説明

コンテナ内のCO2漏れの検出

冷媒としてCO2を使用する冷凍システムを有する冷凍コンテナは、コンテナ内のCO2濃度を感知するとともに、これに応じて感知した状況を表示モジュールに表示し、危険な状況となりうる過剰な濃度のため、この状況が解消されるまでコンテナ内に入るべきではないことを作業者が認識するようにする感知警告システムを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、輸送用冷凍システムに関し、特に、コンテナ内のCO2蒸気の過剰な値を検出して作業者に指示する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍車は、傷みやすい商品の貯蔵や出荷を含む幅広い用途で長い間使用されており、このような商品には、特に、くだものや野菜などの農産物およびアイスクリームなどの冷凍あるいは冷蔵された加工品を含む他の生鮮食品が含まれる。本発明の冷凍車は、例えば、道路輸送やピギーバック用の貨物トレーラー、貨車および陸上や海上で使用されるコンテナ本体などを含む。よって、本発明には、一般に冷凍コンテナと呼ばれる全ての冷凍コンテナおよび冷凍空間に貨物を受け入れるように設けられた冷凍車が含まれる。
【0003】
このような冷凍コンテナ用の冷凍システムは、一般に、コンテナ内の空気を冷却する蒸発器を含む閉ループのシステムで従来の冷媒を使用している。環境への配慮から、R−22などのヒドロクロロフルオロカーボン(HCFCS)は製造中止になり、R−134a,R−410a、R407cなどのヒドロフルオロカーボン(HFCS)がこれに取って代わっている。しかし、同様の環境への配慮から、これらのHFCSを大気に悪影響を与えない、より“やさしい”冷媒に置き換えることが望まれている。従って、冷凍コンテナ用の蒸気圧縮システムでは、CO2の使用に関心が集まっている。
【0004】
二酸化炭素の冷媒としての特性の1つは、臨界温度が低いことであり、このため大部分のCO2冷媒蒸気圧縮システムは遷臨界領域で動作するように設計されている。これにより、従来の冷媒を使用する場合に比べて実質的に高い圧力で動作することが要求され、特別な圧縮機がこの目的のために設計されている。このような高圧に対応するために、他の構成要素および配管も頑丈に設計する必要がある。それでも、このシステムでは、従来の冷媒を使用する低圧のシステムに比べて漏れが発生するおそれが高い。
【0005】
漏れが発生するシステムの箇所によって、CO2は大気またはコンテナボックスの内部のいずれかに放出される。コンテナボックスの内部に放出された場合には、二酸化炭素濃度によって、コンテナボックスに入る人に潜在的に危険な環境が生じうる。CO2の毒性は問題とならない場合が多いが、これに伴う酸素量の低下はコンテナボックスに入る人に有害となるおそれがある。この点について、OSHAは、長時間にわたって暴露可能な酸素の最低許容濃度は19.5%であると指摘しており、これは60000ppm(6%)の二酸化炭素濃度に対応する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5457963号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
冷凍コンテナ内で二酸化炭素センサを利用したものはあるが、他の目的のためでかつ他の方法によるものである。すなわち、いわゆる“制御された雰囲気”の冷凍コンテナシステムでは、コンテナ内の窒素濃度を高くして輸送および貯蔵時に起こる酸化(つまり熟成)を減少させている。このようなシステムは特許文献1に説明されている。このシステムでは、コンテナ内のCO2の減少が貨物に有害となる(アスパラガス、ブルーベリー、ブラックベリー、カンタロープ、生の唐辛子などの)特定の種類の貨物がある。よって、周知技術では、CO2の含有率が所定の低い値に達したことを感知し、これに応じてこのために設けられた加圧容器からコンテナ内にCO2を注入する。
【0008】
よって、CO2の含有率が望ましくない高い値に達したことを判断し、このような状況で作業者がコンテナに入らないように、これを知らせる方法および装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態によると、CO2濃度が予め定められた高い閾値に達したことを判断するために、冷凍コンテナ内にCO2センサが設けられる。続いて、作業者がこの状況を認識できるように、この状態の指示が表示装置によって提供される。
【0010】
以下に説明される図面には、一実施例が示されているが、本発明の趣旨と範囲から逸脱することなく、実施例の種々の他の改良や構成の変更を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来技術に係るコンテナ冷凍システムの概略説明図である。
【図2】本発明に係る冷凍コンテナの概略説明図である。
【図3】コンテナの積載状態の関数としてCO2濃度を示すグラフである。
【図4】制御装置およびその表示部の概略説明図である。
【図5】本発明に係る検知および表示プロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
冷媒としてCO2を使用する典型的な冷媒蒸気圧縮システムが図1で10として示されており、流れが直列に流れるように連結されて閉ループの冷凍サイクルを成す圧縮機11、熱放出熱交換器12、膨張装置13および熱吸収熱交換器14を含む。蒸気圧縮システム10は、熱放出熱交換器12と膨張装置13との間に流れが直列に流れるように連結されたフィルタ/ドライヤ16およびフラッシュタンクレシーバ17をさらに含みうる。
【0013】
圧縮機11は、CO2冷媒を圧縮して冷媒回路を通って循環させるように機能し、第1の低圧圧縮段と第2の高圧圧縮段を少なくとも含む単一の多段圧縮機、例えば、スクロール圧縮機または往復動圧縮機とすることができる。圧縮機11は、さらに、第1の圧縮機への吐出口と第2の圧縮機の吸込口とを冷媒が流れるように連結する冷媒管路を有する一対の圧縮機、例えば、一対の往復動圧縮機もしくはスクロール圧縮機を含むこともできる。単一の多段圧縮機の場合には、各々の圧縮段は、両方の段に動作的に接続された単一のモータによって駆動され、一対の圧縮機の場合には、各々の圧縮機は、専用のモータによってそれぞれ独立して駆動される。
【0014】
冷媒蒸気圧縮システム10は、亜臨界サイクルで動作するように設計されている。よって、冷媒熱放出熱交換器12は、圧縮機11からの高温高圧のCO2吐出蒸気が冷却媒体と熱交換関係で通過させて、通過する冷媒を蒸気から液体に凝縮する冷媒凝縮熱交換器として動作するように設計されている。ここでは凝縮器と呼ぶことができる冷媒凝縮熱交換器12は、フィンと円形チューブ式熱交換コイルまたはフィンと平形ミニチャネルチューブ式熱交換器などのフィンチューブ式熱交換器を含むことができる。輸送用冷凍システムの用途では、典型的な冷却媒体は、凝縮器12を通過する周囲空気であり、この周囲空気は、凝縮器12と動作的に関連して設けられたファン18によって冷媒と熱交換関係で凝縮器12を通過する。
【0015】
熱吸収熱交換器14は、蒸発器と呼ぶことができ、フィンと円形チューブ式熱交換コイルまたはフィンと平形ミニチャネルチューブ式熱交換器などの従来のフィンチューブ式熱交換器とすることができ、膨張装置13を通って膨張した冷媒が加熱流体と熱交換関係で通過し、これにより、冷媒が蒸発して典型的に過熱される。蒸発器14の冷媒と熱交換関係で通過した加熱流体は、蒸発器14と動作的に関連して設けられたファン19によって蒸発器14を通過する空気とすることができ、これにより、加熱流体は、冷却されるとともに一般にさらに除湿されてから冷凍冷蔵食品などの傷みやすい貨物を含む空調環境21に供給される。
【0016】
フラッシュタンクレシーバ17は、液体冷媒と冷媒蒸気とを内部に含む状態で動作する。すなわち、凝縮器12からの液体冷媒がフラッシュタンクレシーバ17に流入してタンクの底部に溜まる。液体は飽和温度にあるので、液体冷媒で満たされてないタンク内の空間を冷媒蒸気が満たす。液体冷媒は、蒸発器14への冷媒流れを制御する膨張装置13によってタンク17から出るときに計量される。亜臨界の冷媒蒸気圧縮システムの動作条件が変化するに従って、システムで要求される充填量も変化し、レシーバタンク内の液体の高さは新たな平衡状態の液体高さとなるように適宜上下する。
【0017】
次に図2を参照すると、貨物23を新鮮で冷凍された状態に保つように、空調環境21に貯蔵された貨物23を収容するよう設計された貨物コンテナ22が示されている。この目的のため、蒸気圧縮システム10を含む冷凍システム24が、図示のように貨物コンテナ22の一端と動作的に接続されている。よって、矢印で示すように、空調環境21内の空気は、冷凍システム24に流入し、ファン19によって蒸発器14を通過するとともにここで冷却され、続いて通路26を通って貨物コンテナ22の下部に戻り、サイクルを完了するように貨物23を通って上方に流れる。
【0018】
図1に示す蒸気圧縮システム10が膨張装置13と凝縮器12との間の回路部分に2250psi(15.5MPa)までの比較的高圧のCO2蒸気を含むことを考えると、この回路部分からの漏れのおそれが認識できよう。どこで漏れが生じるかによって、CO2蒸気は、図2の冷凍システム24の左側から流れる場合に起こりうるように大気に放出されるか、あるいは冷凍システム24の右側に流れる場合に起こりうるように空調環境21に放出される。大気に流れた場合には、失われた冷媒を補充する必要がある他は悪影響は最小限である。しかし、CO2蒸気が空調環境21に流れた場合には、CO2の流入によって空間内の関連する酸素濃度が必然的に減少し、コンテナ22に人が入る際に安全でない状況が生じうる。これは、空間内の貨物の量が増えるに従って特に言えることである。
【0019】
次に図3を参照すると、満載(すなわち、コンテナが満杯の状態)に対する割合とCO2濃度の百分率との関係を示したグラフが示されている。つまり、特定の量の漏れたCO2蒸気が空の状態の貨物コンテナ22に入った場合には、コンテナの全容量にわたって分散するので、貨物コンテナ22に貨物がある場合に比べて全体的な影響が実質的に小さくなる。反対に、図2に示すように、貨物コンテナ22にかなりの貨物が入っている場合には、漏れたCO2が分散する空間が実質的に減少するので、影響が実質的に大きくなる。従って、図3のデータは、二酸化炭素濃度が、コンテナボックスが空の状態における4%より小さい値からコンテナボックスが満載の状態における40%を超える値まで変動することを示している。
【0020】
図2を再度参照すると、本発明によれば、冷凍システム24内で貨物コンテナ22からの戻り空気が冷凍システム24に入る箇所にCO2センサ27が設置されていることが分かる。センサ27は、貨物コンテナ22から戻る空気を抽出し、そのCO2濃度を測定する位置に設けられている。
【0021】
センサ27は、テキサス・インスツルメンツ社が市販している赤外線分析器などの従来の種類のものとすることができる。センサ27が関連する構成要素と電子的に接続される方法を図4に示している。
【0022】
センサ27は、コンテナ22内のCO2濃度を示すアナログ信号を生成する。このアナログ信号は、ライン28を介してアナログ・デジタル変換器29に送られ、対応するデジタル信号は、ライン30を介して制御装置31に送られる。続いて、制御装置31は、ライン32を介して表示コンソール33に信号を送信し、この表示コンソール33は、ライン34を介して信号を送信して35で対応する視覚的表示を生成し、コンテナ22内の潜在的に危険な環境を外部の人に知らせる。
【0023】
図5には、表示コンソール33で適切な表示を提供するための制御装置の動作を示す論理フローチャートが示されている。ブロック30では、制御装置32は、ユニットの電源が入っているときにCO2センサ27を1秒毎に読み取る。対応する信号が比較器36に送られ、例えば3%などの予め定められた閾値と比較される。ブロック40に示すように、CO2濃度が予め定められた値よりも低いことが示される限り、表示コンソール33に信号が送られ、貨物コンテナ22の状態が人が入っても“危険がない”ことを示す適切な表示37が35で視覚的に表示される。しかし、ブロック38に示すように、制御装置32により貨物コンテナ22内のCO2濃度が3%などの予め定められた値より高いことが示されると、表示コンソール33に信号が送られ、貨物コンテナ22内に危険な状況が存在し、例えば、ドアを開けて閉じ込められたCO2ガスを逃がすことによる貨物コンテナ22の換気などの適切な行動が取られるまでは貨物コンテナに入るべきではないことを作業者に知らせる適切な視覚的表示“高いCO2”が35で示される。
【0024】
動作プロトコルの一部として、作業者は、ユニットに貼られた適切な注意書きや操作説明書、あるいは表示コンソール33に表示された適切な指示によって、危険な状況を避けるためにはその時点で危険な状況が存在していないかどうかを表示コンソールで確認すべきであると指示される。
【0025】
図面に示した一実施例に従って本発明を開示および説明したが、当業者であれば分かるように、請求項によって定められる本発明の趣旨と範囲から逸脱せずに詳細の種々の変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流れが直列に流れるように設けられた冷媒のCO2蒸気を圧縮する圧縮機、熱放出熱交換器、膨張装置および熱吸収熱交換器を有する冷凍回路を含む冷凍システムと、
前記熱吸収熱交換器が内部で循環する空気の流れと熱交換関係に設けられた冷凍コンテナと、
前記空気の流れに設けられ、この空気の流れのCO2濃度が予め定められた高い値に達したことを感知するとともにこれを示す信号を生成するCO2センサと、
前記信号を受信し、これに応答して感知された状態の視覚的な表示を生成する制御装置と、を備えることを特徴とする冷凍コンテナシステム。
【請求項2】
前記CO2センサは、前記冷凍システム内に配置されていることを特徴とする請求項1記載の冷凍コンテナシステム。
【請求項3】
関連する蒸気圧縮冷凍システムから漏れたCO2を含むおそれがある貨物コンテナに作業者が入る危険性を減少させる方法であって、
前記コンテナ内のCO2濃度を感知するとともに、このCO2濃度を示す信号を生成し、
前記信号を受信するとともに、この信号に応答して適切な表示信号を提供する制御装置を提供し、
前記表示信号を受信するとともに、この表示信号の適切な視覚的表示を生成する表示コンソールを提供することを含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
前記表示は、コンテナ内に危険な状況があるか、コンテナ内に危険な状況がないかのいずれかを示すものであることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記CO2濃度を示す信号を予め定められた閾値と比較することを含み、前記表示はこの閾値を超えたことを示すことを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記予め定められた閾値は、1%〜8%の範囲であることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記予め定められた閾値は、約3%であることを特徴とする請求項6記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2011−510294(P2011−510294A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543098(P2010−543098)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/051317
【国際公開番号】WO2009/091399
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(591003493)キャリア コーポレイション (161)
【氏名又は名称原語表記】CARRIER CORPORATION
【Fターム(参考)】