コンデンサマイクロホン
【課題】 従来の3層構成のスペーサブロックを用いて背面電極基板と振動膜のギャップを規制するECMは、ギャップの精度が悪くて音響特性にバラツキがあるという問題があった。
【解決手段】背面電極を形成した背面電極基板と、対向電極を形成した振動膜とをスペーサ手段を介して積層したコンデンサマイクロホンにおいて、前記スペーサ手段はスペーサシートの両面に接着シートを積層した積層部と、接着シートを除去したスペーサシート部とを有し、前記スペーサシート部が前記背面電極と振動膜との間に介在し、前記積層部が前記背面電極基板と振動膜とに接着されていることを特徴とする。
【解決手段】背面電極を形成した背面電極基板と、対向電極を形成した振動膜とをスペーサ手段を介して積層したコンデンサマイクロホンにおいて、前記スペーサ手段はスペーサシートの両面に接着シートを積層した積層部と、接着シートを除去したスペーサシート部とを有し、前記スペーサシート部が前記背面電極と振動膜との間に介在し、前記積層部が前記背面電極基板と振動膜とに接着されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背面電極を形成した背面電極基板と、振動膜を固着した振動膜ユニットと、前記背面電極または振動膜上にエレクトレット層を形成して成るコンデンサマイクロホンに関し、特に背面電極基板上に形成される背面電極またはエレクトレット層と振動膜間のギャップを精度良く形成することができるコンデンサマイクロホンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ビデオカメラ、デジタルカメラ等に広く用いられる小型で高性能なマイコロホンとして、エレクトレットコンデンサマイクロホン(以後ECMと略記する)が広く用いられており、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
以下、図16、図17により特許文献1に開示された従来のECMの構成を説明する。図16は従来の完成されたECMの断面図であり、図16において、80はECMである。また2は回路基板であり、前記回路基板2は絶縁基板により構成され、上面側に接続配線2a、下面側に出力電極2bが形成されると共に電子部品である集積回路11が実装されている。3は背面電極基板であり、前記背面電極基板3は絶縁基板3aの上面側に電極膜による背面電極4が形成され、また前記背面電極4の上面にエレクトレット層5が膜形成されると共に、前記背面電極4とエレクトレット5の外側に前記絶縁基板3aを貫通する貫通孔3bが形成されている。そして前記回路基板2と背面電極基板3との間に基板スペーサ9を設けることにより、前記回路基板2と背面電極基板3との間に空気室12が形成されている。
【0004】
6は振動膜ユニットであり、前記振動膜ユニット6は金属材料または絶縁部材の表面に金属膜を形成した振動膜支持枠6aの下面側に導電性の振動膜7が固着されることにより一体化されている。又18はスペーサブロックであり、後述する如く背面電極基板3の上面に形成されたエレクトレット層5と振動膜7との間に形成されるギャップの間隔を精度良く決める機能を有する。
【0005】
前記ECM80の構成は、前記回路基板2と背面電極基板3の間に基板スペーサ9、また背面電極基板3と振動膜ユニット6の間にスペーサブロック18を挟んだ状態で積層した後に、接着材等により固着一体化してECM80が完成する。なお前記貫通孔3bは前記背面電極基板3における背面電極4の外側に形成することにより、前記背面電極4の面積を減少させることなく背面電極基板3の上面側と空気室12との通気を確保して良好な音響効果を得るようになっている。
【0006】
次に前記ECM80の動作を説明する。
上記構成を有するECM80の動作は、表面に導電膜を有する振動膜7と、表面にエレクトレット層5が形成された背面電極4とによりスペーサブロック18を挟んでコンデンサを形成する。そして振動膜7の上面側より入力される音響入力信号Psの空気振動により前記振動膜7が変位すると、前記コンデンサがこの変位を電気信号に変換し、この電気信号が導電性の振動膜支持枠6aから各接続電極(図示は省略)を介して回路基板2に導かれ、集積回路11で処理された後に回路基板2の下面に設けられた出力電極2bより出力される。そして前記貫通孔3bの存在によって振動膜7の振動動作がスムーズに成り、音響特性が確保される。
【0007】
次に図17により、従来より一般に使用されているスペーサブロック18による背面電極基板3の上面に形成された背面電極4及びエレクトレット層5と、振動膜7との間に形成されるギャップの間隔を決める方法を説明する。図17は図16におけるSB部分の拡大断面図であり、スペーサブロック18の構成を詳しく記載している。すなわちスペーサブロック18はスペーサシート18aの両面に上側接着シート18bと下側接着シート18cが積層された3層構成となっている。
【0008】
上記スペーサブロック18を構成する各要素の1例を示すと、スペーサシート18aとしては厚さが75〜85μmのポリイミドのシートを用い、両面に各々厚さが12.5μmのアクリル系接着シートよりなる上側接着シート18bと下側接着シート18cを積層して構成されている。
【0009】
そして上記構成を有するスペーサブロック18を、背面電極基板3を構成する絶縁基板3aと振動膜7の間に介在させた状態で熱プレスを行うと、アクリル系接着シートである上側接着シート18bと下側接着シート18cが振動膜7と絶縁基板3aに接着されて一体化される。そしてこの熱プレスによって上側接着シート18bと下側接着シート18cが収縮するので、熱プレスの押圧力を振動膜7とエレクトレット層5との間に形成されるギャップGが所定の値(例えば20〜25μm)になるよう調整する。
【0010】
すなわちギャップGの値はECMとしての容量値を決める重要な値であり、このギャップGの値を精度良く出すためにスペーサブロック18を構成する各要素の材質及び厚さを選択し、また熱プレスの条件を選択する必要がある。
【0011】
また、振動膜7とエレクトレット層5との間に形成されるギャップGを決めるスペーサとして、スペーサシートと接着シートとの3層構成のスペーサブロックを用いない従来例が特許文献2に開示されている。
すなわち、特許文献2は振動膜と背面電極基板とをスペーサを介して対向配置し、ゲートスプリングによって押圧する構成である。すなわちゲートスプリングの押圧により振動膜とスペーサと背面電極基板とを一体化してギャップを決めている。
【0012】
【特許文献1】特開2002−345087号公報
【特許文献2】特開2005−27182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に示す従来のECMにおける、振動膜と背面電極基板とを接着し、かつ振動膜と背面電極基板との間に形成されるギャップをきめるスペーサブロックの構成は、図17に示す如くスペーサシート18aの両面に同一の厚さを有する上側接着シート18bと下側接着シート18cを積層して構成したスペーサブロック18を、振動膜7と背面電極基板3の間に圧着することにより、間接的に振動膜7とエレクトレット層5との間に形成されるギャップGを決めている。
【0014】
しかし、このようにスペーサブロック18の圧縮を見込んで間接的にギャップGを決める方式では以下の問題がある。まずギャップGを決めることに関わるエレメントとしてスペーサブロック18とエレクトレット層5と背面電極4の厚さのデータに従って、ギャップGが所定の間隔になるスペーサブロック18の圧縮量を決める。そして実際の製造時には、この圧縮量になるような加圧力を加えてスペーサブロック18の圧着を行うことで、ギャップGを形成する。
【0015】
しかし、上記方式ではギャップGを決めることに関わるエレメントであるスペーサブロック18、エレクトレット層5、背面電極4の厚さ等にバラツキがあるため、所定の加圧力を加えてもスペーサブロック18の寸法や組成のバラツキによって所定の圧縮量が得られなかったり、またスペーサブロック18の所定の圧縮量が得られたとしても、エレクトレット層5や背面電極4の厚さのバラツキによって、ギャップGの高さにバラツキが生じる結果となる。
【0016】
また、特許文献2に示す3つのエレメントをバネによって押圧する方式には以下の問題点がある。すなわち振動膜と背面電極基板とがスペーサを介して位置決めされる構成ではあるが、上記3つのエレメントをバネによって押圧する方式であり、3つのエレメントが固着されていないため、押圧するバネの状態によってギャップが傾いて形成される場合があり、ECMの容量がバラツク結果となる。また3つのエレメントが固着されていないため、外部衝撃によってギャップが変化するという問題がある。
【0017】
」
本発明の目的は上記事情に鑑みなされたもので、ECMのギャップGを決めるエレメントであるスペーサブロック、エレクトレット層、背面電極の厚さ等にバラツキがあっても、ECMのギャップGを正確に管理することを可能とし、コンデンサ特性が安定なECMを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するための本発明におけるECMの構成は、背面電極を形成した背面電極基板と、対向電極を形成した振動膜とをスペーサ手段を介して積層したコンデンサマイクロホンにおいて、前記スペーサ手段はスペーサシートの両面に接着シートを積層した積層部と、接着シートを除去したスペーサシート部とを有し、前記スペーサシート部が前記背面電極と振動膜との間に介在し、前記積層部が前記背面電極基板と振動膜とに接着されていることを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、スペーサシートの厚みのみによって背面電極と振動膜との間のギャップを決めることができるため、ECMのギャップGを正確に管理することを可能で、コンデンサ特性が安定なECMを量産することができる。
【0020】
前記背面電極基板の背面電極上にはエレクトレット層が形成され、前記スペーサシート部が前記エレクトレット層と振動膜との間に介在していることを特徴とする。
【0021】
前記スペーサシート部が前記エレクトレット層と振動膜との間に介在している領域が、前記エレクトレット層の外周の一部分であることを特徴とする。
【0022】
前記スペーサシート部が前記エレクトレット層と振動膜との間に介在している領域が、略矩形形状を有するエレクトレット層の4隅の角部であることを特徴とする。
【0023】
上記構成によれば、スペーサシート部がエレクトレット層と振動膜との間に介在している領域を少なくすることによって、振動膜の振動する有効面積を大きくすることで検出感度を高めることができ、さらにECMとしての浮遊容量を減少させることができる。
【0024】
前記スペーサシートの両面に積層された2枚の接着シートにおいて、前記背面電極基板に接着される下側接着シートの厚みが、前記振動膜に接着される上側接着シートの厚みより大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
上記の如く本発明によれば、スペーサシートの厚みのみによって背面電極と振動膜との間のギャップを決めることができるため、ECMのギャップGを正確に管理することが可能で、コンデンサ特性が安定なECMを量産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下図1〜図11により本発明の第1実施形態におけるECMの構成を説明する。図1は完成されたECMの断面図、図2は図1に示すECMの接合部分であるSB部分の拡大断面図、図3は図2に示す接合部分の第1積層構成を示す断面図、図4は図2に示す接合部分の第2積層構成を示す断面図、図5はスペーサブロックを構成する各シートの展開図、図6は図5に示すスペーサブロックの積層状態を示す平面図、図7は図6に示すスペーサブロックのA―A断面図、図8はスペーサブロックと背面電極基板の展開図、図9は図8に示すスペーサブロックと背面電極基板の積層状態を示す平面図、図10は図9のA−A断面図、図11は図1に示すECMにシールドケースを取り付けた断面図である。
【0027】
次に図1、図2により本発明の第1実施形態におけるECMの具体的構成を説明する。図1において10はECMであり基本的構成は図16のECM80と同じである。すなわち前記回路基板2は絶縁基板により構成され、上面側に接続配線2a、下面側に出力電極2bが形成されると共に電子部品である集積回路11が実装されている。3は背面電極基板であり、前記背面電極基板3は絶縁基板3aの上面側に電極膜による背面電極4が形成され、また前記背面電極4の上面にエレクトレット層5が膜形成されると共に、前記背面電極4とエレクトレット5の外側に前記絶縁基板3aを貫通する貫通孔3bが形成されている。そして前記回路基板2と背面電極基板3との間に基板スペーサ9を設けることにより、前記回路基板2と背面電極基板3との間に空気室12が形成されている。
【0028】
6は振動膜ユニットであり、前記振動膜ユニット6は金属材料または絶縁部材の表面に金属膜を形成した振動膜支持枠6aの下面側に導電性の振動膜7が固着されることにより一体化されている。又8はスペーサブロックであり、後述する如く背面電極基板3の上面に形成されたエレクトレット層5と振動膜7との間に形成されるギャップの間隔を精度良く決める機能を有する。
また、ECM10の動作は図16で説明したECM80の動作と基本的に同じである。
【0029】
次に図2により、本発明のスペーサブロック8による背面電極基板3の上面に形成された背面電極4及びエレクトレット層5と、振動膜7との間に形成されるギャップの間隔を決める方法を説明する。図2は図1におけるSB部分の拡大断面図であり、スペーサブロック8の構成を詳しく記載している。すなわちスペーサブロック8はスペーサシート8aの両面に上側接着シート8bと下側接着シート8cが積層された3層構成となっている。
【0030】
そしてスペーサブロック8はスペーサシート8aの両面に上側接着シート8bと下側接着シート8cが積層された3層構成の積層部8dと、上側接着シート8bと下側接着シート8cを除去したスペーサシート部8eとを有し、前記スペーサシート部8eが前記背面電極4と振動膜7との間に介在し、前記積層部8dが前記背面電極基板3と振動膜7とに接着されることにより、背面電極基板3の上面に形成されたエレクトレット層5と振動膜7との間に形成されるギャップGの間隔をスペーサシート部8eの厚みのみによって決めることができるため、ECM10のギャップGを正確に管理することができる。
【0031】
次に図3,図4によりスペーサブロック8による積層とギャップGの形成方法を説明する。図3は第1積層状態を示すもので、スペーサブロック8を構成する3要素の寸法関係は、スペーサシート8aの長さは上側接着シート8bと下側接着シート8cより長く、また上側接着シート8bと下側接着シート8cの長さは本実施形態においては略同じ長さになっている。さらに下側接着シート8cの厚さは上側接着シート8bの厚さより大きくなっている。
そして第1積層状態においてはスペーサシート8aと上側接着シート8bが振動膜7に接着され、また下側接着シート8cが背面電極基板3に接着されている。
【0032】
次に図4に示す第2積層状態においては、第1積層状態においてブロック構成された振動膜7側と背面電極基板3側とを積層して加圧することにより、スペーサシート8aと下側接着シート8cが接着されて全体が一体化される。この状態においてスペーサシート8aと上側接着シート8b、下側接着シート8cとの長さの違いにより、スペーサシート8aの両面に上側接着シート8b、下側接着シート8cを積層した積層部8dと、上側接着シート8b、下側接着シート8cを除去したスペーサシート部8eが形成され、前記スペーサシート部8eが前記背面電極4上に設けられたエレクトレット層5と振動膜7との間に介在し、前記積層部8dが前記背面電極基板3と振動膜7とに接着されることにより、スペーサシート8aの厚さのみによってエレクトレット層5と振動膜7との間のギャップGが精度良く形成される。
【0033】
次にスペーサブロック8を構成せる各要素の条件と、ギャップGを形成するための加圧条件の1例を説明する。まず本実施形態におけるスペーサブロック8を構成する各要素としては、スペーサシート8aとして20〜25μmのポリイミドシート、上側接着シート8bとして12.5μmのアクリル系接着シート、下側接着シート8cとして75μmのアクリル系接着シートを用いた。
【0034】
そして図3に示す第1積層状態の加圧において、上側接着シート8bは約1/4程度に圧縮され12.5μmから3μmへと圧縮されるが、この状態ではまだスペーサシート8aと振動膜7の間にわずかな間隙が空いている。次に図4に示す第2積層状態の加圧において、第1積層状態にてブロック構成された振動膜7側と背面電極基板3側とを積層して加圧することにより、スペーサシート8aと下側接着シート8cが接着されて全体が一体化せれる。この状態において下側接着シート8cは約3/5程度に圧縮され75μmから60μmへと圧縮される。また上側接着シート8bもさらに圧縮されてスペーサシート8aと振動膜7の間にのこった間隙も完全になくなり、スペーサシート8aのみによって形成されるスペーサシート部8eが背面電極4上に設けられたエレクトレット層5と振動膜7との間にギャップGを形成する。
【0035】
すなわち上記構成のごとく、スペーサシート8aの両面に積層された2枚の接着シートの各々の厚さにおいて、背面電極基板3に接着される下側接着シート8cの厚みを、振動膜7に接着される上側接着シート8bの厚みより大きくすることによって、下側接着シート8cが背面電極4とエレクトレット層5との積層厚さを吸収し、また上側接着シート8bが完全に圧縮されて、スペーサシート部8eが背面電極4上に設けられたエレクトレット層5と振動膜7との間にギャップGを形成する。このときのギャップGはスペーサシート部8eを構成するスペーサシート8aの厚さにより20〜25μmに形成される。
【0036】
次に図5〜図7によりスペーサブロック8の形状について説明する。図5はスペーサブロック8を構成する各要素の平面図であり、外形が長方形で楕円形の窓部8amを有するスペーサシート8aの上下に、外形が長方形で長方形の窓部8bmを有する上側接着シート8bと、外形が長方形で長方形の窓部8cmを有する下側接着シート8cにより構成される。なお、本実施形態においてはスペーサシート8aと上側接着シート8bと下側接着シート8cとの外形形状は同じで、上側接着シート8bと下側接着シート8cの窓部8bm、8cmは同じ形状である。
【0037】
図6は図5に示すスペーサシート8aと上側接着シート8bと、下側接着シート8cとを積層したスペーサブロック8の平面図であり、上側接着シート8bの窓部8bmの中にスペーサシート8aの楕円形の窓部8amが配置されている。ここでは下側接着シート8cは下側に隠れて見えていない。図7は図6に示すスペーサブロック8のA−A断面図である。
【0038】
次に図8、図9によりスペーサブロック8と背面電極基板3との積層構成を説明する。図8はスペーサブロック8と背面電極基板3との平面図、図9はスペーサブロック8と背面電極基板3との積層構成を示す平面図である。図8においてスペーサブロック8は上側接着シート8bの窓部8bm(下側接着シート8cの窓部8cmも同形状)の中にスペーサシート8aの楕円形の窓部8amが配置されており、また背面電極基板3に形成されたエレクトレット層5の外形形状は上側接着シート8bの窓部8bmの形状と略同形状で、大きさは少し小さい形状となっている。
【0039】
図9はスペーサブロック8と背面電極基板3との積層構成を示す平面図であり、ハッチングで示すエレクトレット層5の四隅の円弧形状SPがスペーサシート8aにおけるスペーサシート部8eとエレクトレット層5とが積層されている部分である。すなわち本実施形態においては長方形のエレクトレット層5と楕円形状のスペーサシート8aの窓部8amを組み合わせることによって、スペーサシート部8eがエレクトレット層5と振動膜7との間に介在している領域が、略矩形形状(長方形)を有するエレクトレット層5の4隅の角部となっている。
【0040】
このようにスペーサシート部8eがエレクトレット層5と振動膜7との間に介在している領域が、エレクトレット層5の外周の全部ではなく、一部分とすることにより振動膜7の振動可能な有効面積を大きくしてECMとしての感度向上をはかり、またエレクトレット層5と振動膜7とのスペーサシート8aを挟んで対向している面積を小さくすることによって、ECMとしての浮遊容量を少なくする効果も奏する。
【0041】
図10は背面電極基板3とスペーサブロック8と振動膜ユニット6を積層した構成を示す断面図であり、図9のA−A断面を示す。また図11は図1に示すECM10にシールドケース15を取り付けた構成の断面図であり、音響入力信号Psはシールドケース15に設けた音響孔15aを通して振動膜7に加えられる。すなわちECM10は図1に示す状態で、装置の内部に組み込まれても良いし、また図11に示すようにシールドケース15を取り付けて使用しても良い。
【0042】
図12は本発明の第2実施形態におけるECMの断面図であり、図11に示すECM10と基本的構成が同じなので、同一要素には同一番号を付し、重複する説明を省略する。
ECM20においてECM10と異なるところは、背面電極基板の構成であり、ECM20においてはECM10における背面電極基板3と基板スペーサ9を1部材にして、コの字形状の背面電極基板23を使用している。
【0043】
図13は本発明の第3実施形態におけるECMの断面図であり、図11に示すECM10と基本的構成が同じなので、同一要素には同一番号を付し、重複する説明を省略する。
ECM30の構成は、回路基板2と背面電極基板3と振動膜ユニット6とスペーサブロック38、基板スペーサ9の積層構成はECM10と同じであるが、異なるところは前記回路基板2と背面電極基板3と振動膜ユニット6とスペーサブロック38、基板スペーサ9の大きさがECM10に比べて少し大きく構成されており、その大きくなった部分に貫通した音響孔30aを設け、この貫通した音響孔30aは前記振動膜7の上面側と外部とを連通させている。さらに振動膜7とシールドケース35の上面との間に空隙を形成するために、振動膜支持枠6a上に空隙スペーサ13を設け、各エレメントを接着材等により固着一体化してシールドケース35で被覆することによりECM30が完成する。すなわちECM30の各エレメントの積層構造はECM10と略同じ構成であるが、回路基板2に音響孔30aを有することとシールドケース35に音響孔が設けられていないことがECM10と異なる。
【0044】
図14は図13に示すECM30をメイン回路基板100に取り付けた状態を示す断面図であり、音響孔100aを有するメイン回路基板100の下面側にECM30をセットし、ECM30の音響孔30aをメイン回路基板100の音響孔100aに位置合わせした状態で、メイン回路基板100の下面側に出力電極2bを半田付けして取り付ける。
【0045】
次にECM30の動作を説明する。
メイン回路基板100の上面側より、メイン回路基板100の音響孔100aとECM30の貫通した音響孔30aを通過して入力された音響入力信号Psは、空隙スペーサ13によって形成された振動膜7とシールドケース35の間の間隙に導かれる。そしてこの音響入力信号Psの空気振動により前記振動膜7が変位すると、前記コンデンサがこの変位を電気信号に変換し、この電気信号が導電性の振動膜支持枠6aから各接続電極(図示は省略)を介して回路基板2に導かれ、集積回路11で処理された後に回路基板2の下面側に設けられた出力電極2bより出力される。そして前記背面電極基板3に形成された貫通孔3bの存在によって振動膜7の動作がスムーズに成り、音響特性が確保される
【0046】
上記の如くECM30は、回路基板2に音響孔30aを設けることによって、メイン回路基板100側から音響信号を取り込むことが出来るため、携帯電話等の小型、薄型化を可能にすることができる。
【0047】
図15は本発明の第4実施形態におけるECMの断面図であり、図11に示すECM10と基本的構成が同じなので、同一要素には同一番号を付し、重複する説明を省略する。
ECM40のECM10と異なるところは、振動膜47をエレクトレットシートで構成したことである。すなわちエレクトレットシートに電極膜を蒸着して振動膜47を構成し、背面電極基板3には背面電極4のみを設けている。従ってスペーサブロック48は背面電極基板3上の背面電極4と振動膜47の間にギャップGを形成している。このためにスペーサブロック48の構成はスペーサブロック8に比べてスペーサシート8aと上側接着シート8bは同一であるが、下側接着シート8cの厚さが背面電極4の上に形成されていたエレクトレット層5の厚さ分だけ薄くなっている。
【0048】
上記の如く本発明のECMは従来の3層構成のスペーサブロックを使用しながら、ギャップの管理精度を高めることができるため、コストアップすることなく良好な音響特性を有するECMを提供することができる。
また上記各実施形態においては、矩形形状の振動膜の事例について示したが、これに限定されるものではなく、従来の円形形状や楕円形状等の振動膜にも適用可能であることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1実施形態におけるECM10の断面図である。
【図2】図1に示すECM10の接合部分の拡大断面図である。
【図3】図2に示す接合部分の第1積層構成を示す断面図である。
【図4】図2に示す接合部分の第2積層構成を示す断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態におけるスペーサブロックを構成する各シートの展開図である。
【図6】図5に示すスペーサブロックの積層状態を示す平面図である。
【図7】図6に示すスペーサブロックのA―A断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態におけるスペーサブロックと背面電極基板の展開図である。
【図9】図8に示すスペーサブロックと背面電極基板の積層状態を示す平面図である。
【図10】図9のA−A断面図である。
【図11】図1に示すECM10にシールドケースを取り付けた断面図である。
【図12】本発明の第2実施形態におけるECMの断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態におけるECMの断面図である。
【図14】図13に示すECM30をメイン回路基板100に取り付けた状態を示す断面図である。
【図15】本発明の第4実施形態におけるECMの断面図である。
【図16】従来の完成されたECMの断面図である。
【図17】図16に示すECM80の接合部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0050】
2 回路基板
2a 接続配線
2b 出力電極
3 背面電極基板
3a 絶縁基板
3b 貫通孔
4 背面電極
5 エレクトレット層
6 振動膜ユニット
6a 振動膜支持枠
7 振動膜
8、18、38,48 スペーサブロック
8a、18a スペーサシート
8b、18b 上側接着シート
8c、18c 下側接着シート
8d 積層部
8e スペーサシート部
9 基板スペーサ
10、20,30、40、80, ECM
11 集積回路
12 空気室
13 空隙スペーサ
15、35 シールドケース
15a、30a、100a 音響孔
100 メイン回路基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、背面電極を形成した背面電極基板と、振動膜を固着した振動膜ユニットと、前記背面電極または振動膜上にエレクトレット層を形成して成るコンデンサマイクロホンに関し、特に背面電極基板上に形成される背面電極またはエレクトレット層と振動膜間のギャップを精度良く形成することができるコンデンサマイクロホンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ビデオカメラ、デジタルカメラ等に広く用いられる小型で高性能なマイコロホンとして、エレクトレットコンデンサマイクロホン(以後ECMと略記する)が広く用いられており、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
以下、図16、図17により特許文献1に開示された従来のECMの構成を説明する。図16は従来の完成されたECMの断面図であり、図16において、80はECMである。また2は回路基板であり、前記回路基板2は絶縁基板により構成され、上面側に接続配線2a、下面側に出力電極2bが形成されると共に電子部品である集積回路11が実装されている。3は背面電極基板であり、前記背面電極基板3は絶縁基板3aの上面側に電極膜による背面電極4が形成され、また前記背面電極4の上面にエレクトレット層5が膜形成されると共に、前記背面電極4とエレクトレット5の外側に前記絶縁基板3aを貫通する貫通孔3bが形成されている。そして前記回路基板2と背面電極基板3との間に基板スペーサ9を設けることにより、前記回路基板2と背面電極基板3との間に空気室12が形成されている。
【0004】
6は振動膜ユニットであり、前記振動膜ユニット6は金属材料または絶縁部材の表面に金属膜を形成した振動膜支持枠6aの下面側に導電性の振動膜7が固着されることにより一体化されている。又18はスペーサブロックであり、後述する如く背面電極基板3の上面に形成されたエレクトレット層5と振動膜7との間に形成されるギャップの間隔を精度良く決める機能を有する。
【0005】
前記ECM80の構成は、前記回路基板2と背面電極基板3の間に基板スペーサ9、また背面電極基板3と振動膜ユニット6の間にスペーサブロック18を挟んだ状態で積層した後に、接着材等により固着一体化してECM80が完成する。なお前記貫通孔3bは前記背面電極基板3における背面電極4の外側に形成することにより、前記背面電極4の面積を減少させることなく背面電極基板3の上面側と空気室12との通気を確保して良好な音響効果を得るようになっている。
【0006】
次に前記ECM80の動作を説明する。
上記構成を有するECM80の動作は、表面に導電膜を有する振動膜7と、表面にエレクトレット層5が形成された背面電極4とによりスペーサブロック18を挟んでコンデンサを形成する。そして振動膜7の上面側より入力される音響入力信号Psの空気振動により前記振動膜7が変位すると、前記コンデンサがこの変位を電気信号に変換し、この電気信号が導電性の振動膜支持枠6aから各接続電極(図示は省略)を介して回路基板2に導かれ、集積回路11で処理された後に回路基板2の下面に設けられた出力電極2bより出力される。そして前記貫通孔3bの存在によって振動膜7の振動動作がスムーズに成り、音響特性が確保される。
【0007】
次に図17により、従来より一般に使用されているスペーサブロック18による背面電極基板3の上面に形成された背面電極4及びエレクトレット層5と、振動膜7との間に形成されるギャップの間隔を決める方法を説明する。図17は図16におけるSB部分の拡大断面図であり、スペーサブロック18の構成を詳しく記載している。すなわちスペーサブロック18はスペーサシート18aの両面に上側接着シート18bと下側接着シート18cが積層された3層構成となっている。
【0008】
上記スペーサブロック18を構成する各要素の1例を示すと、スペーサシート18aとしては厚さが75〜85μmのポリイミドのシートを用い、両面に各々厚さが12.5μmのアクリル系接着シートよりなる上側接着シート18bと下側接着シート18cを積層して構成されている。
【0009】
そして上記構成を有するスペーサブロック18を、背面電極基板3を構成する絶縁基板3aと振動膜7の間に介在させた状態で熱プレスを行うと、アクリル系接着シートである上側接着シート18bと下側接着シート18cが振動膜7と絶縁基板3aに接着されて一体化される。そしてこの熱プレスによって上側接着シート18bと下側接着シート18cが収縮するので、熱プレスの押圧力を振動膜7とエレクトレット層5との間に形成されるギャップGが所定の値(例えば20〜25μm)になるよう調整する。
【0010】
すなわちギャップGの値はECMとしての容量値を決める重要な値であり、このギャップGの値を精度良く出すためにスペーサブロック18を構成する各要素の材質及び厚さを選択し、また熱プレスの条件を選択する必要がある。
【0011】
また、振動膜7とエレクトレット層5との間に形成されるギャップGを決めるスペーサとして、スペーサシートと接着シートとの3層構成のスペーサブロックを用いない従来例が特許文献2に開示されている。
すなわち、特許文献2は振動膜と背面電極基板とをスペーサを介して対向配置し、ゲートスプリングによって押圧する構成である。すなわちゲートスプリングの押圧により振動膜とスペーサと背面電極基板とを一体化してギャップを決めている。
【0012】
【特許文献1】特開2002−345087号公報
【特許文献2】特開2005−27182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に示す従来のECMにおける、振動膜と背面電極基板とを接着し、かつ振動膜と背面電極基板との間に形成されるギャップをきめるスペーサブロックの構成は、図17に示す如くスペーサシート18aの両面に同一の厚さを有する上側接着シート18bと下側接着シート18cを積層して構成したスペーサブロック18を、振動膜7と背面電極基板3の間に圧着することにより、間接的に振動膜7とエレクトレット層5との間に形成されるギャップGを決めている。
【0014】
しかし、このようにスペーサブロック18の圧縮を見込んで間接的にギャップGを決める方式では以下の問題がある。まずギャップGを決めることに関わるエレメントとしてスペーサブロック18とエレクトレット層5と背面電極4の厚さのデータに従って、ギャップGが所定の間隔になるスペーサブロック18の圧縮量を決める。そして実際の製造時には、この圧縮量になるような加圧力を加えてスペーサブロック18の圧着を行うことで、ギャップGを形成する。
【0015】
しかし、上記方式ではギャップGを決めることに関わるエレメントであるスペーサブロック18、エレクトレット層5、背面電極4の厚さ等にバラツキがあるため、所定の加圧力を加えてもスペーサブロック18の寸法や組成のバラツキによって所定の圧縮量が得られなかったり、またスペーサブロック18の所定の圧縮量が得られたとしても、エレクトレット層5や背面電極4の厚さのバラツキによって、ギャップGの高さにバラツキが生じる結果となる。
【0016】
また、特許文献2に示す3つのエレメントをバネによって押圧する方式には以下の問題点がある。すなわち振動膜と背面電極基板とがスペーサを介して位置決めされる構成ではあるが、上記3つのエレメントをバネによって押圧する方式であり、3つのエレメントが固着されていないため、押圧するバネの状態によってギャップが傾いて形成される場合があり、ECMの容量がバラツク結果となる。また3つのエレメントが固着されていないため、外部衝撃によってギャップが変化するという問題がある。
【0017】
」
本発明の目的は上記事情に鑑みなされたもので、ECMのギャップGを決めるエレメントであるスペーサブロック、エレクトレット層、背面電極の厚さ等にバラツキがあっても、ECMのギャップGを正確に管理することを可能とし、コンデンサ特性が安定なECMを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するための本発明におけるECMの構成は、背面電極を形成した背面電極基板と、対向電極を形成した振動膜とをスペーサ手段を介して積層したコンデンサマイクロホンにおいて、前記スペーサ手段はスペーサシートの両面に接着シートを積層した積層部と、接着シートを除去したスペーサシート部とを有し、前記スペーサシート部が前記背面電極と振動膜との間に介在し、前記積層部が前記背面電極基板と振動膜とに接着されていることを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、スペーサシートの厚みのみによって背面電極と振動膜との間のギャップを決めることができるため、ECMのギャップGを正確に管理することを可能で、コンデンサ特性が安定なECMを量産することができる。
【0020】
前記背面電極基板の背面電極上にはエレクトレット層が形成され、前記スペーサシート部が前記エレクトレット層と振動膜との間に介在していることを特徴とする。
【0021】
前記スペーサシート部が前記エレクトレット層と振動膜との間に介在している領域が、前記エレクトレット層の外周の一部分であることを特徴とする。
【0022】
前記スペーサシート部が前記エレクトレット層と振動膜との間に介在している領域が、略矩形形状を有するエレクトレット層の4隅の角部であることを特徴とする。
【0023】
上記構成によれば、スペーサシート部がエレクトレット層と振動膜との間に介在している領域を少なくすることによって、振動膜の振動する有効面積を大きくすることで検出感度を高めることができ、さらにECMとしての浮遊容量を減少させることができる。
【0024】
前記スペーサシートの両面に積層された2枚の接着シートにおいて、前記背面電極基板に接着される下側接着シートの厚みが、前記振動膜に接着される上側接着シートの厚みより大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
上記の如く本発明によれば、スペーサシートの厚みのみによって背面電極と振動膜との間のギャップを決めることができるため、ECMのギャップGを正確に管理することが可能で、コンデンサ特性が安定なECMを量産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下図1〜図11により本発明の第1実施形態におけるECMの構成を説明する。図1は完成されたECMの断面図、図2は図1に示すECMの接合部分であるSB部分の拡大断面図、図3は図2に示す接合部分の第1積層構成を示す断面図、図4は図2に示す接合部分の第2積層構成を示す断面図、図5はスペーサブロックを構成する各シートの展開図、図6は図5に示すスペーサブロックの積層状態を示す平面図、図7は図6に示すスペーサブロックのA―A断面図、図8はスペーサブロックと背面電極基板の展開図、図9は図8に示すスペーサブロックと背面電極基板の積層状態を示す平面図、図10は図9のA−A断面図、図11は図1に示すECMにシールドケースを取り付けた断面図である。
【0027】
次に図1、図2により本発明の第1実施形態におけるECMの具体的構成を説明する。図1において10はECMであり基本的構成は図16のECM80と同じである。すなわち前記回路基板2は絶縁基板により構成され、上面側に接続配線2a、下面側に出力電極2bが形成されると共に電子部品である集積回路11が実装されている。3は背面電極基板であり、前記背面電極基板3は絶縁基板3aの上面側に電極膜による背面電極4が形成され、また前記背面電極4の上面にエレクトレット層5が膜形成されると共に、前記背面電極4とエレクトレット5の外側に前記絶縁基板3aを貫通する貫通孔3bが形成されている。そして前記回路基板2と背面電極基板3との間に基板スペーサ9を設けることにより、前記回路基板2と背面電極基板3との間に空気室12が形成されている。
【0028】
6は振動膜ユニットであり、前記振動膜ユニット6は金属材料または絶縁部材の表面に金属膜を形成した振動膜支持枠6aの下面側に導電性の振動膜7が固着されることにより一体化されている。又8はスペーサブロックであり、後述する如く背面電極基板3の上面に形成されたエレクトレット層5と振動膜7との間に形成されるギャップの間隔を精度良く決める機能を有する。
また、ECM10の動作は図16で説明したECM80の動作と基本的に同じである。
【0029】
次に図2により、本発明のスペーサブロック8による背面電極基板3の上面に形成された背面電極4及びエレクトレット層5と、振動膜7との間に形成されるギャップの間隔を決める方法を説明する。図2は図1におけるSB部分の拡大断面図であり、スペーサブロック8の構成を詳しく記載している。すなわちスペーサブロック8はスペーサシート8aの両面に上側接着シート8bと下側接着シート8cが積層された3層構成となっている。
【0030】
そしてスペーサブロック8はスペーサシート8aの両面に上側接着シート8bと下側接着シート8cが積層された3層構成の積層部8dと、上側接着シート8bと下側接着シート8cを除去したスペーサシート部8eとを有し、前記スペーサシート部8eが前記背面電極4と振動膜7との間に介在し、前記積層部8dが前記背面電極基板3と振動膜7とに接着されることにより、背面電極基板3の上面に形成されたエレクトレット層5と振動膜7との間に形成されるギャップGの間隔をスペーサシート部8eの厚みのみによって決めることができるため、ECM10のギャップGを正確に管理することができる。
【0031】
次に図3,図4によりスペーサブロック8による積層とギャップGの形成方法を説明する。図3は第1積層状態を示すもので、スペーサブロック8を構成する3要素の寸法関係は、スペーサシート8aの長さは上側接着シート8bと下側接着シート8cより長く、また上側接着シート8bと下側接着シート8cの長さは本実施形態においては略同じ長さになっている。さらに下側接着シート8cの厚さは上側接着シート8bの厚さより大きくなっている。
そして第1積層状態においてはスペーサシート8aと上側接着シート8bが振動膜7に接着され、また下側接着シート8cが背面電極基板3に接着されている。
【0032】
次に図4に示す第2積層状態においては、第1積層状態においてブロック構成された振動膜7側と背面電極基板3側とを積層して加圧することにより、スペーサシート8aと下側接着シート8cが接着されて全体が一体化される。この状態においてスペーサシート8aと上側接着シート8b、下側接着シート8cとの長さの違いにより、スペーサシート8aの両面に上側接着シート8b、下側接着シート8cを積層した積層部8dと、上側接着シート8b、下側接着シート8cを除去したスペーサシート部8eが形成され、前記スペーサシート部8eが前記背面電極4上に設けられたエレクトレット層5と振動膜7との間に介在し、前記積層部8dが前記背面電極基板3と振動膜7とに接着されることにより、スペーサシート8aの厚さのみによってエレクトレット層5と振動膜7との間のギャップGが精度良く形成される。
【0033】
次にスペーサブロック8を構成せる各要素の条件と、ギャップGを形成するための加圧条件の1例を説明する。まず本実施形態におけるスペーサブロック8を構成する各要素としては、スペーサシート8aとして20〜25μmのポリイミドシート、上側接着シート8bとして12.5μmのアクリル系接着シート、下側接着シート8cとして75μmのアクリル系接着シートを用いた。
【0034】
そして図3に示す第1積層状態の加圧において、上側接着シート8bは約1/4程度に圧縮され12.5μmから3μmへと圧縮されるが、この状態ではまだスペーサシート8aと振動膜7の間にわずかな間隙が空いている。次に図4に示す第2積層状態の加圧において、第1積層状態にてブロック構成された振動膜7側と背面電極基板3側とを積層して加圧することにより、スペーサシート8aと下側接着シート8cが接着されて全体が一体化せれる。この状態において下側接着シート8cは約3/5程度に圧縮され75μmから60μmへと圧縮される。また上側接着シート8bもさらに圧縮されてスペーサシート8aと振動膜7の間にのこった間隙も完全になくなり、スペーサシート8aのみによって形成されるスペーサシート部8eが背面電極4上に設けられたエレクトレット層5と振動膜7との間にギャップGを形成する。
【0035】
すなわち上記構成のごとく、スペーサシート8aの両面に積層された2枚の接着シートの各々の厚さにおいて、背面電極基板3に接着される下側接着シート8cの厚みを、振動膜7に接着される上側接着シート8bの厚みより大きくすることによって、下側接着シート8cが背面電極4とエレクトレット層5との積層厚さを吸収し、また上側接着シート8bが完全に圧縮されて、スペーサシート部8eが背面電極4上に設けられたエレクトレット層5と振動膜7との間にギャップGを形成する。このときのギャップGはスペーサシート部8eを構成するスペーサシート8aの厚さにより20〜25μmに形成される。
【0036】
次に図5〜図7によりスペーサブロック8の形状について説明する。図5はスペーサブロック8を構成する各要素の平面図であり、外形が長方形で楕円形の窓部8amを有するスペーサシート8aの上下に、外形が長方形で長方形の窓部8bmを有する上側接着シート8bと、外形が長方形で長方形の窓部8cmを有する下側接着シート8cにより構成される。なお、本実施形態においてはスペーサシート8aと上側接着シート8bと下側接着シート8cとの外形形状は同じで、上側接着シート8bと下側接着シート8cの窓部8bm、8cmは同じ形状である。
【0037】
図6は図5に示すスペーサシート8aと上側接着シート8bと、下側接着シート8cとを積層したスペーサブロック8の平面図であり、上側接着シート8bの窓部8bmの中にスペーサシート8aの楕円形の窓部8amが配置されている。ここでは下側接着シート8cは下側に隠れて見えていない。図7は図6に示すスペーサブロック8のA−A断面図である。
【0038】
次に図8、図9によりスペーサブロック8と背面電極基板3との積層構成を説明する。図8はスペーサブロック8と背面電極基板3との平面図、図9はスペーサブロック8と背面電極基板3との積層構成を示す平面図である。図8においてスペーサブロック8は上側接着シート8bの窓部8bm(下側接着シート8cの窓部8cmも同形状)の中にスペーサシート8aの楕円形の窓部8amが配置されており、また背面電極基板3に形成されたエレクトレット層5の外形形状は上側接着シート8bの窓部8bmの形状と略同形状で、大きさは少し小さい形状となっている。
【0039】
図9はスペーサブロック8と背面電極基板3との積層構成を示す平面図であり、ハッチングで示すエレクトレット層5の四隅の円弧形状SPがスペーサシート8aにおけるスペーサシート部8eとエレクトレット層5とが積層されている部分である。すなわち本実施形態においては長方形のエレクトレット層5と楕円形状のスペーサシート8aの窓部8amを組み合わせることによって、スペーサシート部8eがエレクトレット層5と振動膜7との間に介在している領域が、略矩形形状(長方形)を有するエレクトレット層5の4隅の角部となっている。
【0040】
このようにスペーサシート部8eがエレクトレット層5と振動膜7との間に介在している領域が、エレクトレット層5の外周の全部ではなく、一部分とすることにより振動膜7の振動可能な有効面積を大きくしてECMとしての感度向上をはかり、またエレクトレット層5と振動膜7とのスペーサシート8aを挟んで対向している面積を小さくすることによって、ECMとしての浮遊容量を少なくする効果も奏する。
【0041】
図10は背面電極基板3とスペーサブロック8と振動膜ユニット6を積層した構成を示す断面図であり、図9のA−A断面を示す。また図11は図1に示すECM10にシールドケース15を取り付けた構成の断面図であり、音響入力信号Psはシールドケース15に設けた音響孔15aを通して振動膜7に加えられる。すなわちECM10は図1に示す状態で、装置の内部に組み込まれても良いし、また図11に示すようにシールドケース15を取り付けて使用しても良い。
【0042】
図12は本発明の第2実施形態におけるECMの断面図であり、図11に示すECM10と基本的構成が同じなので、同一要素には同一番号を付し、重複する説明を省略する。
ECM20においてECM10と異なるところは、背面電極基板の構成であり、ECM20においてはECM10における背面電極基板3と基板スペーサ9を1部材にして、コの字形状の背面電極基板23を使用している。
【0043】
図13は本発明の第3実施形態におけるECMの断面図であり、図11に示すECM10と基本的構成が同じなので、同一要素には同一番号を付し、重複する説明を省略する。
ECM30の構成は、回路基板2と背面電極基板3と振動膜ユニット6とスペーサブロック38、基板スペーサ9の積層構成はECM10と同じであるが、異なるところは前記回路基板2と背面電極基板3と振動膜ユニット6とスペーサブロック38、基板スペーサ9の大きさがECM10に比べて少し大きく構成されており、その大きくなった部分に貫通した音響孔30aを設け、この貫通した音響孔30aは前記振動膜7の上面側と外部とを連通させている。さらに振動膜7とシールドケース35の上面との間に空隙を形成するために、振動膜支持枠6a上に空隙スペーサ13を設け、各エレメントを接着材等により固着一体化してシールドケース35で被覆することによりECM30が完成する。すなわちECM30の各エレメントの積層構造はECM10と略同じ構成であるが、回路基板2に音響孔30aを有することとシールドケース35に音響孔が設けられていないことがECM10と異なる。
【0044】
図14は図13に示すECM30をメイン回路基板100に取り付けた状態を示す断面図であり、音響孔100aを有するメイン回路基板100の下面側にECM30をセットし、ECM30の音響孔30aをメイン回路基板100の音響孔100aに位置合わせした状態で、メイン回路基板100の下面側に出力電極2bを半田付けして取り付ける。
【0045】
次にECM30の動作を説明する。
メイン回路基板100の上面側より、メイン回路基板100の音響孔100aとECM30の貫通した音響孔30aを通過して入力された音響入力信号Psは、空隙スペーサ13によって形成された振動膜7とシールドケース35の間の間隙に導かれる。そしてこの音響入力信号Psの空気振動により前記振動膜7が変位すると、前記コンデンサがこの変位を電気信号に変換し、この電気信号が導電性の振動膜支持枠6aから各接続電極(図示は省略)を介して回路基板2に導かれ、集積回路11で処理された後に回路基板2の下面側に設けられた出力電極2bより出力される。そして前記背面電極基板3に形成された貫通孔3bの存在によって振動膜7の動作がスムーズに成り、音響特性が確保される
【0046】
上記の如くECM30は、回路基板2に音響孔30aを設けることによって、メイン回路基板100側から音響信号を取り込むことが出来るため、携帯電話等の小型、薄型化を可能にすることができる。
【0047】
図15は本発明の第4実施形態におけるECMの断面図であり、図11に示すECM10と基本的構成が同じなので、同一要素には同一番号を付し、重複する説明を省略する。
ECM40のECM10と異なるところは、振動膜47をエレクトレットシートで構成したことである。すなわちエレクトレットシートに電極膜を蒸着して振動膜47を構成し、背面電極基板3には背面電極4のみを設けている。従ってスペーサブロック48は背面電極基板3上の背面電極4と振動膜47の間にギャップGを形成している。このためにスペーサブロック48の構成はスペーサブロック8に比べてスペーサシート8aと上側接着シート8bは同一であるが、下側接着シート8cの厚さが背面電極4の上に形成されていたエレクトレット層5の厚さ分だけ薄くなっている。
【0048】
上記の如く本発明のECMは従来の3層構成のスペーサブロックを使用しながら、ギャップの管理精度を高めることができるため、コストアップすることなく良好な音響特性を有するECMを提供することができる。
また上記各実施形態においては、矩形形状の振動膜の事例について示したが、これに限定されるものではなく、従来の円形形状や楕円形状等の振動膜にも適用可能であることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1実施形態におけるECM10の断面図である。
【図2】図1に示すECM10の接合部分の拡大断面図である。
【図3】図2に示す接合部分の第1積層構成を示す断面図である。
【図4】図2に示す接合部分の第2積層構成を示す断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態におけるスペーサブロックを構成する各シートの展開図である。
【図6】図5に示すスペーサブロックの積層状態を示す平面図である。
【図7】図6に示すスペーサブロックのA―A断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態におけるスペーサブロックと背面電極基板の展開図である。
【図9】図8に示すスペーサブロックと背面電極基板の積層状態を示す平面図である。
【図10】図9のA−A断面図である。
【図11】図1に示すECM10にシールドケースを取り付けた断面図である。
【図12】本発明の第2実施形態におけるECMの断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態におけるECMの断面図である。
【図14】図13に示すECM30をメイン回路基板100に取り付けた状態を示す断面図である。
【図15】本発明の第4実施形態におけるECMの断面図である。
【図16】従来の完成されたECMの断面図である。
【図17】図16に示すECM80の接合部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0050】
2 回路基板
2a 接続配線
2b 出力電極
3 背面電極基板
3a 絶縁基板
3b 貫通孔
4 背面電極
5 エレクトレット層
6 振動膜ユニット
6a 振動膜支持枠
7 振動膜
8、18、38,48 スペーサブロック
8a、18a スペーサシート
8b、18b 上側接着シート
8c、18c 下側接着シート
8d 積層部
8e スペーサシート部
9 基板スペーサ
10、20,30、40、80, ECM
11 集積回路
12 空気室
13 空隙スペーサ
15、35 シールドケース
15a、30a、100a 音響孔
100 メイン回路基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面電極を形成した背面電極基板と、対向電極を形成した振動膜とをスペーサ手段を介して積層したコンデンサマイクロホンにおいて、前記スペーサ手段はスペーサシートの両面に接着シートを積層した積層部と、接着シートを除去したスペーサシート部とを有し、前記スペーサシート部が前記背面電極と振動膜との間に介在し、前記積層部が前記背面電極基板と振動膜とに接着されていることを特徴とするコンデンサマイクロホン。
【請求項2】
前記背面電極基板の背面電極上にはエレクトレット層が形成され、前記スペーサシート部が前記エレクトレット層と振動膜との間に介在していることを特徴とする請求項1記載のコンデンサマイクロホン。
【請求項3】
前記スペーサシート部が前記エレクトレット層と振動膜との間に介在している領域が、前記エレクトレット層の外周の一部分である請求項2記載のエレクトレットコンデンサマイクロホン。
【請求項4】
前記スペーサシート部が前記エレクトレット層と振動膜との間に介在している領域が、略矩形形状を有するエレクトレット層の4隅の角部である請求項3記載のエレクトレットコンデンサマイクロホン。
【請求項5】
前記スペーサシートの両面に積層された2枚の接着シートにおいて、前記背面電極基板に接着される下側接着シートの厚みが、前記振動膜に接着される上側接着シートの厚みより大きいことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のコンデンサマイクロホン。
【請求項1】
背面電極を形成した背面電極基板と、対向電極を形成した振動膜とをスペーサ手段を介して積層したコンデンサマイクロホンにおいて、前記スペーサ手段はスペーサシートの両面に接着シートを積層した積層部と、接着シートを除去したスペーサシート部とを有し、前記スペーサシート部が前記背面電極と振動膜との間に介在し、前記積層部が前記背面電極基板と振動膜とに接着されていることを特徴とするコンデンサマイクロホン。
【請求項2】
前記背面電極基板の背面電極上にはエレクトレット層が形成され、前記スペーサシート部が前記エレクトレット層と振動膜との間に介在していることを特徴とする請求項1記載のコンデンサマイクロホン。
【請求項3】
前記スペーサシート部が前記エレクトレット層と振動膜との間に介在している領域が、前記エレクトレット層の外周の一部分である請求項2記載のエレクトレットコンデンサマイクロホン。
【請求項4】
前記スペーサシート部が前記エレクトレット層と振動膜との間に介在している領域が、略矩形形状を有するエレクトレット層の4隅の角部である請求項3記載のエレクトレットコンデンサマイクロホン。
【請求項5】
前記スペーサシートの両面に積層された2枚の接着シートにおいて、前記背面電極基板に接着される下側接着シートの厚みが、前記振動膜に接着される上側接着シートの厚みより大きいことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のコンデンサマイクロホン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
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【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−74716(P2010−74716A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242287(P2008−242287)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】
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