説明

コンクリート構造物の鉄筋探索方法および鉄筋探索装置、ならびにコンクリート構造物の穿孔方法および穿孔器具

【課題】簡易な構造でコンクリート内部の鉄筋の配筋位置を探索できるコンクリート構造物の鉄筋探索方法および鉄筋探索装置を提供するとともに、鉄筋の無い範囲に正確に穿孔することが可能なコンクリート構造物の穿孔方法および穿孔器具を提供する。
【解決手段】予備孔Bに鉄筋探索装置の探知棒2を挿入する。センサ3は探知棒2の軸断面において同心円状に磁場Vを発しており、センサ3が進行する際、センサ3の磁場V内のどこかに鉄筋Dが配筋されていると、センサ3がそれを感知し、測定器4の表示部やスピーカ部、ランプ部から鉄筋Dを感知したことが報知される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物に配筋されている鉄筋を探索する鉄筋探索方法および鉄筋探索装置、ならびにコンクリート構造物の穿孔方法および穿孔器具に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅の壁面にエアコンなどの配管用の孔を穿孔したり、ビルや橋脚の補強工事において穿孔を行ったりする際に、これらのコンクリート構造物内部に配筋されている鉄筋の位置がわからずに誤って鉄筋を切断してしまうことが大きな問題となっている。鉄筋の切断は、構造物全体の強度の低下を招くため、コンクリート構造物に穿孔する際には、鉄筋の位置を正確に把握することが重要となる。
【0003】
そこで、鉄筋の位置を探索するために、コンクリート構造物の表面から内部鉄筋の位置を、電磁誘導装置や電磁波レーダー装置を用いて非破壊で検査する方法が広く用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、既設構造物中の鉄筋を、直流ないし交流磁場を用いて磁化し、鉄筋から磁束が出るようにするとともに、この鉄筋から出る磁束を磁力感知コイル式鉄筋探査器によって検知する深鉄筋探査方法が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−157851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電磁誘導装置や電磁波レーダー装置を用いた従来の探索方法では、装置の測定可能領域に制限があり、コンクリート構造物の表面からわずか20cm程度の深さまでしか探索することができない。そこで、コンクリート構造物の深部にある鉄筋の位置を把握することができずに、やはり誤って鉄筋を切断してしまう場合がある。
【0007】
また、特許文献1では、鉄筋を単に磁化するだけでなく交流電流を流して交流磁化したり、複数共振回路を用いたり、磁束が測定方向にのみ強く放射される磁束銃を用いたりすることにより、コンクリート構造物の表面から50〜60cm程度の深さまで探索可能であることが記載されているが、この場合、装置の複雑化を招くとともに、装置の製造コストが高くなると想定される。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みて、簡易な構造でコンクリート内部の鉄筋の配筋位置を探索できるコンクリート構造物の鉄筋探索方法および鉄筋探索装置を提供するとともに、鉄筋の無い範囲に正確に穿孔することが可能なコンクリート構造物の穿孔方法および穿孔器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のコンクリート構造物の鉄筋探索方法は、コンクリート構造物に配筋されている鉄筋を探索する方法であって、コンクリートドリルでコンクリート構造物に予備孔をあけること、この予備孔に、先端部に金属感知センサを備えた探知棒を挿入して、金属感知センサの反応の有無を調べることを含むことを特徴とする。
【0010】
作業者は、まず、コンクリート構造物の表面から表面に最も近い位置に配筋されている鉄筋を、金属感知センサを備えた探知棒をコンクリート構造物の表面で走査して探索する。そして、金属感知センサの反応が無い、つまり、鉄筋が配筋されていない位置に、コンクリートドリルにより予備孔を穿孔する。このコンクリートドリルは、通常の使用では鉄筋の切断が不可能なものであり、手動や小型の動力を用いて穿孔を行ってコンクリート構造物に穿孔することができるものである。従って、予備孔を穿孔している際に、上記の探索で探査できなかった内部の鉄筋に突き当たってしまったとしても、作業者はその時点で気づくことができるので、誤って鉄筋を切断することはない。穿孔作業の途中で鉄筋に突き当たってしまった場合は、一旦コンクリートドリルを引き抜いて、別の位置に穿孔を行う。
【0011】
上記のようにして予備孔を穿孔したら、次に、この予備孔に探知棒を挿入していく。探知棒の先端部には金属感知センサが備えられているので、予備孔の周囲に鉄筋が配筋されている場合は、探知棒の先端部が鉄筋の周囲を通過した瞬間に、金属感知センサが鉄筋に反応する。これにより、作業者は、予備孔の周囲に鉄筋が配筋されていることだけでなく、反応の度合いにより予備孔から半径方向にどのくらいの距離に鉄筋が配筋されているか、また、コンクリート構造物の表面からどの程度の深さに鉄筋が配筋されているかということを、同時に認識することができる。
【0012】
また、ここで金属感知センサとして、電磁誘導法を用いたコイル式センサを使用することができる。
【0013】
金属感知センサとして電磁誘導法を用いたコイル式センサを用いることにより、探知棒が予備孔を通過すると、金属感知センサが通過した周囲では磁場の急激な変化が生じる。ここで、この磁場が変化した範囲内に鉄筋が配筋されていると、鉄筋が金属感知センサの磁場に反応して、鉄筋に誘導電流が流れ、それによって鉄筋の周囲に磁場が発生する。すると、その磁場の発生を金属感知センサが探知するので、これにより、予備孔の周囲に鉄筋が配筋されていることを探知することができる。このように、電磁誘導式の金属感知センサを備えた探知棒を用いることにより非接触で簡単に、コンクリート構造物に鉄筋が配筋されているかどうかを探知することができる。
【0014】
また、コイル式センサとして、探知棒の軸を中心に不均一な強度分布の磁場を発するものを使用し、探知棒を軸中心で回転させながら予備孔に挿入するか、もしくは探知棒の軸中心に対する回転角度を変えて複数回出し入れするとよい。
つまり、コイル式センサの発する磁場が、探知棒の軸中心から偏心したものや、探知棒の軸中心から一方向だけ突出したような強度分布を有するものであれば、探知棒を回転させながら予備孔に挿し込んでいくと、予備孔を中心に、鉄筋を探知できる範囲が回転方向に順次移動していくこととなる。また、探知棒の軸中心に対する回転角度を変えて探知棒を複数回出し入れすると、予備孔を中心に一定の角度範囲で鉄筋を探知し、それを回転方向に角度を変えながら複数回に分けて行うこととなる。
従って、金属感知センサが反応した場合には、探知棒の回転の角度によって鉄筋が予備孔からどの方向に配筋されているかを特定することができる。これにより、鉄筋の存在だけでなく、鉄筋が予備孔に対してどの方向に配筋されているかということも探知することができる。
【0015】
本発明のコンクリート構造物の鉄筋探索装置は、先端部に金属感知センサを備え、コンクリート構造物に穿孔された予備孔に挿入される探知棒と、金属感知センサが鉄筋を感知した際にそれを報知する報知手段とを備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明の鉄筋探索装置によれば、コンクリート構造物に穿孔された予備孔に探知棒を挿入した際に、予備孔の周囲に鉄筋が配筋されている場合は、探知棒の先端部が鉄筋の周囲を通過した瞬間に、金属感知センサが鉄筋に反応して報知手段により報知がなされる。これにより、作業者は、予備孔の周囲に鉄筋が配筋されていることを、報知手段により認識することができる。
【0017】
また、金属感知センサが、電磁誘導法を用いたコイル式センサであれば、鉄筋探索装置を簡単な構成とすることができ、また、コンクリート構造物に配筋されている鉄筋を非接触で探知することができる。ここでさらに、報知手段が、コイル式センサが感知した鉄筋から生じている磁場の強度を段階的に示すものであれば、予備孔からどの程度の範囲に鉄筋が配筋されているかということも認識することができる。
【0018】
また、コイル式センサが、探知棒の軸を中心に不均一な強度分布の磁場を発するものであれば、鉄筋の存在だけでなく、鉄筋が予備孔に対してどの方向に配筋されているかということも探知することが可能な鉄筋探索装置とすることができる。
【0019】
本発明のコンクリート構造物の穿孔方法は、コンクリート構造物の鉄筋のない位置に孔を穿孔する方法であって、コンクリートドリルでコンクリート構造物に予備孔をあける第1穿孔工程と、この予備孔に、先端部に金属感知センサを備えた探知棒を挿入し、金属感知センサの反応の有無を調べる鉄筋探索工程とを有し、金属感知センサの反応が無い場合は、予備孔に沿って予備孔より径が大きい孔を穿孔し、金属感知センサの反応が有る場合は、さらに第1穿孔工程と鉄筋探索工程とを行うことを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、第1穿孔工程と鉄筋探索工程とを行うことにより、コンクリート構造物の表面から深部に向かって穿孔した予備孔の周囲に鉄筋が無いことを確認した上で、エアコンなどの配管用の孔やビルや橋脚の補強工事に必要な孔をコンクリート構造物に穿孔することができる。また、鉄筋探索工程で金属感知センサの反応が有る場合は、さらに第1穿孔工程と鉄筋探索工程とを、金属感知センサの反応が無くなるまで繰り返すので、鉄筋が配筋されていないことを確実に探知してから穿孔を行うことができる。
【0021】
ここで、金属感知センサとして、電磁誘導法を用いたコイル式センサであって探知棒の軸を中心に不均一な強度分布の磁場を発するコイル式センサを使用し、前記鉄筋探索工程で、予備孔に探知棒を軸中心で回転させながら挿入するか、もしくは、探知棒の軸中心に対する回転角度を変えて複数回出し入れすることによって、鉄筋が予備孔に対してどの方向に配筋されているかということを探知することができる。
そして、金属感知センサの反応が有る場合は、金属感知センサが反応した方向を避けて、再度前記第1穿孔工程を行えば、鉄筋が配筋されていない場所に確実に次の予備孔を穿孔することができるので、無駄な予備孔の穿孔を防止することができる。そして、この位置で再度鉄筋探索工程を行い、金属感知センサの反応が無ければ、予備孔に沿って、この予備孔よりも径が大きいエアコンの配管設置用の孔やビルや橋脚の補強工事に必要な孔をコンクリート構造物に穿孔する。
【0022】
なお、金属感知センサの反応が有る場合に、金属感知センサが反応した方向を避けて直接予備孔よりも径が大きい孔を穿孔することもできる。コンクリート構造物において、鉄筋の配筋密度があまり高くない場合、穿孔した予備孔に金属感知センサの反応が有った際にその方向を避けて孔を穿孔すれば、別の鉄筋に突き当たる可能性は低い。従って、この方法によれば、予備孔を何度も穿孔することがないので工期を短縮することができる。
【0023】
本発明の穿孔器具は、コンクリート構造物に穿孔された予備孔に沿って、該予備孔よりも径の大きい孔を穿孔する穿孔器具であって、先端部にビットを備えたケーシングの内側に着脱自在に取り付けられ、予備孔に挿通可能なガイド棒を備え、ガイド棒は、ケーシングの内側に片持ち梁で接合されている支持部材によって、ケーシングの内側の軸中心に支持されていることを特徴とする。
【0024】
予備孔にガイド棒を挿通してケーシングのビットによってコンクリート構造物に孔を穿孔していくと、コンクリート構造物の反力によって穿孔器具全体を傾斜させるような力や、ケーシングの回転による振動が穿孔器具に発生し、穿孔器具全体が傾斜したりブレたりしやすくなり、穿孔する孔が次第に斜行してしまうことがある。しかしながら、本発明の穿孔器具によれば、予備孔に挿通されるガイド棒が、ケーシングの内側に片持ち梁で接合されている支持部材によって、ケーシングの内側の軸中心に支持されていることから、ガイド棒に対してケーシングが暴れることがないので、予備孔に沿って斜行することなくまっすぐに孔を穿孔することができる。
また、コンクリート構造物に穿孔された予備孔に挿通されるガイド棒は、ケーシングの内側に着脱自在に取り付けることができるので、従来のケーシングにも適用することができ、汎用性の高い穿孔器具とすることができる。
【0025】
また、ガイド棒の先端部には、ネジ留めされたキャップ部が備えられている方が望ましい。
キャップ部はガイド棒に対してネジ留めされているので、キャップ部はガイド棒の回転に関係なく自由に回転することができる。従って、穿孔器具でコンクリート構造物を穿孔する際に、ケーシングおよびガイド棒が回転しても、キャップ部がそれと同調して回転することがない。よって、ガイド棒の摩耗を防ぐことができるとともに、ガイド棒と予備孔との間の摩擦により生じるガイド棒への負荷を低減することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、先端部に金属感知センサを備えた探知棒と、金属感知センサが鉄筋を感知した際にその反応を報知する報知手段とにより、簡単な構成でコンクリート構造物の深部にある鉄筋を探索することができる。また、コンクリート構造物には予備孔を穿孔するだけでよく、簡単な作業で確実に鉄筋を探索することができる。これにより、コンクリート構造物に配筋された鉄筋を切断することなく、エアコンなどの配管用の孔やビルや橋脚の補強工事に必要な孔をコンクリート構造物に穿孔することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(実施の形態1)
以下、図面を用いて本発明の実施の形態1にかかる鉄筋探索装置を説明する。図1は本実施の形態1における鉄筋探索装置の概略図である。図2(a)は、実施の形態1における鉄筋探索装置のコイル式センサの詳細を示す図であり、(b)はコイル式センサの磁場の様子を示す図である。
【0028】
図1に示すように、本実施の形態1の鉄筋探索装置1は、先端部に電磁誘導法を用いたコイル式センサ(以下、「センサ」と称す。)3を備えた探知棒2と、センサ3の反応を認識して報知する報知手段としての表示部4a、スピーカ部4bやランプ部4cなどを備えた測定器4とにより構成される。
【0029】
探知棒2は、直径が10mm程度の中空棒であり非磁性体の材料、例えば樹脂によって形成されている。この探知棒2は、伸縮自在な釣り竿状に形成することもでき、鉄筋探索を行うコンクリート構造物の深度に応じて伸び縮みさせることも可能である。探知棒2の中空部には、センサ3と測定器4とを電気的に接続するコード5が挿通されている。
【0030】
図2(a)に示すように、センサ3は、センサ本体となる磁石3aに検知コイル3bが巻かれた構成となっている。この構成により、センサ3の磁場Vは、磁石3aの軸断面において、磁石3aを中心に同心円状の強度分布を有している(図2(b)参照)。
【0031】
センサ3が方向性をもって移動する際、センサ3が有する磁場内に金属(ここでは、コンクリート構造物に配筋されている鉄筋)が存在すると、金属には誘導電流が流れ、それによって金属の周囲に新しく磁場が生じる。すると、この新しく発生した磁場によって検知コイル3bに誘導電流が流れ、この電流がコード5を介して測定器4に流れるしくみになっている。
【0032】
測定器4は、コード5を介して検知コイル3bから流れてきた電流を検知してこれを報知する報知手段をいくつか備えている。
表示部4aは、測定器4が検知コイル3bから流れてきた電流を検知した際に、その電流の大きさを数段階のレベルで表示するものである。使用者は、表示部4aの表示レベルを見て、センサ3と金属との距離を大まかに知ることができる。
また、スピーカ部4bやランプ部4cも同様に、測定器4が検知コイル3bから流れてきた電流を検知した際に、音や光で報知するものであり、測定器4に流れる電流の大きさによって、音の大きさや光の明るさ等を段階的に出力することも可能となっている。
【0033】
また、測定器4の側部には、初期状態設定ボタン4dが備えられている。初期状態設定ボタン4dは、センサ3の探知範囲を設定するためのボタンであり、センサ3のキャリブレーションを行う際に押下すると、その初期状態を測定器4に記憶させることができる。
【0034】
次に、本実施の形態1で用いる穿孔具10について図面を用いて説明する。図3(a)は、本実施の形態1における穿孔具10の側面図、(b)は(a)の軸方向断面図である。
【0035】
図3に示すように、穿孔具10は、エアコンなどの配管用の孔やビルや橋脚の補強工事に必要な孔をコンクリート構造物に穿孔するための工具であり、ケーシング11と、このケーシング11の内側に着脱自在のガイド具12とにより構成される。
【0036】
ケーシング11は、既存のものを使用することができる。本実施の形態では、直径が50mm程度の中空状の本体部11aと、本体部11aの先端の周縁に等間隔に設けられた複数のダイヤモンドビット11bとを備えたものを使用する。
【0037】
ガイド具12は、コンクリート構造物に穿孔される予備孔に挿入可能なガイド棒13と、このガイド棒13をケーシング11の本体部11aの中心位置に固定するねじ込み式の固定部16と、この固定部16とは反対側のガイド棒13の端部を、ケーシング11の本体部11aの中心位置に支持する軸支持板14と、軸支持板14を本体部11aの先端方向へ付勢するバネ15とにより構成されている。
【0038】
ガイド棒13は、先端部に、コンクリート構造物に穿孔される予備孔の径よりも小さい径を有しガイド棒13にネジ留めの種類の1つであるキャップスクリュー留めされたキャップ部13aを備えている。また、ガイド棒13のキャップ部13aの近傍には、ガイド棒13を固定部16にねじ込む際に締結具であるスパナを嵌め込み可能な切り欠き溝13bが形成されている。
【0039】
軸支持板14は、ケーシング11の内側に片持ち梁で接合されている板状部材である。この軸支持板14は、ガイド棒13をケーシング11の軸中心に支持するとともに、穿孔の際にガイド棒13にかかる負荷を支えるためのものであり、穿孔とともに除々にバネ15を押し込みながら、ケーシング11の本体部11aの底部側へ移動できるようになっている。
【0040】
固定部16は、コンクリートを穿孔する際にコアが詰まっても取り出しやすいように、ケーシング11の本体部11aの内側底面にキャップスクリュー留めによって取り付けられている。なお、キャップスクリュー留めをするための十分なスペースがない場合は、本体部11aの側面からいもネジ留めを行ってもよい。
固定部16の中央に設けられている取付部16aの内周には雌ねじが形成されており、この取付部16aに、外周に雄ねじが形成されたガイド棒13をねじ込んで取り付けることができる。
【0041】
次に、本実施の形態1における鉄筋探索方法ならびに穿孔方法について図面を用いて説明する。図4は、センサ3のキャリブレーションの手順を示す図である。図5は、鉄筋探索装置1が鉄筋を探索している様子を示す概略断面図である。図6は、センサ3の磁場Vの範囲内に鉄筋が配筋されている場合を示す断面図である。図7は、穿孔具が孔を穿孔する様子を示す断面図である。
【0042】
まず、鉄筋探索を行う前に、鉄筋探索装置1のキャリブレーションを行っておく。例えば、本実施の形態では以下のようにして行う。
図4に示すように、コンクリート構造物に穿孔する孔C(図5参照)の半径分の距離だけ離間した位置に、コンクリート構造物に配筋されている鉄筋とほぼ同じ径を有する鉄筋片Aを置く。本実施の形態1では、穿孔する孔の径を50mmと設定し、離間距離Lを30mmとする。なお、センサ3の直径Rが10mmであるため、実質25mm離間させた状態となっている。この状態で、測定器4の側部に設けられた初期状態設定ボタン4dを押下する。これにより、測定器4は、離間距離L以内に金属が存在する場合にのみ、センサ3の検知コイルから測定器4に流れる電流を検知して表示部4aやスピーカ部4b、ランプ部4cが報知することとなる。
【0043】
作業者は、まず、コンクリート構造物30の表面から既存のコンクリートドリルにより予備孔Bを穿孔する(図5参照)。このコンクリートドリルは、通常の使用では鉄筋の切断が不可能なものである。従って、予備孔Bを穿孔している際に鉄筋に突き当たってしまったとしても、作業者はその時点ですぐに気づくことができるので、誤って鉄筋を切断することはない。穿孔作業の途中で鉄筋に突き当たってしまった場合は、コンクリートドリルを引き抜いて、別の位置に穿孔を行う。なお、無駄孔になってしまった予備孔は、補修材を充填して埋めておく。予備孔用に穿孔する孔の径は小さいので、補修材も少量で済み、コンクリート構造物30の美観や、耐力への影響は極めて小さい。
【0044】
鉄筋を避けるようにして予備孔Bを穿孔したら、次に、この予備孔Bに鉄筋探索装置1の探知棒2を挿入していく。センサ3は軸断面において同心円状に磁場Vを発している。磁場V内に鉄筋が配筋されていない場合は、測定器4には何の報知もなされないため、作業者はこの予備孔Bの周囲には鉄筋Dが配筋されていないことを認識することができる。
【0045】
一方、図6に示すように、センサ3の磁場Vの範囲内のどこかに鉄筋Dが配筋されていると、センサ3が進行する際、センサ3によってもたらされる磁場の変化により、鉄筋Dに誘導電流が流れる。そして、この誘導電流により、鉄筋Dの周囲には新しく磁場が生じる。すると、この新しく発生した磁場によってセンサ3の検知コイル3bに誘導電流が流れ、これがコード5を介して測定器4に流れる。すると、測定器4は、電流の大きさによって表示部4aに電流の大きさを段階的に表示する。また、同時に、スピーカ部4bは警告音を発し、ランプ部4cは点灯する。
【0046】
このように、鉄筋探索装置1が鉄筋を探知した際は、探知棒2を予備孔Bから引き抜く。そして、予備孔Bに補修材を充填する。予備孔Bの径は小さいので、補修材も少量で済み、コンクリート構造物30の美観や、耐力への影響は極めて小さい。予備孔Bを補修したら、予備孔Bの中心から、少なくともセンサ3の磁場Vの半径分だけ離れた位置に新しく予備孔を穿孔し、探知棒2を挿入して鉄筋の存在の有無を確認する。これを、センサ3の反応がなくなるまで繰り返す。
【0047】
以上のようにして、穿孔した予備孔の周囲に鉄筋Dが配筋されていないことを確認したら、穿孔具10を用いて配管用や補強用の孔Cを穿孔する。
【0048】
図7に示すように、穿孔具10のガイド棒13を予備孔Bに挿し込む。そして、この状態で穿孔具10を動作させ、ケーシング11のダイヤモンドビット11bにより、コンクリート構造物30を穿孔していく。
【0049】
コンクリート構造物30を穿孔していくと、コンクリート構造物30の反力によって、穿孔具10全体を傾斜させるような力や、ケーシング11の回転による振動が穿孔具10に対して発生する。これにより、穿孔具10全体が傾斜したり振動でブレたりしやすくなり、穿孔する孔が次第に斜行してしまう原因となる。
しかしながら、本実施の形態の穿孔具10によれば、ガイド棒13が予備孔Bに挿入されるとともに、ガイド棒13が軸支持板14によりケーシング11の本体部11aの中心に位置するように支持されていることから、穿孔具10全体が傾斜したり、ガイド棒13とケーシング11の本体部11aとの間でブレが発生したりすることがないので、穿孔具10は予備孔Bに沿って斜行することなくまっすぐに穿孔することができる。
【0050】
また、ガイド棒13のキャップ部13aが、ガイド棒13にキャップスクリューによってネジ留めされていることにより、ガイド棒13の回転に関係なく自由に回転することができ、ケーシング11の本体部11aおよびガイド棒13が回転しても、キャップ部13aがそれと同調して回転しないので、これにより、ガイド棒13と予備孔Bとが摩擦を起こしてガイド棒13が摩耗することを防ぐことができる。また、ガイド棒13と予備孔Bとの間の摩擦により生じるガイド棒13への負荷も低減することができる。
【0051】
このように、予備孔Bにガイド棒13を挿し込んで穿孔を行うことにより、予備孔Bに沿って孔Cを穿孔することができる。従って、孔Cの穿孔の途中でケーシング11が斜行することを防止することができる。これにより、センサ3の磁場Vによる鉄筋探知範囲のすぐ外側に鉄筋Dが配筋されていたとしても、穿孔具10で孔Cを穿孔する際に、誤って鉄筋Dを切断してしまうことを防止することができる。
【0052】
以上のように、本実施の形態1によれば、コンクリート構造物30に予備孔Bを穿孔するだけで、コンクリート構造物30の深部に鉄筋が配筋されていてもこれを容易に探索することができる。これにより、孔Cを穿孔する位置には鉄筋Dが配筋されていないことを確認してから孔Cをコンクリート構造物30に穿孔することができるので、鉄筋Dを誤って損傷したり切断したりすることを防止することができる。
【0053】
また、ガイド棒13を備えた穿孔具10を用いたことにより、予備孔Bに沿って斜行することなくまっすぐに穿孔することができるので、孔Cを穿孔する工程においても、誤って鉄筋Dを損傷したり切断したりすることを防止することができる。
【0054】
また、本実施の形態1における鉄筋探索装置1は、センサ3を備えた探知棒2と、センサ3が鉄筋を感知した際にその反応を報知する測定器4とにより構成することができるので、簡単な構成の装置とすることができ、装置の製造コストも抑えることができる。なお、測定器4は既存の様々な種類のものを使用することができ、報知手段としての表示部4aやスピーカ部4b、ランプ部4cのうちいずれか1つが備えられていればどのようなものであってもよい。
【0055】
また、本実施の形態における鉄筋探索方法によれば、予備孔Bの径は孔Cに比べてかなり小さく、大がかりな装置を用いることなく容易にまた短時間で穿孔することができ、また、予備孔Bに探知棒2を挿入するだけで鉄筋の探索ができるので、従来工法に比べて短時間で行うことができ、作業全体の工期も短くすることができる。
【0056】
なお、本実施の形態1では、センサ3として磁石3aに検知コイル3bが巻きつけられているものを用いたが、これに限らず、金属製の棒状体に送信コイルと検知コイルとを巻き付け、送信コイルに電流を流すことで磁場を発生させる構成としてもよい。
【0057】
(実施の形態2)
次に、図面を用いて本発明の実施の形態2における鉄筋探索装置を説明する。実施の形態2の鉄筋探索装置と実施の形態1の鉄筋探索装置では、センサが異なるのみであるので、他の構成については同符号を付して説明を省略する。図8(a)は、実施の形態2における鉄筋探索装置のコイル式センサの詳細を示す図であり、(b)はコイル式センサの磁場の様子を示す図である。
【0058】
図8(a)に示すように、センサ6は、センサ本体となる磁石6aに検知コイル6bが巻かれるとともに、磁石6aには、鉄などの強磁性体6cが設けられた構成となっている。この構成により、センサ6の磁場Tは、磁石6aを中心に偏心しており、方向性を有する強度分布となっている(図8(b)参照)。このように、本実施の形態2では、強度分布が探知棒2の軸を中心に不均一な強度分布の磁場Tを有するセンサ6を用いる。
【0059】
なお、センサ6のように探知棒2の軸を中心に不均一な強度分布の磁場を発生させる手段としては、図9に示すように、磁石7の両端部に、軟鉄、純鉄、継鉄などのヨーク7a,7bを設けて、閉回路の磁場Uを構成したり、図10に示すように、磁界分布が偏った馬蹄形の磁石8を用いたりしてもよい。
【0060】
次に、本実施の形態2における鉄筋探索装置を用いた鉄筋探索方法について図面を用いて説明する。図11は、センサ6の磁場Tの範囲内に鉄筋が配筋されている場合を示す断面図である。
【0061】
本実施の形態1と同様に、予備孔Bを穿孔したら、センサ6を備えた探知棒2を軸中心で回転させながら予備孔Bにゆっくりと挿入していく。もしくは、探知棒2の軸中心に対する回転角度を変えて、探知棒2を複数回出し入れする。
図11に示すように、センサ6の磁場は、予備孔Bからある方向にだけ突出した状態に広がっており、最大探知距離Pを有している。従って、探知棒2を回転方向Qに回転させると、探知棒2を中心として、鉄筋を探知できる範囲が回転方向Qに順次移動していくこととなる。よって、探知棒2を回転させながら予備孔Bに挿入していく際に、センサ6が鉄筋Dを感知して測定器4から報知があると、このときの探知棒2の回転角度から、鉄筋Dが予備孔Bのどの位置にあるかを探知することができる。
【0062】
このようにして、予備孔Bに対して鉄筋Dがどの位置に配筋されているかを探知したことにより、次の予備孔の穿孔工程では、鉄筋Dの鉄筋配置方向を避け、また、予備孔Bからセンサ6の最大探知距離Pだけ離間させた位置に予備孔Eを穿孔することができる(図12参照)。これにより、この予備孔Eを穿孔する際には鉄筋に突き当たることがないので、コンクリート構造物30に新しい予備孔Eを穿孔することができる。
【0063】
また、予備孔Bに対して鉄筋Dがどの位置に配筋されているかを探知したことにより、鉄筋Dの鉄筋配置方向を避けて、直接予備孔Bよりも径の大きい配管用や補強用の孔を、ダイヤモンドビットを備えた既存のケーシングを用いて穿孔することもできる。特に、鉄筋Dの配筋密度があまり高くない場合は、再度予備孔Eを穿孔して新たな鉄筋の配筋を確認しなくても、鉄筋Dの配筋方向を避けて孔を穿孔すれば別の鉄筋に突き当たる可能性は低いので、コンクリート構造物30に直接、配管用や補強用の孔を穿孔することができる。
【0064】
以上のように、本実施の形態2の鉄筋探索装置によれば、鉄筋Dの存在だけでなく、鉄筋Dが予備孔Bに対してどの方向に配筋されているかということも探知することができるので、無駄な予備孔の穿孔を減らすことができ、作業工程が短縮できるだけでなくコンクリート構造物30の美観を損ねることも防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、コンクリート構造物に配筋されている鉄筋を探知するコンクリート構造物の鉄筋探索装置および鉄筋探索方法として有用であり、また、鉄筋を切断することなくエアコンなどの配管用の孔やビルや橋脚の補強工事に必要な孔をコンクリート構造物に穿孔することができるコンクリート構造物の穿孔方法および穿孔器具として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施の形態1における鉄筋探索装置の概略図である。
【図2】(a)は、実施の形態1における鉄筋探索装置のコイル式センサの詳細を示す図であり、(b)はコイル式センサの磁場の様子を示す図である。
【図3】実施の形態1における穿孔具の側面図、(b)は(a)の軸方向断面図である。
【図4】センサのキャリブレーションの手順を示す図である。
【図5】鉄筋探索装置が鉄筋を探索している様子を示す概略断面図である。
【図6】センサの磁場の範囲内に鉄筋が配筋されている場合を示す断面図である。
【図7】穿孔具が孔を穿孔する様子を示す断面図である。
【図8】(a)は、実施の形態2における鉄筋探索装置のコイル式センサの詳細を示す図であり、(b)はコイル式センサの磁場の様子を示す図である。
【図9】他の実施の形態における鉄筋探索装置のコイル式センサを示す概略図である。
【図10】他の実施の形態における鉄筋探索装置のコイル式センサを示す概略図である。
【図11】センサの磁場の範囲内に鉄筋が配筋されている場合を示す断面図である。
【図12】新しい予備孔を穿孔する位置を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 鉄筋探索装置
2 探知棒
3 センサ
3a 磁石
3b 検知コイル
4 測定器
4a 表示部
4b スピーカ部
4c ランプ部
4d 初期状態設定ボタン
5 コード
6 センサ
6a 磁石
6b 検知コイル
6c 強磁性体
7 磁石
7a,7b ヨーク
8 磁石
10 穿孔具
11 ケーシング
11a 本体部
11b ダイヤモンドビット
12 ガイド具
13 ガイド棒
13a キャップ部
13b 切り欠き溝
14 軸支持板
15 バネ
16 固定部
16a 取付部
30 コンクリート構造物
A 鉄筋片
B,E 予備孔
C 孔
D 鉄筋
R 直径
T,U,V 磁場
L 離間距離
P 最大探知距離
Q 回転方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物に配筋されている鉄筋を探索する方法であって、
コンクリートドリルでコンクリート構造物に予備孔をあけること、
該予備孔に、先端部に金属感知センサを備えた探知棒を挿入して前記金属感知センサの反応の有無を調べること
を含むコンクリート構造物の鉄筋探索方法。
【請求項2】
前記金属感知センサとして、電磁誘導法を用いたコイル式センサを使用することを特徴とする請求項1記載のコンクリート構造物の鉄筋探索方法。
【請求項3】
前記コイル式センサは、前記探知棒の軸を中心に不均一な強度分布の磁場を発するものであり、
前記予備孔に、前記探知棒を軸中心で回転させながら挿入するか、もしくは前記探知棒の軸中心に対する回転角度を変えて複数回出し入れすることを特徴とする請求項2記載のコンクリート構造物の鉄筋探索方法。
【請求項4】
先端部に金属感知センサを備え、コンクリート構造物に穿孔された予備孔に挿入される探知棒と、
前記金属感知センサが鉄筋を感知した際にそれを報知する報知手段と
を備えたコンクリート構造物の鉄筋探索装置。
【請求項5】
前記金属感知センサは、電磁誘導法を用いたコイル式センサである請求項4記載のコンクリート構造物の鉄筋探索装置。
【請求項6】
前記コイル式センサは、前記探知棒の軸を中心に不均一な強度分布の磁場を発するものである請求項5記載のコンクリート構造物の鉄筋探索装置。
【請求項7】
コンクリート構造物の鉄筋のない位置に孔を穿孔する方法であって、
コンクリートドリルでコンクリート構造物に予備孔をあける第1穿孔工程と、
該予備孔に、先端部に金属感知センサを備えた探知棒を挿入し、前記金属感知センサの反応の有無を調べる鉄筋探索工程とを有し、
前記金属感知センサの反応が無い場合は、前記予備孔に沿って前記予備孔より径が大きい孔を穿孔し、
前記金属感知センサの反応が有る場合は、さらに前記第1穿孔工程と前記鉄筋探索工程とを行うことを特徴とするコンクリート構造物の穿孔方法。
【請求項8】
前記金属感知センサとして、電磁誘導法を用いたコイル式センサであって前記探知棒の軸を中心に不均一な強度分布の磁場を発するコイル式センサを使用し、
前記鉄筋探索工程では、前記予備孔に、前記探知棒を軸中心で回転させながら挿入するか、もしくは、前記探知棒の軸中心に対する回転角度を変えて複数回出し入れし、
前記金属感知センサの反応が無い場合は、前記予備孔に沿って前記予備孔より径が大きい孔を穿孔し、
前記金属感知センサの反応が有る場合は、前記金属感知センサが反応した方向を避けて前記第1穿孔工程を再度行うことを特徴とする請求項7記載のコンクリート構造物の穿孔方法。
【請求項9】
前記金属感知センサとして、電磁誘導法を用いたコイル式センサであって前記探知棒の軸を中心に不均一な強度分布の磁場を発するコイル式センサを使用し、
前記鉄筋探索工程では、前記予備孔に、前記探知棒を軸中心に回転させながら挿入するか、もしくは、前記探知棒の軸中心に対する回転角度を変えて複数回出し入れし、
前記金属感知センサの反応が有る場合は、前記金属感知センサが反応した方向を避けて前記予備孔より径が大きい孔を穿孔することを特徴とする請求項7記載のコンクリート構造物の穿孔方法。
【請求項10】
コンクリート構造物に穿孔された予備孔に沿って、該予備孔よりも径の大きい孔を穿孔する穿孔器具であって、
先端部にビットを備えたケーシングの内側に着脱自在に取り付けられ、前記予備孔に挿通可能なガイド棒を備え、
前記ガイド棒は、前記ケーシングの内側に片持ち梁で接合されている支持部材によって、前記ケーシングの内側の軸中心に支持されていることを特徴とする穿孔器具。
【請求項11】
前記ガイド棒の先端部には、ネジ留めされたキャップ部が備えられていることを特徴とする請求項10記載の穿孔器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−178365(P2007−178365A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−379412(P2005−379412)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(504209655)国立大学法人佐賀大学 (176)
【出願人】(503208378)ビルドメンテック株式会社 (5)
【Fターム(参考)】