説明

コンテナシャシの渡し板装置

【課題】兼用のコンテナシャシの後部に、傾斜状態が変更自在な渡し板を設置して、高さの異なるプラットフォームへの荷役作業を円滑化し、かつ、作業員の負担を軽減する。
【解決手段】兼用のコンテナシャシの後部上面に、エアシリンダ20によって上下に移動する渡し板10を設け、荷役作業車がプラットフォームからコンテナシャシ上を走行しコンテナ内に直接入り込めるようにする。エアシリンダ20の両側には支柱40とこれを保持する保持装置30が配置されており、支柱40の移動量は、調整外筒43の設定位置で規制される。エアシリンダ20を作動して渡し板10を上方に移動し、両側の支柱40の移動量が規制された位置において保持装置30で固定する。両側の支柱40の移動量は任意に設定可能であって、渡し板10を傾斜させて固定できるので、荷役作業車が高さの異なるプラットフォームから走行できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送用容器であるコンテナを積載し、トラクタに牽引されるトレーラとして構成されたコンテナシャシ、特に長さの異なるコンテナを積載可能に構成されたコンテナシャシの渡し板装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
輸送用容器として用いられるコンテナは、貨物の積込み及び積出し、すなわち積み降ろし作業が容易であり、反復して長期の使用が可能である等の特性を有している。また、船舶、車両等の種々の輸送機関に積載することができるので、コンテナは、近年各種の貨物の輸送用容器として盛んに利用されている。こうしたことから、コンテナについては国際規格等によって長さ寸法などが定められており、長さが20フィート(約6m)のコンテナ及び40フィート(約12m)のコンテナが多く用いられる。
【0003】
コンテナは大型の容器であって、車両で陸上を運送する場合は、通常、トラクタで牽引される車台であるコンテナシャシ上に積載される。コンテナシャシの中には、長さの異なるコンテナを積載可能に構成された、つまり例えば20フィートのコンテナと40フィートのコンテナとに兼用できるようになっているコンテナシャシがある。この兼用のコンテナシャシは、図7に示されるように、40フィートのコンテナに対応できるよう全長が長く、コンテナシャシの最後部の車輪よりも後方に延長された相当長いオーバーハング部を備えている。
【0004】
そして、兼用のコンテナシャシに20フィートのコンテナを1個積載するときには、そのほぼ中央部に積載する。これは、コンテナシャシの車輪に過大な軸重が作用することを防止するためであり、中央部に積載することにより、コンテナの荷重をカプラ(コンテナシャシとトラクタとの連結具)を介してトラクタの車輪にも配分し、コンテナシャシの車輪の軸重を軽減している。
【0005】
コンテナシャシは、図1に示すように、前後方向に全長に亘って延びる2本のメインビーム4を備え、両方のメインビームを連結するクロス部材5を前後方向の適所に配置した、いわば梯子状の構造を基本とするものである。コンテナシャシの前方の下部にはトラクタのカプラに連結される連結ピン1が固着され、また、横方向に延長されたクロス部材6A〜6Dの端部にはツイストロックと呼ばれる緊締具が設けてあり、コンテナ下面のコーナー部等に開けられた孔にツイストロックを挿入した後これを回転させることにより、コンテナはコンテナシャシに位置決めされ固定される。兼用のコンテナシャシでは、前後方向の端部に40フィートコンテナ用ツイストロック(緊締具)7A、7Dが設けられる以外に、中央部に20フィートのコンテナを積載するため、コンテナシャシの中間部にもツイストロック7B、7Cが設置される。このような兼用のコンテナシャシは、一例として特開平11−222072号公報に開示されている。
【特許文献1】特開平11−222072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、コンテナ内の貨物の積み降ろし作業を行うときは、フォークリフト等の荷役作業車を直接コンテナ内部に入り込ませ、コンテナをコンテナシャシに積載したまま貨物の出し入れを行うことが望ましい。そのため、コンテナ貨物を取扱う施設には、コンテナシャシに積載したコンテナの床面とほぼ一致する高さのプラットフォームが設けられており、通常は、図7に示すように、コンテナシャシをこのプラットフォームに後端が接するように位置付けし、コンテナの後端部の扉を開いてプラットフォームから荷役作業車を出入させる。兼用のコンテナシャシに40フィートのコンテナを積載したときは、コンテナ後端部がコンテナシャシの後端と一致するので、このような積み降ろし作業が可能である。しかし、20フィートのコンテナを中央に積載しているときは、コンテナシャシは平面が梯子状の骨組みになっているため、コンテナの後端部からフォークリフト等を走行させ、コンテナシャシのオーバーハング部を通過してコンテナ内部に入り込ませるのは不可能である。
【0007】
兼用のコンテナシャシの中央部に20フィートのコンテナを積載したとき、フォークリフト等の走行を可能とする目的で、上記特許文献1に記載された兼用のコンテナシャシにおいては、コンテナシャシの後部の上面に、コンテナの床面との段差を埋める厚さを有する渡し板を取り付けてある。この渡し板は平板状であって、分解可能な蝶番によってコンテナシャシの後端部に着脱自在かつ回動自在に連結されており、20フィートのコンテナを積載したときは、プラットフォーム、コンテナの床面及び渡し板の上面が略同一高さとなって、フォークリフト等の走行を可能とする。40フィートのコンテナを積載する場合には、連結部の蝶番を分解して渡し板を取り外す構成となっている。
【0008】
こうした渡し板を設けると、20フィートのコンテナ内に直接フォークリフト等が入り込み積み降ろし作業を実施できるので、コンテナシャシからコンテナを取り外す必要はなく、貨物の積み降ろしの利便性が大きく向上する。荷役作業車を使用せず、人手によって貨物の積み降ろしを行う場合であっても、渡し板が存在すると作業者はその上で作業を実施できることとなり、作業性が非常に良好となる。
しかし、貨物積み降ろし用のプラットフォームの高さは一定であるとは限らず、場所によってかなりの高低差が存在する。さらに、コンテナシャシは車輪のサスペンション機構によって支持されており、コンテナ内の貨物の重量が変わるとコンテナの床面高さが多少変化することに起因して、プラットフォームとの間に高低差が生じる場合もある。特許文献1に示されるような、コンテナの床面と同一高さとなる渡し板では、プラットフォームの高さがその高さに一致しない場合には、両者の間に段差があるため、フォークリフト等荷役作業車の走行が不能となり、走行不能とならないまでも、段差を通過するときにフォークリフト等に激しい振動が発生し、貨物を損傷する事態を招く。
【0009】
また、渡し板は、その上を貨物を積んだ荷役作業車等が走行する関係上、剛性及び強度が大きいものでなければならず、必然的に重量の大きいものとなる。重い渡し板を、蝶番を中心に回動したり着脱したりする作業は、作業者に負担が掛かり、また、落下等の危険を避けるため注意深く行う必要のある作業となる。
本発明の課題は、貨物の積み降ろし作業の容易化を図るため、兼用のコンテナシャシに設置される渡し板において生じる上記の問題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題に鑑み、本発明は、前後方向の両端部とともにその中間部にも緊締具を取り付けた兼用のコンテナシャシにおいて、コンテナシャシの後部上面に渡し板を設け、この渡し板をアクチュエータによって上下に移動させ、さらに、アクチュエータの両側に移動量が調整可能な支柱をそれぞれ配置し、渡し板をコンテナシャシに対し任意の状態で保持することができるようにしたものである。すなわち、本発明は、
「コンテナシャシに装備される渡し板装置であって、
前記コンテナシャシには、前後方向の両端部にコンテナ用の緊締具が取り付けられるとともに、前後方向の中間部にコンテナ用の緊締具が取り付けられ、
前記コンテナシャシの上面には、前記中間部のコンテナ用緊締具の近傍から前記コンテナシャシの後端部に至る部分に渡し板が設置されており、さらに、
前記コンテナシャシには、前記渡し板を上下方向に移動するアクチュエータが装着され、前記アクチュエータの操作端が前記渡し板の中間位置に連結されるとともに、前記渡し板における前記中間位置の両側の位置には、上下方向に移動する支柱がそれぞれ連結されており、前記支柱には、移動量を調整可能に規制する規制装置が設けられ、かつ、前記コンテナシャシには、それぞれの前記支柱を保持する保持装置が装着されている」
ことを特徴とするコンテナシャシ用渡し板装置となっている。
【0011】
請求項2に記載のように、前記支柱が、等間隔に形成された複数の孔を備えるとともに、前記保持装置が、前記支柱に形成された複数の孔の一つに挿入される保持シャフトと、前記コンテナシャシに固着され前記支柱がスライドするよう嵌め込まれる固定外筒とを備え、かつ、前記固定外筒が、前記支柱を保持するとき前記保持シャフトが貫通する貫通孔を有する、ように構成することができる。このように構成したときは、請求項3に記載のように、前記支柱及び前記保持装置を前記コンテナシャシの横方向の両側にそれぞれ設置し、それぞれの前記保持装置の前記保持シャフトを左右連動ロッドによって互いに連結すること、さらには、請求項4に記載のように、前記左右連動ロッドの端部にコイルばねが連結された操作ハンドルを取り付け、その操作ハンドルを、前記コイルばねの張力により操作範囲の一端又は他端の位置に保持することが好ましい。
【0012】
また、請求項2乃至請求項4の構成を採用したときは、請求項5に記載のように、前記支柱に設けられる前記規制装置は、前記支柱に形成された複数の孔の一つに挿入される調整ピンと、前記固定外筒の下方で前記支柱の周りにスライドするよう嵌められた調整外筒とを備え、かつ、前記調整外筒は、前記調整ピンが貫通する貫通孔を有し、前記支柱が上方に移動したときは、前記固定外筒と当接して移動が規制される、よう構成することができる。
【0013】
請求項6に記載のように、本発明の前記アクチュエータは、空気圧によって作動されるエアシリンダであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
兼用のコンテナシャシの後部に装備される本発明の渡し板装置は、渡し板を上下に移動させるアクチュエータを備え、さらに、アクチュエータの両側に移動量が調整可能な支柱をそれぞれ配置している。アクチュエータは、流体圧等により動力で作動されるから、重量の大きな渡し板を人手によって移動させる必要はなく、作業者の負担は格段に減少することとなる。また、渡し板は、上下方向に移動可能に設置されており、兼用のコンテナシャシに40フィートのコンテナを積載するときは、コンテナシャシの上面に突出しない低位置まで移動させることができるから、コンテナの種類により渡し板を着脱する必要はなく、この面でも作業者の負担が軽減される。
【0015】
本発明の渡し板には、アクチュエータの操作端が連結される位置の両側に支柱がそれぞれ連結され、その移動量が規制装置によって調整可能となっている。このため、渡し板をアクチュエータにより上方に移動すると、渡し板における2つの支柱連結位置の高さが規制装置で設定される高さに達したときに上方への移動が停止し、この状態で渡し板の姿勢が自動的に固定される。両側の支柱の移動量は独立に調整できるので、渡し板は任意な状態で固定することが可能である。
例えば、20フィートのコンテナの床面高さと一致するプラットフォームへの貨物の積み降ろしを行うときは、渡し板がコンテナの床面高さと同じ位置で水平となるよう、両方の支柱の移動量を同一に設定する。また、コンテナの床面高さよりも高いプラットフォームへ積み降ろしをするときは、コンテナシャシの後端側の支柱の移動量を前方の支柱の移動量よりも大きくし、渡し板の後端がプラットフォームの高さと一致し前端がコンテナの床面高さと一致するよう、渡し板を傾斜させた状態で固定する。これによって、コンテナの床面高さよりも高いプラットフォームであってもフォークリフト等のスムースな走行が可能となり、貨物の積み降ろし作業の能率が向上することとなる。支柱の移動量を調整するための規制装置のセットは、プラットフォームのある施設に到着した際に行うが、その高さが予め分かっている場合には、出発時にセットすることもできる。
【0016】
上記のように渡し板の状態が固定されると、保持装置によって両側の支柱をコンテナシャシに固定し、渡し板が移動しないように保持する。この結果、渡し板の上を走行するフォークリフト等の重量は、両側の支柱によって支持され、アクチュエータには殆ど荷重が作用しない。したがって、アクチュエータは、渡し板を上方に移動させるだけの能力があれば十分であり、小型で軽量なものを使用することができる。
【0017】
請求項2の発明における保持装置では、渡し板を支持する支柱に、複数の孔を軸方向に整列させて等間隔に形成し、この支柱をコンテナシャシに固着された固定外筒にスライドするよう嵌め込み、支柱を保持するときは、保持シャフトを、固定外筒の貫通孔を介して支柱の複数の孔の一つに挿入する。この保持装置によれば、簡易な構成により調整可能な位置で支柱の固定保持を行うことができる。保持シャフトを支柱の孔に挿入する位置決めは、確実な固定保持方法であり、例えば摩擦を利用する固定方法と比べ、より大きな荷重を支持することが可能となる。
渡し板を支持する支柱及びその保持装置は、コンテナシャシの横方向の対称的な位置にそれぞれ2個ずつ配置することが望ましい。このように配置された保持装置の構成として請求項2の発明のものを採用したときは、請求項3の発明のように、保持装置の保持シャフトを左右連動ロッドによって互いに連結すると、左右連動ロッドをハンドル等で操作することにより両方の保持シャフトを同時に動かすことができる。さらに、請求項4の発明のように、コイルばねの張力により操作範囲の一端又は他端の位置に保持する操作ハンドル、つまりオーバーセンターロック機構付の操作ハンドル、を用いて左右連動ロッドを操作するよう構成すると、保持シャフトが簡易な機構により定位置に維持され、コンテナシャシの走行中の振動等に起因する保持シャフトの不測の移動が防止される。
【0018】
請求項5発明は、請求項2(又は請求項3、4)の保持装置を採用した支柱支持方法において、支柱に形成された等間隔の複数の孔を利用して、支柱の移動量の規制装置を構成するものである。請求項5の発明では、支柱の周りにスライドするよう嵌められた調整外筒を用い、渡し板に連結された支柱がアクチュエータの作動に伴い上方に移動したときに、調整外筒が保持装置の固定外筒と当接して移動が規制されるよう構成されている。支柱に対する調整外筒の位置は、調整外筒に設けられる貫通孔を介して、異なる支柱の孔に調整ピンを挿入することにより変更することが可能であり、このようにして支柱の移動量が調整される。したがって、移動量が可変の支柱を簡易に構成することができ、また、別体のストッパ等を設置することは不要となる。
【0019】
請求項6の発明は、渡し板を移動するアクチュエータに空気圧で作動するエアシリンダを用いるものである。コンテナシャシには、通常、車輪のブレーキ用のエアタンクが搭載されており、アクチュエータにエアシリンダを用いたときは、容易に動力源を得ることが可能であって、アクチュエータへの配管も簡素となる。また、空気には圧縮性が存在するので、支柱の移動量を規制する規制装置により渡し板の移動が停止したり、フォークリフトの重量等により渡し板が多少撓んだりしたとしても、アクチュエータが損傷を受けることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づいて、本発明のコンテナシャシの渡し板装置について説明する。図1には、本発明の渡し板装置を装備した、兼用コンテナシャシ全体の平面図及び正面図を示す。図1の平面図では、中心線上方において渡し板10をハッチングで示し、中心線下方においては渡し板10を取除いた状態を示している。また、図1の正面図は、渡し板10の部分においては中央断面からコンテナシャシの右側を見た図を表すものであり、図2には、その要部拡大図を表す。図3は、渡し板10の保持装置等を示す斜視図であってコンテナシャシの左側のものを表し、図4はA−A矢視図である。
【0021】
コンテナシャシは、図示しないトラクタに牽引されるものであって、図1に示すように、コンテナシャシの前方の下部にはトラクタのカプラに連結される連結ピン1が固着され、後方には、この実施例においては片側に3個の車輪2A、2B、2Cが板ばね等のサスペンション機構を介して連結されている。また、ピン1と車輪との間には、トラクタを切り離したときにコンテナシャシの前方を支える支脚3が設置され、これは車両の走行中には引き上げられるようになっている。
【0022】
コンテナシャシは、前後方向に全長に亘って延びる2本のメインビーム4を備え、両方のメインビーム4の間には、これらを連結する複数のクロス部材5が配置される。コンテナを位置決めし固定するツイストロックは、コンテナシャシの横方向に伸びる、つまりメインビーム4と直交し、それを超える長さまで延長されたクロス部材の両端に取り付けられる。40フィートのコンテナと20フィートのコンテナとを積載する兼用コンテナシャシでは、コンテナシャシの前端と後端に設けられたクロス部材6A、6Dに、40フィートのコンテナを固定するためのツイストロック7A、7Dが装着されるとともに、コンテナシャシの中間部に設置されたクロス部材6B、6Cの先端にも、20フィートのコンテナを固定するためのツイストロック7B、7Cが装着される。ツイストロックに代え他の構造の緊締具を用いてもよい。
【0023】
コンテナシャシの後部であるオーバーハング部には、本発明の渡し板装置が設けられている。渡し板装置は、図1の平面図においてハッチングで示すように、コンテナシャシの上面に置かれる長方形の渡し板10を備え、渡し板10は、20フィートコンテナの後端部を固定するツイストロック7Cの近傍からコンテナシャシの後端部に至る範囲を、コンテナシャシの横方向の略全長に亘って覆うものとなっている(中心線下方では渡し板10を取除いた状態を示す)。渡し板10を載置する部分のメインフレーム4の高さは、渡し板10の厚さ分だけ前方のメインフレームよりも低く設定されている。渡し板10の下方には、渡し板10を上下に移動する2個のエアシリンダ20が、コンテナシャシの中心線に対して対称的に配置され、ブラケットによりメインビーム4の内側に固着されており、そして、それぞれのエアシリンダ20の前後には、渡し板10を固定する保持装置30がやはり中心線に対して対称的に配置されブラケットによってメインビーム4に固着される。エアシリンダ20には、図示はしないが、エアタンク8からの圧縮空気供給用配管が導かれ、制御弁等からなるエアシリンダの作動装置が設けられている。
【0024】
図2に示すように、渡し板10の下面には補強のための複数の型材が固着されており、エアシリンダ20のロッド21の操作端が、渡し板10の下面の略中央に枢着される。その前方には、渡し板10が上方に移動したときの荷重を支持する支柱40が枢着され、支柱40は、メインビーム4の内側に固着される保持装置30の固定外筒31に嵌め込まれ、上下方向にスライド可能となっている。渡し板10の下面の後端部付近にも、同様な構成を備えた支柱40が枢着されるが、後端部付近の支柱40を枢着するブラケットには、渡し板10の回動に伴う前後方向の微小なずれを吸収するため、長孔が形成されている。
【0025】
ここで、本発明の保持装置30及び支柱40の詳細な構造並びに操作方法について、図3の斜視図を参照して説明する。
支柱40は、中空になった断面矩形の軸方向に長い角柱であって、軸方向に等間隔で形成された同径の複数の孔41を有する。支柱40の上部には、渡し板10の下面に固着されたブラケットの孔に係合するピン42が設けられ、これによって、支柱40は渡し板10に枢着されるとともに、保持装置30の固定外筒31に嵌め込まれ、上下方向にスライドすることができるように構成される。固定外筒31は、支柱40を案内するよう断面が矩形であって、支柱40の複数の孔と同一径の貫通孔が形成されたボス部32を有し、ブラケットによってメインビーム4の内側側面に固着される。
【0026】
固定外筒31のボス部32に形成された貫通孔には、コンテナシャシの前後方向に摺動する保持シャフト33が嵌め込まれ、その端部には、シャフト操作レバー34が連結されている。図示の位置では、保持シャフト33がボス部32に形成された貫通孔と支柱40の孔41の一つを通過して固定外筒31の後部まで達し、支柱40はメインビーム4に固定される。シャフト操作レバー34を回動すると、保持シャフト33は支柱40の孔41から引き抜かれ、支柱40は上下にスライド可能となる。シャフト操作レバー34の回動により保持シャフト33が摺動可能となるよう、両者はピンと長孔で連結され、保持シャフト33の移動範囲は長孔により限定される。
【0027】
シャフト操作レバー34を回動するための軸は左右連動ロッド35であって、図1に示すとおり、コンテナシャシの横方向に延びており、コンテナシャシに対称的に配置される左右の保持装置30のシャフト操作レバー34を同時に回動する。左右連動ロッド35は、コンテナシャシの一側においては、軸受ブラケットを経由しメインビーム4の側面を貫通して外側に延長され、その先端に、手動でシャフト操作レバー34を回動する操作ハンドル36が取り付けられる。延長させる方向は、作業者が道路の端側で操作できるようコンテナシャシの左側とすることが好ましい。
【0028】
図3のA−A矢視図である図4から分かるように、操作ハンドル36の中間点は、コイルばね37によりメインビーム4に固定された棒状ブラケット38の先端に連結されている。コイルばね37と棒状ブラケット38は、いわゆるオーバーセンターロックとして機能する位置に配置されており、コイルばね37の張力は、操作ハンドル36が図4の実線の位置にあるときは、シャフト操作レバー34を図面において時計回りに回動させるよう作用し、操作ハンドル36が操作中心を越えて2点鎖線の位置に来たときは、反時計回りに回動させるよう作用する。これにより、シャフト操作レバー34と連結された保持シャフト33を移動範囲の両端の位置に保持することができる。
【0029】
支柱40の下部には、エアシリンダ20により渡し板10とともに上昇する支柱40の移動量を規制するため、中空の矩形断面を有する調整外筒43がスライド可能に嵌められている。調整外筒43は、支柱40の複数の孔41と同一径の貫通孔を備え、この貫通孔を通して調整ピン44を支柱40の孔41の一つに挿入することにより、支柱40の適宜の位置に取り付けられる。調整外筒43及び調整ピン44は、支柱40の移動量を調整可能に規制する規制装置を構成するものであり、支柱40が上方に移動したときは、調整外筒43の上端が固定外筒31の下端と当接して、それ以上の移動が不可能となる。
【0030】
次いで、本発明の渡し板装置の作動について、図5、図6も参照しながら説明する。
コンテナシャシが20フィートのコンテナを積載し走行状態にあるときは、エアシリンダ20には圧縮空気が供給されず、図5(a)に示すように、渡し板10は最下方の位置にあり、その上面は前方のメインフレーム4の上面と一致している。支柱40も最下方の位置にあり、走行中にはこの位置で渡し板10を固定するよう、支柱40の最上方の孔41に保持装置30の保持シャフト33が挿入される。渡し板10を最下方に位置させるとコンテナシャシの上面に突出しないから、渡し板10を取り外すことなく、40フィートのコンテナをコンテナシャシに積載することができる。
【0031】
20フィートのコンテナを積載したコンテナシャシがプラットフォームのある施設に到着すると、貨物積み降ろしの荷役作業が実施される。プラットフォームの高さがコンテナの床面と一致している場合は、図5(b)に示すように、渡し板10をコンテナシャシの上面と平行にコンテナの床面高さをまで上昇させる。そのため、作業者は、操作ハンドル36を操作して保持シャフト33を支柱40の孔41から引き抜くとともに、支柱40の移動量がコンテナ床面までの距離となるよう、支柱40に対する調整外筒43の位置を設定して調整ピン44で固定する。渡し板10をコンテナシャシの上面と平行にするには、前方及び後方の支柱40の同一の位置に、調整外筒43が固定されることとなる。
次いで、作業者はエアシリンダ20の作動装置を操作して、エアシリンダ20に圧縮空気を供給しロッド21を上昇させる。これにより、渡し板10は上方に移動するが、渡し板10がコンテナ床面まで平行に上昇した時点で、前方及び後方の支柱40に固定された調整外筒43が固定外筒31の下端に当接し、自動的に移動が停止する。作業者は、再び操作ハンドル36を回動して保持シャフト33を支柱40の孔41に挿入し、この位置で保持装置30によって支柱40をコンテナシャシに固定する。コンテナシャシの左右の保持シャフト33は、左右連動ロッド35で連結されているから、作業者はコンテナシャシの片側のみの作業で、両方の保持シャフト33を操作することができる。
【0032】
プラットフォームの高さがコンテナの床面よりも低いときは、渡し板10が前上がりとなり図6(a)に示す状態となるように、前方の支柱の移動量を後方の支柱の移動量よりも大きく設定して、両方の支柱40に調整外筒43を固定した後、エアシリンダ20を作動させる。逆に、プラットフォームの高さがコンテナの床面よりも高いときは、渡し板10が図6(b)に示す状態となるように、後方の支柱の移動量を前方の支柱の移動量よりも大きく設定した後、エアシリンダ20を作動させる。渡し板10がそれぞれの状態で停止したときは、前述の作業と同様に、操作ハンドル36を回動して保持装置30によりそれぞれの支柱40をその位置でコンテナシャシに固定する。
【0033】
このようにして、コンテナシャシのオーバーハング部に渡し板10が設置されると、フォークリフト等の作業車が20フィートのコンテナ内に直接入り込み、荷役作業を行うことが可能となる。また、プラットフォームとコンテナの床面との高さに相違がある場合でも、渡し板10を傾斜させることによりその間の段差が解消され、作業車がスムースに走行できるようになる。渡し板10は、エアシリンダ20を用いて移動させるため作業者には殆ど負担がかからず、そして、渡し板10上を走行する作業車の重量は、4本の支柱40によって支持され、エアシリンダ20のロッドに過大な荷重が作用することはない。
【0034】
以上詳述したように、本発明は、異なる長さのコンテナを積載する兼用のコンテナシャシにおいて、コンテナシャシの後部上面にアクチュエータによって上下に移動する渡し板を設け、さらに、アクチュエータの両側に支柱を配置して、渡し板をコンテナシャシに対し任意の状態で保持することができるようにしたものである。上記の実施例では、20フィートコンテナと40フィートコンテナとの兼用コンテナシャシについて説明したが、その他の寸法のコンテナを積載するものについても本発明が適用可能であるのは言うまでもない。また、アクチュエータとして電動モータを用いること、あるいは、渡し板の保持装置として、ブレーキ装置と同様な摩擦材を支柱に圧接して保持する機構を採用することなど、上記実施例に対し種々の変形が可能であるのは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に基づくコンテナシャシの全体図である。
【図2】本発明の渡し板装置の要部拡大図である。
【図3】本発明の渡し板装置における保持装置等を示す斜視図である。
【図4】図3のA−A矢視図である。
【図5】本発明の渡し板装置の作動説明図である。
【図6】本発明の渡し板装置の作動説明図である。
【図7】コンテナシャシでの貨物の積み降ろし状態を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
2A〜2C 車輪
4 メインビーム
6A〜6D クロス部材(ツイストロック付)
7A〜7D ツイストロック
10 渡し板
20 エアシリンダ
30 保持装置
31 固定外筒
33 保持シャフト
34 シャフト操作レバー
35 左右連結ロッド
36 操作ハンドル
37 コイルばね
40 支柱
41 孔
43 調整外筒
44 調整ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナシャシに装備される渡し板装置であって、
前記コンテナシャシには、前後方向の両端部にコンテナ用の緊締具が取り付けられるとともに、前後方向の中間部にコンテナ用の緊締具が取り付けられ、
前記コンテナシャシの上面には、前記中間部のコンテナ用緊締具の近傍から前記コンテナシャシの後端部に至る部分に渡し板が設置されており、さらに、
前記コンテナシャシには、前記渡し板を上下方向に移動するアクチュエータが装着され、前記アクチュエータの操作端が前記渡し板の中間位置に連結されるとともに、前記渡し板における前記中間位置の両側の位置には、上下方向に移動する支柱がそれぞれ連結されており、前記支柱には、移動量を調整可能に規制する規制装置が設けられ、かつ、前記コンテナシャシには、それぞれの前記支柱を保持する保持装置が装着されていることを特徴とするコンテナシャシ用渡し板装置。
【請求項2】
前記支柱は、等間隔に形成された複数の孔を備えるとともに、前記保持装置は、前記支柱に形成された複数の孔の一つに挿入される保持シャフトと、前記コンテナシャシに固着され前記支柱がスライドするよう嵌め込まれる固定外筒とを備え、かつ、前記固定外筒は、前記支柱を保持するとき前記保持シャフトが貫通する貫通孔を有する請求項1に記載のコンテナシャシ用渡し板装置。
【請求項3】
前記支柱及び前記保持装置が前記コンテナシャシの横方向の両側にそれぞれ設置され、それぞれの前記保持装置の前記保持シャフトは、左右連動ロッドによって互いに連結されている請求項2に記載のコンテナシャシ用渡し板装置。
【請求項4】
前記左右連動ロッドの端部には、コイルばねが連結された操作ハンドルが取り付けられており、前記操作ハンドルは、前記コイルばねの張力により操作範囲の一端又は他端の位置に保持される請求項3に記載のコンテナシャシ用渡し板装置。
【請求項5】
前記支柱に設けられる前記規制装置は、前記支柱に形成された複数の孔の一つに挿入される調整ピンと、前記固定外筒の下方で前記支柱の周りにスライドするよう嵌められた調整外筒とを備え、かつ、前記調整外筒は、前記調整ピンが貫通する貫通孔を有し、前記支柱が上方に移動したときは、前記固定外筒と当接して移動が規制される請求項2乃至請求項4のいずれかに記載のコンテナシャシ用渡し板装置。
【請求項6】
前記アクチュエータは、空気圧によって作動されるエアシリンダである請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のコンテナシャシ用渡し板装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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