説明

コンテナ船及びコンテナ船のコンテナ積載方法

【課題】風力及び船体の動揺に起因する力等によってコンテナが荷崩れするのを防止しつつ、構造が単純で、しかも、甲板上に搭載するコンテナのサイズを変更することなく、甲板上のコンテナの積載高さを高くでき、コンテナ積載数を増加することができるコンテナ船及びコンテナ船のコンテナ積載方法を提供する。
【解決手段】甲板8より上にコンテナ30a,30bを積載するコンテナ船1において、前記甲板8より上の最舷側側のコンテナ30aに対してのみ、コンテナ30aを1段又は複数段固定支持できる甲板上セルガイド22を設けて、前記最舷側側のコンテナ30aを前記甲板上セルガイド22で固定支持可能に構成すると共に、前記最舷側側のコンテナ30aの間においては、コンテナ30bをラッシングブリッジ10に固縛してハッチカバー9上に固定支持可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナの荷崩れを防止しながら、構造が単純で、甲板より上のコンテナ積層数を増加できるコンテナ船及びコンテナ船のコンテナ積載方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンテナ船では、積荷であるコンテナが、航海中に風による力を受けると共に、波浪による船体の動揺に起因する力を受けるため、コンテナの固定支持が不十分であると、荷崩れを起こすことになる。この荷崩れを防止するため、コンテナ船においては、船倉内では、鋼鉄製の枠で形成されるセルガイドを立設し、このセルガイドによってコンテナを固定支持している。
【0003】
また、甲板上では、図3及び図4に示すように、ハッチカバー8上に積載された複数のコンテナ30を、ラッシングブリッジ10に取り付けられた複数のラッシング用具15により固縛(ラッシング)して固定支持している。このラッシングブリッジ10は、船体前後方向に関してのハッチカバー8の間に配置された、甲板上(デッキ積み)のコンテナ30を固縛するための作業用ステージであり、船体の横方向に延びて設けられている。このハッチカバー8の上に搭載されるコンテナ30は、長手方向を船体の前後方向にして、船幅方向(船体左右方向)に列をなし、また、上下方向には数段まで積層され、その前後面をラッシング用具15で固縛してラッシングブリッジ10に固定されている。
【0004】
このラッシングブリッジによる固定を行うものとしては、ラッシングブリッジの高さをコンテナの2段以上に相当する高さに構成し、ハッチカバーから高い位置でコンテナを固縛することにより、荷崩れを防止しているコンテナ船のラッシング装置やコンテナ船が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0005】
また、別の荷崩れ対策としては、ハッチカバー上に搭載されるコンテナの保持を効率よく安全に行うことを目的に、コンテナ船の甲板において、船体前後方向に関するハッチ開口の相互間に直立柱を設け、この直立柱により支持された可動式セルガイドと固定式セルガイドを備えて、この両セルガイト間にコンテナを挿入して、ハッチカバー上にコンテナを案内して搭載する甲板上セルガイド付きコンテナ船が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
この直立柱は横方向(船幅方向)に関してハッチカバーの全体にわたって並設され、可動式セルガイドと固定式セルガイドは、この直立柱の前側面又は後側面にそれぞれ設けられており、甲板上のコンテナ荷役では、コンテナをセルガイドの間に挿入するだけで、ラッシングは不要となるので、ハッチカバー上に搭載されるコンテナの保持を効率よく安全に行うことができる。
【0007】
しかしながら、ハッチカバー上のコンテナをセルガイドで支持する構成であるため、船倉内コンテナの荷役時には、ハッチカバーの開閉と船倉内のコンテナの荷役を可能にするために、一部のセルガイドを可動式にして、ハッチカバー上から撤去する必要が生じる。そのため、セルガイドに可動式連結機構を設ける必要が生じると共に、可動式のセルガイドをコンテナに作用する力を支持できるように甲板上に固定支持する必要があり、この甲板上セルガイドは構造が複雑となる上、重量も増加するという問題がある。
【0008】
特に、図1、図2、図4に示されているような三段の可動式セルガイドになると、構造は複雑で、重量もコストも嵩む上に、三段目のコンテナの上に積み上げるコンテナに関しては何らかのラッシングが必要となるが、可動部にラッシングを取るのは難しい。また、四段以上の可動式セルガイドを設けようとすると、重量もコストも実用的な範囲を超える上に、船全体としての重心が上がり、船のスタビリティが悪化して、結果的にコンテナの積み個数が減少することになる。その上、船の暴露部は塩害による腐食が激しく、可動式の構造物のメインテンスは大変であるので、甲板上に多数の可動式セルガイドを設けることは、船主に許容できない経済的損出を強いることもなりかねない。従って、実際に実施するのは難しいと思われる。
【0009】
また、船上部側に長尺コンテナの搭載を可能にし、コンテナの積載作業工数を低減し、さらにはハッチカバー上へのコンテナ搭載を可能としてコンテナの積載重量を増大することを目的として、船体の船上部及び船倉部に対をなすセルガイドを、船倉部のセルガイドとは別個に立設すると共に、船上部側のセルガイド間の距離を船倉部側のセルガイド間の距離よりも大きく形成し、船上部では船倉部よりも長いコンテナをハッチカバー上に搭載するコンテナ船のコンテナ搭載装置が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0010】
このコンテナ搭載装置では、船上部のセルガイドは、船幅方向全体にわたって立設されているが、ハッチカバー間であるので、ハッチカバーの開閉や船倉内のコンテナ荷役の邪魔にはならない。また、船上部では、長いコンテナは対をなすセルガイドで固定し、短いコンテナは一端をセルガイドで他端をラッシング要具で固縛している。
【0011】
しかしながら、コンテナの大きさは、規格化されており、20フィートコンテナや40フィートコンテナや45フィートコンテナ、特にそのうちでも40フィートコンテナが主流となっているため、長尺コンテナの搬送は少ない。そのため、セルガイドだけで固定支持することは非常に少なく、長尺コンテナの搭載、コンテナの積載作業工数の低減、コンテナの積載重量の増大のメリットは少ないと考えられる。
【0012】
なお、これらの甲板上のセルガイド方式においては、その目的は、ラッシングの作業を減少又は不要にして荷役作業の効率化を図ることにあり、コンテナの荷崩れに関しては触れられていない。
【0013】
一方、本発明者らは、荷崩れで一番厳しいのは、風力の影響を受け易く、船体の動揺、特にロール(横揺れ)の影響で加速度が大きくなり易い最舷側側のコンテナ、それも下側のコンテナであるとの知見を得て、この最舷側側のコンテナの固定を強固に行うことにより、コンテナの荷崩れを防止できれば、最舷側側のコンテナの積層数を増加でき、この最舷側側のコンテナの積層数の増加に伴って、内側のコンテナの積層数も増加でき、全体としては著しくコンテナの積載数を増加することができるとの考えに想到した。
【0014】
【特許文献1】特開2002−166880号公報
【特許文献2】特開2005−161941号公報
【特許文献3】特開平09−2376号公報
【特許文献4】特開2002−173081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、風力及び船体の動揺に起因する力等によってコンテナが荷崩れするのを防止しつつ、構造が単純で、しかも、甲板上に搭載するコンテナのサイズを変更することなく、甲板上のコンテナの積載高さを高くでき、コンテナ積載数を増加することができるコンテナ船及びコンテナ船のコンテナ積載方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するための本発明のコンテナ船は、甲板より上にコンテナを積載するコンテナ船において、前記甲板より上の最舷側側のコンテナに対してのみ、コンテナを1段又は複数段固定支持できる甲板上セルガイドを設けて、前記最舷側側のコンテナを前記甲板上セルガイドで固定支持可能に構成すると共に、前記最舷側側のコンテナの間においては、コンテナをラッシングブリッジに固縛してハッチカバー上に固定支持可能に構成する。
【0017】
この構成により、風力及び船体の動揺に起因する力等によってコンテナが荷崩れするのを防止しつつ、構造が単純で、甲板上のコンテナの積載高さを高くでき、コンテナ積載数を増加することができる。
【0018】
つまり、風力と船体動揺による力が最も大きくなって、最も荷崩れし易い最舷側側のコンテナを甲板上セルガイドによって強固に固定支持できるので、コンテナの荷崩れを防止できる。従って、この最舷側側のコンテナの積載高さ及び積載数を増加できる。また、この最舷側側のコンテナにより、内側のコンテナを風力から保護できるので、内側のコンテナの積載高さ及び積載数も増加できる。
【0019】
また、甲板上セルガイドは舷側側のみに設置し、内側には設置しないので、甲板上セルガイドの数が少なくて済む。そのため、構造が簡単となり、甲板上セルガイド設置による重量増加も少なくて済む。
【0020】
上記のコンテナ船において、前記甲板上セルガイドをハッチカバーの舷側側よりも外側に立設して、ハッチカバーの横の甲板上に前記最舷側側のコンテナを積載するように構成する。この構成によれば、甲板上セルガイドをハッチカバー上でなく、甲板上に設けるので、構造的に強固することができ、より強固にコンテナを固定支持できる。また、甲板上セルガイドはハッチカバーの側方に配置できるので、船倉内やハッチカバーの上方に積載されるコンテナのサイズと同じにすることができ、最舷側側とその内側のコンテナのサイズを共通化できるので、積載作業における融通性が増す。
【0021】
従来技術では、舷側側のコンテナを荷揚げする時には、ハッチカバー部分のコンテナを全て荷揚げし、更に、ハッチカバー本体も荷揚げする必要があったが、この構成により、甲板上セルガイド部とハッチカバー部とが独立した構成となるので、それぞれの部位の荷揚げ作業が独立し、互いに影響されることなく荷揚げすることが可能となる。従って、コンテナの荷役作業性が著しく向上する。また、この構成では、船幅が増加するが、約1.6m程であり、この増加したスペースは、荷役業者・乗組員の荷役・点検通路として活用できる。
【0022】
また、最舷側コンテナの甲板上セルガイドは、陸上クレーンによる吊り上げや吊り下げによるハッチカバーの開閉時に船内側の甲板上セルガイドの船内側をハッチカバーのスライドガイドとして使うことができる。これによってハッチカバーの開閉が容易になるというメリットがある。
【0023】
上記のコンテナ船において、前記甲板上セルガイドの高さをコンテナを2段分搭載可能な高さにして構成する。この構成によれば、甲板上セルガイドの高さは高くする程、この甲板上セルガイドで支持できるコンテナ数は増加するが、甲板上セルガイドの高さを高くし過ぎると、荷役時にコンテナがこの甲板上セルガイドに衝突しないように、コンテナを高く吊り上げる必要が生じ、荷役作業に支障が出る。この構成では、甲板上セルガイドの高さをコンテナ2段分の高さとすることにより、殆ど荷役作業の邪魔にならないようにすることができる。
【0024】
上記のコンテナ船において、前記甲板上セルガイドの全部又は一部を、伸縮可能、又は、横臥可能、又は、折り畳み可能、又は、取り外し可能にして構成する。この構成によれば、甲板上セルガイドの高さを例えば2段以上に高くしても、荷役時に、縮めたり、横臥させたり、折り畳んだり、取り外したりすることにより、荷役作業の邪魔にならないようにすることができる。
【0025】
上記の目的を達成するための本発明のコンテナ船のコンテナ積載方法は、甲板より上にコンテナを積載するコンテナ船のコンテナ積載方法において、前記甲板より上の最舷側側のコンテナに対してのみ設けた、コンテナを1段又は複数段固定支持できる甲板上セルガイドにコンテナを固定して、ハッチカバーの側方に積載すると共に、前記最舷側側のコンテナの間においては、コンテナをラッシングブリッジに固縛してハッチカバー上に固定支持することを特徴とする。
【0026】
このコンテナ船のコンテナ積載方法によれば、上記と同様に、風力及び船体の動揺に起因する力等によってコンテナが荷崩れするのを防止しつつ、構造が単純で、しかも、甲板上に搭載するコンテナのサイズを変更することなく、甲板上のコンテナの積載高さを高くでき、コンテナ積載数を増加することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のコンテナ船及びコンテナ船のコンテナ積載方法によれば、風力及び船体の動揺によりコンテナに作用する力が最も大きくなり易い、最も舷側側に積載されるコンテナの固定支持を甲板上セルガイドで強固に固定支持することにより、最も舷側側のコンテナで内側のコンテナを風力から保護することができるので、風力及び船体の動揺でコンテナが荷崩れするのを防止でき、甲板上のコンテナの積載高さを高くすることができ、コンテナ積載数を増加することができる。
【0028】
また、甲板上セルガイドは舷側側のみに設置し、内側には設置しないので、甲板上セルガイドの数が少なくて済む。そのため、構造が簡単となり、甲板上セルガイド設置による重量増加も少なくて済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下図面を参照して本発明の実施の形態のコンテナ船及びコンテナ船のコンテナ積載方法について説明する。なお、図中のXは船体の前方向を、Yは船体の左舷方向を、Zは船体の上方向を示す。
【0030】
図1及び図2に示すように、このコンテナ船1は、船体の外板2と船倉縱隔壁4との間にサイドタンク3を有して形成され、この船倉縱隔壁4と図示しない船底と横隔壁とで囲んだ船倉6を有して形成される。この船倉6は、甲板5に設けた開口部からコンテナの荷役を行うが、この開口部は、船倉縱隔壁4の延長上のハッチコーミング7の上に載置されるハッチカバー9で密閉される。このコンテナ船1は、甲板5より上にコンテナ30a、30bを積載する。
【0031】
また、ハッチカバー9の間にはラッシングブリッジ10が設けられる。このラッシングブリッジ10は、コンテナ30bを固縛(ラッシング)するためのブリッジであり、甲板8上に立設された複数の支柱(ラッシングピラー)11と、この支柱11に支持される、船幅方向(Y方向)に延びて形成された、略水平な作業用通路12とから構成される。この支柱11は、作業用通路12の支持のみならず、ハッチカバー9上に積層して搭載されるコンテナ30bを固縛支持できるように甲板8に強固に形成される。
【0032】
このラッシングブリッジ10は、船体前後方向(X方向)に関して各ハッチカバー9を挟んで配設される。つまり、最前端のハッチカバー9の前方と、各ハッチカバー9の間と、最後端のハッチカバー9の後方に配設される。この構成により、搭載されたコンテナ30bの長手方向の前後にそれぞれラッシングブリッジ10が配置されることになる。
【0033】
このラッシングブリッジ10の高さは、通常、荷役を考慮して、コンテナ1段若しくは2段の高さに構成される。また、このラッシングブリッジ10の上端部位には、ラッシングブリッジ10より上方に搭載されるコンテナ30bを弧縛するためのラッシング要具15の取付部14が設けられる。更に、必要に応じて、ラッシングブリッジ10の上端より下方に搭載されるコンテナ30bを弧縛するために、支柱11や作業要通路12の適当な部位にラッシング要具15の取付部14が設けられる。
【0034】
この甲板より上の最舷側側のコンテナ30aに対してのみ、コンテナ30aを1段又は複数段(図1、2では2段)固定支持できる甲板上セルガイド22を設けて、最舷側側のコンテナ30aを甲板上セルガイド22で固定支持する。この甲板上セルガイド22は、甲板5に立設された直立支柱21により強固に支持され、4本の甲板上セルガイド22の間に挿入されたコンテナ30aに作用する力に耐える。この直立支柱21は、舷側側では、甲板8に設けられた支持台13に立設される。この構成により、最も荷崩れし易い最舷側側のコンテナ30aを強固に固定支持できるので、この最舷側側のコンテナ30aの積載高さ及び積載数を増加できる。
【0035】
この甲板上セルガイド22は、等辺山形鋼等の長尺の鋼材で形成され、搭載するコンテナ30aの寸法に合わせて甲板5上に4本1組で直立させて設けられ、その上端には、コンテナ30aを円滑に導入できるようにエントリガイドが設けられる。この甲板上セルガイド22は、4本の1組でコンテナ30aの四隅をそれぞれ案内すると共に、これらの甲板上セルガイド22の間に導入されたコンテナ30aを強固に固定支持する。この甲板上セルガイド22の間にはコンテナ30aが長手方向を船体前後方向(X方向)に向けて、上方(Z方向)に1個乃至複数個積み重ねて固定支持される。また、甲板上セルガイド22の上部にはラッシング要具15の取付部が設けられ、甲板上セルガイド22より上部のコンテナ30aをラッシング要具15で固縛できるように構成される。
【0036】
この甲板上セルガイド22をハッチカバー9の舷側側よりも外側に立設して、ハッチカバー9の横の甲板5上に最舷側側のコンテナ30aを積載するように構成すると、甲板上セルガイド22をハッチカバー9上の部位でなく、甲板5上に設けるので、より構造的に単純で強固することができ、より強固にコンテナ30aを固定支持できるようになる。
【0037】
この場合、船幅は増加するが、約1.6m程であり、この増加したスペースは、荷役業者・乗組員の荷役・点検通路として活用できる。また、従来技術では、舷側側のコンテナ30aを荷揚げする時には、ハッチカバー9部分のコンテナ30bを全て荷揚げし、更に、ハッチカバー9本体も荷揚げする必要があったが、この構成により、甲板上セルガイド部とハッチカバー部とが独立した構成となるので、それぞれの部位の荷揚げ作業は独立し、互いに影響されることなく、荷揚げが可能となる。従って、コンテナのオペレーションの融通性が著しく向上する。
【0038】
また、甲板上セルガイド22の高さをコンテナ30aを2段分搭載可能な高さにして構成すると、殆ど荷役作業の邪魔にならないようにすることができる。また、甲板上セルガイド22の全部又は一部を、伸縮可能、又は、横臥可能、又は、折り畳み可能、又は、取り外し可能にして構成すると、甲板上セルガイド22の高さを高くしても、荷役時に、縮めたり、横臥させたり、折り畳んだり、取り外したりすることにより、荷役作業の邪魔にならないようにすることができる。
【0039】
甲板上セルガイド22やハッチカバー9上に搭載されるコンテナ30a,30bは、船体前後方向(X方向)に、コンテナ30a,30bの長手方向を向けて、船幅方向(Y方向)に複数列、かつ、上方向(Z方向)に複数段で積層されて搭載される。この積層されているコンテナ30a,30bの上下間は、上側のコンテナ30a,30bの4隅下部と下側のコンテナ30a,30bの4隅上部に装着されたツイストロックや、スタッキングアダプタ等の結合具により接続される。このツイストロックには、自動的にロック機構が作動するように構成されており、ロックは自動化されているが、ロックを解除する際に人手を必要とするセミオート式と、ロック解除にも人手を必要としないフルオート式とがある。
【0040】
また、甲板上セルガイド22に搭載されたコンテナ30aにおいて、甲板上セルガイド22より、1段乃至2段高いコンテナ30aに対しては、甲板上セルガイド22の上端付近に設けられたラッシング要具15の取付部を用いて、ラッシング要具15で固縛する。このラッシング要具15としては、ターンバックを有するラッシングバー(繋索ロッド)、ラッシングワイヤ、ペリカンフック等がある。
【0041】
また、ラッシングブリッジ10に面した、内側のコンテナ30bに関しては、ラッシングブリッジ10の上端よりも下段側のコンテナ30bは、ラッシング要具15を介して、甲板5上のラッシングアイプレート等の取付部に固縛され、ラッシングブリッジ10の上端よりも上段側のコンテナ30bはラッシングブリッジ10の取付部14に固縛される。この時、ラッシング要具15はコンテナ30bの前後面に面して配置されて、コンテナ30bを固縛する。この固縛方法としては、コンテナ30bの面内のインナーラッシングや、コンテナ30bの面外のアウターラッシング等が適宜使用される。
【0042】
これらの結合具による結合とラッシング要具15による固縛により、コンテナ30a,30bに作用する上方向成分を有する力に対抗して荷崩れを防止する。なお、各段の間では、結合具による結合がなされているので、最上段のように、この結合具に作用する力が小さい場合には、この結合具だけでコンテナ30a、30bを固定支持する。また、下側のコンテナ30a,30bには上側のコンテナ30a、30bに作用する力も加わり、倒壊力が増大するので、下側のコンテナ30a,30bに対する固定に要する力は、上側のコンテナ30a、30bに対して固定に要する力よりも大きくなる。そのため、下側のコンテナ30a、30bに対しては、結合具に加えてラッシング要具15による固縛が必要になる。
【0043】
また、最舷側側のコンテナ30aに対しては、風力の影響が大きく、また、ロール等の船体動揺による作用力も内側のコンテナ30bよりも大きくなるので、最舷側側のコンテナ30aの下側部分のコンテナ30aの固定が一番厳しいものとなる。そのため、このコンテナ船1では、この部位のコンテナ30aを甲板上セルガイド22で固定支持する。これにより、最も荷崩れし易い最舷側側のコンテナ30aを強固に固定支持できるので、この最舷側側のコンテナ30aの積載高さ及び積載数を増加できる。
【0044】
この最舷側側のコンテナ30aの壁により、風力の影響が内側のコンテナ30bに及ぶのを少なくすることができるので、また、ロール等の船体動揺に起因する作用力は、動揺の回転中心からの距離が短くなるため、最舷側側のコンテナ30aよりも小さいので、最舷側側のコンテナ30aの固定よりも、内側のコンテナ30bの固定は強度的には弱くすることができる。そのため、ラッシングブリッジ10による固縛でも十分となる。
【0045】
このコンテナ船1の構成によれば、甲板上セルガイド22の配設は舷側側のみであるので、甲板上セルガイド22の数が少なくて済み、甲板上セルガイド22の設置による重量増加も少なくて済む。また、この甲板上セルガイド22は、ハッチカバー9の外側であり、ハッチカバー9の開閉に邪魔にならないので、直立支柱21から離間するような可動式にする必要はなく、機構も簡単となる。
【0046】
更に、最舷側コンテナ30aの甲板上セルガイド22は、陸上クレーンによる吊り上げや吊り下げによるハッチカバー9の開閉時に船内側の甲板上セルガイド22の船内側をハッチカバー9のスライドガイドとして使うことができるので、ハッチカバー9の開閉が容易になる。
【0047】
また、このコンテナ船1では、甲板上セルガイド22に搭載するコンテナ30aとラッシングブリッジ10を利用してハッチカバー9上に搭載するコンテナ30aとのサイズを同じにすることもできるので、コンテナのサイズを考慮することなく、荷役でき、荷役の融通性をより向上することができる。
【0048】
従って、上記のコンテナ船1によれば、風力及び船体の動揺によりコンテナ30a,30bに作用する力が最も大きくなり易い、最も舷側側に積載されるコンテナ30aの固定支持を甲板上セルガイド22で強固に固定支持することにより、最も舷側側のコンテナ30aで内側のコンテナ30bを風力から保護することができるので、風力及び船体の動揺でコンテナ30a,30bが荷崩れするのを防止でき、甲板上のコンテナ30a,30bの積載高さを高くすることができ、コンテナ積載数を増加することができる。試算ではあるが、例えば、5,000TEU以上のコンテナ船では、コンテナの積載可能重量も約1割アップとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る実施の形態のコンテナ船の構成を示す部分斜視図である。
【図2】図1のコンテナ船の構成を示す部分横断面図である。
【図3】従来技術のコンテナ船の構成を示す部分斜視図である。
【図4】図3のコンテナ船の構成を示す部分横断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1、1X コンテナ船
6 船倉
5 甲板
7 ハッチコーミング
8 甲板
9 ハッチカバー
10 ラッシングブリッジ
11 支柱(ラッシングピラー)
12 作業用通路
14 ラッシング要具の取付部
15 ラッシング要具
21 直立支柱
22 甲板上セルガイド
30 コンテナ
30a 最舷側側のコンテナ
30b 内側のコンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
甲板より上にコンテナを積載するコンテナ船において、前記甲板より上の最舷側側のコンテナに対してのみ、コンテナを1段又は複数段固定支持できる甲板上セルガイドを設けて、前記最舷側側のコンテナを前記甲板上セルガイドで固定支持可能に構成すると共に、前記最舷側側のコンテナの間においては、コンテナをラッシングブリッジに固縛してハッチカバー上に固定支持可能に構成したことを特徴とするコンテナ船。
【請求項2】
前記甲板上セルガイドをハッチカバーの舷側側よりも外側に立設して、ハッチカバーの横の甲板上に前記最舷側側のコンテナを積載するように構成したことを特徴とする請求項1記載のコンテナ船。
【請求項3】
前記甲板上セルガイドの高さをコンテナを2段分搭載可能な高さにして構成したことを特徴とする請求項1又は2記載のコンテナ船。
【請求項4】
前記甲板上セルガイドの全部又は一部を、伸縮可能、又は、横臥可能、又は、折り畳み可能、又は、取り外し可能にして構成したことを特徴とする請求項1、2又は3記載のコンテナ船。
【請求項5】
甲板より上にコンテナを積載するコンテナ船のコンテナ積載方法において、前記甲板より上の最舷側側のコンテナに対してのみ設けた、コンテナを1段又は複数段固定支持できる甲板上セルガイドにコンテナを固定して、ハッチカバーの側方に積載すると共に、前記最舷側側のコンテナの間においては、コンテナをラッシングブリッジに固縛してハッチカバー上に固定支持することを特徴とするコンテナ船のコンテナ積載方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−149200(P2009−149200A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328775(P2007−328775)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(502055377)商船三井テクノトレード株式会社 (5)
【Fターム(参考)】