説明

コンクリート体の埋設物検知システム及び埋設物検知方法

【課題】コンクリート体のインピーダンスの変化の大小に関わらず、高い精度で埋設物を検知することができる埋設物検知システム及び埋設物検知方法を提供すること。
【解決手段】埋設物検知システム10は、コンクリート体1の表面に接触するように配置された第1電極群23と、コンクリート体1の表面に接触するように配置された電極群であって第1電極群23に対して絶縁されると共に並設された第2電極群24と、第1電極群23と第2電極群24の相互間の主インピーダンスを測定し、第1電極群23の電極の相互間の第1副インピーダンスを測定するか、あるいは第2電極群24の電極の相互間の第2副インピーダンスを測定する測定手段と、主インピーダンスと第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスのとの差分に基づいて埋設物2を検知する検知手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリート体の埋設物を検知するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な目的で埋設物検知(あるいは非破壊検査)が行われている。例えば、建築構造物の壁や床を構成するコンクリート体に埋設された排水管、電線、又は鉄筋等の存在を調べるための埋設物検知がある。このような埋設物検知を行うための一つの原理として、静電容量方式が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電極支持体に支持された第1電極体と第2電極体、及び当該第1電極体と当該第2電極体に接続されたものであって、当該第1電極体と当該第2電極体の間のキャパシタンスを計測する計測器を備えて構成された埋設物検知システムが開示されている。この埋設物検知システムを用いた検査方法では、第1電極体と第2電極体を建築構造物の壁の表面上で移動させながら、第1電極体と第2電極体のどちらか一方に電圧を印加して、当該第1電極体と当該第2電極体との間に電気力線を生じさせ、計測器によって当該壁のキャパシタンスを計測する。この方法によれば、各測定位置のキャパシタンスの変化に基づいて排水管の有無を検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-218888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の埋設物検知システムでは、特に壁のインピーダンスの変化が非常に大きい場合に、壁の内部の排水管の有無を検知することが困難であった。すなわち、排水管のインピーダンスZpipe、及び壁のインピーダンスZconとすると、全体のインピーダンスZは、以下の式(1)に基づいて表わされる。
【0006】
【数1】

【0007】
この式(1)から判るように、壁のインピーダンスZconの変化が非常に大きい場合に、排水管のインピーダンスZpipeが全体のインピーダンスZに与える影響は少なく、壁の内部に排水管が存在する場合のインピーダンスZと排水管が存在しない場合のインピーダンスZとの差異が小さくなるため、排水管を検知することが困難であった。また、この埋設物検知システムは、壁の内部に存在する排水管に加えて、壁の表面付近に石や空洞等の異物が存在する場合に、排水管及び異物を含めたインピーダンスZpipeを計測するため、排水管のインピーダンスZpipeのみを検知することが困難であった。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、測定対象となるコンクリート体のインピーダンスの影響を排除することにより、コンクリート体のインピーダンスの変化の大小に関わらず、高い精度で埋設物を検知することができる、コンクリート体の埋設物検知システム及び埋設物検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1に記載のコンクリート体の埋設物検知システムは、コンクリート体における埋設物を検知するための装置であって、前記コンクリート体の表面に接触するように配置された第1電極と、前記コンクリート体の表面に接触するように配置された複数の第2電極を含んで構成される第2電極群であって、前記第1電極に対して絶縁されると共に、前記第1電極に対して並設された第2電極群と、前記第1電極と前記第2電極群の少なくとも一部の第2電極との相互間に前記コンクリート体を介して電流を流すことにより主インピーダンスを測定し、かつ、前記第2電極群の複数の第2電極の少なくとも一部の相互間に前記コンクリート体を介して電流を流すことにより副インピーダンスを測定する測定手段と、前記測定手段にて測定された前記主インピーダンスと前記副インピーダンスとの差分に基づいて、前記コンクリート体における埋設物を検知する検知手段とを備える。
【0010】
請求項2に記載のコンクリート体の埋設物検知システムは、コンクリート体における埋設物を検知するための装置であって、前記コンクリート体の表面に接触するように配置された複数の第1電極を含んで構成される第1電極群と、前記コンクリート体の表面に接触するように配置された複数の第2電極を含んで構成される第2電極群であって、前記第1電極群に対して絶縁されると共に、前記第1電極群に対して並設された第2電極群と、前記第1電極群の少なくとも一部の第1電極と前記第2電極群の少なくとも一部の第2電極との相互間に前記コンクリート体を介して電流を流すことにより主インピーダンスを測定し、かつ、前記第1電極群の複数の第1電極の少なくとも一部の相互間に前記コンクリート体を介して電流を流すことにより第1副インピーダンスを測定するか、あるいは前記第2電極群の複数の第2電極の少なくとも一部の相互間に前記コンクリート体を介して電流を流すことにより第2副インピーダンスを測定する測定手段と、前記測定手段にて測定された前記主インピーダンスと、前記測定手段にて測定された前記第1副インピーダンス又は前記第2副インピーダンスの少なくとも一方との差分に基づいて、前記コンクリート体における埋設物を検知する検知手段とを備える。
【0011】
また、請求項3に記載のコンクリート体の埋設物検知システムは、請求項2に記載のコンクリート体の埋設物検知システムにおいて、前記第1電極群の複数の第1電極と、前記第2電極群の複数の第2電極の各々は、相互に並設された一対の大電極と、前記一対の大電極の相互間に配置されたものであって、当該一対の大電極に対して絶縁されると共に、当該一対の大電極の並設方向に直交する方向に沿って並設された複数の小電極とを備え、前記測定手段は、前記第1電極における前記一対の大電極及び前記複数の小電極と、前記第2電極における前記一対の大電極び前記複数の小電極と、の相互間に電流を流すことにより前記主インピーダンスを測定し、前記第1電極における前記複数の小電極の相互間に電流を流すことにより前記第1副インピーダンスを測定し、あるいは、前記第2電極における前記複数の小電極の相互間に電流を流すことにより前記第2副インピーダンスを測定する。
【0012】
また、請求項4に記載のコンクリート体の埋設物検知システムは、請求項2又は3に記載のコンクリート体の埋設物検知システムにおいて、前記第1電極群と前記第2電極群を、前記コンクリート体の表面における第1方向に沿って並設すると共に、当該第1方向に直交する第2方向に沿って並設し、前記測定手段は、前記第1方向に沿って並設された前記第1電極群と前記第2電極群とを用いて、前記主インピーダンスと、前記第1副インピーダンス又は前記第2副インピーダンスの少なくとも一方を測定し、かつ、前記第2方向に沿って並設された前記第1電極群と前記第2電極群とを用いて、前記主インピーダンスと、前記第1副インピーダンス又は前記第2副インピーダンスの少なくとも一方を測定し、前記検知手段は、前記第1方向に沿って並設された前記第1電極群と前記第2電極群とを用いて測定された前記主インピーダンスと、前記第1副インピーダンス又は前記第2副インピーダンスの少なくとも一方に基づいて、前記第2方向に沿って埋設された前記埋設物を検知し、かつ、前記第2方向に沿って並設された前記第1電極群と前記第2電極群とを用いて測定された前記主インピーダンスと、前記第1副インピーダンス又は前記第2副インピーダンスの少なくとも一方に基づいて、前記第1方向に沿って埋設された前記埋設物を検知する。
【0013】
また、請求項5に記載のコンクリート体の埋設物検知システムは、請求項2から4のいずれか一項に記載のコンクリート体の埋設物検知システムにおいて、前記測定手段は、前記第1電極群の複数の第1電極と前記第2電極群の複数の第2電極の相互間の組み合わせを代えることにより、前記主インピーダンスを複数測定し、前記第1電極群の複数の第1電極の相互間の組み合わせを代えることにより、前記第1副インピーダンスを複数測定し、あるいは、前記第2電極群の複数の第2電極の相互間の組み合わせを代えることにより、前記第2副インピーダンスを複数測定し、前記検知手段は、前記測定手段にて測定された、前記複数の主インピーダンス、前記複数の第1副インピーダンス、又は前記複数の第2副インピーダンスの中から、所定基準に基づいて、前記埋設物の検知に用いる前記主インピーダンス、前記第1副インピーダンス、又は前記第2副インピーダンスを選択する。
【0014】
また、請求項6に記載のコンクリート体の埋設物検知システムは、請求項5に記載のコンクリート体の埋設物検知システムにおいて、前記測定手段は、前記第1電極群の複数の第1電極と前記第2電極群の複数の第2電極の相互間の全ての組み合わせにおいて、前記主インピーダンスを複数測定し、前記第1電極群の複数の第1電極の相互間の全ての組み合わせにおいて、前記第1副インピーダンスを複数測定し、あるいは、前記第2電極群の複数の第2電極の相互間の全ての組み合わせにおいて、前記第2副インピーダンスを複数測定し、前記検知手段は、前記測定手段にて測定された、前記複数の主インピーダンス、前記複数の第1副インピーダンス、又は前記複数の第2副インピーダンスの中から、所定基準に基づいて、前記埋設物の検知に用いる前記主インピーダンス、前記第1副インピーダンス、又は前記第2副インピーダンスを選択する。
【0015】
また、請求項7に記載のコンクリート体の埋設物検知方法は、コンクリート体における埋設物を検知するための方法であって、第1電極を前記コンクリート体の表面に接触するように配置する第1配置工程と、第2電極群を構成する複数の第2電極を前記コンクリート体の表面に接触するように配置する工程であって、前記第2電極群を、前記第1電極に対して絶縁すると共に、前記第1電極に対して並設する第2配置工程と、前記第1電極と前記第2電極群の少なくとも一部の第2電極との相互間に前記コンクリート体を介して電流を流すことにより主インピーダンスを測定し、かつ、前記第2電極群の複数の第2電極の少なくとも一部の相互間に前記コンクリート体を介して電流を流すことにより副インピーダンスを測定する測定工程と、前記測定工程において測定された前記主インピーダンスと前記副インピーダンスとの差分に基づいて、前記コンクリート体における埋設物を検知する検知工程とを含む。
【0016】
また、請求項8に記載のコンクリート体の埋設物検知方法は、請求項7に記載のコンクリート体の埋設物検知方法であって、前記第1配置工程及び前記第2配置工程の前において、前記コンクリート体に導電性溶液を浸透させる浸透工程を含む。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の埋設物検知システム及び請求項7に記載の埋設物検知方法によれば、主インピーダンスと副インピーダンスとの差分に基づいて埋設物を検知することにより、測定対象となるコンクリート体のインピーダンスの影響を排除することができ、コンクリート体のインピーダンスの変化が異物等の影響により非常に大きい場合であっても、高い精度で埋設物を検知することができる。
【0018】
請求項2に記載の埋設物検知システムによれば、主インピーダンスと、第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスの少なくとも一方との差分に基づいて埋設物を検知することにより、測定対象となるコンクリート体のインピーダンスの影響を排除することができ、コンクリート体のインピーダンスの変化が異物等の影響により非常に大きい場合であっても、高い精度で埋設物を検知することができる。
【0019】
また、請求項3に記載の埋設物検知システムによれば、第1電極群や第2電極群を、大きさの異なる複数の第1電極や複数の第2電極から構成することで、例えば、コンクリート体において異物等が存在し得る範囲が、広い範囲である場合には大電極を使用し、狭い範囲である場合には小電極を使用する等、状況に合致した大きさの電極を用いることができ、一層高い精度で埋設物を検知することができる。
【0020】
また、請求項4に記載の埋設物検知システムによれば、第1電極群と前第2電極群を、第1方向と第2方向にそれぞれ沿うように並設したので、複数の方向に沿った測定を同時に行うことができ、高い精度で埋設物検知を広い範囲で短時間で行うことが可能となる。
【0021】
また、請求項5に記載の埋設物検知システムによれば、第1電極群の複数の第1電極と第2電極群の複数の第2電極の相互間の組み合わせを代えることにより測定を行うので、例えば、コンクリート体において異物等が存在し得る範囲が不明な場合であっても、様々な組み合わせの中から最適な測定結果を選択することができるので、高い精度で埋設物を検知することができる。
【0022】
また、請求項6に記載の埋設物検知システムによれば、第1電極群の複数の第1電極と第2電極群の複数の第2電極の相互間の全ての組み合わせにより測定を行うので、例えば、コンクリート体において異物等が存在し得る範囲が不明な場合であっても、全ての組み合わせの中から最適な測定結果を選択することができるので、最も高い精度で埋設物を検知することができる。
【0023】
また、請求項8に記載の埋設物検知方法によれば、コンクリート体に導電性溶液を浸透させることにより、コンクリート体のインピーダンス(誘電率、導電率)を高めることができ、異物としてのCD管等の内部に含まれる空気のインピーダンス(誘電率、導電率)との差異を一層明確化できるので、一層高い精度で埋設物を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1に係る埋設物検知システムを測定対象と共に示す模式図である。
【図2】図1のセンサの分解斜視図である。
【図3】図1のセンサの底面図である。
【図4】データロガーの構成を機能概念的に示すブロック図である。
【図5】主インピーダンスの測定方法を概念的に示す図であり、(a)はセンサの底面図、(b)は(a)の第1電極群及び第2電極群をコンクリート体と共に示すA−A矢視断面図である。
【図6】第2副インピーダンスの測定方法を概念的に示す図であり、(a)はセンサの底面図、(b)は(a)の第1電極群及び第2電極群をコンクリート体と共に示すA−A矢視断面図である。
【図7】補正係数が静電容量に与える影響を示すグラフである。
【図8】インピーダンスと第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスとの差分を求める意義を概念的に示した図であり、(a)は第1電極群及び第2電極群をコンクリート体と共に示す縦断面図、(b)は主インピーダンス、第1副インピーダンス、及び第2副インピーダンスを概念的に示した図である。
【図9】実験に使用したコンクリート体を示す図であり、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。
【図10】(a)は実験に使用した第1電極群と第2電極群の平面図、(b)は第1電極群と第2電極群の組み合わせを示す図である。
【図11】コンクリート体の測定結果を示すグラフである。
【図12】コンクリート体の測定結果を示すグラフである。
【図13】CD管入りコンクリート体の測定結果を示すグラフである。
【図14】3種類のコンクリート体の測定結果を示すグラフである。
【図15】(a)は本実施の形態2に係るセンサの底面図、(b)は(a)の第1電極群と第2電極群をコンクリート体と共に示すA−A矢視断断面図である。
【図16】(a)はセンサの底面図、(b)は(a)の第1電極群と第2電極群をコンクリート体と共に示すA−A矢視断断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照して、この発明の本実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕各実施の形態に共通の基本的概念を説明した後、〔II〕各実施の形態の具体的内容について説明し、〔III〕最後に、各実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0026】
〔I〕各実施の形態に共通の基本的概念
まず、各実施の形態に共通の基本的概念について説明する。各実施の形態に係るコンクリート体の埋設物検知システム及び埋設物検知方法は、コンクリート体の埋設物を検知するものである。
【0027】
コンクリート体の設置目的や構造は任意であり、例えば、建築構造物や土木構造物の壁、床、柱、又は天井を構成するコンクリート体を含む。埋設物の設置目的や構造も任意であり、コンクリート体と異なるインピーダンスを持ち得る全ての材質及び形状の埋設物を含み、例えば、金属配管、塩化ビニール製配管、合成樹脂製可とう電線管(CD管)を含む。
【0028】
各実施の形態に係るコンクリート体の埋設物検知システム及び埋設物検知方法の特徴の一つは、概略的に、コンクリート体の表面に第1電極群と第2電極群を絶縁状に並設し、第1電極群と第2電極群の相互間にコンクリート体を介して電流を流すことにより主インピーダンスを測定し、かつ、第1電極群にコンクリート体を介して電流を流すことにより第1副インピーダンスを測定するか、あるいは、第2電極群にコンクリート体を介して電流を流すことにより第2副インピーダンスを測定し、主インピーダンスと、第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスとの差分に基づいて、コンクリート体の埋設物を検知する点にある。このように、主インピーダンスから第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスを差し引くことで、測定対象となるコンクリート体のインピーダンスの影響を排除することができ、コンクリート体のインピーダンスの変化が異物等の影響により非常に大きい場合であっても、高い精度で埋設物を検知することができる。
【0029】
〔II〕各実施の形態の具体的内容
次に、コンクリート体の埋設物検知システム及び埋設物検知方法の各実施の形態の具体的内容について説明する。
【0030】
〔実施の形態1〕
まず、実施の形態1について説明する。この実施の形態1は、一対の第1電極群と第2電極群を並設した形態である。最初に、実施の形態1に係る埋設物検知システムの構成について説明した後、埋設物検知方法について説明する。
【0031】
(構成)
図1は、実施の形態1に係る埋設物検知システムを測定対象と共に示す模式図である。測定対象となるコンクリート体1には埋設物2(図1には配管として示す)と異物3(図1には石として示す)が埋設されており、このコンクリート体1の近傍に埋設物検知システム10が配置されている。この埋設物検知システム10は、センサ20、発振器30、アンプ40、及びデータロガー50を備え、これらを図示の如く電線60にて電気的に接続して構成されている。
【0032】
(構成−センサ)
図2は、図1のセンサ20の分解斜視図である。このセンサ20は、支持体21、固定板22、一対の第1電極群23と第2電極群24、及び補助電極25を備えて構成されている。
【0033】
支持体21は、センサ20の各部を支持する支持手段であり、例えば中空円筒状に形成されている。この支持体21の底面に固定板22を介して一対の第1電極群23と第2電極群24が固定されており、これら第1電極群23と第2電極群24から引き出された電線60が、支持体21の内部又は外部を通ってセンサ20の外部に引き出されている。
【0034】
固定板22は、一対の第1電極群23と第2電極群24を固定するための固定ベースであり、例えば方形板状体として形成されている。この固定板22の一方の側面は支持体21に溶接等により固定されており、他方の側面には一対の第1電極群23と第2電極群24が固定されている。この固定板22の材質は任意であるが、第1電極群23と第2電極群24を相互に絶縁するために絶縁材料であることが望ましく、例えば、ガラス材や樹脂材等が用いられる。
【0035】
図3は、図1のセンサ20の底面図である。第1電極群23は、コンクリート体1の表面に配置された状態で、このコンクリート体1に電流を流すことにより、このコンクリート体1のインピーダンスを測定するための電極手段であり、複数の第1電極を含んで構成されている。複数の第1電極とは、具体的には、一対の大電極23a、23bと、複数(ここでは5枚)の小電極23c〜23gである。一対の大電極23a、23bは、相互にほぼ同じ面積の方形板状電極であり、相互に並設されている(図3におけるX方向に沿って並設されている)。また、複数の小電極23c〜23gは、大電極より小さな面積の方形板状電極であり、一対の大電極23a、23bの並設方向に直交する方向(図3におけるY方向)に沿って並設されている。以下では、これら大電極23a、23bや小電極23c〜23gを、特に相互に区別する必要がない場合には「第1電極23a〜23g」と称する。これら第1電極23a〜23gは、相互に絶縁されている。この絶縁構造は任意であり、例えば、第1電極23a〜23gを単に間隔を隔てて配置してもよく、あるいは第1電極23a〜23gの相互間に絶縁部材を配置してもよい。第1電極23a〜23gの材質は任意であるが、導電性の高いものが望ましく、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス、パラジウム、プラチナ等の金属材料等を採用することができる。
【0036】
第2電極群24は、コンクリート体1の表面に配置された状態で、このコンクリート体1に電流を流すことにより、このコンクリート体1のインピーダンスを測定するための電極手段であり、複数の第2電極を含んで構成されている。複数の第2電極とは、具体的には、一対の大電極24a、24bと、複数の小電極24c〜24gである。大電極24a、24bは大電極23a、23b、小電極24c〜24gは小電極23c〜23gと、それぞれ同様に構成することができるので、その詳細な説明は省略する。以下では、大電極24a、24bや小電極24c〜24gを、特に相互に区別する必要がない場合には「第2電極24a〜23g」と称する。さらに、第1電極23a〜23gと第2電極24a〜23gを、特に相互に区別する必要がない場合には単に「電極23a〜23g、24a〜23g」と称する。
【0037】
ここで、第1電極群23と第2電極群24は、コンクリート体1の表面に接触するように、相互に並設される。すなわち、これら第1電極群23と第2電極群24は、方形板状体である固定板22の一方の側面(支持体21と反対側の側面)において非重合状に配置されることで、相互に並設されて測定平面を構成し、この測定平面をコンクリート体1の表面に沿って配置することで、第1電極群23と第2電極群24をコンクリート体1の表面に接触させることができる。なお、コンクリート体1の表面が非平面状である場合には、当該表面に応じて測定平面を非平面状としてもよく、例えばコンクリート体1が円柱状である場合には、このコンクリート体1の表面に沿って固定板22を円弧状に形成し、この固定板22の側面に第1電極群23と第2電極群24を配置してもよい。また、第1電極群23と第2電極群24は、相互に絶縁されている。この絶縁構造は任意であり、例えば、第1電極群23と第2電極群24を単に間隔を隔てて配置してもよく、あるいは第1電極群23と第2電極群24の相互間に絶縁部材を配置してもよい。
【0038】
図2において、補助電極25は、一対の第1電極群23と第2電極群24の相互間における空気中のインピーダンスを低減するためのインピーダンス低減手段である。この補助電極25は、例えば方形板状体として形成されており、固定板22と支持体21との間に挟持され、当該固定板22及び当該支持体21に対して溶接等により接続されている。補助電極25の大きさは任意であるが、インピーダンスを効果的に低減するためには第1電極群23と第2電極群24を平面的に完全に覆うことができる面積であることが好ましく、第1電極群23と第2電極群24を合わせた面積又はそれ以上の面積の方形板状体として形成される。補助電極25の材質は任意であるが、インピーダンスの低いものが望ましく、例えばアルミニウム、銅、ニッケル、パラジウム、プラチナ等の金属材料等を採用することができる。
【0039】
(構成−発振器)
図1に戻り、発振器30は、所定周波数(例えば1KHzから数MHz)の信号を出力する基準信号源である。この発振器30は、コンクリート体1の周辺に配置されており、電線を介してアンプ40に接続されている。また、発振器30の具体的構成は任意であり、例えば、この発振器30は、周波数が段階的に切り替えられる図示しない切替部を備える。
【0040】
(構成−アンプ)
アンプ40は、発振器30から出力された信号に基づいて、所定周波数の所望の電圧を電線を介して第1電極群23及び第2電極群24に印加するものである。この電圧印加の具体的内容については後述するが、第1電極群23や第2電極群24に対して0Vや1Vの電圧を印加し、あるいは第1電極群23や第2電極群24を接地する。このアンプ40の具体的構成は任意であり、例えば、このアンプ40は、電圧の増幅量が段階的に切り替えられる図示しない切替部を備える。
【0041】
(構成−データロガー)
データロガー50は、センサ20によって測定されたインピーダンスを記録したり処理するものである。図4は、データロガー50の構成を機能概念的に示すブロック図である。このデータロガー50は、機能概念的に、入力部51、出力部52、測定処理部53、検知処理部54、及び記録部55を備えて構成されている。
【0042】
入力部51は、各種の処理に必要な情報を入力するための入力手段である。例えば、入力部51は、入力ボタン群、キーボード、又はマウスのような入力機器や、センサ20からの入力を受信する入力端子として構成されている。
【0043】
出力部52は、各種の処理に必要な情報を出力する出力手段である。例えば、出力部52は、記録部55に記録された測定結果をグラフで表示する液晶モニタや、アンプ40やセンサ20への出力を行う出力端子として構成されている。
【0044】
測定処理部53は、第1電極群23及び第2電極群24を用いてコンクリート体1のインピーダンスを測定する測定手段である。ここで、測定されるインピーダンスとしては、「主インピーダンス」、「第1副インピーダンス」、「第2副インピーダンス(又は副インピーダンス)」がある。「主インピーダンス」とは、第1電極群23と第2電極群24との相互間でコンクリート体1を介して電流を流した際における、当該電流の通電経路のインピーダンスである。この通電経路には埋設物2が存在する可能性があるため、埋設物2による影響を受けたインピーダンスが主インピーダンスとして計測される。「第1副インピーダンス」とは、第1電極群23における複数の第1電極の相互間でコンクリート体1を介して電流を流した際における、当該電流の通電経路のインピーダンスである。この通電経路には埋設物2が存在する可能性がないため、埋設物2による影響を受けることなく、コンクリート体1のみのインピーダンスが第1副インピーダンスとして計測される。「第2副インピーダンス(又は副インピーダンス)」とは、第2電極群24における複数の第2電極の相互間でコンクリート体1を介して電流を流した際における、当該電流の通電経路のインピーダンスである。この通電経路には埋設物2が存在する可能性がないため、埋設物2による影響を受けることなく、コンクリート体1のみのインピーダンスが第2副インピーダンスとして計測される。なお、測定処理部53は、第1電極群23及び第2電極群24の各電極を任意の組み合わせで切り替えて通電する切り替え機能を有する。この切り替え機能は、例えば各電極に至る図示しない線路を切り替える公知の図示しないスイッチ素子により構成できる。
【0045】
検知処理部54は、測定処理部53にて測定された主インピーダンスと、第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスの少なくとも一方との差分を算定することにより、コンクリート体1の埋設物2を検知する検知手段である。この算定のための式(2)〜(4)を以下に示す。
【0046】
【数2】

【0047】
【数3】

【0048】
【数4】

【0049】
ここで、「差分」とは、上記の式(2)〜(4)のいずれかによって算定されるものを意味する(式(2)〜(4)において、1/Cは主インピーダンスと第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスとの差分、1/Cは主インピーダンス、1/CS1は第1副インピーダンス、1/CS2は第2副インピーダンス、αは第1副インピーダンスの補正係数、αは第2副インピーダンスの補正係数)。すなわち、「差分」とは、主インピーダンスから、補正係数による補正後の第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスを減算した値を意味する。ただし、補正係数は、後述するように異物の種類等に応じて異なる可能性があり、「1」である可能性もあるため、結果として、「差分」とは、補正係数を考慮することなく、主インピーダンスから、第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスを減算した値と同一になることがある。
【0050】
また、「第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスの少なくとも一方」としているのは以下の理由による。すなわち、第1電極群23における複数の第1電極の相互間でコンクリート体1を介して電流を流した際の通電経路に、異物等が存在する可能性がある場合には、主インピーダンスから補正後の第1副インピーダンスを減算することにより、当該異物等の影響を排除する。また、第2電極群24における複数の第2電極の相互間でコンクリート体1を介して電流を流した際の通電経路に、異物等が存在する可能性がある場合には、主インピーダンスから補正後の第2副インピーダンスを減算することにより、当該異物等の影響を排除する。あるいは、これら両方の通電経路に、異物等が存在する可能性がある場合には、主インピーダンスから補正後の第1副インピーダンス及び第2副インピーダンスを減算することにより、当該異物等の影響を排除する。従って、状況に応じて、第1副インピーダンスと第2副インピーダンスのいずれか又は両方の測定を行い、第1副インピーダンスと第2副インピーダンスのいずれか又は両方を主インピーダンスから減算する。
【0051】
このような測定処理部53及び検知処理部54の具体的構成は任意であるが、例えば、OS(Operating System)などの制御プログラム、各種の処理手順などを規定したプログラム、所要データを格納するための内部メモリ、及び、これらのプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)を備えて構成される。
【0052】
記録部55は、埋設物検知システム10によって実行される処理に必要なデータを記録する記録手段である。例えば、記録部55は、補正テーブル56を記録している。この補正テーブル56は、上述した式(2)〜(4)の補正係数を管理するテーブルであり、例えば「補正番号」及び「補正係数」の項目と、各項目に対応する情報を対応付けて構成されている。項目「補正番号」に対応する情報は、補正係数を一意に識別する番号である。また、項目「補正係数」に対応する情報は、補正係数である。なお、記録部55の具体的な構成は任意であり、例えばHD(Hard Disk)の如き書き換え可能な記録手段を用いて構成することができる。
【0053】
(方法)
次に、このように構成された埋設物検知システム10を用いて行われる埋設物検知方法について説明する。
【0054】
(方法−浸透工程)
この方法では、最初に、コンクリート体1の導電性を向上させるため、コンクリート体1に導電性溶液を浸透させる(浸透工程)。導電性溶液の具体的種類は任意であるが、例えば水(純水や超純水を除く)、食塩水、塩水、塩素水、あるいは水道水を用いることができる。浸透方法としては、例えばコンクリート体1が小形状で移動可能な場合には、導電性溶液を満たした槽の内部にコンクリート体1を所定時間配置する。あるいは、コンクリート体1が移動不能な場合には、コンクリート体1の表面に導電性溶液をスプレー等で撒いたり、導電性溶液に浸した雑巾等でコンクリート体1の表面を濡らしてもよい。
【0055】
(方法−第1配置工程及び第2配置工程)
次に、コンクリート体1の表面に、センサ20を載置することにより、第1電極群23の全ての第1電極23a〜23gと及び第2電極群24の全ての第2電極24a〜24gをコンクリート体1の表面に接触させる(第1配置工程及び第2配置工程)。この際、第1電極群23及び第2電極群24は、上述したように固定板22に並設されていると共に相互に絶縁されているので、固定板22を、コンクリート体1の表面に沿うような方向で、第1電極群23及び第2電極群24をコンクリート体1に向けた状態で、コンクリート体1の表面に押し当てることで、第1電極群23及び第2電極群24を所望の状態で一括して配置することができる。なお、コンクリート体1の表面と各電極23a〜23g、24a〜23gとの相互の隙間を無くすことが好ましく、例えばこれら相互間に導電性ジェルを介在させたり、センサ20に重りを載せて各電極23a〜23g、24a〜23gをコンクリート体1に圧接させてもよい。
【0056】
(方法−ゼロ調整)
その後、測定処理部53は、データロガー50の出力のゼロ調整を行う。このゼロ調整は、使用者によって発振器30、アンプ40、及びデータロガー50が起動された後に、所定のタイミングで開始される。例えば、測定処理部53は、各電極23a〜23g、24a〜23gをアースに接地させ、この状態において、各電極23a〜23g、24a〜23gの相互間のインピーダンスを、これら各電極23a〜23g、24a〜23gの組み合わせを自動的に切り替えることにより測定し、各インピーダンスがゼロになるように、データロガー50の出力を調整する。
【0057】
(方法−主インピーダンスの測定工程)
ゼロ調整が終了した後、測定処理部53は、主インピーダンスと、第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスの測定を行う(測定工程)。図5は、主インピーダンスの測定状態を概念的に示す図であり、(a)はセンサ20の底面図、(b)は(a)の第1電極群23及び第2電極群24をコンクリート体1と共に示すA−A矢視断面図である。具体的には、測定処理部53は、アンプ40を介して、第1電極群23の第1電極23a〜23g又は第2電極群24の第2電極24a〜24gの中で、いずれか一方の少なくとも一部をプラス電位とし、いずれか他方の少なくとも一部をゼロ電位又はマイナス電位とし、これらプラス電位とした電極とマイナス電位とした電極との相互間でコンクリート体1を介して電流を流すことによって、当該電流の通電経路(図5(b)に矢印で示す部分)における主インピーダンスを測定する。
【0058】
この際、電圧を印加する電極、電圧の電位、あるいは電流の方向や、印加する電圧の周波数は、状況に応じて任意に変えることができ、またこれらを変えて複数通りの組み合わせで測定を行うことで、主インピーダンスを複数取得することができる。例えば、測定処理部53は、図5に示すように、第1電極群23の全ての第1電極23a〜23gに「1V」を印加し、第2電極群24の一部の小電極24d〜24fに「0V」を印加し、第2電極群24の他の小電極24c、24g及び大電極24a、24bを「接地」して測定を行う。その後、電流方向を入れ替えるため、第2電極群24の全ての第2電極24a〜23gに「1V」を印加し、第1電極群23の一部の小電極23d〜23fに「0V」を印加し、第1電極群23の他の小電極23c、23g及び大電極23a、23bを「接地(GND)」して測定を行う。あるいは、電圧の電位を変更し、プラス電位を「1V」ではなく「2V」として測定を行う(ただし、電位の値は1Vや2Vに限定されず、例えば1V〜10Vの間で設定することができる)。また、測定処理部53は、測定結果の再現性を確認するために、電圧を印加する電極、電圧の電位、あるいは電流の方向に関して、同一の組み合わせで複数回繰返し測定する。そして、測定処理部53は、このように複数の測定を行った結果を記憶部55に逐次記憶する。
【0059】
そして、測定処理部53は、記憶部55に記憶された測定結果を用いて、所定基準に基づいて、埋設物2の検知に使用する一つの主インピーダンスを最終的に特定する。この所定基準としては、例えば、測定された各インピーダンスの平均値、最大値、又は最小値を最終の主インピーダンスとする基準や、測定された各インピーダンスの中で所定の最低閾値未満又は最大閾値以上の値を異常値として除外した上で、残った測定結果の平均値、最大値、又は最小値を最終の主インピーダンスとする基準を挙げることができる。
【0060】
このように主インピーダンスを測定する際には、補助電極25により空気のインピーダンスの影響が自動的に除去される。すなわち、補助電極25を設けていない場合には、第1電極群23と第2電極群24の相互間のインピーダンスとして、コンクリート体1を通る通電経路のインピーダンスのみならず、コンクリート体1と反対方向の空気中を通る空気経路のインピーダンスを含んだものが測定される。そのため、この全体のインピーダンスは、下記の式(5)のように表わされる(ここで、Zは全体のインピーダンス、Zpipeは埋設物2のインピーダンス、Zconはコンクリート体1のインピーダンス、及びZairは空気のインピーダンス。なお、後述する式(6)に示す同一の名称又は符号も同様とする)。一方、補助電極25を設けた場合には、空気経路のインピーダンスに代えて、補助電極25のインピーダンスが測定されるため、全体のインピーダンスは、式(6)に基づいて表わされる(ここで、Zhojoは補助電極25のインピーダンス)。従って、補助電極25をインピーダンスの低い材質によって形成しておくことで、補助電極25のインピーダンスを実質的に無視することが可能となる。あるいは、補助電極25のインピーダンスを予め測定して、主インピーダンスから減算してもよい。このような工夫を施すことで、補助電極25を有するセンサ20は、補助電極25を有さないセンサ20に比べて、インピーダンスを低減させると共に、埋設物2の検知精度を向上できる。
【0061】
【数5】

【0062】
【数6】

【0063】
(方法−第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスの測定工程)
主インピーダンスの測定を行った後、第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスの測定を行う。第1副インピーダンスの測定に関して、具体的には、測定処理部53は、アンプ40を介して、第1電極群23の第1電極23a〜23gの少なくとも一部をプラス電位とし、第1電極23a〜23gの他の少なくとも一部をゼロ電位又はマイナス電位とし、これら第1電極23a〜23gの相互間でコンクリート体1を介して電流を流すことによって、当該電流の通電経路における第1副インピーダンスを測定する。あるいは、第2副インピーダンスの測定に関して、具体的には、測定処理部53は、アンプ40を介して、第2電極群24の第2電極24a〜24gの少なくとも一部をプラス電位とし、第2電極24a〜24gの他の少なくとも一部をゼロ電位又はマイナス電位とし、これら第2電極24a〜24gの相互間でコンクリート体1を介して電流を流すことによって、当該電流の通電経路(後述する図6(b)に矢印で示す部分)における第2副インピーダンスを測定する。
【0064】
図6は、第2副インピーダンスの測定状態を概念的に示す図であり、(a)はセンサ20の底面図、(b)は(a)の第1電極群23及び第2電極群24をコンクリート体1と共に示すA−A矢視断面図である。例えば、測定処理部53は、図6に示すように、第2電極群24の小電極24fに「1V」を印加すると共に、他の小電極24dに「0V」を印加し、その他の全ての小電極24c、24e、24gと大電極24a、24b、及び第1電極群23の全ての第1電極23a〜23gを「接地(GND)」して測定を行う。
【0065】
この第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスの測定に際し、測定処理部53は、主インピーダンスの測定時と同様に、第1電極23a〜23gや第2電極24a〜24gの中で電圧を印加する電極、電圧の電位、若しくは電流の方向、あるいは印加する電圧の周波数は、状況に応じて任意に変えることができ、またこれらを変えて複数通りの組み合わせで測定を行い、あるいは、これらに関して同一の組み合わせで複数回繰返して測定を行い、このように測定された第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスを用いて、主インピーダンスの場合と同様の所定基準に基づいて、第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスを最終的に特定する。
【0066】
(方法−検知工程)
次いで、検知処理部54は、測定処理部53にて測定された主インピーダンスと、第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスの少なくとも一方との差分を求め、この差分に基づいて埋設物2を検知する(検知工程)。具体的には、検知処理部54は、補正テーブル56を参照して、第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスに最適な補正係数を乗じることで、これら第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスの補正を行う。この補正係数の決定方法は任意であるが、例えば、最適な補正係数は、コンクリート体1に埋設された異物の大きさや種類毎、あるいはコンクリート体1における異物の埋設深さ毎に異なり得ることから、コンクリート体1に埋設される可能性がある異物の大きさ、種類、あるいは埋設深さ毎に補正係数を数値計算や実験等により求めて補正テーブル56に予め格納しておき、測定対象となるコンクリート体1に埋設されている可能性が高い異物の条件に合致する補正係数を、測定時に使用者が補正テーブル56から任意の方法で選択し、当該選択された補正係数を使用して補正を行う。あるいは、全ての補正係数を用いた補正を行い、この補正結果に基づいて、第1副インピーダンスや第2副インピーダンスを算定してもよい。例えば、補正結果の中で所定の最低閾値未満又は最大閾値以上の値を異常値として除外した上で、残った補正結果の平均値を最終の第1副インピーダンスや第2副インピーダンスとする。あるいは、補正結果の中の最大値又は最小値を、最終の第1副インピーダンスや第2副インピーダンスとする。
【0067】
図7は、補正係数が静電容量に与える影響を示すグラフであり、横軸はコンクリート体1の表面における測定位置(単位:mm)(埋設物2の上方位置を原点として、20〜40mm付近に異物(石)を配置)、縦軸は静電容量(単位:pF)を示し、補正係数を「0.01」、「0.015」、「0.02」、「0.03」、「0.04」に変えた場合をプロットしている。このグラフから明らかなように、補正係数=「0.01」、「0.015」、又は「0.02」である場合には、静電容量に顕著な変化はないが、補正係数=「0.03」又は「0.04」とした場合には、異物がある範囲の静電容量に顕著な変化が見られる。このように、補正係数を用いて補正を行うことで、異物がある範囲に対応する静電容量の変化を明確化できる。なお、ここでは静電容量を示しているが、静電容量の逆数であるインピーダンスについても同様に変化を明確化でき、異物の影響を測定結果から効果的に除去することができる。
【0068】
次に、検知処理部54は、上述した式(2)〜(4)に基づいて、主インピーダンスと、第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスの少なくとも一方との差分を算定することで、最終的なインピーダンスを求める。ここで、第1副インピーダンスと第2副インピーダンスの選択基準は以下の通りである。すなわち、第1電極群23の配置位置の近傍のみに異物が存在し得ることが予め判っている場合には、式(2)に基づいて求めた主インピーダンスと第1副インピーダンスとの差分を最終的なインピーダンスとする。また、第2電極群24の配置位置の近傍のみに異物が存在し得ることが予め判っている場合には、式(3)に基づいて求めた主インピーダンスと第2副インピーダンスとの差分を最終的なインピーダンスとする。あるいは、第1電極群23の配置位置の近傍と第2電極群24の配置位置の近傍の両方に異物が存在し得ることが予め判っている場合には、式(4)に基づいて求めた主インピーダンスと第1副インピーダンス及び第2副インピーダンスとの差分を最終的なインピーダンスとする。例えば、図5(b)及び図6(b)の例では、コンクリート体1の左右中央よりも図示左側の位置(第2電極群24の配置位置)に異物があるため、主インピーダンスと第2副インピーダンスとの差分を最終的なインピーダンスとする。なお当然のことながら、第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスのいずれか一方を使用しないことが測定時に判っている場合には、当該一方の測定自体を省略することができる。
【0069】
この他、式(2)〜(4)の各々に基づくインピーダンスをそれぞれ求めた後、これら複数のインピーダンスに基づいて、最終的なインピーダンスを算定してもよい。例えば、複数のインピーダンスの中で所定の最低閾値未満又は最大閾値以上の値を異常値として除外した上で、残ったインピーダンスの平均値を最終のインピーダンスとする。あるいは、複数のインピーダンスの中の最大値又は最小値を、最終のインピーダンスとしてもよい。
【0070】
図8は、主インピーダンスと第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスとの差分を求める意義を概念的に示した図であり、(a)は第1電極群及び第2電極群をコンクリート体と共に示す縦断面図、(b)は主インピーダンス、第1副インピーダンス、及び第2副インピーダンスを概念的に示した図である。図8(a)のようにコンクリート体1に埋設物2(図8には配管として示す)や異物3(図8には石として示す)が埋設されている場合において、図8(b)のように、減算前のインピーダンスZAは、主インピーダンスZM、第1副インピーダンスZS1、及び第2副インピーダンスZS2の和となる。ここから、第1副インピーダンスZS1及び第2副インピーダンスZS2を減算することにより、減算後のインピーダンスZBは、主インピーダンスZMとなり、コンクリート体1のインピーダンス変化や異物3の影響が除去されるので、埋設物2の検知精度が向上する。
【0071】
このように、主インピーダンス、第1副インピーダンス、及び第2副インピーダンスの測定や、これらの相互間の差分の算定を、コンクリート体1の表面における任意の方向に沿ってセンサ20の位置を変えながら、所定の間隔毎に行う。そして、検知処理部54は、差分の算定を行うことで得られた最終のインピーダンスを各測定の位置毎に記憶部55に格納し、全ての位置における最終のインピーダンスの取得後、それまでに取得した最終のインピーダンスに基づいて、コンクリート体1における埋設物2の有無及び位置を判定する。
【0072】
例えば、検知処理部54は、取得した最終のインピーダンスの中で所定の閾値を超え得るインピーダンスが存在する場合には、当該インピーダンスが測定された際のセンサ20の直下に埋設物2が存在すると判定し、埋設物2が存在すると判定した旨や当該埋設物2の位置を出力部52を介して表示する。この閾値の設定方法は任意であるが、例えば、補正係数の大きさに応じて設定してもよい。また、出力部52による表示方法は任意であるが、例えば、検知処理部54は、測定を行う毎に測定累積回数をカウントし、当該インピーダンスが測定された際の測定累積回数を表示したり、測定を行う毎にコンクリート体1の位置を記録し、当該インピーダンスが測定された際の位置を表示する。あるいは、検知処理部54は、取得した全ての最終のインピーダンスを出力部52を介してグラフ表示させて、使用者に埋設物2の有無及び位置を判定させてもよい。
【0073】
なお、これまで説明した埋設物検知方法における各工程は、順序を変更することも可能であり、例えば、各測定位置の主インピーダンスのみを測定した後、異物が存在し得る特定の測定位置(例えば、主インピーダンスが顕著に大きかった測定位置又は小さかった測定位置)において第1副インピーダンスや第2副インピーダンスを測定し、これら第1副インピーダンスや第2副インピーダンスを測定した位置に関しては主インピーダンスとの差分を求めて最終のインピーダンスとし、第1副インピーダンスや第2副インピーダンスを測定しなかった位置に関しては主インピーダンスをそのまま最終のインピーダンスとしてもよい。
【0074】
(実験結果)
以下、本願発明者等による実験結果を示す。図9は、実験に使用したコンクリート体1を示す図であり、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。ここでは、コンクリート体1(モルタル)を、長さ400mm×幅400mm×厚さ80mmとして形成した。このコンクリート体1(モルタル)としては、CD管を埋設していないものを2種類(以下、「コンクリート体1A」と「コンクリート体1B」と称する)と、表面から20mmの深さに直径10mmのCD管をコンクリート体1の左右中心線に沿って埋設したものを1種類(以下、「CD管入りコンクリート体1A」と称する)を用意した。そして、これら各コンクリート体1の左右中心線をY軸、図9(a)におけるコンクリート体1の下側から上方に150mmの位置の水平線をX軸、これらX−Y軸の交点を原点とし、センサ20の下端をX軸上に配置し、センサ20を原点から左右にそれぞれ50mmの範囲で移動させながら測定を行った。また、センサ20における第1電極群23と第2電極群24の並設方向をY軸に沿うようにした。
【0075】
第1電極群23及び第2電極群24としては、図10(a)に示すものを使用した。この例では、主インピーダンス及び第2副インピーダンスのみを測定し、第1副インピーダンスは測定しないことを前提としているため、第1電極群23については、小電極を設けることなく、1枚の平板状の第1電極23hにて形成されている。そして、これら第1電極群23及び第2電極群24の組み合わせとしては、図10(b)に示すように、第1電極群23の第1電極23hから第2電極群24の異なる小電極24d〜24fのいずれかに至る3通りの組み合わせ(以下、これら各組み合わせを「m1」、「m2」、「m3」と称し、各組み合わせにおいて測定された静電容量を「Cm1」、「Cm2」、「Cm3」と称する)と、第2電極群24の小電極24dと小電極24fの相互間の組み合わせ(以下、この組み合わせを「m4」と称し、この組み合わせにおいて測定された静電容量を「Cm4」と称する)で測定を行った。なお、基準周波数は5kHzとした。
【0076】
図11〜14は測定結果を示すグラフであり、横軸は図9(a)のX軸上のセンサ20の配置位置(単位:cm)、縦軸は静電容量(単位:pF又はfF)である。図11にはコンクリート体1A、図12にはコンクリート体1B、図13にはCD管入りコンクリート体1A、図14にはこれら3種類のコンクリート体1の測定結果を示す。また、図11〜13では、複数回の測定により取得した静電容量=Cm1+Cm2+Cm3と静電容量=Cm4を示し、静電容量=Cm1+Cm2+Cm3を左側の縦軸(単位:pF)、静電容量=Cm4を右側の縦軸(単位:fF)を基準にプロットしている。図14では、複数回の測定により取得した静電容量=Cm1、Cm2、Cm3、及びCm4と、補正係数=0.01により、以下の式(7)を用いて算定した結果を示す。なお、これら図11〜14には静電容量を示すが、インピーダンス(導電容量)とした場合にも実質的に同様の傾向を得られることは明らかである。
【0077】
【数7】

【0078】
図11に示した測定結果においては、CD管が埋設されていないにも関わらず、異物やコンクリート体1Aの表面の凹凸の影響により、「配置位置=0」の付近で静電容量が下方に突出した分布となっている。また、図12に示した測定結果は、やはりCD管が埋設されていないにも関わらず、異物やコンクリート体1Bの表面の凹凸の影響により、「配置位置=3cm」の付近で静電容量が下方に突出した分布となっている。従って、これらの測定結果では、CD管が埋設されていないにも関わらず、静電容量の分布が大きく変化するので、この変化した位置にCD管が埋設されているものと誤検知される可能性がある。一方、図13に示した測定結果は、「配置位置=0」の付近のみならず、「配置位置=−3cm」の付近でも静電容量が変動しているため、実際には「配置位置=0」の付近にCD管が埋設されていると断定することが困難である。
【0079】
これに対して、図14に示した測定結果は、コンクリート体1A及びコンクリート体1Bの測定時には静電容量に顕著な変動がなくほぼ全域で一定値となっているのに対して、CD管入りコンクリート体1Aの測定時には「配置位置=0」の付近で静電容量が下方に突出した分布となっっており、その他の範囲では一定値となっているため、SN比の高いCD管検知を行うことがきる。例えばこの場合には、静電容量ベースで閾値を−15pFとしておくことで、検知処理部54がCD管の位置を自動的に検知できる。
【0080】
(実施の形態1の効果)
このように本実施の形態によれば、主インピーダンスと、第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスの少なくとも一方との差分に基づいて埋設物2を検知することにより、測定対象となるコンクリート体1のインピーダンスの影響を排除することができ、コンクリート体1のインピーダンスの変化が異物3の存在等により非常に大きい場合であっても、高い精度で埋設物2を検知することができる。
【0081】
また、第1電極群23や第2電極群24を、大きさの異なる複数の第1電極23a〜23gや複数の第2電極24a〜24gから構成することで、例えば、コンクリート体1において異物が存在し得る範囲が、広い範囲である場合には大電極23a、23b、24a、24bを使用し、狭い範囲である場合には小電極23c〜23g、24c〜24gを使用する等、状況に合致した大きさの電極を用いることができ、一層高い精度で埋設物2を検知することができる。
【0082】
また、第1電極群23の複数の第1電極23a〜23gと第2電極群24の複数の第2電極24a〜24gの相互の組み合わせを代えることにより測定を行うので、例えば、コンクリート体1において異物が存在し得る範囲が不明は場合であっても、様々な組み合わせの中から最適な測定結果を選択することができるので、高い精度で埋設物2を検知することができる。
【0083】
また、コンクリート体1に導電性溶液を浸透させることにより、コンクリート体1のインピーダンス(誘電率、導電率)を高めることができ、異物としてのCD管等の内部に含まれる空気のインピーダンス(誘電率、導電率)との差異を一層明確化できるので、一層高い精度で埋設物2を検知することができる。
【0084】
〔実施の形態2〕
まず、実施の形態2について説明する。この実施の形態2は、第1電極群と第2電極群を、コンクリート体の表面における第1方向に沿って並設すると共に、当該第1方向に直交する第2方向に沿って並設した形態である。ただし、実施の形態2の構成は、特記する場合を除いて実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたのと同一の名称又は符号を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0085】
(構成)
実施の形態2に係る埋設物検知システムは、図1に示した実施の形態1の埋設物検知システム10とほぼ同様に構成されているが、センサ20における第1電極群23又は第2電極群24の配置と、データロガー50の測定処理部53及び検知処理部54による処理内容が異なる。
【0086】
図15、16において、(a)は本実施の形態2に係るセンサ20の底面図、(b)は(a)の第1電極群と第2電極群をコンクリート体1と共に示すA−A矢視断面図である。センサ20は、第1電極群と第2電極群を、コンクリート体1の表面における第1方向(図15(a)のY方向)に沿って並設すると共に、当該第1方向に直交する第2方向(図15(a)のX方向)に沿って並設して構成されている。具体的には、相互に間隔を隔てて配置された同一形状の4枚の大電極26a〜26dと、大電極26a、26bの相互間及び大電極26c、26dの相互間において第1方向に沿って並設された小電極27a〜27mと、大電極26a、26cの相互間及び大電極26b、26dの相互間において第2方向に沿って並設された小電極28a〜28mを備える。
【0087】
この構成では、大電極26a、26bと小電極27a〜27fによって構成される第1電極群と、大電極26c、26dと小電極27h〜27mによって構成される第2電極群が、第1方向に沿って並設された第1電極群と第2電極群であり、大電極26a、26cと小電極28a〜28fによって構成される第1電極群と、大電極26b、26dと小電極28h〜28mによって構成される第2電極群が、第2方向に沿って並設された第1電極群と第2電極群に相当する。すなわち、概念的に、第1方向に沿って並設された第1電極群と第2電極群と、第2方向に沿って並設された第1電極群と第2電極群とが、相互にその一部を共有して(重合させて)存在している。ただし、これらを相互に完全に分離して構成してもよい。
【0088】
なお、平面中央位置に配置された小電極27g、28gは、各方向の第1電極群又は第2電極群のいずれにも属する共通の電極であり、ここでは説明の便宜上、ひとつの電極に2つの符号27g、28gを付する。なお、この小電極27g、28gは、第1方向及び第2方向に沿った平面十字形状としてもよい。
【0089】
(処理)
このような構成において、センサ20をコンクリート体1の表面の1箇所の位置に配置した後、データロガー50の測定処理部53は、第1方向に沿って並設された第1電極群と第2電極群とを用いて、第1方向に沿った主インピーダンスと、第1方向に沿った第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスの少なくとも一方を測定する。図15(a)(b)には第1方向に沿った主インピーダンスの測定状態を示す。また、センサ20を同一位置に維持したまま、測定処理部53は、第2方向に沿って並設された第1電極群と第2電極群とを用いて、第2方向に沿った主インピーダンスと、第2方向に沿った第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスの少なくとも一方を測定する。図16(a)(b)には第2方向に沿った主インピーダンスの測定状態を示す。すなわち、実施の形態1のように第1方向のみに第1電極群と第2電極群を並設して測定を行う場合に比べて、センサ20を移動させることなく、広い範囲におけるインピーダンスの測定を行うことができる。
【0090】
そして、検知処理部54は、第1方向に沿って並設された第1電極群と第2電極群とを用いて測定された主インピーダンスと、第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスの少なくとも一方に基づいて、第2方向に沿って埋設された埋設物2を検知する(以下、この検知結果を「第1検知結果」と称する)。また、検知処理部54は、第2方向に沿って並設された第1電極群と第2電極群とを用いて測定された前記主インピーダンスと、第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスの少なくとも一方に基づいて、第1方向に沿って埋設された埋設物2を検知する(以下、この検知結果を「第2検知結果」と称する)。例えば、コンクリート体1の表面における1箇所で検知された第1検知結果と第2検知結果を比較し、第1検知結果のインピーダンスが第2検知結果のインピーダンスより大きい場合には、第2方向に沿って埋設物2が埋設されている可能性が大きくことが判るため、次いで、第1方向に沿った位置にセンサ20を移動させて再度の検知を行うことによって最初の位置とのインピーダンスの差異を確認したり、第2方向に沿った位置にセンサ20を移動させて再度の検知を行うことによって最初の位置とのインピーダンスの同一性を確認し、高い精度で埋設物検知を広い範囲で短時間で行うことが可能となる。
【0091】
このように、主インピーダンスと、第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスを測定する際、測定可能な全てのインピーダンスを自動的に測定し、当該測定結果の中から、所定基準に基づいて、埋設物検知に使用する最終的な主インピーダンスと、第1副インピーダンス又は第2副インピーダンスを選択してもよい。例えば、図15において、小電極27aから小電極27hへ電圧印加を行い、小電極27aから小電極27iへ電圧印加を行い、以降同様に、小電極27aから小電極27j〜27mの各々へ順次電圧印加を行い、次に、小電極27bから小電極27h〜27mの各々へ順次電圧印加を行い、以降同様に、小電極27c〜27fの各々から小電極27h〜27mの各々へ順次電圧印加を行い、さらに、小電極27a、27bから小電極27hへ電圧印加を行い、小電極27a、27bから小電極27iへ電圧印加を行い、以降同様に、小電極を単独又は複数で使用する際の全ての組み合わせによって第1副インピーダンスを測定する。そして、例えば、これら測定結果をグラフ等にて表示し、測定結果の中の最大値(あるいは最小値)の第1副インピーダンスを、最終的な第1副インピーダンスとして選択してもよい。このような電極の組み合わせは、電極を相互に接続する回線を電気的なスイッチングにて切り替えることで容易に行うことができる。
【0092】
(実施の形態2の効果)
このように実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果に加えて、第1電極群と第2電極群を、第1方向と第2方向にそれぞれ沿うように並設したので、複数の方向に沿った測定を同時に行うことができ、高い精度で埋設物検知を広い範囲で短時間で行うことが可能となる。
【0093】
〔III〕各実施の形態に対する変形例
以上、本発明に係る各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0094】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏することがある。さらに、本発明によって、上述していない課題を解決したり、上述していない効果を奏することもある。
【0095】
(電極の形状や配置について)
例えば、主インピーダンスと副インピーダンスを計測できる限りにおいて、電極の形状や配置は任意に変更でき、各電極を平面円盤状に形成したり、大電極と小電極の数や面積の比率を変更してもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 コンクリート体
2 埋設物
3 異物
10 埋設物検知システム
20 センサ
21 支持体
22 固定板
23 第1電極群
23a、23b 大電極
23c〜23g 小電極
(23a〜23g、24a〜23g 電極)
(23a〜23g、23h 第1電極)
24 第2電極群
24a、24b、26a〜26d 大電極
24c〜24g、27a〜27m、28a〜28m 小電極
(24a〜24g 第2電極)
25 補助電極
30 発振器
40 アンプ
50 データロガー
51 入力部
52 出力部
53 測定処理部
54 検知処理部
55 記録部
56 補正テーブル
60 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート体における埋設物を検知するための装置であって、
前記コンクリート体の表面に接触するように配置された第1電極と、
前記コンクリート体の表面に接触するように配置された複数の第2電極を含んで構成される第2電極群であって、前記第1電極に対して絶縁されると共に、前記第1電極に対して並設された第2電極群と、
前記第1電極と前記第2電極群の少なくとも一部の第2電極との相互間に前記コンクリート体を介して電流を流すことにより主インピーダンスを測定し、かつ、前記第2電極群の複数の第2電極の少なくとも一部の相互間に前記コンクリート体を介して電流を流すことにより副インピーダンスを測定する測定手段と、
前記測定手段にて測定された前記主インピーダンスと前記副インピーダンスとの差分に基づいて、前記コンクリート体における埋設物を検知する検知手段と、
を備えるコンクリート体の埋設物検知システム。
【請求項2】
コンクリート体における埋設物を検知するための装置であって、
前記コンクリート体の表面に接触するように配置された複数の第1電極を含んで構成される第1電極群と、
前記コンクリート体の表面に接触するように配置された複数の第2電極を含んで構成される第2電極群であって、前記第1電極群に対して絶縁されると共に、前記第1電極群に対して並設された第2電極群と、
前記第1電極群の少なくとも一部の第1電極と前記第2電極群の少なくとも一部の第2電極との相互間に前記コンクリート体を介して電流を流すことにより主インピーダンスを測定し、かつ、前記第1電極群の複数の第1電極の少なくとも一部の相互間に前記コンクリート体を介して電流を流すことにより第1副インピーダンスを測定するか、あるいは前記第2電極群の複数の第2電極の少なくとも一部の相互間に前記コンクリート体を介して電流を流すことにより第2副インピーダンスを測定する測定手段と、
前記測定手段にて測定された前記主インピーダンスと、前記測定手段にて測定された前記第1副インピーダンス又は前記第2副インピーダンスの少なくとも一方との差分に基づいて、前記コンクリート体における埋設物を検知する検知手段と、
を備えるコンクリート体の埋設物検知システム。
【請求項3】
前記第1電極群の複数の第1電極と、前記第2電極群の複数の第2電極の各々は、
相互に並設された一対の大電極と、
前記一対の大電極の相互間に配置されたものであって、当該一対の大電極に対して絶縁されると共に、当該一対の大電極の並設方向に直交する方向に沿って並設された複数の小電極とを備え、
前記測定手段は、
前記第1電極における前記一対の大電極及び前記複数の小電極と、前記第2電極における前記一対の大電極び前記複数の小電極と、の相互間に電流を流すことにより前記主インピーダンスを測定し、
前記第1電極における前記複数の小電極の相互間に電流を流すことにより前記第1副インピーダンスを測定し、あるいは、
前記第2電極における前記複数の小電極の相互間に電流を流すことにより前記第2副インピーダンスを測定する、
請求項2に記載のコンクリート体の埋設物検知システム。
【請求項4】
前記第1電極群と前記第2電極群を、前記コンクリート体の表面における第1方向に沿って並設すると共に、当該第1方向に直交する第2方向に沿って並設し、
前記測定手段は、
前記第1方向に沿って並設された前記第1電極群と前記第2電極群とを用いて、前記主インピーダンスと、前記第1副インピーダンス又は前記第2副インピーダンスの少なくとも一方を測定し、かつ、
前記第2方向に沿って並設された前記第1電極群と前記第2電極群とを用いて、前記主インピーダンスと、前記第1副インピーダンス又は前記第2副インピーダンスの少なくとも一方を測定し、
前記検知手段は、
前記第1方向に沿って並設された前記第1電極群と前記第2電極群とを用いて測定された前記主インピーダンスと、前記第1副インピーダンス又は前記第2副インピーダンスの少なくとも一方に基づいて、前記第2方向に沿って埋設された前記埋設物を検知し、かつ、
前記第2方向に沿って並設された前記第1電極群と前記第2電極群とを用いて測定された前記主インピーダンスと、前記第1副インピーダンス又は前記第2副インピーダンスの少なくとも一方に基づいて、前記第1方向に沿って埋設された前記埋設物を検知する、
請求項2又は3に記載のコンクリート体の埋設物検知システム。
【請求項5】
前記測定手段は、
前記第1電極群の複数の第1電極と前記第2電極群の複数の第2電極の相互間の組み合わせを代えることにより、前記主インピーダンスを複数測定し、
前記第1電極群の複数の第1電極の相互間の組み合わせを代えることにより、前記第1副インピーダンスを複数測定し、あるいは、
前記第2電極群の複数の第2電極の相互間の組み合わせを代えることにより、前記第2副インピーダンスを複数測定し、
前記検知手段は、
前記測定手段にて測定された、前記複数の主インピーダンス、前記複数の第1副インピーダンス、又は前記複数の第2副インピーダンスの中から、所定基準に基づいて、前記埋設物の検知に用いる前記主インピーダンス、前記第1副インピーダンス、又は前記第2副インピーダンスを選択する、
請求項2から4のいずれか一項に記載のコンクリート体の埋設物検知システム。
【請求項6】
前記測定手段は、
前記第1電極群の複数の第1電極と前記第2電極群の複数の第2電極の相互間の全ての組み合わせにおいて、前記主インピーダンスを複数測定し、
前記第1電極群の複数の第1電極の相互間の全ての組み合わせにおいて、前記第1副インピーダンスを複数測定し、あるいは、
前記第2電極群の複数の第2電極の相互間の全ての組み合わせにおいて、前記第2副インピーダンスを複数測定し、
前記検知手段は、
前記測定手段にて測定された、前記複数の主インピーダンス、前記複数の第1副インピーダンス、又は前記複数の第2副インピーダンスの中から、所定基準に基づいて、前記埋設物の検知に用いる前記主インピーダンス、前記第1副インピーダンス、又は前記第2副インピーダンスを選択する、
請求項5に記載のコンクリート体の埋設物検知システム。
【請求項7】
コンクリート体における埋設物を検知するための方法であって、
第1電極を前記コンクリート体の表面に接触するように配置する第1配置工程と、
第2電極群を構成する複数の第2電極を前記コンクリート体の表面に接触するように配置する工程であって、前記第2電極群を、前記第1電極に対して絶縁すると共に、前記第1電極に対して並設する第2配置工程と、
前記第1電極と前記第2電極群の少なくとも一部の第2電極との相互間に前記コンクリート体を介して電流を流すことにより主インピーダンスを測定し、かつ、前記第2電極群の複数の第2電極の少なくとも一部の相互間に前記コンクリート体を介して電流を流すことにより副インピーダンスを測定する測定工程と、
前記測定工程において測定された前記主インピーダンスと前記副インピーダンスとの差分に基づいて、前記コンクリート体における埋設物を検知する検知工程と、
を含むコンクリート体の埋設物検知方法。
【請求項8】
前記第1配置工程及び前記第2配置工程の前において、前記コンクリート体に導電性溶液を浸透させる浸透工程、
を含む請求項7に記載のコンクリート体の埋設物検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−210588(P2010−210588A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60000(P2009−60000)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】