説明

コンクリート成形体及びその製造方法

【課題】短時間で脱型可能な圧縮強度が発現され、長期強度増進が大きく、製造時の急激な温度上昇が抑制され、得られた成形体の外観に優れるコンクリート成形体、及び、その生産性に優れた製造方法を提供する。
【解決手段】カルシウムアルミネート系水硬性材料と、アルカリ金属炭酸塩およびオキシカルボン酸から選択される反応調整剤と、水と、を含む第1の混合物、及び、ポルトランドセメントと、オキシカルボン酸、又は、オキシカルボン酸とリグニンスルホン酸とを主成分とする反応調整剤と、水と、を含む第2の混合物を、混合してなるコンクリート組成物により得られるコンクリート成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート成形体及びその製造方法に関し、詳細には、短時間で脱型可能な強度を発現する速硬性のコンクリート成形体及び生産性に優れるコンクリート成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土木建築構造物に使用されるセメントコンクリートからなる成形体は、通常、コンクリートを型枠に打設した後、所定時間静置することで脱型可能な強度を発現する。例えば、モルタルやコンクリート製のプレキャスト部材などを製造するためには、スランプが3〜10cm程度のコンクリート組成物を型枠内に充填した後、所定時間静置した後、蒸気などにより昇温し、50〜70℃程度に保持したまま数時間放置し、脱型可能な強度、例えば、圧縮強度が12〜25N/mm程度となった後脱型して成形体を得るものであるが、コンクリート組成物の配合から成形体を得るまでには、少なくとも5時間程度を要するために生産性に劣るのみならず、脱型可能になるまで保存するための広いスペースを必要とするために、短時間で高強度の成形体を得る手段が望まれている。
【0003】
コンクリート成形体を短時間で得るために、練り混ぜ後数時間で脱型可能な強度を有する速硬性セメント組成物が用いられている。公知の速硬性セメント組成物としては、酸と塩基の中和反応により硬化速度を向上させる(1)リン酸マグネシウムセメント、カルシウムアルミネートを11CaO・7Al・CaFで表される化合物としてセメントクリンカー中に生成させ、これにセッコウ等を添加して製造した(2)ジェットセメント、或いは、非晶質のカルシウムアルミネート12CaO・7Alを粉砕したものにセッコウ等を添加した混和剤をポルトランドセメントに添加してなる(3)速硬性混和材を用いたセメント組成物が知られている。
【0004】
これらのうち、(1)リン酸マグネシウムセメントは硬化体がアルカリ性を示さないため鉄筋に対する防錆作用を持たず、このため、鉄筋コンクリート構造物には使用し難く、用途が限定されている。
(2)ジェットセメント、(3)速硬性混和材を用いたセメントのいずれも練り混ぜ後数時間で脱型可能な強度を発現でき、鉄筋コンクリート構造物に使用することができるが、速硬性混和剤である11CaO・7Al・CaFや12CaO・7Alは、主にエトリンガイトの生成により早期強度の発現を可能としているが、この反応が進むと同時にポルトランドセメント、特にポルトランドセメント中のエーライトと呼ばれるカルシウムシリケート3CaO・SiOの反応も促進されるため、必要な早期強度を確保した後も、水和反応が進んでしまう。その結果、きわめて発熱の大きなセメントとなり、熱ひび割れ等の問題を引き起こし、さらに、長期強度が出にくくなる傾向がある。また、硬化したコンクリート成型体表面にエトリンガイトに起因すると考えられる白色の斑点が現れ、美観が損なわれるといった問題があり、セメントやコンクリート組成物の処方のみでコンクリート成形体の生産性を向上させるのは困難であるのが現状である。
【0005】
任意のコンクリート組成物を用いてコンクリート成形体を効率よく生産する方法として、予め加熱した型枠内にコンクリート組成物を充填し、硬化が開始した時点で、底板のみを残して脱型するというコンクリート二次製品の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法によれば、脱型までの時間は短縮できるものの、底板との接触面積が硬化に影響を与えるために成型しうる形状が限定され、体積の大きい成形体には適用し難いという問題があり、また、底板を残して脱型した場合にも、脱型直後に搬送可能な程度の強度に達しない場合もあり、使用範囲が限定されていた。
【特許文献1】特開2001−260111公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題点を考慮してなされた本発明の目的は、短時間で脱型可能な圧縮強度が発現され、得られた成形体の外観に優れ、また、硬化時の初期に高温とならないため、硬化時の水和発熱に起因するひび割れの発生が抑制され、長期的な強度発現性に優れた、コンクリート成形体を提供することにある。また、本発明のさらなる目的は、短時間で脱型可能な圧縮強度が発現され、生産性に優れ、且つ、高品質なコンクリート成形体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、コンクリート成形体を構成するコンクリート組成物の配合時に、これらを2分割して別々に混練りするとともに、用いる硬化促進剤の種類を制御することで前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の構成は以下に示すとおりである。
<1> カルシウムアルミネート系水硬性材料と、アルカリ金属炭酸塩およびオキシカルボン酸から選択される反応調整剤と、水と、を含む第1の混合物、及び、ポルトランドセメント、オキシカルボン酸、又は、オキシカルボン酸とリグニンスルホン酸とを主成分とする反応調整剤と、水と、を含む第2の混合物を、混合してなるコンクリート組成物により得られるコンクリート成形体。
<2> 前記第1の混合物に、さらにポルトランドセメントを含有する<1>記載のコンクリート成形体。
<3> 前記第1の混合物中に含まれるポルトランドセメントと、第2の混合物中に含まれるポルトランドセメントとの質量比が、8:2から0:10の範囲にある<1>又は<2>記載のコンクリート成形体。
【0008】
<4> 前記カルシウムアルミネート系水硬性材料が、非晶質カルシウムアルミネート(12CaO・7Al)またはフッ化物を含むカルシウムアルミネート(11CaO・7Al・CaF)、を主成分とする材料である<1>〜<3>のいずれか1項記載のコンクリート成形体。
<5> 前記第1の混合物に含まれる反応調整剤が、炭酸カルシウム、炭酸カリウムから選択されるアルカリ金属炭酸塩、及び、クエン酸、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸から選択されるオキシカルボン酸及びその塩の1種以上を主成分とする化合物であり、第2の混合物中に含まれる反応調整剤が、クエン酸、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコヘプトン酸から選択されるオキシカルボン酸及びその塩の1種以上を含有する<1>〜<4>のいずれか1項に記載のコンクリート成形体。
<6> 前記コンクリート成形体の製造3時間後、即ち、コンクリート組成物を型枠内に充填を開始して3時間した後、の圧縮強度が、12N/mm以上である<1>〜<5>のいずれか1項に記載のコンクリート成形体。
【0009】
<7> カルシウムアルミネート系水硬性材料と、アルカリ金属炭酸塩およびオキシカルボン酸から選択される反応調整剤と、水と、を混合して第1の混合物を調整する工程と、ポルトランドセメントと、オキシカルボン酸、又は、オキシカルボン酸とリグニンスルホン酸とを主成分とするから選択される反応調整剤と、水と、を含む第2の混合物を調整する工程と、前記第1の混合物と第2の混合物とを混合して練り混ぜる工程と、練り混ぜた混合物を型枠に流し込んで硬化させる工程と、を含むコンクリート成形体の製造方法。
<8> 前記第1の混合物の調整工程が、ポルトランドセメントと、カルシウムアルミネート系水硬性材料と、アルカリ金属炭酸塩およびオキシカルボン酸から選択される反応調整剤と、水と、を混合する工程である<7>記載のコンクリート成形体の製造方法。
<9> まず、前記第2の混合物を調整する工程を実施し、その後、第1の混合物を調整する工程を実施する<7>又は<8>に記載のコンクリート成形体の製造方法。
<10> 前記第1の混合物の調整工程において、アルカリ金属炭酸塩およびオキシカルボン酸から選択される反応調整剤を、前記第1の混合物と第2の混合物中のカルシウムアルミネート系水硬性材料とポルトランドセメントとの総量100質量部に対し、0.3〜1.5質量部の範囲で添加することにより、第1の混合物と第2の混合物とを混合した後、30分間、スランプを5〜18cmに保持する<7>〜<9>のいずれかに記載のコンクリート成形体の製造方法。
<11> 前記第2の混合物の調製工程において、オキシカルボン酸塩、又は、オキシカルボン酸とリグニンスルホン酸とを主成分とするを主成分とする反応調整剤を、前記第1の混合物と第2の混合物中のカルシウムアルミネート系水硬性材料とポルトランドセメントの総量100質量部に対し、0.1〜1.0質量部の範囲で添加する<7>〜<10>のいずれか1項に記載のコンクリート成形体の製造方法。
【0010】
本発明の作用は明確ではないが、以下のように推定される。本発明のコンクリート成形体では、水硬性材料、反応調節剤、水及び所望によりポルトランドセメントの一部を含有するセメント組成物である第1の混合物と、ポルトランドセメント、ポルトランドセメントの反応調節剤、水を含有するセメント組成物である第2の混合物とに分けて混合物を調製し、最終的にこれらのセメント組成物同士をさらに混合して、コンクリート組成物を調製し、これで成形体を形成するが、第1の混合物では、アルミネート系水硬性材料がポルトランドセメントと共に練り混ぜられることで、強アルカリ下、急激な水和反応を生じ、また、第1の混合物にポルトランドセメントを添加しない場合は、第2混合物と混合した際に、ポルトランドセメント中の強アルカリにより水和反応を生起して、エトリンガイトを生成して早期に強度発現するセメント組成物とすることができる。
【0011】
また水硬性材料を含まない第2の混合物では、それに含まれるポルトランドセメントの反応調節剤(主には超遅延剤)の効果により、第1の混合物の反応時期よりも水和反応が遅れて進むセメント組成物が得られる。これを混合してなるコンクリート組成物においては、まず第1の混合物1における反応が先に生じるが、その間は、第2の混合物における反応は、ポルトランドセメントの反応調節剤により抑制される。従って、第1の混合物1の反応が終了した後に、第2の混合物の水和反応が進行するので、第1の混合物1の反応によって早期強度を発現した後、第2の混合物の反応により、セメントの水和反応に起因する強度が発現する。このため、二つを混合したコンクリート組成物の初期の水和反応は緩やかになり、反応による発熱温度上昇が抑制され、早期に硬化して高強度が達成されると共に、温度上昇に起因して生じる成形体におけるクラック発生の懸念がなく、また、水硬性材料に起因する斑点の生成が抑制され、均一で外観にも優れた成形体が短時間で形成され、且つ、初期の発熱温度上昇が緩やかになることは、すなわち水和反応速度が遅くなっていることであり、緻密な水和組織が形成されやすくなっているので、長期的に圧縮強度の増進が得られていると推定している。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、短時間で脱型可能な圧縮強度が発現され、得られた成形体の外観に優れ、また、硬化時の初期に高温とならないため、硬化時の水和発熱に起因するひび割れの発生が抑制され、長期的な強度発現性に優れた、コンクリート成形体を提供することができる。
また、本発明によれば、短時間で脱型可能な圧縮強度が発現され、生産性に優れ、且つ、高品質なコンクリート成形体を形成しうるコンクリート成形体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のコンクリート成形体を構成するコンクリート組成物は、ポルトランドセメント、水硬性材料、反応調整剤、水、さらに、所望により、目的に応じて、混和材料、骨材などを含有する。
なお、本発明においてコンクリート組成物とは、コンクリート、モルタル、グラウト等をすべて包含するものである。
【0014】
本発明においては、水硬性材料の反応と、ポルトランドセメントの水和反応の時期を分離するため、予め組成の異なる2種の混合物を調製し、最終的にこれらを混合して、コンクリート組成物を調製し、所定の型枠に充填することで速硬性のコンクリート成形体を得る。
以下、本発明のコンクリート成形体の詳細について、その製造方法の工程順に、詳細に説明する。
【0015】
<第1の混合物の調製>
本発明の成形体を得るためには、まず、ポルトランドセメントと、カルシウムアルミネート系水硬性材料と、炭酸カルシウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、クエン酸、グルコン酸などのオキシカルボン酸及びその塩から選択される反応調整剤と、水と、を含有し、所望によりさらにポルトランドセメントを含有する第1の混合物を調製する。
本発明に用いられるポルトランドセメントには特に制限はなく、形成されるセメント系成型体の用途に応じて、各種セメント類の中から、適宜選択することができ、早強ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、混合セメントすなわち、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフュームなどをポルトランドセメントの一部に置換したセメントなどが使用できる。
【0016】
ポルトランドセメントは、コンクリート成形体を形成する必要量の全てを後述する第2の混合物に添加してもよく、また、その一部をその第2の混合物に添加し、残りを第1の混合物に添加してもよい。
第1の混合物中に含まれるポルトランドセメントと、後述する第2の混合物中に含まれるポルトランドセメントとの質量比としては、8:2から0:10の範囲にあることが好ましく、4:6〜2:8の範囲であることがより好ましい。
ポルトランドセメントの添加量は、初期硬化性・初期強度、長期強度、コンクリート成形体の使用目的等を考慮して適宜選択されるが、通常は、成形体を構成するコンクリート組成物中に、総量で270〜650kg/m含有することが好ましく、320〜530kg/m含有することがさらに好ましい。
【0017】
第1の混合物に用いられるカルシウムアルミネート系水硬性材料としては、非晶質カルシウムアルミネート(12CaO・7Al)、フッ物を含むカルシウムアルミネート(11CaO・7Al・CaF)、硫酸アルミニウムと硫酸カルシウムを主成分とする水硬性材料などを用いることができるが、効果の観点から、非晶質カルシウムアルミネート(12CaO・7Al)またはフッ化物を含むカルシウムアルミネート(11CaO・7Al・CaF)を主成分とする材料であることが好ましい。また、速硬性を示すための水和生成物であるエトリンガイトの生成に必要な、無機硫酸塩たとえば無水硫酸カルシウムなどを混入することが好ましい。
第1の混合物に含まれる水硬性材料の量もまた、目的に応じて選択されるが、例えば、早期強度を、脱型して吊り上げに必要な12〜15N/mm程度以上とする場合には、ポルトランドセメントの全質量に対して、3〜30質量%の範囲とすることが好ましく、10〜25質量%とすることがより好ましい。
【0018】
第1の混合物で用いる、水硬性材料の反応調整剤としては、アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸カリウムが、オキシカルボン酸としては、クエン酸、グルコン酸等を主成分とする化合物が挙げられ、なかでも、反応性を効果的に制御しうるといった観点からは、前記化合物の複合物、即ち、アルカリ金属炭酸塩とオキシカルボン酸との双方を適度に含むことが好ましい。このような反応調整剤は、市販品としても入手可能であり、例えば、電気化学工業(株)社、コスミック反応調節剤:デンカセッターD200(有効成分として炭酸カリウム、クエン酸、及び、グルコン酸塩を含有する)などが挙げられる。
第1の混合物で用いられる前記反応調整剤の添加量は、前記ポルトランドセメントと水硬性材料との全質量(総量)に対し、0.4〜1.8質量%の範囲にあることが好ましく、0.6〜1.5質量%の範囲にあることがより好ましい。添加量を上記範囲とすることで、第1の混合物と第2の混合物とを混合させる工程において、両者の混合後30分程度の間、スランプを5〜18cm程度のハンドリング性に優れた範囲に保持することが可能である。
【0019】
第1の混合物の調製に際しては、少なくともカルシウムアルミネート系水硬性材料、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、クエン酸、または、グルコン酸を主成分とする反応調整剤と水とを含有し、所望によりさらにポルトランドセメントを添加して、ミキサで練り混ぜればよい。水の添加量は、必要な初期強度、長期強度、混合物のハンドリング性を考慮して適宜選択されるが、通常は、ポルトランドセメント100質量部に対して、30〜50質量部であることが好ましい。
第1の混合物の混合は、ミキサ中においてこれらが均一混合された状態になるまで行えばよいが、通常は、混合時間は、1分〜3分間程度である。
第1の混合物中では、調製時に、アルミネート系水硬性材料およびセメント粒子中のアルミネート系成分(3CaO・Al)が水と接触することにより、急激にアルミネート系水和物の生成を生じるが、均一に液相中に反応調整剤を分散させアルミネート系水硬性材料およびセメント粒子の表面に吸着させることで、急激な水和反応を抑制し、適切な反応速度に調整されるものと推定している。
【0020】
<第2の混合物の調製>
第2の混合物は、少なくともポルトランドセメントと、オキシカルボン酸、又は、オキシカルボン酸とリグニンスルホン酸とを主成分とする反応調整剤と、水と、を含有する。
ここで用いられる反応調節剤は、セメントの水和反応を遅延させる性能を有する遅延剤であり、例えば、オキシカルボン酸塩を主成分とするもの、オキシカルボン酸と変性リグニンスルホン酸化合物の複合体を主成分とするもの等を用いることができる。
第2の混合物の反応調整剤に用いられるオキシカルボン酸としては、クエン酸、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコヘプトン酸などが挙げられ、これらは塩の形態であってもよい。また、オキシカルボン酸化合物のみならず、オキシカルボン酸とともに、リグニンスルホン酸、変性リグニンスルホン酸或いはその塩などのリグニンスルホン酸化合物やショ糖などを含む複合体を主成分とするものも、好適に用いられる。
第2の混合物に用いられる反応調整剤は市販品としても入手可能であり、例えば、オキシカルボン酸塩を主成分とする反応調整剤としては、(株)フローリック社製、フローリックTが、変性リグニンスルホン酸化合物とオキシカルボン酸化合物の複合体を主成分とする反応調整剤としては、(株)エヌエムビー社製、ポゾリスNo.89などが挙げられる。
【0021】
反応調整剤の添加量としては、オキシカルボン酸塩を主成分とするものであれば、ポルトランドセメントの全質量に対して0.3〜1.0質量%の範囲であることが好ましく、この添加量の範囲において、ポルトランドセメントの水和反応の開始時期を、添加から6〜30時間遅延させることができる。また、変性リグニンスルホン酸化合物とオキシカルボン酸化合物の複合体を主成分とするものであれば、添加量はポルトランドセメント全質量に対して0.6〜1.2質量%の範囲であることが好ましく、この添加量において、ポルトランドセメントの水和反応の開始時期を、添加から3〜12時間遅延させることができる。
【0022】
第1の混合物には、ポルトランドセメントが含まれていても、含まれていなくてもよいが、セメント粒子中には水と接触すると急激に反応を生じる反応速度の速いアルミネート系成分(3CaO・Al)が5〜10%程度含まれているため、ここに一部のポルトランドセメントを含有させることにより、オキシカルボン酸を主成分とする反応調整剤がセメント粒子の表面に吸着した状態が形成されるため、その後の混合時に、効果的にコンクリートの硬化反応速度を調整できるため、ポルトランドセメントの一部を第1の混合物に含有させることが好ましい。
【0023】
第2の混合物の調製に際しては、ポルトランドセメントと、前記オキシカルボン酸、又は、オキシカルボン酸とリグニンスルホン酸とを主成分とする反応調整剤と水、とをミキサで練り混ぜればよい。水の添加量は、必要な初期強度、長期強度、混合物のハンドリング性を考慮して適宜選択されるが、第2の混合物に添加するセメント質量100に対して通常は、30〜50質量%であることが好ましい。
第2の混合物の混合は、ミキサ中においてこれらが均一混合された状態になるまで行えばよいが、通常は、混合時間は、1〜3分間程度である。
第2の混合物中では、調製時に、ポルトランドセメントと、反応調整剤が水に均一に分散し、その粒子表面に反応調整剤が吸着し、セメントの水和反応が適切な反応速度に調整されるものと考えられる。
【0024】
アルミネート系水硬性材料、アルミネート系水硬性材料の反応調節剤、ポルトランドセメントの反応調節剤の種類、添加量は、上記に限定するものではなく、コンクリート成形体の形状、用途、必要な強度など、それぞれ所定の性能を満足する種類、添加量を適宜選定すればよい。
【0025】
本発明に係るコンクリート組成物には、目的に応じて骨材を添加することができる。骨材は、これらの反応に対して影響を及ぼすものではなく、必要に応じて第1の混合物あるいは第2の混合物に適量を混合すればよい。
本発明に用いうる骨材としては、特に制限はなく、コンクリート成形体の目的に応じて、公知の細骨材、粗骨材を用いることができ、その配合量もまた、一般的なコンクリート組成物の範囲内で任意に選択することができる。
コンクリート成形体の使用目的によっては、骨材を必要とせず、その場合には、骨材を添加せずにコンクリート組成物が調製される。
骨材の表面には骨材重量に対して細骨材では2〜8%程度、粗骨材でも多ければ2%程度の水が表面水として付着しているのが一般的でさらに骨材は内部に水分を1〜2%程度含んでいるため、本発明において、反応速度を制御するとともに、表層に斑点の無い美観上優れた成形体を得るには、これらの水も含めた液相中に第1の成分に含まれるアルミネート系水硬性材料用の反応調整材が均一に存在することが重要である。従って、あらかじめ、骨材中に含有されている水分とアルミネート系水硬性材料用の反応調整材が均一に混ぜられるよう、第1の混合物になるべく多くの骨材を混入したほうが、効果が高い。
【0026】
<第1の混合物と第2の混合物との混合>
以上で述べたように、まず、第1の混合物と第2の混合物とを別々に調整し、その後、二つの混合物をさらに混合して、成形体形成用のコンクリート組成物を調整する。混合の方法には特に制限はなく、例えば、前記2種の混合物をミキサで練混ぜて混合する方法などをとることができる。
この際、第2の混合物を先に調整し、ポルトランドセメントの反応調節剤(遅延剤)であるオキシカルボン酸を主成分とする反応調整剤が、ポルトランドセメントの反応を抑制するために必要な状態を形成するのに要する時間、例えば、作業環境が常温である場合には、15〜30分程度静置し、この保持時間が経過した後に、予め調製した第1の混合物と第2の混合物とをさらに混合することが、水和発熱の低減効果の観点から好ましい。
【0027】
第1の混合物と第2の混合物との混合比率は、セメント質量比では、4:6〜2:8の範囲であることが好ましく、骨材質量比(細骨材と粗骨材の合計質量比)では、6:4〜10:0の範囲であることがより好ましい。
【0028】
混練りの順としては、一台のミキサを用いて配合を行う場合には、まず、第2の混合物を調製した後、これを一旦ミキサより排出し、同じミキサで第1の混合物を調製する。このようにして2種の混合物が調製されるが、これらを混合する場合には、第2の混合物の調製後、前記保持時間を経過した後に、第1の混合物が混合されているミキサに、先に製造した第2の混合物を入れて練混ぜる方法をとることが好ましい。
上記の方法は、一度ミキサから排出したものを再投入する必要が生じる。簡単に製造する方法として、複数のミキサを設置するか、第1の混合物と第2の混合物は、同じミキサで別々に練り混ぜるが、先に練った第2の混合物をトラックアジテータに入れておき、第1の混合物を練り混ぜ後、後から同じトラックアジテータに投入し、その後、高速攪拌を3分程度行う製造方法もある。
【0029】
第1の混合物と第2の混合物との混練りは、両者の配合物が均一に分散されるまで行われ、通常は、3分間程度行われる。
このようにして、本発明のコンクリート成形体を形成するコンクリート組成物を得ることができる。このようにして調製されたコンクリート組成物は、そこに均一に含まれる複数種の反応調整剤がポルトランドセメントに作用することにより、混合後30分間程度、コンクリート組成物のスランプを、型枠への充填に適する5〜18cmに保持することができる。
【0030】
<コンクリート成形体の形成>
前記の方法により得られたコンクリート組成物を適切な型枠中に充填、打設して硬化させることで本発明のコンクリート成形体を得ることができる。
本発明によれば、型枠内に打設したコンクリート組成物は、ここに含まれる水硬性材料や反応調整剤がポルトランドセメントに複合的に作用することにより、成形体にクラックを生じさせるような高温に達する温度上昇もなく、迅速に硬化反応が進行するため、打設後3時間経過した後の圧縮強度は、12N/mm以上となり、その時点で型枠を取り外した場合でも、搬送に耐える圧縮強度を実現するものである。
従って、型枠内での硬化時間が従来の半分程度に短縮され、生産性に優れたコンクリート成形体の製造が可能になる。
【0031】
また、水硬性材料、その反応調整剤、ポルトランドセメント、その反応調整剤が適切な割合で均一に分散し、相互に反応を調製しているため、水硬性材料の反応生成物であるエトリンガイトの析出に起因すると考えられる白色の斑点の生成も抑制され、外観上も均一な美観に優れたコンクリート成形体を形成することができる。
【0032】
本発明に係るコンクリート組成物には、上記必須成分の他、通常セメント系組成物に配合されている各種添加剤、例えば減水剤、空気連行剤、消泡剤などを、適宜配合することができる。
コンクリート組成物中の水とセメントの重量比は、形成されるコンクリート組成物からなる成型体の用途に応じて適宜選択することができるが、高耐久的で良質な構造物とするためには、設計基準強度で24N/mm以上の圧縮強度と、大気中の二酸化炭素との炭酸化反応を抑制し鉄筋の腐食から保護することが必要で、水と結合材の重量比は50%以下が好ましく、より好ましくは45%以下である。水と結合材の重量比の下限は、設計基準強度に応じて決まるので特に定めないが、30階建て程度の一般的な高層構造物では、25%程度である。
前記硬化体を形成するためのコンクリート組成物においては、水、セメント、混和材料、骨材、化学混和剤などの各種材料の重量比を適宜調整することで強度や物性を調整することもできる。
【0033】
本発明のコンクリート成形体は、短時間で脱型可能であり、生産性に優れるために、構造材などの形成に用いることで、工期を短縮することができる。また、プレキャストコンクリート部材に適用した場合にも、養生が短時間ですむため、生産性に優れる。また、水硬性材料に起因する白色斑点の生成が抑制され、優れた外観を有するとともに、急激な温度上昇による温度ひび割れの発生を抑え、初期の高温履歴を受けることによる長期強度発現の停滞が無くなるなどの利点を有するために、その応用範囲は広い。
本発明のコンクリート成形体の製造方法によれば、外観に優れ、品質の高いコンクリート成形体を短時間で効率よく製造することができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に制限されるものではない。
〔実施例1〕
(コンクリート組成物の配合)
速硬性コンクリート組成物について、第1の混合物と第2の混合物に含まれるセメント量の総量を310kg/mとし、第1の混合物における含有量C1と第2の混合物における含有量C2との配合比を6:4とした。
ポルトランドセメントとしては住友大阪セメント製早強セメントを使用した。
(第1の混合物)
・前記ポルトランドセメント 186kg/m
・水硬性材料(電気化学工業(株)製 デンカコスミック) 103kg/m
・粗骨材(八王子産硬砂岩砕石) 921kg/m
・細骨材(君津産山砂) 805kg/m
・水硬性材料用反応調節剤量(電気化学工業(株)製 デンカセッターD200)
4.95kg/m
(セメント全質量+水硬性材料に対して1.2%)
・水 115.5kg/m
(水粉体比(単位水量/C1+水硬性材料)=40%)
【0035】
(第2の混合物)
・前記ポルトランドセメント 124kg/m
・セメント反応調節剤((株)フローリック社製 フローリックT)
2.06kg/m
(セメント全質量+水硬性材料に対して0.5%)
・水 49.5kg/m
(水粉体比(単位水量/C2)=40%)
【0036】
まず、前記処方で第2の混合物をミキサ中で3分間攪拌して製造した。ミキサから排出し、その後、30分静置した。
次に、同じミキサ中で、上記処方の第1の混合物を調製した。調製は、粗骨材、細骨材、超速硬性水硬性材料、セメントを攪拌後に、所定量の水を注入し、さらに3分間攪拌することで行った。
この第1の混合物中に、30分間静置した第2の混合物を投入し、2種の混合物をさらに3分間攪拌し、均一に混合してコンクリート組成物を得た。
【0037】
得られたコンクリート組成物のスランプは、第1の混合物と第2の混合物を混合した後30分の間、8cm以上を確保できることがわかった。
これを強度試験用鋼製型枠に打設した。養生は外部から熱を加えず、簡易断熱養生とした。このときの温度を測定したところ、水和反応に伴う発熱により、50℃まで温度が上昇した。
3時間経過後に、脱型してコンクリート成形体を得た。このコンクリート成形体の圧縮強度を圧縮強度試験機により測定したところ、23.4N/mmであり、材齢3時間で目標脱型強度12N/mm以上を確保できていることが確認された。
また、得られた成形体の表面を目視にて観察したところ、均一で外観に優れることがわかった。
この成形体を保存し、材齢28日における圧縮強度を測定したところ、65.6N/mmであり、長期強度にも問題がないことが確認された。
【0038】
〔比較例1〕
実施例1における第1の混合物と第2の混合物に含まれる全ての材料のうち、水を除く成分をミキサに投入して攪拌し、その後、所定量の水を注入し、さらに
3分間攪拌して比較例1用のコンクリート組成物を得た。
得られたコンクリート組成物のスランプは、配合した後30分の間、8cm以上を確保できることがわかった。
これを実施例1におけるのと同じ型枠に打設した。養生は外部から熱を加えず、簡易断熱養生とした。このときの温度を測定したところ、水和反応に伴う発熱により、57℃まで温度が上昇した。
このことから、実施例1では、コンクリート成形体の形成時の初期水和発熱が比較例に比べ、最高温度で7℃抑制されることがわかる。
【0039】
3時間経過後に、脱型してコンクリート成形体を得た。このコンクリート成形体の圧縮強度を実施例1と同様に測定したところ、材齢3時間で12.0N/mmであることが確認された。
また、得られた成形体の表面を目視にて観察したところ、エトリンガイトの析出に起因する白色の斑点が多数観察され、外観に劣るものであった。
この成形体を保存し、材齢28日における圧縮強度を測定したところ、57.0N/mmであり、長期強度には問題がないものの、実施例1のものよりは低いことが確認された。
【0040】
〔比較例2〕
実施例1における第1の混合物と第2の混合物に含まれる全ての材料のうち、反応調節剤((株)フローリック社製 フローリックT)、及び、水を除く成分をミキサに投入して攪拌し、その後、所定量の水を注入し、さらに、3分間攪拌して比較例1用のコンクリート組成物を得た。
得られたコンクリート組成物のスランプは、配合した後30分の間、8cm以上を確保できることがわかった。
これを実施例1におけるのと同じ型枠に打設した。養生は外部から熱を加えず、簡易断熱養生とした。このときの温度を測定したところ、水和反応に伴う発熱により、63℃まで温度が上昇した。
このことから、実施例1では、コンクリート成形体の形成時の初期水和発熱が比較例に比べ、最高温度で13℃抑制されることがわかる。
【0041】
3時間経過後に、脱型してコンクリート成形体を得た。このコンクリート成形体の圧縮強度を実施例1と同様に測定したところ、材齢3時間で14.9N/mmであることが確認された。
また、得られた成形体の表面を目視にて観察したところ、エトリンガイトの析出に起因する白色の斑点が多数観察され、外観に劣るものであった。
この成形体を保存し、材齢28日における圧縮強度を測定したところ、56.1N/mmであり、長期強度には問題がないものの、実施例1のものよりは低いことが確認された。
比較例1と比較例2との対比において、従来の混合方式を用いたコンクリートの調整方法においては、反応調整剤の添加によって発熱の抑制はなされるものの、その効果は十分とは言い難く、これら比較例と実施例1との対比により、反応調整剤の使用と、本発明における混合方法とを用いた場合に、その効果が特に優れることがわかる。
【0042】
〔実施例2〕
実施例1において、第1の混合物に添加するポルトランドセメントの量を62kg/m、第2の混合物に添加するポルトランドセメントの量を248kg/mとし、それぞれ水の量が、水粉体比が40%となるようにした他は、実施例1と同様にして、コンクリート組成物を調製し、同様にしてコンクリート成形体を得た。
実施例2では、第1の混合物における含有量C1と第2の混合物における含有量C2との配合比は2:8である。
得られたコンクリート組成物のスランプは、配合した後30分の間、8cm以上を確保できることがわかった。
これを実施例1におけるのと同じ型枠に打設した。養生は外部から熱を加えず、簡易断熱養生とした。このときの温度を測定したところ、水和反応に伴う発熱により、50℃まで温度が上昇した。
このことから、実施例2においても、コンクリート成形体の形成時の初期水和発熱が比較例に比べ、最高温度で13℃抑制されることがわかる。
【0043】
3時間経過後に、脱型してコンクリート成形体を得た。このコンクリート成形体の圧縮強度を実施例1と同様に測定したところ、材齢3時間で23.8N/mmであることが確認された。
また、得られた成形体の表面を目視にて観察したところ、エトリンガイトの析出に起因する白色の斑点は確認されず、均一で外観に優れるものであった。
この成形体を保存し、材齢28日における圧縮強度を測定したところ、65.0N/mmであり、長期強度にも優れることが確認された。
【0044】
〔実施例3〕
実施例1において、第2の混合物のみにポルトランドセメントを310kg/m添加し、第2の混合物にはポルトランドセメントを添加せず、それぞれ水の量が、水粉体比が40%となるようにした他は、実施例1と同様にして、コンクリート組成物を調製し、同様にしてコンクリート成形体を得た。
実施例3では、第1の混合物における含有量C1と第2の混合物における含有量C2との配合比は0:10である。
これを実施例1におけるのと同じ型枠に打設した。養生は外部から熱を加えず、簡易断熱養生とした。このときの温度を測定したところ、水和反応に伴う発熱により、52℃まで温度が上昇した。
このことから、実施例3においても、コンクリート成形体の形成時の初期水和発熱が比較例に比べ、最高温度で11℃抑制されることがわかる。
【0045】
3時間経過後に、脱型してコンクリート成形体を得た。このコンクリート成形体の圧縮強度を実施例1と同様に測定したところ、材齢3時間で20.8N/mmであることが確認された。
また、得られた成形体の表面を目視にて観察したところ、エトリンガイトの析出に起因する白色の斑点は確認されず、均一で外観に優れるものであった。
この成形体を保存し、材齢28日における圧縮強度を測定したところ、63.9N/mmであり、長期強度にも優れることが確認された。
【0046】
〔実施例4〕
実施例1において、細骨材および粗骨材を、第1と第2の混合物にそれぞれ5:5の配合比とした他は、実施例1と同様にして、コンクリート組成物を調製し、同様にしてコンクリート成形体を得た。
これを実施例1におけるのと同じ型枠に打設した。養生は外部から熱を加えず、簡易断熱養生とした。このときの温度を測定したところ、水和反応に伴う発熱により、53℃まで温度が上昇した。
このことから、実施例4においても、コンクリート成形体の形成時の初期水和発熱が比較例に比べ、最高温度で10℃抑制されることがわかる。
【0047】
3時間経過後に、脱型してコンクリート成形体を得た。このコンクリート成形体の圧縮強度を実施例1と同様に測定したところ、材齢3時間で16.7N/mmであることが確認された。
また、得られた成形体の表面を目視にて観察したところ、エトリンガイトの析出に起因する白色の斑点は確認されず、均一で外観に優れるものであった。
この成形体を保存し、材齢28日における圧縮強度を測定したところ、64.9N/mmであり、長期強度にも優れることが確認された。
【0048】
これらの結果より、本発明のコンクリート成形体は、材齢3時間で脱型可能な圧縮強度を達成しており、その表面は均一で外観に優れることがわかる。また、実施例のコンクリート成形体の材齢28日の圧縮強度は、いずれも比較例1、2のそれを上回っており、水硬性材料の反応とポルトランドセメントの水和反応が分離されて長期強度も良好に発現できていることが確認された。
また、通常の一括練りしたコンクリートと比較すると、本発明の製造方法で得られたコンクリート成形体は、初期水和発熱における温度上昇が抑制され、且つ、コンクリート表面におけるエトリンガイトの析出による白い斑点の発生が抑制され、外観に優れる成形体を得られることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウムアルミネート系水硬性材料と、アルカリ金属炭酸塩およびオキシカルボン酸から選択される反応調整剤と、水と、を含む第1の混合物、及び、ポルトランドセメントと、オキシカルボン酸、又は、オキシカルボン酸とリグニンスルホン酸とを主成分とする反応調整剤と、水と、を含む第2の混合物を、混合してなるコンクリート組成物により得られるコンクリート成形体。
【請求項2】
前記第1の混合物に、さらにポルトランドセメントを含有する請求項1記載のコンクリート成形体。
【請求項3】
前記第1の混合物中に含まれるポルトランドセメントと、第2の混合物中に含まれるポルトランドセメントとの質量比が、8:2から0:10の範囲にある請求項1又は請求項2記載のコンクリート成形体。
【請求項4】
前記カルシウムアルミネート系水硬性材料が、非晶質カルシウムアルミネート(12CaO・7Al)またはフッ化物を含むカルシウムアルミネート(11CaO・7Al・CaF)を主成分とする材料である請求項1から請求項3のいずれか1項記載のコンクリート成形体。
【請求項5】
前記第1の混合物に含まれる反応調整剤が、炭酸カルシウム、炭酸カリウムから選択されるアルカリ金属炭酸塩、及び、クエン酸、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸から選択されるオキシカルボン酸及びその塩の1種以上を主成分とし、第2の混合物中に含まれる反応調整剤が、クエン酸、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコヘプトン酸から選択されるオキシカルボン酸及びその塩の1種以上を含有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のコンクリート成形体。
【請求項6】
前記コンクリート成形体の製造3時間後の圧縮強度が、12N/mm以上である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のコンクリート成形体。
【請求項7】
カルシウムアルミネート系水硬性材料と、アルカリ金属炭酸塩およびオキシカルボン酸から選択される反応調整剤と、水と、を混合して第1の混合物を調整する工程と、
ポルトランドセメントと、オキシカルボン酸、又は、オキシカルボン酸とリグニンスルホン酸とを主成分とする反応調整剤と、水と、を含む第2の混合物を調整する工程と、
前記第1の混合物と第2の混合物とを混合して練り混ぜる工程と、
練り混ぜた混合物を型枠に流し込んで硬化させる工程と、
を含むコンクリート成形体の製造方法。
【請求項8】
前記第1の混合物の調整工程が、ポルトランドセメントと、カルシウムアルミネート系水硬性材料と、アルカリ金属炭酸塩、及び、オキシカルボン酸から選択される反応調整剤と、水と、を混合する工程である請求項7記載のコンクリート成形体の製造方法。
【請求項9】
まず、前記第2の混合物を調整する工程を実施し、その後、第1の混合物を調整する工程を実施する請求項7又は請求項8に記載のコンクリート成形体の製造方法。
【請求項10】
前記第1の混合物の調整工程において、アルカリ金属炭酸塩およびオキシカルボン酸から選択される反応調整剤を、前記第1の混合物と第2の混合物中のカルシウムアルミネート系水硬性材料とポルトランドセメントとの総量100質量部に対し、0.3〜1.5質量部の範囲で添加することにより、第1の混合物と第2の混合物とを混合した後、30分間、スランプを5〜18cmに保持する請求項7又は請求項8に記載のコンクリート成形体の製造方法。
【請求項11】
前記第2の混合物の調製工程において、オキシカルボン酸塩、又は、オキシカルボン酸とリグニンスルホン酸とを主成分とする反応調整剤を、前記第1の混合物と第2の混合物中のカルシウムアルミネート系水硬性材料とポルトランドセメントの総量100質量部に対し、0.1〜1.0質量部の範囲で添加する請求項7から請求項10のいずれか1項に記載のコンクリート成形体の製造方法。

【公開番号】特開2010−52984(P2010−52984A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219734(P2008−219734)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】