説明

コンクリート製集合住宅

【課題】 部屋の改装工事、隣接する部屋の間の改装工事などを簡単に行えるコンクリート製集合住宅を提供する。
【解決手段】 コンクリート製の構造垂直柱部3と、構造垂直柱部3の間を格子状に連結するコンクリート製の構造水平梁部5と、構造垂直柱部3と構造水平梁部5とで区画された左右、前後、上下の複数の室領域7間に設けられた木製の壁体部9とで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製集合住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に「複層戸建てコンクリート住宅」が記載されており、特許文献2に「耐力梁と耐力柱を持たない複層コンクリート住宅」が記載されている。
【0003】
前者は、ボックス型の外壁構造体に建築法で要求される強度を与え、その内部で木造または鉄骨造りの床組を支持したことにより、自由な床組と間仕切りの構築を可能にし、多様な改装、特に、上下空間の設定が自由に行えるとしている。
【0004】
また、後者は、コンクリート製の耐力壁で天井と床と左右壁を形成し、各部屋を環状にしたことによって前面と後面を解放し、前面と後面の設計の自由度を高くしている。
【特許文献1】特開2003−193691号公報
【特許文献2】特開2001−32366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1の技術では、改装に当たって、例えば、鉄骨造りの床組を用いて上下の空間を設定する場合、空間内に鉄製の柱材(鉄骨)を搬入して加工するので、工事が大掛かりになり、大きな作業音の発生や、粉塵の飛散が避けられない上に、長尺な鉄骨は搬入が不可能な場合もあり、改装の自由度はそれだけ低い。
【0006】
また、特許文献2の技術では、左右や上下の部屋を繋げて1空間にする場合、コンクリート製の耐力壁を崩す必要があるから簡便な改装は不可能であると共に、上記と同様に、工事が大掛かりになり、大きな作業音や、粉塵の飛散が避けられない。
【0007】
そこで、本発明は、部屋の改装工事、あるいは、隣接する部屋の間の改装工事を自由に、また、簡単に行うことができるコンクリート製集合住宅の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1のコンクリート製集合住宅は、垂直に立設された複数本のコンクリート製の構造垂直柱部と、これらの構造垂直柱部間を格子状に連結するコンクリート製の構造水平梁部と、前記構造垂直柱部と構造水平梁部とで区画された左右、前後及び上下の複数の室領域間に設けられた木製の壁体部とからなることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載のコンクリート製集合住宅であって、前記壁体部が上下の室領域間を区画する上下壁と、左右・前後の室領域間を区画する左右前後壁とからなり、前記上下壁及び前記左右前後壁は木材で形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のコンクリート製集合住宅であって、前記壁体部が、複数本の棒体と、これらの棒体に固定されて床部または天井部または左右前後壁部を形成する板材とからなることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3に記載のコンクリート製集合住宅であって、前記棒体は、複数本に分割された小寸法棒体と、これらの小寸法棒体を連結する連結手段とからなることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項3または請求項4に記載のコンクリート製集合住宅であって、前記棒体は、前記構造水平梁部に固定手段を介して固定され、前記固定手段は、前記構造水平梁部に固定されたブラケットと、このブラケットの挿入固定板部が挿入される棒体端部のスリットと、このスリットに挿入された挿入固定板部を棒体に固定するボルトとからなることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のコンクリート製集合住宅であって、前記室領域内に設けられて室領域内を間仕切り可能な木材からなる室内壁が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載のコンクリート製集合住宅は、コンクリート製の構造垂直柱部及び構造水平梁部とで基本的な左右及び前後及び上下の各室領域を構成し、この室領域の間を木製の壁体部で区画して各部屋を形成している。
【0015】
木製の壁体部は、工場で予め製造する必要がなく、現場で加工(組み立てまたは改修)することが可能であるから、壁体部に手を入れるだけで改装工事が可能になり、例えば、隣接する部屋の間の改装工事、あるいは、左右や上下の部屋を繋げて1空間(1住戸)にするような改装工事をも低コストで容易に行うことができる。
【0016】
また、木製の壁体部には、不燃性の木材や通常の木材などを含む各種の木材を、場所や用途やコストに応じて自由に選択できるから、本発明による改装工事は自由度が極めて高く低コストである。
【0017】
また、各従来例と異なって、長尺な鉄骨の搬入、鉄骨の加工、コンクリート製耐力壁の破壊などを伴う大掛かりな工事が不要であり、作業音の発生や粉塵の飛散が大幅に低減されるから、遮音や粉塵飛散防止のための現場の遮蔽工事がそれだけ簡素化され、コストがさらに低減される。
【0018】
請求項2に記載のコンクリート製集合住宅は、請求項1の構成と同等の効果が得られる。
【0019】
請求項3のコンクリート製集合住宅は、請求項1または請求項2の構成と同等の効果が得られる。
【0020】
また、棒体に板材を固定して壁体部にする請求項3の構成では、棒体と板材の各材料をそれぞれ自由に選択して組み合わせることができるから、耐火性、耐久性、吸湿性、コストなど種々の面での要求に対応しながら改修工事を行うことができる。
【0021】
また、棒体に不燃木材を用いれば耐火性が向上する。
【0022】
また、板材に不燃性材料や難燃性材料を用いれば耐火性が向上する上に、棒体に不燃性ではない通常の安価な木材を用いることができるから、耐火性を高く維持しながらコストを低減できる。
【0023】
また、棒体は矩形断面や正方形断面の棒体が一般的であるが、棒体はこれらの形状に限らず、例えば、丸材でもよい。
【0024】
請求項4のコンクリート製集合住宅は、請求項3の構成と同等の効果が得られる。
【0025】
また、小寸法棒体を連結手段で連結して棒体にする請求項4の構成では、この連結工事を室内で行うことが可能であるから、改修工事をさらに低コストで容易に行うことができる。
【0026】
請求項5のコンクリート製集合住宅は、請求項3または請求項4の構成と同等の効果が得られる。
【0027】
また、棒体をブラケット(固定手段)で構造水平梁部に固定する請求項5の構成では、棒体の固定工事を現場で行えるから、改修工事がさらに低コストで容易になる。
【0028】
また、ブラケットによって棒体は強固に固定される。
【0029】
請求項6のコンクリート製集合住宅は、請求項1〜請求項5の構成と同等の効果が得られる。
【0030】
また、室領域内を木材製の室内壁で間仕切りする請求項6の構成では、新築時の間仕切り工事だけでなく、改装工事の間仕切りも低コストで容易に行える。
【0031】
<一実施形態>
図1〜図4によってコンクリート製集合住宅1(本発明の一実施形態)の説明をする。
【0032】
[コンクリート製集合住宅1の特徴]
コンクリート製集合住宅1は、垂直に立設された複数本のコンクリート製の構造垂直柱部3と、これらの構造垂直柱部3間を格子状に連結するコンクリート製の構造水平梁部5と、構造垂直柱部3と構造水平梁部5とで区画された左右、前後、上下の複数の室領域7の間に設けられた木製の壁体部9とからなり、
壁体部9は、上下の室領域7間を区画する上下壁11と、左右の室領域7間を区画する左右壁13と、前後の室領域7間を区画する前後壁15であって、これら上下壁11と左右壁13と前後壁15は木材で形成されており、
壁体部9が、複数本の棒材17(棒体)と、これらの棒材17に固定されて床部または天井部または左右前後壁部を形成する板材19とからなり、
棒材17は、複数本に分割された小寸法棒材21(小寸法棒体)と、これらの小寸法棒材21を連結する連結手段23とからなり、
図3のように、棒材17は、構造水平梁部5に固定手段を介して固定されており、この固定手段は、構造水平梁部5に固定されたブラケット25と、ブラケット25の挿入固定板部26が挿入される棒材17端部のスリット27と、スリット27に挿入された挿入固定板部26を棒材17に固定するボルト29及びナット31とからなることを特徴とする。
【0033】
[コンクリート製集合住宅1の構成]
図1は、コンクリート製集合住宅1の一部を示しており、上記のように、コンクリート製集合住宅1は縦柱である構造垂直柱部3と横梁である構造水平梁部5とで基本的な構造を構成し、構造垂直柱部3と構造水平梁部5とで区画された室領域7に木製の壁体部9である上下壁11と左右壁13と前後壁15を取り付けて各部屋を形成している。
【0034】
また、板材19を固定して壁体部9を構成する棒材17は、複数本の小寸法棒材21と、小寸法棒材21を互いに連結する連結手段23(ホームコネクター)とで構成されており、図4のように、連結手段23は、中空のネジ状コネクター33と、枝管35とで構成されている。
【0035】
小寸法棒材21,21の連結は下記のような手順で行われる。
【0036】
(1)図4(a)のように、接合しようとする小寸法棒材21,21の接合面にコネクター33を挿入するための穴37,37をあける。
【0037】
(2)片側の小寸法棒材21に枝管35を挿入するための溝39を加工する。
【0038】
(3)図4(b)のように、コネクター33を小寸法棒材21,21の穴37間に納め、小寸法棒材21,21間に開きが出ないように仮止めを行う。
【0039】
(4)注入ガンを用いて枝管35からコネクター33に専用接着剤(AHC)を加圧注入する。
【0040】
(5)枝管35の脇から接着剤が返流することを確認した後、枝管35の取り外しを行う。
【0041】
(6)枝管35を取り外した後に、注入孔(溝39)へ込み栓(木栓)を打ち込んで作業を完了する。
【0042】
このように小寸法棒材21を連結して構成された棒材17に板材19を固定して壁体部9である上下壁11と左右壁13と前後壁15が構成されており、各壁11,13,15の棒材17(小寸法棒材21)の端部を、図3のように、ブラケット25とボルト29とナット31によって構造水平梁部5に固定し、各部屋(室領域7)が区画されている。なお、図2は、4方の構造水平梁部5側に、矢印41のように、小寸法棒材21をそれぞれ追加した例を示している。
【0043】
また、各室領域7の内部は木材からなる室内壁で間仕切りすることが可能である。
【0044】
また、小寸法棒材21に不燃性の木材を用いれば耐火性が向上し、板材19に不燃性材料や難燃性材料を用いれば耐火性が向上する上に、小寸法棒材21に不燃性ではない通常の安価な木材を用いることが可能になる。
【0045】
<コンクリート製集合住宅1の効果>
コンクリート製集合住宅1は次のような効果が得られる。
【0046】
コンクリート製の構造垂直柱部3と構造水平梁部5とで構成した上下と左右と前後の各室領域7を木製の壁体部9で区画し各部屋を形成しており、木製の壁体部9は、工場で予め製造する必要がなく、現場で加工(組み立てまたは改修)することができる。
【0047】
また、木製の壁体部9に手を入れるだけの改装工事は容易であり、例えば、隣接する部屋の間の改装工事、あるいは、左右や上下の部屋を繋げて1空間(1住戸)にするような改装工事でも容易に低コストで行うことができる。
【0048】
また、木製の壁体部9には、不燃性の木材や通常の木材などを含む各種の木材を場所や用途やコストに応じて選択できるから、本発明による改装工事は自由度が極めて高く低コストである。
【0049】
また、各従来例と異なって、長尺な鉄骨の搬入、鉄骨の加工、コンクリート製耐力壁の破壊などを伴う大掛かりな工事が不要であり、作業音の発生や粉塵の飛散が大幅に低減されるから、遮音や粉塵飛散防止のための遮蔽工事がそれだけ簡素化され、コストがさらに低減される。
【0050】
また、棒体17(21)に板材19を固定して壁体部9にする本発明では、棒体17と板材19の各材料をそれぞれ自由に選択して組み合わせることが可能であり、耐火性、耐久性、吸湿性、コストなど種々の面での要求に対応しながら改修工事を行うことができる。
【0051】
また、棒体17に不燃木材を用いれば耐火性が向上する。
【0052】
また、板材19に不燃性材料や難燃性材料を用いれば耐火性が向上する上に、棒体17に不燃性ではない通常の安価な木材を用いることができるから、耐火性を高く維持しながらコストを低減できる。
【0053】
また、小寸法棒体21を連結手段23で連結して棒体17にする工事は室内で行うことが可能であるから、改修工事をさらに低コストで容易に行うことができる。
【0054】
また、棒体17をブラケット25で構造水平梁部5に固定する固定工事は現場で行われるから、改修工事はさらに低コストで容易になる。
【0055】
また、ブラケット25によって棒体17は強固に固定される。
【0056】
また、各室領域7を木製の室内壁で間仕切りする場合は、新築時の間仕切り工事だけでなく、改装工事の間仕切りも低コストで容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】コンクリート製集合住宅1を示す分解斜視図である。
【図2】コンクリート製集合住宅1の天井部または床部を示す図面である。
【図3】棒材17を構造水平梁部5に固定する固定手段を示す分解斜視図である。
【図4】(a)小寸法棒体21,21とその連結手段23を示す図面である。
【0058】
(b)小寸法棒体21,21を連結手段23で連結する途中の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 コンクリート製集合住宅
3 構造垂直柱部
5 構造水平梁部
7 室領域
9 壁体部
11 上下壁
13 左右壁
15 前後壁
17 棒材(棒体)
19 板材
21 小寸法棒材(小寸法棒体)
23 連結手段
25 ブラケット
27 スリット
29 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直に立設された複数本のコンクリート製の構造垂直柱部と、これらの構造垂直柱部間を格子状に連結するコンクリート製の構造水平梁部と、前記構造垂直柱部と構造水平梁部とで区画された左右、前後及び上下の複数の室領域間に設けられた木製の壁体部とからなることを特徴とするコンクリート製集合住宅。
【請求項2】
請求項1記載のコンクリート製集合住宅であって、
前記壁体部が上下の室領域間を区画する上下壁と、左右・前後の室領域間を区画する左右前後壁とからなり、前記上下壁及び前記左右前後壁は木材で形成されていることを特徴とするコンクリート製集合住宅。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のコンクリート製集合住宅であって、
前記壁体部が、複数本の棒体と、これらの棒体に固定されて床部または天井部または左右前後壁部を形成する板材とからなることを特徴とするコンクリート製集合住宅。
【請求項4】
請求項3に記載のコンクリート製集合住宅であって、
前記棒体は、複数本に分割された小寸法棒体と、これらの小寸法棒体を連結する連結手段とからなることを特徴とするコンクリート製集合住宅。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載のコンクリート製集合住宅であって、
前記棒体は、前記構造水平梁部に固定手段を介して固定され、前記固定手段は、前記構造水平梁部に固定されたブラケットと、このブラケットの挿入固定板部が挿入される棒体端部のスリットと、このスリットに挿入された挿入固定板部を棒体に固定するボルトとからなることを特徴とするコンクリート製集合住宅。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のコンクリート製集合住宅であって、
前記室領域内に設けられて室領域内を間仕切り可能な木材からなる室内壁が設けられていることを特徴とするコンクリート製集合住宅。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−100357(P2007−100357A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290435(P2005−290435)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(595119338)ダイア建設株式会社 (8)
【Fターム(参考)】