説明

コンタクトレンズのパッケージング溶液

パッケージング溶液及びパッケージング溶液に浸漬されたソフトヒドロゲルコンタクトレンズを含む、封止され、滅菌されたパッケージを含む、眼科用製品であって、ここで、パッケージング溶液は、ビニルピロリドンのホモポリマー又はコポリマー(ここで、ビニルピロリドンのホモポリマー又はコポリマーは、25℃で約5.0センチポアズまでの粘度をパッケージング溶液に提供するのに十分な量で存在する);約600以下の平均分子量を有するグリセリン又はポリエチレングリコール;パッケージング溶液中のポリエチレングリコールの酸化分解への感受性を低下させるのに十分な量のα−オキソ多酸又はその塩;及び、約6.0〜8.0のpHを溶液に提供するのに十分な量の一つ以上の緩衝剤を含み、ここで、パッケージング溶液は、約200〜約450mOsm/kgのオスモル濃度を有する、眼科用製品である。本出願はさらに、装用者の初期不快感を緩和しうるソフトコンタクトレンズの製法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、初期挿入快適さを有する改良されたコンタクトレンズ製品だけでなく、特に、パッケージング溶液のオートクレーブ処理及びコンタクトレンズの保存に関する。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズ産業で長らく感じられているある必要性は、ユーザが快適に装用することができるコンタクトレンズを供給することである。コンタクトレンズユーザの訴える最大の問題の一つは、初期不快感(すなわち、レンズ挿入直後)である。手法のひとつは、ソフトコンタクトレンズを使用して、その比較的軟らかい表面によるだけでなく、異なる眼に対して幾らかその形状を変化させることを許す可撓性によって、初期不快感をある程度緩和することである。そのような手法は、新規物質の開発及びレンズのデザインに多大な労力を要求し、費用効果的でないかもしれない。もう一方の手法は、たとえば装用者の初期不快感、ドライアイ効果から生じる不快感、もしくは1日の終わりの不快感のある程度の軽減を提供するためにレンズを装用している間、潤滑剤の点眼液を装用者の眼に直接適用することである。しかし、点眼は通常、装用者がすでに不快感に苦しんでいる後のみに適用され、そのため、不快感が生じることを防ぐようなものではない。近年、初期不快感及び他の症状をある程度和らげるためにレンズのパッケージング溶液に界面活性剤又は潤滑剤が加えられている(たとえば、米国特許第5,882,687号、第5,942,558号、第6,348,507号、第6,440,366号、第6,531,432号、及び第6,699,435号;ならびにPCT出願公開公報WO9720019及びWO2006/088758を参照)。先の努力にも関わらず、特に、大きく改善された初期の快適さを提供しうる、長時間装用コンタクトレンズ(たとえばシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ)では、市販されているものはない。したがって、レンズの装用者に初期挿入快適感を提供しうるコンタクトレンズ製品の費用効果的な製造方法が未だ必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、一つの態様では、パッケージング溶液及びパッケージング溶液に浸漬されたソフトヒドロゲルコンタクトレンズを含む、封止され、滅菌されたパッケージを含む、眼科用製品であって、ここで、パッケージング溶液は、ビニルピロリドンのホモポリマー又はコポリマー(ここで、ビニルピロリドンのホモポリマー又はコポリマーは、25℃で約5.0センチポアズまで、好ましくは約4.0センチポアズまでで、さらに好ましくは約3.0センチポアズまで、もっとも好ましくは約1.2センチポアズ〜約2.5センチポアズの粘度をパッケージング溶液に提供するのに十分な量で存在する);約600以下の平均分子量を有するグリセリン又はポリエチレングリコール;パッケージング溶液中のポリエチレングリコールの酸化分解への感受性を低下させるのに十分な量のα−オキソ多酸又はその塩;及び、約6.0〜8.0のpHを溶液に提供するのに十分な量の一つ以上の緩衝剤を含み、ここで、パッケージング溶液は、約200〜約450mOsm/kgのオスモル濃度を有する、眼科用製品を提供する。
【0004】
本発明は、他の態様では、装用者の初期不快感を緩和しうるソフトコンタクトレンズの製造方法を提供する。本発明の方法は、a)パッケージング溶液を含む容器に、ヒドロゲルコンタクトレンズをパッケージングする工程であって、ここでパッケージング溶液は、ビニルピロリドンのホモポリマー又はコポリマー(ここでビニルピロリドンのホモポリマー又はコポリマーは、25℃で約5.0センチポアズまで、好ましくは約4.0センチポアズまで、さらに好ましくは約3.0センチポアズまで、もっとも好ましくは約1.2〜約2.5センチポアズの粘度をパッケージング溶液に提供するに十分な量で存在する);平均分子量が約600以下であるグリセリン又はポリエチレングリコール;パッケージング溶液中のポリエチレングリコールの酸化分解への感受性を低下させるのに十分な量のα−オキソ多酸又はその塩;約6.0〜8.0のpHを溶液に提供するのに十分な量の1つ以上の緩衝剤;を含み、ここで、パッケージング溶液は約250〜約450mOsm/kgのオスモル濃度を有するものである工程並びにb)パッケージング溶液中のコンタクトレンズを滅菌してソフトコンタクトレンズを得る工程を含む。
【0005】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、好ましい実施態様の以下の説明から明らかになる。詳細な説明は、本発明を例示するものであり、請求の範囲及びその均等物によって定義される本発明の範囲を限定するものではない。当業者には自明であるように、開示の新規な概念の真意及び範囲を逸することなく、本発明の多くの変形及び改変を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、市販のシリコーンヒドロゲルレンズのインビトロでの脂質汚れに対するパッケージング溶液の効果を示す。
【図2】図2は、インビトロでの脂質汚れに対するパッケージング溶液中でのシリコーンヒドロゲルレンズ(O2OPTIX)の水和と保管の効果を示す。
【0007】
発明の詳細な説明
断りない限り、本明細書で使用されるすべての専門用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使用される術語及び実験手順は当該技術で周知であり、一般に使用されている。これらの手順には、当該技術及び種々の一般的参考文献で提供されているような従来法が使用される。ある語が単数形で記載されている場合、本発明者らはその語の複数形をも考慮している。本明細書で使用される術語及び以下に記載する実験手順は、当該技術で周知であり、一般に使用されているものである。本開示を通して使用される以下の用語は、断りない限り、以下の意味を有するものと理解されなければならない。
【0008】
「コンタクトレンズ」とは、装用者の眼の上又は中に配置することができる構造物をいう。コンタクトレンズは、使用者の視力を矯正、改善又は変化させることができるが、必ずしもそうでなくてもよい。コンタクトレンズは、当該技術で公知である又はのちに開発される適切な材料でできていることができ、ソフトレンズ、ハードレンズ又はハイブリッドレンズであることができる。「シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ」とは、シリコーンヒドロゲル材料を含むコンタクトレンズをいう。
【0009】
「ヒドロゲル」とは、完全に水和した状態で少なくとも10重量%の水を吸収することができるポリマー材料をいう。ヒドロゲル材料は、さらなるモノマー及び/又はマクロマー/プレポリマーの存在下又は非存在下における少なくとも一つの親水性モノマーの重合又は共重合によって、又はプレポリマーの架橋によって得られる。
【0010】
「シリコーンヒドロゲル」とは、少なくとも一つのシリコーン含有ビニルモノマー又は少なくとも一つのシリコーン含有マクロマー又はシリコーン含有プレポリマーを含む重合性組成物の共重合によって得られるヒドロゲルをいう。
【0011】
「モノマー」とは、化学線的又は熱的に重合させることができる低分子量化合物をいう。低分子量とは、一般に、700ダルトン未満の平均分子量をいう。本発明にしたがって、モノマーは、ビニルモノマー又は二つのチオール基を含む化合物であることができる。二つのチオール基を含む化合物は、ビニル基を有するモノマーとのチオール−エン段階的成長ラジカル重合に関与してポリマーを形成することができる。段階的成長ラジカル重合は、2006年12月13日出願の、所有者が同じである同時係属中の米国特許出願第60/869,812号(「Production of Ophthalmic Devices Based on Photo-Induced Step Growth Polymerization」と題する。参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、コンタクトレンズの製造に使用することができる。
【0012】
本明細書で使用する「ビニルモノマー」とは、エチレン性不飽和基を有し、化学線的又は熱的に重合させることができる低分子量化合物をいう。低分子量とは、一般に、700ダルトン未満の平均分子量をいう。
【0013】
「オレフィン性不飽和基」又は「エチレン性不飽和基」とは、本明細書中、広い意味で使用され、少なくとも一つの>C=C<基を含有する基を包含することを意図する。例示的なエチレン性不飽和基としては、非限定的に、アクリロイル、メタクリロイル、アリル、ビニル、スチレニル又は他のC=C含有基がある。
【0014】
重合性組成物又は材料の硬化又は重合に関して本明細書で使用する「化学線的」とは、硬化(たとえば架橋及び/又は重合)が化学線照射、たとえばUV線照射、電離放射線(たとえばγ線又はX線照射)、マイクロ波照射などによって実施されることをいう。熱硬化又は化学線硬化の方法は当業者には周知である。
【0015】
本明細書で使用する「流体」とは、液体のように流れることができる物質をいう。
【0016】
「親水性モノマー」とは、化学線的又は熱的に重合して、水溶性である、又は水を少なくとも10重量%吸収することができるポリマーを形成することができるモノマーをいう。
【0017】
本明細書で使用する「疎水性モノマー」とは、化学線的又は熱的に重合して、水不溶性であり、水を10重量%未満しか吸収することができないポリマーを形成するモノマーをいう。
【0018】
「マクロマー」とは、化学線的又は熱的に重合及び/又は架橋させることができる中及び高分子量化合物をいう。中及び高分子量とは、一般に、700ダルトンを超える平均分子量をいう。本発明にしたがって、マクロマーは、フリーラジカル連鎖成長重合又はチオール−エン段階的成長ラジカル重合に関与することができる一つ以上のエチレン性不飽和基及び/又は一つ以上のチオール基を含む。好ましくは、マクロマーは、エチレン性不飽和基を含み、化学線的又は熱的に重合させることができる。
【0019】
「プレポリマー」とは、架橋性基を含み、化学線的又は熱的に硬化(たとえば架橋及び/又は重合)して、開始ポリマーよりもずっと高い分子量を有する架橋及び/又は重合ポリマーを得ることができる開始ポリマーをいう。本発明にしたがって、プレポリマーは、フリーラジカル連鎖成長重合又はチオール−エン段階的成長ラジカル重合に関与することができる一つ以上のエチレン性不飽和基及び/又は一つ以上のチオール基を含む。
【0020】
「シリコーン含有プレポリマー」とは、シリコーンを含み、化学線的又は熱的に硬化して、開始ポリマー自体よりもずっと高い分子量を有する架橋ポリマーを得ることができる開始ポリマーをいう。
【0021】
「ポリマー」とは、一つ以上のモノマー又はマクロマーを重合させることによって、又は一つ以上のプレポリマーを架橋させることによって形成される物質をいう。
a.本明細書で使用されるポリマー材料(モノマー又はマクロマー材料を含む)の「分子量」とは、断りない限り、又は試験条件がそうではないことを指示しない限り、数平均分子量をいう。
b.レンズに関していう「視認用色付け」とは、装用者がレンズ貯蔵、消毒又は洗浄パッケージ内の透明な溶液中のレンズを容易に見つけることを可能にするためのレンズの染色(又は着色)をいう。レンズの視認用色付けに染料及び/又は顔料を使用することができるということは当該技術で周知である。
【0022】
「光開始剤」とは、ラジカル架橋/重合反応を光の使用によって開始させる化学物質をいう。適切な光開始剤は、ベンゾインメチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイルホスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、Darocure(登録商標)タイプ、及びIrgacure(登録商標)タイプ、好ましくはDarocure(登録商標)1173及びIrgacure(登録商標)2959を含むが、これに限定されない。
【0023】
「熱開始剤」とは、ラジカル架橋/重合を熱エネルギーの使用によって開始させる化学物質をいう。適切な熱開始剤は、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)、ベンゾイルペルオキシドのような過酸化物等を含むが、これに限定されない。好ましくは、熱開始剤は2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)である。
【0024】
本発明にしたがって、パッケージング溶液は眼科的に安全である。パッケージング溶液に関して「眼科的に安全」とは、その溶液に浸漬されたコンタクトレンズが、すすぎなしで直接眼に入れても安全である、すなわち、その溶液がコンタクトレンズを介する眼との毎日の接触に関して安全であり、十分に快適であることをいう。眼科的に安全な溶液は、眼と適合性である張度及びpHを有し、国際ISO規格及び米FDA規則にしたがって非細胞毒性である材料及びその量を含む。
【0025】
用語「眼と適合性」とは、眼を有意に損傷することなく、また、使用者が有意な不快感を感じることなく、長期間眼と密接することができる溶液をいう。
【0026】
「ポリエチレングリコールの酸化分解への感受性の低下」とは、滅菌処理を受けた後のα−オキソ多酸又はその塩を含有する溶液中のポリエチレングリコールの酸化分解に対する感受性が低下していることをいう(安定化されたポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー材料中の検出可能なギ酸及び場合によっては他の分解副生成物の量が、α−オキソ多酸又はその塩なしの溶液中で検出される量の80%以下、好ましくは65%以下、より好ましくは50%以下であることを特徴とする)。PEG含有ポリマー材料の酸化分解に由来するギ酸及び他の副生成物を測定する方法は、所有者が同じである同時係属中の特許出願(本明細書に組み込まれる米国特許出願公開公報第2004/0116564A1号)に記載されている。あるいはまた、当業者は、PEG含有ポリマー材料の酸化分解生成物を分析する方法を知っている。
【0027】
本明細書で使用される「浸出可能なポリマー潤滑剤」とは、コンタクトレンズのポリマーマトリックスと共有結合してはいないが、それと会合している、又はその中に閉じ込められており、コンタクトレンズ及び/又は眼の表面湿潤性を高める、又はコンタクトレンズ表面の摩擦特性を低下させることができる非イオン性親水性ポリマーをいう。
【0028】
本発明は一般に、レンズ装用者の初期不快感を緩和することができるヒドロゲルコンタクトレンズに関する。本発明は一部には、ビニルピロリドンのホモポリマー又はコポリマー及び低分子量のポリエチレングリコール(PEG)(又はグリセリン)を含むレンズのパッケージング溶液が、パッケージング溶液に浸漬されオートクレーブ処理されたヒドロゲルコンタクトレンズに、湿潤性の増加、摩擦の減少、初期のコンディショニング(レンズのクッションによる)、及び/又はレンズ上への沈着物の付着性の減少という予測できない利点を提供できることの発見に基づいている。
【0029】
本発明者らは特定の理論によって束縛されることを望まないが、低分子量のPEG(又はグリセリン)及びビニルピロリドンのホモポリマー又はコポリマーは、初期の快適さ(レンズを挿入した際)に相乗効果を有することができると考えられる。十分に大きな分子量のホモポリマー又はコポリマーは、パッケージング溶液の粘度を実質的に増加させることなしに(すなわち25℃で5センチポアズ超)、レンズと角膜上皮の間にクッション層を形成することができる。クッション層内での低分子量のPEG又はグリセリンの取り込みは潤滑性、湿潤性(水との接触角により特徴づけられる)を増加させる及び/又はクッション層の摩擦性を減少させることができる。この加えられたクッション性は僅かな潤滑で目に優しくレンズを設置することを許容する、一時的な潤滑層を提供し、初期挿入の快適感を改良する。
【0030】
本発明は、一つの態様では、パッケージング溶液及びパッケージング溶液に浸漬されたソフトヒドロゲルコンタクトレンズを含む、封止され、滅菌されたパッケージを含む眼科用製品であって、ここで、パッケージング溶液はビニルピロリドンのホモポリマー又はコポリマー(ここで、ホモポリマー又はコポリマーは25℃で約5.0センチポアズまで、好ましくは約4.0センチポアズまで、さらに好ましくは約3.0センチポアズまで、もっとも好ましくは約1.2センチポアズ〜約2.5センチポアズの粘度をパッケージング溶液に提供するのに十分な量で存在する);約600以下の平均分子量を有するグリセリン又はポリエチレングリコール;及び約6.0〜8.0のpHを溶液に提供するのに十分な量の一つ以上の緩衝剤を含み、ここで、パッケージング溶液は約200〜約450mOsm/kgのオスモル濃度を有する、眼科用製品を提供する。
【0031】
レンズパッケージ(又は容器)は、ソフトコンタクトレンズをオートクレーブ処理し、貯蔵する技術の当業者には周知である。いかなるレンズパッケージを本発明で使用することもできる。好ましくは、レンズパッケージは、ベース及びカバーを含むブリスタパッケージであり、カバーはベースに脱着可能に封止され、ベースは、無菌パッケージング溶液及びコンタクトレンズを受け入れるためのキャビティを含む。
【0032】
レンズは、ユーザに分配される前に個別のパッケージにパッケージングされ、封止され、滅菌(たとえば少なくとも30分の120℃以上でのオートクレーブ処理)される。レンズのパッケージを封止、滅菌する方法は当業者には十分理解されるだろう。
【0033】
本発明にしたがって、ソフトヒドロゲルコンタクトレンズは従来のヒドロゲルコンタクトレンズ(すなわち、非シリコーンヒドロゲルレンズ)又は好ましくはシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであることができる。
【0034】
本発明におけるパッケージング溶液は、眼科的に適合性であり、コンタクトレンズの貯蔵のために用いられる任意の水性溶液であってもよい。本発明におけるパッケージング溶液は生理食塩水、緩衝水及び脱イオン水であってもよい。
【0035】
本発明に、任意のビニルピロリドンと少なくとも一つの親水性モノマーを用いることができる。コポリマーの好ましい形態はビニルピロリドン及び少なくとも一つのアミノ基含有ビニルモノマーのコポリマーである。アミノ基含有ビニルモノマーの例としては、8〜15個の炭素原子を有するアルキルアミノアルキルメタクリレート、7〜15個の炭素原子を有するアルキルアミノアルキルアクリレート、8〜20個の炭素原子を有するジアルキルアミノアルキルメタクリレート、7〜20個の炭素原子を有するジアルキルアミノアルキルアクリレート、3〜10個の炭素原子を有するN−ビニルアルキルアミドを含むが、これらに限定されない。好ましいN−ビニルアルキルアミドの例としては、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド及びN−ビニル−N−メチルアセトアミドがあるが、これらに限定されない。
【0036】
好ましいコポリマーの例としては、ビニルピロリドンとジメチルアミノエチルメタクリレートのコポリマーを含むが、これに限定されない。そのような好ましいコポリマーは市販されており、たとえばISP製Copolymer 845及びCopolymer 937が挙げられる。
【0037】
本発明にしたがって、ポリエチレングリコールは約600以下の分子量を有する。もっとも好ましくは約100〜約500である。
【0038】
本発明の好ましい態様において、パッケージング溶液は、α−オキソ多酸又はその塩をパッケージング溶液中のポリエチレングリコールの酸化分解への感受性を低下させるのに十分な量で含む。共通して同時継続中の特許出願(米国特許出願公開公報公表第2004/0116564 A1号。参照により本明細書に組み込まれる)はα−オキソ多酸又はその塩はPEG含有ポリマー材料の酸化分解への感受性を減少させることができることを開示している。
【0039】
例示的なα−オキソ多酸又はその生体適合性塩は、クエン酸、2−ケトグルタル酸もしくはリンゴ酸又はそれらの生体適合性塩(好ましくは眼科的に適合性)を含むが、これに限定されない。さらに好ましくは、α−オキソ多酸は、クエン酸もしくはリンゴ酸又はそれらの生体適合性(好ましくは眼科的に適合性)の塩(たとえばナトリウム塩、カリウム塩など)である。
【0040】
本発明における溶液は、好ましくは緩衝剤を含む。緩衝剤は、pHを好ましくは所望の範囲、たとえば約6〜約8の生理学的に許容可能な範囲に保つ。生理学的に適合性の公知の緩衝剤を任意に用いることができる。本発明によるコンタクトレンズケア組成物の成分として適切な緩衝剤は当業者には公知である。たとえば、ホウ酸、ホウ酸塩、たとえばホウ酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸塩、たとえばクエン酸カリウム、炭酸水素塩、たとえば炭酸水素ナトリウム、TRIS(2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオ−ル)、ビス−トリス(ビス−(2−ヒドロキシエチル)−イミノ−トリス−(ヒドロキシメチル)−メタン)、ビス−アミノポリオ−ル、トリエタノ−ルアミン、ACES(N−(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、BES(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)、MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)、MOPS(3−[N−モルホリノ]−プロパンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸))、TES(N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−2−アミノアタンスルホン酸)、それらの塩、リン酸緩衝剤、たとえば、NaHPO、NaHPO及びKHPO又はそれらの混合物である。好ましいビス−アミノポリオールは1,3−ビス(トリス[ヒドロキシメチル]−メチルアミノ)プロパン(ビス−TRIS−プロパン)である。各緩衝剤の量は、組成物のpHを約6.5〜約7.5にするのに十分な量である。一般に、0.001重量%〜2重量%、好ましくは0.01重量%〜1重量%、もっとも好ましくは0.05重量%〜0.30重量%の量で含まれる。
【0041】
本発明の溶液は、好ましくは、涙液と等張性であるようなやり方で調合される。涙液と等張性である溶液とは、一般に、濃度が0.9%塩化ナトリウム溶液の濃度(308mOsm/kg)に一致する溶液であると理解される。所望ならば、この濃度の逸脱は可能である。
【0042】
涙液との等張性又は他の所望の張度は、張度に影響する有機又は無機物質を加えることによって調節することができる。眼に許容可能な適切な等張化剤としては、非限定的に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセロール、プロピレングリコール、ポリオール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール及びそれらの混合物がある。好ましくは、溶液の張度の大部分は、非ハロゲン化物含有電解質(たとえば炭酸水素ナトリウム)及び非電解化合物からなる群より選択される一つ又は複数の化合物によって提供される。溶液の張度は、一般には約200〜約450ミリオスモル(mOsm)、好ましくは約250〜350mOsmの範囲になるように調節される。
【0043】
本発明のパッケージング溶液は、場合により、水溶性セルロース誘導ポリマー、水溶性ポリビニルアルコール(PVA)、又はそれらの組み合わせであることができる、粘度増大性ポリマーを含むことができる。有用なセルロース誘導ポリマーの例としては、セルロースエーテルが含まれるが、これに限定されない。例として好ましいセルロースエーテルは、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)又はそれらの混合物が挙げられる。さらに好ましくは、セルロースエーテルは、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びそれらの混合物である。セルロースエーテルは組成物中、パッケージング溶液の全量を基準に、好ましくは約0.1重量%〜約1重量%の量で存在する。
【0044】
本発明にしたがって、溶液はさらにムチン様物質、眼科的に有益な物質、及び/又は界面活性剤を含むことができる。
【0045】
例示的なムチン様物質としては、ポリグリコール酸及びポリラクチドが含まれるが、これに限定されない。ムチン類物質は、ドライアイ症候群を治療するために、眼の表面に連続的に、長時間にわたって徐放されることができるゲスト材料として用いられる。ムチン様物質は、好ましくは、有効量で存在する。
【0046】
例示的な眼科的に有益な物質は、2−ピロリドン−5−カルボン酸(PCA)、アミノ酸(たとえばタウリン、グリシンなど)、α−ヒドロキシ酸(たとえばグリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、マンデル酸及びクエン酸並びにそれらの塩など)リノール酸及びγ−リノール酸並びにビタミン(たとえばB5、A、B6など)であるが、これらに限定されない。
【0047】
界面活性剤は、実質的に、非イオン性、アニオン性及び両性の界面活性剤を含む、眼に許容可能な任意の界面活性剤であることができる。好ましい界面活性剤の例は、ポロキサマー(たとえばPluronic(登録商標)F108、F88、F68、F68LF、F127、F87、F77、P85、P75、P104及びP84)、ポロアミン(たとえばTetronic(登録商標)707、1107及び1307)、脂肪酸のポリエチレングリコールエステル(たとえばTween(登録商標)20、Tween(登録商標)80)、C12〜C18アルカンのポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンエーテル(たとえばBrij(登録商標)35)、ポリオキシエチレンステアレート(Myrj(登録商標)52)、ポリオキシエチレンプロピレングリコールステアレート(Atlas(登録商標)G2612)ならびに商品名Mirataine(登録商標)及びMiranol(登録商標)としての両性界面活性剤を含むが、これらに限定されない。
【0048】
レンズは、ヒドロゲルレンズ形成配合物によって当業者に公知の任意の方法で調製することができる。「ヒドロゲルレンズ形成配合物」又は「ヒドロゲルレンズ形成材料」は、架橋/重合されたポリマー材料を得るために熱又は化学線によって硬化(すなわち重合及び/又は架橋)可能な組成物をいう。レンズ形成材料は当業者には周知のものである。典型的なレンズ形成材料は、重合可能/架橋可能な成分を含み、たとえば、当業者に知られているモノマー、マクロマー、プレポリマー又はそれらの組み合わせである。レンズ形成材料は、さらに他の成分、非架橋性親水性ポリマー(すなわち浸出可能なポリマー潤滑剤)、開始剤(たとえば光開始剤又は熱開始剤)、視認用色付け剤、UV遮断剤、光増感剤、抗菌剤(たとえば銀ナノ粒子)などを含むことができる。
【0049】
レンズ製造の例は、キャスト成形、スピンキャスティング、及び旋盤加工を含むが、これらに限定されない。当業者は、型中でのレンズ形成配合物から熱又は光重合に基づいてレンズをキャスト造型する方法は周知しているだろう。
【0050】
本発明にしたがって、ヒドロゲルレンズ形成配合物(又は重合性流体組成物)は、溶液又は無溶剤液体又は60℃未満の温度で溶融体であることができる。
【0051】
本発明にしたがって、浸出可能な潤滑剤は、電荷を持たない非架橋性の親水性ポリマー(すなわち化学線架橋性基を有しない)である。はレンズ形成物質(すなわち実質的に透明なコンタクトレンズの製造が可能)適合性である限り、任意の適切な無電荷の水溶性ポリマーを用いることができる。例示的な非架橋性(すなわち化学線架橋性基を有しない)親水性ポリマーは、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアミド、ポリイミド、ポリラクトン、ビニルラクタムのホモポリマー、一つ以上の親水性ビニルコモノマーの存在下又は非存在下下での少なくとも一つのビニルラクタムのコポリマー、アルキル化ポリビニルピロリドン、アクリルアミド又はメタクリルアミドのホモポリマー、一つ以上の親水性ビニルモノマーとアクリルアミド又はメタクリルアミドとのコポリマー、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリオキシエチレン誘導体、ポリ−N,N−ジメチルアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリ−2−エチルオキサゾリン、ヘパリン多糖、多糖、又はそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。
【0052】
親水性ポリマーの数平均分子量Mは、好ましくは10,000〜500,000であり、より好ましくは20,000〜200,000である。
【0053】
ポリビニルピロリドン(PVP)の例は、分子量グレード、K−15、K−30、K−60、K−90、K−120などによって特徴付けられるポリマーを含むが、それらに限定されない。
【0054】
n−ビニルピロリドンと一つ以上のビニルモノマーとのコポリマーの例は、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー(たとえばISP Corporation製Copolymer 845、Copolymer 937、Copolymer 958)、ビニルピロリドン/ビニルカプロラクタム/ジメチル−アミノエチルメタクリレートコポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
アルキル化ピロリドンの例はISP Corporation製GANEX(登録商標)のアルキル化ピロリドンのファミリーを含むが、これらに限定されない。
【0056】
適切なポリオキシエチレン誘導体は、たとえば、n−アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル、n−アルキルポリオキシ−エチレンエーテル(たとえばTRITON(登録商標))、ポリグリコールエーテル界面活性剤(TERGITOL(登録商標))、ポリオキシエチレンソルビタン(たとえばTWEEN(登録商標))、ポリオキシエチレン化されたグリコールモノエーテル(たとえばBRIJ(登録商標)、ポリオキシエチレン9ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン10エーテル、ポリオキシエチレン10トリデシルエーテル)、又はエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのブロックコポリマーを含む。
【0057】
エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのブロックコポリマーの例としては、たとえば、商標名PLURONIC(登録商標)、PLURONIC-R(登録商標)、TETRONIC(登録商標)、TETRONIC-R(登録商標)、又はPLURADOT(登録商標)として市販されているポロキサマー及びポロキサミンを含むが、これらに限定されない。ポロキサマーは、構造PEO−PPO−PEOを有する持つトリブロックコポリマー(ここで「PEO」はポリ(エチレンオキシド)であり、「PPO」はポリ(プロピレンオシキド)である)である。
【0058】
分子量及びPEO/PPOの比が異なるのみである、少なからぬ数のポロキサマーが知られている。ポロキサマーの例は、101、105、108、122、123、124、181、182、183、184、185、188、212、215、217、231、234、235、237、238、282、284、288、331、333、334、335、338、401、402、403及び407を含む。ポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレンブロックの順序を逆転すると、PLURONIC-R(登録商標)ポリマーとして知られる、構造PPO−PEO−PPOを有するブロックコポリマーを創製することができる。
【0059】
ポロキサミンは、異なる分子量及びPEO/PPOの比で利用可能である、構造(PEO−PPO)−N−(CH−N−(PPO−PEO)を有するポリマーである。ここでもまた、ポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレンブロックの順序を逆転すると、TETRONIC-R(登録商標)ポリマーとして知られる、構造(PEO−PPO)−N−(CH−N−(PPO−PEO)を有するブロックコポリマーを創製することができる。
【0060】
ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロックコポリマーはまた、エチレンオキシド反復単位及びプロピレンオキシド反復単位のランダムなミックスを含む親水性のブロックによって設計することができる。ブロックの親水性を保つために、エチレンオキシドが優位を占める。同様に、疎水性のブロックもまた、エチレンオキシド反復単位とプロピレンオキシド反復単位の混合物である。そのようなブロックコポリマーは商標名PLURADOT(登録商標)が利用できる。
【0061】
全ての種類の非架橋性のPVA、たとえば低、中又は高ポリ酢酸ビニル含量のPVAを使用してもよい。加えて、PVAはまた、前述のようなコポリマー単位を小さな割合で、たとえば20%まで、好ましくは5%まで含んでもよい。ポリ酢酸ビニル単位を20%未満、好ましくは16%未満で有する非反応性のPVAの使用が好ましい。
【0062】
本発明において用いられる非架橋性のポリビニルアルコールは公知であり、たとえば商標名Mowiol(登録商標)としてKSE(Kuraray Specialties Europe)から市販されている。
【0063】
レンズ配合物への浸出可能な潤滑剤の添加が、得られるレンズの光学透明度性に有意な悪影響を及ぼすべきではないことが理解される。浸出可能な潤滑剤は、異なる分子量の同じポリマー又は異なる分子量の異なるポリマーであることができる。
【0064】
本発明は、他の態様では、装用者の初期の不快感を軽減することが可能なソフトコンタクトレンズの製造方法を提供する。本発明の方法は:a)パッケージング溶液を含む容器に、ヒドロゲルコンタクトレンズをパッケージングする工程であって、ここでパッケージング溶液は、ビニルピロリドンのホモポリマー又はコポリマー(ここでビニルピロリドンのホモポリマー又はコポリマーは25℃で約5.0センチポアズまで、好ましくは約4.0センチポアズまで、さらに好ましくは約3.0センチポアズまで、もっとも好ましくは約1.2〜約2.5センチポアズの粘度をパッケージング溶液に提供するのに十分な量で存在する);600以下の平均分子量を有するグリセリン又はポリエチレングリコール及び約6.0〜8.0のpHを溶液に提供するのに十分な量の一つ以上の緩衝剤を含み、ここで、パッケージング溶液は約250〜約450mOsm/kgのオスモル濃度を有する工程並びにb)パッケージング溶液中のコンタクトレンズを滅菌してソフトコンタクトレンズを得る工程:を含む。
【0065】
本発明のこの態様においては、パッケージング溶液、ヒドロゲルレンズ形成配合物(レンズ形成材料)、浸出可能な潤滑剤、パッケージ、封止及び滅菌、並びにその他の上記の様々な態様及び好ましい態様を用いることができる。
【0066】
前記開示は、当業者が本発明を実施することを可能とする。読者が具体的な態様及びそれらの優位性を理解することをより容易とするために、以下の非限定的実施例を参照されたい。しかし、以下の実施例は本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【0067】
実施例1
レンズパッケージング溶液
コポリマー845をISPから、PEG400(Sentry Carbowax 400)をDowから入手した。表1に示すように1Lの水中で様々な成分を溶解させることによって、溶液を調整した。ここで、HECは成分の一つとして用いられ、溶液はHECを溶解させるために約80℃で調製した。
【表1】

【0068】
パッケージング溶液の特徴づけ
Advancedマイクロオスモメーターモデル3300を各パッケージング溶液のオスモル濃度を決定するために用いた(各溶液に対し2つの独立した実験結果を平均した)。パッケージング溶液の粘度は、Brookfield Viscometerを用いて、異なる回転速度(3rpm、6rpm及び12rpm)での3回の測定の平均によって得た。各パッケージング溶液のpH値は、Fisher Acumet 25 pH計(各溶液に対し2つの独立した実験結果を平均した)を用いた。結果を表2にまとめた。
【表2】

【0069】
実施例2
細胞毒性評価
実施例1で調製した各パッケージング溶液についての、24時間暴露時での細胞毒性の試験をL−929(L929)マウス繊維芽細胞を用いて行った。アラマーブルー試験(AB)並びにニュートラルレッド取り込み及び放出試験(NRUR)を溶液の細胞毒性評価に用いた。96Wellプレート型中にて試験サンプルの溶液を1:1、1:3及び1:7に希釈し(最終的な溶液濃度は50、25、12.5%)細胞単層を24時間曝露した。この試験では、、対照と比較しての、初期の曝露及び試験溶液を用いてのインキュベーション後の制御された環境での成長した細胞を、生存及び成長力についてモニターした。10ppmにおけるBAKを陽性対照として用いた。
【0070】
パッケージング溶液IはAB法による24時間のL929細胞への暴露では、濃度が50%、25%及び12.5%の試験溶液それぞれにおいて、生存率83%、87%及び94%を示し、またNRUR法による24時間のL929細胞への暴露では、濃度50%、25%及び12.5%の試験溶液それぞれにおいて、生存率92%、98%及び97%を示した。
【0071】
パッケージング溶液IIはAB法による24時間のL929細胞への暴露では、濃度が50%、25%及び12.5%の試験溶液それぞれにおいて、生存率86%、92%及び94%を示し、またNRUR法による24時間のL929細胞への暴露では、濃度50%、25%及び12.5%の試験溶液それぞれにおいて、生存率99%、101%及び101%を示した。
【0072】
パッケージング溶液IIIはAB法による24時間のL929細胞への暴露では、濃度が50%、25%及び12.5%の試験溶液それぞれにおいて、生存率90%、92%及び94%を示し、またNRUR法による24時間のL929細胞への暴露では、濃度50%、25%及び12.5%の試験溶液それぞれにおいて、生存率103%、102%及び97%を示した。
【0073】
パッケージング溶液IVはAB法による24時間のL929細胞への暴露では、濃度が50%、25%及び12.5%の試験溶液それぞれにおいて、生存率88%、96%及び94%を示し、またNRUR法による24時間のL929細胞への暴露では、濃度50%、25%及び12.5%の試験溶液それぞれにおいて、生存率85%、98%及び98%を示した。
【0074】
この結果は、実施例1で調製された全てのパッケージング溶液は細胞毒性を持たないと考えられることを示している。
【0075】
実施例3
溶液調製
種々の溶液を、表3に示すようにリン酸緩衝生理食塩水中で種々の成分を溶解させることで調製した。各溶液はHPMCを溶解させるために約80℃で調製した。濃度、pH及びオスモル濃度を、実施例1に記載の方法によって測定し、結果を表3にまとめた。
【表3】

【0076】
レンズのパッケージング
O2OPTIX(商標)レンズを、パッケージング溶液(Y1,Y2、Y3、及びY4の一つ)を含むブリスタパッケージにパッケージングし、封止し、オートクレーブ処理を行った。
【0077】
レンズの特徴づけ
緩衝生理食塩水(対照)、Y1、Y2、Y3又はY4のパッケージング溶液中に包装されたレンズの、イオン透過性、酸素透過性、反射指数、光透過率、水分含有量、弾性率に有意な変化はみられない。試験の行われた溶液に包装された全てのレンズは細胞毒性試験に合格した。本発明におけるパッケージング溶液中に包装されたレンズの、水の接触角(3つのレンズに対する計測の平均)、脂質取り込み、及びタンパク質取り込みを表にまとめた。
【表4】

【0078】
実施例4
市販されているNight&Dayレンズの他にAcuvue Advance及びO2Optixをパッケージング食塩水から取り出し、パッケージング溶液(下記)で3度すすいだ後、パッケージング溶液に一晩浸した。翌日にレンズを10μg/mLのホスホチジルエタノールアミンを加えた新しい24wellプレートに置き、再度一晩浸した。24時間後レンズを34.5℃のインキュベーション及びアルミニウムホイルから動かし、緩衝液を3度交換し、1mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を加えた新しい24wellプレートに置き、Victor II Wallacにて測定した。
1%アミノコート
PBS中0.25%HEC
0.5%コポリマー845
PBS中2%PVP
PBS中0.1%HEC及び1%PVP
PBS中1%PEG400及び2%PVP
PBS中1%PEG400及び2%PVA
PBS中0.5%PEG400及び1%K90PVP
PBS中0.5%PEG400及び2%K90PVP
PBS中0.25%PEG400及び1%K90PVP
PBS中0.25%PEG400及び2%K90PVP
PBS中0.5%コポリマー845及び0.5%アミノコート
PBS中0.5%コポリマー845及び0.5%PEG400
PBS中0.1%ヒドロキシプロピルグァーガム
対照標準PBS
【0079】
蛍光標識されたホスホチジルエタノールアミンにレンズを浸し、標準曲線上にて読み取った後の蛍光を読み取ることでμg/lens カウントを規定した。パッケージング溶液3、4、8、9、10及び11は、試した全てのシリコーンヒドロゲルレンズについて脂質汚れを有意に減少させた。これらの一つの配合物はPVPがコポリマー845に対比させて含まれていた(図1)。
【0080】
標準曲線は、それぞれのレンズ型の曲線と共に24−wellプレートを用いて作成した。標準的な曲線は、PBS中、pH7.2で10μg/mL〜0μg/mLの範囲である。Night&Day、Accuvue Advance及びO2Optixの3つのレンズを10μg/mLのFITC−ホスホチジルエタノールアミンに24時間浸し、34.5℃でインキュベートを行って完全な暗所にて揺らした。完了したら、レンズをPBS中で緩衝液を3回交換し、1mLのPBSを加えた新しい24wellプレートに置き、標準曲線に付随した各々のレンズと平行してWallacにて計測した。吸光カウントから実際のμg/lensカウントを計算した。
【0081】
実施例5
パッケージング溶液(下記)を、吸収生産工程(imbibed production process)(プラズマ処理後の乾燥レンズのための水和溶液としてパッケージング溶液を使用することによって、レンズにパッケージング溶液を「吸収」させた工程)及びレンズの湿潤性試験にて用いた。吸収生産工程において、パッケージング溶液はまた、一杯の生理食塩水(すなわち、レンズパッケージ内に)のために用いられた。
1P.生理食塩水パッケージングに2%コリドンK90を添加
2P.生理食塩水パッケージングに1%コポリマー845を添加
3P.標準生産ラインの生理食塩水中に包装されたNight&Day対照レンズ
4P.プラズマ処理を施した後、2%コリドンK90に浸して包装された乾燥レンズ
5P.プラズマ処理を施した後、1%コポリマー845に浸して包装された乾燥レンズ
6P.生理食塩水パッケージに0.25%PEG4000/1%コリドンK90を添加
7P.生理食塩水パッケージに0.5%コポリマー845/0.5%PEG400を添加
8P.プラズマ処理を施した後、0.25%PEG4000/1%コリドンK90に浸して包装された乾燥レンズ
9P.プラズマ処理を施した後、0.5%コポリマー845/0.5%PEG400に浸して包装された乾燥レンズ
【0082】
前記検討(実施例4)のように、レンズを蛍光標識したホスホチジルエタノールアミンに浸し、標準曲線上にて読み取った後の蛍光を読み取ることでμg/lens カウントを規定した。全てのレンズにおいて、脂質の吸着が有意に減少したことが示された(図2)。
【0083】
標準曲線は24wellプレートを用いて作成した。検討下のレンズを含む各ウェルは任意の自己蛍光を打ち消す。標準曲線はPBS中pH7.2で10μg/mL〜0.5μg/mLの範囲である。各々の群から5つのレンズを10μg/mLのFITC−ホスホチジルエタノールアミンに24時間浸し、34.5℃にてアルミニウムホイルに包んだ。インキュベーション後、レンズをPBSによって3度緩衝液を交換し、標準曲線に付随した各々のレンズと平行してVICTOR II Wallacを用いて計測した。この未加工のカウントから実際のμg/lensカウントを計算した。
【0084】
具体的な用語、装置及び方法を使用して本発明の様々な実施態様を説明したが、このような説明は例を示すためだけのものである。使用した語は説明のための語であり、限定のための語ではない。請求の範囲に記載される本発明の真意又は範囲を逸することなく当業者によって変形及び改変が加えられうるということが理解されよう。加えて、様々な実施態様は、全体的又は部分的に互換可能であるということが理解されるべきである。したがって、請求の範囲の真意及び範囲は、本明細書に含まれる好ましい態様の記載に限定されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージング溶液及びパッケージング溶液に浸漬されたソフトヒドロゲルコンタクトレンズを含む、封止され、滅菌されたパッケージを含む、眼科用製品であって、
ここで、パッケージング溶液は、
ビニルピロリドンのホモポリマー又はコポリマー(ここで、ビニルピロリドンのホモポリマー又はコポリマーは、25℃で約5.0センチポアズまでの粘度をパッケージング溶液に提供するのに十分な量で存在する);
約600以下の平均分子量を有するグリセリン又はポリエチレングリコール;
パッケージング溶液中のポリエチレングリコールの酸化分解への感受性を低下させるのに十分な量のα−オキソ多酸又はその塩;及び、
約6.0〜8.0のpHを溶液に提供するのに十分な量の1つ一つ以上の緩衝剤を含み、
ここで、パッケージング溶液は、約200〜約450mOsm/kgのオスモル濃度を有する、
眼科用製品。
【請求項2】
パッケージング溶液が、ビニルピロリドンと少なくとも一つのアミノ基含有ビニルモノマー(ここで、アミノ基含有ビニルモノマーは、炭素原子数8〜15のアルキルアミノアルキルメタクリレート、炭素原子数7〜15のアルキルアミノアルキルアクリレート、炭素原子数8〜20のジアルキルアミノアルキルメタクリレート、炭素原子数7〜20のジアルキルアミノアルキルアクリレート及び炭素原子数3〜10のN−ビニルアルキルアミドからなる群より選択される)のコポリマーを含む、請求項1記載の眼科用製品。
【請求項3】
ヒドロゲルコンタクトレンズが、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである、請求項1記載の眼科用製品。
【請求項4】
アミノ基含有ビニルモノマーが、ジメチルアミノエチルメタクリレート又はジメチルアミノエチルアクリレートである、請求項2記載の眼科用製品。
【請求項5】
パッケージング溶液が、25℃で約3.0センチポアズまでの粘度を有する、請求項1記載の眼科用製品。
【請求項6】
約600以下の平均分子量を有するポリエチレングリコールを含む、請求項1記載の眼科用製品。
【請求項7】
α−オキソ多酸が、クエン酸、2−ケトグルタル酸及びリンゴ酸からなる群より選択される、請求項1記載の眼科用製品。
【請求項8】
α−オキソ多酸が、クエン酸である、請求項1記載の眼科用製品。
【請求項9】
ヒドロゲルコンタクトレンズが、その中に1つ一つ以上の浸出可能な潤滑剤を含む、請求項1に記載の眼科用製品。
【請求項10】
装用者の初期不快感を緩和しうる、ソフトコンタクトレンズを製造する方法であって、
a)パッケージング溶液を含む容器に、ヒドロゲルコンタクトレンズをパッケージングする工程であって、ここでパッケージング溶液は、ビニルピロリドンのホモポリマー又はコポリマー;約600以下の平均分子量を有するグリセリン又はポリエチレングリコール;パッケージング溶液中のポリエチレングリコールの酸化分解への感受性を低下させるのに十分な量のα−オキソ多酸又はその塩;及び約6.0〜8.0のpHを溶液に提供するのに十分な量の一つ以上の緩衝剤を含み、ここでパッケージング溶液は、約250〜約450mOsm/kgのオスモル濃度を有するものである工程:ならびに
b)パッケージング中のコンタクトレンズを滅菌してソフトコンタクトレンズを得る工程を含む方法。
【請求項11】
パッケージング溶液が、ビニルピロリドンと少なくとも一つのアミノ基含有ビニルモノマー(ここで、アミノ基含有ビニルモノマーは、炭素原子数8〜15のアルキルアミノアルキルメタクリレート、炭素原子数7〜15のアルキルアミノアルキルアクリレート、炭素原子数8〜20のジアルキルアミノアルキルメタクリレート、炭素原子数7〜20のジアルキルアミノアルキルアクリレート及び炭素原子数3〜10のN−ビニルアルキルアミドからなる群より選択される)のコポリマーを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
ヒドロゲルコンタクトレンズが、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである、請求項10記載の方法。
【請求項13】
アミノ基含有ビニルモノマーが、ジメチルアミノエチルメタクリレート又はジメチルアミノエチルアクリレートである、請求項10記載の方法。
【請求項14】
パッケージング溶液が、25℃で約3.0センチポアズまでの粘度を有する、請求項10記載の方法。
【請求項15】
パッケージング溶液が、約600以下の平均分子量を有するポリエチレングリコールを含む、請求項10記載の方法。
【請求項16】
α−オキソ多酸が、クエン酸、2−ケトグルタル酸及びリンゴ酸からなる群より選択される、請求項10記載の方法。
【請求項17】
α−オキソ多酸が、クエン酸である、請求項10記載の方法。
【請求項18】
ヒドロゲルコンタクトレンズが、その中に一つ以上の浸出可能な潤滑剤を含む、請求項10記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−538321(P2010−538321A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522932(P2010−522932)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/010146
【国際公開番号】WO2009/032122
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】