コンクリート床補強構造およびその施工方法
【課題】静電気の帯電を防止しながらコンクリート床の補強がなし得るコンクリート床補強構造およびその施工方法を提供する。
【解決手段】本発明のコンクリート床補強構造Kは、既設のコンクリート床Fを補強するものであって、コンクリート床補強構造Kの表面層が、静電気帯電防止層とされてなるものである。補強されたコンクリート床Fの剛性を高める場合、コンクリート床F表面に形成される上面側補強部10と、コンクリート床F裏面に形成される下面側補強部30とが設けられる。
【解決手段】本発明のコンクリート床補強構造Kは、既設のコンクリート床Fを補強するものであって、コンクリート床補強構造Kの表面層が、静電気帯電防止層とされてなるものである。補強されたコンクリート床Fの剛性を高める場合、コンクリート床F表面に形成される上面側補強部10と、コンクリート床F裏面に形成される下面側補強部30とが設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート床補強構造およびその施工方法に関する。さらに詳しくは、経年変化により亀裂などが発生して強度が低下したコンクリート床を、静電気の帯電を防止しながら簡易に補強できるコンクリート床補強構造およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種建築物においては、床として広くコンクリート床が用いられている。ところが、このコンクリート床は、経年変化により亀裂が進行したり、雰囲気ガスとの化学変化によりコンクリート性状が変化したりして強度が低下するという欠点を有している。
【0003】
このため、亀裂が進行したりなどして強度が低下したコンクリート床の補強がなされている。この補強は、従来、コンクリート床下に鋼板を配設し、その鋼板とコンクリート床との間に樹脂を注入することによりなされている。
【0004】
しかしながら、従来の補強にあっては、コンクリート床下に鋼板を配設しているため、床荷重の増大に伴う躯体への悪影響が懸念されている。
【0005】
また、従来の補強にあっては、亀裂はそのままとされているため、ホークリフトなどの運搬車両が走行するたびに、亀裂に堆積した粉塵が舞い上がり、環境汚染を招来するという問題もある。また、亀裂が振動により大きくなりコンクリートが欠損するという問題もある。その上、裏面(下面)にあってはコンクリート片が落下するおそれがあるという問題もある。
【0006】
かかる問題を解決すべく、本発明者は既に特許文献1にて提案を行っている。
【0007】
しかしながら、本発明者の先の提案には、補強したコンクリート床表面に静電気が帯電するという問題があることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−196187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はかかる本発明者の先の提案における課題に鑑みなされたものであって、静電気の帯電を防止しながらコンクリート床の補強がなし得るコンクリート床補強構造およびその施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のコンクリート床補強構造は、既設のコンクリート床を補強するコンクリート床補強構造であって、前記コンクリート床補強構造の表面層が、静電気帯電防止層とされてなることを特徴とする。
【0011】
本発明のコンクリート床補強構造においては、コンクリート床補強構造が、コンクリート床表面に形成される上面側補強部と、コンクリート床裏面に形成される下面側補強部とからなるのが好ましい。
【0012】
また、本発明のコンクリート床補強構造においては、コンクリート床補強構造が、補強繊維層を含むのが好ましい。
【0013】
さらに、本発明のコンクリート床補強構造においては、コンクリート床補強構造が、コンクリート床表面に形成される補強下地層と、その表面に形成される下地調整層とを含むのが好ましい。その場合、下地調整層によりコンクリート床に生じた亀裂の穴埋めがなされるのがさらに好ましい。
【0014】
本発明のコンクリート床補強構造の施工方法は、既設のコンクリート床を補強するコンクリート床補強構造の施工方法であって、前記コンクリート床補強構造の表面層を静電気帯電防止層とする手順を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明のコンクリート床補強構造の施工方法においては、コンクリート床表面に上面側補強部を形成する手順と、コンクリート床裏面に下面側補強部を形成する手順とを含むのが好ましい。
【0016】
また、本発明のコンクリート床補強構造の施工方法においては、補強繊維層を形成する手順を含むのが好ましい。
【0017】
さらに、本発明のコンクリート床補強構造の施工方法においては、コンクリート床表面に補強下地層を形成する手順と、その表面に下地調整層を形成する手順とを含むのが好ましい。その場合、下地調整層を形成する際にコンクリート床に生じた亀裂の穴埋めをなすのがさらに好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、既設コンクリート床表面の補強が静電気の帯電を防止しながらなし得るという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態1の補強構造の断面図である。
【図2】同補強構造の施工説明図であって、コンクリート床の表面を機械研磨している状態を示す。
【図3】同補強構造の施工説明図であって、補強下地層を形成している状態を示す。
【図4】同補強構造の施工説明図であって、下地調整層を形成している状態を示す。
【図5】同補強構造の施工説明図であって、コンクリート床に生じた亀裂の穴埋めをした状態を示す。
【図6】同補強構造の施工説明図であって、下地調整層を形成している状態を示す。
【図7】同補強構造の施工説明図であって、補強繊維層を形成している状態を示す。
【図8】同補強構造の施工説明図であって、繊維被覆下地層を形成している状態を示す。
【図9】同補強構造の施工説明図であって、繊維被覆材を塗布している状態を示す。
【図10】同補強構造の施工説明図であって、繊維被覆材を締め固めて繊維被覆層を形成している状態を示す。
【図11】同補強構造の施工説明図であって、第1平滑層を形成している状態を示す。
【図12】同補強構造の施工説明図であって、第2平滑層を形成している状態を示す。
【図13】同補強構造の施工説明図であって、仕上げ層を形成している状態を示す。
【図14】本発明の実施形態2の補強構造の断面図である。
【図15】同実施形態の下部補強部の断面図である。
【図16】同実施形態の仕上げ層の断面図である。
【図17】同下部補強部の施工説明図であって、コンクリート床の下面表面を機械研磨している状態を示す。
【図18】同下部補強部の施工説明図であって、補強下地層を形成している状態を示す。
【図19】同下部補強部の施工説明図であって、下地調整層を形成している状態を示す。
【図20】同下部補強部の施工説明図であって、コンクリート床裏面に生じた亀裂の穴埋めをした状態を示す。
【図21】同下部補強部の施工説明図であって、補強繊維下地層を形成している状態を示す。
【図22】同下部補強部の施工説明図であって、補強繊維層を形成している状態を示す。
【図23】同下部補強部の施工説明図であって、仕上げ層が形成された状態を示す。
【図24】同実施形態の仕上げ層の施工説明図であって、仕上げ第1下地層を形成している状態を示す。
【図25】同仕上げ層の施工説明図であって、仕上げモルタル層を形成している状態を示す。
【図26】同仕上げ層の施工説明図であって、仕上げ第2下地層を形成している状態を示す。
【図27】同仕上げ層の施工説明図であって、仕上げ中間層を形成している状態を示す。
【図28】同仕上げ層の施工説明図であって、仕上げ本層を形成している状態を示す。
【図29】本発明の実施形態3の仕上げ層の断面図である。
【図30】同実施形態の仕上げ層の施工説明図であって、仕上げ中間層を形成している状態を示す。
【図31】同仕上げ層の施工説明図であって、仕上げ本層を形成している状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施形態に基づいて説明するが、本発明はかかる実施形態のみに限定されるものではない。
【0021】
実施形態1
図1に、本発明の実施形態1に係るコンクリート床補強構造(以下、単に補強構造という)を断面図で示す。
【0022】
補強構造Kは、図1に示すように、補強下地層11と、下地調整層12と、補強繊維下地層13と、補強繊維層14と、繊維被覆下地層15と、繊維被覆層16と、第1平滑層17と、第2平滑層18と、仕上げ層19とをこの順に積層してなるものとされる。なお、図中の符号20は、コンクリート床F上面に発生した亀裂Cの充填材を示す。
【0023】
補強下地層11は強化コンクリート、例えばアトミクス(株)強化コンクリートプライマー(商品名)からなるものとされ、その厚みは、例えば0.1mm〜0.2mmとされる。
【0024】
下地調整層12は樹脂製モルタルに増粘材を混入してなるもの、例えばアトミクス(株)タフモル(商品名)に増粘材例えばケミベスト(商品名)をタフモル1に対して0.3の比率(重量比率)で混入したものからなるものとされ、その厚みは、例えば0.3mm〜0.6mmとされる。
【0025】
補強繊維下地層13はエポキシ樹脂系下地材、例えばアトミクス(株)フロアトップ タフモルA(商品名)からなるものとされ、その厚みは、例えば0.2mm〜0.8mmとされる。なお、この補強繊維下地層13は必要に応じて設けられればよく、そのため必ずしも設けられる必要はない。
【0026】
補強繊維層14はアラミド繊維生地、例えばファイベックス(株)AK−40/40(商品名)に合成樹脂、例えばアトミクス(株)タフモルA(商品名)を含浸させたものからなるものとされる。
【0027】
繊維被覆下地層15はエポキシ樹脂系下地材、例えばアトミクス(株)フロアトップ#8000アンダー材(商品名)からなるものとされる。
【0028】
繊維被覆層16は樹脂製モルタルからなるもの、例えばアトミクス(株)タフモル(商品名)に骨材として珪砂をタフモル1に対して9〜12の比率(重量比率)で混入したものからなるものとされ、その厚みは、例えば3mm〜10mmとされる。
【0029】
第1平滑層17はエポキシ樹脂系下地材、例えばアトミクス(株)フロアトップ#8000アンダー材に増粘材、例えばケミベスト(商品名)をアンダー材1に対して0.2の比率(重量比率)で混入したものからなるものとされ、その厚みは、例えば0.1mm〜0.2mmとされる。
【0030】
第2平滑層18はエポキシ樹脂系下地材、例えばアトミクス(株)フロアトップ#800プライマーに増粘材、例えばケミベスト(商品名)をプライマー1に対して0.2の比率(重量比率)で混入したものからなるものとされ、その厚みは、例えば0.1mm〜0.3mmとされる。なお、この第2平滑層18は必要に応じて設けられればよく、そのため必ずしも設けられる必要はない。
【0031】
仕上げ層19は静電気防止材入りエポキシ樹脂系仕上げ材、例えばアトミクス(株) 帯電防止材からなるものとされ、その厚みは、例えば0.3mm〜1.2mmとされる。つまり、仕上げ層19は、静電気帯電防止層とされる。
【0032】
次に、図2〜図13を参照しながら、かかる構成とされた補強構造Kの施工について説明する。
【0033】
手順1:補強するコンクリート床Fの表面を機械研磨により研磨して埃ごみなどを除去し、清掃する(図2参照)。例えば、ライナックス研磨機(商品名)により、補強するコンクリート床Fの表面を研磨して清掃する。
【0034】
手順2:研磨されたコンクリート床F上に補強下地層11を、例えばプライマーをローラー刷毛にて塗布することにより形成する(図3参照)。
【0035】
手順3:所定の養生の後、補強下地層11の上に下地調整層12を、例えば下地調整材をコテ塗りすることにより形成する(図4参照)。なお、この下地調整層2の形成の際に、コンクリート床Fに発生している亀裂Cの穴埋めも併せてなされる(図5参照)。
【0036】
手順4:所定の養生の後、下地調整層12の上に補強繊維下地層13を、例えばエポキシ樹脂系下地材をローラー刷毛にて塗布することにより形成する(図6参照)。なお、補強繊維下地層13が設けられない場合には、この手順は省略される。
【0037】
手順5:所定の養生の後、補強繊維下地層13の上にアラミド繊維生地を敷き詰めた後、合成樹脂を例えばコテ塗りにより含浸させて補強繊維層14を形成する(図7参照)。
【0038】
手順6:所定の養生の後、補強繊維層14の上に繊維被覆下地層15を、例えばエポキシ樹脂系下地材をローラ刷毛にて塗布することにより形成する(図8参照)。
【0039】
手順7:所定の養生の後、繊維被覆下地層15の上に繊維被覆層16を形成する。すなわち、繊維被覆材を例えばコテ塗りにより塗布し(図9参照)、ついで機械ローラー押さえにより締め固める。例えば、騎乗トロウエイを走行させて締め固める(図10参照)。
【0040】
手順8:所定の養生の後、繊維被覆層16の上に第1平滑層17を、エポキシ樹脂系下地材を例えばコテ塗りすることにより形成する(図11参照)。
【0041】
手順9:所定の養生の後、第1平滑層17の上に第2平滑層18を、エポキシ樹脂系下地材を例えばコテ塗りすることにより形成する(図12参照)。なお、第2平滑層18が設けられない場合には、この手順は省略される。
【0042】
手順10:所定の養生の後、第2平滑層18の上に仕上げ層19を、静電気防止材入りエポキシ樹脂系仕上げ材を例えばコテ塗りすることにより形成する(図13参照)。
【0043】
手順11:所定の養生をなす。これにより、補強が完了する。
【0044】
このように、本実施形態の補強構造Kによれば、補強層を順次既設のコンクリート床F上に形成するだけで補強がなされるので、劣化したコンクリート床Fの補強が簡易になされる。また、補強による床荷重の増加はごく僅かであるので、躯体に与える悪影響はほとんどない。さらに、コンクリート床F上面(表面)に発生している亀裂Cもカバーされるので、亀裂Cに堆積している粉塵の舞い上がりによる環境汚染が生じることもない。その上、補強されたコンクリート床に静電気が帯電することもない。
【0045】
実施形態2
図14に、本発明の実施形態2の補強構造K1を示す。
【0046】
補強構造K1は、図14に示すように、コンクリート床Fに、表面側に形成される上面側補強部10と、裏面側に形成される下面側補強部30とを備えてなるものとされる。
【0047】
上面側補強部10は、実施形態1と同様とされているので、以下、下面側補強部30について説明する。
【0048】
下面側補強部30は、図15に示すように、補強下地層31と、下地調整層32と、補強繊維下地層33と、補強繊維層34と、仕上げ層35とをこの順に下側に向けて積層してなるものとされる。なお、図中の符号40は、コンクリート床F下面(裏面)に発生した亀裂Cの充填材を示す。
【0049】
補強下地層31は、エポキシ樹脂系下地材、例えばアトミクス(株)フロアトップ#800Aプライマー(商品名)からなるものとされ、その厚みは、例えば0.1mm〜0.3mmとされる。
【0050】
下地調整層32は樹脂製モルタルに増粘材を混入してなるもの(下地調整材)、例えばアトミクス(株)フロアトップ タフモルパテ(商品名)からなるものとされ、凹凸部や段差が生じている箇所に部分的に形成される。なお、下地調整層32は、全面的に形成されてもよい。
【0051】
補強繊維下地層33は、エポキシ樹脂系下地材、例えばアトミクス(株)フロアトップタフモルA(商品名)からなるものとされ、その厚みは、例えば0.2mm〜0.8mmとされる。
【0052】
補強繊維層34はアラミド繊維生地、例えばファイベックス(株)AK−40/40(商品名)に合成樹脂、例えばアトミクス(株)タフモルA(商品名)を含浸させたものからなるものとされる。
【0053】
仕上げ層35は、図16に示すように、例えば仕上げ第1下地層36aと、仕上げモルタル層36bと、仕上げ第2下地層36cと、仕上げ中間層36dと、仕上げ本層36eとからなるものとされる。
【0054】
仕上げ第1下地層36aは、モルタルプライマー、例えばエレホン・化成工業(株)Eボンド#55(商品名)からなるものとされ、その厚みは、例えば0.15mm〜0.3mmとされる。
【0055】
仕上げモルタル層36bは、モルタル、例えばエレホン・化成工業(株)フィックスLS(商品名)からなるものとされ、その厚みは、3mm〜30mmとされる。
【0056】
仕上げ第2下地層36cは、エポキシ樹脂系下地材、例えばアトミクス(株)フロアトップ#800Aプライマー(商品名)からなるものとされ、その厚みは、例えば0.1mm〜0.3mmとされる。
【0057】
仕上げ中間層36dは、エポキシ樹脂系中塗り材、例えばアトミクス(株)フロアトップタフモルA中塗り材(商品名)からなるものとされ、その厚みは、例えば0.2mm〜0.4mmとされる。
【0058】
仕上げ本層36eは、例えばエポキシ樹脂系仕上げ材、例えばアトミクス(株)Eナンバーエコ(商品名)からなるものとされ、その厚みは、例えば0.1mm〜0.35mmとされる。
【0059】
次に、図17〜図23を参照しながら、かかる構成とされた下面側補強部30の施工について説明する。
【0060】
手順21:補強するコンクリート床F下面表面をディスクサンダーなどの機械研磨により研磨して埃ごみなどを除去し、清掃する(図17参照)。例えば、ライナックス研磨機(商品名)により、補強するコンクリート床F下面(裏面)の表面を研磨して清掃する。
【0061】
手順22:研磨されたコンクリート床F下面表面に補強下地層31を、例えばプライマーをローラー塗布することにより形成する(図18参照)。
【0062】
手順23:所定の養生の後、補強下地層31の上、つまり表面に下地調整層32を、例えば下地調整材をコテ塗りすることにより形成する(図19参照)。なお、この下地調整層32の形成の際に、コンクリート床に発生している亀裂Cの穴埋めも併せてなされる(図20参照)。
【0063】
手順24:所定の養生の後、下地調整層32の上、つまり表面に例えばローラー塗布により補強繊維下地層33を形成する(図21参照)。
【0064】
手順25:所定の養生の後、補強繊維下地層33の上、つまり表面にアラミド繊維生地を敷き詰めた後、合成樹脂を例えばローラー塗布により含浸させて補強繊維層34を形成する(図22参照)。
【0065】
手順26:所定の養生の後、補強繊維層34の上、つまり表面に仕上げ層35を形成する(図23参照)。
【0066】
手順27:所定の養生をなす。これにより、補強が完了する。
【0067】
次に、図24〜図28を参照しながら、仕上げ層35の形成について説明する。
【0068】
手順31:補強繊維層34の上、つまり表面に仕上げ第1下地層36aを、例えばモルタルプライマーをローラー塗布することにより形成する(図24参照)。
【0069】
手順32:所定の養生の後、仕上げ第1下地層36aの上、つまり表面に仕上げモルタル層36bを、例えばモルタルをコテ塗りすることにより形成する(図25参照)。
【0070】
手順33:所定の養生の後、仕上げモルタル層36bの上、つまり表面に仕上げ第2下地層36cを、例えばプライマーをローラー塗布することにより形成する(図26参照)。
【0071】
手順34:所定の養生の後、仕上げ第2下地層36cの上、つまり表面に仕上げ中間層36dを、例えば中塗り材をコテ塗りすることにより形成する(図27参照)。
【0072】
手順35:所定の養生の後、仕上げ中間層36dの上、つまり表面に仕上げ本層36eを、例えば仕上げ材をコテ塗りすることにより形成する(図28参照)。
【0073】
このように、本実施形態の補強構造K1によれば、補強層を順次既設のコンクリート床F上面および下面に形成するだけで補強がなされるので、劣化したコンクリート床Fの補強が簡易になされる。また、上下に補強層を設けているので、実施形態1に比してコンクリート床Fの剛性が向上するとともに、コンクリート片の落下も防止される。さらに、補強による床荷重の増加はごく僅かであるので、躯体に与える悪影響はほとんどない。さらにまた、コンクリート床F上面および下面に発生している亀裂Cもカバーされるので、亀裂Cに堆積している粉塵の舞い上がりによる環境汚染が生じることもない。その上、補強されたコンクリート床F上面表面に静電気が帯電することもない。
【0074】
実施形態3
図29に、本発明の実施形態3の補強構造K2の要部を示す。
【0075】
補強構造K2は、図29に示すように、実施形態2の仕上げ層35の構成を改変してなるものとされる。
【0076】
仕上げ層35は、図29に示すように、仕上げ中間層36gと、仕上げ本層36hとからなるものとされる。
【0077】
仕上げ中間層36gは、エポキシ樹脂系中塗り材、例えばアトミクス(株)フロアトップタフモルA(商品名)からなるものとされ、その厚みは、例えば0.2mm〜0.4mmとされる。
【0078】
仕上げ本層は静電気防止材入りエポキシ樹脂系仕上げ材、例えば例えばアトミクス(株)Eナンバーエコからなるものとされ、その厚みは、例えば0.15mm〜0.3mmとされる。
【0079】
次に、図30〜図31を参照しながら、仕上げ層35の形成について説明する。
【0080】
手順41:補強繊維層34の上、つまり表面に仕上げ中間層36gを、例えばエポキシ樹脂系中塗り材をコテ塗りすることにより形成する(図30参照)。
【0081】
手順42:所定の養生の後、仕上げ中間層の上、つまり表面に仕上げ本層を、例えば静電気防止材入りエポキシ樹脂系仕上げ材をコテ塗りするとことにより形成する(図31参照)。
【0082】
このように、本実施形態の補強構造K2によれば、簡易に剛性を向上させながらコンクリート床F表裏両面の補強がなし得る。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、劣化した既設コンクリート床の補強に適用できる。
【符号の説明】
【0084】
11 補強下地層
12 下地調整層
13 補強繊維下地層
14 繊維繊維層
15 繊維被覆下地層
16 繊維被覆層
17 第1平滑層
18 第2平滑層
19 仕上げ層(静電気帯電防止層)
K コンクリート床補強構造
C 亀裂
F コンクリート床
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート床補強構造およびその施工方法に関する。さらに詳しくは、経年変化により亀裂などが発生して強度が低下したコンクリート床を、静電気の帯電を防止しながら簡易に補強できるコンクリート床補強構造およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種建築物においては、床として広くコンクリート床が用いられている。ところが、このコンクリート床は、経年変化により亀裂が進行したり、雰囲気ガスとの化学変化によりコンクリート性状が変化したりして強度が低下するという欠点を有している。
【0003】
このため、亀裂が進行したりなどして強度が低下したコンクリート床の補強がなされている。この補強は、従来、コンクリート床下に鋼板を配設し、その鋼板とコンクリート床との間に樹脂を注入することによりなされている。
【0004】
しかしながら、従来の補強にあっては、コンクリート床下に鋼板を配設しているため、床荷重の増大に伴う躯体への悪影響が懸念されている。
【0005】
また、従来の補強にあっては、亀裂はそのままとされているため、ホークリフトなどの運搬車両が走行するたびに、亀裂に堆積した粉塵が舞い上がり、環境汚染を招来するという問題もある。また、亀裂が振動により大きくなりコンクリートが欠損するという問題もある。その上、裏面(下面)にあってはコンクリート片が落下するおそれがあるという問題もある。
【0006】
かかる問題を解決すべく、本発明者は既に特許文献1にて提案を行っている。
【0007】
しかしながら、本発明者の先の提案には、補強したコンクリート床表面に静電気が帯電するという問題があることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−196187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はかかる本発明者の先の提案における課題に鑑みなされたものであって、静電気の帯電を防止しながらコンクリート床の補強がなし得るコンクリート床補強構造およびその施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のコンクリート床補強構造は、既設のコンクリート床を補強するコンクリート床補強構造であって、前記コンクリート床補強構造の表面層が、静電気帯電防止層とされてなることを特徴とする。
【0011】
本発明のコンクリート床補強構造においては、コンクリート床補強構造が、コンクリート床表面に形成される上面側補強部と、コンクリート床裏面に形成される下面側補強部とからなるのが好ましい。
【0012】
また、本発明のコンクリート床補強構造においては、コンクリート床補強構造が、補強繊維層を含むのが好ましい。
【0013】
さらに、本発明のコンクリート床補強構造においては、コンクリート床補強構造が、コンクリート床表面に形成される補強下地層と、その表面に形成される下地調整層とを含むのが好ましい。その場合、下地調整層によりコンクリート床に生じた亀裂の穴埋めがなされるのがさらに好ましい。
【0014】
本発明のコンクリート床補強構造の施工方法は、既設のコンクリート床を補強するコンクリート床補強構造の施工方法であって、前記コンクリート床補強構造の表面層を静電気帯電防止層とする手順を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明のコンクリート床補強構造の施工方法においては、コンクリート床表面に上面側補強部を形成する手順と、コンクリート床裏面に下面側補強部を形成する手順とを含むのが好ましい。
【0016】
また、本発明のコンクリート床補強構造の施工方法においては、補強繊維層を形成する手順を含むのが好ましい。
【0017】
さらに、本発明のコンクリート床補強構造の施工方法においては、コンクリート床表面に補強下地層を形成する手順と、その表面に下地調整層を形成する手順とを含むのが好ましい。その場合、下地調整層を形成する際にコンクリート床に生じた亀裂の穴埋めをなすのがさらに好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、既設コンクリート床表面の補強が静電気の帯電を防止しながらなし得るという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態1の補強構造の断面図である。
【図2】同補強構造の施工説明図であって、コンクリート床の表面を機械研磨している状態を示す。
【図3】同補強構造の施工説明図であって、補強下地層を形成している状態を示す。
【図4】同補強構造の施工説明図であって、下地調整層を形成している状態を示す。
【図5】同補強構造の施工説明図であって、コンクリート床に生じた亀裂の穴埋めをした状態を示す。
【図6】同補強構造の施工説明図であって、下地調整層を形成している状態を示す。
【図7】同補強構造の施工説明図であって、補強繊維層を形成している状態を示す。
【図8】同補強構造の施工説明図であって、繊維被覆下地層を形成している状態を示す。
【図9】同補強構造の施工説明図であって、繊維被覆材を塗布している状態を示す。
【図10】同補強構造の施工説明図であって、繊維被覆材を締め固めて繊維被覆層を形成している状態を示す。
【図11】同補強構造の施工説明図であって、第1平滑層を形成している状態を示す。
【図12】同補強構造の施工説明図であって、第2平滑層を形成している状態を示す。
【図13】同補強構造の施工説明図であって、仕上げ層を形成している状態を示す。
【図14】本発明の実施形態2の補強構造の断面図である。
【図15】同実施形態の下部補強部の断面図である。
【図16】同実施形態の仕上げ層の断面図である。
【図17】同下部補強部の施工説明図であって、コンクリート床の下面表面を機械研磨している状態を示す。
【図18】同下部補強部の施工説明図であって、補強下地層を形成している状態を示す。
【図19】同下部補強部の施工説明図であって、下地調整層を形成している状態を示す。
【図20】同下部補強部の施工説明図であって、コンクリート床裏面に生じた亀裂の穴埋めをした状態を示す。
【図21】同下部補強部の施工説明図であって、補強繊維下地層を形成している状態を示す。
【図22】同下部補強部の施工説明図であって、補強繊維層を形成している状態を示す。
【図23】同下部補強部の施工説明図であって、仕上げ層が形成された状態を示す。
【図24】同実施形態の仕上げ層の施工説明図であって、仕上げ第1下地層を形成している状態を示す。
【図25】同仕上げ層の施工説明図であって、仕上げモルタル層を形成している状態を示す。
【図26】同仕上げ層の施工説明図であって、仕上げ第2下地層を形成している状態を示す。
【図27】同仕上げ層の施工説明図であって、仕上げ中間層を形成している状態を示す。
【図28】同仕上げ層の施工説明図であって、仕上げ本層を形成している状態を示す。
【図29】本発明の実施形態3の仕上げ層の断面図である。
【図30】同実施形態の仕上げ層の施工説明図であって、仕上げ中間層を形成している状態を示す。
【図31】同仕上げ層の施工説明図であって、仕上げ本層を形成している状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施形態に基づいて説明するが、本発明はかかる実施形態のみに限定されるものではない。
【0021】
実施形態1
図1に、本発明の実施形態1に係るコンクリート床補強構造(以下、単に補強構造という)を断面図で示す。
【0022】
補強構造Kは、図1に示すように、補強下地層11と、下地調整層12と、補強繊維下地層13と、補強繊維層14と、繊維被覆下地層15と、繊維被覆層16と、第1平滑層17と、第2平滑層18と、仕上げ層19とをこの順に積層してなるものとされる。なお、図中の符号20は、コンクリート床F上面に発生した亀裂Cの充填材を示す。
【0023】
補強下地層11は強化コンクリート、例えばアトミクス(株)強化コンクリートプライマー(商品名)からなるものとされ、その厚みは、例えば0.1mm〜0.2mmとされる。
【0024】
下地調整層12は樹脂製モルタルに増粘材を混入してなるもの、例えばアトミクス(株)タフモル(商品名)に増粘材例えばケミベスト(商品名)をタフモル1に対して0.3の比率(重量比率)で混入したものからなるものとされ、その厚みは、例えば0.3mm〜0.6mmとされる。
【0025】
補強繊維下地層13はエポキシ樹脂系下地材、例えばアトミクス(株)フロアトップ タフモルA(商品名)からなるものとされ、その厚みは、例えば0.2mm〜0.8mmとされる。なお、この補強繊維下地層13は必要に応じて設けられればよく、そのため必ずしも設けられる必要はない。
【0026】
補強繊維層14はアラミド繊維生地、例えばファイベックス(株)AK−40/40(商品名)に合成樹脂、例えばアトミクス(株)タフモルA(商品名)を含浸させたものからなるものとされる。
【0027】
繊維被覆下地層15はエポキシ樹脂系下地材、例えばアトミクス(株)フロアトップ#8000アンダー材(商品名)からなるものとされる。
【0028】
繊維被覆層16は樹脂製モルタルからなるもの、例えばアトミクス(株)タフモル(商品名)に骨材として珪砂をタフモル1に対して9〜12の比率(重量比率)で混入したものからなるものとされ、その厚みは、例えば3mm〜10mmとされる。
【0029】
第1平滑層17はエポキシ樹脂系下地材、例えばアトミクス(株)フロアトップ#8000アンダー材に増粘材、例えばケミベスト(商品名)をアンダー材1に対して0.2の比率(重量比率)で混入したものからなるものとされ、その厚みは、例えば0.1mm〜0.2mmとされる。
【0030】
第2平滑層18はエポキシ樹脂系下地材、例えばアトミクス(株)フロアトップ#800プライマーに増粘材、例えばケミベスト(商品名)をプライマー1に対して0.2の比率(重量比率)で混入したものからなるものとされ、その厚みは、例えば0.1mm〜0.3mmとされる。なお、この第2平滑層18は必要に応じて設けられればよく、そのため必ずしも設けられる必要はない。
【0031】
仕上げ層19は静電気防止材入りエポキシ樹脂系仕上げ材、例えばアトミクス(株) 帯電防止材からなるものとされ、その厚みは、例えば0.3mm〜1.2mmとされる。つまり、仕上げ層19は、静電気帯電防止層とされる。
【0032】
次に、図2〜図13を参照しながら、かかる構成とされた補強構造Kの施工について説明する。
【0033】
手順1:補強するコンクリート床Fの表面を機械研磨により研磨して埃ごみなどを除去し、清掃する(図2参照)。例えば、ライナックス研磨機(商品名)により、補強するコンクリート床Fの表面を研磨して清掃する。
【0034】
手順2:研磨されたコンクリート床F上に補強下地層11を、例えばプライマーをローラー刷毛にて塗布することにより形成する(図3参照)。
【0035】
手順3:所定の養生の後、補強下地層11の上に下地調整層12を、例えば下地調整材をコテ塗りすることにより形成する(図4参照)。なお、この下地調整層2の形成の際に、コンクリート床Fに発生している亀裂Cの穴埋めも併せてなされる(図5参照)。
【0036】
手順4:所定の養生の後、下地調整層12の上に補強繊維下地層13を、例えばエポキシ樹脂系下地材をローラー刷毛にて塗布することにより形成する(図6参照)。なお、補強繊維下地層13が設けられない場合には、この手順は省略される。
【0037】
手順5:所定の養生の後、補強繊維下地層13の上にアラミド繊維生地を敷き詰めた後、合成樹脂を例えばコテ塗りにより含浸させて補強繊維層14を形成する(図7参照)。
【0038】
手順6:所定の養生の後、補強繊維層14の上に繊維被覆下地層15を、例えばエポキシ樹脂系下地材をローラ刷毛にて塗布することにより形成する(図8参照)。
【0039】
手順7:所定の養生の後、繊維被覆下地層15の上に繊維被覆層16を形成する。すなわち、繊維被覆材を例えばコテ塗りにより塗布し(図9参照)、ついで機械ローラー押さえにより締め固める。例えば、騎乗トロウエイを走行させて締め固める(図10参照)。
【0040】
手順8:所定の養生の後、繊維被覆層16の上に第1平滑層17を、エポキシ樹脂系下地材を例えばコテ塗りすることにより形成する(図11参照)。
【0041】
手順9:所定の養生の後、第1平滑層17の上に第2平滑層18を、エポキシ樹脂系下地材を例えばコテ塗りすることにより形成する(図12参照)。なお、第2平滑層18が設けられない場合には、この手順は省略される。
【0042】
手順10:所定の養生の後、第2平滑層18の上に仕上げ層19を、静電気防止材入りエポキシ樹脂系仕上げ材を例えばコテ塗りすることにより形成する(図13参照)。
【0043】
手順11:所定の養生をなす。これにより、補強が完了する。
【0044】
このように、本実施形態の補強構造Kによれば、補強層を順次既設のコンクリート床F上に形成するだけで補強がなされるので、劣化したコンクリート床Fの補強が簡易になされる。また、補強による床荷重の増加はごく僅かであるので、躯体に与える悪影響はほとんどない。さらに、コンクリート床F上面(表面)に発生している亀裂Cもカバーされるので、亀裂Cに堆積している粉塵の舞い上がりによる環境汚染が生じることもない。その上、補強されたコンクリート床に静電気が帯電することもない。
【0045】
実施形態2
図14に、本発明の実施形態2の補強構造K1を示す。
【0046】
補強構造K1は、図14に示すように、コンクリート床Fに、表面側に形成される上面側補強部10と、裏面側に形成される下面側補強部30とを備えてなるものとされる。
【0047】
上面側補強部10は、実施形態1と同様とされているので、以下、下面側補強部30について説明する。
【0048】
下面側補強部30は、図15に示すように、補強下地層31と、下地調整層32と、補強繊維下地層33と、補強繊維層34と、仕上げ層35とをこの順に下側に向けて積層してなるものとされる。なお、図中の符号40は、コンクリート床F下面(裏面)に発生した亀裂Cの充填材を示す。
【0049】
補強下地層31は、エポキシ樹脂系下地材、例えばアトミクス(株)フロアトップ#800Aプライマー(商品名)からなるものとされ、その厚みは、例えば0.1mm〜0.3mmとされる。
【0050】
下地調整層32は樹脂製モルタルに増粘材を混入してなるもの(下地調整材)、例えばアトミクス(株)フロアトップ タフモルパテ(商品名)からなるものとされ、凹凸部や段差が生じている箇所に部分的に形成される。なお、下地調整層32は、全面的に形成されてもよい。
【0051】
補強繊維下地層33は、エポキシ樹脂系下地材、例えばアトミクス(株)フロアトップタフモルA(商品名)からなるものとされ、その厚みは、例えば0.2mm〜0.8mmとされる。
【0052】
補強繊維層34はアラミド繊維生地、例えばファイベックス(株)AK−40/40(商品名)に合成樹脂、例えばアトミクス(株)タフモルA(商品名)を含浸させたものからなるものとされる。
【0053】
仕上げ層35は、図16に示すように、例えば仕上げ第1下地層36aと、仕上げモルタル層36bと、仕上げ第2下地層36cと、仕上げ中間層36dと、仕上げ本層36eとからなるものとされる。
【0054】
仕上げ第1下地層36aは、モルタルプライマー、例えばエレホン・化成工業(株)Eボンド#55(商品名)からなるものとされ、その厚みは、例えば0.15mm〜0.3mmとされる。
【0055】
仕上げモルタル層36bは、モルタル、例えばエレホン・化成工業(株)フィックスLS(商品名)からなるものとされ、その厚みは、3mm〜30mmとされる。
【0056】
仕上げ第2下地層36cは、エポキシ樹脂系下地材、例えばアトミクス(株)フロアトップ#800Aプライマー(商品名)からなるものとされ、その厚みは、例えば0.1mm〜0.3mmとされる。
【0057】
仕上げ中間層36dは、エポキシ樹脂系中塗り材、例えばアトミクス(株)フロアトップタフモルA中塗り材(商品名)からなるものとされ、その厚みは、例えば0.2mm〜0.4mmとされる。
【0058】
仕上げ本層36eは、例えばエポキシ樹脂系仕上げ材、例えばアトミクス(株)Eナンバーエコ(商品名)からなるものとされ、その厚みは、例えば0.1mm〜0.35mmとされる。
【0059】
次に、図17〜図23を参照しながら、かかる構成とされた下面側補強部30の施工について説明する。
【0060】
手順21:補強するコンクリート床F下面表面をディスクサンダーなどの機械研磨により研磨して埃ごみなどを除去し、清掃する(図17参照)。例えば、ライナックス研磨機(商品名)により、補強するコンクリート床F下面(裏面)の表面を研磨して清掃する。
【0061】
手順22:研磨されたコンクリート床F下面表面に補強下地層31を、例えばプライマーをローラー塗布することにより形成する(図18参照)。
【0062】
手順23:所定の養生の後、補強下地層31の上、つまり表面に下地調整層32を、例えば下地調整材をコテ塗りすることにより形成する(図19参照)。なお、この下地調整層32の形成の際に、コンクリート床に発生している亀裂Cの穴埋めも併せてなされる(図20参照)。
【0063】
手順24:所定の養生の後、下地調整層32の上、つまり表面に例えばローラー塗布により補強繊維下地層33を形成する(図21参照)。
【0064】
手順25:所定の養生の後、補強繊維下地層33の上、つまり表面にアラミド繊維生地を敷き詰めた後、合成樹脂を例えばローラー塗布により含浸させて補強繊維層34を形成する(図22参照)。
【0065】
手順26:所定の養生の後、補強繊維層34の上、つまり表面に仕上げ層35を形成する(図23参照)。
【0066】
手順27:所定の養生をなす。これにより、補強が完了する。
【0067】
次に、図24〜図28を参照しながら、仕上げ層35の形成について説明する。
【0068】
手順31:補強繊維層34の上、つまり表面に仕上げ第1下地層36aを、例えばモルタルプライマーをローラー塗布することにより形成する(図24参照)。
【0069】
手順32:所定の養生の後、仕上げ第1下地層36aの上、つまり表面に仕上げモルタル層36bを、例えばモルタルをコテ塗りすることにより形成する(図25参照)。
【0070】
手順33:所定の養生の後、仕上げモルタル層36bの上、つまり表面に仕上げ第2下地層36cを、例えばプライマーをローラー塗布することにより形成する(図26参照)。
【0071】
手順34:所定の養生の後、仕上げ第2下地層36cの上、つまり表面に仕上げ中間層36dを、例えば中塗り材をコテ塗りすることにより形成する(図27参照)。
【0072】
手順35:所定の養生の後、仕上げ中間層36dの上、つまり表面に仕上げ本層36eを、例えば仕上げ材をコテ塗りすることにより形成する(図28参照)。
【0073】
このように、本実施形態の補強構造K1によれば、補強層を順次既設のコンクリート床F上面および下面に形成するだけで補強がなされるので、劣化したコンクリート床Fの補強が簡易になされる。また、上下に補強層を設けているので、実施形態1に比してコンクリート床Fの剛性が向上するとともに、コンクリート片の落下も防止される。さらに、補強による床荷重の増加はごく僅かであるので、躯体に与える悪影響はほとんどない。さらにまた、コンクリート床F上面および下面に発生している亀裂Cもカバーされるので、亀裂Cに堆積している粉塵の舞い上がりによる環境汚染が生じることもない。その上、補強されたコンクリート床F上面表面に静電気が帯電することもない。
【0074】
実施形態3
図29に、本発明の実施形態3の補強構造K2の要部を示す。
【0075】
補強構造K2は、図29に示すように、実施形態2の仕上げ層35の構成を改変してなるものとされる。
【0076】
仕上げ層35は、図29に示すように、仕上げ中間層36gと、仕上げ本層36hとからなるものとされる。
【0077】
仕上げ中間層36gは、エポキシ樹脂系中塗り材、例えばアトミクス(株)フロアトップタフモルA(商品名)からなるものとされ、その厚みは、例えば0.2mm〜0.4mmとされる。
【0078】
仕上げ本層は静電気防止材入りエポキシ樹脂系仕上げ材、例えば例えばアトミクス(株)Eナンバーエコからなるものとされ、その厚みは、例えば0.15mm〜0.3mmとされる。
【0079】
次に、図30〜図31を参照しながら、仕上げ層35の形成について説明する。
【0080】
手順41:補強繊維層34の上、つまり表面に仕上げ中間層36gを、例えばエポキシ樹脂系中塗り材をコテ塗りすることにより形成する(図30参照)。
【0081】
手順42:所定の養生の後、仕上げ中間層の上、つまり表面に仕上げ本層を、例えば静電気防止材入りエポキシ樹脂系仕上げ材をコテ塗りするとことにより形成する(図31参照)。
【0082】
このように、本実施形態の補強構造K2によれば、簡易に剛性を向上させながらコンクリート床F表裏両面の補強がなし得る。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、劣化した既設コンクリート床の補強に適用できる。
【符号の説明】
【0084】
11 補強下地層
12 下地調整層
13 補強繊維下地層
14 繊維繊維層
15 繊維被覆下地層
16 繊維被覆層
17 第1平滑層
18 第2平滑層
19 仕上げ層(静電気帯電防止層)
K コンクリート床補強構造
C 亀裂
F コンクリート床
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設のコンクリート床を補強するコンクリート床補強構造であって、
前記コンクリート床補強構造の表面層が、静電気帯電防止層とされてなることを特徴とするコンクリート床補強構造。
【請求項2】
コンクリート床補強構造が、コンクリート床表面に形成される上面側補強部と、コンクリート床裏面に形成される下面側補強部とからなることを特徴とする請求項1記載のコンクリート床補強構造。
【請求項3】
コンクリート床補強構造が、補強繊維層を含むことを特徴とする請求項1記載のコンクリート床補強構造。
【請求項4】
コンクリート床補強構造が、コンクリート床表面に形成される補強下地層と、その表面に形成される下地調整層とを含むことを特徴とする請求項1記載のコンクリート床補強構造。
【請求項5】
下地調整層によりコンクリート床に生じた亀裂の穴埋めがなされてなることを特徴とする請求項4記載のコンクリート床補強構造。
【請求項6】
既設のコンクリート床を補強するコンクリート床補強構造の施工方法であって、
前記コンクリート床補強構造の表面層を静電気帯電防止層とする手順を含むことを特徴とするコンクリート床補強構造の施工方法。
【請求項7】
コンクリート床表面に上面側補強部を形成する手順と、コンクリート床裏面に下面側補強部を形成する手順とを含むことを特徴とする請求項6記載のコンクリート床補強構造の施工方法。
【請求項8】
補強繊維層を形成する手順を含むことを特徴とする請求項6記載のコンクリート床補強構造の施工方法。
【請求項9】
コンクリート床表面に補強下地層を形成する手順と、その表面に下地調整層を形成する手順とを含むことを特徴する請求項6記載のコンクリート床補強構造の施工方法。
【請求項10】
下地調整層を形成する際にコンクリート床に生じた亀裂の穴埋めをなすことを特徴とする請求項9記載のコンクリート床補強構造の施工方法。
【請求項1】
既設のコンクリート床を補強するコンクリート床補強構造であって、
前記コンクリート床補強構造の表面層が、静電気帯電防止層とされてなることを特徴とするコンクリート床補強構造。
【請求項2】
コンクリート床補強構造が、コンクリート床表面に形成される上面側補強部と、コンクリート床裏面に形成される下面側補強部とからなることを特徴とする請求項1記載のコンクリート床補強構造。
【請求項3】
コンクリート床補強構造が、補強繊維層を含むことを特徴とする請求項1記載のコンクリート床補強構造。
【請求項4】
コンクリート床補強構造が、コンクリート床表面に形成される補強下地層と、その表面に形成される下地調整層とを含むことを特徴とする請求項1記載のコンクリート床補強構造。
【請求項5】
下地調整層によりコンクリート床に生じた亀裂の穴埋めがなされてなることを特徴とする請求項4記載のコンクリート床補強構造。
【請求項6】
既設のコンクリート床を補強するコンクリート床補強構造の施工方法であって、
前記コンクリート床補強構造の表面層を静電気帯電防止層とする手順を含むことを特徴とするコンクリート床補強構造の施工方法。
【請求項7】
コンクリート床表面に上面側補強部を形成する手順と、コンクリート床裏面に下面側補強部を形成する手順とを含むことを特徴とする請求項6記載のコンクリート床補強構造の施工方法。
【請求項8】
補強繊維層を形成する手順を含むことを特徴とする請求項6記載のコンクリート床補強構造の施工方法。
【請求項9】
コンクリート床表面に補強下地層を形成する手順と、その表面に下地調整層を形成する手順とを含むことを特徴する請求項6記載のコンクリート床補強構造の施工方法。
【請求項10】
下地調整層を形成する際にコンクリート床に生じた亀裂の穴埋めをなすことを特徴とする請求項9記載のコンクリート床補強構造の施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
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【図22】
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【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2010−222839(P2010−222839A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71250(P2009−71250)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(309008790)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(309008790)
【Fターム(参考)】
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