説明

コンクリート締固め管理装置、コンクリート締固め管理方法およびコンクリート床版

【課題】コンクリートの締固めが確実に行われていることを管理する。
【解決手段】コンクリートを締固めする振動機1の位置に設けた位置情報検出機11と、コンクリートを打設する領域を所定の範囲で区画した区画情報、および位置情報検出機によって取得した振動機の位置情報を関連付けた締固め場所情報を表示する表示手段23と、振動機がコンクリートに対して挿抜されたことを検出する挿抜検出手段12と、振動機がコンクリートに挿入されたことを挿抜検出手段で検出した場合に時間の計測を開始する計時手段24と、締固めに要する所定の締固め時間を計時手段によって計測した場合に締固め時間が経過した旨を報知する報知手段25と、振動機がコンクリートから引抜かれたことを挿抜検出手段12で検出した場合に締固め場所情報に対し、振動機がコンクリートに挿入され引抜かれるまでの経過時間および締固め時間を関連づけて記憶する記憶手段22とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートを締固める際に、当該締固めが確実に行われていることを管理するコンクリート締固め管理装置、コンクリート締固め管理方法、および締固めが確実に行われていることを管理されるコンクリート床版に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に記載のコンクリートバイブレータの有効運転管理装置は、振動機がコンクリートの締固めに有効に機能しているかどうかを判別し、締固め作業の質の向上を図るものである。この管理装置は、振動機運転時の負荷と相関関係を有する電流、力率、周波数、音量などの運転状況データを検出するセンサと、その検出された値をしきい値と比較する比較回路と、比較の結果を表示する表示装置と、よりなり、検出された値がしきい値を越えたときに有効運転表示が表示装置に表示される。
【0003】
なお、締固め品質管理を適正に行えるだけでなく、作業面全体に亘り効率化を図るため、従来、例えば、特許文献2に記載の締固め管理システムが開示されている。この管理システムは、施工領域のうち、無人区域にGPSアンテナを具備した遠隔操作式締固め機械を配備して、テレビカメラによる当該締固め機械の画像情報、および少なくとも4個の衛星を利用して把握した施工情報がリアルタイムで表示されるモニタ画面を見ながら、無人区域以外の有人区域のオペレータが遠隔操作盤を操作して無人区域の当該締固め機械に締固め作業をさせるもので、施工情報は、複数のブロックからなるモニタ画面上の矩形領域に締固め範囲を当てはめて表示する締固め範囲情報と、所定の最大転圧回数に対応して設定された段階別転圧回数の夫々を色分けして各ブロックを当該ブロックに係る転圧回数に対応した色で表示するブロック別転圧回数情報と、設定時間の経過に伴うGPSアンテナの電気的中心位置の平面移動の方向、および当該移動後の電気的中心位置を基礎として、当該締固め機械の位置及び方向を示す当該締固め機械に係る平面図を矩形領域の対応する部位にリアルタイムで表示する締固め機械位置方向情報とを具備しているとともに、締固め機械位置方向情報に係る当該締固め機械がブロック中央部分に設定される帯状通過判定領域を通過すると転圧回数を加算する転圧回数加算手段を有して、当該加算後の新しい転圧回数に対応した色に当該ブロックの表示色がリアルタイムに置き換わるようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−322812号公報
【特許文献2】特開平10−102474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載の管理装置は、振動機が有効運転しているとき、振動機に対する負荷が大きくなる。そして、負荷と相関関係を有する電流、力率、周波数、音量などの値は負荷の増大とともに変化するので、これらの値を有効運転と認められる上限値または下限値であるしきい値と比較し、しきい値を越えている場合には有効運転と判別している。
【0006】
しかしながら、振動機に対する負荷は、コンクリートに挿入されていなくても変化する場合があるため、振動機がコンクリートに挿入されていないにもかかわらず、有効運転していると誤認識するおそれがある。すなわち、特許文献1に記載の管理装置は、振動機がコンクリートに挿入されているか否かを振動機に対する負荷で間接的に診ているため、コンクリートの締固めが確実に行われないことがあり得る。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、振動機がコンクリートに挿入されたか否かを振動機の上下移動を以て検出し、コンクリートの締固めが確実に行われていることを管理するコンクリート締固め管理装置、コンクリート締固め管理方法、および締固めが確実に行われていることを管理されるコンクリート床版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明のコンクリート締固め管理装置は、コンクリートを締固めする振動機の位置に設けた位置情報検出機と、前記コンクリートを打設する領域を所定の範囲で区画した区画情報、および前記位置情報検出機によって取得した前記振動機の位置情報を関連付けた締固め場所情報を表示する表示手段と、前記振動機が前記コンクリートに対して挿抜されたことを検出する挿抜検出手段と、前記振動機が前記コンクリートに挿入されたことを前記挿抜検出手段によって検出した場合に時間の計測を開始する計時手段と、締固めに要する所定の締固め時間を前記計時手段によって計測した場合に当該締固め時間が経過した旨を報知する報知手段と、前記振動機が前記コンクリートから引抜かれたことを前記挿抜検出手段によって検出した場合に前記締固め場所情報に対し、前記振動機が前記コンクリートに挿入されてから引抜かれるまでの経過時間および前記締固め時間を関連づけて記憶する記憶手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
このコンクリート締固め管理装置によれば、振動機がコンクリートに対して挿抜されたことを検出することから、コンクリートの締固めを確実に行うことができる。しかも、コンクリートの締固め作業を行った位置の記録や、締固め時間の記録が残るため、締固め作業の管理を行うことができる。しかも、振動機がコンクリートに対して挿入された後の締固め時間の経過を報知するため、締固め時間の管理を自動で行うことができる。この結果、コンクリートの締固めが確実に行われていることを管理することができる。
【0010】
また、本発明のコンクリート締固め管理装置は、前記位置情報検出機は、GPS受信機であることを特徴とする。
【0011】
このコンクリート締固め管理装置によれば、振動機の位置情報を的確に取得することができる。
【0012】
また、本発明のコンクリート締固め管理装置は、合成床版の鋼板上に前記コンクリートを打設する際に適用されるもので、前記挿抜検出手段は、前記鋼板が磁化された磁束を検出することを特徴とする。
【0013】
このコンクリート締固め管理装置によれば、磁束の検出によって振動機がコンクリートに対して挿抜されたことを振動機の上下移動を以て検出するため、コンクリートへの振動機の挿抜を確実に検出することができる。
【0014】
また、本発明のコンクリート締固め管理装置は、前記挿抜検出手段は、前記コンクリートを打設する型枠の外側に設置された磁石の磁束を検出することを特徴とする。
【0015】
このコンクリート締固め管理装置によれば、磁束の検出によって振動機がコンクリートに対して挿抜されたことを振動機の上下移動を以て検出するため、コンクリートへの振動機の挿抜を確実に検出することができる。
【0016】
また、本発明のコンクリート締固め管理装置は、前記挿抜検出手段は、前記コンクリートに対する前記振動機の接触または非接触を検出することを特徴とする。
【0017】
このコンクリート締固め管理装置によれば、振動機がコンクリートに対して挿抜された状態を直接検出することから、コンクリートの締固めを確実に行うことができる。
【0018】
また、本発明のコンクリート締固め管理装置は、前記挿抜検出手段は、前記振動機が移動する際の前記コンクリートの上面からの距離の変化を検出し、前記振動機が前記コンクリートに対して挿抜されたことを検出することを特徴とする。
【0019】
このコンクリート締固め管理装置によれば、コンクリートの上面に対する振動機の移動距離から振動機がコンクリートに対して挿抜された状態を検出するため、コンクリートへの振動機の挿抜を確実に検出することができる。
【0020】
また、本発明のコンクリート締固め管理装置は、前記記憶手段に記憶した情報を出力する出力手段を備えることを特徴とする。
【0021】
このコンクリート締固め管理装置によれば、締固め作業時もしくは締固め作業後日において、締固め作業や管理の記録を確認することができる。
【0022】
また、本発明のコンクリート締固め管理装置は、前記出力手段に出力される情報は、前記区画情報に対し、前記振動機によって前記コンクリートが前記締固め時間で締固められているか否かの締固め結果であることを特徴とする。
【0023】
このコンクリート締固め管理装置によれば、区画情報に対し、振動機がコンクリートに対して挿抜された位置、および振動機がコンクリートに挿入されてから引抜かれるまでの経過時間が締固め時間以上であるか否かの締固め結果を一目で確認することができる。
【0024】
上述の目的を達成するために、本発明のコンクリート締固め管理方法は、コンクリートを締固めする振動機の位置を位置情報検出機によって取得する工程と、次に、前記振動機が前記コンクリートに対して挿入されたことが挿抜検出手段によって検出された場合、時間を計測する工程と、次に、締固めに要する所定の締固め時間が計測された場合に当該締固め時間が経過した旨を報知する工程と、次に、前記振動機が前記コンクリートから引抜かれたことが前記挿抜検出手段によって検出された場合、前記振動機の位置である締固め場所情報に対し、前記振動機が前記コンクリートに挿入されてから引抜かれるまでの経過時間および前記締固め時間を関連づけて記憶手段に記憶する工程と、を含むことを特徴とする。
【0025】
このコンクリート締固め管理方法によれば、振動機がコンクリートに対して挿抜されたことを検出することから、コンクリートの締固めを確実に行うことができる。しかも、コンクリートの締固め作業を行った位置の記録や、締固め時間の記録が残るため、締固め作業の管理を行うことができる。しかも、振動機がコンクリートに対して挿入された後の締固め時間の経過を報知するため、締固め時間の管理を自動で行うことができる。この結果、コンクリートの締固めが確実に行われていることを管理することができる。
【0026】
また、本発明のコンクリート締固め管理方法は、前記記憶手段に記憶した情報を出力手段に出力する工程をさらに含むことを特徴とする。
【0027】
このコンクリート締固め管理方法によれば、締固め作業時もしくは締固め作業後日において、締固め作業や管理の記録を確認することができる。
【0028】
上述の目的を達成するために、本発明のコンクリート床版は、コンクリートを締固めする振動機の位置と、前記振動機によって前記コンクリートが締め固められた締固め時間とを関連づけた管理記録によって管理されることを特徴とする。
【0029】
このコンクリート床版によれば、コンクリートの締固め作業を行った位置の記録や、締固め時間の記録が残るため、締固め作業の管理を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、コンクリートの締固めが確実に行われていることを管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係るコンクリート締固め管理装置が適用される合成床版の概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係るコンクリート締固め管理装置のブロック図である。
【図3】図3は、合成床版の概略平面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係るコンクリート締固め管理装置のフローチャートである。
【図5】図5は、本発明の実施の形態に係るコンクリート締固め管理装置の表示の一例を示す図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態に係るコンクリート締固め管理装置の表示の一例を示す図である。
【図7】図7は、出力手段による出力の例を示す図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態に係るコンクリート締固め管理装置の挿抜検出手段の他の例を示す図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態に係るコンクリート締固め管理装置の挿抜検出手段の他の例を示す図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態に係るコンクリート締固め管理装置の挿抜検出手段の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0033】
図1は、本実施の形態に係るコンクリート締固め管理装置が適用される合成床版の概略断面図である。
【0034】
図1に示すように、本実施の形態に係るコンクリート締固め管理装置が適用される合成床版50は、橋梁の床版に好適に用いられるもので、鋼板(または形鋼)51とコンクリート52とが一体となって荷重に抵抗するように構成されたものである。鋼板51は、主桁53などで支持される底鋼板51aと、底鋼板51aの両側に立設された側鋼板51bとを有している。側鋼板51bの上端には、破線で示すように立設された側型枠が設けられる。そして、合成床版50は、底鋼板51aおよび側鋼板51bの内側に、鉄筋54が配置され、そこにコンクリート52が打設される。また、側型枠の内側にもコンクリートが打設される。この合成床版50は、図には明示しないがコンクリート52の上に舗装が設けられる。
【0035】
図2は、本実施の形態に係るコンクリート締固め管理装置のブロック図である。本実施の形態のコンクリート締固め管理装置は、鋼板51である底鋼板51aや側鋼板51bの内面にコンクリート52を打設する際、このコンクリート52を振動機1によって締固めるにあたり、コンクリートの締固めが確実に行われていることを管理するためのものである。このコンクリート締固め管理装置は、前記振動機1と、管理部2とを備えている。
【0036】
振動機1は、高品質のコンクリート52を得るために、打ちこまれたコンクリート52に微振動を与え、コンクリート52内部の空隙を除去するものである。振動機1は、振動をコンクリート52に伝達するため、棒状の振動子をコンクリート52内に直接挿入する構成とされている。この振動機1の位置には、位置情報検出機としてのGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)受信機11が添え付けられ、かつ挿抜検出手段12が設けられている。
【0037】
GPS受信機11は、上空にある数個の衛星からの信号を受信し、当該受信した位置(振動機1の位置情報)を取得する。このGPS受信機11は、振動機1に直接設けられていてもよいが、振動機1を操作する作業者が持っていてもよい。なお、振動機1の位置情報を取得する位置情報検出機としては、GPSを用いる他、例えば、測距儀から測点に設置した反射プリズムに向けて発振した光波を発射し、反射プリズムで反射した光波を測距儀が感知するまでに発振した回数から距離を得る光波側距儀を用いてもよい。
【0038】
挿抜検出手段12は、本実施の形態では、例えば、合成床版50の鋼板51を予め磁化しておき、鋼板51が発生する磁束を検出するセンサを有するものである。この挿抜検出手段12は、振動機1がコンクリート52に対して挿入された場合に鋼板51に接近して磁束を検出する一方、振動機1がコンクリート52から引抜かれた場合に鋼板51から離隔して磁束の検出をしなくなる。すなわち、挿抜検出手段12は、振動機1がコンクリート52に対して挿抜されたことを検出する。なお、挿抜検出手段12が検出する磁束は、打設されたコンクリート52を締固める深さに振動機1が挿入された位置において検出できるように設定する。なお、鋼板51の磁化とは、鋼板51自体を磁化させる他、磁石の設置による磁化、または電流を流すことによって磁界を発生させる磁化を含む。
【0039】
管理部2は、例えば、モバイルコンピュータが適用される。この管理部2は、制御手段21、記憶手段22、表示手段23、計時手段24、報知手段25、および出力手段26を有している。
【0040】
制御手段21は、RAMやROM等から構成されてプログラムやデータが格納される記憶手段22が接続されている。記憶手段22に格納されるデータは、コンクリート52を締固めるのに最適な締固め時間がある。締固め時間は、例えば、5秒〜15秒程度であり、この範囲において、コンクリート52の粘度(水分量)や気温や天候に起因して設定を適宜変更すればよい。また、記憶手段22に格納されるデータは、コンクリート52を打設する領域を所定の範囲で区画した区画情報がある。この区画情報は、図3の合成床版の概略平面図に示すように、鉄筋54が配置された鋼板51において、コンクリート52を打設する領域が、格子状に配置した線条部材55によって所定の範囲に区画され、この区画された位置を、制御手段21に入力しておくか、または、格子状の交差部に上記GPS受信機11を配置して取得する。
【0041】
また、制御手段21は、GPS受信機11が接続されている。すなわち、制御手段21は、GPS受信機11によって取得した振動機1の位置情報を取得する。そして、制御手段21は、GPS受信機11によって取得した振動機1の位置情報、および上記区画情報を関連付け、区画情報内の振動機1の位置である締固め場所情報を取得する。また、制御手段21は、挿抜検出手段12が接続されている。すなわち、制御手段21は、振動機1がコンクリート52に対して挿抜された検出信号を取得する。なお、制御手段21は、座標既知点におけるGPS測量により把握した誤差に基づいて締固め場所情報を補正する。また、GPS受信機11から制御手段21への位置情報の送信や、挿抜検出手段12から制御手段21への検出信号の送信は、有線または無線のいずれであってもよい。
【0042】
また、制御手段21は、表示手段23が接続されている。表示手段23は、例えば、上記モバイルコンピュータに搭載された表示部が適用される。制御手段21は、この表示手段23に対し、上記締固め場所情報を表示する。
【0043】
また、制御手段21は、計時手段24が接続されている。計時手段24は、例えば、上記モバイルコンピュータに搭載されたタイマ機能や、上記GPS受信機11が受信する時間情報が用いられる。制御手段21は、この計時手段24によって上記締固め時間の計測や、振動機1がコンクリート52に対して挿入されている時間の計測を実施する。
【0044】
また、制御手段21は、報知手段25が接続されている。報知手段25は、例えば、上記モバイルコンピュータに搭載されたスピーカ機能や、表示手段23の表示機構が適用される。制御手段21は、この報知手段25によって上記締固め時間が経過したことを報知する。なお、報知手段25は、管理部2に配置されていてもよいが、振動機1を操作する作業者が持つものでもよい。
【0045】
また、制御手段21は、出力手段26が接続されている。出力手段26は、例えば、上記モバイルコンピュータに有線または無線で接続される印刷機がある。制御手段21は、記憶手段22に記憶した情報(区画情報に対し、振動機1によってコンクリート52が締固め時間で締固められているか否かの締固め結果)を出力手段26により出力する。
【0046】
上述した制御手段21によるコンクリート締固め管理装置の制御について説明する。図4は、本実施の形態に係るコンクリート締固め管理装置のフローチャートである。ここでは、振動機1を作業者が操作するものとし、管理部2を作業管理者が持つものとする。
【0047】
先ず、制御手段21は、GPS受信機11によって取得した振動機1の位置情報、および上記区画情報を関連付け、区画情報内の振動機1の位置である締固め場所情報を取得し、当該締固め場所情報を表示手段23に表示する(ステップS1)。例えば、図5のコンクリート締固め管理装置の表示の一例を示す図に示すように、表示手段23は、締固め場所情報として、区画情報である座標[x2,y2]内に、☆印で振動機1の位置情報を表示する。なお、図5に示すように、表示手段23は、当該座標の表示や、締固め作業日時や、予め設定された締固め時間が表示される。また、表示手段23は、締固め場所情報を拡大または縮小したり、スクロールしたりすることが可能である。
【0048】
次に、振動機1がコンクリート52に対して挿入された検出信号を挿抜検出手段12から入力した場合(ステップS2:Yes)、制御手段21は、計時手段24によって時間の計測を開始するとともに上記締固め場所情報を記憶手段22に記憶させる(ステップS3)。このとき、表示手段23は、図5に示すように、経過時間が表示される。
【0049】
次に、計時手段24の計測において締固め時間が経過した場合(ステップS4:Yes)、制御手段21は、報知手段25によって締固め時間の経過を報知する(ステップS5)。
【0050】
次に、振動機1がコンクリート52から引抜かれた検出信号を挿抜検出手段12から入力した場合(ステップS6:Yes)、制御手段21は、振動機1がコンクリート52に挿入された検出信号を入力したときの位置情報を含む締固め場所情報に対し、振動機1がコンクリート52に挿入されてから引抜かれるまでの経過時間、およびそのときの締固め時間を関連付け、記憶手段22に記憶し(ステップS7)、本制御を終了する。なお、記憶手段22に記憶された情報は、表示手段23で表示することができ、例えば、図6に示すように、締固め場所情報として、区画情報である座標[x2,y2]内に、☆印で振動機1の位置情報を表示するとともに、当該座標の表示や、締固め作業日時や、予め設定された締固め時間や、経過時間が表示される。
【0051】
また、締固め作業時もしくは締固め作業後日において、記憶手段22に記憶した情報(締固め場所情報や締固め時間)を出力手段26によって出力する。
【0052】
図7は、出力手段による出力の例を示す図である。図7に示すように、出力手段26による出力としては、例えば、図6に示すように、締固め場所情報として、区画情報である座標[y1〜yX,x1〜xX]中に、振動機1の位置情報として移動軌跡を表示するとともに、振動機1によってコンクリート52が締固め時間で締固められていることが色分けにより示されている。
【0053】
なお、ステップS2において、振動機1がコンクリート52に対して挿入された検出信号を入力するまで、制御手段21は、当該検出信号の入力を待つ(ステップS2:No)。また、ステップS4において、締固め時間が経過するまで、制御手段21は、時間の計測を続ける(ステップS4:No)。また、ステップS6において、振動機1がコンクリート52から引抜かれた検出信号を入力するまで、制御手段21は、報知を続ける(ステップS6:No)。
【0054】
このように、本実施の形態のコンクリート締固め管理装置は、コンクリート52を締固めする振動機1の位置に設けた位置情報検出機としてのGPS受信機11と、コンクリート52を打設する領域を所定の範囲で区画した区画情報、およびGPS受信機11によって取得した振動機1の位置情報を関連付けた締固め場所情報を表示する表示手段23と、振動機1がコンクリート52に対して挿抜されたことを検出する挿抜検出手段12と、振動機1がコンクリート52に挿入されたことを挿抜検出手段12によって検出した場合に時間の計測を開始する計時手段24と、締固めに要する所定の締固め時間を計時手段24によって計測した場合に当該締固め時間が経過した旨を報知する報知手段25と、振動機1がコンクリート52から引抜かれたことを挿抜検出手段12によって検出した場合に前記締固め場所情報に対し、振動機1がコンクリート52に挿入されてから引抜かれるまでの経過時間および前記締固め時間を関連づけて記憶する記憶手段22と、を備える。
【0055】
このコンクリート締固め管理装置によれば、振動機1がコンクリート52に対して挿抜されたことを検出することから、コンクリートの締固めを確実に行うことが可能になる。しかも、コンクリート52の締固め作業を行った位置の記録や、締固め時間の記録が残るため、締固め作業の管理を行うことが可能になる。しかも、振動機1がコンクリート52に対して挿入された後の締固め時間の経過を報知するため、締固め時間の管理を自動で行うことが可能になる。この結果、コンクリート52の締固めが確実に行われていることを管理することが可能である。
【0056】
また、本実施の形態のコンクリート締固め管理装置は、位置情報検出機としてGPS受信機11を用いることで、振動機1の位置情報を的確に取得することが可能である。
【0057】
また、本実施の形態のコンクリート締固め管理装置は、合成床版50の鋼板51(底鋼板51aおよび側鋼板51bを含む)にコンクリートを打設する際に適用されるもので、挿抜検出手段12は、鋼板51が磁化された磁束を検出する。
【0058】
このコンクリート締固め管理装置によれば、磁束の検出によって振動機1がコンクリート52に対して挿抜されたことを振動機1の上下移動を以て検出するため、コンクリート52への振動機1の挿抜を確実に検出することが可能になる。
【0059】
また、本実施の形態のコンクリート締固め管理装置は、図8の本実施の形態に係るコンクリート締固め管理装置の挿抜検出手段の他の例を示す図に示すように、合成床版50に限らず、コンクリート52を打設する型枠57の外側に設置された磁石(永久磁石または電磁石)58の磁束を検出するようにしてもよい。
【0060】
このコンクリート締固め管理装置においても、磁束の検出によって振動機1がコンクリート52に対して挿抜されたことを振動機1の上下移動を以て検出するため、コンクリート52への振動機1の挿抜を確実に検出することが可能になる。
【0061】
また、本実施の形態のコンクリート締固め管理装置は、図には明示しないが、挿抜検出手段12は、コンクリート52に対する振動機1の接触または非接触を検出するようにしてもよい。コンクリート52に対する振動機1の接触または非接触を検出する挿抜検出手段12としては、例えば、静電容量の変化を検出するセンサを有する。
【0062】
このコンクリート締固め管理装置によれば、振動機1がコンクリート52に対して挿抜された状態を直接検出することから、コンクリート52の締固めを確実に行うことが可能になる。
【0063】
また、本実施の形態のコンクリート締固め管理装置は、記憶手段22に記憶した情報を出力する出力手段26を備える。
【0064】
このコンクリート締固め管理装置によれば、締固め作業時もしくは締固め作業後日において、締固め作業や管理の記録を確認することが可能になる。
【0065】
また、本実施の形態のコンクリート締固め管理装置は、出力手段26に出力される情報は、区画情報に対し、振動機1によってコンクリート52が締固め時間で締固められているか否かの締固め結果である。
【0066】
このコンクリート締固め管理装置によれば、区画情報に対し、振動機1がコンクリート52に対して挿抜された位置、および振動機1がコンクリート52に挿入されてから引抜かれるまでの経過時間が締固め時間以上であるか否かの締固め結果を一目で確認することが可能になる。
【0067】
また、本実施の形態のコンクリート締固め管理方法は、コンクリート52を締固めする振動機1の位置を位置情報検出機としてのGPS受信機11によって取得する工程と、次に、振動機1がコンクリート52に対して挿入されたことが挿抜検出手段12によって検出された場合、時間を計測する工程と、次に、締固めに要する所定の締固め時間が計測された場合に当該締固め時間が経過した旨を報知する工程と、次に、振動機1がコンクリート52から引抜かれたことが挿抜検出手段12によって検出された場合、振動機1の位置である締固め場所情報に対し、振動機1がコンクリート52に挿入されてから引抜かれるまでの経過時間および前記締固め時間を関連づけて記憶手段22に記憶する工程と、を含む。
【0068】
このコンクリート締固め管理方法によれば、振動機1がコンクリート52に対して挿抜されたことを検出することから、コンクリートの締固めを確実に行うことが可能になる。しかも、コンクリート52の締固め作業を行った位置の記録や、締固め時間の記録が残るため、締固め作業の管理を行うことが可能になる。しかも、振動機1がコンクリート52に対して挿入された後の締固め時間の経過を報知するため、締固め時間の管理を自動で行うことが可能になる。この結果、コンクリート52の締固めが確実に行われていることを管理することが可能である。
【0069】
また、本実施の形態のコンクリート締固め管理方法は、記憶手段22に記憶した情報を出力手段26に出力する工程をさらに含む。
【0070】
このコンクリート締固め管理方法によれば、締固め作業時もしくは締固め作業後日において、締固め作業や管理の記録を確認することが可能になる。
【0071】
また、本実施の形態のコンクリート床版は、コンクリート52を締固めする振動機1の位置と、振動機1によってコンクリート52が締め固められた締固め時間とを関連づけた管理記録によって管理される。具体的には、コンクリート52を締固めする振動機1の位置が位置情報検出機としてのGPS受信機11によって取得され、振動機1がコンクリート52に対して挿入されたことが挿抜検出手段12によって検出され、締固めに要する所定の締固め時間が経過した後に、振動機1がコンクリート52から引抜かれたことが挿抜検出手段12によって検出され、振動機1の位置である締固め場所情報に対して振動機1がコンクリート52に挿入されてから引抜かれるまでの経過時間および締固め時間を関連づけて記憶手段22に記憶されることで管理される。
【0072】
このコンクリート床版によれば、コンクリート52の締固め作業を行った位置の記録や、締固め時間の記録が残るため、締固め作業の管理を容易に行うことが可能になる。
【0073】
なお、上述したコンクリート締固め管理装置は、振動機1が1つの場合を示したが、振動機1を複数用いた場合でも適用できる。振動機1を複数用いた場合は、各振動機1の締固め場所情報、締固め時間、経過時間を管理して、表示や報知を行う。
【0074】
なお、本実施の形態のコンクリート締固め管理装置は、対象とするコンクリート構造物として、橋梁の合成床版50を例としたが、この限りではなく、締固めを必要とするコンクリート構造物全般に適用可能である。
【0075】
なお、挿抜検出手段12は、図9の挿抜検出手段の他の例を示す図に示すように、振動機1の長さ方向(高さ方向)の異なる位置に配置された2つの発信機59a,59bと、各発信機59a,59bの信号を受信する受信機59cとを用いたものであってもよい。発信機59a,59bは、超音波、光または電波を発信するもので、一方の発信機59aが振動機1のコンクリート52に挿入される位置に設けられ、他方の発信機59bが振動機1のコンクリート52に挿入されない位置に設けられている。また、受信機59cは、発信機59a,59bに対応し、超音波、光または電波を発信するものである。そして、図9(a)において、各発信機59a,59bからの信号を受信機59cによって受信しないときを、コンクリート52の締固め作業が行われていない休止状態として検出し、図9(a)において、各発信機59a,59bからの信号を受信機59cによって受信しているときを、締固め作業が開始され振動機1がコンクリート52から引き抜かれたと検出し、図9(b)に示すように、一方の発信機59aからの信号を受信機59cによって受信せず、他方の発信機59bからの信号を受信機59cによって受信したときを、一方の発信機59aからの信号がコンクリート52によって遮断されたことで、締固め作業が開始され振動機1がコンクリート52に挿入されたと検出する。このように、図9に示す挿抜検出手段12によっても、振動機1がコンクリート52に対して挿抜された状態を検出することから、鋼板51や型枠57であっても、コンクリート52の締固めを確実に行うことが可能になる。
【0076】
また、挿抜検出手段12は、図10の挿抜検出手段の他の例を示す図に示すように、振動機1に配置されてコンクリート52の上面からの距離を検出する距離計測器60を用いたものであってもよい。距離計測器60は、例えば、レーザ距離計が適用され、振動機1のコンクリート52に挿入されない位置に設けられている。そして、図10(a)に示すように、距離計測器60において計測されるコンクリート52の上面からの距離Lが、当該距離計測器60から振動機1の挿入端までの距離Lo(予め制御手段21に設定されている)よりも長い場合を、コンクリート52の締固め作業が行われていない休止状態として検出する。その後、図10(b)に示すように距離計測器60において計測されるコンクリート52の上面からの距離Lが、距離Loよりも短くなった場合を、締固め作業が開始され振動機1がコンクリート52に挿入されたと検出する。さらにその後、図10(a)に示すように、距離計測器60において計測されるコンクリート52の上面からの距離Lが、距離Loよりも再び長くなった場合を、締固め作業が開始され振動機1がコンクリート52から引き抜かれたと検出する。さらに、締固め作業において、打設されるコンクリート52の深さLsを予め制御手段21に設定しておくことで、(Lo−L)<Lsの範囲とすることで、振動機1が床版に接触しないように振動機1の挿入量(挿入深さ)を管理することが可能である。このように、図10に示す挿抜検出手段12のように、振動機1が移動する際のコンクリート52の上面からの距離の変化を検出し、振動機1がコンクリート52に対して挿抜されたことを検出しても、振動機1がコンクリート52に対して挿抜された状態を検出することから、鋼板51や型枠57であっても、コンクリート52への振動機1の挿抜を確実に検出することが可能であり、コンクリート52の締固めを確実に行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0077】
1 振動機
11 GPS受信機
12 挿抜検出手段
2 管理部
21 制御手段
22 記憶手段
23 表示手段
24 計時手段
25 報知手段
50 合成床版
51 鋼板
51a 底鋼板
51b 側鋼板
52 コンクリート
53 主桁
54 鉄筋
55 線条部材
57 型枠
58 磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを締固めする振動機の位置に設けた位置情報検出機と、
前記コンクリートを打設する領域を所定の範囲で区画した区画情報、および前記位置情報検出機によって取得した前記振動機の位置情報を関連付けた締固め場所情報を表示する表示手段と、
前記振動機が前記コンクリートに対して挿抜されたことを検出する挿抜検出手段と、
前記振動機が前記コンクリートに挿入されたことを前記挿抜検出手段によって検出した場合に時間の計測を開始する計時手段と、
締固めに要する所定の締固め時間を前記計時手段によって計測した場合に当該締固め時間が経過した旨を報知する報知手段と、
前記振動機が前記コンクリートから引抜かれたことを前記挿抜検出手段によって検出した場合に前記締固め場所情報に対し、前記振動機が前記コンクリートに挿入されてから引抜かれるまでの経過時間および前記締固め時間を関連づけて記憶する記憶手段と、
を備えることを特徴とするコンクリート締固め管理装置。
【請求項2】
前記位置情報検出機は、GPS受信機であることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート締固め管理装置。
【請求項3】
合成床版の鋼板上に前記コンクリートを打設する際に適用されるもので、
前記挿抜検出手段は、前記鋼板が磁化された磁束を検出することを特徴とする請求項1または2に記載のコンクリート締固め管理装置。
【請求項4】
前記挿抜検出手段は、前記コンクリートを打設する型枠の外側に設置された磁石の磁束を検出することを特徴とする請求項1または2に記載のコンクリート締固め管理装置。
【請求項5】
前記挿抜検出手段は、前記コンクリートに対する前記振動機の接触または非接触を検出することを特徴とする請求項1または2に記載のコンクリート締固め管理装置。
【請求項6】
前記挿抜検出手段は、前記振動機が移動する際の前記コンクリートの上面からの距離の変化を検出し、前記振動機が前記コンクリートに対して挿抜されたことを検出することを特徴とする請求項1または2に記載のコンクリート締固め管理装置。
【請求項7】
前記記憶手段に記憶した情報を出力する出力手段を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載のコンクリート締固め管理装置。
【請求項8】
前記出力手段に出力される情報は、前記出力手段に出力される情報は、前記区画情報に対し、前記振動機によって前記コンクリートが前記締固め時間で締固められているか否かの締固め結果であることを特徴とする請求項7に記載のコンクリート締固め管理装置。
【請求項9】
コンクリートを締固めする振動機の位置を位置情報検出機によって取得する工程と、
次に、前記振動機が前記コンクリートに対して挿入されたことが挿抜検出手段によって検出された場合、時間を計測する工程と、
次に、締固めに要する所定の締固め時間が計測された場合に当該締固め時間が経過した旨を報知する工程と、
次に、前記振動機が前記コンクリートから引抜かれたことが前記挿抜検出手段によって検出された場合、前記振動機の位置である締固め場所情報に対し、前記振動機が前記コンクリートに挿入されてから引抜かれるまでの経過時間および前記締固め時間を関連づけて記憶手段に記憶する工程と、
を含むことを特徴とするコンクリート締固め管理方法。
【請求項10】
前記記憶手段に記憶した情報を出力手段に出力する工程をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載のコンクリート締固め管理方法。
【請求項11】
コンクリートを締固めする振動機の位置と、前記振動機によって前記コンクリートが締め固められた締固め時間とを関連づけた管理記録によって管理されることを特徴とするコンクリート床版。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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