説明

コンテナ

このコンテナは、左右一対の側壁板(20)及び屋根板(60)とよりなるコンテナ本体と、底板(70)と、底板(70)に対して連結された前扉(80A)及び後扉(80B)とを有している。コンテナ本体は、底板(70)に対して、中立位置を基準に、底板(70)の前部が露出する前部露出位置と、底板(70)の後部が露出する後部露出位置との間を変位可能である。また、コンテナ本体は折り畳み可能であり、前扉(80A)及び後扉(80B)も底板に対して折り畳み可能とすることにより、コンテナを折り畳み可能とすることもでき、前扉(80A)及び後扉(80B)は、外側に開いて入出用スロープとして利用することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、貨物を収容して輸送するためのコンテナに関し、特に、自動車を収容するものに関するものである。
【背景技術】
自動車等の貨物は、コンテナに収容されて輸送される場合がある。
従来のコンテナとしては、次のようなものがある。そのコンテナは、ほぼ直方体状の箱状をしており、その前側及び/又は後側の壁板が扉とされている。
そして、その扉が開かれた状態で貨物の出し入れが行われ、その扉が閉じられた状態で輸送が行われる。
ところで、特にコンテナが航空機で輸送される場合には、貨物の大きさに対してコンテナの大きさ(体積)ができるだけ小さなものであることが求められる。このため、貨物とコンテナの内面との間の空間は狭いものとなる。
一方、輸送の際に貨物がコンテナの内部において相対的に移動しないことが求められる。
しかしながら、貨物とコンテナの内面(内壁面)との間の空間が狭い状況下において貨物をコンテナの底面等に対して固定する作業は、非常に煩雑である。その固定を解除する作業についても同様である。
また、それらの作業のことを考慮すると、どうしてもコンテナの内面(内壁面)と貨物との間には所定以上の空間が必要となり、その分コンテナの体積が大きくなって、貨物の輸送の効率がその分悪いものとなる。
そこで、本発明は、自動車等の貨物を効率的に収容し輸送することができるコンテナを提供することを課題とする。
【発明の開示】
第1の発明は、屋根板と左右一対の側壁板とを有するコンテナ本体と、底板と、前記コンテナ本体の前端部及び後端部を開閉する前扉及び後扉とを有し、前記コンテナ本体は、前記底板に対して、前記底板が前記コンテナ本体に対して一致した中立位置を基準に、前記底板のうちの前部が前記コンテナ本体の外部に露出する前部露出位置と、前記底板のうちの後部が前記コンテナ本体の外部に露出する後部露出位置との間を相対的に変位可能である、コンテナである。
この発明のコンテナでは、コンテナ本体が前部露出位置に位置する状態で、貨物のうちの前部が底板に対して固定され、コンテナ本体が後部露出位置に位置する状態で、貨物のうちの後部が底板に対して固定される。貨物のうちの前部及び後部の底板に対する固定が解除される場合も同様である。そして、コンテナ本体が中立位置に位置する状態で輸送される。
このように、この発明のコンテナでは、底板(コンテナ)に対して貨物を固定したりその固定を解除するための作業が容易となる。いいかえれば、コンテナ(コンテナ本体)と貨物との間には貨物をコンテナ(底板)に対して固定したりその固定を解除する作業のための隙間は不要であり、その分、コンテナが小さなもので済み、貨物の輸送の効率が向上する。
なお、この発明においては、前扉及び/又は後扉が底板又はコンテナ本体に連結されている種々の態様又はいずれにも連結されていない種々の態様が考えられる。
また、この発明の一態様として、コンテナ本体が変位可能の場合があるが、他の態様として、底板が変位可能の場合もあり得る。
第2の発明は、第1の発明のコンテナであって、前記コンテナ本体が、前記中立位置を基準に前記前部露出位置と前記後部露出位置との間を変位可能である、コンテナである。
すなわち、この発明は、第1の発明の「相対的に変位可能である、」が、「変位可能である、」と置き換えられた熊様である。
この発明では、第1の発明の作用及び効果に加えて、次の作用及び効果が得られる。
このコンテナでは、コンテナ本体が変位可能のため、底板を変位させることなく、コンテナ本体を変位させることによって、コンテナ本体が底板に対して中立位置を基準に前部露出位置と後部露出位置との間を変位する。このため、特に自動車等の重量物が底板に載置された状態で底板を変位させる作業は大変であるが、この発明では、その必要がなく、自動車等の貨物を容易に収容したり取り出したりすることができる。
第3の発明は、第1又は第2の発明のコンテナであって、前記一対の側壁板は、各々、回動部において回動可能に連結された上部側壁板と下部側壁板とを有し、前記各上部側壁板は前記屋根板に対して回動可能であり、前記各下部側壁板は前記底板に対して回動可能であり、前記コンテナ本体は、前記各側壁板がほぼ鉛直状をなし前記屋根板が前記底板から離隔した基本状態と、前記各側壁板が前記各回動部において内側方向に折れ曲がって前記屋根板が前記底板に接近した折り畳み状態との間を変位可能であり、前記前扉及び前記後扉が、ほぼ鉛直状をなし前記コンテナ本体の前端部及び後端部を塞ぐ基本状態と、前記底板及び/又は前記屋根板と重なる折り畳み状態との間を変位可能なものである、コンテナである。
ここで、「前記各上部側壁板は前記屋根板に対して回動可能であり、」及び「前記各下部側壁板は前記底板に対して回動可能であり、」は、各々、直接的に回動可能の場合に限らず、間接的に回動可能の場合も含まれる。すなわち、例えば、下部側壁板と底板との間には他の部材が介在しており、下部側壁板は当該他の部材に対して回動可能であり、当該他の部材は底板に対して回動しない、という態様もある。上部側壁板と下部側壁板との関係についても同様である。
この発明のコンテナでは、第1又は第2の発明のコンテナの作用及び効果に加えて、次の作用及び効果が得られる。
このコンテナに貨物が収容される場合には、コンテナ本体が基本状態とされ、前扉及び後扉も基本状態とされる(これをコンテナの基本状態ということとする)。
一方、このコンテナに貨物が収容されない場合には、コンテナ本体が折り畳み状態とされ、前扉及び後扉も折り畳み状態とされ得る(これをコンテナの折り畳み状態ということとする)。
このため、コンテナに貨物が収容されない場合には折り畳み状態とされることによって、体積が小さくなり、輸送の効率が向上する。
なお、この発明においては、前扉及び/又は後扉が底板又はコンテナ本体に回動可能に連結されている種々の態様又はいずれにも連結されていない種々の態様が考えられる。
第4の発明は、第1〜第3のいずれかの発明のコンテナであって、前記前扉及び/又は前記後扉は、前記底板部の前端部及び/又は後端部に対して回動可能に連結され、前記前扉及び/又は前記後扉は、前記基本状態と、前記底板の前端部及び/又は後端部と前記底板の外部において貨物が載置される被載置面とをつなぐ入出用位置との間においても変位可能である、コンテナである。
この発明のコンテナでは、第1〜第3の発明のコンテナの作用及び効果に加えて、次の作用及び効果が得られる。
このコンテナに対して貨物が出し入れされる際には、前扉又は後扉が入出用状態とされる。そして、入出用状態の前扉又は後扉を経て、貨物が容易にコンテナに対して出し入れされる。特に、底板と、地面等の被載置面(底板の外部において貨物が載置される面)との間に段差がある場合に、有効である。
第5の発明は、第1〜第4のいずれかの発明のコンテナであって、貨物として自動車が収容されるコンテナであり、可撓性を有する線状をなし前記自動車のタイヤの周方向に対応する一対の周方向線状部材と、可撓性を有する線状をなし前記一対の周方向線状部材を連結して前記タイヤの幅方向に対応する幅方向線状部材とを有する可撓性固定部材と、いずれも前記底板に対して設けられ、前記周方向線状部材のうち前記タイヤの少なくとも上端部に沿って配設される部分を基準に一方の側の部分が固定される第1固定部と、他方の側の部分が固定される第2固定部とを有するものである、コンテナである。
この発明のコンテナでは、第1〜第4の発明のコンテナの作用及び効果に加えて、次の作用及び効果が得られる。
このコンテナでは、可撓性固定部材が自動車のタイヤの少なくとも上端部に沿って配設され、それを基準に一方の側の部分が第1固定部に固定され、他方の側の部分が第2固定部に固定される。
こうして、貨物としての自動車が、底板(コンテナ)に対して容易に固定される。
なお、その自動車のすべてのタイヤに対応して可撓性固定部材並びに第1固定部及び第2固定部が存在する場合に限らず、一部のタイヤにのみ対応してそれらが存在する場合もあり得る。このことは、第6及び第7の発明においても同様である。
可撓性を有する線状をなす周方向線状部材及び幅方向線状部材としては、チェーンによって形成されている場合の他、ベルト又はロープによって形成されている場合等がある。
第6の発明は、第5の発明のコンテナであって、前記第1固定部及び前記第2固定部の前記底板の前後方向における位置が選択可能なものである、コンテナである。
この発明のコンテナでは、第5の発明のコンテナの作用及び効果に加えて、次の作用及び効果が得られる。
このコンテナでは、自動車によってタイヤの位置及び大きさに応じて、適切な位置における第1固定部及び第2固定部が選択される。こうして、タイヤの位置及び/又は大きさが異なる自動車も、底板に対して適切に固定することができる。
第7の発明は、第5又は第6の発明のコンテナであって、前記周方向線状部材のうちの前記第1固定部に固定される部分と第2固定部に固定される部分との間の部分を前記底板に接近する方向へ引っ張る引っ張り部材が伴っている、コンテナである。
この発明のコンテナでは、第5又は第6の発明のコンテナの作用及び効果に加えて、次の作用及び効果が得られる。
このコンテナでは、引っ張り部材によって、周方向線状部材のうちの第1固定部に固定される部分と第2固定部に固定される部分との間の部分が底板に接近する方向へ引っ張られ、当該部分に張力が生じる。こうして、そのタイヤはより強固に底板に対して固定され得る。
第8の発明は、第5〜第7のいずれかの発明のコンテナであって、前記タイヤの前記底板に対する接触部の前側又は後側に配設されるくさび状部材が伴っている、コンテナである。
この発明のコンテナでは、第5〜第7の発明のコンテナの作用及び効果に加えて、次の作用及び効果が得られる。
このコンテナでは、くさび状部材がタイヤの底板に対する接地部の前側又は後側に配設されることによって、そのタイヤが前方又は後方に移動することが阻止され、そのタイヤがより強固に底板に対して固定され得る。
【図面の簡単な説明】
図1Aは、本発明の一実施形態のコンテナを示す斜視図である。コンテナは基本状態にある。
図1Bは、本発明の一実施形態のコンテナを示す斜視図である。コンテナは折り畳み状態にある。
図2は、本発明の一実施形態のコンテナを示す斜視図である。コンテナは基本状態にあり、コンテナ本体は前部露出位置にある(底板は前部露出状態にある)。
図3は、本発明の一実施形態のコンテナを示す分解斜視図である。コンテナは基本状態にある。
図4は、本発明の一実施形態のコンテナを示す分解斜視図である。コンテナは折り畳み状態にある。
図5は、本発明の一実施形態のコンテナを示す縦断面図である(コンテナの幅方向(左右方向)に延びる鉛直面で仮想的に切断した図である。このことは図6においても同様)。コンテナは基本状態にある。
図6は、本発明の一実施形態のコンテナを示す縦断面図である。コンテナは折り畳み状態にある。
図7は、本発明の一実施形態のコンテナの一部を示す縦断面図である(コンテナの長さ方向(前後方向)に延びる鉛直面で仮想的に切断した図である)。コンテナ本体は基本状態にある。基本状態の後扉が実線で示され、折り畳み状態の後扉が1点鎖線で示され、入出用状態の後扉が2点鎖線で示されている。
図8Aは、本発明の一実施形態のコンテナの使用状態を示す側面図である。コンテナ本体が前部露出位置にある(底板が前部露出状態にある)。
図8Bは、本発明の一実施形態のコンテナの使用状態を示す側面図である。コンテナ本体が後部露出位置にある(底板が後部露出状態にある)。
図9は、本発明の一実施形態のコンテナの底板の一部を示す拡大斜視図である。
図10は、本発明の一実施形態のコンテナの底板に対してタイヤを固定する状態を示す側面図である。
図11は、本発明の一実施形態のコンテナの底板に対してタイヤを固定する状態を示す正面図又は背面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
次に、本発明の一実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1A及び図3に示すように、このコンテナは、コンテナ本体10及び底板70を有し、全体として中空の直方体状をしている。コンテナの大きさ(容積)は、1台の自動車の大きさに対応している。
図3に示すように、コンテナ本体10は、左右一対の側壁板20及び屋根板60を有している。
底板70には、前扉80A及び後扉80Bが伴っている。
底板70は、ほぼ水平な平板状をしている。
図3〜図6に示すように、底板70の左右の各縁部には、脚部71が設けられている。各脚部71は、底板70の全長にわたって形成されている。各脚部71は底板70からほぼ鉛直に下方に向かって延びており、その下端部にはローラ転動部72が形成されている。ローラ転動部72は、各脚部71の下端部において外方に向かって延びている。
図1A及び図3等に示すように、底板70の前後の各縁部にも、脚部74が設けられている。両脚部71及び両脚部74の下面は、接地板73によって連結されている。
各脚部71及び各脚部74には、フォークリフト用挿通孔79が形成されている。このコンテナがフォークリフトによって運搬される際に、そのフォークリフトのフォークがフォークリフト用挿通孔79に挿通される。
図3及び図5に示すように、コンテナ本体10の左右の各側壁板20は、ベース30,下部側壁板40,上部側壁板50を有している。いずれもコンテナ本体10の全長にわたって延びている。
ベース30は、コンテナの長さ方向(前後方向)に延びる鉛直な帯板状をしている。ベース30の下端部には、ローラ支持部31(図5)が形成されており、ローラ支持部31に対してローラ32が設けられている。こうして、各ベース30には、その長さ方向(前後方向)に沿って、複数個(例えば4個)のローラ32が設けられている。各ローラ32は、底板70の脚部71のローラ転動部72上を転動する。
図5に示すように、コンテナ本体10の各ベース30には、その長さ方向(前後方向)に沿って配設された複数個(例えば6個)のボルト33(図1A〜図4においては図示省略)によって、被ガイド部材34が連結されている。被ガイド部材34は、ベース30(その内側面)よりもコンテナ本体10の内側方向に離隔した位置において、ベース30(コンテナ本体10)の長さ方向に沿って延びており、ほぼ鉛直な帯板状をしている。
底板70の左右の各縁部には、ガイド部75が形成されている(図3及び図4においては図示省略)。ガイド部75は、被ガイド部材34に対応して、開口部が狭められた溝状をしており、ベース30(コンテナ本体10)の長さ方向(前後方向)に沿って延びている。被ガイド部材34は、ガイド部75に対して、抜け止めされた状態で嵌合されている。
こうして、コンテナ本体10は、被ガイド部材34がガイド部75によってガイドされつつ、各ローラ32が底板70の脚部71のローラ転動部72上を転動することが可能であり、コンテナ本体10は、底板70に対して、両者の長さ方向(前後方向)に沿って、変位(移動)可能である(この変位(移動)は、使用者によって行われる)。
すなわち、コンテナ本体10は、底板70に対して、両者の長さ方向(前後方向)の位置が一致した中立位置(図1A)を基準として、コンテナ本体10が中立位置よりも後方に位置して底板70のうちの前部が露出する前部露出位置(図2,図8A)と、コンテナ本体10が中立位置よりも前方に位置して底板70のうちの後部が露出する後部露出位置(図8B)との間を変位可能である。コンテナ本体10が前部露出位置にあることを底板70が前部露出状態にあるといい、コンテナ本体10が後部露出位置にあることを底板70を後部露出状態にあるということとする。
図5に示すように、底板70の左右の各縁部には、その長さ方向に沿って複数個(例えば9個ずつ)のボルト孔77が設けられている(図3及び図4においては図示省略)。それに対応して、各ベース30には、その長さ方向に沿って複数個(例えば9個ずつ)のボルト孔37が設けられている(図3及び図4も参照)。
このため、コンテナ本体10が中立位置(図3参照)にある状態において、図5に示すように、各ボルト孔37及び各ボルト孔77に対してボルト38が螺合されることによって、コンテナ本体10が中立位置に維持(固定)される(図1Aも参照)。
図5及び図6に示すように、コンテナ本体10の各下部側壁板40の下端部は、各ベース30の上端部に対してヒンジ41を介して連結されている。各上部側壁板50の下端部は、各下部側壁板40の上端部に対してヒンジ51(回動部)を介して連結されている。下部側壁板40及び上部側壁板50は、ともに、コンテナの長さ方向(前後方向)に延びる帯板状をしている。
屋根板60の左右の各端部は、各上部側壁板50の上端部に対してヒンジ61を介して連結されている。屋根板60は、ほぼ水平な平板状をしている。
コンテナ本体10は、基本状態(図3,図5)と折り畳み状態(図4,図6)との間を変位可能である。
図3及び図5に示すように、コンテナ本体10が基本状態にある状態では、各下部側壁板40及び各上部側壁板50がともにほぼ鉛直な状態にあって各側壁板20が一連のほぼ鉛直状態にあり、屋根板60が底板70から離隔した状態にある。
図5に示すように、コンテナ本体10が基本状態にある状態において、ヒンジ41はコンテナ本体10の内側に位置し、ヒンジ51はコンテナ本体10の外側に位置し、ヒンジ61はコンテナ本体10の内側に位置している。
図4及び図6に示すように、コンテナ本体10が折り畳み状態にある状態では、ヒンジ51がコンテナの内側方向に変位して、各下部側壁板40及び各上部側壁板50はほぼ水平な状態にあり、屋根板60が底板70に対して近接した状態にある。
図1A等に示すように、左右の各側壁板20(下部側壁板40,上部側壁板50)には、多数の固定用リング25が設けられている。
図5及び図6に示すように、屋根板60の左右の各縁部には、下垂部62が形成されている。各下垂部62は、コンテナ本体10の長さ方向に延びる帯板状をなしており、屋根板60の左右の各縁部から下方に延び、その下端部は、内側に向かって、上部側壁板50(コンテナ本体10が基本状態にある状態)の外側面に対して当接又は近接している。こうして、基本状態にあるコンテナ本体10の内部に対して屋根板60と上部側壁板50との間の隙間から水が浸入することが防止されている。
図3に示すように、前扉80Aは底板70の前端部に設けられ、後扉80Bは底板70の後端部に設けられている。前扉80A及び後扉80Bは同一の構造を有し、同一の機構によって底板70の前端部/後端部に対して連結されている。
図7に示すように、前扉80A/後扉80Bの基端部(下端部)は、底板70の前端部/後端部に対して、ヒンジ81を介して連結されている。前扉80A及び後扉80Bは、ほぼ鉛直な基本状態(図7において実線で示す)を基準に、折り畳み状態(図7において1点鎖線で示す)と入出用状態(図7において2点鎖線で示す)との間を変位可能である。
図4に示すように、折り畳み状態の前扉80A及び後扉80Bは、コンテナ本体10(基本状態)の内側方向に倒れてほぼ水平となり、底板70と重なる。図6に示すように、その状態において、前扉80A及び後扉80Bは、ベース30の上端部よりも低い位置に位置する。このため、前扉80A及び後扉80Bが折り畳み状態とされた状態で、コンテナ本体10の下部側壁板40が前扉80A及び後扉80Bと干渉することなく、コンテナ本体10が円滑に折り畳み状態(前述)とされ得る。
図2,図7〜図8Bに示すように、入出用状態の前扉80A及び後扉80Bは、コンテナ本体10の外側方向に倒れて、その基端部から先端部に向かうにつれて徐々に下方に向かうように傾斜して、その先端部が、底板70の外部において自動車が載置される面である被載置面300(地面がその代表例である)に対して接触する。このため、入出用状態の前扉80A及び後扉80Bは、貨物としての自動車を底板70に対して入出させる際のスロープとなる。
図1A及び図3に示すように、基本状態の前扉80A/後扉80Bは、基本状態のコンテナ本体10の屋根板60及び一対の側壁板20の前端部/後端部並びに底板70の前端部/後端部によって形成される開口を塞ぐ。その際、図1A及び図7に示すように、前扉80A/後扉80Bは、一対の側壁板20の内側にはまるとともに、屋根板60に対しては、その下側にはまるのではなく、その前端面/後端面に対して当接する。
このため、図1Aに示すようにコンテナ本体10が底板70に対して中立位置にある状態においては、前扉80Aは、基本状態と入出用状態との間においてのみ変位可能である。後扉80Bについても同様である。
図2に示すように、コンテナ本体10が所定の前部露出位置にある状態において、前扉80Aは、基本状態をはさんで折り畳み状態と入出用状態との間を変位可能である。コンテナ本体10が前部露出位置にある状態において、後扉80Bは、入出用状態のみ位置し得る。このことは、コンテナ本体10が(所定の)後部露出位置にある状態において、他方の扉(後扉80B,前扉80A)についても同様である。
図1Aに示すように、前扉80Aには、左右に2対の扉固定部材82が設けられている。前扉80Aは、基本状態において、扉固定部材82(その棒材)によって、側壁板20(その前端部の筒材)に対して固定され、その基本状態が維持される。後扉80Bについても同様である。
前扉80Aには、多数の固定用リング85が設けられている。後扉80Bについても同様である。
図1A及び図3に示すように、コンテナ本体10が基本状態にあり前扉80A及び後扉80Bも基本状態にある状態をコンテナの基本状態ということとする。
図1B及び図4に示すように、前扉80A及び後扉80Bが折り畳み状態にありコンテナ本体10も折り畳み状態にある状態をコンテナの折り畳み状態ということとする。
図3及び図9に示すように、底板70の上面のうちの左右の各縁部の近傍における前側部分及び後側部分には、各々、左右一対のタイヤ固定用レール90が固定されている。図3に示すように、各タイヤ固定用レール90は、種々の自動車の前側及び後側の左右のタイヤに対応して4対配設され、各対のタイヤ固定用レール90は、種々のタイヤの幅に対応した間隔を隔てて配設されている。
図9に示すように、各タイヤ固定用レール90は、種々の自動車(そのタイヤの位置及び大きさ)に対応して、底板70(コンテナ本体10)の長さ方向に沿って延びるとともに、その方向に沿って多数の孔状の固定部92が形成されている。
4対のタイヤ固定用レール90に対応して、各々1つの可撓性固定部材100が伴っている。各可撓性固定部材100は、一対の周方向チェーン102(周方向線状部材)と複数本(例えば5本)の幅方向チェーン106(幅方向線状部材)とを有している。
各周方向チェーン102は、種々のタイヤ210の円周に対応している(図10参照)。各幅方向チェーン106は、種々のタイヤ210の幅に対応しており(図11参照)、両周方向チェーン102を連結している。
図9に示すように、各周方向チェーン102の基端部にはフック103が連結されている。各周方向チェーン102の先端部寄りの部分に対して、フック104が着脱可能に連結される。
また、各可撓性固定部材100に対して、一対の引っ張り部材110が伴っている。各引っ張り部材110は、ターンバックル111を有し、その両端にはフック112a,112bが連結されている。
また、各対のタイヤ固定用レール90に対して、補助固定装置120が伴っている場合もある。
補助固定装置120は、底板70の長さ方向(前後方向)に沿って長さ方向(前後方向)を有する平板状のベース板121を有し、ベース板121には左右に複数対(例えば2対)のボルト孔122が形成されている。一方、底板70には、各補助固定装置120(そのボルト孔122)に対応して、多数対のボルト孔78が形成されている。そして、そのボルト孔122を通して底板70のいずれかのボルト孔78に対してボルト129が着脱可能に螺合されることによって、各ベース板121(各補助固定装置120)は、底板70のうちの長さ方向(前後方向)における所定の位置に固定され得る。
ベース板121の左右の各縁部には、その全長にわたってガイド部材123が固定されている。各ガイド部材123は、ほぼ鉛直上方に延び、その上端部から内側へほぼ水平に延びている。
ベース板121の上面には、くさび状部材125が配設されている。くさび状部材125は、両ガイド部材123に対応した溝状の被ガイド部126を有しており、くさび状部材125は一対のガイド部材123によってガイドされつつ、ベース板121の長さ方向(底板70の長さ方向)に移動可能である。
ベース板121の基端部の近傍にはナット124が固定されており、ナット124にはボルト127が螺合されている。ボルト127の先端部はくさび状部材125に固定されており、ボルト127の基端部にはハンドル128が設けられている。このため、使用者によってハンドル128が回転操作されることによって、くさび状部材125が前進又は後退する。
次に、このコンテナの使用方法並びに作用及び効果について説明する。
貨物としての自動車がこのコンテナに収容される際には、図1及び図3に示すように、まず、コンテナ本体10は、基本状態とされる。すなわち、各側壁板20は一連のほぼ鉛直状態とされ、屋根板60は底板70から離隔した状態とされる。
次に、前扉80A及び後扉80Bが外側に開かれて、入出用状態とされる(図7参照)。
次に、各ボルト38(図1及び図5参照)が外され、中立位置にあるコンテナ本体10が後方に移動され、図2及び図8Aに示すように、底板70が前部露出状態とされる。
上記作業と相前後して、図8Aに示すように、自動車200が運転されて、スロープを形成する後扉80Bを自動車200が走行し、自動車200は底板70に載る。
その状態で、自動車200の一対の前タイヤ210Aが、底板70に対して、次のようにして固定される。
まず、必要に応じて、図8A及び図10に示すように、前タイヤ210Aのすぐ前側に補助固定装置120が設置される。すなわち、ベース板121(図9)が所定の位置に固定されるとともに、ハンドル128が操作されて、くさび状部材125が前タイヤ210Aの下部(底板70に対する接触部)の前側の部分に当接するようにされる。
次に、図9及び図10に示すように、可撓性固定部材100の一対の周方向チェーン102の基端部が、フック103によって、タイヤ固定用レール90のうちの所定の固定部92(第1固定部に該当する)に対して取り付けられる。次に、可撓性固定部材100が前タイヤ210Aの上部に対して掛け渡され、各フック104の基端部が各周方向チェーン102の先端部寄りの適所に対して取り付けられ、各フック104の先端部がタイヤ固定用レール90のうちの所定の固定部92(第2固定部に該当する)に対して取り付けられる。
次に、引っ張り部材110のうちの一方のフック112aが周方向チェーン102のうちの所定の部分に対して取り付けられ、引っ張り部材110の他方のフック112bがタイヤ固定用レール90のうちの所定の固定部92に対して取り付けられる。次に、引っ張り部材110のターンバックル111が操作され、両フック112a,112bの間の距離が狭められ、周方向チェーン102のうちのフック103とフック104と間の部分が張られる。
こうして、一対の前タイヤ210Aが底板70のうちの所定の位置に固定される。
次に、図8Bに示すように、コンテナ本体10が前方に移動され、底板70が後部露出状態とされる。その状態で、上述の一対の前タイヤ210Aの場合と同様に、一対の後タイヤ210Bが底板70の所定の位置に固定される。
次に、図1Aに示すように、コンテナ本体10が中立位置に戻されてボルト38(図5も参照)によって中立位置に固定され、前扉80A及び後扉80Bが基本状態に戻されてコンテナ本体10の前端部及び後端部に対して固定される。
その状態で、コンテナがフォークリフトによって運搬され、航空機等の貨物室(図示省略)に収容される。固定用リング25,85と貨物室の内面等とがロープによって連結され、コンテナは、貨物室の内部に固定される。
このコンテナから貨物としての自動車200が取り出される際は、上述と逆の作業が行われる。
図8Bに示すように、前扉80A及び後扉80Bがコンテナ本体10の前端部及び後端部から取り外され、入出用状態とされ、ボルト38(図1A及び図5参照)が外され、コンテナ本体10が中立位置から前方に移動されて、底板70が後部露出状態とされる。その状態で、自動車200の一対の後タイヤ210Bから可撓性固定部材100(図9〜図11参照)が取り外され、底板70に対する後タイヤ210Bの固定が解除される。補助固定装置120(図9及び図10参照)も底板70から取り外される。
次に、図8Aに示すように、コンテナ本体10が後方に移動されて、底板70が前部露出状態とされる。その状態で、自動車200の一対の前タイヤ210Aから可撓性固定部材100が取り外され、底板70に対する前タイヤ210Aの固定が解除される。補助固定装置120も底板70から取り外される。
その状態で、自動車200が運転されて、スロープを形成する前扉80Aを自動車200が走行し、自動車200は、底板70及び前扉80Aから離れ、このコンテナから取り出される。
貨物が収容されていない状態(すなわち、空(から)の状態)でこのコンテナが輸送される際には、以下のように、このコンテナは折り畳み状態とされる。
底板70が前部露出状態にある状態(図8A)で、前扉80Aが折り畳み状態(図7参照)とされる。また、コンテナ本体10が前方に移動されて底板70が後部露出状態(図8B)とされ、後扉80Bも折り畳み状態(図7)とされる(図4参照)。
次に、図1Bに示すように、コンテナ本体10が移動されて中立位置に戻され、その状態で、ボルト38(図1A及び図5参照)によってコンテナ本体10が底板70に対して固定され、コンテナ本体10が折り畳み状態とされる。
こうして、このコンテナが折り畳み状態とされ、能率的に輸送され得る。
以上のように、このコンテナでは、貨物としての自動車200を収容して底板70(コンテナ)に対して固定する際に、コンテナ本体10が中立位置よりも後方に位置して底板70が前部露出状態とされて前タイヤ210Aが底板70に対して固定され(図8A)、コンテナ本体10が中立位置よりも前方に位置し底板70が後部露出状態とされて後タイヤ210Bが底板70に対して固定される(図8B)。底板70に対する後タイヤ210B及び前タイヤ210の固定が解除される場合も同様である。
このため、コンテナ内に自動車200を固定したりその固定を解除する作業が容易に行われる。すなわち、底板70に対して自動車200(前タイヤ210A,210B)を固定したり、その固定を解除する作業をする際に、コンテナ本体10(左右の側壁板20等)が邪魔とならない。
逆にいうと、コンテナ(コンテナ本体10)の内面と自動車200との間には自動車200をコンテナ(底板70)に対して固定したりその固定を解除する作業のための隙間は不要であり、その分、コンテナが小さなもので済む。このため、自動車の輸送の効率が向上する。
また、このコンテナでは、基本状態(図1A)と折り畳み状態(図1B)との間を変位可能であるため、貨物を収容していない場合(すなわち、空(から)の場合)には、折り畳み状態とされることによって、輸送の効率が向上する。
なお、上述のものはあくまで本発明の一実施形態に過ぎず、それによって本発明の範囲が限定されるものではない。
本発明の範囲は請求の範囲の記載及びその精神に基づいて定められるのであり、本発明に含まれる態様として、その範囲内で種々の変更及び修正をされたものがあり得ることは、当業者にとって明らかである。
例えば、前扉(80A)及び後扉(80B)のうちの一方は、入出用状態まで変位しなくてもよい。その一例として、前扉(80A)及び後扉(80B)のうちの一方が、その上端部において屋根板(60)に対して回動可能に設けられている態様がある。その際が、他方の扉(入出用状態となってスロープとなり得る扉)のみを使用して自動車の入出が行われてもよい。
また、前扉(80A)及び後扉(80B)の両方とも、その上端部において屋根板(60)に対して回動可能に設けられていてもよい。その際は、スロープを形成する別体の装置が必要に応じて使用されて、自動車の入出作業が行われる。
また、必ずしも、このコンテナは折り畳み状態になり得る必要はない。
その際は、前扉(80A)及び/又は後扉(80B)は、コンテナ本体の左右のいずれかの側壁板(20)に対して回動可能に連結されていてもよい。
同じく、その際は、前扉(80A)及び後扉(80B)のうちの一方は、ほぼ水平な底板(70)に対してほぼ直角の状態(すなわち、ほぼ鉛直の状態)で固定されていてもよい。その際は、当該扉には特別な機構が必要である。すなわち、例えば、前扉(80A)がそのように底板(70)に対して固定されている場合には、その前扉(80A)は、その中途高さ位置の水平な折れ曲がり部(ヒンジ)を中心に折れ曲がり可能等とされて、コンテナ本体(20)が後部露出位置に向かって変位する際の邪魔とならないようにされる必要がある。

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【図9】

【図10】

【図11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根板と左右一対の側壁板とを有するコンテナ本体と、
底板と、
前記コンテナ本体の前端部及び後端部を開閉する前扉及び後扉とを有し、
前記コンテナ本体は、前記底板に対して、前記底板が前記コンテナ本体に対して一致した中立位置を基準に、前記底板のうちの前部が前記コンテナ本体の外部に露出する前部露出位置と、前記底板のうちの後部が前記コンテナ本体の外部に露出する後部露出位置との間を相対的に変位可能である、
コンテナ。
【請求項2】
請求項1に記載のコンテナであって、
前記コンテナ本体が、前記中立位置を基準に前記前部露出位置と前記後部露出位置との間を変位可能である、
コンテナ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のコンテナであって、
前記一対の側壁板は、各々、回動部において回動可能に連結された上部側壁板と下部側壁板とを有し、
前記各上部側壁板は前記屋根板に対して回動可能であり、
前記各下部側壁板は前記底板に対して回動可能であり、
前記コンテナ本体は、前記各側壁板がほぼ鉛直状をなし前記屋根板が前記底板から離隔した基本状態と、前記各側壁板が前記各回動部において内側方向に折れ曲がって前記屋根板が前記底板に接近した折り畳み状態との間を変位可能であり、
前記前扉及び前記後扉が、ほぼ鉛直状をなし前記コンテナ本体の前端部及び後端部を塞ぐ基本状態と、前記底板及び/又は前記屋根板と重なる折り畳み状態との間を変位可能なものである、
コンテナ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載のコンテナであって、
前記前扉及び/又は前記後扉は、前記底板部の前端部及び/又は後端部に対して回動可能に連結され、
前記前扉及び/又は前記後扉は、ほぼ鉛直状をなし前記コンテナ本体の前端部及び後端部を塞ぐ基本状態と、前記底板の前端部及び/又は後端部と前記底板の外部において貨物が載置される被載置面とをつなぐ入出用状態との間においても変位可能である、
コンテナ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のコンテナであって、
貨物として自動車が収容されるコンテナであり、
可撓性を有する線状をなし前記自動車のタイヤの周方向に対応する一対の周方向線状部材と、可撓性を有する線状をなし前記一対の周方向線状部材を連結して前記タイヤの幅方向に対応する幅方向線状部材とを有する可撓性固定部材と、
いずれも前記底板に対して設けられ、前記周方向線状部材のうち前記タイヤの少なくとも上端部に沿って配設される部分を基準に一方の側の部分が固定される第1固定部と、他方の側の部分が固定される第2固定部と
を有するものである、
コンテナ。
【請求項6】
請求項5に記載のコンテナであって、
前記第1固定部及び前記第2固定部の前記底板の前後方向における位置が選択可能なものである、
コンテナ。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載のコンテナであって、
前記周方向線状部材のうちの前記第1固定部に固定される部分と第2固定部に固定される部分との間の部分を前記底板に接近する方向へ引っ張る引っ張り部材が伴っている、
コンテナ。
【請求項8】
請求項5〜請求項7のいずれかに記載のコンテナであって、
前記タイヤの前記底板に対する接触部の前側又は後側に配設されるくさび状部材が伴っている、
コンテナ。

【国際公開番号】WO2005/070790
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【発行日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517169(P2005−517169)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000574
【国際出願日】平成16年1月23日(2004.1.23)
【出願人】(504190858)TASエクスプレス 株式会社 (2)
【Fターム(参考)】