説明

コンクリート硬化方法

【課題】ブリージング水の過大なコンクリートを打設した生乾き状態のコンクリートであっても、コンクリート内部に毛管やエアー巻き込みのない強度のあるコンクリートやモルタルを形成することができるコンクリート硬化方法を提供する。
【解決手段】未硬化打設コンクリートの表面層に、無機硬化剤を含んだスラリー液を塗布して第1層を形成し、該第1層上に、前記無機硬化剤にセメント、骨材を混合したペースト状の第2層を形成し、該未硬化打設コンクリートを硬化させることを特徴とする。この場合において、前記無機硬化剤がリチウムイオンを含むものであることが好ましい。さらに、前記第2層上に樹脂層を形成することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート硬化方法に関し、単位水量の多いコンクリートを打設した場合であっても、コンクリートの硬化を確保することができるようにしたコンクリート硬化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般のセメントやモルタルは、硬化して強度発現までに1カ月以上の養生期間を必要とする。それは、コンクリートやモルタルが硬化した後も、内部の余剰水による水和反応が継続して続いている為で、コンクリートやモルタルの硬化・強度発現は時間と年数をかけ緩やかな曲線であるが進行し続ける。
すなわち、セメントの水和反応は以下のように考えられている。一般に、セメントと水が接するとセメント粒子の表面では直ちに水和反応が生じる。まず、水との反応が最も早いのがクリンカー組成物である。すなわち、クリンカー組成物3CaO・Al23 の表面にセメントの組成物である石膏(CaSO4・2H2O)による微細な凝固結晶体皮膜が作られ、クリンカー組成物3CaO・Al23 の水和反応速度を一時的に抑制する。この皮膜ができると、セメントの水和反応は低調になり、硬化速度が進んでいないように見えるが、この間にも水和反応は進行しており、その後、さらに硬化が進んでいき、コンクリートは、セメント粒子の隙間を生成するカルシウム等により凝結硬化していく。
また、一般に、コンクリートやモルタルのスランプ調整は、施工時のワーカビリティー(作業性)を考え、水セメント比を高くするので、コンクリートやモルタルの打設時、コンクリート表面にブリージング水(余剰水)が滲み出てくる。このブリージング水が表面に滲み出てくる過程において、コンクリート内部に微細な毛管が出来上がり、この毛管を通じて、打設時にコンクリート内部に混入している混和剤などに起因して多量のエアーを巻き込み、一旦コンクリート内部に巻き込んだエアーの隙間や形成された毛管は、凝固後のコンクリートの強度劣化につながる。
また、このようなブリージング水が表面に滲み出た状態のコンクリート床に、塗床や防水塗装、張り物等の施工をすると、コンクリート床と塗床等との間で膨れ現象(ブリスター)が生じるという問題が発生する。
このようなブリスターを解消する施工方法として以下の特許文献1に記載のような工法がある。特許文献1には、床コンクリートを打設し、ブリージング水が安息状態になってから真空脱水処理してコンクリート表面の余剰水を吸引除去し、表面平滑にして後、合成樹脂塗装材を塗布して表面塗膜を形成する、コンクリート表面仕上げ方法が記載されている。
【特許文献1】特開平8−53940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来工法や特許文献1に記載のように、ブリージング水が安息状態になるまで仕上げ作業を遅らせていたのでは施工期間が長期化してしまうし、真空脱水処理装置を使って作業を行っていたのでは施工効率が悪く、いずれにしても時間と費用がかかるといった問題があった。
そこで本発明は、ブリージング水の過大なコンクリートを打設した生乾き状態のコンクリートであっても、コンクリート内部に毛管やエアー巻き込みのない強度のあるコンクリートやモルタルを形成することができるコンクリート硬化方法を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、コンクリート打設後時間をおかずに、塗床や防水塗装、張り物等の施工をすることができ、コンクリート床との間で膨れ現象(ブリスター)を生ずることがないコンクリート硬化方法を提供することである。
さらに、本発明の別の目的は、現場での打設施工性にも優れたコンクリート硬化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1のコンクリート硬化方法は、未硬化打設コンクリートの表面層に、無機硬化剤を含んだスラリー液を塗布して第1層を形成し、該第1層上に、前記無機硬化剤にセメント、骨材を混合したペースト状の第2層を形成し、該未硬化打設コンクリートを硬化させることを特徴とする。
請求項2のコンクリート硬化方法は、請求項1において、前記無機硬化剤がリチウムイオンを含むものであることを特徴とする。
請求項3のコンクリート硬化方法は、請求項1又は2において、前記第2層上に樹脂層を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明のコンクリート硬化方法は、未硬化打設コンクリートの表面層に、無機硬化剤を含んだスラリー液を塗布して第1層を形成し、該第1層上に、前記無機硬化剤にセメント、骨材を混合したペースト状の第2層を形成し、該未硬化打設コンクリートを硬化させることを特徴とするので、先ず第1層の形成により未硬化打設コンクリートの表面に滲み出ているブリージング水を反応させて吸収し、次に経時変化によって未硬化打設コンクリートの内部から表面に滲み出てくるブリージング水を第2層によって反応吸収させることにより、ブリージング水の過大なコンクリートを打設した生乾き状態のコンクリートであっても、コンクリート内部に毛管やエアー巻き込みのない強度のあるコンクリートやモルタルを形成することができる。
また、コンクリート打設後時間をおかずに、塗床や防水塗装、張り物等の施工をすることができ、コンクリート床との間で膨れ現象(ブリスター)を生ずることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態について説明する。
(第1層の形成)
未硬化打設コンクリートの表面に滲み出ている余剰水は、コンクリート内部の遊離水の為アルカリ性の高い水分であり、本発明においては、無機硬化剤を含んだスラリー液でこの余剰水のアルカリ成分と化学反応させる。すなわち、未硬化打設コンクリートの表面に第1層を形成して、下地コンクリートから上がってくるアルカリ性余剰水と化学反応させて、凝固結晶体を作り出し、この凝固結晶体が未硬化コンクリートとその上のモルタル(第2層)との接着力を生み出し、トータルとして強固なコンクリート構造体形成するのである。
【0007】
このため、本発明において先ずは、未硬化打設コンクリート表面に無機硬化剤を含んだスラリー液を塗布して第1層を形成する。この塗布には、スラリー状態の粘性状態の液体を塗布する公知の手段、例えば、刷毛塗り、スプレー等の手段を用いて行う。
無機硬化剤を含んだスラリー液の塗布量は、余剰水の浸出量にもよるが、余剰水を十分に吸収できる量として、1.5〜10kg/mとするのが好ましい。1.5kg/m2 より少ない場合は、発生するブリージング水と十分に反応させることが困難になる。一方、10kg/m2 より多い場合は、発生したブリージング水に対して過剰となり無機硬化剤の多いひびだらけの表面となる可能性がある。なお、上記数値の前後の値はブリージング水の量によって適宜調整されるものである。
【0008】
次に、第1層が打設コンクリート表面層の余剰水を吸って色が変化してきた時点で、大型定規を使用して布施込みを行い、第1層とコンクリートとの接着を良くする。
【0009】
本発明に用いる無機硬化剤としては下記のものが挙げられる。すなわち、二酸化珪素、酸化アルミニウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、ケイ酸リチウムである。これらの各成分をそれぞれ1〜50質量部の範囲で混合したものに水を加えてスラリー状の無機硬化剤とする。
各成分は好ましくは下記の範囲とする。すなわち、二酸化珪素:4〜6質量部、酸化アルミニウム:5〜20質量部、塩化カルシウム:10〜50質量部、酸化マグネシウム:1〜3質量部、塩化マグネシウム:1〜3質量部、水酸化カルシウム:1〜3質量部、ケイ酸リチウム:1〜50質量部、残部:水を加えて、トータル1000質量部のスラリー液とする。さらに、水酸化カリウム:1〜3質量部を混合することも可能である。
なお、第1層は、上記無機硬化剤を主として、これにセメントや骨材を配合したスラリー液として塗布される。セメントや骨材の配合量は、特に指定するものではないが、ブリージング水の量によって適宜調整される。通常、セメント:1〜2質量部、骨材:1〜3質量部を配合して第1層塗布用のスラリー液とすることが好ましい。
【0010】
次に、各成分の役割及び範囲について説明する。二酸化珪素(SiO2)及び酸化アルミニウム(Al23)は、非溶解性の安定な酸化物であり混和材の主たる成分のひとつとして含有される。二酸化珪素は、スラリー粘性などの調整や強度向上に寄与し、4質量部より少ないとスラリー粘性が足りず、6質量部を超すと硬化強度の低下懸念がある。
酸化アルミニウムは、第1層を硬化させる際に緻密で強固な結晶化構造に変性させる役割がある。5質量部より少ないと結晶構造が緻密化が困難になり、20質量部を超えると硬化速度の減少傾向が増す。
【0011】
塩化カルシウム(CaCl2)は、吸湿性、保水性に富み水溶性の無機塩類であり、他の無機成分と反応して、オキシクロライドセメントを形成する性質があり、これによって、組織を強固にする機能を有している。また、その吸湿性などから凍結防止、融氷雪、霜柱防止、路層安定、モルタルやコンクリートの急結、ブライン、排水処理等の用途に使用される他、路面に適当な湿り気を与え、ホコリの発生を防ぐため、テニスコート、グラウンド、未舗装道路の防塵のために使用される。塩化カルシウムの原料としては微粉のものを使用するのが好ましいが溶解するものであれば特に限定することなく使用できる。
塩化カルシウムは、10〜50質量部の範囲とすることが好ましい。これは、塩化カルシウムが、10質量部未満では第1層の凝結結晶化時間促進の効果を示さず、50質量部より多くなると凝結時間が短くその施工性が悪くなるからである。
【0012】
酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化カルシウムは、第1層の緻密化、安定化に加えて、耐薬品性の向上、膨張収縮率の低減、接着力の向上、硬化前の流動性の向上等に寄与することが挙げられる。
ここで、酸化マグネシウムが1質量部より少ないと、施工性が悪くなることがあり、逆に3質量部を超えると、第1層の硬化強度などが劣化するような問題が生じることもあるので好ましくない。
塩化マグネシウムが1質量部より少ないと、スラリー粘性などの調整が困難となる傾向が生じ、逆に3質量部を超えると、溶出するマグネシウムイオンが過剰になって、種々の弊害を生じることがあるので好ましくない。
水酸化カルシウムが1質量部より少ないと、第1層の硬化強度が低下する傾向が生じ、逆に3質量部を超えて添加しても、硬化強度は一定となってそれ以上の強度向上は望めずコストアップに繋がるので好ましくない。
また、上記成分に水酸化カリウムを1〜3質量部を加えることもでき、施工時におけるスラリー液の粘性調整などに用いることができる。水酸化カリウムが1質量部より少ないと、施工時におけるスラリー粘性が悪くなり第1層を緻密に形成するのが困難となるような傾向が生じ、逆に3質量部を超えると、スラリー液の特性を調整する際にカリウムイオンによるマスク効果などが生じることもあるので好ましくない。
なお、水酸化カリウムに変えて、硝酸カリウム、硫酸カリウム等の他のカリウム塩も使用できる。また、これらの一又は二以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0013】
ケイ酸リチウムは、ブリージング水のアルカリ成分との反応性に優れ、これによって高強度の第1層を得るための機能を有する。
ケイ酸リチウムは、1〜50質量部を混合して用いることことが好ましい。1質量部より少ないと、アルカリ水との反応を有効に発揮させることが困難であり、逆に50質量部を超えると、他の成分と反応が顕著になる上に、原料費のアップにも繋がるので好ましくない。なお、ケイ酸リチウムに変えて、硝酸リチウム、水酸化リチウム,塩化リチウム,炭酸リチウムなどの他のリチウム塩も適用することができる。
【0014】
(第2層の形成)
そして、第1層が未硬化コンクリートの余剰水を吸収して硬化した後(通常は第1層を塗布して24時間後)、続いてその上に第2層を形成する。第2層は、前記と同じように無機硬化剤にセメントや骨材を加えた組成物からなるが、第1層よりも粘度を高くして厚塗りができるように水分を調整してペースト状にする。
【0015】
第2層の厚みとしては、特に限定するものではないが、経時的に浸出してくる余剰水を吸収するには、10〜500mmであることが好ましい。
第2層の配合としては、無機硬化剤10質量部に対し、セメント5〜100質量部、砂(ケイ砂を含む)5〜100質量部を混合して、ペースト状にするための水量を調整してモルタルとすることができる。第2層には、第1層に用いたものと同じ無機硬化剤を用い、第1層との接着性をよくし、コンクリート構造体としての強度に優れたものとすることができる。
また、第2層においては、合理的な水和反応を促進させる為、第2層を形成するモルタル内部の隙間や毛管を凝固結晶体で埋めつくした緻密な構造とすることができ、その結果、第2層のモルタルの透水性が極めて低くなり、水分はもちろん水蒸気のような微細な水分も、シャットダウンする事ができる。さらに、第2層中に含まれる無機硬化剤とアルカリ性水分との化学反応で強固な凝固結晶体を形成し、第1層を介して下地コンクートとの強い接着性が得られるとともに、第2層自体の緻密な構造を形成できる。このため、第2層の上部にウレタン樹脂などの有機塗装を施工する場合において、ブリスターの発生を防ぐ事ができる。
また、無機硬化剤とセメントとの水和反応凝結硬化を利用するので、セメント中のカルシュウム等の結晶化を促進させ、超微細で凝密性の高い、高強度で質量変化の小さい第2層を作りだせることができるとともに、長時間に亘って進行していくセメント硬化プロセスを短時間で進行させることができ、第2層中に形成される隙間を埋めていくことができる。そして、下地コンクリート(前記未硬化コンクリート)内部のアルカリ性の余剰水の未硬化コンクリート表層からの浸出を防ぎ内部に留めておくことができる為、長年に亘りコンクリートの中性化を防ぐことができる。
【0016】
無機硬化剤に加えるセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント或いは超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、など各種ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、メーソンリーセメント、白色セメント、鉄セメント、ジェットセメント、膨張セメント、コロイドセメント、エコセメント又はアルミナセメントなどを用いることができる。
【0017】
また、骨材としては、硬質の粉体、粒子が挙げられ、建築用に使用される川砂、川砂利、山砂、山砂利などの天然骨材、砕石などの人工骨材、高炉スラグなどの副産骨材、などが挙げられる。骨材の粒径は、約0.3mm〜3mm程度のものが好ましい。なお、前記無機硬化剤には、顔料を混合して、コンクリート表面を着色することもできる。顔料としては、一般に用いられている顔料粉体を使用することができる。
上記セメント、骨材は、第1層についても共通である。
【0018】
このように形成された第2層は、モルタルの中に無機硬質剤を含んでいるので、第2層の余剰水と反応し、既に打設されたコンクリートから経時的に浸出してくる余剰水を吸収し、第2層を通過して上部に余剰水が浸出することを防止する。
【0019】
次に、本発明の第1層及び第2層の施工方法について述べる。
第1及び第2層を施工する環境としては、一般のコンクリート打設方法においては、打設場所には屋根乃至壁を取り付けるのが好ましいが、本発明では特にその必要はない。また、一般の施工方法においては、冬季の施工時には低温になる恐れがあるため採暖による保温を行うのが好ましいが、本発明では特にその必要がない。本発明のコンクリート硬化方法においては、無機硬化剤とアルカリ水との反応を利用するので低温での施工が可能だからである。
【0020】
第1層を塗布する前の準備として、未硬化コンクリート表面の清掃、異物取除きをする。本施工の前段階に用いる未硬化コンクリート(フレッシュコンクリート)としては、特にその組成を限定するものではないが、例えば、普通セメント、骨材に水を加え、これを混練したものを用いることができる。そして、フレッシュコンクリートを打設した後、コンクリートフィニッシャーを用いてコンクリート表面を略水平面とする。打設コンクリートの表面層の未硬化状態時、すなわち湿潤状態にある間、好ましくは締り始めた頃(ブリージング水が発生してもよい)に、無機硬化剤を含んだスラリー液を自動散布機などを用いて未硬化コンクリート表面に均一に散布して第1層を形成する。
次に、第2層の形成は、第1層の表面に足跡がつかない程度まで硬化が進行したところで、無機硬化剤にセメント及び骨材を混合したペースト状のモルタルを第1層表面に均一に散布して形成する。ついで機械ゴテ(トロウェル)に円盤を装着して押さえ込みを行い、その後第2層がまだ湿っている間に前記機械ゴテに金ゴテを装着して仕上げを行うようにする。そしてその後は、表面層が乾燥するまで気乾養生を行う。
以上のように施工を行えば、形成された第2層は、未硬化のフレッシュコンクリート表面層に存在したブリージング水などの余剰水をさらに吸収し、これと水和してフレッシュコンクリート層と一体化し、当該打設コンクリート層上に新たな硬質コンクリート表面層を形成することができる。
【0021】
なお、第2層上にさらに化粧樹脂層を形成することもできる。このようにすれば、打設コンクリート層(未硬化コンクリート)と化粧樹脂層との間に、第2層が介在することになり、この第2層が水分吸収層として働くので、化粧樹脂層の下にブリージング水が溜まってその後そこが空隙となって化粧樹脂層が剥離するという現象を防ぐことができる。
【0022】
なお、第1層や第2層の形成に用いられる無機硬化剤には、前記カリウム塩の他にアンモニウム塩類やマグネシウム塩類などを水に添加して、多種多量のアルカリイオンや金属イオンを含有させることもできる。このような無機硬化剤は、そのイオンリッチな性質のため、コンクリートやモルタル等の土壌成分の凝結を促進、活性化するので、第1層や第2層は緻密で強固な結晶化構造に変性させることができる。
また、本発明の無機硬化剤は予め水に溶解させ、用いるセメント種類や骨材(砂など)の種類、施工厚等に応じて、散布、刷毛塗り、吹き付け塗りなどの塗装方法や塗装回数、厚み等を、適宜調整する。
なお、未硬化コンクリートではなく、既設の硬化コンクリート表面に、無機硬化剤及びセメント、骨材を混合したスラリー液を塗布して、耐久性もしくは耐薬品性、防水性を備えたコンクリート表面に改善することもできる。この場合、セメント対骨材の比をほぼ従来通りに調整した混合物に対して無機硬化剤を従来の水の代わりに注入した上で、適度な流動性が得られるまで練って既設コンクリート表面に塗布すればよい。軽度の防水工事や補修工事、例えば既設の陸屋根部の漏れや池の漏水の補修程度であれば、施工対象のコンクリート表面を水洗して浄化して刷毛塗りなどで十分な硬化表面が得られる。
【実施例】
【0023】
次に、本発明のコンクリート硬化方法の実施例について説明する。
(実施例1)
二酸化珪素:5kg、塩化マグネシウム:2kg、塩化カルシウム:20kg、酸化マグネシウム:1.5kg、水酸化カルシウム:1.5kg、酸化アルミニウム:10kg、ケイ酸リチウム:1kg、残:水を混合して、トータル1000kgの無機硬化剤とした。この無機硬化剤にセメント2kg及び砂2kgを加えてスラリー液を作成し、打設後24時間経過したブリージング水が滲み出ている未硬化コンクリートの表面に1mm厚みで塗布して第1層を形成した。次に、この第1層表面が乾くのを確認してから、この表面に、セメント10kg、砂20kg、無機硬化剤9kgを混合してモルタルとし、厚さ100mmのモルタル層(第2層)を形成した。
【0024】
(実施例2)
二酸化珪素:5kg、塩化マグネシウム:2kg、塩化カルシウム:20kg、酸化マグネシウム:1.5kg、水酸化カルシウム:1.5kg、酸化アルミニウム:10kg、硝酸リチウム:3kg、残:水を混合して、トータル1000kgの無機硬化剤とした。この無機硬化剤にセメント2kg及び砂4kgを加えてスラリー液を作成し、打設後24時間経過したブリージング水が滲み出ている未硬化コンクリートの表面に2mm厚みで塗布して第1層を形成した。次に、この第1層表面が乾くのを確認してから、この表面に、セメント10kg、砂20kg、無機硬化剤9kgを混合してモルタルとし、厚さ200mmのモルタル層(第2層)を形成した。
【0025】
(実施例3)
二酸化珪素:5kg、塩化マグネシウム:2kg、塩化カルシウム:20kg、酸化マグネシウム:1.5kg、水酸化カルシウム:1.5kg、酸化アルミニウム:10kg、水酸化カリウム:1.5kg、硝酸リチウム:3kg、残:水を混合して、トータル1000kgの無機硬化剤とした。この無機硬化剤にセメント及び砂を加えてスラリー液を作成し、打設後24時間経過したブリージング水が滲み出ている未硬化コンクリートの表面に5mm厚みで塗布して第1層を形成した。次に、この第1層表面が乾くのを確認してから、この表面に、セメント10kg、砂20kg、無機硬化剤7.5kgを混合してモルタルとし、厚さ500mmのモルタル層(第2層)を形成した。
【0026】
(評価結果)
[圧縮強度試験]
実施例1〜3の第2層して3日経過後、実施例1〜3の第2層のモルタル層から、直径50mm、高さ100mの円筒体ブロックを切り出して試験体とし、JIS R 5201に従って圧縮強度を測定した。また、本発明のコンクリート硬化方法を施さないコンクリート塊、すなわち無機硬化剤を第1層に塗布しないで製造したコンクリート塊についても同様に試験を行い、これを比較例とした。圧縮強度試験の結果を下記に示す。
−−−−−−−−−−−−−−−
実施例1:30N/mm
実施例2:35N/mm
実施例3:40N/mm
比較例 :18N/mm
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実施例1〜3のブロック試験片の圧縮強度は35〜40N/mmであった。
ちなみに、比較例の圧縮強度は18N/mmであり、本発明の方法によれば、ほぼ2倍近い強度増加が図れることが分かった。本実施例より、セメント及び砂、水とともに無機硬化剤を混練して硬化させることにより、モルタルの強度を高めて、耐久性、防水性等において顕著な効果を発揮させることができることが分かる。これは、無機硬化剤の組成物成分が、モルタルやコンクリート内の微細な空隙を充填し、セメントとの水和反応により生じた水酸化カルシウムなどと強固に結合することにより防水性や耐薬品性を獲得すると考えられる。
【0027】
[未硬化コンクリートからの滲み出しアルカリ水吸収試験]
まず、セメント1:砂2の割合の通常のモルタルに赤インクを入れ、インク入りモルタルを打設し、この打設した未硬化モルタル上に前記実施例1で用いた無機硬化剤にセメント及び砂を混合した第1層を形成(2mm厚)した。そして、24時間経過後、その第1層上に、ウレタン、エポキシ、メタクリル樹脂のいずれかを塗布して化粧樹脂層を塗布した。その後、前記未硬化モルタルを温風加熱(60℃×8時間)して硬化させた。さらに翌日、同じように60℃×8時間乾燥させた。そして、モルタル打設後10日後に、モルタル、第1層、化粧樹脂層の断面を調査した。
その結果、モルタルに入れた赤インクは、第1層の下部から0.5mmのところで止まっており、それ以上の赤インクの上昇はみられなかった。よって、モルタル中の赤インク(モルタル中のアルカリ成分と考えてもよい)は、第1層中の無機硬化剤と水和反応し凝固結晶体となって、第1層の上層部位には一切赤インクの浸出がみられず、化粧樹脂層の膨れもみられなかった。
【0028】
以上説明したように、本発明のコンクリート硬化方法は、二酸化珪素、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化アルミニウム、リチウム成分、水をそれぞれ所定量混合して無機硬化剤とし、この無機硬化剤を含むスラリー液を塗布して未硬化コンクリート表面に第1層を形成し、さらに、その上に無機硬化剤、セメント及び骨材を混合した第2層を被覆形成させ、未硬化コンクリートを硬化させる方法を要旨とするものであり、これに該当するものは本発明の権利範囲に属する。
本実施形態では、塩化カルシウム、及び酸化アルミニウム、二酸化珪素などがそれぞれ特定成分組成となるものについてその一例を説明したが、これらの成分組成は施工の実施条件などによって変わり得るものであり、これらの成分や数値に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、本発明のコンクリート硬化方法は、単位水量の過大なコンクリートを打設した場合であっても、コンクリート表面層に発生した余剰水を利用して強化コンクリート表面層を形成することにより、ブリージング水の発生によるコンクリート表層強度劣化を防ぎ、コンクリート強度を高めることができる。しかも、打設コンクリート表面層の余剰水が蒸発するまで仕上げを遅らせる必要もなく、仕上げごてを使って注意して仕上げを行う程の注意を払う必要もなく、極めて打設施工性が良く産業上の利用可能性が大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未硬化打設コンクリートの表面層に、
無機硬化剤を含んだスラリー液を塗布して第1層を形成し、
該第1層上に、前記無機硬化剤にセメント、骨材を混合したペースト状の第2層を形成し、
該未硬化打設コンクリートを硬化させることを特徴とするコンクリート硬化方法。
【請求項2】
前記無機硬化剤がリチウムイオンを含むものであることを特徴とする請求項1のコンクリート硬化方法。
【請求項3】
前記第2層上に樹脂層を形成することを特徴とする請求項1又は2のコンクリート硬化方法。

【公開番号】特開2008−38547(P2008−38547A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217560(P2006−217560)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(500488476)株式会社エイケン (4)
【Fターム(参考)】