説明

コンタクトレンズケアおよび薬剤組成物の防腐のためのリン脂質組成物

薬剤組成物を微生物汚染から防腐するために、特定の合成リン脂質の使用が記載される。前記合成リン脂質は、リン酸基が、置換プロペニル基を経由して四級アンモニウム基と結合し、さらに四級アンモニウム基は少なくとも1つの炭化水素長鎖と結合している独特の分子配置を有する。そのような分子配置は、式(I)のリン脂質を高水溶性にするものであり、例えば、炭化水素鎖の長さは、本明細書に記載の使用に対して分子の溶解性と効力を維持するのを助ける。本明細書に記載の合成リン脂質は、眼科用、耳科用および鼻科用薬剤組成物、特に眼科用組成物のための抗菌性防腐剤として特に有効であることが見出された。これらの化合物は、コンタクトレンズを消毒することにも使用し得る。本発明は、部分的には、合成リン脂質の抗菌活性が、化合物が含まれている組成物のイオン強度に影響を受けるという発見に基づいている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌活性を有する薬剤組成物、コンタクトレンズを処置するための抗菌活性を有する溶液ならびにそのような組成物および溶液へのリン脂質の使用に関する。さらに詳細には、本発明は、種々のタイプの薬剤組成物の、特に、眼科用、耳科用および鼻科用薬剤組成物の微生物汚染からの防腐において、式(I)のリン脂質化合物を使用することに関する。さらに、本発明は、コンタクトレンズを消毒するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤組成物において、無菌であること、すなわち、細菌、真菌およびその他の病原性微生物が存在しないことが要求されるものは多い。そのような組成物の例としては、人またはその他の哺乳類の身体に注射される溶液および懸濁液;傷、擦過傷、火傷、皮疹、外科的切開部、または皮膚が正常ではないその他の状態に対して局所的に適用される、クリーム、ローション、溶液またはその他の製剤;ならびに眼に直接(例えば、人工涙、洗浄液、および医薬品)適用される、または眼と接触することになる装具(すなわち、コンタクトレンズ)に適用される種々のタイプの組成物が含まれる。
【0003】
前述したタイプの組成物は、当業界の技術者に公知の手順を経由して無菌状態で製造し得る。しかし、包装の中に含まれている組成物が、大気および微生物汚染の可能性のあるその他の原因(例えば、人間の患者の手)にさらされるように、製品の包装が一旦開かれると、製品の無菌性は危うくなり得る。そのような製品は、典型的には、患者に何度も使用され、そのために、しばしば「多回用量」性があると表現される。
【0004】
薬剤組成物を微生物汚染から防腐する改善された手段に対する必要性が存在する。この必要性は、特に、眼科用、耳科用および鼻科用組成物の分野で広く認められる。そこでは、組成物を防腐するために利用される抗菌薬は、眼、耳および鼻の組織に対して毒性のない濃度で、組成物の微生物汚染を防止するのに有効でなければならない。
【0005】
従来の多回用量の眼科用組成物は、細菌、真菌およびその他の微生物の増殖を防止するために、一般に、1つまたは複数の抗菌性防腐剤を含有している。そうした組成物は、角膜と直接または間接に接触し得る。角膜は、外来の化学薬剤に特に敏感である。したがって、角膜に対する有害な効果の可能性を最小にするには、角膜に対して比較的無毒性な抗菌性防腐剤を使用すること、およびそのような防腐剤を可能な限り最低濃度で、すなわち、その抗菌機能を達成するのに必要な最低量で、使用することが好ましい。
【0006】
抗菌性防腐剤の抗菌効力と潜在的毒性効果とをバランスさせることは、しばしば達成し難い。さらに詳細には、微生物汚染から眼科用製剤を防腐するために必要な抗菌薬の濃度は、角膜および/または他の眼組織に対する毒性効果の可能性を生じ得る。抗菌薬のより低濃度での使用は、一般に、そのような毒性効果の可能性を減少させることに役立つが、濃度が低いと、殺生物効力の必要水準、すなわち、抗菌的防腐を達成するには不十分となり得る。
【0007】
不十分な水準の抗菌的防腐を用いると、組成物の微生物汚染およびそうした汚染により起こる眼の感染症の可能性を生じ得る。このことはまた重大な問題である。なぜなら、Pseudomonas aeruginosaまたはその他の毒性微生物に伴う眼の感染症は、視覚機能の喪失または眼の喪失にさえ至り得るからである。
【0008】
したがって、毒性効果の可能性を増大させることなく、または微生物汚染およびそれによる眼の感染症という受容し得ないリスクを患者に与えることなく、薬剤を非常に低濃度で使用し得るような、抗菌薬の活性を増強する手段に対する必要性が存在する。
【0009】
リン脂質は、主として脂肪酸鎖、リン酸基および含窒素塩基からなるリン含有の脂質である。大抵の細胞膜中に存在する脂質の中で、膜に構造的成分を与えているのはリン脂質である。リン脂質分子は、性質が両親媒性であって両イオン性であり、そのような分子の疎水性は、長い炭化水素鎖があるためであり、該分子の親水性はリン酸基およびアミノ基が保持する電荷に由来する。典型的なリン脂質では、分子の溶解性は、炭化水素鎖長およびイオン性官能基に依存している。
【0010】
リン脂質は、化粧品産業、製薬産業、およびその他の製品の調製においてなど、生物科学の様々な領域で広範囲に使用されている。特に、リン脂質(合成または天然)は、製薬産業において、リポソームベースの製剤の調製に使用される。現在、様々な分野で7種を超えるリポソーム製品が市場で入手でき、数種が開発中である。すべての場合で、リポソーム小胞中に活性薬品が封入されており、無菌の単位剤形で入手でき、追加の防腐剤成分は利用されていない。
【0011】
特許文献1(Frostら)には、該明細書中で規定された合成リン脂質を含む組成物の殺ウィルス有効量で基質を処理することにより、感染性ウィルス生物の接触を受けた基質を防御する方法が開示されており、特許文献2(Frostら)および特許文献3(Frostら)には、パーソナルケアおよび家庭用製品において、防腐剤および/または消毒薬としての使用に適した広範囲の抗菌および抗真菌活性を示す抗菌性リン脂質が開示されており、これらの明細書中に医療および製薬技術におけるリン脂質のさらなる使用が記載されている。しかし、これらの参考文献は、薬剤組成物の防腐のために、塩化ベンザルコニウムなどの従来の防腐剤成分を必要としないリン脂質単独の使用については開示していない。
【0012】
特許文献4(Siddiquiら)には、ベンジルアルコール、EDTA二ナトリウム塩、およびパラヒドロキシ安息香酸の1種または複数種を、抗菌に有効な量で含み、ソルビン酸、ソルビン酸塩、安息香酸、安息香酸の塩、および特定のリン脂質からなる群から選択された1種または複数種の増強剤と組み合わせられた、局所適用される、化粧品、スキンケア品、および薬剤(例えば、皮膚用、耳科用および眼科用製剤)のための防腐剤系が開示されている。しかし、この文献は、塩化ベンザルコニウムなどの従来の防腐剤成分を必要としないで、医薬組成物を防腐するために、リン脂質を単独で利用し得ることは開示していないし、コンタクトレンズケアのためにリン脂質組成物を使用することも開示していない。
【0013】
コンタクトレンズは、通常の着用の間に広範囲の微生物にさらされ、比較的迅速に汚染される。そのため、レンズの日常的な洗浄および消毒が必要である。洗浄と消毒の頻度は、様々なレンズのタイプやレンズケアのレジメンに依存していくらか変化し得るが、通常、洗浄および消毒が毎日必要である。レンズを適切に洗浄および消毒し損なうと、レンズ着用時の単なる不快から重篤な眼の感染症に及ぶ範囲の多様な問題を起こし得る。Pseudomonas aeruginosaなどの特に毒性の強い微生物によって起こる眼の感染症は、治療しないでおいたり、治療を始める前に進行期に達するままにすると、感染した眼の喪失にまで至らしめ得る。それゆえ、患者が検眼士または眼科医によって処方されたレジメンに従って自分のコンタクトレンズを消毒することは、極めて重要である。
【0014】
遺憾ながら、患者はしばしば処方されたレジメンに従うことができない。患者の中には、レジメンが理解し難いおよび/または複雑であり、その結果、レジメンの1つまたは複数の側面で従わない者が多い。他の患者では、消毒薬に起因する眼の不快などのレジメンに関する負の経験をし得ることがあり、その結果、レンズを定常的に消毒しないか、さもなくば処方されたレジメンから外れてしまう者もある。どちらのケースでも、眼の感染症リスクは悪化する。
【0015】
加熱、過酸化水素、および他の化学薬品などの、様々なタイプのコンタクトレンズ消毒系が入手できるにもかかわらず、1)使用が簡単、2)強力な抗菌活性を有する、3)毒性のない、(すなわち、系がレンズ材料に結合したとしても眼への刺激を引き起こさない)改善された系に対する必要性が引き続き存在する。塩類(例えば、塩化ナトリウム)およびコンタクトレンズの処置に利用される組成物の他の成分の存在下で、その抗菌性を保持する消毒薬に対する必要性も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5,286,719号明細書
【特許文献2】米国特許第5,650,402号明細書
【特許文献3】米国特許第5,648,348号明細書
【特許文献4】米国特許第6,120,758号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上述の必要性を満たすことに関する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、薬剤組成物の抗菌性を増強するための、および微生物による汚染から薬剤組成物を防腐するための、式(I)の合成リン脂質化合物の使用に関する。本発明は、特に、眼科用、耳科用および鼻科用のこの種類の組成物に関するが、様々な他のタイプの薬剤組成物に対しても適用可能である。本発明は、さらに、1つまたは複数の式(I)の合成リン脂質を含むコンタクトレンズケア溶液およびそうした溶液を用いるコンタクトレンズの消毒方法に関する。
【0019】
本発明に利用する合成リン脂質は、リン酸基が、置換プロペニル基を経由して四級アンモニウム基と結合し、さらに四級アンモニウム基は少なくとも1つの炭化水素長鎖と結合している独特の分子配置を有する。そのような分子配置は、式(I)のリン脂質を高水溶性にするものである。特に、炭化水素鎖の長さおよびイオン性官能基は、本明細書に記載の使用のために、分子の溶解度と効力を維持するために考慮すべき重要な因子である。
【0020】
四級アンモニウム官能基の存在は、塩化ベンザルコニウムおよびポリクオタニウム(polyquaternium)−1などの公知の抗菌性防腐剤の特徴でもある。これらの官能基は正電荷を有し、結果的に、負荷電の分子またはイオンと溶液中で相互作用する傾向を示す。そのような相互作用は、微生物の細胞壁上の負荷電部位と相互作用する四級アンモニウム化合物の能力に悪影響を与え、それにより、化合物の抗菌活性を悪化させ得る。
【0021】
本発明は、部分的には、式(I)の合成リン脂質が強力な抗菌薬であり、塩化ベンザルコニウムおよびポリクオタニウム−1などの従来の抗菌薬を使用しないで微生物汚染から薬剤組成物を防腐することを可能とするが、負および正荷電分子またはイオン、例えば、塩化ナトリウムからのナトリウムや塩化物、の存在下で不活性化を特に受けやすい、という発見に基づいている。塩化ナトリウムからの正荷電のナトリウムイオンは、防腐剤の正電荷と競争して微生物の負の部位に結合するが、一方、負荷電の塩化物イオンがさらに存在することが防腐剤上の正荷電部位との相互作用の可能性を増加させる。
【0022】
本発明者等は、式(I)の合成リン脂質のこの特性が、これらの化合物を、眼科用薬剤組成物のための抗菌性防腐剤として特に有用なものにすることを見出した。なぜならば、眼の涙液、すなわち、涙の液体の中に見出される負イオンは、式(I)の化合物と相互作用し、それにより化合物を中和するからである。この中和が、従来の四級アンモニウムの抗菌性防腐剤、特に塩化ベンザルコニウムの使用にしばしば付随する眼球への刺激を効果的に減少させまたは抑制する。このようにして、式(I)の合成リン脂質が、貯蔵中の微生物汚染から薬剤組成物を防腐するのに非常に有用であること、および上述の中和効果のため、人の眼に適用したときに非常に温和であるという追加の優位性を有することが見出された。
【0023】
式(I)の化合物は、当業者に公知の従来の抗菌薬、例えば、塩化ベンザルコニウムの代わりに、本発明の組成物のための抗菌性防腐剤として使用し得る。さらに詳細には、本発明の薬剤組成物は、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルコニウム、ポリクオタニウム−1、クロルヘキシジン、クロロブタノール、塩化セチルピリジニウム、パラベン、チメロサール、二酸化塩素およびN,N’−ジクロロタウリンなどの従来の抗菌性防腐剤を必要としないで防腐され得る。しかし、式(I)の化合物は、本発明の組成物の抗菌活性または防腐効力をさらに増強するために、従来の防腐剤成分と組み合わせて用いることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、次式の合成リン脂質を含む組成物に関する。
【0025】
【化1】

式中、
およびRは、(C〜C)アルキルであり;
は、水素および任意選択で、NHC(=O)−(CH10CHまたはNHC(=O)−(CH12CHで置換されている(C〜C16)アルキルからなる群から選択され;
は、水素およびCHCH(Y)CHからなる群から選択され、この式中、R、RおよびRは上記で規定したものであり;
Xは、ハロであり;
Yは、OH、O−(C〜C10)アルキル、およびO−(C〜C10)アルケニルからなる群から選択され;
Mは、ナトリウムとカリウムからなる群から選択される。
【0026】
、R、R、R、X、Y、およびMの置換基の前記規定中および本明細書の以後において、次の用語は、他に示されない限り、次のような意味を有すると理解されなければならない。
【0027】
「アルケニル」という用語は、1〜30の炭素原子を有し、少なくとも1つの炭素―炭素二重結合を有し、任意選択で、1つまたは複数の複素原子で鎖が中断されている、直鎖または分岐の炭化水素基を含む。鎖の水素は、ハロ、−CF、−NO、−NH、−CN、−OCH、−C、−O−CO−アルキル、−O−CO−アルケニル、p−NHC(=O)−C−NHC(=O)−CH、−CH=NH、−NHC(=O)−Phおよび−SHなどの他の基で置換されていてもよい。好ましい直鎖または分岐のアルケニル基としては、アリル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニルまたはヘキサデセニルを含む。
【0028】
「アルキル」という用語は、飽和であり1〜30個の炭素原子を有する直鎖または分岐の脂肪族炭化水素基を含む。アルキル基は、1つまたは複数の、酸素、窒素、または硫黄などの複素原子で中断されていてもよいし、ハロ、−CF、−NO、−NH、−CN、−OCH、−C、−O−CO−アルキル、−O−CO−アルケニル、p−NHC(=O)−C−NHC(=O)−CH、−CH=NH、−NHC(=O)−Phおよび−SHなどの他の基で置換されていてもよい。好ましい直鎖または分岐のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、sec−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、およびドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、またはヘキサデシルを含む。
【0029】
「ハロ」という用語は、ハロゲン族の元素を意味する。好ましいハロ部分としては、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を含む。
【0030】
合成リン脂質の独特な分子配置(すなわち、リン酸基が、置換されたプロペニル基を経由して四級アンモニウム基に結合しており、さらに四級アンモニウム官能基は少なくとも1つの炭化水素長鎖に結合している)は、それを高水溶性にしているものである。特に、炭化水素鎖長およびイオン性官能基は、本明細書に記載の使用のために、分子の溶解度と効力を維持するために考慮すべき重要な因子である。
【0031】
式(I)の好ましい化合物は、RおよびRは、メチルであり;Rは、(CH11CH、(CH−NHC(=O)−(CH10CH、および(CH−NHC(=O)−(CH12CHからなる群から選択され;Rは、CHCH(Y)CHであり、この式中、R、RおよびRは上記で規定したものであり;Xは、塩素であり;Yは、OHであり;およびMは、ナトリウムであるものである。最も好ましい化合物は、次表で確認される。
【0032】
【化2】

化合物番号1は、式(I)の最も好ましい化合物である。
【0033】
式(I)の化合物は、公知の手順(例えば、米国特許第5,286,719号明細書;第5,648,348号明細書および第5,650,402号明細書を参照)に従って合成でき、および/またはUniquema社(Cowick Hall、Snaith、Goole East Yorkshire、DN149AA)などの商業的供給源から購入できる。
【0034】
上述したように、式(I)の合成リン脂質は、これを高水溶性にし、本明細書に記載の使用のために特に有効にしている、他のリン脂質と比べて独特の分子配置および物理的特性を有する。イオン性相互作用に対する化合物の親和性がそのような特性の1つである。
【0035】
本発明の組成物のイオン強度は、式(I)の化合物を用いた防腐または消毒を達成するのに重要な因子であることが見出された。さらに詳細には、組成物中の陰イオン剤の濃度が増加すると組成物は抗菌活性を失う。したがって、組成物を微生物汚染から防腐するおよび/またはコンタクトレンズを消毒する、式(I)の化合物の能力に対して悪影響を与える抗菌活性の喪失を回避するように、本発明の組成物中に存在するイオン性溶質の量を制限することが重要である。この原則は、以下の実施例2においてさらに示される(製剤I〜Kを参照)。低イオン強度を有する、すなわち、塩化ナトリウムなどのイオン性溶質の低濃度溶液の使用が、それゆえ好ましい。イオン性溶質の例としては、塩化カリウム、塩化マグネシウムおよび塩化カルシウムを含む。本明細書で使用しているように、「イオン強度」という用語は、電解質中のイオン間の平均的静電的相互作用の尺度を意味する。それは、それぞれのイオンのモル濃度にそのイオンの電荷数を二乗したものを乗じて得た項の総和の半分に等しい。
【0036】
製剤中の防腐剤濃度とイオン強度との間の関係が重要な因子であることも見出された。例えば、0.01%w/vのリン脂質を含み、従来の防腐剤を含まない製剤においては、製剤のイオン強度は、USPの防腐効力要件を満たすために、0.12以下とすべきである。しかし、リン脂質の濃度が増加するにつれて、製剤が0.12より大きいイオン強度を有し得るように、USPの防腐効力要件を満たす製剤の能力が増加することになろう。
【0037】
式(I)の化合物は、また、組成物の微生物汚染を防止するために、様々なタイプの薬剤組成物中に防腐剤として含まれ得る。式(I)の化合物により防腐され得る組成物のタイプとしては、(a)緑内障、感染症、種々の網膜疾患、アレルギーまたは炎症の治療に使用される局所用組成物などの眼科用薬剤組成物;(b)耳の細菌感染症または炎症の治療に使用される局所用組成物などの耳科用薬剤組成物;(c)鼻炎の治療に使用される局所用組成物などの鼻科用薬剤組成物;(d)洗浄用製品およびコンタクトレンズを装着する患者の眼の快適さを増強するための製品などのコンタクトレンズ処置用組成物;(e)眼科用潤滑製品、人工涙、収斂剤などの他のタイプの眼科用組成物;(f)抗炎症組成物ならびにシャンプーおよびその他の化粧品組成物などの皮膚用組成物;ならびに(f)様々の他のタイプの薬剤組成物を含む。
【0038】
本発明は、防腐剤として、式(I)の化合物を含む薬剤組成物のタイプに関しては、制限を受けないが、前記化合物は、眼科用、耳科用および鼻科用組成物を微生物汚染から防腐することにおいて特に有用である。前記化合物は、眼、耳および鼻の組織に対して悪影響を与えることなく、非常に低い濃度でも防腐効果を示すという化合物の性能により、このようなタイプの組成物において特に有用である。特に、式(I)の化合物が、眼に適用されたとき、涙液、すなわち、涙の存在下でイオンによる中和および/または希釈効果により、眼組織にほとんど実質的に影響を与えない。
【0039】
本発明の組成物は、水性または非水性溶液として製剤され得るが、好ましくは、水性であろう。さらに、組成物は、懸濁液、ゲル、乳濁液および当業者に公知の他の剤形として製剤され得る。
【0040】
本発明の眼科用、耳科用および鼻科用組成物は、眼、耳、鼻および/または前記組成物で処置されるコンタクトレンズに適合するように製剤されよう。当業者には理解されようが、眼への直接適用を意図した眼科用組成物は、眼に適合するpHと張度、すなわち重量モル浸透圧濃度を有するように製剤されよう。このためには、組成物のpHを、生理学的pH(すなわち、7.4)またはその近傍に維持するために、通常、緩衝液が必要となろうし、組成物の重量モル浸透圧濃度を、人の涙に対して、やや低張性から等張性の範囲の水準にするために、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム)が必要となることもある。
【0041】
本発明の眼科用組成物は、防腐有効量の、1つまたは複数の式(I)の合成リン脂質および眼科用に許容されるビヒクルを含有しよう。本明細書で用いられているように、「眼科用に許容されるビヒクル」という用語は、生理学的に眼組織に適合する物理的な性質(例えば、pHおよび/または重量モル浸透圧濃度)を有する薬剤組成物を意味する。
【0042】
本発明の眼科用組成物のための重量モル浸透圧濃度の好ましい範囲は、キログラムあたり150〜350ミリオスモル(mOsm/kg)である。200〜300mOsm/kgの範囲は、特に好ましく、約275mOsm/kgの重量モル浸透圧濃度は最も好ましい。本発明の眼科用組成物のためのpHは、約4.5〜約9.0の範囲である。
【0043】
本発明の薬剤組成物は、1つまたは複数の活性成分を含んでもよい。本明細書で用いられているように、「活性成分」という用語は、治療目的に対して生理学的効果を引き起こす化合物、例えば、緑内障の治療において眼球内圧力を低下または制御する化合物、およびそれゆえ薬として機能する化合物を意味する。
【0044】
本発明の組成物は、1つまたは複数の式(I)の合成リン脂質を含有しよう。組成物中の前記化合物の濃度は、使用目的、例えば、薬剤組成物の防腐、およびその他の抗菌薬が含まれるか含まれないかに依存しよう。上記の目的に対して必要と決定される濃度は、「防腐に効果的な量」または以下に記載するようにその変形として機能的に記述され得る。「防腐に効果的」という用語は、本発明明細書中に記載されている組成物を微生物汚染から防腐するという所望の効果を生ずるのに有効な抗菌薬の量を意味し、好ましくは、単独でまたは1つもしくは複数の追加の抗菌薬とを組み合わせて、少なくとも、米国薬局方(「USP」)、第29版、国民医薬品集、米国薬局方協会、Rockville、MD、2256〜2259頁(United States Pharmacopoeia (”USP”), 29th Revision, The National Formulary, United States Pharmacopoeial Convention, Inc., Rockville, MD 2256−2259)の防腐効力基準を満たすに十分な量である。使用される濃度は、一般に、約0.001〜約2重量/体積%(w/v%)の範囲であろう。薬剤組成物の防腐に使用される濃度は、一般に、約0.001〜約1(w/v%)、好ましくは、0.005〜0.5の範囲であろう。前記化合物が、従来の眼科用、耳科用または鼻科用抗菌性防腐剤を用いないで、活性成分を含む薬剤組成物の防腐のために用いられる場合は、前記化合物の濃度は、好ましくは、約0.005〜約1(w/v%)となろう。
【0045】
本発明の薬剤組成物は、上述のものなどの従来の抗菌薬を使用しないで、1つまたは複数の式(I)の合成リン脂質を含有することにより効果的に防腐される一方、式(I)の化合物は、従来の消毒薬または防腐剤と組み合わせても使用可能である。式(I)の化合物は、例えば、米国特許第4,407,791号明細書(Stark)に記載されている高分子四級アンモニウム化合物と組み合わせて使用してもよい;前記特許明細書全体は、参照により本明細書に組み込まれる。’791号明細書に記載されているように、これらの高分子四級アンモニウム化合物は、コンタクトレンズの消毒および眼科用組成物の防腐に有用である。好ましい高分子四級アンモニウム化合物は、ポリクオルテニウム−1である。そのような高分子四級アンモニウム化合物は、典型的には、約0.00001〜0.01w/v%の量で使用される。該作用剤ポリクオルテニウム−1の場合は、0.001w/v%の濃度が好ましい。
【0046】
本発明の組成物中に含有し得る活性成分としては、局所適用され得る眼科用、耳科用および鼻科用薬剤が含まれるがこれに限られるわけではない。例えば、そのような眼科用薬剤としては、βブロッカー(例えば、ベタキソロールおよびチモロール)、ムスカリン作用薬(例えば、ピロカルピン)、プロスタグランジン、炭酸脱水酵素阻害薬(例えば、アセタゾラミド、メタゾラミドおよびエトキゾラミド)、ドパミン作動薬および拮抗薬、ならびにパラアミノクロニジン(アプラクロニジンとしても知られているが)およびブリモニジンなどのαアドレナリン作動薬などの抗緑内障薬;シプロフロキサシンなどの抗感染薬;スプロフェン、ケトロラク、デキサメタゾン、リメキソロン、およびテトラヒドロコルチゾールなどの非ステロイド性およびステロイド性の抗炎症薬;タンパク質;EGFなどの成長因子;ならびにクロモグリク酸ナトリウム、エメダスチン、およびオロパタジンなどの抗アレルギー薬が含まれる(がこれらに限られるわけではない)。使用し得る治療薬の他の非制限的な例としては、抗コリン作用薬、交感神経刺激薬、抗血管新生薬、抗血管透過性薬、麻酔薬、アナルジェシスク(analgesiscs)、プロテアーゼ拮抗薬、細胞輸送/移動切迫化薬、抗サイトメガロウイルス薬、免疫反応修飾因子、抗悪性腫瘍薬、が含まれるがこれらに限られるわけではない。本発明の組成物はまた活性成分の組合せを含んでもよい。最も好ましいのは、局所投与できる眼科用組成物である。
【0047】
当業者には理解されようが、本発明の組成物は、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、プロピレングリコール、マンニトール)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート、クレモフォア、およびポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体)、粘度調節剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、その他のセルロース誘導体、ガムおよびガム誘導体)、緩衝剤(ホウ酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、炭酸塩)、快適化剤(例えば、グアーガム、キサンタンガム、およびポリビニルピロリドン、必要で適切な場合に)、可溶化助剤成分、pH調節剤、抗酸化剤、防腐助剤または錯体形成剤(例えば、EDTA二ナトリウムとも称する(エチレンジニトリロ)四酢酸二ナトリウム塩、ノニルエチレンジアミン三酢酸)および安定化剤などの広範囲の成分を含んでもよい。式(I)の組成物が、このような作用剤の存在下でその抗菌性を保持できることは、本発明の重要な優位性である。
【0048】
コンタクトレンズを処置(例えば、消毒および/または洗浄)するための組成物の製剤においては、他のタイプの眼科用組成物について上記したのと同様の考慮、ならびにコンタクトレンズ材料に対する組成物の物理的効果、および組成物成分のレンズによる結合または吸着の可能性に関しての考慮も必要となろう。本発明のコンタクトレンズ消毒用組成物は、好ましくは、水性溶液として製剤され得ようが、非水性溶液としてでも、また、同時に懸濁液、ゲル、乳濁液などとして製剤されてもよい。組成物は、上述したような、様々の、等張化剤、界面活性剤、粘度調節剤および緩衝剤を含んでもよい。
【0049】
上述の組成物は、当業者に公知のプロセスに従ってコンタクトレンズの消毒に使用し得る。さらに詳細には、レンズは、最初、患者の眼から外され、次いでレンズを消毒するに十分な時間、組成物中に浸漬されよう。この浸漬は、典型的には、数時間から一晩、すなわち、4〜8時間の範囲の時間、溶液中にレンズを浸けるという手段により達成されよう。それからレンズは濯がれ、眼に装着されよう。好ましくは、消毒用組成物中に浸漬される前にも、レンズは洗浄され、濯がれよう。
【0050】
本発明の組成物および方法は、一般に「ハード」と分類されるレンズおよび一般に「ソフト」と分類されるレンズの両方、さらに硬質および軟質のガス透過性レンズを含み、種々のタイプのコンタクトレンズと組み合わせて使用してもよい。そのような適当なレンズには、シリコンおよびフッ素を含むレンズ、また、ヒドロゲルおよび非ヒドロゲルの両方のレンズも含まれ得る。さらに、本発明の組成物は、着色レンズを脱色することは期待されていない。本発明の組成物は、式(I)のリン脂質を、単独でまたはそのほかの抗菌薬と組み合わせてのどちらかで、有効量で、生理学的に適した緩衝液中に含む。消毒液、コンタクトレンズ使用者のための快適点眼液および潤滑点眼液の例示的な例を以下の実施例5〜9にあげる。
【0051】
上述したように、用いられるそれぞれの化合物の量は、使用目的、例えば、コンタクトレンズの消毒、およびそのほかの抗菌薬の有無に依存しよう。上記の目的に対して必要と決定される濃度は、「消毒に効果的な量」または以下に記載するようにその変形として機能的に記述され得る。「消毒に効果的」という用語は、レンズ上に存在する生存微生物数を実質的に減少させることにより、コンタクトレンズを消毒するという所望の効果を生む際に効果的な抗菌薬の量を意味し、好ましくは、単独でまたは1つもしくは複数の追加の抗菌薬と組み合わせるかのどちらかで、コンタクトレンズケア製品のためのFDA市販前届出(510k)ガイダンス資料(1997年)(FDA Premarket Notification (510k) Guidance Document for Contact Lens Care Products (1997))ならびにISO/FDIS14729:眼科用光学品−コンタクトレンズケア製品−微生物学的基準と製品試験方法およびコンタクトレンズの衛生的管理のためのレジメン(2001年)(ISO/FDIS 14729: Ophthalmic optics−Contact lens care products−Microbiological requirements and test methods for products and regimens for hygienic management of contact lenses (2001))に従う消毒基準を満たすに十分な量である。用いられる濃度は一般に、約0.001〜約2w/v%の範囲であろう。
【実施例】
【0052】
次の実施例は、本発明の組成物中への式(I)の化合物の使用をさらに例示し、化合物の抗菌活性を示すために提示される。
【0053】
(実施例1)
次の製剤は、本発明の防腐剤入りの眼科用製剤の例を表す。この製剤では、式(I)のリン脂質化合物が保管中の微生物汚染から製剤を防腐するように機能する。
【0054】
【化3】

0.1%の防腐剤入りの眼科用製剤の調製:塩酸オロパタジン(0.111g)およびホウ酸(1.0g)を精製水(約75mL)中に混ぜ、約30分間攪拌した。これにプロピレングリコール(0.3g)、次いで塩化ナトリウム(0.5g)を加えた。混合物が溶解するまで十分攪拌した。混合物にリン脂質CDM(水中で調製した1%貯蔵液の1.0g)を加えた。製剤量が約95gになるように十分量の精製水を加えた。水酸化ナトリウム溶液(1N)を加えてpHを約7.0に調節し、最終バッチ量が100gになるように調節し、精製水を加えた。層流ドラフト中で、0.22μのメンブランフィルタを通して製剤を除菌した。
【0055】
(実施例2)
化合物番号1(リン脂質CDM)、化合物番号2(リン脂質PTC)または化合物番号3(リン脂質PTM)として上記で表示したリン脂質の0.0001〜1(w/v%)を含む、以下の表1に示した製剤の抗菌活性を、標準の抗菌防腐効力テストで用いられる5つの微生物に関して評価した。評価は、溶液が、約10cfu/mLの微生物の初期の集合を経時的に減少させる程度を決定することにより行った。「cfu」という略語は、コロニー形成単位を意味する。製剤に対して得られた防腐効力も表1に示してある。製剤A〜Vはすべて、約275mOsm/kgの同じような重量モル浸透圧濃度を有するが、相的イオン強度は異なっていることに注意を払うべきである。
【0056】
【表1−1】

【0057】
【表1−2】

【0058】
【表1−3】

【0059】
【表1−4】

上記の表1の結果は、式(I)の合成リン脂質の強力な抗菌活性を示している。結果はまた、防腐効力は、部分的には、存在するリン脂質の濃度および組成物のイオン強度の両者に依存していることを示している。製剤AからEまでは共に、製剤FからHまでは共に、および製剤QからVまでは共に、防腐効力が濃度依存性であること、すなわち、リン脂質(化合物番号1)の濃度が増加するに従い、防腐効力が改善されることをそれぞれ示している。製剤IからKは共に、リン脂質(化合物番号1)の濃度が0.01に固定されているときに、塩化ナトリウムの濃度値の増加によりイオン強度が増加(製剤AからEおよびFからHに対して)するに従い、防腐効力が低下することを示している。
【0060】
次の製剤3から9は、水性の等張液である。これらは、上記の実施例1の溶液と同様にして調製できる。
【0061】
(実施例3)
【0062】
【化4】

(実施例4)
【0063】
【化5】

(実施例5)
【0064】
【化6】

(実施例6)
【0065】
【化7】

(実施例7)
【0066】
【化8】

(実施例8)
【0067】
【化9】

(実施例9)
【0068】
【化10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
防腐有効量の次式の化合物、および該化合物に対する薬学的に許容されるビヒクルを含む、無菌の薬剤組成物
【化11】

[式中、
およびRは、(C〜C)アルキルであり;
は、水素および任意選択で、NHC(=O)−(CH10CHまたはNHC(=O)−(CH12CHで置換されている(C〜C16)アルキルからなる群から選択され;
は、水素およびCHCH(Y)CHからなる群から選択され、この式中、R、RおよびRは上記で規定したものであり;
Xは、ハロであり;
Yは、OH、O−(C〜C10)アルキル、およびO−(C〜C10)アルケニルからなる群から選択され;
Mは、ナトリウムとカリウムからなる群から選択される]。
【請求項2】
およびRは、メチルであり;
は、(CH11CH、(CH−NHC(=O)−(CH10CH、および(CH−NHC(=O)−(CH12CHからなる群から選択され;
は、CHCH(Y)CHであり、この式中、R、RおよびRは上記で規定したものであり;
Xは、塩素であり;
Yは、OHであり;および
Mは、ナトリウムである、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式(I)の化合物が、リン脂質CDM、リン脂質PTCおよびリン脂質PTMからなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物の量が、0.12以下のイオン強度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
式(I)の化合物の量が、約0.001%〜約2%(w/v)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
式(I)の化合物の量が、約0.001%〜約1%(w/v)である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルコニウム、ポリクオタニウム−1、クロルヘキシジン、クロロブタノール、塩化セチルピリジニウム、パラベン、チメロサール、二酸化塩素およびN,N’−ジクロロタウリンからなる群から選択される防腐剤成分をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
微生物汚染から薬剤組成物を防腐する方法であって、該組成物に防腐有効量の次式の化合物を加えるステップを含む方法
【化12】

[式中、
およびRは、(C〜C)アルキルであり;
は、水素および任意選択で、NHC(=O)−(CH10CHまたはNHC(=O)−(CH12CHで置換されている(C〜C16)アルキルからなる群から選択され;
は、水素およびCHCH(Y)CHからなる群から選択され、この式中、R、RおよびRは上記で規定したものであり;
Xは、ハロであり;
Yは、OH、O−(C〜C10)アルキル、およびO−(C〜C10)アルケニルからなる群から選択され;
Mは、ナトリウムとカリウムからなる群から選択される]。
【請求項9】
およびRは、メチルであり;
は、(CH11CH、(CH−NHC(=O)−(CH10CH、および(CH−NHC(=O)−(CH12CHからなる群から選択され;
は、CHCH(Y)CHであり、この式中、R、RおよびRは上記で規定したものであり;
Xは、塩素であり;
Yは、OHであり;および
Mは、ナトリウムである、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
式(I)の化合物が、リン脂質CDM、リン脂質PTCおよびリン脂質PTMからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、0.12以下のイオン強度を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
式(I)の化合物の量が、約0.001%〜約2%(w/v)である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
式(I)の化合物の量が、約0.001%〜約1%(w/v)である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルコニウム、ポリクオタニウム−1、クロルヘキシジン、クロロブタノール、塩化セチルピリジニウム、パラベン、チメロサール、二酸化塩素およびN,N’−ジクロロタウリンからなる群から選択される防腐剤成分をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
有効な量の次式の化合物、および該化合物に対する眼科用に許容されるビヒクルを含む、コンタクトレンズ処置のための溶液
【化13】

[式中、
およびRは、(C〜C)アルキルであり;
は、水素および任意選択で、NHC(=O)−(CH10CHまたはNHC(=O)−(CH12CHで置換されている(C〜C16)アルキルからなる群から選択され;
は、水素およびCHCH(Y)CHからなる群から選択され、この式中、R、RおよびRは上記で規定したものであり;
Xは、ハロであり;
Yは、OH、O−(C〜C10)アルキル、およびO−(C〜C10)アルケニルからなる群から選択され;
Mは、ナトリウムとカリウムからなる群から選択される]。
【請求項16】
およびRは、メチルであり;
は、(CH11CH、(CH−NHC(=O)−(CH10CH、および(CH−NHC(=O)−(CH12CHからなる群から選択され;
は、CHCH(Y)CHであり、この式中、R、RおよびRは上記で規定したものであり;
Xは、塩素であり;
Yは、OHであり;および
Mは、ナトリウムである、
請求項15に記載の溶液。
【請求項17】
式(I)の化合物が、リン脂質CDM、リン脂質PTCおよびリン脂質PTMからなる群から選択される、請求項16に記載の溶液。
【請求項18】
前記溶液が、0.12以下のイオン強度を有する、請求項15に記載の溶液。
【請求項19】
式(I)の化合物の量が、約0.001%〜約2%(w/v)である、請求項15に記載の溶液。
【請求項20】
式(I)の化合物の量が、約0.001%〜約1%(w/v)である、請求項19に記載の溶液。
【請求項21】
コンタクトレンズを消毒する方法であって、該方法は、該レンズを消毒するための有効量の次式の化合物、および該化合物に対する眼科用に許容されるビヒクルを含む溶液を該レンズと接触させるステップを含む、方法
【化14】

[式中、
およびRは、(C〜C)アルキルであり;
は、水素および任意選択で、NHC(=O)−(CH10CHまたはNHC(=O)−(CH12CHで置換されている(C〜C16)アルキルからなる群から選択され;
は、水素およびCHCH(Y)CHからなる群から選択され、この式中、R、RおよびRは上記で規定したものであり;
Xは、ハロであり;
Yは、OH、O−(C〜C10)アルキル、およびO−(C〜C10)アルケニルからなる群から選択され;
Mは、ナトリウムとカリウムからなる群から選択される]。
【請求項22】
およびRは、メチルであり;
は、(CH11CH、(CH−NHC(=O)−(CH10CH、および(CH−NHC(=O)−(CH12CHからなる群から選択され;
は、CHCH(Y)CHであり、この式中、R、RおよびRは上記で規定したものであり;
Xは、塩素であり;
Yは、OHであり;および
Mは、ナトリウムである、
請求項21に記載の方法。
【請求項23】
式(I)の化合物が、リン脂質CDM、リン脂質PTCおよびリン脂質PTMからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物が、0.12以下のイオン強度を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
消毒に有効な式(I)の化合物の量が、約0.001%〜約2%(w/v)である、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
消毒に有効な式(I)の化合物の量が、約0.001%〜約1%(w/v)である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
眼科用、耳科用または鼻科用である、請求項1に記載の組成物。

【公表番号】特表2010−527933(P2010−527933A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508605(P2010−508605)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/063877
【国際公開番号】WO2008/144494
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)
【Fターム(参考)】