとした単位容積質量のことである。
【0037】
すなわち、本発明者は、以下に説明するように、コンクリートブロックにインクジェット印刷を行うに当たり、インク受理層を省略してもインク保持力を発揮する構成を検討した結果、即時脱形して製造したコンクリートブロック、特に、空隙率が5〜18%の範囲のコンクリートブロックを使用することが望ましいことを見出した。
【0038】
ここで、コンクリートブロックとしては、流動性のあるコンクリートを型枠に流し込み、硬化後に脱型してコンクリートブロックを得る「流し込み式」と、ゼロスランプのコンクリートを型枠に投入して締め固めた後に即時脱形してコンクリートブロックを得る「即脱式」とが存在する。発明者は、流し込み式で得たコンクリートブロックと、振動締め固めによる即脱式で得たコンクリートブロックとを用意し、その表面にUV硬化インクを使用してインクジェット印刷を行い、付着性を調べた。UV硬化インクとしては、例えば特開2010−167334号に開示されているような、表面張力が20〜30dyne/cmのものを使用した。なお、印刷前のコンクリートの含水率は4%以下に統一した。また、コンクリートブロックは、空隙率を変えたものを複数用意し、流し込み式のコンクリートブロックでは空隙率を2%から20%までの範囲で変化させた。また、即脱式のコンクリートブロックでも同様に空隙率を2%から20%までの範囲で変化させた。なお、流し込み式のコンクリートブロックでは型枠からの脱型を容易にするため、離型剤を使用した。
【0039】
上記した複数のコンクリートブロックにインクジェット印刷を施した後、インクの付着性を調べるため、各コンクリートブロックに対してガムテープを用いたピーリング試験を行った。ピーリング試験とは、印刷面にガムテープを貼り付け、一方の端を持ち、一気に引きはがして、ガムテープに付着する塗膜の量で付着力を判定する方法である。
【0040】
まず、流し込み式のコンクリートブロックと即脱式のコンクリートブロックでは、空隙率の範囲全体にわたって、流し込み式のコンクリートブロックの付着性の方が劣っていた。特に、空隙率が2〜7%の範囲では、ガムテープのほぼ全面にインクが付着し、付着力が極端に劣る結果となった。空隙率が8〜12%の範囲では、ガムテープの30〜50%くらいの面積にインクが付着した。空隙率が13%以上では、コンクリートの表面が剥離する結果となった。これは、流し込み式のコンクリートブロックの場合、表面が平滑であることと、離型剤を使用するため、コンクリート表面がインクをはじくことによる。
【0041】
一方、即脱式のコンクリートブロックにおいては、空隙率が2〜4%の範囲では、ガムテープの一部(10〜30%程度)にインクが付着した。空隙率が5〜18%の範囲では、ガムテープへのインクの付着は全く見られなかった。空隙率が20%のコンクリートブロックでは、強度不足のためコンクリート表面の一部が剥離した。
【0042】
このように、空隙率が4%以下の場合は、コンクリート表面が平滑になることと、空隙が小さいためにインクを吸い込む力が弱く、充分な付着力が得られない。また、空隙率が18%を超えると、コンクリートそのものの強度が小さくなり、インクを保持することが出来なくなる。
【0043】
以上のことから、インク受理層を設けることなくインクジェット印刷を行い、充分な付着力を得るためには、即脱式のコンクリートブロックを用いることが望ましく、特に、空隙率が5〜18%の即脱式のコンクリートブロックを使用することが望ましいとの結論を得た。
【0044】
なお、インクのコンクリートブロックへの付着性を高めるためには、コンクリートブロックのぬれ張力を高めることも重要である。ここで、ぬれ張力の試験方法としては、JIS K 6768「プラスチック−フィルム及びシート−ぬれ張力試験方法」が存在するが、この試験方法はプラスチックフィルム及びシートの試験方法であるため、そのままコンクリートブロックに応用することはできない。すなわち、JIS K 6768の試験方法では、滴下した試験用混合液の液膜が破れるか否かでぬれ張力を試験しているが、この試験方法をコンクリートブロックにそのまま応用すると、試験用混合液が浸透してしまうために測定結果を得ることができない。
【0045】
そこで、本発明者らは、コンクリートブロックのフェイスシェル面に試薬を滴下し、試薬がコンクリートブロックに完全に浸透するまでの浸透時間が所定値以下であることを検査することによって、コンクリートブロックのぬれ張力を検査することとした。
【0046】
具体的には、JIS K 6768に規定する30.0mN/mのぬれ張力を測定するための試験用混合液(エチレングリコールモノエチルエーテル)を使用し、コンクリートブロック及び試験用混合液の温度を30〜50℃とした環境において、試験用混合液をコンクリートブロックの表面に0.025〜0.035ml滴下し、試験用混合液がコンクリートブロックに完全に浸透するまでの浸透時間が10秒以下であることを測定することとした。そして、この浸透時間が10秒以下であることが検査されたのちにインクジェット印刷を行うようにすることで、コンクリートブロックの品質管理基準として運用可能とした。なお、このぬれ張力試験は、インクジェット印刷を行うすべてのコンクリートブロックに対して行う必要はなく、一部を抽出して検査することとしてもよい。
【0047】
なお、30.0mN/mのぬれ張力を測定するための試験用混合液を使用したのは、UV硬化インクの表面張力よりも高いぬれ張力を試験するための試験用混合液を使用したためである。
【0048】
また、試験用混合液をコンクリートブロックの表面に滴下する前には、試験用混合液の浸透時間の測定精度を高めるために、フェイスシェル面をディスククラインダーを使ってダイヤモンド砥石#60で約2mm研磨した。これは、研磨しない状態で滴下すると、表面の凹凸の凹部を伝って試験用混合液が横に流れてしまい、浸透時間を正確に測定できないためである。
【0049】
また、試験用混合液をコンクリートブロックの表面に滴下する際には、フェイスシェル面の端部付近を避けて(例えば、端縁から40cmの範囲を避けて)3箇所に素早くスポイトで滴下し、その浸透時間をストップウォッチにて測定した。浸透時間の測定は、3箇所すべてに滴下が完了した時点からスタートし、3箇所すべての試薬が完全に浸透した時点の時間を測定した。
【0050】
図11は、コンクリートブロックに対して上記したぬれ張力試験を実行した結果を示す表である。この図11が示すように、コンクリートブロックのぬれ張力は、温度と水分率に対して相関関係があることが分かる。すなわち、コンクリートブロックのぬれ張力は、温度が高いほど高く(温度が高いほど試験用混合液の浸透時間が短い)、水分率が低いほど高くなる(水分率が低いほど試験用混合液の浸透時間が短い)傾向がある。
【0051】
なお、ぬれ張力とインクの付着性との関係を調べるため、JIS K 5600で規格化されたテープテスト法により、インクの付着性を検査した。テープテストを実施するにあたっては、結果をより定量的に評価するために、カッターを用いて碁盤の目状に膜に切れ込みを入れた後にテープテストを実施し(JIS K 5600に規定する「クロスカット法」に準ずる)、剥離数や剥離状態のランク分けを行った。ランク分けについては「良い」「やや悪い」「悪い」の3段階とし、クロスカット法における6段階の分類のうち、「分類0」と「分類1」とに当たる場合を「良い」、「分類2」に当たる場合を「やや悪い」、「分類3」と「分類4」と「分類5」とに当たる場合を「悪い」として評価した。この結果、試験用混合液の浸透時間が10秒以下であればインクの付着性が「良い」という結果が得られた(図11参照)。これにより、ぬれ張力(試験用混合液の浸透時間)とインクの付着性との関係性が実証された。
【0052】
よって、コンクリートブロックが5℃以下の低温になる可能性がある冬季の製造では、インクジェット印刷を施す前工程でフェイスシェル面を加熱し、フェイスシェル面の温度を上げてからインクジェット印刷を行うことが望ましい。これにより、インクジェット印刷の実行時におけるコンクリートブロックのぬれ張力を適切に保つことができる。
【0053】
また、インクジェット印刷を行う前にコンクリートブロックを乾燥させて水分率を4%以下とすることが望ましい。より望ましくは、水分率を3%以下とすることが望ましい。これによっても、インクジェット印刷の実行時におけるコンクリートブロックのぬれ張力を適切に保つことができる。
【0054】
なお、コンクリートブロックの水分率は、JIS A 5406に規定する吸水率試験により計測する。水分率の計測を簡易的に行いたい場合は、JIS A 5406に規定する吸水率試験に代えて、例えばケット科学研究所社製コンクリート・モルタル水分計HI−520にて、材料選択モード「コンクリート」で測定することとしてもよい。なお、HI−520で測定する際の厚さモードはコンクリートブロックの正味肉厚に応じて適宜設定すればよく、例えば正味肉厚30mmのコンクリートブロックの場合には「30mm」とすればよい。HI−520を上記モードで使用した場合、JIS A 5406に規定する吸水率試験による値よりも水分率が1%程度大きく表示されることが分かっているため、水分計HI−520の測定で4.0%未満であれば水分率を4.0%以下とする基準を十分に満足することになる。
【0055】
このように最適なぬれ張力を維持することで、インクジェット印刷によるインクの塗膜厚をごく薄くすることができ、このごく薄い塗膜を確実にコンクリートブロック表面に付着させることができる。具体的には、インクジェット印刷によるインクの塗膜厚をコンクリートブロックのフェイスシェル面から50μm以下とすることができる。
【0056】
以下、本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
【0057】
図1は、本実施形態に係るコンクリートブロック10を示す図であり、空隙率が5〜18%の即脱式のコンクリートブロックである。このコンクリートブロック10は、この図1に示すように、表裏にフェイスシェル面10dを有している。以下の説明においては、当該フェイスシェル面10dのうちの一方の面をA面、他方の面をB面として説明する。
【0058】
このコンクリートブロック10は、図1に示すように、上部に鉄筋を通すための窪み10aを有しており、上下が決まったものとなっている。
【0059】
このコンクリートブロック10にインクジェット印刷を行う際には、印刷の前工程として、コンクリートブロック10を乾燥させて水分率を4%以下とする。
【0060】
また、コンクリートブロック10が5℃以下の低温になる可能性がある冬季の製造では、インクジェット印刷を施す前工程でフェイスシェル面10dを加熱し、フェイスシェル面10dの温度を5℃以上に上げてからインクジェット印刷を行う。
【0061】
そして、上記したコンクリートブロック10のぬれ張力試験を必要に応じて実施し、ぬれ張力試験に合格することを確認する。
【0062】
このように前工程を施され、インクジェット印刷に適した状態となったコンクリートブロック10は、例えば図2に示すような装置によってインクジェット印刷が施される。
【0063】
この装置においては、ベルトコンベア20上にコンクリートブロック10を順次供給することで、一方のフェイスシェル面10dを上にしてコンクリートブロック10が印刷機に搬入される。すると、当該コンクリートブロック10は、ベルトコンベア20によってインクジェット印刷機21の下にまで運ばれる。コンクリートブロック10がインクジェット印刷機21の下にまでくると、インクジェット印刷機21によって一方のフェイスシェル面10dにUV硬化インクを使って印刷が行われる。そして、更にベルトコンベア20が作動すると、コンクリートブロック10は紫外線照射装置22の下にまで運ばれる。コンクリートブロック10が紫外線照射装置22の下にまでくると、紫外線照射装置22によって、一方のフェイスシェル面10dに紫外線を当ててインクを硬化させる工程が実行される。この紫外線照射によりインクが硬化するため、図2に示すように、印刷を施したコンクリートブロック10をすぐに互いに接して保管したり、段積みして保管したり、運搬したりすることができる。
【0064】
なお、コンクリートブロック10の両面に印刷を行う場合には、図3に示すように、まずコンクリートブロック10のA面を上にしてインクジェット印刷機21に搬入し、A面にUV硬化インクを使って印刷を行うとともに、A面に紫外線を当ててインクを硬化させる。そして、コンクリートブロック10を180度回転させ(このとき、コンクリートブロック10の上縁10bと下縁10cとが逆転するように、短手方向に回転させる)、B面を上にして印刷機に搬入する。その後、B面にUV硬化インクを使って印刷を行うとともに、B面に紫外線を当ててインクを硬化させるようにすればよい。この印刷方法によれば、紫外線照射によりインクが硬化するため、A面の印刷を乾燥させるための時間を設けなくても、連続して両面の印刷を行うことができる。
【0065】
なお、インクジェット印刷機21による印刷に使用される画像は、予めデジタル化されて保存された画像データを用いることが望ましい。すなわち、インクジェット印刷機21にコンピュータ端末などを接続し、このコンピュータ端末が送信した画像データを基に印刷を実行することとすれば、様々に加工した画像を使用して印刷ができるので、画像の反転や分割、色調の補正、画像の加工、画像の合成などを簡単に行うことができる。
【0066】
本実施形態においては、図4に示すように、上下左右が一意に定まった図柄を、A面とB面とに同じように印刷するとする。上記したように、A面とB面とでは上下が逆転するように180度回転されるため、画像の上下左右を揃えるためには、画像の上下左右を反転させた画像を印刷する必要がある。このため、デジタル化した画像データをコンピュータ端末で画像処理をすることで、A面の印刷において使用する画像と、このA面の印刷において使用する画像の上下左右を反転させた画像とを予め用意しておき、当該反転させた画像をB面の印刷に使用する。このように、デジタル化した画像データをコンピュータ端末で画像処理することとすれば、反転させた画像は簡単に作ることができる。
【0067】
この図4に示すような印刷を行えば、コンクリートブロック10のA面とB面とで同じデザインとなるため、コンクリートブロック10の表裏を意識する必要がないので、施工が容易となる。
【0068】
なお、上記においては、A面とB面とに同じように印刷を施すこととしたが、これに限らず、デジタル化した画像データをコンピュータ端末で画像処理すれば、様々な印刷を施すことができる。例えば、図5に示すように、複数のブロックで組積したブロック塀を形成し、この組積下ブロック塀で一枚の絵を形作るようにしてもよい。このとき、塀の裏表で同じ向きの絵とするには、図5(b)及び図5(c)に示すように、各コンクリートブロック10のA面とB面とで異なる画像を印刷することとなる。
【0069】
具体的には、ブロックbを例にすると、図6に示すように、ブロックbのA面には塀の左中段の画像(B面側から見たときのブロックhに印刷される画像)が印刷され、ブロックbのB面には塀の右中段の画像(A面側から見たときのブロックhに印刷される画像)が印刷される。なお、この場合にも、B面を印刷する際には、A面で使用した画像の上下左右を反転させた画像が使用される。すなわち、ブロックbを例にすると、ブロックbのB面に印刷される画像は、ブロックhのA面に印刷される画像の上下左右を反転させた画像である。
【0070】
この他にも、図7に示すように、複数のブロックで形成した組積したブロック塀に印刷を施すに際し、鏡面画像となるようにしてもよい。この場合、各コンクリートブロック10のA面及びB面に印刷される画像は同じ画像を左右反転させたものとなる。
【0071】
具体的には、ブロックbを例にすると、図8に示すように、ブロックbのA面及びB面に印刷される画像は、同じ画像を互いに鏡面反転させたものとなる。言い換えると、B面を印刷する際には、A面で使用した画像の左右を反転させた画像が使用される。
【0072】
なお、上記説明においては、A面及びB面に印刷を行うことについて説明したが、これに限らず、図9に示すような、壁面の角部において露出するコーナー面10eを有するコンクリートブロック10においては、このコーナー面10eに印刷を行うこととしてもよい。すなわち、図10に示すように、コーナー面10eを上にしてコンクリートブロック10を印刷機に搬入し、インクジェット印刷機21によってこのコーナー面10eに印刷を行うとともに、紫外線照射装置22によってこのコーナー面10eに紫外線を当ててインクを硬化させることとしてもよい。また、このコーナー面10eの印刷は、上記したA面及びB面の印刷と組み合わせて、連続的に行うことができる。
【符号の説明】
【0073】
10 コンクリートブロック
10a 窪み
10b 上縁
10c 下縁
10d フェイスシェル面
10e コーナー面
20 ベルトコンベア
21 インクジェット印刷機
22 紫外線照射装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼロスランプのコンクリートを型枠に投入して締め固めた後に即時脱形して製造したコンクリートブロックを使用し、
前記コンクリートブロックのフェイスシェル面に直接インクジェット印刷を施したことを特徴とする、コンクリートブロックの印刷方法。
【請求項2】
前記コンクリートブロックは、空隙率が5〜18%の範囲であることを特徴とする、請求項1記載のコンクリートブロックの印刷方法。
【請求項3】
前記インクジェット印刷によるインクの塗膜厚を前記コンクリートブロックのフェイスシェル面から50μm以下としたことを特徴とする、請求項1又は2記載のコンクリートブロックの印刷方法。
【請求項4】
前記コンクリートブロックを加熱し、前記コンクリートブロックのフェイスシェル面の温度を5℃以上に上げてから前記インクジェット印刷を行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のコンクリートブロックの印刷方法。
【請求項5】
前記インクジェット印刷を行う前に前記コンクリートブロックを乾燥させて水分率を4%以下としたことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のコンクリートブロックの印刷方法。
【請求項6】
前記コンクリートブロックのフェイスシェル面に試薬を滴下し、前記試薬が前記コンクリートブロックに完全に浸透するまでの浸透時間が所定値以下であることを検査する検査工程を含み、
前記検査工程によって浸透時間が所定値以下であることが検査されたのちにインクジェット印刷を行うようにしたこと特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のコンクリートブロックの印刷方法。
【請求項7】
前記試薬として、JIS K 6768に規定する30.0mN/mのぬれ張力を測定するための試験用混合液を使用し、
前記検査工程においては、前記コンクリートブロック及び前記試験用混合液の温度を30〜50℃とした環境において、前記試験用混合液を前記コンクリートブロックの表面に0.025〜0.035ml滴下し、前記試験用混合液が前記コンクリートブロックに完全に浸透するまでの浸透時間が10秒以下であることを測定することを特徴とする、請求項6記載のコンクリートブロックの印刷方法。
【請求項8】
前記コンクリートブロックは、下記の方法で測定したときの浸透時間が10秒以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のコンクリートブロックの印刷方法。
(1)JIS K 6768に規定する30.0mN/mのぬれ張力を測定するための試験用混合液を用意する。
(2)前記コンクリートブロック及び前記試験用混合液の温度を30〜50℃とした環境において、前記試験用混合液を前記コンクリートブロックの表面に0.025〜0.035ml滴下する。
(3)前記試験用混合液が前記コンクリートブロックに完全に浸透するまでの浸透時間を測定する。
【請求項9】
前記インクジェット印刷は、
前記コンクリートブロックを一方のフェイスシェル面を上にして印刷機に搬入する第1搬入工程と、
前記一方のフェイスシェル面にUV硬化インクを使って印刷を行う第1印刷工程と、
前記一方のフェイスシェル面に紫外線を当ててインクを硬化させる第1照射工程と、
前記コンクリートブロックを180度回転させるブロック反転工程と、
前記コンクリートブロックを他方のフェイスシェル面を上にして印刷機に搬入する第2搬入工程と、
前記他方のフェイスシェル面にUV硬化インクを使って印刷を行う第2印刷工程と、
前記他方のフェイスシェル面に紫外線を当ててインクを硬化させる第2照射工程と、
を備えて実行されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載のコンクリートブロックの印刷方法。
【請求項10】
前記第1印刷工程及び前記第2印刷工程における印刷は、予めデジタル化されて保存された画像データを用いて実行され、
前記第2印刷工程において使用する画像は、前記第1印刷工程において使用する画像の上下及び左右の少なくともいずれかを反転させた画像であることを特徴とする、請求項9記載のコンクリートブロックの印刷方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のコンクリートブロックの印刷方法を使用して印刷を施したコンクリートブロック。
【請求項1】
ゼロスランプのコンクリートを型枠に投入して締め固めた後に即時脱形して製造したコンクリートブロックを使用し、
前記コンクリートブロックのフェイスシェル面に直接インクジェット印刷を施したことを特徴とする、コンクリートブロックの印刷方法。
【請求項2】
前記コンクリートブロックは、空隙率が5〜18%の範囲であることを特徴とする、請求項1記載のコンクリートブロックの印刷方法。
【請求項3】
前記インクジェット印刷によるインクの塗膜厚を前記コンクリートブロックのフェイスシェル面から50μm以下としたことを特徴とする、請求項1又は2記載のコンクリートブロックの印刷方法。
【請求項4】
前記コンクリートブロックを加熱し、前記コンクリートブロックのフェイスシェル面の温度を5℃以上に上げてから前記インクジェット印刷を行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のコンクリートブロックの印刷方法。
【請求項5】
前記インクジェット印刷を行う前に前記コンクリートブロックを乾燥させて水分率を4%以下としたことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のコンクリートブロックの印刷方法。
【請求項6】
前記コンクリートブロックのフェイスシェル面に試薬を滴下し、前記試薬が前記コンクリートブロックに完全に浸透するまでの浸透時間が所定値以下であることを検査する検査工程を含み、
前記検査工程によって浸透時間が所定値以下であることが検査されたのちにインクジェット印刷を行うようにしたこと特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のコンクリートブロックの印刷方法。
【請求項7】
前記試薬として、JIS K 6768に規定する30.0mN/mのぬれ張力を測定するための試験用混合液を使用し、
前記検査工程においては、前記コンクリートブロック及び前記試験用混合液の温度を30〜50℃とした環境において、前記試験用混合液を前記コンクリートブロックの表面に0.025〜0.035ml滴下し、前記試験用混合液が前記コンクリートブロックに完全に浸透するまでの浸透時間が10秒以下であることを測定することを特徴とする、請求項6記載のコンクリートブロックの印刷方法。
【請求項8】
前記コンクリートブロックは、下記の方法で測定したときの浸透時間が10秒以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のコンクリートブロックの印刷方法。
(1)JIS K 6768に規定する30.0mN/mのぬれ張力を測定するための試験用混合液を用意する。
(2)前記コンクリートブロック及び前記試験用混合液の温度を30〜50℃とした環境において、前記試験用混合液を前記コンクリートブロックの表面に0.025〜0.035ml滴下する。
(3)前記試験用混合液が前記コンクリートブロックに完全に浸透するまでの浸透時間を測定する。
【請求項9】
前記インクジェット印刷は、
前記コンクリートブロックを一方のフェイスシェル面を上にして印刷機に搬入する第1搬入工程と、
前記一方のフェイスシェル面にUV硬化インクを使って印刷を行う第1印刷工程と、
前記一方のフェイスシェル面に紫外線を当ててインクを硬化させる第1照射工程と、
前記コンクリートブロックを180度回転させるブロック反転工程と、
前記コンクリートブロックを他方のフェイスシェル面を上にして印刷機に搬入する第2搬入工程と、
前記他方のフェイスシェル面にUV硬化インクを使って印刷を行う第2印刷工程と、
前記他方のフェイスシェル面に紫外線を当ててインクを硬化させる第2照射工程と、
を備えて実行されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載のコンクリートブロックの印刷方法。
【請求項10】
前記第1印刷工程及び前記第2印刷工程における印刷は、予めデジタル化されて保存された画像データを用いて実行され、
前記第2印刷工程において使用する画像は、前記第1印刷工程において使用する画像の上下及び左右の少なくともいずれかを反転させた画像であることを特徴とする、請求項9記載のコンクリートブロックの印刷方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のコンクリートブロックの印刷方法を使用して印刷を施したコンクリートブロック。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
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【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−196607(P2012−196607A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61111(P2011−61111)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(594033260)エスビック株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(594033260)エスビック株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
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