説明

コンクリート枠体及びコンクリート製品の製造方法及びコンクリート製品

【課題】複雑な形状のコンクリート製品であっても確実に気泡を除去し痘痕の成形を防止することが可能なコンクリート枠体を提供する。
【解決手段】コンクリート枠部材を、パンチング孔11を多数形成したパンチングプレート10と、パンチングプレート10のコンクリート製品を成形するための枠内領域側に添付した通気性が良くセメントミルク等の通過を防止する不織布20によって形成する。このコンクリート枠部材によってコンクリート枠体30を組み上げ、枠体領域内にコンクリートを流し込むことで、コンクリートが包含する空気等の気体を不織布20及びパンチング孔11を介して外気に放出することができ、脱気して痘痕が成形されることを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コクリート製品製造の際に製品に生じる気泡を除去することができるコンクリート枠体及びコンクリート製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート製品は、所望の形を模る枠内領域を形成するよう、型枠を組み上げ、型枠にコンクリートを流し込み、凝固させることで製造されている。コンクリートには空気が混入したり中の水分が蒸発することによって気泡が生まれることがある。この気泡はコンクリート製品にとって耐久性を著しく低下させる要因であり、また気泡が型枠近傍に位置すると痘痕となってコンクリート製品表面に形成され、見た目にも美しくない。このため、コンクリートが凝固し製品が成型された後に、別途コンクリートを用いて痘痕を埋めるといった補修作業が行われている。
【0003】
このように、凝固したコンクリート製品に発生した痘痕を更にコンクリートによって補修することで、補修箇所のコンクリートが凝固するまでコンクリート製品が、製品として完成するまでにはかなりの時間を要することとなり、また補修箇所のコンクリートが剥がれ落ちたりするなどのコンクリート製品の品質低下が問題視されている。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、型枠内側に通気スペーサー兼シート支持材を設け、更にその内側に通気防水シートを設けるという構成が開示されている。当該文献によれば、気泡の原因となる気体が、コンクリートの圧力によって通気防水シートを介して通気スペーサー兼シート支持材に移り、コンクリートの気泡を解消するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−179047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の方法は、コンクリート製品の形状がシンプルである場合においては、通気スペーサー兼シート支持材を通じて外気に気体の放出ができるが、複雑な形状の型枠を用いる場合、例えば図5及び図6に示すような天井部分を有するような型枠70を用いる場合、気泡100が天井部分に留まってしまい、脱気が不十分となり、気泡100がそのままコンクリート製品の表面の痘痕となって成形されてしまう虞がある。
【0007】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、痘痕の補修工程を簡略化もしくは撤廃し、高品質で見た目にも美しいコンクリート製品を成形することができるコンクリート枠体、及びそのコンクリート枠体を用いたコンクリート製品の製造方法、さらにこのコンクリート製品の製造方法によって製造されたコンクリート製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係るコンクリート枠体は、特定形状のコンクリート製品を成形するコンクリート枠体であって、該コンクリート枠体は内部に前記特定形状の枠内領域を形成するように複数のコンクリート枠部材によって構成されており、該コンクリート枠部材は、前記コンクリート製品成形時に発生する気泡を前記枠内領域側に残留させないための気泡除去手段を備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項1の構成によれば、コンクリート製品成形の際、枠内領域の空気を気泡除去手段によって脱気することができ、コンクリートに混入した空気が気泡となって枠内領域に残留することを防止することができる。
【0010】
請求項2に係るコンクリート枠体は、請求項1のコンクリート枠体において、前記気泡除去手段は、前記コンクリート枠部材の前記枠内領域に接する面を通気性部材で構成したことを特徴とする。
【0011】
請求項2の構成によれば、枠内領域の空気を通気性部材に逃がし、若しくは通気性部材を介して外気に放出することで、精度の高い脱気を行うことができる。
【0012】
請求項3に係るコンクリート枠体は、請求項2のコンクリート枠体において、前記通気性部材は、前記コンクリート枠部材に形成した通気孔と、該通気孔を内側から覆う通気性有しセメントミルクの流出を防止する薄膜とから成ることを特徴とする請求項2記載のコンクリート枠体。
【0013】
請求項3の構成によれば、コンクリート枠部材に形成した通気孔から気泡の要因となる空気を外気へ放出し、当該通気孔を通気性有しセメントミルクの流出を防止する薄膜によって内側から覆うことで通気孔からセメントミルクやコンクリートの流出を防止することができる。
【0014】
請求項4に係るコンクリート枠体は、請求項3のコンクリート枠体において、前記薄膜は不織布であることを特徴とする。
【0015】
請求項4の構成によれば、コンクリート枠部材の内側を不織布で覆うことでコンクリート枠体を構成することで、不織布がセメントミルクの乾燥などによって通気性を失った場合でも、容易に取り替えることが可能となる。
【0016】
請求項5に係るコンクリート製品の製造方法は、請求項1乃至4の何れか1項記載のコンクリート枠体にコンクリートを流し込んで成形することを特徴とする。
【0017】
請求項5の製造方法によれば、確実に脱気することで気泡が原因であるコンクリート製品表面の痘痕の形成を防止することができる。
【0018】
請求項6に係るコンクリート製品は、請求項5記載のコンクリート製品の製造方法で成形されたことを特徴とする。
【0019】
請求項6の構成によれば、コンクリート製品表面に痘痕が形成されないため、見た目にも美しく、また痘痕の消去のための工程を簡略化もしくは撤廃することができるため、製造に掛かる時間的・費用的コストを抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
上記のようなコンクリート枠体によれば、枠体にコンクリートを流し込む際、コンクリート中に含まれる空気等の気体がコンクリート枠体の内側に集まって気泡となることを、通気性部材によって吸収若しくは外気への放出することで確実な脱気を行うことができ、これによってコンクリート製品表面の痘痕の発生を防止することができ、表面が美しく高品質であることから、別途痘痕の補修作業を必要とせず、コンクリート製品を低コストにて提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1における、(a)パンチングプレート及び不織布、(b)パンチングプレート及び不織布によって構成されるコンクリート枠体を示す斜視図である。
【図2】同上、パンチングプレートに不織布を貼付した状態を示す(a)斜視図、(b)側面断面図である。
【図3】同上、パンチングプレート及び不織布によって構成されたコンクリート枠体にコンクリートを流し込んだ状態を示す断面図である。
【図4】同上、図3に示すコンクリート枠体によって成形されたコンクリート製品を示す斜視図である。
【図5】従来のコンクリート枠体を示す(a)正面図、(b)断面図である。
【図6】従来のコンクリート枠体によって成形されたコンクリート製品を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態としての実施例を図1から図4を参照して説明する。もちろん、本発明は、その発明の趣旨に反さない範囲で、実施例において説明した以外のものに対しても容易に適用可能なことは説明を要するまでもない。
【実施例1】
【0023】
本実施例におけるコンクリート枠体の細部の構成について、図1〜図4に基づいて説明する。10は表裏に貫通した通気孔11が形成されるコンクリート枠部材の1つであるパンチングプレートである。20は同じくコンクリート枠部材の1つであり、空気を通し、セメントミルクやコンクリートの通り抜けを防止する不織布である。30はコンクリート枠体であり、図1(a)に示すようにパンチングプレート10に不織布を貼付し、これを組み上げることで構成される。尚、コンクリート枠体30の形状は、所望するコンクリート製品の形状に応じて適宜変更されるものであり、本実施例におけるコンクリート枠体30の形状に限定されるものではない。
【0024】
図2(a)はパンチングプレート10に不織布20を、図示しない糊で貼り付けた状態を示している。糊は耐水性に優れ、またパンチングプレート10の再利用のために剥がしやすいものが好ましい。図2(b)は図2(a)に示す不織布20を貼付したパンチングプレート10の断面図である。パンチングプレート10に形成した通気孔11によって、空気の通り抜けを可能となり、より確実な脱気が可能となる。
【0025】
図3は、不織布20を貼付したパンチングプレート10を組み上げて構成したコンクリート枠体30の枠内領域にコンクリート40を流し込んだ状態を示す。このとき、従来のコンクリート枠体70を使用した際に生じていた気泡100は、本実施例におけるコンクリート枠体30においては、不織布20を通り抜けパンチングプレート10に形成された通気孔11を介して外気に放出されることで発生することがない。このようにして気泡100の発生を防止して成形されたコンクリート製品は、図4に示すように表面が滑らかで美しい状態で成形され、別途痘痕を埋める作業をする必要がなくなるので、製造コストの抑制と共にコンクリート製品の製造に係る時間の短縮を図ることが可能となる。
【0026】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、コンクリート枠部材をパンチングプレート10としたが、これに限定せずに、コンクリート打ち込みの際の圧力に耐えうる剛性を有する素材であれば、発泡スチロール、透水マット若しくは焼結金属等の通気性を有する多孔性素材を採用し、これらの素材によってコンクリート枠部材を形成しても良い。パンチングプレート10に貼付する不織布20は、通気性が高く、セメントミルク等のコンクリートを構成する物質を透過しないものであれば、その素材等は特に問わず、適宜選択すればよい。
【符号の説明】
【0027】
10 パンチングプレート(コンクリート枠部材、気泡除去手段、通気性部材)
11 通気孔
20 不織布(コンクリート枠部材、気泡除去手段、通気性部材)
30 コンクリート枠体
40 コンクリート
50 型枠(コンクリート枠部材)
60 発泡スチロール(コンクリート枠部材、気泡除去手段、通気性部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定形状のコンクリート製品を成形するコンクリート枠体であって、
該コンクリート枠体は内部に前記特定形状の枠内領域を形成するように複数のコンクリート枠部材によって構成されており、
該コンクリート枠部材は、前記コンクリート製品成形時に発生する気泡を前記枠内領域側に残留させないための気泡除去手段を備えていることを特徴とするコンクリート枠体。
【請求項2】
前記気泡除去手段は、前記コンクリート枠部材の前記枠内領域に接する面を通気性部材で構成したことを特徴とする請求項1記載のコンクリート枠体。
【請求項3】
前記通気性部材は、前記コンクリート枠部材に形成した通気孔と、該通気孔を内側から覆う通気性有しセメントミルクの流出を防止する薄膜とから成ることを特徴とする請求項2記載のコンクリート枠体。
【請求項4】
前記薄膜は不織布であることを特徴とする請求項3記載のコンクリート枠体。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項記載のコンクリート枠体にコンクリートを流し込んで成形することを特徴とするコンクリート製品の製造方法。
【請求項6】
請求項4記載のコンクリート製品の製造方法で成形されたことを特徴とするコンクリート製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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