説明

コンテナターミナル

【課題】
大規模地震(例えばレベル2地震動)が発生した場合であっても、岸壁クレーンの転倒事故、走行輪の浮き上がり及び破壊事故を防止し、且つ、復旧作業を容易に行うことのできるコンテナターミナルを提供する。
【解決手段】
岸壁クレーン2と、岸壁30を有するコンテナターミナル1において、岸壁クレーン2が、脚構造物5と、脚構造物5から海側又は陸側にそれぞれ立設した複数のアーム3を有しており、岸壁30が、岸壁クレーン2の海側又は陸側で、且つ岸壁クレーン2の走行方向yにそれぞれ延設した水平部材31を備えたガイド4を有しており、地震発生時に、岸壁クレーン2のアーム3が、ガイド4の水平部材31と接触して岸壁クレーン2を支持するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナの荷役等に使用される岸壁クレーンを有するコンテナターミナルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
港湾や内陸地等のコンテナターミナルでは、岸壁クレーンや門型クレーンによって、船舶、鉄道及びトレーラ間のコンテナの荷役を行っている。この岸壁クレーンの地震対策として、クレーンの脚構造物と走行装置の間に免震装置(免振装置ともいう)を設置し、脚構造物に揺脚構造を採用した免震クレーンがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図7に、コンテナターミナル1Xに設置した岸壁クレーン2Xを示す。コンテナターミナル1Xは、岸壁クレーン2Xと、岸壁30Xと、岸壁30Xに敷設したレール(図示しない)を有している。この岸壁クレーン(以下、クレーンという)2Xは、海側脚6Xと陸側脚7Xを備えた脚構造物5Xと、脚構造物5Xで支持するブーム52及びガーダ53を有している。また、脚構造物5Xと走行装置60の間に、積層ゴム等で構成した免震装置54と、脚構造物5Xの一部を揺脚構造とする枢支ピン55を有している。なお、56は荷役装置(トロリ)、57はコンテナ船、58はコンテナを示す。また、xはクレーンの横行方向(海陸方向)、zは鉛直方向を示す。
【0004】
次に、このクレーン2Xによる荷役作業について説明する。クレーン2Xは、コンテナ船57に搭載したコンテナ58をトロリ56の吊り具で吊上げ、岸壁30Xで待機しているトレーラ(図示しない)に搭載する荷役作業を行っている。又はクレーン2Xは、コンテナ58をトレーラからコンテナ船57に積み込む荷役作業を行っている。また、この荷役作業において、クレーン2Xは、岸壁30Xに沿って(図7の紙面奥又は手前方向に)敷設したレール上を走行装置60で移動し、荷下ろしあるいは積み込みの位置を変更しながら荷役作業を行っている。
【0005】
次に、このクレーン2Xの地震発生時の動作について説明する。地震発生時には、免震装置54を固定していたせん断ピン等が破断し、免震装置54が作動する。免震装置54は、地表面の振動からクレーン2Xを絶縁する効果を有する。ここで、免震装置54及び枢支ピン55による揺脚構造は、クレーン2Xの横行方向xの振動を吸収することができる。また、クレーン2Xの走行方向y(図7の紙面奥又は手前方向)の振動は、走行装置60がレールに沿って移動して吸収する構成としていた。
【0006】
しかしながら、上記の岸壁クレーン2Xは、大規模地震が発生した場合、横行方向xの変位を十分に吸収することができないという問題を有している。ここで、大規模地震とは、例えば、平成18年の港湾法改正により想定されている地震波であり、レベル2地震動と呼ばれるものである。このレベル2地震動とは、土木学会の第三次提言により、現在から将来にわたって当該地点で考えられる最大級の強さを持つ地震動と定義されている。
【0007】
この岸壁クレーン2Xの有する従来の免震装置54は、横行方向xに±300mm程度の変位を許容することができる。しかし、大規模地震発生時には、岸壁クレーン2Xが許容すべき変位量は、±1000mm程度又はそれ以上となる。そのため、従来の岸壁クレーン2Xは、大規模地震に対して十分な免振効果を発揮することができないという問題を有している。以下、具体的に説明する。
【0008】
図8に、岸壁クレーン2Xの走行装置60周辺の拡大図を示す。走行装置60は、レー
ル50上を走行する鉄製の走行輪61を有している。この走行輪61は、レール50と接触する踏面部62と、フランジ部63を有している。ここで、レール50は、岸壁30Xの岸壁表面に形成したレール溝に沿って敷設されている。
【0009】
次に、大規模地震が発生した際の岸壁クレーン2X(図示しない)の状態について説明する。大規模地震により、横行方向xの力(地震動)Fが発生した場合、まず、免震装置54(図示しない)が作動し、この力Fを吸収する。この免震装置54の変位量が限界に達すると、走行輪61に力Fが作用する。この走行輪61のフランジ部63と、レール50が引っかかると、力Fがクレーン2Xに直接伝わり、クレーン2Xに大きな地震加速度が加わる。その結果、クレーン2Xと地震動Fの共振により走行輪61の浮き上がりが発生する。この走行輪61の浮き上がりは、クレーン2の転倒事故、及び走行輪61が着地時の衝撃により破損される事故につながる。
【0010】
つまり、従来の岸壁クレーン2Xは、以下の問題点を有している。第1に、クレーン2Xは、クレーンの横行方向xに発生する力(例えば横揺れWx)により、転倒及び走行輪の破壊が発生するという問題を有している。第2に、クレーン2Xは、クレーンの鉛直方向zに発生する力(例えば縦揺れWz)により、走行輪の浮き上がりに伴う脱輪及び走行輪の破壊が発生するという問題を有している。第3に、地震発生後の復旧作業に多くの時間が必要となるという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−44168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、コンテナターミナルにおいて、大規模地震(例えばレベル2地震動)が発生した場合であっても、岸壁クレーンの転倒事故、走行輪の浮き上がり及び破壊事故を防止し、且つ、復旧作業を容易に行うことのできるコンテナターミナルを提供することである。つまり、大規模地震等に対して、十分な耐震性能を有するコンテナターミナルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するための本発明に係るコンテナターミナルは、岸壁クレーンと、岸壁を有するコンテナターミナルにおいて、前記岸壁クレーンが、脚構造物と、脚構造物から海側又は陸側にそれぞれ立設した複数のアームを有しており、前記岸壁が、前記岸壁クレーンの海側又は陸側で、且つ前記岸壁クレーンの走行方向にそれぞれ延設した水平部材を備えたガイドを有しており、地震発生時に、前記岸壁クレーンの前記アームが、前記ガイドの前記水平部材と接触して前記岸壁クレーンを支持するように構成したことを特徴とする。
【0014】
この構成により、岸壁クレーンの転倒事故、走行輪の浮き上がり及び破壊事故を防止することができる。これは、クレーンに振動が発生した際、アームがクレーンを支持できるからである。また、地震後の復旧作業を容易に行うことができる。これは、クレーンの脱線や走行輪の破壊等の事故を防止することができるためである。
【0015】
上記のコンテナターミナルにおいて、前記アームが、前記岸壁クレーンの前記脚構造物から海側又は陸側に突設されており、前記アームが、伸縮可能に構成した減衰機構と、前記減衰機構の端部に設置した接触部を有していることを特徴とする。この構成により、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0016】
上記のコンテナターミナルにおいて、前記アームの少なくとも1つが、前記岸壁クレーンの前記脚構造物から海側又は陸側に突設され、前記水平部材に対して上方又は下方から接触可能である鉛直方向アームであり、前記鉛直方向アームが、前記脚構造物から水平方向に突設した張り出し部材と、前記張り出し部材に設置し鉛直方向に伸縮可能な減衰機構と、前記減衰機構の端部に設置した接触部を有していることを特徴とする。この構成により、上記の作用効果に加えて、特にクレーンの鉛直方向の振動(縦揺れ)を抑制することができる。
【0017】
上記のコンテナターミナルにおいて、前記アームの少なくとも1つが、前記岸壁クレーンの前記脚構造物から海側又は陸側に突設され、前記水平部材に対して側方から接触可能である横行方向アームであり、前記横行方向アームが、水平方向に伸縮可能な減衰機構と、前記減衰機構の端部に設置した接触部を有していることを特徴とする。この構成により、上記の作用効果に加えて、特にクレーンの横行方向(海陸方向)の振動(横揺れ)を抑制することができる。
【0018】
上記のコンテナターミナルにおいて、前記岸壁クレーンが、2つの海側脚及び2つの陸側脚を備えた脚構造物を有しており、2つの海側脚及び2つの陸側脚に、それぞれ前記鉛直方向アーム及び前記横行方向アームを設置したことを特徴とする。この構成により、上記の作用効果の向上に加えて、特にクレーンの鉛直方向zを軸とする回転を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るコンテナターミナルによれば、コンテナターミナルにおいて、大規模地震(例えばレベル2地震動)が発生した場合であっても、岸壁クレーンの転倒事故、走行輪の浮き上がり及び破壊事故を防止し、且つ、復旧作業を容易に行うことのできるコンテナターミナルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る実施の形態のコンテナターミナルの概略を示した図である。
【図2】本発明に係る実施の形態のコンテナターミナルのアーム及びガイドを示した図である。
【図3】本発明に係る異なる実施の形態のコンテナターミナルのアーム及びガイドを示した図である。
【図4】本発明に係る異なる実施の形態のコンテナターミナルのアーム及びガイドを示した図である。
【図5】本発明に係る異なる実施の形態のコンテナターミナルの油圧システムの概略を示した図である。
【図6】本発明に係る異なる実施の形態のコンテナターミナルの油圧システムの概略を示した図である。
【図7】従来のコンテナターミナルの岸壁クレーンを示した図である。
【図8】従来の岸壁クレーンの走行輪の周辺を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施の形態のコンテナターミナル1について、図面を参照しながら説明する。図1に、本発明に係る実施の形態のコンテナターミナル1の概略を示す。コンテナターミナル1は、岸壁クレーン(クレーンともいう)2と、岸壁30を有している。クレーン2は、2本の海側脚6及び2本の陸側脚7を含む脚構造物5を有している。クレーン2は、この4本の脚6、7にそれぞれ設置したアーム3を有している。このアーム3は、例えばバネ機構及びダンパー機構を組み合わせて構成した減衰機構等を有している。
岸壁30は、クレーン2の海側又は陸側であり、且つ走行方向yに延設した2組のガイド4を有している。ガイド4は、水平部材31と、水平部材31を支持する複数の柱状部材32を有している。この柱状部材32は、可動式であり、水平部材31に沿って走行方向yに移動可能に構成している。
【0022】
次に、コンテナターミナル1の動作について説明する。通常時(荷役作業時)に、柱状部材32は、クレーン2に追従して移動する。地震発生時に、クレーン2に震動が発生した際、アーム3がガイド4と接触し、クレーン2を支持する。また、アーム3がクレーン2の振動を減衰する。更に、柱状部材32は、特に、クレーン2の荷重が集中する水平部材31の近傍を支持する。
【0023】
上記の構成により、以下の作用効果を得ることができる。第1に、岸壁クレーンの耐震性能を向上することができる。これは、クレーン2に横揺れWxが発生した際、アーム3がクレーン2を支持し、且つ振動を減衰するからである。また、クレーン2に縦揺れWzが発生した際、アーム3がクレーン2を支持し、且つ振動を減衰するからである。つまり、アーム3がガイド4に対して、振動を減衰しながら突っ張るため、クレーン2の転倒事故、及び走行輪の浮き上がり事故の発生を防止することができる。
【0024】
第2に、地震発生後のコンテナターミナル1の復旧作業を、容易且つ迅速に行うことができる。これは、クレーン2の脱線や、走行輪の破壊等の事故を防止することができるためである。
【0025】
第3に、クレーン2を効果的に支持することができる。これは、柱状部材31を移動式とする構成により、水平部材31のたわみを抑制できるためである。
【0026】
なお、ガイド4の水平部材31の高さは、岸壁クレーン2の荷役作業を妨げない範囲で決定する。水平部材31の高さを高くすると、縦揺れWzを吸収する効果が高くなる反面、ガイド4の建造コストが上昇する。従って、縦揺れWzを吸収する効果と、コストのバランスを考慮し、水平部材31の高さを任意に決定することができる。
【0027】
また、ガイド4の柱状部材32は、移動式のものに加えて、固定式のものを設置してもよく、全ての柱状部材32を固定式とすることもできる。柱状部材32を固定式とした場合は、水平部材31のたわみが予め定めた範囲を超えないように配置する。
【0028】
更に、4本の脚6、7に、それぞれアーム3を設置する構成により、クレーン2の鉛直方向zを軸とする回転を抑制することができる。
【0029】
図2Aに、本発明に係る実施の形態のコンテナターミナル1のアーム3及びガイド4の周辺拡大図を示す。クレーン2(図示しない)は、脚6、7に対して斜めに(上向きに傾斜するように)設置したアーム3を有している。アーム3は、例えばバネ機構及びダンパー機構で構成したシリンダ等の減衰機構8と、減衰機構8の端部に設置した接触部9を有している。この接触部9は、一部を切欠いた角筒形状に形成している。また、ガイド4は、円柱形状の水平部材31と、水平部材31を支持する複数の柱状部材32を有している。
【0030】
次に、アーム3及びガイド4の地震発生時の動作について説明する。縦揺れWz(地震動の鉛直方向z成分)及び横揺れWx(地震動の横行方向x成分)に対して、減衰機構8が収縮し、クレーン2の揺れを吸収する。このとき、クレーン2の海側のアームと陸側のアームが、交互に収縮と伸張を繰り返し、クレーン2の振動を吸収する。
【0031】
上記の構成により以下の作用効果を得ることができる。第1に、岸壁クレーン2の耐震性能を向上することができる。これは、複数のアーム3がクレーン2の振動を吸収し、且つガイド4を介してクレーン2を支持するからである。
【0032】
第2に、地震発生後のコンテナターミナルの復旧作業を、容易且つ迅速に行うことができる。これは、クレーン2の転倒事故や、走行輪の浮き上がり等を防止することができるためである。
【0033】
図2Bに、アーム3及びガイド4の異なる形状を示す。クレーン2(図示しない)は、脚6、7に対して斜めに(下向きに傾斜するように)設置したアーム3を有している。アーム3は、減衰機構8と接触部9を有している。接触部9は、円筒形状に形成している。また、ガイド4は、移動式の柱状部材32を有している。
【0034】
次に、アーム3及びガイド4の地震発生時の動作について説明する。縦揺れWz(地震動の鉛直方向z成分)及び横揺れWx(地震動の横行方向x成分)に対して、減衰機構8が収縮及び伸張し、クレーン2の揺れを吸収する。この構成により、前述(図2A)と同様の作用効果を得ることができる。
【0035】
図3に、本発明に係る異なる実施の形態のコンテナターミナルのアーム3a及びガイド4aの周辺拡大図を示す。クレーン2(図示しない)は、脚6、7に設置した鉛直方向アーム10a及び横行方向アーム20a(総称してアーム3aとする)を有している。鉛直方向アーム10aは、例えばバネ機構及びダンパー機構で構成したシリンダ等の減衰機構11aと、減衰機構11aの端部に設置した接触部12aと、張り出し部材13aと、ヒンジ部15aを有している。この減衰機構11aは、鉛直方向zに伸縮可能に構成している。この接触部12aは、一部を切欠いた円筒形状に形成している。同様に、横行方向アーム20aは、横行方向xに伸縮可能な減衰機構21aと、接触部22aを有している。
【0036】
また、ガイド4aは、円柱形状の水平部材31aと、水平部材31aを支持する複数の柱状部材32aを有している。上記のアーム3aの接触部12a、22aは、通常時は、ガイド4の水平部材31aに接触しないように構成している。なお、上記のアーム3aの接触部12a、22aが、水平部材31aに常時接触するように構成することもできる。
【0037】
次に、アーム3a及びガイド4aの地震発生時の動作について説明する。縦揺れWz(地震動の鉛直方向z成分)に対しては、鉛直方向アーム10aの減衰機構11aが収縮し、クレーン2の縦揺れWzを吸収する。このとき、クレーン2の海側の鉛直方向アームと、陸側の鉛直方向アームが、交互に収縮と伸張を繰り返し、クレーン2の振動を吸収する。
【0038】
また、横揺れWx(地震動の横行方向x成分)に対しては、横行方向アーム20aの減衰機構21aが収縮し、クレーン2の横揺れWxを吸収する。このとき、クレーン2の海側の横行方向アームと陸側の横行方向アームが、交互に収縮と伸張を繰り返し、クレーン2の振動を吸収する。なお、実際の地震発生時には、この縦揺れWzと横揺れWxが、同時に発生する。
【0039】
上記の構成により以下の作用効果を得ることができる。第1に、岸壁クレーン2の耐震性能を向上することができる。これは、複数のアーム3aがクレーン2の振動を吸収し、且つガイド4aを介してクレーン2を支持するからである。
【0040】
第2に、地震発生後のコンテナターミナルの復旧作業を、容易且つ迅速に行うことができる。これは、クレーン2の転倒事故や、走行輪の浮き上がり等を防止することができる
ためである。
【0041】
なお、接触部12a、22aの形状は、上記に限られない。接触部12a、22aは、平板状、角筒形状等を採用することができる。この接触部12a、22aは、ガイド4aの水平部材31aに対して、クレーン2を支持できる形状であればよい。
【0042】
また、鉛直方向アーム10aの接触部12aを、水平部材31aの下方に回り込むような形状とした場合は、クレーン2が浮き上がる方向(鉛直上向き)に振動した場合も、鉛直方向アーム10aが伸張して、クレーン2の縦揺れWzを吸収することができる。同様に、横行方向アーム20aの接触部22aを、水平部材31aの背面側(図3右方側)に回り込むような形状とした場合は、横行方向アーム20aの伸張によっても、クレーン2の横揺れWxを吸収することができる。
【0043】
更に、アーム3aを、鉛直方向アーム10a及び横行方向アーム20aの2本で構成しているが、本発明はこの構成に限られない。例えば、アーム3aを1つの傾斜方向アームで構成し、1つのアームで縦揺れWz及び横揺れWxを吸収するように構成することもできる。また、アーム3aを、3本以上のアームで構成してもよい。
【0044】
図4に、本発明に係る異なる実施の形態のコンテナターミナルのアーム3b及びガイド4bの周辺拡大図を示す。アーム3bは、鉛直方向アーム10bと横行方向アーム20bを有している。鉛直方向アーム10bは、減衰機構11bと、車輪14を備えた接触部12bと、張り出し部材13bと、ヒンジ部15bを有している。同様に、横行方向アーム20bは、減衰機構21bと、車輪24を備えた接触部22bを有している。
【0045】
また、ガイド4bは、断面形状を矩形とする水平部材31bと、上端部が屈曲した柱状部材32bを有している。水平部材31bは、接触部12b、22bとガイド4bの接触を維持するための拘束部材33を有している。
【0046】
次に、アーム3b及びガイド4bの動作について説明する。クレーン2がコンテナ等の荷役を行う通常時は、接触部12b、22bの車輪14、24が、水平部材31bの外面上を走行する。地震が発生した際は、前述と同様に各アーム10b、20bは、クレーン2の振動を吸収する。
【0047】
加えて、地震動によりクレーン2が図4の下方に下がろうとする(回転する)際、鉛直方向アーム10bの接触部12bは、拘束部材33により水平部材31bとの接触を維持する。そのため、減衰機構11bは伸張し、クレーン2の縦揺れWzを吸収することができる。また、クレーン2が図4の左方に移動しようとする際、横行方向アーム20bの接触部22bは、拘束部材33により水平部材31bとの接触を維持する。そのため、減衰機構21bは伸張し、クレーン2の横揺れWxを吸収することができる。
【0048】
上記の構成により、前述の作用効果に加えて、以下の作用効果を得ることができる。第1に、車輪14、24の設置により、接触部21b、22b及び水平部材31bの摩耗を抑制することができる。これにより、アーム3b及びガイド4bの耐用年数が延長され、クレーン2の耐震性能を長期間維持することができる。第2に、拘束部材33を設置する構成により、クレーン2の耐震性能を向上することができる。これは、減衰機構11b、21bが、収縮する場合に加え、伸張する場合もクレーン2の振動を減衰することができるためである。
【0049】
なお、鉛直アーム10bは、ガイド4bの水平部材31bに対して、上方及び下方のいずれの側に設置してもよい。
【0050】
図5に、本発明に係る異なる実施の形態のアームの油圧システム40を示す。油圧システム40は、海側(図5右方)の鉛直及び横行方向アーム10c、20cに設置した減衰機構11c、21cと、陸側(図5左方)に設置した減衰機構11c、21cと、タンク41を有している。このタンク41は、各減衰機構11c、21cにそれぞれ連結するための複数の油圧管42を有している。また、タンク41の内部は、例えば油等の流体を充填した状態である。ここで、12c、22cは接触部材、31cは水平部材を示している。なお、図5では省略しているが、タンク41は、クレーン2の4本の脚6、7に対応した例えば計8つの減衰機構10c、20cに連結している。
【0051】
次に、油圧システム40の動作について説明する。図6に、油圧システム40を搭載したクレーンが、図6右方に横揺れWxを受け、図6下方に縦揺れWzを受けた瞬間の様子を示す。この横揺れWxにより、海側(図6右方)の減衰機構21cが収縮する。この収縮に伴い、海側の減衰機構21c内の流体が、タンク41に移動する(矢印参照)。同様に、縦揺れWzにより、海側(図6右方)の減衰機構11cが収縮する。この収縮に伴い、海側の減衰機構11c内の流体が、タンク41に移動する(矢印参照)。
【0052】
上記の流体の移動により、タンク41内の圧力が上昇する。そのため、タンク41内の流体は、陸側(図6左方)の減衰機構11c、21cに移動する。この流体の移動により、陸側の減衰機構11c、21cが伸張する。
【0053】
上記の構成により、以下の作用効果を得ることができる。第1に、タンク41を設置した構成により、ガイド4の水平部材31cと、接触部12c、22cの接触を維持することができる。これは、例えば油等の流体が、外力(荷重)を受けた減衰機構から、外力を受けていない減衰機構へ自由に移動することができるからである。つまり、各減衰機構12c、22c内の圧力は、タンク41を介して自動的に均一化される。具体的には、クレーンが図6右方の横揺れWxのみ受けた場合、流体は、海側(図6右方)の横行方向アームの減衰機構21cから、陸側(図6左方)の横行方向アームの減衰機構21cに移動する。
【0054】
第2に、ガイド4の水平部材31cと接触部12c、22cの接触を維持することができるため、接触部12c、22c及びガイド4の構造を簡易にすることができる。具体的には、接触部12c、22cを平板状に形成したり、ガイド4の水平部材31cに拘束部材33(図4参照)を設置しない構成としたりすることができる。
【0055】
なお、1本の海側脚6及び1本の陸側脚7を1組として、1組に1つのタンク41を設置するように構成してもよい。また、タンク41を設置せずに、減衰機構同士を油圧管42で連通するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 コンテナターミナル
2 岸壁クレーン(クレーン)
3(3a、3b) アーム
4(4a、4b) ガイド
5 脚構造物
6 海側脚
7 陸側脚
8 減衰機構
9 接触部
10(10a、10b、10c) 鉛直方向アーム
11(11a、11b、11c) 減衰機構
12(12a、12b、12c) 接触部
13(13a、13b) 張り出し部材
20(20a、20b、20c) 横行方向アーム
21(21a、21b、21c) 減衰機構
22(22a、22b、22c) 接触部
30 岸壁
31 水平部材
x 横行方向
y 走行方向
z 鉛直方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
岸壁クレーンと、岸壁を有するコンテナターミナルにおいて、
前記岸壁クレーンが、脚構造物と、脚構造物から海側又は陸側にそれぞれ立設した複数のアームを有しており、
前記岸壁が、前記岸壁クレーンの海側又は陸側で、且つ前記岸壁クレーンの走行方向にそれぞれ延設した水平部材を備えたガイドを有しており、
地震発生時に、前記岸壁クレーンの前記アームが、前記ガイドの前記水平部材と接触して前記岸壁クレーンを支持するように構成したことを特徴とするコンテナターミナル。
【請求項2】
前記アームが、前記岸壁クレーンの前記脚構造物から海側又は陸側に突設されており、
前記アームが、伸縮可能に構成した減衰機構と、前記減衰機構の端部に設置した接触部を有していることを特徴とする請求項1に記載のコンテナターミナル。
【請求項3】
前記アームの少なくとも1つが、前記岸壁クレーンの前記脚構造物から海側又は陸側に突設され、前記水平部材に対して上方又は下方から接触可能である鉛直方向アームであり、
前記鉛直方向アームが、前記脚構造物から水平方向に突設した張り出し部材と、前記張り出し部材に設置し鉛直方向に伸縮可能な減衰機構と、前記減衰機構の端部に設置した接触部を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンテナターミナル。
【請求項4】
前記アームの少なくとも1つが、前記岸壁クレーンの前記脚構造物から海側又は陸側に突設され、前記水平部材に対して側方から接触可能である横行方向アームであり、
前記横行方向アームが、水平方向に伸縮可能な減衰機構と、前記減衰機構の端部に設置した接触部を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコンテナターミナル。
【請求項5】
前記岸壁クレーンが、2つの海側脚及び2つの陸側脚を備えた脚構造物を有しており、
2つの海側脚及び2つの陸側脚に、それぞれ前記鉛直方向アーム及び前記横行方向アームを設置したことを特徴とする請求項4に記載のコンテナターミナル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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