コンタクトレンズ殺菌用ケース
【課題】過酸化水素水を用いたコンタクトレンズの殺菌処理を容易且つ速やかに行うこと出来ると共に、金属触媒による重金属のレンズ付着やレンズ損傷等の問題も効果的に防止され得る、新規なコンタクトレンズ殺菌用ケースを提供することにある。
【解決手段】コンタクトレンズが平置き状態で収容される一対のレンズ収容部26,26と、金属触媒14を収容する触媒収容部24とを、何れも上方に向かって開口する凹所として形成すると共に、それらの凹所を相互に連通して過酸化水素水がそれらの凹所間で相互に流動可能とする相互連通路38を形成した。
【解決手段】コンタクトレンズが平置き状態で収容される一対のレンズ収容部26,26と、金属触媒14を収容する触媒収容部24とを、何れも上方に向かって開口する凹所として形成すると共に、それらの凹所を相互に連通して過酸化水素水がそれらの凹所間で相互に流動可能とする相互連通路38を形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過酸化水素水を用いてコンタクトレンズを殺菌する際に用いられるコンタクトレンズの殺菌用ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズの使用に際しては、コンタクトレンズに対して定期的な殺菌処理を施すことが必要とされる。コンタクトレンズに付着した細菌やカビ等の微生物による眼感染症や眼障害を防止して、安全で快適な装用状態を維持するためである。近年では、特許庁標準技術集「メガネ」第323頁(非特許文献1)及び特開2001−242428号公報(特許文献1)等に示されているように、界面活性剤や殺菌防腐剤が添加された一液タイプの洗浄・保存液を用いてコンタクトレンズの殺菌も併せて行うことが多いが、一液タイプの洗浄・保存液に含まれる殺菌防腐剤等にアレルギーを持つユーザーや、より確実な殺菌効果を望むユーザー等には、過酸化水素水にコンタクトレンズを浸漬する殺菌方法も、未だ利用されている。この方法では、特にユーザーの簡便性を考慮して複数の液剤を使用せず、一液のみで行う過酸化水素消毒システムが主流であり、これは過酸化水素水の殺菌力を利用するものであり、具体的には、ユーザー自身が、コンタクトレンズを過酸化水素の水溶液中に数時間以上に亘ってコンタクトレンズ浸漬することによって殺菌処理が行われる。
【0003】
ところで、過酸化水素水は、分解後は水と酸素になって無害であるが、未分解で残留していると眼への刺激物となって問題がある。そこで、従来から、プラチナ等の触媒を用いて過酸化水素の分解反応を促進及び調節することにより、コンタクトレンズの殺菌処理の終了前に、過酸化水素が完全に分解中和されるようにすることが提案されている。例えば、特許2660453号公報(特許文献2)を参照。
【0004】
ところが、従来の過酸化水素水を用いたコンタクトレンズ殺菌用ケースは、非常に使いづらいものであり、特に前述の一液タイプの洗浄・保存液による殺菌処理の利用が多数を占める近年では、その使用性等の改善も検討されていない状況であった。具体的には、従来の過酸化水素水を用いたコンタクトレンズ殺菌用ケースは、上記特許文献2に記載されているように、上方に開口する深底円筒状のケース本体と、このケース本体の開口部にねじ止めされる蓋体とを含んで構成されており、蓋体からケース本体内に突出してレンズ保持部と触媒保持部が設けられている。このような深底円筒状のケース本体では、コンタクトレンズの光軸を略水平方向に向けてコンタクトレンズを立てた状態(縦置き状態)で左右一対を特殊なバケット状のレンズ保持部に収容しなければならず、コンタクトレンズの収容及び取出しが非常に面倒であるだけでなく、コンタクトレンズの収容時にレンズがバケットに挟まれることによる破損等の恐れもある。また、ケース本体が深底であるために、特に酸素ガスの発生が弱くなってくる分解中和の後半以降は収容された過酸化水素水の攪拌効率が悪くなり、過酸化水素水の分解中和が部分的に進行する等して殺菌処理や中和処理が不均一になるおそれもあった。更に、ケース本体が深底円筒状で背が高い故、テーブル等に置いても手指が触れると容易に倒れてしまい、過酸化水素水が溢れてしまい易いという問題もあった。
【0005】
なお、特開2000−189224号公報(特許文献3)や特開平6−205706号公報(特許文献4)に記載されている如き、コンタクトレンズの光軸を略鉛直方向に向けた平置き状態で収容する浅底のレンズ収容部を上方に開口して一対形成した平置型のコンタクトレンズ保存用容器を、過酸化水素水を利用する殺菌用に利用することも考えられる。しかし、このような平置型のコンタクトレンズ保存用容器では、過酸化水素水の中和用の触媒を、何処にどのような構造で設けるのか、特許文献3及び4には一切の具体的開示がないし、かかる触媒の有効な組付構造について検討すらされていなかったのである。
【0006】
例えば、特表2002−526203号公報(特許文献5)には、上述の如き平置型のコンタクトレンズ保存用容器において、単に浅底のレンズ収容部の底面と周壁内面とにプラチナ層を非着しただけの、過酸化水素水を利用するコンタクトレンズ殺菌用容器が提案されている。しかし、このように単純に容器内面の全面に触媒層を被着しただけでは、コンタクトレンズが触媒層の表面を覆うことにより触媒の分解効率を低下させるおそれがあった。また、コンタクトレンズの触媒への接触によって、コンタクトレンズに重金属が付着するおそれがあり、それに起因してユーザーのアレルギー等の不具合が誘発されたり、レンズ損傷のおそれもあった。
【0007】
また、特許3368903号公報(特許文献6)には、触媒に代えてカタラーゼを含む酵素タブレットを用いて過酸化水素水を中和することが提案されている。しかし、酵素タブレットは、殺菌処理の度に過酸化水素水中に投入しなければならず、その作業や取扱いが面倒であると共に、ユーザーが酵素タブレットの投入を失念する危険もある。しかも、酵素タブレットの含有成分が、過酸化水素水の中和後も残存するという問題もあることから、必ずしも有効な方策ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−242428号公報
【特許文献2】特許2660453号公報
【特許文献3】特開2000−189224号公報
【特許文献4】特開平6−205706号公報
【特許文献5】特表2002−526203号公報
【特許文献6】特許3368903号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】特許庁 標準技術集,一般,平成17年度,メガネ,第323頁,技術名称「13−3−1−1 液中保存法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、過酸化水素水を用いたコンタクトレンズの殺菌処理をユーザーが簡単に行うことが出来、特にコンタクトレンズの挿脱を容易且つ速やかに行うこと出来ると共に、金属触媒による重金属のレンズ付着やレンズ損傷等の問題も効果的に防止され得る、新規なコンタクトレンズ殺菌用ケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、過酸化水素水の液中に左眼コンタクトレンズ及び右眼コンタクトレンズを浸漬して殺菌するための一対のレンズ収容部がそれぞれ上方に向かって開口して形成されており、それぞれの該レンズ収容部において該コンタクトレンズの凹側又は凸側のレンズ面を開口部に向けた平置き状態で収容されるようになっている一方、該過酸化水素水の分解反応に触媒作用を発揮する金属触媒が、該過酸化水素水に接触せしめられる位置に設けられているコンタクトレンズ殺菌用ケースにおいて、前記一対のレンズ収容部と前記金属触媒が収容された触媒収容部とがそれぞれ上方に向かって開口する凹所として形成されていると共に、該一対のレンズ収容部と該触媒収容部とを仕切る隔壁部分においてその上端部に開口して該一対のレンズ収容部と該触媒収容部との間で前記過酸化水素水の水面を連続させる連通溝が形成されており、該連通溝によって該一対のレンズ収容部と該触媒収容部との間での前記コンタクトレンズおよび前記金属触媒の移動は阻止するが前記過酸化水素水の流動は許容する相互連通路が設けられているコンタクトレンズ殺菌用ケースを、特徴とする。
【0012】
本態様のコンタクトレンズ殺菌用触媒においては、左眼用コンタクトレンズと右眼用コンタクトレンズが、一対のレンズ収容部の各一方に対して、それぞれ、平置き状態で収容される。それ故、コンタクトレンズ殺菌用ケースをテーブル等の載置面に置いた状態で、レンズ収容部の開口部からコンタクトレンズをレンズ収容部に対して直接に入れたり出したりすることが出来る。特に、各レンズ収容部は、従来の縦置きのケースに比して充分に浅底とされており、その開口部からユーザーが手指を直接に挿し入れることでコンタクトレンズを入れたり出したりすることが出来るから作業が容易となるし、レンズ収容部におけるコンタクトレンズの存否も容易に確認できる。
【0013】
しかも、過酸化水素水分解の触媒として、金属触媒を採用したことにより、特許文献6に記載の酵素タブレットのように処理の都度に液中投与する必要がなく、過酸化水素水における中和反応の調節作用が優れた耐久性と安定性および信頼性をもって発揮され得る。
【0014】
加えて、金属触媒とレンズ収容部との間に設けられた相互連通路を有する隔壁部分により、金属触媒とコンタクトレンズとの直接の接触を防止する接触阻止手段が構成されていることから、コンタクトレンズへの重金属の付着やコンタクトレンズの傷つき等の問題も可及的に回避され得る。
【0015】
本態様では、金属触媒をケースに固定や被着する等の必要がなくなり、金属触媒の選択範囲が大きくなると共に、製造や構造の簡略化が図られ得る。なお、相互連通路には、通路狭窄手段として例えば網や柵、多孔体、狭窄路などを採用することも出来る。
【0016】
本態様では、左右一対のレンズ収容部と触媒収容部とが、異なる部位に開口形成されることで、各収容部の容積を充分に確保しつつ、コンタクトレンズ殺菌用ケースの最大高さ寸法を小さく抑えることが出来る。また、一対のレンズ収容部へのコンタクトレンズの挿脱作業だけでなく、触媒収容部への金属触媒の挿脱等の作業を容易に行うことが出来ると共に、触媒収容部の開口部を通じて、過酸化水素水中に浸漬された金属触媒の状況を直接に目視して確認することも可能となる。
【0017】
本発明の第2の態様では、前記第1の態様のコンタクトレンズ殺菌用ケースにおいて、前記一対のレンズ収容部を構成する前記各凹所の底面に対して他部材を介することなく直接にコンタクトレンズが平置き状態で載置されるようになっている。
【0018】
本発明の第3の態様では、前記第1又は第2の態様のコンタクトレンズ殺菌用ケースにおいて、前記相互連通路が、前記一対のレンズ収容部と前記触媒収容部とを構成する各前記凹所を相互に連通することによって循環流路が形成されている。
【0019】
本態様では、触媒収容部と一対のレンズ収容部との間での過酸化水素水の循環効率の更なる向上が図られ得る。この触媒収容部は、例えば後述の第4の態様の如く構成され、それによって、一つの触媒収容部が一対のレンズ収容部に対して一層効率的に連通され得る。
【0020】
本発明の第4の態様では、前記第3の態様のコンタクトレンズ殺菌用ケースにおいて、前記一対のレンズ収容部の間に位置して前記触媒収容部が設けられており、該触媒収容部の開口周縁部の対向部分において各一方の該レンズ収容部に接続される一対の隣接連通路が形成されて、該一対のレンズ収容部が該触媒収容部を介して接続されていると共に、該一対のレンズ収容部と該触媒収容部の配列方向と並列的に延びる並設連通路が形成されており、該並設連通路の長さ方向両端部分が各一方の該レンズ収容部に接続されていると共に、該並設連通路の長さ方向中間部分が該触媒収容部に接続されていることにより、該一対の隣接連通路と該並設連通路とを含んで前記循環流路が形成されている。
【0021】
本発明の第5の態様では、前記第1〜4の態様のコンタクトレンズ殺菌用ケースにおいて、前記一対のレンズ収容部および前記触媒収容部における開口部分の周辺を取り囲む共通凹部が形成されており、この共通凹部においてそれら一対のレンズ収容部と触媒収容部が開口せしめられている。
【0022】
本態様では、例えばレンズ収容部へのコンタクトレンズの挿脱に際して手指をレンズ収容部に差し入れても、それによって押し出された過酸化水素水は、共通凹部を通じて他方のレンズ収容部や触媒収容部等に速やかに流動する。それ故、レンズ収容部における過酸化水素水の液面の上昇量が抑えられて、過酸化水素水のケース外への溢れ出しが効果的に防止される。
【0023】
本発明の第6の態様では、前記第1〜5の態様のコンタクトレンズ殺菌用ケースにおいて、前記一対のレンズ収容部の開口部を覆蓋する蓋体の内側面にそれぞれ内方凸部が設けられており、該蓋体が該レンズ収容部の開口部に装着されることにより、該内方凸部が該レンズ収容部に収容された前記過酸化水素水の液中にまで入り込む。
【0024】
本発明では、一対のレンズ収容部にコンタクトレンズを収容してから蓋体を装着することで、蓋体の内方突部により、一対のレンズ収容部から過酸化水素水が押し出される。これにより、過酸化水素水の液面レベルが上昇することから、触媒収容部の液面レベルも上がり、触媒の浸漬状態がより確実に実現可能となる。
【0025】
本発明の第7の態様では、前記第6の態様のコンタクトレンズ殺菌用ケースにおいて、前記蓋体が前記レンズ収容部の開口部に装着されることにより、該レンズ収容部において、前記コンタクトレンズが凹側のレンズ面を上方に向けた状態で、該レンズ収容部の底面と該蓋体の前記内方凸部との対向面間に位置せしめられる。
【0026】
本発明の第8の態様では、前記第1〜7の態様のコンタクトレンズ殺菌用ケースにおいて、前記一対のレンズ収容部の何れにおいても、前記触媒収容部に接続される前記相互連通路が、周長の1/5以上の部分で開口して接続されている。
【0027】
本態様では、触媒収容部と一対のレンズ収容部との間で、それら各収容部に収容された過酸化水素水の循環効率が向上維持されることにより、触媒収容部で積極的に進行する過酸化水素水の中和反応を一対のレンズ収容部にまで効率的に及ぼされて、全体の濃度(中和反応の進行)の均一化が有利に図られ得る。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、上方に向かって開口形成された各レンズ収容部に対して左右の各コンタクトレンズが平置き状態で収容されることから、コンタクトレンズを殺菌処理するに際し、コンタクトレンズをレンズ収容部に対して直接に且つ容易に入れたり出したりすることが出来る。しかも、左右の各コンタクトレンズが収容されるレンズ収容部と、金属触媒が収容される触媒収容部とが、それぞれ上方に向かって開口する凹所として形成されると共に、隔壁部に連通溝が形成されることで、金属触媒のコンタクトレンズに対する接触阻止手段としての機能が発揮されると共に、各凹所間での過酸化水素水の流動性が向上されて、コンタクトレンズへの重金属の付着やコンタクトレンズの傷つき等の問題を回避しつつ、過酸化水素水に対する中和処理が金属触媒によって安定して行われ得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第一の実施形態であるコンタクトレンズ殺菌用ケースを構成するケース本体を示す斜視図。
【図2】図1に示されたケース本体と協働してコンタクトレンズ殺菌用ケースを構成する蓋体を示す斜視図。
【図3】図1に示されたケース本体及び図2に示された蓋体と協働してコンタクトレンズ殺菌用ケースを構成する触媒を示す斜視図。
【図4】図1に示されたケース本体の平面図。
【図5】図4におけるV−V断面図。
【図6】図4におけるVI−VI断面図。
【図7】図2に示された蓋体の平面図。
【図8】図7におけるVIII−VIII断面図。
【図9】図7におけるIX−IX断面図。
【図10】図3に示された触媒の拡大縦断面図。
【図11】図3に示された触媒の拡大横断面図であって、図10におけるXI−XI断面図。
【図12】図1に示されたケース本体と図2に示された蓋体と図3に示された触媒とを用いて構成された本発明の第一の実施形態であるコンタクトレンズ殺菌用ケースの使用状態を示す説明図。
【図13】図12に示されたコンタクトレンズ殺菌用ケースの別の使用状態を示す説明図。
【図14】本発明の第二の実施形態であるコンタクトレンズ殺菌用ケースを構成するケース本体を示す斜視図。
【図15】図14に示されたケース本体の平面図。
【図16】図15におけるXVI−XVI断面図。
【図17】図15におけるXVII−XVII断面図。
【図18】図15におけるXVIII−XVIII断面図。
【図19】図14に示されたケース本体と協働してコンタクトレンズ殺菌用ケースを構成する触媒の具体例を示すモデル的に示す斜視図。
【図20】図19に示された触媒に代えて採用され得る別の触媒の具体例をモデル的に示す斜視図。
【図21】図19及び図20に示された触媒に代えて採用され得る更に別の触媒の具体例を示すモデル的に示す平面図。
【図22】図21に示された触媒の装着状態を説明する説明図。
【図23】図1に示されたケース本体に対して、図3に示された触媒に代えて採用され得る別の触媒の具体例をモデル的に示す斜視図。
【図24】図23に示された触媒に代えて採用され得る更に別の触媒の具体例をモデル的に示す説明図。
【図25】本発明の第三の実施形態であるコンタクトレンズ殺菌用ケースを示す斜視図。
【図26】図25に示されたコンタクトレンズ殺菌用容器の平面図。
【図27】本発明の第四の実施形態であるコンタクトレンズ殺菌用ケースを示す斜視図。
【図28】図27に示されたコンタクトレンズ殺菌用ケースの縦断面図。
【図29】本発明の第五の実施形態であるコンタクトレンズ殺菌用ケースを示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。先ず、図1にはコンタクトレンズ殺菌用ケースを構成するケース本体10が示されていると共に、図2には蓋体12が示されており、更に図3にはコンタクトレンズ殺菌用の金属触媒14が示されている。そして、図1のケース本体10に図3の金属触媒14を組み付けて図2の蓋体12を開閉可能に装着することにより、本発明の第一の実施形態としてのコンタクトレンズ殺菌用ケース16(図12,13参照)が構成されるようになっている。
【0031】
より詳細には、図1に示されたケース本体10は、図4〜6にも示されているように、楕円形の上底部18とその外周縁部から下方に延び出す周壁部20とを備えており、下方に開口する逆皿状の中空体とされている。なお、ケース本体10は、好適にはポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン等の合成樹脂材料を用いて一体成形される。また、ケース本体10は全体が透明とされており、ケース本体10の内部に収容されるコンタクトレンズや金属触媒14等がケース本体10を通して外部から視認可能とされている。
【0032】
また、ケース本体10には、周壁部20の下端周縁部において、外周側に向かって広がる鍔状の支持板部22が形成されている。そして、この支持板部22によって、ケース本体10がテーブル等の平坦な水平支持面に安定して載置され得るようになっている。なお、支持板部22には掛止用孔23が形成されており、この掛止用孔23に対して掛止ロッドやフック等を挿通させることによって、毎日のレンズケースの乾燥に使用したり、販売店等でケース本体10ひいてはコンタクトレンズ殺菌用ケース16を吊り下げてストックすることが出来るようになっている。
【0033】
さらに、ケース本体10の上底部18には、略中央に触媒収容部24が形成されている。また、上底部18の長軸方向で触媒収容部24を挟んだ両側には、右眼コンタクトレンズと左眼コンタクトレンズをそれぞれ収容する一対のレンズ収容部26,26が形成されている。これら触媒収容部24とレンズ収容部26,26は、何れも、上底部18の外面に開口する凹所とされている。このレンズ収容部26,26の凹状の底面によって、コンタクトレンズが凸側のレンズ面を底面に向け、凹側のレンズ面を開口部に向けた平置き状態で支持されるようになっている。そして、目的とするコンタクトレンズの殺菌処理に際して、触媒収容部24とレンズ収容部26,26の何れにも過酸化水素水44が注入貯留され、更に、レンズ収容部26,26に左右各一方のコンタクトレンズが収容されると共に、触媒収容部24に後述する金属触媒14が収容される。
【0034】
特に、レンズ収容部26,26は、何れも、処理するコンタクトレンズの外径寸法よりも大きな口径で開口する半球状凹部とされている。また、触媒収容部24は、上底部18の短軸方向を長軸とする楕円形状で開口しており、底面30が平坦面とされている。なお、触媒収容部24の底面30は、レンズ収容部26,26の最深部よりも上方側(開口側)に位置しており、レンズ収容部26,26よりも触媒収容部24が浅底とされている。なお、これらレンズ収容部26,26及び触媒収容部24を構成する壁部を含めたケース本体10の全体は透明な素材により形成されており、内部に収容されるコンタクトレンズや金属触媒14の変位状況が外部から確認可能な視認用壁部とされている。また、本実施形態では、触媒収容部24の底面30が、レンズ収容部26,26の最深部よりも上方側(開口側)に位置しており、レンズ収容部26,26よりも触媒収容部24が浅底とされているが、この構造に限定されるものでない。即ち、触媒収容部24の深さや容積等を変更して、過酸化水素水の分解効率を調節したり、後述する触媒14の変位量を調節すること等が可能であり、それに伴って、レンズ収容部26よりも触媒収容部24を深底としたり、大容積としても良い。
【0035】
また、触媒収容部24とその両隣のレンズ収容部26,26との間には、接触阻止手段としての隔壁部32,32が形成されている。これにより、触媒収容部24に収容される金属触媒14とレンズ収容部26,26に収容されるコンタクトレンズのと接触が防止されるようになっている。そして、隔壁部32,32には、それぞれ、断面U字形の相互連通路としての一対の隣接連通溝34,34が形成されている。即ち、これらの隣接連通溝34,34を通じて、触媒収容部24は、両側のレンズ収容部26,26に対してそれぞれ連通されており、レンズ収容部26,26及び触媒収容部24に過酸化水素水44が注入されると、隣接連通溝34,34を通じて過酸化水素水44がレンズ収容部26,26及び触媒収容部24の間で相互に流動可能とされている。これにより、一対のレンズ収容部26,26は、隣接連通溝34,34と触媒収容部24とを介して、相互に連通されている。なお、隣接連通溝34の深さは、触媒収容部24やレンズ収容部26よりも浅くされている。また、触媒収容部24とレンズ収容部26,26とを接続する一対の隣接連通溝34,34の一方の開口部は、触媒収容部24の開口周縁部において、左右に対向するように開口されて形成されている。そして、これら隣接連通溝34,34の他方の開口部は、レンズ収容部26の開口周縁部において、レンズ収容部26,26の外縁部の円周長の1/5以上の部分で開口されている。ただし、図3に示された触媒の支持ロッド60部分も触媒機能を持たせたような場合には、隣接連通溝34と端部接続路40を足し合わせた部分が、レンズ収容部26の外縁部の円周長に対して1/5以上の部分で開口されることとなる。
【0036】
更にまた、ケース本体10の上底部18には、触媒収容部24やレンズ収容部26,26の周辺を取り囲んで広がる略楕円形の共通凹部36が形成されている。この共通凹部36は、上底部18よりも一回り小さい略楕円形状とされており、外周縁部から中央に向かって次第に深くなる傾斜底面を有している。そして、この共通凹部36の底面に、触媒収容部24やレンズ収容部26,26,隣接連通溝34,34が開口位置している。
【0037】
さらに、ケース本体10の上底部18には、共通凹部36に対して、その短軸方向の一方の端縁部(図4中の上側端縁部)に接する状態で、並設連通路としての並設連通溝38が形成されている。この並設連通溝38は、触媒収容部24及び一対のレンズ収容部26,26の配列方向となる上底部18の長軸方向(図4中の左右方向)に直線的に延びている。そして、並設連通溝38の長さ方向両端部分では、各一方のレンズ収容部26,26との隔壁部に端部接続路40,40が形成されていると共に、並設連通溝38の長さ方向中央部分では、触媒収容部24との隔壁部に中央接続路42が形成されている。
【0038】
なお、本実施形態では、並設連通溝38の深さが、触媒収容部24やレンズ収容部26よりも浅くされており、隣接連通溝34よりも深くされている。また、中央接続路42の深さは、端部接続路40,40や隣接連通溝34よりも深くされており、並設連通溝38と略同じ深さとされている。端部接続路40の深さは、中央接続路42よりも浅く、隣接連通溝34と略同じとされている。尤も、これら並設連通溝38や中央接続路42、端部接続路40の各深さや容積は、相互に或いは触媒収容部24やレンズ収容部26等と相対的に調節されることにより、相互領域間での液体流動効率を調節したり、触媒収容部24における過酸化水素水の分解効率を調節したりすることが出来ることから、本実施形態の態様に限定されるものでない。そして、隣接連通溝34及び並設連通溝38の幅及び深さは、レンズ収容部26に収容されたコンタクトレンズの触媒収容部24や並設連通溝38への移動を制限し得るように設定されている。即ち、本実施形態では、レンズ収容部26と触媒収容部24とを仕切る隔壁部32と隣接連通溝34とを含んで、通路狭窄手段が構成されており、過酸化水素水44の流動は許容する一方、コンタクトレンズの触媒収容部24への移動や、金属触媒14のレンズ収容部26への移動が制限されている。なお、通路狭窄手段の構成はコンタクトレンズ及び金属触媒14の移動を阻止し得るものであれば、通路幅や通路深さを小さく制限することに特に限定されず、例えば、網状や格子状の柵を別途に設けてコンタクトレンズや金属触媒14の移動を阻止するようにしても良い。
【0039】
さらに、並設連通溝38は、触媒収容部24及びレンズ収容部26,26に対して、何れも連通されており、またこれら触媒収容部24及びレンズ収容部26,26は、並設連通溝38を介して、相互に連通されている。そして、触媒収容部24及びレンズ収容部26,26が、隣接連通溝34や並設連通溝38と端部接続路40,40及び中央接続路42とで相互に連通されていることにより、触媒収容部24及びレンズ収容部26,26が単に直列的に連通されているだけでなく、相互に循環流路を構成するように連通接続されている。即ち、かかる循環流路は、「触媒収容部24→隣接連通溝34(左)→レンズ収容部26(左)→端部接続路40(左)→並設連通溝38→端部接続路40(右)→レンズ収容部26(右)→隣接連通溝34(右)→触媒収容部24」や「触媒収容部24→隣接連通溝34(左)→レンズ収容部26(左)→端部接続路40(左)→並設連通溝38→中央接続路42→触媒収容部24」等として構成されている。
【0040】
そして、コンタクトレンズの殺菌処理に際して、上記の触媒収容部24やレンズ収容部26,26には、過酸化水素水44(図5,6参照)が注入されて貯留されるようになっている。なお、注入される過酸化水素水44としては、コンタクトレンズ殺菌用に市販されている3%溶液等が好適に用いられる。かかる過酸化水素水44は、触媒収容部24やレンズ収容部26,26だけでなく、隣接連通溝34や並設連通溝38,端部接続路40,40及び中央接続路42の全てに行き渡るように、それらの何れの底面よりも高い水面位置に至る量だけが注入されて貯留される。そして、これらの触媒収容部24やレンズ収容部26,26が、隣接連通溝34や並設連通溝38,端部接続路40,40及び中央接続路42により連通されて循環流路を構成していることにより、触媒収容部24やレンズ収容部26,26に貯留される過酸化水素水44が相互に流通し得るようになっている。
【0041】
一方、前述の図2に示された蓋体12は、図7〜9にも示されているように、ケース本体10に対応したカバー形状を有している。即ち、楕円形の上底部46とその外周縁部から下方に延び出す周壁部48とを備えており、下方に開口する逆皿状の中空体とされている。なお、蓋体12は、ケース本体10と同様、好適には合成樹脂材料の一体成形品とされるが、ケース本体10より薄肉にすることも出来、樹脂材料の射出成形の他、例えば樹脂フィルムを材料とした加熱プレス等で成形することも出来る。特に好適には、蓋体12は、ケース本体10に被せられた状態でもケース本体10の触媒収容部24やレンズ収容部26,26を外部から視認できるように、少なくとも触媒収容部24を覆う部分が、より好適にはレンズ収容部26,26を覆う部分までもが、透明とされる。
【0042】
蓋体12は、ケース本体10に比して、蓋体12の略肉厚寸法分だけ一回り大きなサイズとされている。そして、図8に仮想線でケース本体10が併せ示されているように、ケース本体10の凸側面に対して蓋体12の凹側面が重なり合うようにして、蓋体12がケース本体10に被せられて、取り外し可能に装着されるようになっている。これにより、ケース本体10に形成された触媒収容部24及びレンズ収容部26,26が何れも蓋体12により覆われるようになっている。
【0043】
なお、蓋体12は、その周壁部48がケース本体10の周壁部20に外嵌されることでケース本体10への装着状態に保持されるようになっているが、蓋体12のケース本体10からの予期しない離脱を防止するために両周壁部48,20間に凹凸係止部等を設けても良い。また、蓋体12には、周壁部48の下端周縁部の一部から外周側に向かって広がる三日月状の摘み片50が形成されている。そして、ケース本体10に被せられた蓋体12の摘み片50を手指で摘むことで、ケース本体10から蓋体12を容易に取り外すことが出来るようになっている。なお、蓋体12がケース本体10に被せられた状態において、蓋体12とケース本体10との間にはガス排出路としての微小な隙間が形成されるようになっており、この隙間を通じて、過酸化水素水44の分解に伴って発生する酸素ガスを排出できるようになっている。
【0044】
また、蓋体12の上底部46には、略中央に触媒蓋部52が形成されていると共に、上底部46の長軸方向で触媒蓋部52を挟んだ両側に内方凸部としての一対のレンズ蓋部54,54が形成されている。触媒蓋部52は、上底部46の外面側に膨らんだ凸ドーム形状とされている。レンズ蓋部54,54は、何れも、上底部46の内面側に膨らんだ凹ドーム形状とされている。また、これらの触媒蓋部52及びレンズ蓋部54,54は何れも透明とされており、触媒収容部24に収容された金属触媒14の変位状況や、レンズ収容部26,26に収容されたコンタクトレンズの状況が外部から確認出来るようになっている。
【0045】
そして、蓋体12がケース本体10に被せられて組み付けられることにより、ケース本体10の触媒収容部24と一対のレンズ収容部26,26の各開口部に、蓋体12の触媒蓋部52と一対のレンズ蓋部54,54が位置して、それら各開口部を覆うようになっている。その状態で、触媒収容部24の開口部上には、外方に突出した触媒蓋部52で覆われたカバー空間56が形成されている。また、各レンズ収容部26には、内方に突出したレンズ蓋部54が入り込んでおり、このレンズ蓋部54の中央部分が、レンズ収容部26に注入される過酸化水素水44の水面から内部にまで押し入れられるようになっている。
【0046】
また、蓋体12のレンズ蓋部54,54は、その凸面又は凹面が、レンズ仮置部とされている。好適には、凸面や凹面の曲率が、コンタクトレンズの凹面や凸面の一般的な曲率に近い値に設定されている。これにより、蓋体12をケース本体10から取り外して、テーブル等の平坦な水平支持面に載置した状態で、上側に面したレンズ蓋部54の凸面又は凹面に対して、コンタクトレンズ使用者が取り外したコンタクトレンズを、殺菌処理前或いは殺菌処理後に一時的に載置しておくことが出来るようになっている。なお、レンズ蓋部54の凸面をレンズ仮置部とするには、蓋体12を反転させて上方に開口する状態でテーブル等に置くようにする。反対に、蓋体12を反転させずに下方に開口する状態でテーブル等に置くと、レンズ蓋部54の凹面をレンズ仮置部として利用できる。
【0047】
さらに、前述の図3に示された金属触媒14は、図10〜11にも拡大して示されているように、適当に造形されたブロック形状とされている。特に、本実施形態では、看者の興味をひくことを期待してイルカに似せた外形状とされている。
【0048】
この、金属触媒14は、ケース本体10の触媒収容部24に入り込んで、触媒収容部24内で変位可能な大きさとされている。特に、金属触媒14の高さ寸法は、触媒収容部24の深さ寸法よりも小さくされている。より好適には、触媒収容部24に注入される過酸化水素水44の水深よりも小さな高さ寸法とされて、過酸化水素水44中に完全に水没可能な大きさとされている。
【0049】
更にまた、金属触媒14には、外周縁部から直線状に延びる支持ロッド60が設けられている。特に本実施形態では、イルカに似せた長手状の外形を有する金属触媒14において、イルカの尻尾に相当する長さ方向一方の端部からイルカの幅方向両側に向かって突出する態様で支持ロッド60が一体形成されている。要するに、支持ロッド60の長さ方向中央部分から軸直角方向に突出するようにして金属触媒14が設けられている。
【0050】
そして、図12〜13に示されているように、支持ロッド60がケース本体10の並設連通溝38に収容されていると共に、金属触媒14が、ケース本体10の中央接続路42から触媒収容部24内に延び出して収容されている。また、支持ロッド60は、ケース本体10の並設連通溝38の底部に収容されており、並設連通溝38の対向壁面に突設された保持突起62,62の支持ロッド60に対する係合作用により、支持ロッド60の並設連通溝38からの抜け出しが阻止されている。しかも、支持ロッド60は、並設連通溝38への収容状態下で中心軸回りの回動が容易に許容されるようになっており、この支持ロッド60の回動に伴って、金属触媒14が、触媒収容部24内において浮上/沈下方向の変位を容易に許容されるようになっている。
【0051】
なお、このことから明らかなように、本実施形態では、金属触媒14に形成された支持ロッド60によってケース本体10への係合部が構成されていると共に、ケース本体10の並設連通溝38とその対向壁面に突設された保持突起62,62とによって、該支持ロッド60を係合及び保持せしめる保持部が構成されている。これら支持ロッド60と保持突起62,62との係合作用により、触媒収容部24での金属触媒14の浮上/沈下方向の変位を許容しつつ、金属触媒14のケース本体10からの不必要な離脱を防止する保留手段が構成されている。これにより、殺菌処理の終了後の触媒収容部24からの過酸化水素水44の排出時やケース本体10の洗浄時等においても、金属触媒14が触媒収容部24に留め置かれるようになっている。
【0052】
また、金属触媒14は、過酸化水素水44中に浸漬された際に液(過酸化水素水)44に触れる表面の少なくとも一部が、過酸化水素水44の分解に対して触媒作用を発揮する金属材料で形成されている。これにより、金属触媒14は過酸化水素水44の分解反応に触媒作用を発揮する金属触媒とされている。かかる金属材料は、公知のものが何れも採用可能であるが、複数回のコンタクトレンズ殺菌処理に際して安定した触媒作用を発揮し得る金属が好適に採用される。具体的に例示すると、白金、銀、パラジウム、銅、マンガン、コバルト、アルミニウムの群からなる金属及びこれらの金属酸化物の少なくとも一種が、金属触媒14の金属材料として採用される。
【0053】
なお、金属触媒14は、全体が上述の金属触媒材料で形成されている必要はない。例えば、金属触媒14において過酸化水素水44に触れない内部や過酸化水素水44に触れる表面の一部等を、触媒作用を発揮しない材料で形成することが可能であり、それによって、金属触媒14の質量(M)を調節したり、形状等の成形自由度を大きくすること等が出来る。具体的に例示すると、上述の如き触媒材料と複合的に用いられて金属触媒14を形成する、触媒作用を発揮しない材料として、プラスチック、金属、ガラス、セラミックの少なくとも一種を用いることが可能であり、更にかかるプラスチックとしては、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリウレタン、変成ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルイミド、ポリサルホン、ポリメチルメタクリレート及びこれらの共重合樹脂からなる群より選択される少なくとも一種が、好適に採用される。
【0054】
特に、複合構造の金属触媒14としては、例えば上述の如き触媒作用を発揮しない材料で適当な形状(例えば、図示されたイルカ形状)に成形した基材64を用い、この基材64の表面に対して、前述の触媒作用を発揮する金属からなる金属皮膜としての触媒層66を付着形成したものが、用いられる。なお、かかる触媒層66は、メッキやスパッタリング等の公知の薄膜形成技術で、基材64の表面を適当な膜厚をもって覆うように形成することが出来る。
【0055】
また、金属触媒14は、過酸化水素水中で作用する浮力(F)を適当に設定されて、触媒収容部24内で過酸化水素水44に浸漬された状態で、過酸化水素水44の中和(分解反応)の進行に伴って浮上/沈下方向に変位するようになっている。好適には、金属触媒14の質量(M)と過酸化水素水中で金属触媒14に作用する浮力(F)との比であるM/Fの値が1より大きく2以下となるように設定される。なお、かかる浮力(F)は、触媒本体部58の単体に作用する力であり、例えば過酸化水素水44の分解反応に伴って発生する酸素ガス(気泡)によって金属触媒14に及ぼされる外力は含まない。
【0056】
ところで、この浮力(F)の調節は、種々の方策で実現される。例えば基材64の材料を、適当な比重のものに選択変更することによって浮力を調節できる。特に好適には、比重が1より大きく3以下の材料が、基材64に用いられる。
【0057】
また、金属触媒14を、内部に空所を設けた中空構造とすることで浮力を調節することも出来る。空所は、例えばブロー成形や消失中子成形等で適当な位置に任意の数だけ形成され得るが、独立気泡を有する発泡成形でフォーム構造としても良い。
【0058】
なお、金属触媒14と一体的に形成された支持ロッド60は、材料や質量が特に限定されるものでない。尤も、耐蝕性や成形性、強度等を考慮して、金属触媒14と同じ材料で成形されることが望ましい。また、支持ロッド60も、並設連通溝38内で過酸化水素水44に浸漬されることから、少なくとも表面に触媒作用を発揮する材料を用いることで、金属触媒14と協働して、過酸化水素水44の中和速度を調節することが可能である。その際、支持ロッド60の表面に複数の凹凸を形成することで、表面積ひいては触媒作用の調節自由度をより大きくすることもできる。更にまた、支持ロッド60は、前述のとおり回動変位に基づいて、金属触媒14の浮上/沈下方向での変位を許容するものであることから、例えば外周面上に突出して周方向に延びるリング状突部を軸方向に適当な間隔で複数形成して、支持ロッド60の並設連通溝38内面への接触面積ひいては回動抵抗を軽減しても良い。
【0059】
そして、金属触媒14が過酸化水素水44に浸漬されると、表面の触媒層66の触媒作用で過酸化水素水44の分解が開始されるのに伴って、酸素ガスが発生し、それが気泡として過酸化水素水44の液面から外部に放出するまでの間に金属触媒14に接触することで、金属触媒14に対して、外力としての浮力が及ぼされる。この酸素ガス浮力を利用することにより、金属触媒14が、過酸化水素水44中で、過酸化水素の分解反応の進行の程度に応じて変位せしめられるようになっている。
【0060】
また、本実施形態では、金属触媒14の表面には複数の凹状部や凸状部が形成されており、それらの凹状部や凸状部によって頭部や胴部、尾部、背部、腹部、口部、胸びれ、背びれ、尾びれ等が形作られて全体としてイルカ状の外形とされている。特に、金属触媒14の腹部を含む底面には、略全体に亘って広がって下方に開口する浅底凹形のくぼみ68が凹状部として形成されている。そして、これらの凹状部や凸状部を備えていることにより、金属触媒14は充分な表面積を有しており、触媒層66による触媒反応が適切に行われるようになっている。なお、望ましくは、金属触媒14の表面積は過酸化水素水44の10mlあたり3〜30cm2 とされる。また、金属触媒14の中央近くには、上下方向で直線状に貫通する排出路70が形成されており、この排出路70の下端がくぼみ68の中央近くに開口している。なお、これらくぼみ68及び排出路70は、その数や形状が図示のものに限定されることなく、任意に設定され得る。
【0061】
そして、金属触媒14が過酸化水素水44に浸漬された際、過酸化水素水44の分解反応で発生した酸素ガスが、くぼみ68に貯留されることで、酸素ガスの浮力が金属触媒14に対する外力として一層効果的に作用するようになっている。なお、このくぼみ68に貯留する酸素ガスで金属触媒14に作用する浮力は、くぼみ68の容積や位置(特に、浮上/沈下方向への揺動変位の中心軸となる支持ロッド60からの離隔距離)を設定変更することで調節できる。また、余剰の酸素ガスは、くぼみ68の周壁を乗り越えて金属触媒14の外周から上方に放出される。
【0062】
過酸化水素水44の分解反応が略終了して中和されると酸素ガスの発生が止まるが、その際にもくぼみ68に酸素ガスが貯留する限り該酸素ガスによる浮力が金属触媒14に作用し続ける。一方、くぼみ68に貯留した酸素ガスは、排出路70を通じて、所定の制限下で外部に排出され続ける。
【0063】
好適には、この排出路70を通じての酸素ガスのくぼみ68からの単位時間当たりの排出量は、過酸化水素水44の分解反応時におけるくぼみ68への単位時間当たりの酸素ガス流入量よりも小さく設定される。これにより、過酸化水素水44の分解反応による中和処理が完了するのと略同時に、或いはそれよりも遅れて、くぼみ68における酸素ガス貯留量が金属触媒14を浮上させるに必要な量に満たなくなるようにすることで、過酸化水素水44の分解反応中は金属触媒14が浮上状態に維持される一方、過酸化水素水44の中和が略完了した際には浮力が消失して金属触媒14が沈下するように出来る。なお、排出路70を通じての単位時間当たりの酸素ガスの排出量は、排出路70を通じての酸素ガスの排出抵抗を変更することで調節できる。具体的には、例えば、排出路70の断面積や断面形状を変更したり、排出路70の表面における疎水性や親水性の程度等の物性を変更すること等によって調節可能である。
【0064】
上述の如き構造とされたコンタクトレンズ殺菌用ケース16を用いてコンタクトレンズを殺菌処理するには、次のような方法が行われる。先ず、コンタクトレンズ使用者(ユーザー)が蓋体12を取り外したケース本体10をテーブル等に載置し、その触媒収容部24やレンズ収容部26,26等を含んで形成される液収容部に対して、予め準備したレンズ殺菌用の過酸化水素水44を注入して貯留する。
【0065】
また、かかる過酸化水素水44の注入の前或いは後に、金属触媒14をケース本体10セットする。このセット作業により、金属触媒14に形成された支持ロッド60をケース本体10の並設連通溝38に入れて最深部に位置決めすることで、金属触媒14を触媒収容部24内に配置する。これにより、金属触媒14は、触媒収容部24内部に貯留される過酸化水素水44と接触せしめられることとなる。
【0066】
さらに、ケース本体10に対する過酸化水素水44や金属触媒14の注入やセットの前或いは後に、ユーザーが右眼及び左眼からそれぞれコンタクトレンズを取り外して、外したコンタクトレンズをケース本体10のレンズ収容部26に収容する。
【0067】
なお、レンズ収容部26に過酸化水素水44を注入した後に、ユーザーがコンタクトレンズを外してレンズ収容部26に入れる場合には、外したコンタクトレンズを、レンズ収容部26に入れる前に、ケース本体10から取り外してテーブル等に載置した蓋体12におけるレンズ仮置部としてのレンズ蓋部54の凸面又は凹面に一時的に載置しておくのが良い。即ち、左右一方のコンタクトレンズを外して一方のレンズ収容部26に入れた後、続いて他方のコンタクトレンズを外して他方のレンズ収容部26に入れると、先に外したコンタクトレンズをレンズ収容部26に入れる際に、レンズ収容部26に注入された過酸化水素水44が手指に触れる。それ故、他方のコンタクトレンズを外す際、手指に付着した過酸化水素水44がユーザーの眼に触れて刺激等の不具合を与えるおそれがある。従って、上述のように、蓋体12のレンズ蓋部54の凸面又は凹面を利用して、両眼のコンタクトレンズを外して一時的に載置した後、両眼のコンタクトレンズを二つのレンズ収容部26,26に順次に入れることにより、たとえコンタクトレンズをレンズ収容部26に入れる際に過酸化水素水44が手指に触れても、それが眼に入ることを避けることが出来て、好適である。
【0068】
その後、ケース本体10に蓋体12を被せて組み付けることにより、コンタクトレンズの殺菌処理が開始される。
【0069】
すなわち、レンズ収容部26,26の内部に収容された右眼コンタクトレンズ及び左眼コンタクトレンズが過酸化水素水44に浸漬されていることにより、コンタクトレンズが所定時間に亘って殺菌処理される。また、金属触媒14が過酸化水素水44に浸漬されていることにより、過酸化水素水44の分解反応が進行して酸素ガスが発生する。そして、殺菌処理の開始初期には、図12に示されているように、ケース本体10の触媒収容部24において、過酸化水素水44の液中に入れられた金属触媒14が、それ自体の浮力と発生する酸素ガスで及ぼされる浮力(外力)とによって上方へ変位し、浮上する。好適には、図示されているように、金属触媒14の上側部分が液面上に突出して露出される。なお、蓋体12がケース本体10に被せられていても、触媒収容部24を覆う触媒蓋部52が中空の凸ドーム形状で外方に膨らんでいることから、触媒収容部24の上方には、金属触媒14の浮上突出を許容するに充分な内部空間が形成されている。
【0070】
かかる状態で過酸化水素水44によるコンタクトレンズの殺菌処理と共に、触媒作用による過酸化水素水44の分解反応が進行する。この際、ケース本体10のレンズ収容部26,26には、蓋体12のレンズ蓋部54が入り込み、過酸化水素水44の中にまで押し入れられた状態に維持される。これにより、レンズ収容部26に収容されたコンタクトレンズがレンズ蓋部54で液中に押し込まれて、過酸化水素水44に対して完全に埋没され、目的とする殺菌処理が安定して施されるようになっている。併せて、レンズ収容部26,26に注入された過酸化水素水44が、レンズ蓋部54,54が液中に押し込まれた容積分だけ、レンズ収容部26,26から流出される。この過酸化水素水44の流出は、他の液収容部の液面上昇を生ぜしめることとなり、触媒収容部24の液面が上昇する。これにより、たとえ過酸化水素水44の液収容部への注入量が少なくても、触媒収容部24の液面レベルが確保されて、過酸化水素水44の金属触媒14への接触が確保され、金属触媒14の浮上作動や分解反応が実現され得る。
【0071】
そして、所定時間の殺菌処理が行われて、過酸化水素水44の分解反応が終了すると、酸素ガスが発生しなくなって酸素ガスによって金属触媒14に及ぼされていた浮力が消失する。その結果、図13に示されているように、金属触媒14は、沈む。特に、金属触媒14は、触媒収容部24の底面に接して載置され、過酸化水素水44の液面から露出しないで完全に埋没した状態となる。即ち、本実施形態では、過酸化水素水44の分解中は酸素ガスによる浮力の作用により金属触媒14が上方に変位せしめられて浮上する一方、分解反応が停止すると、浮力の消失により金属触媒14の浮上状態が解消されて、金属触媒14は沈下する。そして、コンタクトレンズの使用者は、殺菌処理の開始後所定時間が経過した後、金属触媒14が触媒収容部24の底面に沈んでいることを目視により確認することで、過酸化水素水44の分解反応が完了していることを容易に確認することができるのである。これにより使用者は、過酸化水素水44の分解が完了して完全に水となっていることを確認した後、液中から殺菌済みのコンタクトレンズを安全に取り出すことが出来る。
【0072】
このように、使用者は、コンタクトレンズの殺菌開始時には、金属触媒14の周囲から気泡(酸素ガス)が発生していることに加えて、金属触媒14が浮上して一部が液面から突出していることを視認することで、間違いなく過酸化水素水44を注入して、殺菌処理が正常に開始されていることを確認することが出来る。特に、イルカを模した金属触媒14が液面から浮上していることを見ることは、使用者の興味を惹いて楽しみを与えるものであることから、使用者が積極的に確認を行うことが期待できるし、更に、定期的なコンタクトレンズの殺菌処理を使用者の自発的意志をもって促すことも期待できる。その結果、汚染されたコンタクトレンズを装着することに起因する眼症の発生を防止して、良好なコンタクトレンズの使用を促進することにもつながる。
【0073】
また、触媒収容部24がレンズ収容部26,26と別の場所に形成されていることから、触媒収容部24の容積ひいては金属触媒14の表面積を充分に確保して目的とする触媒作用を効果的に得ることが出来る。しかも、触媒収容部24の開口部をレンズ収容部26,26の開口部と別に形成したことで、レンズ収容部26,26に対するコンタクトレンズの出し入れ作業性を損なうことなく、過酸化水素水44中での金属触媒14の浮上/沈下の確認を容易とすると共に、浮上時には触媒の一部を液面上に突出させてその確認を一層容易と為し得た。
【0074】
加えて、互いに独立開口させた触媒収容部24及びレンズ収容部26,26も、隣接連通溝34,34や並設連通溝38等により相互に連通されており、しかも、単に流路両端がある直列的な連通でなく、流路端がない循環流路が形成されていることから、触媒収容部24に収容された金属触媒14による過酸化水素水44の分解反応が、レンズ収容部26,26にまで及び易い。それ故、触媒収容部24及びレンズ収容部26,26を含む液収容部内の過酸化水素水44の全体に対して、より均質な中和化が進行され得て、目的とするコンタクトレンズの殺菌効果や中和完了までの必要時間の安定化等も図られ得る。
【0075】
さらに、過酸化水素水44の分解反応の進行に伴って発生する酸素ガスの量が変化したり、発生する酸素ガスの位置が変化することによって、金属触媒14に及ぼされる浮力が変化する。この浮力の変化に伴って、金属触媒14が過酸化水素水44中で変位して、過酸化水素水44が攪拌及び流動されることから、上述の如き触媒収容部24及びレンズ収容部26,26を含む液収容部内の過酸化水素水44の均質化が一層効果的に達成され得る。
【0076】
また、一対のレンズ収容部26,26は、各連通溝34,38や接続路40,42で相互に連通されていることに加えて、何れも共通凹部36の底面に開口されていることから、一方のレンズ収容部26に手指を入れてコンタクトレンズを取り出す際にも、当該レンズ収容部26から押し出される液は、他方のレンズ収容部等の他の領域に速やかに移動され得る。それ故、手指を入れたレンズ収容部26から押し出された液が、共通凹部36から外部に溢れることが、効果的に防止される。
【0077】
次に、図14には、本発明の第二の実施形態としてのコンタクトレンズ殺菌用ケースを構成するケース本体80が示されている。
【0078】
かかるケース本体80は、図15〜18にも示されているように、長方形状の上底部82とその外周縁部から下方に延び出す周壁部84とを備えており、下方に開口する逆皿状の中空体とされている。なお、周壁部84の高さが、手前側長辺部分よりも奥側長辺部分が高くされており、それによって、上底部82が、奥方から手前側に向かって次第に下方に向かって傾斜した斜面とされている。そして、高さの低い手前側(図15の下側)から、コンタクトレンズユーザーが作業するようになっている。
【0079】
また、ケース本体80には、上底部82の中央部分で上方に開口する凹状の液収容部86が形成されている。この液収容部86は、平面視でオーバル形状(長円形状)を有しており、底面88は、水平に広がる平坦面とされている。なお、液収容部86の周壁内面には、開口側近くの深さ方向中間部分を周方向の全周に亘って連続して延びる段差90が形成されており、この段差90より上側(開口側)が拡開されている。
【0080】
また、液収容部86の一方の長辺部(奥方の長辺部)の中央部分には、半周以上が外方に突出するようにして円形で深さ方向に延びる触媒収容部92が形成されている。この触媒収容部92は、液収容部86の長辺部に交わる半周以下の部分に形成された連通窓94を通じて、液収容部86に連通されている。
【0081】
更にまた、液収容部86の底面88には、長手方向(図15の左右方向)の中央部分で、互いに背を向け合うようにして、一対の円弧状突部96,96が突出形成されている。この円弧状突部96は、オーバル形状とされた液収容部86の両端の半円周部分と略同じ曲率で、半円周部分を延長した円周上に略位置している。そして、これら一対の円弧状突部96,96は、液収容部86の長手方向両端の半円周部分と協働して、該液収容部86の長手方向の両側部分において左右一対の略円形のレンズ収容部98,98を形成している。
【0082】
なお、各円弧状突部96の周方向両端は、液収容部86の周壁から離隔しており、周壁との対向面間にそれぞれ連通溝100が形成されている。また、円弧状突部96の突出高さは、液収容部86の深さよりも小さくされており、段差90と略同じ高さか、段差90に僅かに至らない高さとされている。
【0083】
また、液収容部86の長さ方向中央部分には、一対の円弧状突部96,96間において中央連通領域102が形成されている。そして、この中央連通領域102は、各円弧状突部96の周方向両側に形成された連通溝100を通じて、左右一対のレンズ収容部98,98に接続されていると共に、液収容部86の周壁に形成された連通窓94を通じて、触媒収容部92に接続されている。要するに、一対のレンズ収容部98,98は、中央連通領域102を介して、相互に連通されていると共に、触媒収容部92にも連通されているのである。
【0084】
そして、液収容部86に過酸化水素水が注入されることにより、一対のレンズ収容部98,98や触媒収容部92にも過酸化水素水が貯留されるようになっている。なお、過酸化水素水の注入量は、その液面が円弧状突部96の頂部と略同じか僅かに至らないように調節されることが望ましい。また、本実施形態では、液収容部86において、段差90よりも上方の拡開された開口部分によって、一対のレンズ収容部98,98が共に開口される共通凹部104が構成されている。
【0085】
さらに、触媒収容部92には、図19に示されている如き金属触媒106が収容配置されている。この金属触媒106は、第一の実施形態の金属触媒14と同様に、単一又は複数の材料からなる金属触媒で形成されていても良いし、適当な基材の表面に金属触媒層が付着された複合材料で形成されていても良い。また、内部に空所を形成して浮力を調節したり、凹状部や凸状部を形成して表面積や作用浮力を調節しても良い。要するに、触媒収容部92に収容されて過酸化水素水中に投入されることにより、過酸化水素水に触れる表面の少なくとも一部に触媒作用を有する部分があれば良く、且つ、触媒収容部92内での変位が許容されて適当な浮力で変位が生ぜしめられるものであれば良い。
【0086】
具体的には、図19に示される如き触媒収容部92の内径寸法よりも小さな外形寸法を有する円板形状の金属触媒106の他に、例えば、図20に示される如きタイヤ形状の金属触媒107等が採用可能である。なお、金属触媒106, 107の外径寸法は、連通窓94の開口幅よりも大きくされて、触媒収容部92からの不必要な流出が防止されるようになっている。また、かかる金属触媒106, 107は、厚さ寸法が、触媒収容部92における過酸化水素水の液深さよりも小さくされており、触媒収容部92の液中で深さ方向に浮上/沈下変位可能とされている。
【0087】
このような構造とされた本実施形態のコンタクトレンズ殺菌用ケースにおいても、第一の実施形態と同様に、ケース本体80の液収容部86に過酸化水素水を注入貯留すると共に、触媒収容部92に金属触媒106を投入し、一対のレンズ収容部98,98にコンタクトレンズを入れることで、コンタクトレンズに殺菌処理を施すことが出来る。なお、第一の実施形態と同様に、ケース本体80の表面形状に対応した蓋部材を準備して、殺菌処理中のケース本体80の触媒収容部92やレンズ収容部98,98の開口を覆っても良い。
【0088】
そして、かかる殺菌処理の開始に際しては、金属触媒106自体の浮力と発生する酸素ガスで及ぼされる浮力(外力)との作用に基づいて、金属触媒106が、過酸化水素水中で浮上する。一方、所定時間のレンズ殺菌処理が完了して過酸化水素水が中和することで酸素ガスの浮力(外力)が消失すると、金属触媒106は、過酸化水素水中で沈下する。
【0089】
なお、浮上時には金属触媒106の一部が液上に突出し、沈下時には金属触媒106が触媒収容部92の底面に接することが望ましいが、それに限定されるものでなく、液中で金属触媒106の上下方向での浮上/沈下の変位があれば良い。また、本実施形態では、金属触媒106の液中での浮上/沈下の変位を外部から目視容易とするために、ケース本体80において、少なくとも触媒収容部92の外側周壁部分を透明とすることが望ましい。
【0090】
特に、図19や図20に示されている如き円形板形状のものは、(図示はされていないが)中心軸上で一方の側に突出する軸状部を一体形成することが望ましく、この軸状部を形成することで、液中で軸状部が下方に垂れ下がって円板板上部が略水平方向に向く状態に略安定して保持させ、反転や縦向き等の不安定な変位を防止することが可能となる。
【0091】
また、図19や図20に示されている如き円形板形状のものは、浮上や沈下の変位だけでなく、過酸化水素水の分解反応による酸素ガスの発生位置に応じて揺動や回転の変位を生じ易い。そして、これら揺動や回転の変位により、過酸化水素水に対する攪拌作用が一層効果的に発揮され得る。
【0092】
なお、本実施形態のケース本体80には、図21〜22に示された回転変位形の金属触媒108を採用することも可能である。この金属触媒108は、スクリュやプロペラに似た形状を有しており、中央ボス部110から放射状に複数の羽根112が突設されている。羽根112の先端径は、触媒収容部92の内径よりも小さくされている。また、金属触媒108の各羽根112には、周方向に所定の傾斜角(スクリュ角度やプロペラ角度に相当する傾斜角)が設定されている。
【0093】
そして、図22に示されているように、触媒収容部92の底壁から上方に突設された支軸114によって、中央ボス部110が支持されることにより、金属触媒108が、触媒収容部92内において、鉛直方向に延びる中心軸回りで回転可能に支持されている。なお、本実施形態の触媒108は、過酸化水素水の分解反応で酸素ガスが作用した状態でも、その浮力に抗して沈下して支軸114での支持状態に維持されるように、質量が調節されている。
【0094】
このような金属触媒108は、触媒収容部92内で過酸化水素水中に配されることにより、羽根112に作用する酸素ガスの浮力(外力)の作用に基づいて、回転変位せしめられる。それ故、前述の如きコンタクトレンズの殺菌処理の開始当初では、金属触媒108が比較的勢い良く回ることとなり、所定時間の殺菌処理が完了して過酸化水素水が中和されると回転力が消失して回転停止する。
【0095】
従って、金属触媒108の回転変位の発生と停止を見ることによって、使用者は、前述の浮上/沈下変位する金属触媒106と同様に、コンタクトレンズの殺菌処理の状況を確認することが出来るのである。
【0096】
なお、このような回転形の金属触媒108では、浮上/沈下形の金属触媒106を採用する場合に比して、触媒自体の浮力の調節に高精度が要求されることがないから、材質等の選定自由度が大きく、浮力の精度に起因する作動不良の問題も回避されるという利点がある。
【0097】
また、回転形の触媒の他の実施形態が、図23に示されている。本実施形態の金属触媒120は、リング形状又は円筒形状を有しており、図示しないケース本体に対して、その中心軸周りで周方向に回転可能に装着される。なお、図23において、122は支軸部材であり、図示しないケース本体に固定される固定軸部124を備えており、この支軸部材122に対して、円環形状の金属触媒120が回転可能に外挿されて装着されている。そして、この金属触媒120は、例えば第一実施形態のケース本体10の並設連通溝38に対して固定軸部124が嵌め入れられて固定され、支軸部材122が触媒収容部24内を水平方向に延びるように装着される。かかる状態下、支軸部材122で回転可能に支持された金属触媒120が、触媒収容部24内で過酸化水素水44に浸漬されて回転可能に配置されることとなる。勿論、この金属触媒120でも、支軸部材122の外径寸法に比して金属触媒120の内径寸法を充分に大きく設定する等して過酸化水素水中での浮上/沈下の変位も許容するようにしても良い。
【0098】
また、図23に示された回転形の金属触媒120において、その回転変位を一層効率的に生ぜしめるために、発生する酸素気泡を捕捉して、捕捉した酸素気泡の浮力を、金属触媒120に対する一方向の回転力として及ぼす気泡捕捉部を設けることが望ましい。具体的には、この気泡捕捉部は、金属触媒120において周方向一方の側に開口する凹所として好適に形成される。例えば、図24に示されているように、金属触媒120の軸方向一方又は両方の端面において、回転方向一方向に開口する「く」字状や「コ」字状の突起からなる気泡捕捉部126の他、金属触媒120の外周面上において周方向一方の側に向かって傾斜して突出するプレート状の気泡捕捉部など、一般に水車等の駆動力発生機構に準じた構造が適宜に採用可能である。
【0099】
なお、回転形の金属触媒120は、図23に示された円環形状に限定されるものでなく、例えば意匠的効果を考慮したり、酸素気泡の浮力に基づく回転力の作用効率を考慮する等の目的で、星形やプロペラ形、花弁形、歯車形などの各種の形状が選択され得る。
【0100】
さらに、ケース本体と蓋体は、屈曲可能なヒンジ部を介して相互に連結されていても良い。その場合に、互いに別体形成したケース本体と蓋体をヒンジ等で連結する他、薄肉の屈曲部で連結された状態で一体成形することも可能である。具体的には、本発明の第三の実施形態として図25〜26に示されているように、例えばポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン等の合成樹脂製のフィルム材を用いて、プレス成形により、ケース本体130と蓋体132を一体的に備えた構造とすることが出来る。即ち、これらケース本体130と蓋体132には、外周縁部に所定長さで延びる直線部分が形成されており、かかる直線部分において屈曲可能に相互に一体連結されている。そして、この連結部134が折り曲げられることにより、蓋体132がケース本体130に対して屈曲されて重ね合わされる。これにより、液収容部86が開口するケース本体130の上面に蓋体132が重ね合わされて、液収容部86が覆蓋されるようになっている。なお、かかる連結部134での屈曲操作性を向上させるために、例えばミシン目状の不連続な切込みを入れることも有効である。また、図25〜26では、その理解を容易とするために、第二の実施形態と同様な構造とされた部材及び部位に対して、それぞれ、第二の実施形態と同一の符号を付しておく。
【0101】
次に、図27〜28には、本発明の第四の実施形態としてのコンタクトレンズ殺菌用ケース140が示されている。かかるコンタクトレンズ殺菌用ケース140は、横長の略矩形ブロック形状とされたケース本体142に対して、その上面に開口する左右一対のレンズ収容部144,144が形成されている。なお、図示はされていないが、ケース本体142に上方から被せられて着脱可能に装着される蓋体が別途に設けられる。この蓋体がケース本体142の上面および外周面に重ね合わされることにより、一対のレンズ収容部144,144が覆われる。
【0102】
上記ケース本体142は、下方に開口する中空構造とされており、全体に所定厚さの一体樹脂成形品にて構成されている。なお、周壁146の下端開口周縁部には、外周面上に突出する鍔状部148が一体形成されており、この下端面においてテーブル等の略水平な支持面上に載置されて使用されるようになっている。
【0103】
また、ケース本体142の上壁150には、左右両側部分において、それぞれ、上方に向かって開口する略半球状の凹所152が形成されており、これら一対の凹所152によって液収容部が構成されている。更に、各凹所152には、籠状柵体154が収容状態で組み付けられている。この籠状柵体154は、例えば合成樹脂材の成形品にて構成されており、下方に向かって凹となる浅底の籠又はざる状構造とされている。即ち、複数の骨格が相互連結されることによって骨格間に隙間が形成された多孔構造とされている。特に本実施形態では、径方向に略放射状に延びる骨格と周方向に環状に延びる骨格が一体的に連結された多孔構造体とされており、その球状凹面の曲率半径が、コンタクトレンズ155の凸側の曲率半径よりも大きくされている。
【0104】
この籠状柵体154は、下方に向かって凸となる状態でケース本体142の凹所152に収容されており、籠状柵体154の外周部分がケース本体142の凹所152の内周壁面で支持されることにより、凹所152の深さ方向中間部分に籠状柵体154が配設支持されている。なお、ケース本体142の凹所152の内面には、深さ方向中間部分で内方に突出する柵体支持突起156が形成されており、この柵体支持突起156で籠状柵体154の外周部分が係止されて位置決め支持され、必要に応じて固着されることにより、籠状柵体154が凹所152内の所定位置に固定的に組み付けられている。
【0105】
そして、ケース本体142の凹所152内には、籠状柵体154の上方にレンズ収容部144が形成されており、この籠状柵体154で支持された状態で、コンタクトレンズ155がレンズ収容部144内に収容されるようになっている。要するに、液収容部としての凹所152内において、籠状柵体154よりも上側領域がレンズ収容部144とされているのである。そして、かかるコンタクトレンズ155は、籠状柵体154で支持された状態で、凹所152内に収容される過酸化水素水に浸漬されて殺菌処理されるようになっている。
【0106】
また、ケース本体142の凹所152には、その深さ方向中間部分に籠状柵体154が配設されることで、籠状柵体154よりも下方の凹所152の底部に触媒収容部158が形成されている。そして、この触媒収容部158に、金属触媒160が収容配置されている。なお、かかる金属触媒160は、第一の実施形態の金属触媒14と同様に、単一又は複数の材料からなる金属触媒で形成されていても良いし、適当な基材の表面に金属触媒層が付着された複合材料で形成されていても良い。特に、本実施形態では、浮力を調節する必要もなく、凹所152の底面や籠状柵体154から分離独立していても良いし、それら凹所152の底面や籠状柵体154に固着されていても良い。特に本実施形態では、籠状柵体154の隙間の大きさ及び形状が調節されることにより、収容される過酸化水素水の流通は許容するが、コンタクトレンズ155や金属触媒160の通過は阻止し得るようになっている。それ故、かかる金属触媒160として、ケース本体142に対して固定されていない粒状体等を採用しつつ、コンタクトレンズ155への接触が回避され得る。要するに、触媒収容部158から外部への金属触媒160の移動が籠状柵体154で阻止されており、この籠状柵体154によって、金属触媒160のコンタクトレンズ155への接触を防止する接触阻止手段が構成されているのである。
【0107】
従って、本実施形態のコンタクトレンズ殺菌用ケース140においても、ケース本体142の左右一対の凹所152、152に対してそれぞれ過酸化水素水を注入すると共に、一対の凹所152、152に形成されたレンズ収容部144,144に対して左右のコンタクトレンズ155、155をそれぞれ投入することにより、過酸化水素水によるコンタクトレンズ155、155の殺菌処理を行うことが出来る。その際、一対のレンズ収容部144、144が、何れも、ケース本体142の上壁150で上方に向かって開口されており、籠状柵体154で形成されたレンズ収容部144の凹形底面上でコンタクトレンズ155が平置状態に支持されて、レンズ収容部144に収容されることから、使用者がコンタクトレンズ155をレンズ収容部144に対して容易に挿脱することが出来て、優れた使用性が発揮される。
【0108】
また、金属触媒160を採用したことにより、過酸化水素水に対して目的とする中和反応が安定して発現されることとなり、目的とするコンタクトレンズ155への殺菌処理を高い信頼性で安定して行うことが出来る。しかも、金属触媒160へのコンタクトレンズ155の直接の接触が完全に防止されることから、コンタクトレンズ155が触媒表面に付着することによる触媒効率の低下を防止できる。さらに、コンタクトレンズ155への重金属の付着の進行が可及的に防止されると共に、表面の粗い金属触媒160への干渉に起因するコンタクトレンズ155の傷付きが防止されて、ユーザーの取扱いも容易となる。
【0109】
また、金属触媒160がレンズ収容部144に収容されるコンタクトレンズ155よりも下方に収容されていることにより、金属触媒160の周囲で発生した酸素ガスの浮上に伴って、金属触媒160の上方にあるレンズ収容部144内のコンタクトレンズ155の周辺において、過酸化水素水が効率的に循環せしめられることとなる。更に、コンタクトレンズ155の表面を酸素ガスの気泡が通過することにより、酸素ガスによる接触や対流による洗浄効果も期待できる。
【0110】
なお、コンタクトレンズ155に触れる領域、例えば籠状柵体154の凹側表面等には、必要に応じて、表面処理が施される。この表面処理は、鏡面加工等による表面粗さの改善の他、親水性を向上させたり、コンタクトレンズ155の張り付きを防止することが出来る、例えばプラズマ処理やコロナ放電処理等が例示される。
【0111】
また、本実施形態のコンタクトレンズ殺菌用ケース140においても、金属触媒160による中和の状態や過酸化水素水による殺菌の状態等を容易に確認することが出来るように、ケース本体142と蓋体との少なくとも一方を、透明樹脂にて形成することが望ましい。
【0112】
さらに、図29には、本発明の第五の実施形態としてのコンタクトレンズ殺菌用ケース170が示されている。
【0113】
かかるコンタクトレンズ殺菌用ケース170は、横長で中実の矩形ブロック形状とされたケース本体172を備えている。このケース本体172には、上面に開口する左右一対の液収容部174,174が形成されており、これら液収容部174,174の内部に過酸化水素水が収容されるようなっている。なお、第四の実施形態と同様、ケース本体172に対して着脱可能に装着される図示しない蓋体によって、一対の液収容部174,174が覆蓋されるようになっている。
【0114】
液収容部174は、円形の底面176と円筒形の内周面178を備えた円形凹形状とされており、その内部に略傘形又は茸形の支持突部180が、収容状態で設けられている。この支持突部180には、ストレートな柱状の脚部182の上端に対して、軸直角方向に広がる傘状頭部184が一体的に形成されている。そして、脚部182の下端が、液収容部174の底面176の中央に開口形成された支持穴185に対して圧入固着されることにより、支持突部180が、液収容部174内の中央部分に立設されている。
【0115】
この支持突部180の傘状頭部184は、略凹形球状を有しており、その上端面において略浅底皿状のレンズ収容部186が形成されている。また、かかる傘状頭部184には、厚さ方向に貫通する複数の通孔188が形成されている。なお、傘状頭部184の外径寸法は、液収容部174の内径寸法よりも僅かに小さくされており、傘状頭部184の外周面上には、液収容部174の内周面178との間に環状の隙間が形成されている。そして、このレンズ収容部186に対して、コンタクトレンズ190が載置されて、収容状態で支持されるようになっている。
【0116】
また、液収容部174において、傘状頭部184より底側は、触媒収容部192とされている。要するに、液収容部174は、傘状頭部184により、底側の触媒収容部192と開口側のレンズ収容部186とに仕切られている。そして、この触媒収容部192に対して、金属触媒194が収容配置されている。
【0117】
かかる金属触媒194は、環状を有しており、支持突部180の脚部182に対して遊挿状態で組み付けられている。また、金属触媒194の中心孔196の口径は、支持突部180の傘状頭部184の外径寸法よりも小さくされており、金属触媒194が支持突部180から抜け出して離脱することが、傘状頭部184で防止されている。このように、支持突部180の傘状頭部184は、液収容部174内部での金属触媒194の移動を制限すると共に、金属触媒194とレンズ収容部186に収容されたコンタクトレンズ190との接触を防止する接触阻止手段を構成している。
【0118】
なお、金属触媒194は、単一又は複数の材料からなる金属触媒で形成されていても良いし、適当な基材の表面に金属触媒層が付着された複合材料で形成されていても良く、中空構造としても良い。また、第一の実施形態の金属触媒14と同様に、下面に開口するくぼみやそこに貯留された酸素ガスの排出路を形成したり、図20に示した金属触媒107のように表面に凹凸を形成したり、図21に示した金属触媒108のように外周面に羽根を形成したり、図24に示した金属触媒120のように側周面で下方に開口する気泡捕捉部を設けたり等して、その浮力が調節される。
【0119】
これにより、金属触媒194は、触媒収容部192内での過酸化水素水に対する中和反応に際して、発生する酸素ガスによる浮力作用に基づいて浮上し、支持突部180の脚部182の軸方向上方に変位するようになっている。また、金属触媒194の表面に形成される凹凸等に対して酸素ガスの浮力が作用することで、金属触媒194を中心軸周りに回転変位させることも可能である。
【0120】
一方、過酸化水素水の中和反応が終了すると、金属触媒194への酸素ガスの浮力作用が低下又は消失し、過酸化水素水(水)よりも比重の大きい金属触媒194が沈下変位する。そして、酸素ガスの発生が無くなると共に、図29に示されているように、金属触媒194が、液収容部174の底面176に載置された状態となる。
【0121】
それ故、本実施形態のコンタクトレンズ殺菌用ケース170では、第四の実施形態と同様に、一対のレンズ収容部186,186の凹形底面上で左右のコンタクトレンズ190,190がそれぞれ平置状態に支持されて収容されることから、コンタクトレンズ190をレンズ収容部186に対して容易に挿脱することが出来、コンタクトレンズ190の殺菌のための作業をユーザーが容易且つ速やかに行うことが可能となる。また、金属触媒194をコンタクトレンズ190に非接触に配置したことにより、コンタクトレンズ190への殺菌処理を高い信頼性で安定して行うことが出来ると共に、コンタクトレンズ190への重金属の付着の進行やコンタクトレンズ表面の傷付きも効果的に防止され得る。
【0122】
特に、本実施形態のコンタクトレンズ殺菌用ケース170においては、第四の実施形態と同様、レンズ収容部186よりも下方にだけ金属触媒194が位置している点で、例えば前記特許文献5に記載されているようにレンズ収容部186の側周面を含む全内面に亘って金属触媒が配されている従来構造とは異なる。それ故、レンズ収容部186の略中央に配されるコンタクトレンズ190の下方から、レンズ収容部186の中央部分においてだけ、中和反応で発生する酸素ガスが過酸化水素水中を上昇することとなる。その結果、レンズ収容部186の過酸化水素水には、レンズ収容部186の中央部分で上昇し、外周部分では下降するように、循環水流が効果的に生ぜしめられるのであり、この循環水流によって、レンズ収容部186内の過酸化水素水に対して効率的な攪拌作用が発揮される。従って、過酸化水素水における中和反応が全体に略均一に進むこととなり、コンタクトレンズ190に対する殺菌処理もその全体に対して一層安定して施され得る。
【0123】
なお、本実施形態では、ケース本体172と、傘状頭部184及び蓋体との、少なくとも一方を透明な樹脂で形成することが望ましい。それにより、過酸化水素水によるコンタクトレンズの殺菌処理に際して、金属触媒194を外部から容易に視認して、殺菌処理に伴う中和反応の進行状況を確認することが容易となる。
【0124】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はこれらの具体的な記載によって限定されるものでない。例えば、図27〜28に示されたコンタクトレンズ殺菌用ケース140や図29に示されたコンタクトレンズ殺菌用ケース170においても、左右の一対の液収容部を相互に連通する連通路を、例えば上面に開口する溝構造等で形成しても良く、更に図13に示されたコンタクトレンズ殺菌用ケース16に示されている如き触媒収容部24を設けて左右の一対の液収容部に連通させることにより、かかる一対の液収容部に収容した金属触媒に加えて、該触媒収容部において更に別の金属触媒を追加設置することも可能である。
【0125】
また、本発明においては、必ずしも可動型の金属触媒を採用する必要はなく、例えば、図27〜28に記載のコンタクトレンズ殺菌用ケース140において、籠状柵体154で覆われるレンズ収容部144の底部中央の表面に金属触媒を固着したり被着形成することも可能であり、籠状柵体154においてコンタクトレンズ155に接触しない凸側表面(レンズ収容部144の底面との対向面)だけに金属触媒を被着形成しても良い。或いは、図29に記載のコンタクトレンズ殺菌用ケース170において、支持突部180の脚部182に金属触媒を固着したり、脚部182の表面に金属触媒を被着形成しても良い。
【符号の説明】
【0126】
10,80,130,142,172:ケース本体、12,132:蓋体、14,106,107,108,120,160,194:金属触媒、16,140,170:コンタクトレンズ殺菌用ケース、24,92,158,192:触媒収容部、26,98,144,186:レンズ収容部、32:隔壁部、44:過酸化水素水、60:支持ロッド、62:保持突起、64:基材、66:触媒層、68:くぼみ、70:排出路、155,190:コンタクトレンズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、過酸化水素水を用いてコンタクトレンズを殺菌する際に用いられるコンタクトレンズの殺菌用ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズの使用に際しては、コンタクトレンズに対して定期的な殺菌処理を施すことが必要とされる。コンタクトレンズに付着した細菌やカビ等の微生物による眼感染症や眼障害を防止して、安全で快適な装用状態を維持するためである。近年では、特許庁標準技術集「メガネ」第323頁(非特許文献1)及び特開2001−242428号公報(特許文献1)等に示されているように、界面活性剤や殺菌防腐剤が添加された一液タイプの洗浄・保存液を用いてコンタクトレンズの殺菌も併せて行うことが多いが、一液タイプの洗浄・保存液に含まれる殺菌防腐剤等にアレルギーを持つユーザーや、より確実な殺菌効果を望むユーザー等には、過酸化水素水にコンタクトレンズを浸漬する殺菌方法も、未だ利用されている。この方法では、特にユーザーの簡便性を考慮して複数の液剤を使用せず、一液のみで行う過酸化水素消毒システムが主流であり、これは過酸化水素水の殺菌力を利用するものであり、具体的には、ユーザー自身が、コンタクトレンズを過酸化水素の水溶液中に数時間以上に亘ってコンタクトレンズ浸漬することによって殺菌処理が行われる。
【0003】
ところで、過酸化水素水は、分解後は水と酸素になって無害であるが、未分解で残留していると眼への刺激物となって問題がある。そこで、従来から、プラチナ等の触媒を用いて過酸化水素の分解反応を促進及び調節することにより、コンタクトレンズの殺菌処理の終了前に、過酸化水素が完全に分解中和されるようにすることが提案されている。例えば、特許2660453号公報(特許文献2)を参照。
【0004】
ところが、従来の過酸化水素水を用いたコンタクトレンズ殺菌用ケースは、非常に使いづらいものであり、特に前述の一液タイプの洗浄・保存液による殺菌処理の利用が多数を占める近年では、その使用性等の改善も検討されていない状況であった。具体的には、従来の過酸化水素水を用いたコンタクトレンズ殺菌用ケースは、上記特許文献2に記載されているように、上方に開口する深底円筒状のケース本体と、このケース本体の開口部にねじ止めされる蓋体とを含んで構成されており、蓋体からケース本体内に突出してレンズ保持部と触媒保持部が設けられている。このような深底円筒状のケース本体では、コンタクトレンズの光軸を略水平方向に向けてコンタクトレンズを立てた状態(縦置き状態)で左右一対を特殊なバケット状のレンズ保持部に収容しなければならず、コンタクトレンズの収容及び取出しが非常に面倒であるだけでなく、コンタクトレンズの収容時にレンズがバケットに挟まれることによる破損等の恐れもある。また、ケース本体が深底であるために、特に酸素ガスの発生が弱くなってくる分解中和の後半以降は収容された過酸化水素水の攪拌効率が悪くなり、過酸化水素水の分解中和が部分的に進行する等して殺菌処理や中和処理が不均一になるおそれもあった。更に、ケース本体が深底円筒状で背が高い故、テーブル等に置いても手指が触れると容易に倒れてしまい、過酸化水素水が溢れてしまい易いという問題もあった。
【0005】
なお、特開2000−189224号公報(特許文献3)や特開平6−205706号公報(特許文献4)に記載されている如き、コンタクトレンズの光軸を略鉛直方向に向けた平置き状態で収容する浅底のレンズ収容部を上方に開口して一対形成した平置型のコンタクトレンズ保存用容器を、過酸化水素水を利用する殺菌用に利用することも考えられる。しかし、このような平置型のコンタクトレンズ保存用容器では、過酸化水素水の中和用の触媒を、何処にどのような構造で設けるのか、特許文献3及び4には一切の具体的開示がないし、かかる触媒の有効な組付構造について検討すらされていなかったのである。
【0006】
例えば、特表2002−526203号公報(特許文献5)には、上述の如き平置型のコンタクトレンズ保存用容器において、単に浅底のレンズ収容部の底面と周壁内面とにプラチナ層を非着しただけの、過酸化水素水を利用するコンタクトレンズ殺菌用容器が提案されている。しかし、このように単純に容器内面の全面に触媒層を被着しただけでは、コンタクトレンズが触媒層の表面を覆うことにより触媒の分解効率を低下させるおそれがあった。また、コンタクトレンズの触媒への接触によって、コンタクトレンズに重金属が付着するおそれがあり、それに起因してユーザーのアレルギー等の不具合が誘発されたり、レンズ損傷のおそれもあった。
【0007】
また、特許3368903号公報(特許文献6)には、触媒に代えてカタラーゼを含む酵素タブレットを用いて過酸化水素水を中和することが提案されている。しかし、酵素タブレットは、殺菌処理の度に過酸化水素水中に投入しなければならず、その作業や取扱いが面倒であると共に、ユーザーが酵素タブレットの投入を失念する危険もある。しかも、酵素タブレットの含有成分が、過酸化水素水の中和後も残存するという問題もあることから、必ずしも有効な方策ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−242428号公報
【特許文献2】特許2660453号公報
【特許文献3】特開2000−189224号公報
【特許文献4】特開平6−205706号公報
【特許文献5】特表2002−526203号公報
【特許文献6】特許3368903号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】特許庁 標準技術集,一般,平成17年度,メガネ,第323頁,技術名称「13−3−1−1 液中保存法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、過酸化水素水を用いたコンタクトレンズの殺菌処理をユーザーが簡単に行うことが出来、特にコンタクトレンズの挿脱を容易且つ速やかに行うこと出来ると共に、金属触媒による重金属のレンズ付着やレンズ損傷等の問題も効果的に防止され得る、新規なコンタクトレンズ殺菌用ケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、過酸化水素水の液中に左眼コンタクトレンズ及び右眼コンタクトレンズを浸漬して殺菌するための一対のレンズ収容部がそれぞれ上方に向かって開口して形成されており、それぞれの該レンズ収容部において該コンタクトレンズの凹側又は凸側のレンズ面を開口部に向けた平置き状態で収容されるようになっている一方、該過酸化水素水の分解反応に触媒作用を発揮する金属触媒が、該過酸化水素水に接触せしめられる位置に設けられているコンタクトレンズ殺菌用ケースにおいて、前記一対のレンズ収容部と前記金属触媒が収容された触媒収容部とがそれぞれ上方に向かって開口する凹所として形成されていると共に、該一対のレンズ収容部と該触媒収容部とを仕切る隔壁部分においてその上端部に開口して該一対のレンズ収容部と該触媒収容部との間で前記過酸化水素水の水面を連続させる連通溝が形成されており、該連通溝によって該一対のレンズ収容部と該触媒収容部との間での前記コンタクトレンズおよび前記金属触媒の移動は阻止するが前記過酸化水素水の流動は許容する相互連通路が設けられているコンタクトレンズ殺菌用ケースを、特徴とする。
【0012】
本態様のコンタクトレンズ殺菌用触媒においては、左眼用コンタクトレンズと右眼用コンタクトレンズが、一対のレンズ収容部の各一方に対して、それぞれ、平置き状態で収容される。それ故、コンタクトレンズ殺菌用ケースをテーブル等の載置面に置いた状態で、レンズ収容部の開口部からコンタクトレンズをレンズ収容部に対して直接に入れたり出したりすることが出来る。特に、各レンズ収容部は、従来の縦置きのケースに比して充分に浅底とされており、その開口部からユーザーが手指を直接に挿し入れることでコンタクトレンズを入れたり出したりすることが出来るから作業が容易となるし、レンズ収容部におけるコンタクトレンズの存否も容易に確認できる。
【0013】
しかも、過酸化水素水分解の触媒として、金属触媒を採用したことにより、特許文献6に記載の酵素タブレットのように処理の都度に液中投与する必要がなく、過酸化水素水における中和反応の調節作用が優れた耐久性と安定性および信頼性をもって発揮され得る。
【0014】
加えて、金属触媒とレンズ収容部との間に設けられた相互連通路を有する隔壁部分により、金属触媒とコンタクトレンズとの直接の接触を防止する接触阻止手段が構成されていることから、コンタクトレンズへの重金属の付着やコンタクトレンズの傷つき等の問題も可及的に回避され得る。
【0015】
本態様では、金属触媒をケースに固定や被着する等の必要がなくなり、金属触媒の選択範囲が大きくなると共に、製造や構造の簡略化が図られ得る。なお、相互連通路には、通路狭窄手段として例えば網や柵、多孔体、狭窄路などを採用することも出来る。
【0016】
本態様では、左右一対のレンズ収容部と触媒収容部とが、異なる部位に開口形成されることで、各収容部の容積を充分に確保しつつ、コンタクトレンズ殺菌用ケースの最大高さ寸法を小さく抑えることが出来る。また、一対のレンズ収容部へのコンタクトレンズの挿脱作業だけでなく、触媒収容部への金属触媒の挿脱等の作業を容易に行うことが出来ると共に、触媒収容部の開口部を通じて、過酸化水素水中に浸漬された金属触媒の状況を直接に目視して確認することも可能となる。
【0017】
本発明の第2の態様では、前記第1の態様のコンタクトレンズ殺菌用ケースにおいて、前記一対のレンズ収容部を構成する前記各凹所の底面に対して他部材を介することなく直接にコンタクトレンズが平置き状態で載置されるようになっている。
【0018】
本発明の第3の態様では、前記第1又は第2の態様のコンタクトレンズ殺菌用ケースにおいて、前記相互連通路が、前記一対のレンズ収容部と前記触媒収容部とを構成する各前記凹所を相互に連通することによって循環流路が形成されている。
【0019】
本態様では、触媒収容部と一対のレンズ収容部との間での過酸化水素水の循環効率の更なる向上が図られ得る。この触媒収容部は、例えば後述の第4の態様の如く構成され、それによって、一つの触媒収容部が一対のレンズ収容部に対して一層効率的に連通され得る。
【0020】
本発明の第4の態様では、前記第3の態様のコンタクトレンズ殺菌用ケースにおいて、前記一対のレンズ収容部の間に位置して前記触媒収容部が設けられており、該触媒収容部の開口周縁部の対向部分において各一方の該レンズ収容部に接続される一対の隣接連通路が形成されて、該一対のレンズ収容部が該触媒収容部を介して接続されていると共に、該一対のレンズ収容部と該触媒収容部の配列方向と並列的に延びる並設連通路が形成されており、該並設連通路の長さ方向両端部分が各一方の該レンズ収容部に接続されていると共に、該並設連通路の長さ方向中間部分が該触媒収容部に接続されていることにより、該一対の隣接連通路と該並設連通路とを含んで前記循環流路が形成されている。
【0021】
本発明の第5の態様では、前記第1〜4の態様のコンタクトレンズ殺菌用ケースにおいて、前記一対のレンズ収容部および前記触媒収容部における開口部分の周辺を取り囲む共通凹部が形成されており、この共通凹部においてそれら一対のレンズ収容部と触媒収容部が開口せしめられている。
【0022】
本態様では、例えばレンズ収容部へのコンタクトレンズの挿脱に際して手指をレンズ収容部に差し入れても、それによって押し出された過酸化水素水は、共通凹部を通じて他方のレンズ収容部や触媒収容部等に速やかに流動する。それ故、レンズ収容部における過酸化水素水の液面の上昇量が抑えられて、過酸化水素水のケース外への溢れ出しが効果的に防止される。
【0023】
本発明の第6の態様では、前記第1〜5の態様のコンタクトレンズ殺菌用ケースにおいて、前記一対のレンズ収容部の開口部を覆蓋する蓋体の内側面にそれぞれ内方凸部が設けられており、該蓋体が該レンズ収容部の開口部に装着されることにより、該内方凸部が該レンズ収容部に収容された前記過酸化水素水の液中にまで入り込む。
【0024】
本発明では、一対のレンズ収容部にコンタクトレンズを収容してから蓋体を装着することで、蓋体の内方突部により、一対のレンズ収容部から過酸化水素水が押し出される。これにより、過酸化水素水の液面レベルが上昇することから、触媒収容部の液面レベルも上がり、触媒の浸漬状態がより確実に実現可能となる。
【0025】
本発明の第7の態様では、前記第6の態様のコンタクトレンズ殺菌用ケースにおいて、前記蓋体が前記レンズ収容部の開口部に装着されることにより、該レンズ収容部において、前記コンタクトレンズが凹側のレンズ面を上方に向けた状態で、該レンズ収容部の底面と該蓋体の前記内方凸部との対向面間に位置せしめられる。
【0026】
本発明の第8の態様では、前記第1〜7の態様のコンタクトレンズ殺菌用ケースにおいて、前記一対のレンズ収容部の何れにおいても、前記触媒収容部に接続される前記相互連通路が、周長の1/5以上の部分で開口して接続されている。
【0027】
本態様では、触媒収容部と一対のレンズ収容部との間で、それら各収容部に収容された過酸化水素水の循環効率が向上維持されることにより、触媒収容部で積極的に進行する過酸化水素水の中和反応を一対のレンズ収容部にまで効率的に及ぼされて、全体の濃度(中和反応の進行)の均一化が有利に図られ得る。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、上方に向かって開口形成された各レンズ収容部に対して左右の各コンタクトレンズが平置き状態で収容されることから、コンタクトレンズを殺菌処理するに際し、コンタクトレンズをレンズ収容部に対して直接に且つ容易に入れたり出したりすることが出来る。しかも、左右の各コンタクトレンズが収容されるレンズ収容部と、金属触媒が収容される触媒収容部とが、それぞれ上方に向かって開口する凹所として形成されると共に、隔壁部に連通溝が形成されることで、金属触媒のコンタクトレンズに対する接触阻止手段としての機能が発揮されると共に、各凹所間での過酸化水素水の流動性が向上されて、コンタクトレンズへの重金属の付着やコンタクトレンズの傷つき等の問題を回避しつつ、過酸化水素水に対する中和処理が金属触媒によって安定して行われ得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第一の実施形態であるコンタクトレンズ殺菌用ケースを構成するケース本体を示す斜視図。
【図2】図1に示されたケース本体と協働してコンタクトレンズ殺菌用ケースを構成する蓋体を示す斜視図。
【図3】図1に示されたケース本体及び図2に示された蓋体と協働してコンタクトレンズ殺菌用ケースを構成する触媒を示す斜視図。
【図4】図1に示されたケース本体の平面図。
【図5】図4におけるV−V断面図。
【図6】図4におけるVI−VI断面図。
【図7】図2に示された蓋体の平面図。
【図8】図7におけるVIII−VIII断面図。
【図9】図7におけるIX−IX断面図。
【図10】図3に示された触媒の拡大縦断面図。
【図11】図3に示された触媒の拡大横断面図であって、図10におけるXI−XI断面図。
【図12】図1に示されたケース本体と図2に示された蓋体と図3に示された触媒とを用いて構成された本発明の第一の実施形態であるコンタクトレンズ殺菌用ケースの使用状態を示す説明図。
【図13】図12に示されたコンタクトレンズ殺菌用ケースの別の使用状態を示す説明図。
【図14】本発明の第二の実施形態であるコンタクトレンズ殺菌用ケースを構成するケース本体を示す斜視図。
【図15】図14に示されたケース本体の平面図。
【図16】図15におけるXVI−XVI断面図。
【図17】図15におけるXVII−XVII断面図。
【図18】図15におけるXVIII−XVIII断面図。
【図19】図14に示されたケース本体と協働してコンタクトレンズ殺菌用ケースを構成する触媒の具体例を示すモデル的に示す斜視図。
【図20】図19に示された触媒に代えて採用され得る別の触媒の具体例をモデル的に示す斜視図。
【図21】図19及び図20に示された触媒に代えて採用され得る更に別の触媒の具体例を示すモデル的に示す平面図。
【図22】図21に示された触媒の装着状態を説明する説明図。
【図23】図1に示されたケース本体に対して、図3に示された触媒に代えて採用され得る別の触媒の具体例をモデル的に示す斜視図。
【図24】図23に示された触媒に代えて採用され得る更に別の触媒の具体例をモデル的に示す説明図。
【図25】本発明の第三の実施形態であるコンタクトレンズ殺菌用ケースを示す斜視図。
【図26】図25に示されたコンタクトレンズ殺菌用容器の平面図。
【図27】本発明の第四の実施形態であるコンタクトレンズ殺菌用ケースを示す斜視図。
【図28】図27に示されたコンタクトレンズ殺菌用ケースの縦断面図。
【図29】本発明の第五の実施形態であるコンタクトレンズ殺菌用ケースを示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。先ず、図1にはコンタクトレンズ殺菌用ケースを構成するケース本体10が示されていると共に、図2には蓋体12が示されており、更に図3にはコンタクトレンズ殺菌用の金属触媒14が示されている。そして、図1のケース本体10に図3の金属触媒14を組み付けて図2の蓋体12を開閉可能に装着することにより、本発明の第一の実施形態としてのコンタクトレンズ殺菌用ケース16(図12,13参照)が構成されるようになっている。
【0031】
より詳細には、図1に示されたケース本体10は、図4〜6にも示されているように、楕円形の上底部18とその外周縁部から下方に延び出す周壁部20とを備えており、下方に開口する逆皿状の中空体とされている。なお、ケース本体10は、好適にはポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン等の合成樹脂材料を用いて一体成形される。また、ケース本体10は全体が透明とされており、ケース本体10の内部に収容されるコンタクトレンズや金属触媒14等がケース本体10を通して外部から視認可能とされている。
【0032】
また、ケース本体10には、周壁部20の下端周縁部において、外周側に向かって広がる鍔状の支持板部22が形成されている。そして、この支持板部22によって、ケース本体10がテーブル等の平坦な水平支持面に安定して載置され得るようになっている。なお、支持板部22には掛止用孔23が形成されており、この掛止用孔23に対して掛止ロッドやフック等を挿通させることによって、毎日のレンズケースの乾燥に使用したり、販売店等でケース本体10ひいてはコンタクトレンズ殺菌用ケース16を吊り下げてストックすることが出来るようになっている。
【0033】
さらに、ケース本体10の上底部18には、略中央に触媒収容部24が形成されている。また、上底部18の長軸方向で触媒収容部24を挟んだ両側には、右眼コンタクトレンズと左眼コンタクトレンズをそれぞれ収容する一対のレンズ収容部26,26が形成されている。これら触媒収容部24とレンズ収容部26,26は、何れも、上底部18の外面に開口する凹所とされている。このレンズ収容部26,26の凹状の底面によって、コンタクトレンズが凸側のレンズ面を底面に向け、凹側のレンズ面を開口部に向けた平置き状態で支持されるようになっている。そして、目的とするコンタクトレンズの殺菌処理に際して、触媒収容部24とレンズ収容部26,26の何れにも過酸化水素水44が注入貯留され、更に、レンズ収容部26,26に左右各一方のコンタクトレンズが収容されると共に、触媒収容部24に後述する金属触媒14が収容される。
【0034】
特に、レンズ収容部26,26は、何れも、処理するコンタクトレンズの外径寸法よりも大きな口径で開口する半球状凹部とされている。また、触媒収容部24は、上底部18の短軸方向を長軸とする楕円形状で開口しており、底面30が平坦面とされている。なお、触媒収容部24の底面30は、レンズ収容部26,26の最深部よりも上方側(開口側)に位置しており、レンズ収容部26,26よりも触媒収容部24が浅底とされている。なお、これらレンズ収容部26,26及び触媒収容部24を構成する壁部を含めたケース本体10の全体は透明な素材により形成されており、内部に収容されるコンタクトレンズや金属触媒14の変位状況が外部から確認可能な視認用壁部とされている。また、本実施形態では、触媒収容部24の底面30が、レンズ収容部26,26の最深部よりも上方側(開口側)に位置しており、レンズ収容部26,26よりも触媒収容部24が浅底とされているが、この構造に限定されるものでない。即ち、触媒収容部24の深さや容積等を変更して、過酸化水素水の分解効率を調節したり、後述する触媒14の変位量を調節すること等が可能であり、それに伴って、レンズ収容部26よりも触媒収容部24を深底としたり、大容積としても良い。
【0035】
また、触媒収容部24とその両隣のレンズ収容部26,26との間には、接触阻止手段としての隔壁部32,32が形成されている。これにより、触媒収容部24に収容される金属触媒14とレンズ収容部26,26に収容されるコンタクトレンズのと接触が防止されるようになっている。そして、隔壁部32,32には、それぞれ、断面U字形の相互連通路としての一対の隣接連通溝34,34が形成されている。即ち、これらの隣接連通溝34,34を通じて、触媒収容部24は、両側のレンズ収容部26,26に対してそれぞれ連通されており、レンズ収容部26,26及び触媒収容部24に過酸化水素水44が注入されると、隣接連通溝34,34を通じて過酸化水素水44がレンズ収容部26,26及び触媒収容部24の間で相互に流動可能とされている。これにより、一対のレンズ収容部26,26は、隣接連通溝34,34と触媒収容部24とを介して、相互に連通されている。なお、隣接連通溝34の深さは、触媒収容部24やレンズ収容部26よりも浅くされている。また、触媒収容部24とレンズ収容部26,26とを接続する一対の隣接連通溝34,34の一方の開口部は、触媒収容部24の開口周縁部において、左右に対向するように開口されて形成されている。そして、これら隣接連通溝34,34の他方の開口部は、レンズ収容部26の開口周縁部において、レンズ収容部26,26の外縁部の円周長の1/5以上の部分で開口されている。ただし、図3に示された触媒の支持ロッド60部分も触媒機能を持たせたような場合には、隣接連通溝34と端部接続路40を足し合わせた部分が、レンズ収容部26の外縁部の円周長に対して1/5以上の部分で開口されることとなる。
【0036】
更にまた、ケース本体10の上底部18には、触媒収容部24やレンズ収容部26,26の周辺を取り囲んで広がる略楕円形の共通凹部36が形成されている。この共通凹部36は、上底部18よりも一回り小さい略楕円形状とされており、外周縁部から中央に向かって次第に深くなる傾斜底面を有している。そして、この共通凹部36の底面に、触媒収容部24やレンズ収容部26,26,隣接連通溝34,34が開口位置している。
【0037】
さらに、ケース本体10の上底部18には、共通凹部36に対して、その短軸方向の一方の端縁部(図4中の上側端縁部)に接する状態で、並設連通路としての並設連通溝38が形成されている。この並設連通溝38は、触媒収容部24及び一対のレンズ収容部26,26の配列方向となる上底部18の長軸方向(図4中の左右方向)に直線的に延びている。そして、並設連通溝38の長さ方向両端部分では、各一方のレンズ収容部26,26との隔壁部に端部接続路40,40が形成されていると共に、並設連通溝38の長さ方向中央部分では、触媒収容部24との隔壁部に中央接続路42が形成されている。
【0038】
なお、本実施形態では、並設連通溝38の深さが、触媒収容部24やレンズ収容部26よりも浅くされており、隣接連通溝34よりも深くされている。また、中央接続路42の深さは、端部接続路40,40や隣接連通溝34よりも深くされており、並設連通溝38と略同じ深さとされている。端部接続路40の深さは、中央接続路42よりも浅く、隣接連通溝34と略同じとされている。尤も、これら並設連通溝38や中央接続路42、端部接続路40の各深さや容積は、相互に或いは触媒収容部24やレンズ収容部26等と相対的に調節されることにより、相互領域間での液体流動効率を調節したり、触媒収容部24における過酸化水素水の分解効率を調節したりすることが出来ることから、本実施形態の態様に限定されるものでない。そして、隣接連通溝34及び並設連通溝38の幅及び深さは、レンズ収容部26に収容されたコンタクトレンズの触媒収容部24や並設連通溝38への移動を制限し得るように設定されている。即ち、本実施形態では、レンズ収容部26と触媒収容部24とを仕切る隔壁部32と隣接連通溝34とを含んで、通路狭窄手段が構成されており、過酸化水素水44の流動は許容する一方、コンタクトレンズの触媒収容部24への移動や、金属触媒14のレンズ収容部26への移動が制限されている。なお、通路狭窄手段の構成はコンタクトレンズ及び金属触媒14の移動を阻止し得るものであれば、通路幅や通路深さを小さく制限することに特に限定されず、例えば、網状や格子状の柵を別途に設けてコンタクトレンズや金属触媒14の移動を阻止するようにしても良い。
【0039】
さらに、並設連通溝38は、触媒収容部24及びレンズ収容部26,26に対して、何れも連通されており、またこれら触媒収容部24及びレンズ収容部26,26は、並設連通溝38を介して、相互に連通されている。そして、触媒収容部24及びレンズ収容部26,26が、隣接連通溝34や並設連通溝38と端部接続路40,40及び中央接続路42とで相互に連通されていることにより、触媒収容部24及びレンズ収容部26,26が単に直列的に連通されているだけでなく、相互に循環流路を構成するように連通接続されている。即ち、かかる循環流路は、「触媒収容部24→隣接連通溝34(左)→レンズ収容部26(左)→端部接続路40(左)→並設連通溝38→端部接続路40(右)→レンズ収容部26(右)→隣接連通溝34(右)→触媒収容部24」や「触媒収容部24→隣接連通溝34(左)→レンズ収容部26(左)→端部接続路40(左)→並設連通溝38→中央接続路42→触媒収容部24」等として構成されている。
【0040】
そして、コンタクトレンズの殺菌処理に際して、上記の触媒収容部24やレンズ収容部26,26には、過酸化水素水44(図5,6参照)が注入されて貯留されるようになっている。なお、注入される過酸化水素水44としては、コンタクトレンズ殺菌用に市販されている3%溶液等が好適に用いられる。かかる過酸化水素水44は、触媒収容部24やレンズ収容部26,26だけでなく、隣接連通溝34や並設連通溝38,端部接続路40,40及び中央接続路42の全てに行き渡るように、それらの何れの底面よりも高い水面位置に至る量だけが注入されて貯留される。そして、これらの触媒収容部24やレンズ収容部26,26が、隣接連通溝34や並設連通溝38,端部接続路40,40及び中央接続路42により連通されて循環流路を構成していることにより、触媒収容部24やレンズ収容部26,26に貯留される過酸化水素水44が相互に流通し得るようになっている。
【0041】
一方、前述の図2に示された蓋体12は、図7〜9にも示されているように、ケース本体10に対応したカバー形状を有している。即ち、楕円形の上底部46とその外周縁部から下方に延び出す周壁部48とを備えており、下方に開口する逆皿状の中空体とされている。なお、蓋体12は、ケース本体10と同様、好適には合成樹脂材料の一体成形品とされるが、ケース本体10より薄肉にすることも出来、樹脂材料の射出成形の他、例えば樹脂フィルムを材料とした加熱プレス等で成形することも出来る。特に好適には、蓋体12は、ケース本体10に被せられた状態でもケース本体10の触媒収容部24やレンズ収容部26,26を外部から視認できるように、少なくとも触媒収容部24を覆う部分が、より好適にはレンズ収容部26,26を覆う部分までもが、透明とされる。
【0042】
蓋体12は、ケース本体10に比して、蓋体12の略肉厚寸法分だけ一回り大きなサイズとされている。そして、図8に仮想線でケース本体10が併せ示されているように、ケース本体10の凸側面に対して蓋体12の凹側面が重なり合うようにして、蓋体12がケース本体10に被せられて、取り外し可能に装着されるようになっている。これにより、ケース本体10に形成された触媒収容部24及びレンズ収容部26,26が何れも蓋体12により覆われるようになっている。
【0043】
なお、蓋体12は、その周壁部48がケース本体10の周壁部20に外嵌されることでケース本体10への装着状態に保持されるようになっているが、蓋体12のケース本体10からの予期しない離脱を防止するために両周壁部48,20間に凹凸係止部等を設けても良い。また、蓋体12には、周壁部48の下端周縁部の一部から外周側に向かって広がる三日月状の摘み片50が形成されている。そして、ケース本体10に被せられた蓋体12の摘み片50を手指で摘むことで、ケース本体10から蓋体12を容易に取り外すことが出来るようになっている。なお、蓋体12がケース本体10に被せられた状態において、蓋体12とケース本体10との間にはガス排出路としての微小な隙間が形成されるようになっており、この隙間を通じて、過酸化水素水44の分解に伴って発生する酸素ガスを排出できるようになっている。
【0044】
また、蓋体12の上底部46には、略中央に触媒蓋部52が形成されていると共に、上底部46の長軸方向で触媒蓋部52を挟んだ両側に内方凸部としての一対のレンズ蓋部54,54が形成されている。触媒蓋部52は、上底部46の外面側に膨らんだ凸ドーム形状とされている。レンズ蓋部54,54は、何れも、上底部46の内面側に膨らんだ凹ドーム形状とされている。また、これらの触媒蓋部52及びレンズ蓋部54,54は何れも透明とされており、触媒収容部24に収容された金属触媒14の変位状況や、レンズ収容部26,26に収容されたコンタクトレンズの状況が外部から確認出来るようになっている。
【0045】
そして、蓋体12がケース本体10に被せられて組み付けられることにより、ケース本体10の触媒収容部24と一対のレンズ収容部26,26の各開口部に、蓋体12の触媒蓋部52と一対のレンズ蓋部54,54が位置して、それら各開口部を覆うようになっている。その状態で、触媒収容部24の開口部上には、外方に突出した触媒蓋部52で覆われたカバー空間56が形成されている。また、各レンズ収容部26には、内方に突出したレンズ蓋部54が入り込んでおり、このレンズ蓋部54の中央部分が、レンズ収容部26に注入される過酸化水素水44の水面から内部にまで押し入れられるようになっている。
【0046】
また、蓋体12のレンズ蓋部54,54は、その凸面又は凹面が、レンズ仮置部とされている。好適には、凸面や凹面の曲率が、コンタクトレンズの凹面や凸面の一般的な曲率に近い値に設定されている。これにより、蓋体12をケース本体10から取り外して、テーブル等の平坦な水平支持面に載置した状態で、上側に面したレンズ蓋部54の凸面又は凹面に対して、コンタクトレンズ使用者が取り外したコンタクトレンズを、殺菌処理前或いは殺菌処理後に一時的に載置しておくことが出来るようになっている。なお、レンズ蓋部54の凸面をレンズ仮置部とするには、蓋体12を反転させて上方に開口する状態でテーブル等に置くようにする。反対に、蓋体12を反転させずに下方に開口する状態でテーブル等に置くと、レンズ蓋部54の凹面をレンズ仮置部として利用できる。
【0047】
さらに、前述の図3に示された金属触媒14は、図10〜11にも拡大して示されているように、適当に造形されたブロック形状とされている。特に、本実施形態では、看者の興味をひくことを期待してイルカに似せた外形状とされている。
【0048】
この、金属触媒14は、ケース本体10の触媒収容部24に入り込んで、触媒収容部24内で変位可能な大きさとされている。特に、金属触媒14の高さ寸法は、触媒収容部24の深さ寸法よりも小さくされている。より好適には、触媒収容部24に注入される過酸化水素水44の水深よりも小さな高さ寸法とされて、過酸化水素水44中に完全に水没可能な大きさとされている。
【0049】
更にまた、金属触媒14には、外周縁部から直線状に延びる支持ロッド60が設けられている。特に本実施形態では、イルカに似せた長手状の外形を有する金属触媒14において、イルカの尻尾に相当する長さ方向一方の端部からイルカの幅方向両側に向かって突出する態様で支持ロッド60が一体形成されている。要するに、支持ロッド60の長さ方向中央部分から軸直角方向に突出するようにして金属触媒14が設けられている。
【0050】
そして、図12〜13に示されているように、支持ロッド60がケース本体10の並設連通溝38に収容されていると共に、金属触媒14が、ケース本体10の中央接続路42から触媒収容部24内に延び出して収容されている。また、支持ロッド60は、ケース本体10の並設連通溝38の底部に収容されており、並設連通溝38の対向壁面に突設された保持突起62,62の支持ロッド60に対する係合作用により、支持ロッド60の並設連通溝38からの抜け出しが阻止されている。しかも、支持ロッド60は、並設連通溝38への収容状態下で中心軸回りの回動が容易に許容されるようになっており、この支持ロッド60の回動に伴って、金属触媒14が、触媒収容部24内において浮上/沈下方向の変位を容易に許容されるようになっている。
【0051】
なお、このことから明らかなように、本実施形態では、金属触媒14に形成された支持ロッド60によってケース本体10への係合部が構成されていると共に、ケース本体10の並設連通溝38とその対向壁面に突設された保持突起62,62とによって、該支持ロッド60を係合及び保持せしめる保持部が構成されている。これら支持ロッド60と保持突起62,62との係合作用により、触媒収容部24での金属触媒14の浮上/沈下方向の変位を許容しつつ、金属触媒14のケース本体10からの不必要な離脱を防止する保留手段が構成されている。これにより、殺菌処理の終了後の触媒収容部24からの過酸化水素水44の排出時やケース本体10の洗浄時等においても、金属触媒14が触媒収容部24に留め置かれるようになっている。
【0052】
また、金属触媒14は、過酸化水素水44中に浸漬された際に液(過酸化水素水)44に触れる表面の少なくとも一部が、過酸化水素水44の分解に対して触媒作用を発揮する金属材料で形成されている。これにより、金属触媒14は過酸化水素水44の分解反応に触媒作用を発揮する金属触媒とされている。かかる金属材料は、公知のものが何れも採用可能であるが、複数回のコンタクトレンズ殺菌処理に際して安定した触媒作用を発揮し得る金属が好適に採用される。具体的に例示すると、白金、銀、パラジウム、銅、マンガン、コバルト、アルミニウムの群からなる金属及びこれらの金属酸化物の少なくとも一種が、金属触媒14の金属材料として採用される。
【0053】
なお、金属触媒14は、全体が上述の金属触媒材料で形成されている必要はない。例えば、金属触媒14において過酸化水素水44に触れない内部や過酸化水素水44に触れる表面の一部等を、触媒作用を発揮しない材料で形成することが可能であり、それによって、金属触媒14の質量(M)を調節したり、形状等の成形自由度を大きくすること等が出来る。具体的に例示すると、上述の如き触媒材料と複合的に用いられて金属触媒14を形成する、触媒作用を発揮しない材料として、プラスチック、金属、ガラス、セラミックの少なくとも一種を用いることが可能であり、更にかかるプラスチックとしては、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリウレタン、変成ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルイミド、ポリサルホン、ポリメチルメタクリレート及びこれらの共重合樹脂からなる群より選択される少なくとも一種が、好適に採用される。
【0054】
特に、複合構造の金属触媒14としては、例えば上述の如き触媒作用を発揮しない材料で適当な形状(例えば、図示されたイルカ形状)に成形した基材64を用い、この基材64の表面に対して、前述の触媒作用を発揮する金属からなる金属皮膜としての触媒層66を付着形成したものが、用いられる。なお、かかる触媒層66は、メッキやスパッタリング等の公知の薄膜形成技術で、基材64の表面を適当な膜厚をもって覆うように形成することが出来る。
【0055】
また、金属触媒14は、過酸化水素水中で作用する浮力(F)を適当に設定されて、触媒収容部24内で過酸化水素水44に浸漬された状態で、過酸化水素水44の中和(分解反応)の進行に伴って浮上/沈下方向に変位するようになっている。好適には、金属触媒14の質量(M)と過酸化水素水中で金属触媒14に作用する浮力(F)との比であるM/Fの値が1より大きく2以下となるように設定される。なお、かかる浮力(F)は、触媒本体部58の単体に作用する力であり、例えば過酸化水素水44の分解反応に伴って発生する酸素ガス(気泡)によって金属触媒14に及ぼされる外力は含まない。
【0056】
ところで、この浮力(F)の調節は、種々の方策で実現される。例えば基材64の材料を、適当な比重のものに選択変更することによって浮力を調節できる。特に好適には、比重が1より大きく3以下の材料が、基材64に用いられる。
【0057】
また、金属触媒14を、内部に空所を設けた中空構造とすることで浮力を調節することも出来る。空所は、例えばブロー成形や消失中子成形等で適当な位置に任意の数だけ形成され得るが、独立気泡を有する発泡成形でフォーム構造としても良い。
【0058】
なお、金属触媒14と一体的に形成された支持ロッド60は、材料や質量が特に限定されるものでない。尤も、耐蝕性や成形性、強度等を考慮して、金属触媒14と同じ材料で成形されることが望ましい。また、支持ロッド60も、並設連通溝38内で過酸化水素水44に浸漬されることから、少なくとも表面に触媒作用を発揮する材料を用いることで、金属触媒14と協働して、過酸化水素水44の中和速度を調節することが可能である。その際、支持ロッド60の表面に複数の凹凸を形成することで、表面積ひいては触媒作用の調節自由度をより大きくすることもできる。更にまた、支持ロッド60は、前述のとおり回動変位に基づいて、金属触媒14の浮上/沈下方向での変位を許容するものであることから、例えば外周面上に突出して周方向に延びるリング状突部を軸方向に適当な間隔で複数形成して、支持ロッド60の並設連通溝38内面への接触面積ひいては回動抵抗を軽減しても良い。
【0059】
そして、金属触媒14が過酸化水素水44に浸漬されると、表面の触媒層66の触媒作用で過酸化水素水44の分解が開始されるのに伴って、酸素ガスが発生し、それが気泡として過酸化水素水44の液面から外部に放出するまでの間に金属触媒14に接触することで、金属触媒14に対して、外力としての浮力が及ぼされる。この酸素ガス浮力を利用することにより、金属触媒14が、過酸化水素水44中で、過酸化水素の分解反応の進行の程度に応じて変位せしめられるようになっている。
【0060】
また、本実施形態では、金属触媒14の表面には複数の凹状部や凸状部が形成されており、それらの凹状部や凸状部によって頭部や胴部、尾部、背部、腹部、口部、胸びれ、背びれ、尾びれ等が形作られて全体としてイルカ状の外形とされている。特に、金属触媒14の腹部を含む底面には、略全体に亘って広がって下方に開口する浅底凹形のくぼみ68が凹状部として形成されている。そして、これらの凹状部や凸状部を備えていることにより、金属触媒14は充分な表面積を有しており、触媒層66による触媒反応が適切に行われるようになっている。なお、望ましくは、金属触媒14の表面積は過酸化水素水44の10mlあたり3〜30cm2 とされる。また、金属触媒14の中央近くには、上下方向で直線状に貫通する排出路70が形成されており、この排出路70の下端がくぼみ68の中央近くに開口している。なお、これらくぼみ68及び排出路70は、その数や形状が図示のものに限定されることなく、任意に設定され得る。
【0061】
そして、金属触媒14が過酸化水素水44に浸漬された際、過酸化水素水44の分解反応で発生した酸素ガスが、くぼみ68に貯留されることで、酸素ガスの浮力が金属触媒14に対する外力として一層効果的に作用するようになっている。なお、このくぼみ68に貯留する酸素ガスで金属触媒14に作用する浮力は、くぼみ68の容積や位置(特に、浮上/沈下方向への揺動変位の中心軸となる支持ロッド60からの離隔距離)を設定変更することで調節できる。また、余剰の酸素ガスは、くぼみ68の周壁を乗り越えて金属触媒14の外周から上方に放出される。
【0062】
過酸化水素水44の分解反応が略終了して中和されると酸素ガスの発生が止まるが、その際にもくぼみ68に酸素ガスが貯留する限り該酸素ガスによる浮力が金属触媒14に作用し続ける。一方、くぼみ68に貯留した酸素ガスは、排出路70を通じて、所定の制限下で外部に排出され続ける。
【0063】
好適には、この排出路70を通じての酸素ガスのくぼみ68からの単位時間当たりの排出量は、過酸化水素水44の分解反応時におけるくぼみ68への単位時間当たりの酸素ガス流入量よりも小さく設定される。これにより、過酸化水素水44の分解反応による中和処理が完了するのと略同時に、或いはそれよりも遅れて、くぼみ68における酸素ガス貯留量が金属触媒14を浮上させるに必要な量に満たなくなるようにすることで、過酸化水素水44の分解反応中は金属触媒14が浮上状態に維持される一方、過酸化水素水44の中和が略完了した際には浮力が消失して金属触媒14が沈下するように出来る。なお、排出路70を通じての単位時間当たりの酸素ガスの排出量は、排出路70を通じての酸素ガスの排出抵抗を変更することで調節できる。具体的には、例えば、排出路70の断面積や断面形状を変更したり、排出路70の表面における疎水性や親水性の程度等の物性を変更すること等によって調節可能である。
【0064】
上述の如き構造とされたコンタクトレンズ殺菌用ケース16を用いてコンタクトレンズを殺菌処理するには、次のような方法が行われる。先ず、コンタクトレンズ使用者(ユーザー)が蓋体12を取り外したケース本体10をテーブル等に載置し、その触媒収容部24やレンズ収容部26,26等を含んで形成される液収容部に対して、予め準備したレンズ殺菌用の過酸化水素水44を注入して貯留する。
【0065】
また、かかる過酸化水素水44の注入の前或いは後に、金属触媒14をケース本体10セットする。このセット作業により、金属触媒14に形成された支持ロッド60をケース本体10の並設連通溝38に入れて最深部に位置決めすることで、金属触媒14を触媒収容部24内に配置する。これにより、金属触媒14は、触媒収容部24内部に貯留される過酸化水素水44と接触せしめられることとなる。
【0066】
さらに、ケース本体10に対する過酸化水素水44や金属触媒14の注入やセットの前或いは後に、ユーザーが右眼及び左眼からそれぞれコンタクトレンズを取り外して、外したコンタクトレンズをケース本体10のレンズ収容部26に収容する。
【0067】
なお、レンズ収容部26に過酸化水素水44を注入した後に、ユーザーがコンタクトレンズを外してレンズ収容部26に入れる場合には、外したコンタクトレンズを、レンズ収容部26に入れる前に、ケース本体10から取り外してテーブル等に載置した蓋体12におけるレンズ仮置部としてのレンズ蓋部54の凸面又は凹面に一時的に載置しておくのが良い。即ち、左右一方のコンタクトレンズを外して一方のレンズ収容部26に入れた後、続いて他方のコンタクトレンズを外して他方のレンズ収容部26に入れると、先に外したコンタクトレンズをレンズ収容部26に入れる際に、レンズ収容部26に注入された過酸化水素水44が手指に触れる。それ故、他方のコンタクトレンズを外す際、手指に付着した過酸化水素水44がユーザーの眼に触れて刺激等の不具合を与えるおそれがある。従って、上述のように、蓋体12のレンズ蓋部54の凸面又は凹面を利用して、両眼のコンタクトレンズを外して一時的に載置した後、両眼のコンタクトレンズを二つのレンズ収容部26,26に順次に入れることにより、たとえコンタクトレンズをレンズ収容部26に入れる際に過酸化水素水44が手指に触れても、それが眼に入ることを避けることが出来て、好適である。
【0068】
その後、ケース本体10に蓋体12を被せて組み付けることにより、コンタクトレンズの殺菌処理が開始される。
【0069】
すなわち、レンズ収容部26,26の内部に収容された右眼コンタクトレンズ及び左眼コンタクトレンズが過酸化水素水44に浸漬されていることにより、コンタクトレンズが所定時間に亘って殺菌処理される。また、金属触媒14が過酸化水素水44に浸漬されていることにより、過酸化水素水44の分解反応が進行して酸素ガスが発生する。そして、殺菌処理の開始初期には、図12に示されているように、ケース本体10の触媒収容部24において、過酸化水素水44の液中に入れられた金属触媒14が、それ自体の浮力と発生する酸素ガスで及ぼされる浮力(外力)とによって上方へ変位し、浮上する。好適には、図示されているように、金属触媒14の上側部分が液面上に突出して露出される。なお、蓋体12がケース本体10に被せられていても、触媒収容部24を覆う触媒蓋部52が中空の凸ドーム形状で外方に膨らんでいることから、触媒収容部24の上方には、金属触媒14の浮上突出を許容するに充分な内部空間が形成されている。
【0070】
かかる状態で過酸化水素水44によるコンタクトレンズの殺菌処理と共に、触媒作用による過酸化水素水44の分解反応が進行する。この際、ケース本体10のレンズ収容部26,26には、蓋体12のレンズ蓋部54が入り込み、過酸化水素水44の中にまで押し入れられた状態に維持される。これにより、レンズ収容部26に収容されたコンタクトレンズがレンズ蓋部54で液中に押し込まれて、過酸化水素水44に対して完全に埋没され、目的とする殺菌処理が安定して施されるようになっている。併せて、レンズ収容部26,26に注入された過酸化水素水44が、レンズ蓋部54,54が液中に押し込まれた容積分だけ、レンズ収容部26,26から流出される。この過酸化水素水44の流出は、他の液収容部の液面上昇を生ぜしめることとなり、触媒収容部24の液面が上昇する。これにより、たとえ過酸化水素水44の液収容部への注入量が少なくても、触媒収容部24の液面レベルが確保されて、過酸化水素水44の金属触媒14への接触が確保され、金属触媒14の浮上作動や分解反応が実現され得る。
【0071】
そして、所定時間の殺菌処理が行われて、過酸化水素水44の分解反応が終了すると、酸素ガスが発生しなくなって酸素ガスによって金属触媒14に及ぼされていた浮力が消失する。その結果、図13に示されているように、金属触媒14は、沈む。特に、金属触媒14は、触媒収容部24の底面に接して載置され、過酸化水素水44の液面から露出しないで完全に埋没した状態となる。即ち、本実施形態では、過酸化水素水44の分解中は酸素ガスによる浮力の作用により金属触媒14が上方に変位せしめられて浮上する一方、分解反応が停止すると、浮力の消失により金属触媒14の浮上状態が解消されて、金属触媒14は沈下する。そして、コンタクトレンズの使用者は、殺菌処理の開始後所定時間が経過した後、金属触媒14が触媒収容部24の底面に沈んでいることを目視により確認することで、過酸化水素水44の分解反応が完了していることを容易に確認することができるのである。これにより使用者は、過酸化水素水44の分解が完了して完全に水となっていることを確認した後、液中から殺菌済みのコンタクトレンズを安全に取り出すことが出来る。
【0072】
このように、使用者は、コンタクトレンズの殺菌開始時には、金属触媒14の周囲から気泡(酸素ガス)が発生していることに加えて、金属触媒14が浮上して一部が液面から突出していることを視認することで、間違いなく過酸化水素水44を注入して、殺菌処理が正常に開始されていることを確認することが出来る。特に、イルカを模した金属触媒14が液面から浮上していることを見ることは、使用者の興味を惹いて楽しみを与えるものであることから、使用者が積極的に確認を行うことが期待できるし、更に、定期的なコンタクトレンズの殺菌処理を使用者の自発的意志をもって促すことも期待できる。その結果、汚染されたコンタクトレンズを装着することに起因する眼症の発生を防止して、良好なコンタクトレンズの使用を促進することにもつながる。
【0073】
また、触媒収容部24がレンズ収容部26,26と別の場所に形成されていることから、触媒収容部24の容積ひいては金属触媒14の表面積を充分に確保して目的とする触媒作用を効果的に得ることが出来る。しかも、触媒収容部24の開口部をレンズ収容部26,26の開口部と別に形成したことで、レンズ収容部26,26に対するコンタクトレンズの出し入れ作業性を損なうことなく、過酸化水素水44中での金属触媒14の浮上/沈下の確認を容易とすると共に、浮上時には触媒の一部を液面上に突出させてその確認を一層容易と為し得た。
【0074】
加えて、互いに独立開口させた触媒収容部24及びレンズ収容部26,26も、隣接連通溝34,34や並設連通溝38等により相互に連通されており、しかも、単に流路両端がある直列的な連通でなく、流路端がない循環流路が形成されていることから、触媒収容部24に収容された金属触媒14による過酸化水素水44の分解反応が、レンズ収容部26,26にまで及び易い。それ故、触媒収容部24及びレンズ収容部26,26を含む液収容部内の過酸化水素水44の全体に対して、より均質な中和化が進行され得て、目的とするコンタクトレンズの殺菌効果や中和完了までの必要時間の安定化等も図られ得る。
【0075】
さらに、過酸化水素水44の分解反応の進行に伴って発生する酸素ガスの量が変化したり、発生する酸素ガスの位置が変化することによって、金属触媒14に及ぼされる浮力が変化する。この浮力の変化に伴って、金属触媒14が過酸化水素水44中で変位して、過酸化水素水44が攪拌及び流動されることから、上述の如き触媒収容部24及びレンズ収容部26,26を含む液収容部内の過酸化水素水44の均質化が一層効果的に達成され得る。
【0076】
また、一対のレンズ収容部26,26は、各連通溝34,38や接続路40,42で相互に連通されていることに加えて、何れも共通凹部36の底面に開口されていることから、一方のレンズ収容部26に手指を入れてコンタクトレンズを取り出す際にも、当該レンズ収容部26から押し出される液は、他方のレンズ収容部等の他の領域に速やかに移動され得る。それ故、手指を入れたレンズ収容部26から押し出された液が、共通凹部36から外部に溢れることが、効果的に防止される。
【0077】
次に、図14には、本発明の第二の実施形態としてのコンタクトレンズ殺菌用ケースを構成するケース本体80が示されている。
【0078】
かかるケース本体80は、図15〜18にも示されているように、長方形状の上底部82とその外周縁部から下方に延び出す周壁部84とを備えており、下方に開口する逆皿状の中空体とされている。なお、周壁部84の高さが、手前側長辺部分よりも奥側長辺部分が高くされており、それによって、上底部82が、奥方から手前側に向かって次第に下方に向かって傾斜した斜面とされている。そして、高さの低い手前側(図15の下側)から、コンタクトレンズユーザーが作業するようになっている。
【0079】
また、ケース本体80には、上底部82の中央部分で上方に開口する凹状の液収容部86が形成されている。この液収容部86は、平面視でオーバル形状(長円形状)を有しており、底面88は、水平に広がる平坦面とされている。なお、液収容部86の周壁内面には、開口側近くの深さ方向中間部分を周方向の全周に亘って連続して延びる段差90が形成されており、この段差90より上側(開口側)が拡開されている。
【0080】
また、液収容部86の一方の長辺部(奥方の長辺部)の中央部分には、半周以上が外方に突出するようにして円形で深さ方向に延びる触媒収容部92が形成されている。この触媒収容部92は、液収容部86の長辺部に交わる半周以下の部分に形成された連通窓94を通じて、液収容部86に連通されている。
【0081】
更にまた、液収容部86の底面88には、長手方向(図15の左右方向)の中央部分で、互いに背を向け合うようにして、一対の円弧状突部96,96が突出形成されている。この円弧状突部96は、オーバル形状とされた液収容部86の両端の半円周部分と略同じ曲率で、半円周部分を延長した円周上に略位置している。そして、これら一対の円弧状突部96,96は、液収容部86の長手方向両端の半円周部分と協働して、該液収容部86の長手方向の両側部分において左右一対の略円形のレンズ収容部98,98を形成している。
【0082】
なお、各円弧状突部96の周方向両端は、液収容部86の周壁から離隔しており、周壁との対向面間にそれぞれ連通溝100が形成されている。また、円弧状突部96の突出高さは、液収容部86の深さよりも小さくされており、段差90と略同じ高さか、段差90に僅かに至らない高さとされている。
【0083】
また、液収容部86の長さ方向中央部分には、一対の円弧状突部96,96間において中央連通領域102が形成されている。そして、この中央連通領域102は、各円弧状突部96の周方向両側に形成された連通溝100を通じて、左右一対のレンズ収容部98,98に接続されていると共に、液収容部86の周壁に形成された連通窓94を通じて、触媒収容部92に接続されている。要するに、一対のレンズ収容部98,98は、中央連通領域102を介して、相互に連通されていると共に、触媒収容部92にも連通されているのである。
【0084】
そして、液収容部86に過酸化水素水が注入されることにより、一対のレンズ収容部98,98や触媒収容部92にも過酸化水素水が貯留されるようになっている。なお、過酸化水素水の注入量は、その液面が円弧状突部96の頂部と略同じか僅かに至らないように調節されることが望ましい。また、本実施形態では、液収容部86において、段差90よりも上方の拡開された開口部分によって、一対のレンズ収容部98,98が共に開口される共通凹部104が構成されている。
【0085】
さらに、触媒収容部92には、図19に示されている如き金属触媒106が収容配置されている。この金属触媒106は、第一の実施形態の金属触媒14と同様に、単一又は複数の材料からなる金属触媒で形成されていても良いし、適当な基材の表面に金属触媒層が付着された複合材料で形成されていても良い。また、内部に空所を形成して浮力を調節したり、凹状部や凸状部を形成して表面積や作用浮力を調節しても良い。要するに、触媒収容部92に収容されて過酸化水素水中に投入されることにより、過酸化水素水に触れる表面の少なくとも一部に触媒作用を有する部分があれば良く、且つ、触媒収容部92内での変位が許容されて適当な浮力で変位が生ぜしめられるものであれば良い。
【0086】
具体的には、図19に示される如き触媒収容部92の内径寸法よりも小さな外形寸法を有する円板形状の金属触媒106の他に、例えば、図20に示される如きタイヤ形状の金属触媒107等が採用可能である。なお、金属触媒106, 107の外径寸法は、連通窓94の開口幅よりも大きくされて、触媒収容部92からの不必要な流出が防止されるようになっている。また、かかる金属触媒106, 107は、厚さ寸法が、触媒収容部92における過酸化水素水の液深さよりも小さくされており、触媒収容部92の液中で深さ方向に浮上/沈下変位可能とされている。
【0087】
このような構造とされた本実施形態のコンタクトレンズ殺菌用ケースにおいても、第一の実施形態と同様に、ケース本体80の液収容部86に過酸化水素水を注入貯留すると共に、触媒収容部92に金属触媒106を投入し、一対のレンズ収容部98,98にコンタクトレンズを入れることで、コンタクトレンズに殺菌処理を施すことが出来る。なお、第一の実施形態と同様に、ケース本体80の表面形状に対応した蓋部材を準備して、殺菌処理中のケース本体80の触媒収容部92やレンズ収容部98,98の開口を覆っても良い。
【0088】
そして、かかる殺菌処理の開始に際しては、金属触媒106自体の浮力と発生する酸素ガスで及ぼされる浮力(外力)との作用に基づいて、金属触媒106が、過酸化水素水中で浮上する。一方、所定時間のレンズ殺菌処理が完了して過酸化水素水が中和することで酸素ガスの浮力(外力)が消失すると、金属触媒106は、過酸化水素水中で沈下する。
【0089】
なお、浮上時には金属触媒106の一部が液上に突出し、沈下時には金属触媒106が触媒収容部92の底面に接することが望ましいが、それに限定されるものでなく、液中で金属触媒106の上下方向での浮上/沈下の変位があれば良い。また、本実施形態では、金属触媒106の液中での浮上/沈下の変位を外部から目視容易とするために、ケース本体80において、少なくとも触媒収容部92の外側周壁部分を透明とすることが望ましい。
【0090】
特に、図19や図20に示されている如き円形板形状のものは、(図示はされていないが)中心軸上で一方の側に突出する軸状部を一体形成することが望ましく、この軸状部を形成することで、液中で軸状部が下方に垂れ下がって円板板上部が略水平方向に向く状態に略安定して保持させ、反転や縦向き等の不安定な変位を防止することが可能となる。
【0091】
また、図19や図20に示されている如き円形板形状のものは、浮上や沈下の変位だけでなく、過酸化水素水の分解反応による酸素ガスの発生位置に応じて揺動や回転の変位を生じ易い。そして、これら揺動や回転の変位により、過酸化水素水に対する攪拌作用が一層効果的に発揮され得る。
【0092】
なお、本実施形態のケース本体80には、図21〜22に示された回転変位形の金属触媒108を採用することも可能である。この金属触媒108は、スクリュやプロペラに似た形状を有しており、中央ボス部110から放射状に複数の羽根112が突設されている。羽根112の先端径は、触媒収容部92の内径よりも小さくされている。また、金属触媒108の各羽根112には、周方向に所定の傾斜角(スクリュ角度やプロペラ角度に相当する傾斜角)が設定されている。
【0093】
そして、図22に示されているように、触媒収容部92の底壁から上方に突設された支軸114によって、中央ボス部110が支持されることにより、金属触媒108が、触媒収容部92内において、鉛直方向に延びる中心軸回りで回転可能に支持されている。なお、本実施形態の触媒108は、過酸化水素水の分解反応で酸素ガスが作用した状態でも、その浮力に抗して沈下して支軸114での支持状態に維持されるように、質量が調節されている。
【0094】
このような金属触媒108は、触媒収容部92内で過酸化水素水中に配されることにより、羽根112に作用する酸素ガスの浮力(外力)の作用に基づいて、回転変位せしめられる。それ故、前述の如きコンタクトレンズの殺菌処理の開始当初では、金属触媒108が比較的勢い良く回ることとなり、所定時間の殺菌処理が完了して過酸化水素水が中和されると回転力が消失して回転停止する。
【0095】
従って、金属触媒108の回転変位の発生と停止を見ることによって、使用者は、前述の浮上/沈下変位する金属触媒106と同様に、コンタクトレンズの殺菌処理の状況を確認することが出来るのである。
【0096】
なお、このような回転形の金属触媒108では、浮上/沈下形の金属触媒106を採用する場合に比して、触媒自体の浮力の調節に高精度が要求されることがないから、材質等の選定自由度が大きく、浮力の精度に起因する作動不良の問題も回避されるという利点がある。
【0097】
また、回転形の触媒の他の実施形態が、図23に示されている。本実施形態の金属触媒120は、リング形状又は円筒形状を有しており、図示しないケース本体に対して、その中心軸周りで周方向に回転可能に装着される。なお、図23において、122は支軸部材であり、図示しないケース本体に固定される固定軸部124を備えており、この支軸部材122に対して、円環形状の金属触媒120が回転可能に外挿されて装着されている。そして、この金属触媒120は、例えば第一実施形態のケース本体10の並設連通溝38に対して固定軸部124が嵌め入れられて固定され、支軸部材122が触媒収容部24内を水平方向に延びるように装着される。かかる状態下、支軸部材122で回転可能に支持された金属触媒120が、触媒収容部24内で過酸化水素水44に浸漬されて回転可能に配置されることとなる。勿論、この金属触媒120でも、支軸部材122の外径寸法に比して金属触媒120の内径寸法を充分に大きく設定する等して過酸化水素水中での浮上/沈下の変位も許容するようにしても良い。
【0098】
また、図23に示された回転形の金属触媒120において、その回転変位を一層効率的に生ぜしめるために、発生する酸素気泡を捕捉して、捕捉した酸素気泡の浮力を、金属触媒120に対する一方向の回転力として及ぼす気泡捕捉部を設けることが望ましい。具体的には、この気泡捕捉部は、金属触媒120において周方向一方の側に開口する凹所として好適に形成される。例えば、図24に示されているように、金属触媒120の軸方向一方又は両方の端面において、回転方向一方向に開口する「く」字状や「コ」字状の突起からなる気泡捕捉部126の他、金属触媒120の外周面上において周方向一方の側に向かって傾斜して突出するプレート状の気泡捕捉部など、一般に水車等の駆動力発生機構に準じた構造が適宜に採用可能である。
【0099】
なお、回転形の金属触媒120は、図23に示された円環形状に限定されるものでなく、例えば意匠的効果を考慮したり、酸素気泡の浮力に基づく回転力の作用効率を考慮する等の目的で、星形やプロペラ形、花弁形、歯車形などの各種の形状が選択され得る。
【0100】
さらに、ケース本体と蓋体は、屈曲可能なヒンジ部を介して相互に連結されていても良い。その場合に、互いに別体形成したケース本体と蓋体をヒンジ等で連結する他、薄肉の屈曲部で連結された状態で一体成形することも可能である。具体的には、本発明の第三の実施形態として図25〜26に示されているように、例えばポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン等の合成樹脂製のフィルム材を用いて、プレス成形により、ケース本体130と蓋体132を一体的に備えた構造とすることが出来る。即ち、これらケース本体130と蓋体132には、外周縁部に所定長さで延びる直線部分が形成されており、かかる直線部分において屈曲可能に相互に一体連結されている。そして、この連結部134が折り曲げられることにより、蓋体132がケース本体130に対して屈曲されて重ね合わされる。これにより、液収容部86が開口するケース本体130の上面に蓋体132が重ね合わされて、液収容部86が覆蓋されるようになっている。なお、かかる連結部134での屈曲操作性を向上させるために、例えばミシン目状の不連続な切込みを入れることも有効である。また、図25〜26では、その理解を容易とするために、第二の実施形態と同様な構造とされた部材及び部位に対して、それぞれ、第二の実施形態と同一の符号を付しておく。
【0101】
次に、図27〜28には、本発明の第四の実施形態としてのコンタクトレンズ殺菌用ケース140が示されている。かかるコンタクトレンズ殺菌用ケース140は、横長の略矩形ブロック形状とされたケース本体142に対して、その上面に開口する左右一対のレンズ収容部144,144が形成されている。なお、図示はされていないが、ケース本体142に上方から被せられて着脱可能に装着される蓋体が別途に設けられる。この蓋体がケース本体142の上面および外周面に重ね合わされることにより、一対のレンズ収容部144,144が覆われる。
【0102】
上記ケース本体142は、下方に開口する中空構造とされており、全体に所定厚さの一体樹脂成形品にて構成されている。なお、周壁146の下端開口周縁部には、外周面上に突出する鍔状部148が一体形成されており、この下端面においてテーブル等の略水平な支持面上に載置されて使用されるようになっている。
【0103】
また、ケース本体142の上壁150には、左右両側部分において、それぞれ、上方に向かって開口する略半球状の凹所152が形成されており、これら一対の凹所152によって液収容部が構成されている。更に、各凹所152には、籠状柵体154が収容状態で組み付けられている。この籠状柵体154は、例えば合成樹脂材の成形品にて構成されており、下方に向かって凹となる浅底の籠又はざる状構造とされている。即ち、複数の骨格が相互連結されることによって骨格間に隙間が形成された多孔構造とされている。特に本実施形態では、径方向に略放射状に延びる骨格と周方向に環状に延びる骨格が一体的に連結された多孔構造体とされており、その球状凹面の曲率半径が、コンタクトレンズ155の凸側の曲率半径よりも大きくされている。
【0104】
この籠状柵体154は、下方に向かって凸となる状態でケース本体142の凹所152に収容されており、籠状柵体154の外周部分がケース本体142の凹所152の内周壁面で支持されることにより、凹所152の深さ方向中間部分に籠状柵体154が配設支持されている。なお、ケース本体142の凹所152の内面には、深さ方向中間部分で内方に突出する柵体支持突起156が形成されており、この柵体支持突起156で籠状柵体154の外周部分が係止されて位置決め支持され、必要に応じて固着されることにより、籠状柵体154が凹所152内の所定位置に固定的に組み付けられている。
【0105】
そして、ケース本体142の凹所152内には、籠状柵体154の上方にレンズ収容部144が形成されており、この籠状柵体154で支持された状態で、コンタクトレンズ155がレンズ収容部144内に収容されるようになっている。要するに、液収容部としての凹所152内において、籠状柵体154よりも上側領域がレンズ収容部144とされているのである。そして、かかるコンタクトレンズ155は、籠状柵体154で支持された状態で、凹所152内に収容される過酸化水素水に浸漬されて殺菌処理されるようになっている。
【0106】
また、ケース本体142の凹所152には、その深さ方向中間部分に籠状柵体154が配設されることで、籠状柵体154よりも下方の凹所152の底部に触媒収容部158が形成されている。そして、この触媒収容部158に、金属触媒160が収容配置されている。なお、かかる金属触媒160は、第一の実施形態の金属触媒14と同様に、単一又は複数の材料からなる金属触媒で形成されていても良いし、適当な基材の表面に金属触媒層が付着された複合材料で形成されていても良い。特に、本実施形態では、浮力を調節する必要もなく、凹所152の底面や籠状柵体154から分離独立していても良いし、それら凹所152の底面や籠状柵体154に固着されていても良い。特に本実施形態では、籠状柵体154の隙間の大きさ及び形状が調節されることにより、収容される過酸化水素水の流通は許容するが、コンタクトレンズ155や金属触媒160の通過は阻止し得るようになっている。それ故、かかる金属触媒160として、ケース本体142に対して固定されていない粒状体等を採用しつつ、コンタクトレンズ155への接触が回避され得る。要するに、触媒収容部158から外部への金属触媒160の移動が籠状柵体154で阻止されており、この籠状柵体154によって、金属触媒160のコンタクトレンズ155への接触を防止する接触阻止手段が構成されているのである。
【0107】
従って、本実施形態のコンタクトレンズ殺菌用ケース140においても、ケース本体142の左右一対の凹所152、152に対してそれぞれ過酸化水素水を注入すると共に、一対の凹所152、152に形成されたレンズ収容部144,144に対して左右のコンタクトレンズ155、155をそれぞれ投入することにより、過酸化水素水によるコンタクトレンズ155、155の殺菌処理を行うことが出来る。その際、一対のレンズ収容部144、144が、何れも、ケース本体142の上壁150で上方に向かって開口されており、籠状柵体154で形成されたレンズ収容部144の凹形底面上でコンタクトレンズ155が平置状態に支持されて、レンズ収容部144に収容されることから、使用者がコンタクトレンズ155をレンズ収容部144に対して容易に挿脱することが出来て、優れた使用性が発揮される。
【0108】
また、金属触媒160を採用したことにより、過酸化水素水に対して目的とする中和反応が安定して発現されることとなり、目的とするコンタクトレンズ155への殺菌処理を高い信頼性で安定して行うことが出来る。しかも、金属触媒160へのコンタクトレンズ155の直接の接触が完全に防止されることから、コンタクトレンズ155が触媒表面に付着することによる触媒効率の低下を防止できる。さらに、コンタクトレンズ155への重金属の付着の進行が可及的に防止されると共に、表面の粗い金属触媒160への干渉に起因するコンタクトレンズ155の傷付きが防止されて、ユーザーの取扱いも容易となる。
【0109】
また、金属触媒160がレンズ収容部144に収容されるコンタクトレンズ155よりも下方に収容されていることにより、金属触媒160の周囲で発生した酸素ガスの浮上に伴って、金属触媒160の上方にあるレンズ収容部144内のコンタクトレンズ155の周辺において、過酸化水素水が効率的に循環せしめられることとなる。更に、コンタクトレンズ155の表面を酸素ガスの気泡が通過することにより、酸素ガスによる接触や対流による洗浄効果も期待できる。
【0110】
なお、コンタクトレンズ155に触れる領域、例えば籠状柵体154の凹側表面等には、必要に応じて、表面処理が施される。この表面処理は、鏡面加工等による表面粗さの改善の他、親水性を向上させたり、コンタクトレンズ155の張り付きを防止することが出来る、例えばプラズマ処理やコロナ放電処理等が例示される。
【0111】
また、本実施形態のコンタクトレンズ殺菌用ケース140においても、金属触媒160による中和の状態や過酸化水素水による殺菌の状態等を容易に確認することが出来るように、ケース本体142と蓋体との少なくとも一方を、透明樹脂にて形成することが望ましい。
【0112】
さらに、図29には、本発明の第五の実施形態としてのコンタクトレンズ殺菌用ケース170が示されている。
【0113】
かかるコンタクトレンズ殺菌用ケース170は、横長で中実の矩形ブロック形状とされたケース本体172を備えている。このケース本体172には、上面に開口する左右一対の液収容部174,174が形成されており、これら液収容部174,174の内部に過酸化水素水が収容されるようなっている。なお、第四の実施形態と同様、ケース本体172に対して着脱可能に装着される図示しない蓋体によって、一対の液収容部174,174が覆蓋されるようになっている。
【0114】
液収容部174は、円形の底面176と円筒形の内周面178を備えた円形凹形状とされており、その内部に略傘形又は茸形の支持突部180が、収容状態で設けられている。この支持突部180には、ストレートな柱状の脚部182の上端に対して、軸直角方向に広がる傘状頭部184が一体的に形成されている。そして、脚部182の下端が、液収容部174の底面176の中央に開口形成された支持穴185に対して圧入固着されることにより、支持突部180が、液収容部174内の中央部分に立設されている。
【0115】
この支持突部180の傘状頭部184は、略凹形球状を有しており、その上端面において略浅底皿状のレンズ収容部186が形成されている。また、かかる傘状頭部184には、厚さ方向に貫通する複数の通孔188が形成されている。なお、傘状頭部184の外径寸法は、液収容部174の内径寸法よりも僅かに小さくされており、傘状頭部184の外周面上には、液収容部174の内周面178との間に環状の隙間が形成されている。そして、このレンズ収容部186に対して、コンタクトレンズ190が載置されて、収容状態で支持されるようになっている。
【0116】
また、液収容部174において、傘状頭部184より底側は、触媒収容部192とされている。要するに、液収容部174は、傘状頭部184により、底側の触媒収容部192と開口側のレンズ収容部186とに仕切られている。そして、この触媒収容部192に対して、金属触媒194が収容配置されている。
【0117】
かかる金属触媒194は、環状を有しており、支持突部180の脚部182に対して遊挿状態で組み付けられている。また、金属触媒194の中心孔196の口径は、支持突部180の傘状頭部184の外径寸法よりも小さくされており、金属触媒194が支持突部180から抜け出して離脱することが、傘状頭部184で防止されている。このように、支持突部180の傘状頭部184は、液収容部174内部での金属触媒194の移動を制限すると共に、金属触媒194とレンズ収容部186に収容されたコンタクトレンズ190との接触を防止する接触阻止手段を構成している。
【0118】
なお、金属触媒194は、単一又は複数の材料からなる金属触媒で形成されていても良いし、適当な基材の表面に金属触媒層が付着された複合材料で形成されていても良く、中空構造としても良い。また、第一の実施形態の金属触媒14と同様に、下面に開口するくぼみやそこに貯留された酸素ガスの排出路を形成したり、図20に示した金属触媒107のように表面に凹凸を形成したり、図21に示した金属触媒108のように外周面に羽根を形成したり、図24に示した金属触媒120のように側周面で下方に開口する気泡捕捉部を設けたり等して、その浮力が調節される。
【0119】
これにより、金属触媒194は、触媒収容部192内での過酸化水素水に対する中和反応に際して、発生する酸素ガスによる浮力作用に基づいて浮上し、支持突部180の脚部182の軸方向上方に変位するようになっている。また、金属触媒194の表面に形成される凹凸等に対して酸素ガスの浮力が作用することで、金属触媒194を中心軸周りに回転変位させることも可能である。
【0120】
一方、過酸化水素水の中和反応が終了すると、金属触媒194への酸素ガスの浮力作用が低下又は消失し、過酸化水素水(水)よりも比重の大きい金属触媒194が沈下変位する。そして、酸素ガスの発生が無くなると共に、図29に示されているように、金属触媒194が、液収容部174の底面176に載置された状態となる。
【0121】
それ故、本実施形態のコンタクトレンズ殺菌用ケース170では、第四の実施形態と同様に、一対のレンズ収容部186,186の凹形底面上で左右のコンタクトレンズ190,190がそれぞれ平置状態に支持されて収容されることから、コンタクトレンズ190をレンズ収容部186に対して容易に挿脱することが出来、コンタクトレンズ190の殺菌のための作業をユーザーが容易且つ速やかに行うことが可能となる。また、金属触媒194をコンタクトレンズ190に非接触に配置したことにより、コンタクトレンズ190への殺菌処理を高い信頼性で安定して行うことが出来ると共に、コンタクトレンズ190への重金属の付着の進行やコンタクトレンズ表面の傷付きも効果的に防止され得る。
【0122】
特に、本実施形態のコンタクトレンズ殺菌用ケース170においては、第四の実施形態と同様、レンズ収容部186よりも下方にだけ金属触媒194が位置している点で、例えば前記特許文献5に記載されているようにレンズ収容部186の側周面を含む全内面に亘って金属触媒が配されている従来構造とは異なる。それ故、レンズ収容部186の略中央に配されるコンタクトレンズ190の下方から、レンズ収容部186の中央部分においてだけ、中和反応で発生する酸素ガスが過酸化水素水中を上昇することとなる。その結果、レンズ収容部186の過酸化水素水には、レンズ収容部186の中央部分で上昇し、外周部分では下降するように、循環水流が効果的に生ぜしめられるのであり、この循環水流によって、レンズ収容部186内の過酸化水素水に対して効率的な攪拌作用が発揮される。従って、過酸化水素水における中和反応が全体に略均一に進むこととなり、コンタクトレンズ190に対する殺菌処理もその全体に対して一層安定して施され得る。
【0123】
なお、本実施形態では、ケース本体172と、傘状頭部184及び蓋体との、少なくとも一方を透明な樹脂で形成することが望ましい。それにより、過酸化水素水によるコンタクトレンズの殺菌処理に際して、金属触媒194を外部から容易に視認して、殺菌処理に伴う中和反応の進行状況を確認することが容易となる。
【0124】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はこれらの具体的な記載によって限定されるものでない。例えば、図27〜28に示されたコンタクトレンズ殺菌用ケース140や図29に示されたコンタクトレンズ殺菌用ケース170においても、左右の一対の液収容部を相互に連通する連通路を、例えば上面に開口する溝構造等で形成しても良く、更に図13に示されたコンタクトレンズ殺菌用ケース16に示されている如き触媒収容部24を設けて左右の一対の液収容部に連通させることにより、かかる一対の液収容部に収容した金属触媒に加えて、該触媒収容部において更に別の金属触媒を追加設置することも可能である。
【0125】
また、本発明においては、必ずしも可動型の金属触媒を採用する必要はなく、例えば、図27〜28に記載のコンタクトレンズ殺菌用ケース140において、籠状柵体154で覆われるレンズ収容部144の底部中央の表面に金属触媒を固着したり被着形成することも可能であり、籠状柵体154においてコンタクトレンズ155に接触しない凸側表面(レンズ収容部144の底面との対向面)だけに金属触媒を被着形成しても良い。或いは、図29に記載のコンタクトレンズ殺菌用ケース170において、支持突部180の脚部182に金属触媒を固着したり、脚部182の表面に金属触媒を被着形成しても良い。
【符号の説明】
【0126】
10,80,130,142,172:ケース本体、12,132:蓋体、14,106,107,108,120,160,194:金属触媒、16,140,170:コンタクトレンズ殺菌用ケース、24,92,158,192:触媒収容部、26,98,144,186:レンズ収容部、32:隔壁部、44:過酸化水素水、60:支持ロッド、62:保持突起、64:基材、66:触媒層、68:くぼみ、70:排出路、155,190:コンタクトレンズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化水素水の液中に左眼コンタクトレンズ及び右眼コンタクトレンズを浸漬して殺菌するための一対のレンズ収容部がそれぞれ上方に向かって開口して形成されており、それぞれの該レンズ収容部において該コンタクトレンズの凹側又は凸側のレンズ面を開口部に向けた平置き状態で収容されるようになっている一方、該過酸化水素水の分解反応に触媒作用を発揮する金属触媒が、該過酸化水素水に接触せしめられる位置に設けられているコンタクトレンズ殺菌用ケースにおいて、
前記一対のレンズ収容部と前記金属触媒が収容された触媒収容部とがそれぞれ上方に向かって開口する凹所として形成されていると共に、該一対のレンズ収容部と該触媒収容部とを仕切る隔壁部分においてその上端部に開口して該一対のレンズ収容部と該触媒収容部との間で前記過酸化水素水の水面を連続させる連通溝が形成されており、該連通溝によって該一対のレンズ収容部と該触媒収容部との間での前記コンタクトレンズおよび前記金属触媒の移動は阻止するが前記過酸化水素水の流動は許容する相互連通路が設けられていることを特徴とするコンタクトレンズ殺菌用ケース。
【請求項2】
前記一対のレンズ収容部を構成する前記各凹所の底面に対して他部材を介することなく直接にコンタクトレンズが平置き状態で載置されるようになっている請求項1に記載のコンタクトレンズ殺菌用ケース。
【請求項3】
前記相互連通路が、前記一対のレンズ収容部と前記触媒収容部とを構成する各前記凹所を相互に連通することによって循環流路が形成されている請求項1又は2に記載のコンタクトレンズ殺菌用ケース。
【請求項4】
前記一対のレンズ収容部の間に位置して前記触媒収容部が設けられており、
該触媒収容部の開口周縁部の対向部分において各一方の該レンズ収容部に接続される一対の隣接連通路が形成されて、該一対のレンズ収容部が該触媒収容部を介して接続されていると共に、
該一対のレンズ収容部と該触媒収容部の配列方向と並列的に延びる並設連通路が形成されており、該並設連通路の長さ方向両端部分が各一方の該レンズ収容部に接続されていると共に、該並設連通路の長さ方向中間部分が該触媒収容部に接続されていることにより、
該一対の隣接連通路と該並設連通路とを含んで前記循環流路が形成されている請求項3に記載のコンタクトレンズ殺菌用ケース。
【請求項5】
前記一対のレンズ収容部および前記触媒収容部における開口部分の周辺を取り囲む共通凹部が形成されており、この共通凹部においてそれら一対のレンズ収容部と触媒収容部が開口せしめられている請求項1〜4の何れか1項に記載のコンタクトレンズ殺菌用ケース。
【請求項6】
前記一対のレンズ収容部の開口部を覆蓋する蓋体の内側面にそれぞれ内方凸部が設けられており、該蓋体が該レンズ収容部の開口部に装着されることにより、該内方凸部が該レンズ収容部に収容された前記過酸化水素水の液中にまで入り込む請求項1〜5の何れか1項に記載のコンタクトレンズ殺菌用ケース。
【請求項7】
前記蓋体が前記レンズ収容部の開口部に装着されることにより、該レンズ収容部において、前記コンタクトレンズが凹側のレンズ面を上方に向けた状態で、該レンズ収容部の底面と該蓋体の前記内方凸部との対向面間に位置せしめられる請求項6に記載のコンタクトレンズ殺菌用ケース。
【請求項8】
前記一対のレンズ収容部の何れにおいても、前記触媒収容部に接続される前記相互連通路が、周長の1/5以上の部分で開口して接続されている請求項1〜7の何れか1項に記載のコンタクトレンズ殺菌用ケース。
【請求項1】
過酸化水素水の液中に左眼コンタクトレンズ及び右眼コンタクトレンズを浸漬して殺菌するための一対のレンズ収容部がそれぞれ上方に向かって開口して形成されており、それぞれの該レンズ収容部において該コンタクトレンズの凹側又は凸側のレンズ面を開口部に向けた平置き状態で収容されるようになっている一方、該過酸化水素水の分解反応に触媒作用を発揮する金属触媒が、該過酸化水素水に接触せしめられる位置に設けられているコンタクトレンズ殺菌用ケースにおいて、
前記一対のレンズ収容部と前記金属触媒が収容された触媒収容部とがそれぞれ上方に向かって開口する凹所として形成されていると共に、該一対のレンズ収容部と該触媒収容部とを仕切る隔壁部分においてその上端部に開口して該一対のレンズ収容部と該触媒収容部との間で前記過酸化水素水の水面を連続させる連通溝が形成されており、該連通溝によって該一対のレンズ収容部と該触媒収容部との間での前記コンタクトレンズおよび前記金属触媒の移動は阻止するが前記過酸化水素水の流動は許容する相互連通路が設けられていることを特徴とするコンタクトレンズ殺菌用ケース。
【請求項2】
前記一対のレンズ収容部を構成する前記各凹所の底面に対して他部材を介することなく直接にコンタクトレンズが平置き状態で載置されるようになっている請求項1に記載のコンタクトレンズ殺菌用ケース。
【請求項3】
前記相互連通路が、前記一対のレンズ収容部と前記触媒収容部とを構成する各前記凹所を相互に連通することによって循環流路が形成されている請求項1又は2に記載のコンタクトレンズ殺菌用ケース。
【請求項4】
前記一対のレンズ収容部の間に位置して前記触媒収容部が設けられており、
該触媒収容部の開口周縁部の対向部分において各一方の該レンズ収容部に接続される一対の隣接連通路が形成されて、該一対のレンズ収容部が該触媒収容部を介して接続されていると共に、
該一対のレンズ収容部と該触媒収容部の配列方向と並列的に延びる並設連通路が形成されており、該並設連通路の長さ方向両端部分が各一方の該レンズ収容部に接続されていると共に、該並設連通路の長さ方向中間部分が該触媒収容部に接続されていることにより、
該一対の隣接連通路と該並設連通路とを含んで前記循環流路が形成されている請求項3に記載のコンタクトレンズ殺菌用ケース。
【請求項5】
前記一対のレンズ収容部および前記触媒収容部における開口部分の周辺を取り囲む共通凹部が形成されており、この共通凹部においてそれら一対のレンズ収容部と触媒収容部が開口せしめられている請求項1〜4の何れか1項に記載のコンタクトレンズ殺菌用ケース。
【請求項6】
前記一対のレンズ収容部の開口部を覆蓋する蓋体の内側面にそれぞれ内方凸部が設けられており、該蓋体が該レンズ収容部の開口部に装着されることにより、該内方凸部が該レンズ収容部に収容された前記過酸化水素水の液中にまで入り込む請求項1〜5の何れか1項に記載のコンタクトレンズ殺菌用ケース。
【請求項7】
前記蓋体が前記レンズ収容部の開口部に装着されることにより、該レンズ収容部において、前記コンタクトレンズが凹側のレンズ面を上方に向けた状態で、該レンズ収容部の底面と該蓋体の前記内方凸部との対向面間に位置せしめられる請求項6に記載のコンタクトレンズ殺菌用ケース。
【請求項8】
前記一対のレンズ収容部の何れにおいても、前記触媒収容部に接続される前記相互連通路が、周長の1/5以上の部分で開口して接続されている請求項1〜7の何れか1項に記載のコンタクトレンズ殺菌用ケース。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2011−28302(P2011−28302A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251532(P2010−251532)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【分割の表示】特願2010−528620(P2010−528620)の分割
【原出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000138082)株式会社メニコン (150)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【分割の表示】特願2010−528620(P2010−528620)の分割
【原出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000138082)株式会社メニコン (150)
【Fターム(参考)】
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