説明

コンクリート供試体の製造方法およびコンクリート供試体

【課題】コンクリートの品質管理上の必要事項が記載され、耐アルカリ性、耐水性であり、剥離、破損が防止できるコンクリートの品質証明のための試験記録カードを用いたコンクリート供試体の製造方法およびコンクリート供試体を提供する。
【解決手段】表面にコンクリートの品質管理上必要な所定事項が記入され、耐アルカリ性、耐水性を有し、背面にはコンクリート供試体表面に接合される接着剤が塗布された、化学合成紙からなるカード本体と、前記所定事項記入面を被覆する透明樹脂フィルムとからなる試験記録カードを供試体型枠内面に装填した後、生コンクリートを流し込み硬化後にコンクリート供試体表面に前記試験記録カードが接着され保全される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建設工事現場における生コンクリート打設時の打設コンクリートの品質証明に供するのためのコンクリート供試体の製造方法およびコンクリート供試体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来では図8に示す様に、表面にコンクリートの品質管理上必要な所定事項が記入された試験記録カード13を、グリス塗布等の防水加工を施し、供試体型枠3内面に載置又は片手で保持して装填した後、生コンクリート2を流し込み、硬化後にコンクリート供試体の表面に、試験記録カード13が添着されてコンクリート供試体を製造していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の技術である紙製または、樹脂製試験記録カード13に必要事項を記載し、供試体型枠3内面に載置又は挿入する方法では、強度試験体である生コンクリートの持つ強アルカリ性、水槽内に最長4週間収容浸漬して行う水中養生などの過酷な環境条件に対し、グリス塗布等の防水では耐えられず、記入した文字の消滅や、セメントペースト被覆による判読困難が発生し、また試験記録カードが供試体より剥離したり破損することにより同時に試験を行う他の供試体との識別ができなくなることもあり、さらに品質管理記録としての写真撮影も困難にしている。また、試験記録カードを片手で保持して、他方の手でコンクリートの流し込み作業を行うため、接着位置の精度も悪く作業効率があがらない。
【0004】
本発明は以上のような欠点をなくすためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1記載のコンクリート供試体の製造方法は、表面にコンクリートの品質管理上必要な所定事項が記入され、耐アルカリ性、耐水性を有し、背面にはコンクリート供試体表面に接合される接着剤が塗布された化学合成紙からなるカード本体と、前記所定事項記入面を被覆する透明樹脂フィルムとからなる試験記録カードの前記透明樹脂フィルム側を供試体型枠内面に装填した後、生コンクリートを流し込み、硬化後にコンクリート供試体表面に前記試験記録カードが接着される。
【0006】
また、本発明の請求項2記載のコンクリート供試体は、請求項1記載の製造方法によって製造される。
【0007】
さらに、本発明の請求項3記載のコンクリート供試体の製造方法は、請求項1記載のコンクリート供試体の製造方法において、透明樹脂フィルム被覆の表面に粘着剤と剥離紙を備えた試験記録カードの前記剥離紙を剥がして供試体型枠内面に接着される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るコンクリート供試体の試験記録カードのカード本体は、化学合成紙のため筆記用インクなどの載りが良く、筆記具を選ばず記入しやすい。このためコンクリート供試体製造に当たって現場での対応が楽である。
【0009】
また、記入面を透明樹脂フィルムにより被覆加工したことにより、4週間以上の水中養生浸漬後も記入文字及び紙質に変化を生じないため、文字が鮮明で読みやすく、写真撮影も鮮明となり記録としての評価が高まる。
【0010】
さらに、カード本体は化学合成紙のため、引張り強度が高く通常では破損することがなく、取り扱いおよび記録保存がしやすく、コンクリート品質管理記録として信頼性が高まる。
【0011】
また、試験記録カード背面に塗布された接着剤によりコンクリート供試体表面に接着され、当該供試体の強度試験完了後の剥離回収時まで剥落を防止し、同時に試験を行う他のコンクリート供試体と識別不能になることが防止できる。
【0012】
コンクリート供試体作成時に、試験記録カードを供試体型枠内面上部に、粘着剤により接着固定することにより接着位置の精度が向上し、生コンクリートの流し込み時に両手での作業が可能となり、作業効率の向上が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例1】
【0013】
図1はコンクリート供試体の製造方法を示す断面図であり、試験記録カード部を拡大して示す断面図、図2はコンクリート供試体の完成状況斜視図、図3(a)は試験記録カードの所定事項記入前の透明樹脂フィルムおよび剥離紙の一部を破断して示す正面図、(b)は(a)のIII−III拡大断面図、図4(a)は試験記録カード記入前の斜視図、(b)は(a)のIV−IV断面図、図5(a)は試験記録カードに所定の必要事項記入後、透明樹脂フィルムの剥離紙を剥がした状態の斜視図、(b)は(a)のV−V拡大断面図、図6(a)は透明樹脂フィルムによりカード本体の被覆加工を施し、台紙から剥離して供試体型枠内に装填する前の状態の斜視図、(b)は(a)のVI−VI拡大断面図、図7は本発明の第2の実施例のコンクリート供試体の製造方法を示し、(a)は透明樹脂フィルム被覆の表面に備えた粘着剤と剥離紙より剥離紙を剥がして供試体型枠内面に装填する前の状態の斜視図、(b)は(a)のVII−VII拡大断面図である。
【0014】
図1に示すように、表面にコンクリートの品質管理上必要な所定事項が記入され、耐アルカリ性、耐水性を有し、背面にはコンクリート供試体表面に接合される接着剤が塗布された化学合成紙からなるカード本体5と、前記所定事項記入面を被覆する透明樹脂フィルム7とからなる試験記録カード4の記入面を供試体型枠3に密着させて装填し、生コンクリート2を流し込み,硬化した後供試体型枠3を外し図2の供試体1を得る。
【0015】
図3から図4において、カード本体5は背面に接着剤6が塗布され台紙10上に接着されている。カード本体5の表面の記入面には、接着剤8が塗布された透明樹脂フィルム7の一端が接着されており、他の部分には剥離紙9が透明樹脂フィルム7より剥離可能な状態で接合されている。したがって、透明樹脂フィルム7は、図4に示すようにカード本体5から一端を中心に捲りが可能となっている。これにより台紙10を除いた試験記録カード4を構成している。
【0016】
カード本体5は破れ難く耐アルカリ性かつ耐水性を有する化学合成紙(商品名「ユポ」ユポコーポレーション製)の白色紙とする。
【0017】
図4において、剥離紙9が接合している透明樹脂フィルム7の一端を捲り上げ、カード本体5の表面にコンクリートの品質管理上必要な所定事項を記入する。
【0018】
図5は、透明樹脂フィルム7より剥離紙9を剥がし、接着剤8を現し、カード本体5の表面に重ねる前の状態である。
【0019】
図6は、透明樹脂フィルム7によりカード本体5の表面を被覆するように接着し、台紙10から剥離した状態で、コンクリート供試体の表面に試験記録カード4を接着するための接着剤6が現れている。接着剤6の接着強度は供試体の強度試験完了後の剥離回収時まで剥落を防止し、強度試験完了後は容易に剥離回収できる接着強度とし、回収した試験記録カードは品質管理資料として発注者宛て提出を可能とした。
【0020】
カード本体5を化学合成紙の白色紙としたことにより、記入した文字が鮮明となり品質管理記録写真も鮮明となることから、品質管理記録の信頼性も高まる。さらにカード本体5を透明樹脂フィルム7で被覆したことにより、記入時においては筆記具を指定する必要なく一般筆記具(油性、水性、硬質ペン、朱肉ほか)による記入を可能にし、記入した文字を強アルカリ性および水性環境から守り全く損なわないものとした。
【0021】
図3(a)は、試験記録カード4の台紙10毎の配置を示すものであり、供試体は発注者の指示により通常1回に6本製造し、水中養生を行いコンクリート打設後1週間目に3本、4週間目にさらに3本の強度試験を行う。このため試験記録カード4は3枚を1組として台紙10に配置して記入時の利便性を向上し、試験記録カード4を作りやすくした。
【0022】
図3の試験記録カード4の形状寸法は長辺を名刺寸法に整合した隅丸形状であり携行、保管収納など取り扱いの利便性が向上した。
【実施例2】
【0023】
図7において透明樹脂フィルム7表面の上端には粘着剤11を介して剥離紙12が設けられ、剥離紙12を剥ぎ粘着剤11により試験記録カード4を供試体型枠内面上部に接着する。
【0024】
試験記録カード4を供試体型枠内面上部に、粘着剤11により接着固定することにより接着位置の精度が向上し、生コンクリートの流し込み時に両手での作業が可能となり、作業効率の向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】 本発明の実施例1のコンクリート供試体の製造方法を示す断面図であり、試験記録カード部を拡大して示す断面図である。 図である。
【図2】 本発明の実施例1のコンクリート供試体の完成状況斜視図である。
【図3】 (a)は試験記録カードの所定事項記入前の透明樹脂フィルムおよび剥離紙の一部を破断して示す正面図で(b)は(a)のIII−III拡大断面図である。
【図4】 (a)は試験記録カード記入前の斜視図であり、(b)は(a)のIV−IV拡大断面図である。
【図5】 (a)は試験記録カードに所定の必要事項記入後、透明樹脂フィルムの剥離紙を剥がした状態の斜視図、(b)は(a)のV−V拡大断面図である。
【図6】 (a)は透明樹脂フィルムによりカード本体の被覆加工を施し、台紙から剥離して供試体型枠内に装填する前の状態の斜視図、(b)は(a)のVI−VI拡大断面図である。
【図7】 本発明の実施例2のコンクリート供試体の製造方法を示し、(a)は透明樹脂フィルムの表面に備えた粘着剤と剥離紙より剥離紙を剥がして供試体型枠内面に装填する前の状態の斜視図、(b)は(a)のVII−VII拡大断面図である。
【図8】 従来のコンクリート供試体の製造方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 供試体
2 生コンクリート
3 供試体型枠
4 試験記録カード
5 カード本体
6 接着剤
7 透明樹脂フィルム
8 接着剤
9 剥離紙
10 台紙
11 粘着剤
12 剥離紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にコンクリートの品質管理上必要な所定事項が記入され、耐アルカリ性、耐水性を有し、背面にはコンクリート供試体表面に接合される接着剤が塗布された化学合成紙からなるカード本体と、前記所定事項記入面を被覆する透明樹脂フィルムとからなる試験記録カードの前記透明樹脂フィルム側を供試体型枠内面に装填した後、生コンクリートを流し込み、硬化後にコンクリート供試体表面に前記試験記録カードが接着されることを特徴とするコンクリート供試体の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の製造方法によって製造される事を特徴とするコンクリート供試体。
【請求項3】
透明樹脂フィルムの表面に粘着剤と剥離紙を備えた試験記録カードの前記剥離紙を剥がして供試体型枠内面に接着することを特徴とする請求項1記載のコンクリート供試体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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