説明

コンソールボックス用ロック機構およびロック機構の組付け方法

【課題】コンソールボックスの蓋体の狭い空間に対してもロックピンを容易に組付け可能とし、かつ特殊な保持構造を採用することなくロックピンを外れないように保持可能とする。
【解決手段】コンソールボックスにおける蓋体に一対のロックピンと、両ロックピンの間に介在させたスプリングとが組付けられ、両ロックピンがスプリングの付勢力を受けて蓋体の移動をロックすることができるコンソールボックス用ロック機構であって、一対のロックピン20が、ロボットアーム30に設けられている一対のクランプ部材32を個別に挿入することができるクランプ孔24をそれぞれ備えている。そして、個々のクランプ孔24にクランプ部材32が挿入された状態では、両ロックピン20がスプリング26を圧縮した状態で把持されるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のコンソールボックスにおいて、その蓋体の移動(スライド)をロックし、このロックを解除することによって蓋体をスライドさせることができるコンソールボックス用ロック機構およびその組付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のロック機構は、コンソールボックスの蓋体側に一対のロックピンが相互の間にスプリングを介在させて組付けられている。このスプリングの付勢力によって両ロックピンが非スライド部材に係合することで蓋体のスライドがロックされ、このロックを解除することによって蓋体をスライドさせることができる。
なお、コンソールボックス用ロック機構の一般的な技術は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−36090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロックピンをスプリングと共にコンソールボックスの蓋体に組付ける作業に、ロボットアームを利用することがある。その場合、ロボットアームのハンド型ツールなどによってロックピンの外側を把持すると、蓋体の狭い空間にロックピンを入れるときにツールがじゃまになり、うまく組付けることができない。また、ロボットアームのツールは、ロックピンが簡単に外れないように特殊な保持構造を採用する必要がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、コンソールボックスの蓋体の狭い空間に対してもロックピンを容易に組付け可能とし、かつ特殊な保持構造を採用することなくロックピンを外れないように保持可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
コンソールボックスにおける蓋体に一対のロックピンと、両ロックピンの間に介在させたスプリングとが組付けられ、両ロックピンはスプリングの付勢力を受けて蓋体の移動をロックすることができ、このロックを解除することによって蓋体を移動させることできるコンソールボックス用ロック機構であって、一対のロックピンが、ロボットアームに設けられている一対のクランプ部材を個別に挿入することができるクランプ孔をそれぞれ備えている。そして、個々のクランプ孔にクランプ部材が挿入された状態では、両ロックピンがスプリングを圧縮した状態で把持されるように設定されている。
【0007】
上記コンソールボックス用ロック機構の組付け方法であって、一対のロックピンを相互の間にスプリングを介在させた状態でセットし、両ロックピンのクランプ孔にロボットアームの一対のクランプ部材を個別に挿入した後、両クランプ部材の作動により両ロックピンを互いに近づけてスプリングを圧縮し、この状態でロボットアームを作動させて両ロックピンをスプリングと共にコンソールボックスの蓋体に組付ける。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、一対のロックピンにおけるそれぞれのクランプ孔にロボットアームのクランプ部材を個別に挿入することで、これらのロックピンを、相互の間に介在させたスプリングと共に把持することができる。これにより、ロボットアームのハンド型ツールなどによってロックピンを外側から把持するのと異なり、コンソールボックスにおける蓋体の狭い空間に対してもロックピンを組付けることができる。
また、両ロックピンがスプリングを圧縮した状態でクランプ部材により把持されることから、このスプリングの弾性を利用してクランプ部材とロックピンとを外れないように保持することができ、クランプ部材に特殊な保持構造を採用することが不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】コンソールボックスにおける蓋体の外観を表した斜視図。
【図2】蓋体内部の構成部材を分解して表した斜視図。
【図3】蓋体のインナプレートおよびロックピンを分解して表した斜視図。
【図4】蓋体のインナプレートにロックピンを組付けた状態の平面図。
【図5】組付け前のロックピンをロボットアームの一部と共に表した正面図。
【図6】組付け前のロックピンおよびスプリングのセット状態を表した正面図。
【図7】ロックピンがロボットアームのクランプ部材で把持された状態の正面図。
【図8】クランプ部材で把持されたロックピンの組付け直後を表した正面図。
【図9】ロックピンの組付け完了状態を表した正面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
図1で示すコンソールボックスの蓋体10は、ボックス本体(図示省略)に対して開閉可能で、かつ車体の前後方向へスライドさせることができる。蓋体10の内部構造は、主として図2に示されているインナプレート12およびヒンジ部材18からなり、インナプレート12に図1で示すアウタープレート14(パッドと表皮を含む)およびサイドプレート16が結合されている。
インナプレート12は、ヒンジ部材18に対して前後方向へスライド可能に組付けられる。また、ヒンジ部材18はボックス本体に対して開閉可能に支持される。
【0011】
図2および図3で示すように、インナプレート12は左右方向に連続した凹部12aを有する。この凹部12aに、一対のロックピン20と一つのスプリング26とがそれぞれ組付けられる。両ロックピン20は互いのバネ座22を相対向させており、これらのバネ座22の間にスプリング26を介在させている(図4)。なお、凹部12aの内壁には、両ロックピン20とそれぞれ接触する複数個のリブ12bが成形されている(図3)。これらのリブ12bは、凹部12aの内壁と両ロックピン20との接触面積を小さくし、凹部12a内において左右方向へ移動するロックピン20の動きを円滑にしている。
【0012】
凹部12aに組付けられた両ロックピン20は、スプリング26の弾性によって左右へ押し離される方向の付勢力を受けている。この付勢力によって、ロックピン20がヒンジ部材18側の孔等(図示省略)に係合した状態に保たれ、該ヒンジ部材18に対するインナプレート12(蓋体10)のスライドがロックされる。
そして、解除ノブ等の操作に連動して両ロックピン20がスプリング26の付勢力に抗して互いに近づく方向へ移動し、ロックが解除される。これによってヒンジ部材18に対するインナプレート12(蓋体10)のスライドが可能となる。
【0013】
図5で示すように、ロックピン20を組付けるためのロボットアーム30のツールヘッド31は、一対のクランプ部材32を備えている。そして、一対のロックピン20は上下に貫通したクランプ孔24をそれぞれ備え、これらのクランプ孔24に対して一対のクランプ部材32を個別に挿入することができる(図6)。両ロックピン20のクランプ孔24は矩形状をしており、かつクランプ部材32を挿入するのに充分な開口寸法に設定されている。一方、ロボットアーム30のツールヘッド31は、両クランプ部材32の相互間の距離を変更する制御が可能である。
そこで、両ロックピン20のクランプ孔24にそれぞれ挿入した両クランプ部材32の距離を縮めることにより、両ロックピン20はスプリング26を圧縮して互いに接近する。このスプリング26の復元弾力により、両ロックピン20が両クランプ部材32から外れないように把持される。
【0014】
つづいて、ロボットアーム30により一対のロックピン20をスプリング26と共に蓋体10におけるインナプレート12の凹部12aに組付ける手順を説明する。まず、図6で示すように両ロックピン20およびスプリング26を治具40にセットする。このセット状態でのスプリング26は、両ロックピン20における互いのバネ座22の間に位置している。
つぎに、ロボットアーム30を作動させてツールヘッド31の両クランプ部材32を、両ロックピン20のクランプ孔24に個別に挿入する。この後、前述のようにして両クランプ部材32の距離を縮めることにより、両ロックピン20がスプリング26を圧縮した状態で両クランプ部材32に把持される。
【0015】
クランプ部材32によって把持された一対のロックピン20およびスプリング26は、ロボットアーム30の作動によって治具40からインナプレート12の凹部12aの上方まで運ばれる(図7)。ここで、ツールヘッド31を下降させることにより、両ロックピン20およびスプリング26が凹部12aに組付けられる(図8)。
この状態において、両クランプ部材32の距離を広げ、両ロックピン20によるスプリング26の圧縮を解放した後、ツールヘッド31を上昇させて両クランプ部材32を両ロックピン20のクランプ孔24から抜き取る(図9)。これによってインナプレート12の凹部12aに対する一対のロックピン20およびスプリング26の組付けが完了する。
【0016】
このように、一対のロックピン20のクランプ孔24にクランプ部材32を挿入し、これらのロックピン20をスプリング26と共に把持することにより、インナプレート12の凹部12aのような狭い空間にロックピン20を的確に組付けることができる。また、両ロックピン20がスプリング26を圧縮した状態で把持されることから、特殊な保持構造を用いることなく、両ロックピン20をクランプ部材32から外れないように保持することができる。
【0017】
前述のように両ロックピン20の間に介在させたスプリング26を圧縮したときに、両ロックピン20において相互のバネ座22を結ぶ軸線(スプリング26の軸線)からずれた外側の下部が、スプリング26の復元弾力によって外方に開く場合がある。この不具合は、両ロックピン20のクランプ孔24を上下に貫通させ、これらのクランプ孔24にクランプ部材32を充分に挿通させることで解消することができる。
同じ不具合に対する別の対応手段として、クランプ孔24の内壁面とクランプ部材32の外側面との一方に係合溝を設け、他方に係合溝に嵌り合う係合リブを設けてもよい。
【0018】
なお、図8で示すように両ロックピン20をスプリング26と共にインナプレート12の凹部12aに組付けたときに、ロックピン20が凹部12aのリブ12bに当たって該リブ12bを損傷することがある。この対応手段としては、両ロックピン20における下面21(図6)の両側の縁部をテーパー形状とし、ロックピン20がリブ12bに沿って凹部12aに入り込むようにすればよい。
【符号の説明】
【0019】
10 蓋体
20 ロックピン
24 クランプ孔
26 スプリング
30 ロボットアーム
32 クランプ部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンソールボックスにおける蓋体に一対のロックピンと、両ロックピンの間に介在させたスプリングとが組付けられ、両ロックピンはスプリングの付勢力を受けて蓋体の移動をロックすることができ、このロックを解除することによって蓋体を移動させることできるコンソールボックス用ロック機構であって、
一対のロックピンが、ロボットアームに設けられている一対のクランプ部材を個別に挿入することができるクランプ孔をそれぞれ備え、個々のクランプ孔にクランプ部材が挿入された状態において、両ロックピンがスプリングを圧縮した状態で把持されるように設定されたコンソールボックス用ロック機構。
【請求項2】
請求項1に記載されたコンソールボックス用ロック機構の組付け方法であって、
一対のロックピンを相互の間にスプリングを介在させた状態でセットし、両ロックピンのクランプ孔にロボットアームの一対のクランプ部材を個別に挿入した後、両クランプ部材の作動により両ロックピンを互いに近づけてスプリングを圧縮し、この状態でロボットアームを作動させて両ロックピンをスプリングと共にコンソールボックスの蓋体に組付けるコンソールボックス用ロック機構の組付け方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−192823(P2012−192823A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57773(P2011−57773)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】