説明

コンデンサ及びその製造方法

【課題】集電板と電極張出し部との接続を安定化させ、コンデンサ素子の低抵抗化とともに接続強度を高める。
【解決手段】素子端面(6)に電極張出し部(陽極部14A、陰極部14B)を形成したコンデンサ素子(4)と、前記電極張出し部と溶接する溶接接続部(溶接部24)とともに肉厚部(突部32)を持ち、該肉厚部(突部32)により熱容量を増大させた集電板(8A、8B)と、前記コンデンサ素子の前記電極張出し部に前記集電板が溶接により接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ素子に集電板を溶接するなど、コンデンサ素子と集電板との接続技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層コンデンサ又は電解コンデンサでは、コンデンサ素子の電極部に外部端子が接続されている。コンデンサ素子の電極部の形成や、外部端子との接続構造はコンデンサ素子や、製品としてのコンデンサの内部抵抗など、コンデンサが備える電気的な特性に大きく影響を与える。
【0003】
このような接続に関し、素子の端面に集電端子を設けること(例えば、特許文献1)、巻回素子の一方の端面に陽極集電板、他方の端面に陰極集電板を設けること(例えば、特許文献2)、巻回素子の端面に露出した集電箔を覆って集電板を備え、集電板と集電箔とを溶接接続すること(例えば、特許文献3)、また、集電板を外装ケースと素子との接続や外部端子との接続に用いること(例えば、特許文献4)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−219857号公報
【特許文献2】特開2001−068379公報
【特許文献3】特開2007−335156公報
【特許文献4】特開2010−093178公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、コンデンサ素子の素子端面に集電板を備え、集電板を電極箔に接続する構成では、集電体でコンデンサ素子の内部抵抗を低減できる利点がある反面、各電極箔と集電板との溶接精度を高める必要がある。
【0006】
集電板と電極張出し部との溶接面積を多くとれば、コンデンサ素子の内部抵抗を低減できるが、電極張出し部は文字通り、コンデンサ素子の電極、すなわち、薄い電極箔の縁部で形成されているから、電極張出し部を拡大すれば、電極張出し部と集電板との溶接条件が部分的に異なるなど、一様にはならない。このため、溶接エネルギを同一にしても、均一な熱伝導が得られない、熱伝導にムラが生じて溶融状態が不均一となる、溶接精度が低下するなど、接続状態を不安定にするという不都合がある。
【0007】
溶接精度を高めるには溶接エネルギを増強すればよいが、電極張出し部および集電板の異なる溶接条件に対して溶接エネルギを増大させれば、集電板を過熱させ、集電板と電極張出し部との接続を不安定にするという不都合がある。
【0008】
斯かる要求や課題について、特許文献1〜4にはその開示や示唆はなく、それを解決する構成等についての開示や示唆はない。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記課題に鑑み、集電板と電極張出し部との接続を安定化させ、コンデンサ素子の低抵抗化とともに接続強度を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のコンデンサは、素子端面に電極張出し部を形成したコンデンサ素子と、前記電極張出し部と溶接する溶接接続部とともに肉厚部を持ち、該肉厚部により熱容量を増大させた集電板と、前記コンデンサ素子の前記電極張出し部に前記集電板が溶接により接続されている。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明のコンデンサの製造方法は、素子端面に電極張出し部を形成したコンデンサ素子の前記電極張出し部に溶接する溶接接続部とともに肉厚部を持つ集電板を形成する工程と、前記集電板の前記肉厚部に放熱手段を接触させて放熱させながら前記溶接接続部に溶接ビームを照射し、前記溶接接続部と前記電極張出し部とを溶接する工程とを含んでいる。
【0012】
上記目的を達成するためには、上記コンデンサの製造方法において、より好ましくは、前記放熱手段に把持手段を備え、該把持手段に前記肉厚部を把持させて前記集電板を放熱させてよい。
【0013】
上記目的を達成するためには、上記コンデンサの製造方法において、より好ましくは、前記コンデンサ素子の前記素子端面に少なくとも2つの前記集電板を設置し、スペーサを介在させて前記集電板を保持する工程と、前記スペーサから放熱しながら、前記各集電板に溶接ビームを照射し、前記電極張出し部に前記集電板を溶接する工程とを含んでもよい。
【0014】
上記目的を達成するためには、上記コンデンサの製造方法において、より好ましくは、前記把持手段に前記集電板の前記肉厚部を一括把持させ、前記把持手段を通して放熱させてよい。
【0015】
上記目的を達成するためには、上記コンデンサの製造方法において、より好ましくは、前記スペーサに放熱手段を取り付けて放熱させてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のコンデンサ又はその製造方法によれば、次の何れかの効果が得られる。
【0017】
(1) 集電板と電極張出し部との接続を安定化させることができ、コンデンサ素子の低抵抗化とともにコンデンサ素子と集電板との接続強度を高め、コンデンサの信頼性を向上させることができる。
【0018】
(2) 集電板の熱容量を肉厚部により増加させたので、集電板に照射する溶接エネルギを高めることができ、溶接精度を高めることができる。
【0019】
(3) 集電板の溶接部や電極張出し部が薄い場合にも溶接精度を高めることができる。
【0020】
(4) 集電板および電極張出し部の溶接精度が高められることから、集電板とコンデンサ素子との接続構造を堅牢化できる。
【0021】
(5) コンデンサ素子の電極張出し部と集電板との接触状況を集電板の熱容量の増加で補完できるので、溶接ムラを抑制できる。
【0022】
(6) コンデンサ素子の電極張出し部と集電板との溶接精度が高められるため、集電板の溶接によってコンデンサ素子の低抵抗化を図ることができる。
【0023】
(7) コンデンサ素子の素子端面に集電板を備えたことにより、コンデンサ素子と外部端子部材との接続処理を簡略化することができる。
【0024】
そして、本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付図面及び各実施の形態を参照することにより、一層明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】コンデンサ素子、集電板およびスペーサの一例を示す斜視図である。
【図2】コンデンサ素子および集電板の溶接工程を示す図である。
【図3】集電板の保持構造の一例を示す図である。
【図4】コンデンサ素子および集電板の保持構造の一例を示す図である。
【図5】溶接時の放熱メカニズムの一例を示す図である。
【図6】電気二重層コンデンサの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔第1の実施の形態〕
【0027】
第1の実施の形態に係る電気二重層コンデンサおよびその製造方法について、図1を参照する。図1はコンデンサ素子、集電板およびスペーサの一例を示している。図1に示す構成は一例であって、係る構成に本発明が限定されるものではない。
【0028】
この電気二重層コンデンサ2(以下「コンデンサ2」と称する)は、本発明のコンデンサおよびその製造方法の一例であって、コンデンサ素子4の素子端面6に集電板8A、8Bを備える。一例であるコンデンサ素子4は巻回型素子であるが、巻回型素子以外の素子、たとえば、積層素子であってもよい。素子端面6に接続される集電板8A、8B間には、コンデンサ2の製造時、集電板8A、8Bの位置決め治具および放熱治具としてスペーサ10が用いられる。
【0029】
コンデンサ素子4はたとえば、陽極側および陰極側の電極箔をこれら両者間に介在させたセパレータとともに巻回されており、既述の素子端面6は電極箔より幅の広いセパレータの縁部で形成されている。この素子端面6には、素子中心部11を中心に一定幅の絶縁間隔12が設定され、この絶縁間隔12を挟んで半円形状に陽極部14Aおよび陰極部14Bが形成されている。陽極部14Aおよび陰極部14Bは、コンデンサ素子2の素子端面に形成された電極張出し部の一例である。
【0030】
陽極部14Aはセパレータの縁部より部分的に張り出させた陽極側の電極箔で形成され、素子端面6に突出させた電極箔を素子中心部11に向かって折り畳み、偏平に成形されている。陰極部14Bは、セパレータの縁部より部分的に張り出させた陰極側の電極箔で形成され、素子端面6に突出させた電極箔を素子中心部11側に折り畳み、偏平に成形されている。これら陽極部14Aおよび陰極部14Bは既述の絶縁間隔12で絶縁されている。
【0031】
また、陽極部14Aおよび陰極部14Bには、中央に集電板当接部16を挟んで集電板溶接部18が形成されている。集電板溶接部18の角度θは、たとえば、40〔度〕ないし80〔度〕に区分して切断されている。集電板当接部16および集電板溶接部18は、既述の通り、陽極側または陰極側の電極箔で形成されて分割されており、集電板溶接部18は集電板当接部16より圧縮成形されている。このため、集電板当接部16は、集電板溶接部18との間に段差を設けて高く設定されている。
【0032】
集電板8A、8Bは、コンデンサ素子4と図示しない外部端子との間に介在させる端子部材であって、集電板8Aは陽極部14Aに溶接により接続され、集電板8Bは陰極部14Bに同様に接続される。集電板8A、8Bには素子中心部11と対応する位置に円弧状の切欠部20が形成され、この切欠部20を中心に端子接続部22、この端子接続部22を挟んで溶接部24が形成されている。端子接続部22は外部端子(図6の陽極端子74または陰極端子76)側に接続する部分であって、溶接部24との間に段差を設けて高く設定されている。溶接部24は、コンデンサ素子4の集電板溶接部18と溶接する部分であるから、集電板溶接部18と密着させるため同一の形状である。
【0033】
端子接続部22には円弧状面からなる溶接部26が形成され、この溶接部26の前面部には、コンデンサ素子4の素子端面6すなわち、集電板当接部16を覆う覆い部28が形成されている。端子接続部22の裏面側には集電板当接部16と相似形の凹部30が形成され、この凹部30内にコンデンサ素子4の集電板当接部16が収容される。
【0034】
集電板8A、8Bの各溶接部24には、直方体状の突部32が形成され、各突部32が、各集電板8A、8Bの対向縁面部34の縁端部に肉厚部を形成している。各突部32によって形成された肉厚部が集電板8A、8Bの熱容量を増大させるとともに、集電板8A、8Bが把持手段(たとえば、チャック)で把持される被把持部を構成している。被把持部を突部32と別個に形成してもよい。
【0035】
各集電板8A、8Bは、コンデンサ素子4の素子中心部11を基準にコンデンサ素子4の素子端面6に位置決めされ、既述の絶縁間隔12と同様に絶縁間隔36が設定される。そこで、コンデンサ2の製造には、既述のスペーサ10が用いられ、このスペーサ10は本発明における放熱手段の一例である。このスペーサ10は熱吸収性、放熱性のよい金属材料たとえば、鋼材で形成され、中心保持部38とともに、この中心保持部38を中心に直径方向に間隔保持部40、42を備えている。
【0036】
中心保持部38は、位置決め対象である各集電板8A、8Bの切欠部20を素子中心部11に位置決めする柱状部であり、高さh1 を備える。この高さh1 は、切欠部20の高さh2 と一致又は同等又は高く、即ち、h1 ≒h2 、h1 =h2 又はh1 >h2 の関係である。中心保持部38の外周の半径r1 は切欠部20の内周面の半径r2 と同等であり、r1 ≦r2 の関係である。
【0037】
間隔保持部40、42は、対向配置される集電板8A、8Bの各対向縁面部34に当接され、中心保持部38で切欠部20を中心に、集電板8A、8Bの間隔を平行に絶縁間隔36に保持する平行部である。間隔保持部40、42の形状は、偏平な直方体からなる板状体であって、長さL、高さh1 および厚さtを備え、表裏面を以て平行な基準面44A、44Bが形成されている。
【0038】
このようなスペーサ10によれば、コンデンサ素子4の中心に配置された中心保持部38の周面部に切欠部20を当て、間隔保持部40、42の基準面44A、44Bに対向縁面部34を密着させれば、各集電板8A、8Bが絶縁間隔36を設けてコンデンサ素子4の素子端面6の適正な位置に位置決めされる。しかも、各集電板8A、8Bにスペーサ10を放熱部材として接触させることができる。
【0039】
次に、コンデンサ素子4と集電板8A及び8Bの溶接工程について、図2、図3および図4を参照する。
【0040】
この溶接工程は、本発明のコンデンサの製造方法の一例である。この溶接工程では、コンデンサ素子4に載置した集電板8A、8Bを保持装置46によって所定位置に保持し、レーザ溶接装置48から集電板8A、8Bの溶接箇所50に対してレーザ照射52を行い、溶接を行う。
【0041】
保持装置46には、定盤54に設置されたコンデンサ素子4上で集電板8A、8Bを周面方向から加圧保持する複数の加圧保持部56が備えられ、各加圧保持部56は、コンデンサ素子4の素子中心部11を中心に放射状に配置されている。この実施の形態では隣接する加圧保持部56間が一例として60〔度〕間隔に設定している。各加圧保持部56には集電板8A、8Bに当接するチャック部58が備えられ、各チャック部58の背面側には圧縮状態のスプリング60が設置され、スプリング60の復元力を集電板8A、8Bに作用させている。したがって、集電板8A、8Bは、周面方向より作用させた圧力F(図2)を受け、保持されている。また、各チャック部58は金属で構成され、溶接時、各集電板8A、8Bの放熱手段を構成している。
【0042】
また、保持装置46には、スペーサ10によりコンデンサ素子4の素子中心部11に位置決めされた集電板8A、8Bを把持する一対のチャック保持部62が備えられている。各チャック保持部62は、集電板8A、8Bの突部32を一括して把持するチャック部64が備えられ、このチャック部64で集電板8A、8Bおよびスペーサ10が保持される。この実施の形態では、集電板8A、8Bの対向縁面部34の間には補助スペーサ66が設置されている。この補助スペーサ66は、スペーサ10の間隔保持部40、42と同一の厚みtを備え、集電板8A、8Bの対向縁面部34に密着させている。この補助スペーサ66およびチャック部64は、溶接時、外部の放熱手段を構成している。
【0043】
チャック部64の各チャック片64A、64Bは図3に示すように、支持軸68によって回動可能であり開閉される。
【0044】
また、保持装置56には、図4に示すように、定盤54に載置されたコンデンサ素子4を下側の素子端面6から上方に向かう加圧力70を作用させ、コンデンサ素子4を上下方向においても加圧状態で所定位置に保持する。定盤54は、コンデンサ素子4を垂直に位置決めして載置し、素子端面6を水平に維持する基準面を設定する手段の一例である。
【0045】
次に、レーザ溶接および放熱について、図5を参照する。図5はレーザ照射および放熱の一例を示している。
【0046】
この溶接工程では、コンデンサ素子4の素子端面6に位置決めされ保持された各集電板8A、8Bの溶接部24にレーザ照射52を行う。このレーザ照射52は4箇所同時に行ってもよく、各部を交互に選択して行ってもよい。
【0047】
突部32を形成したことにより、各集電板8A、8Bの熱容量は突部32の容積分だけ増加している。そして、溶接箇所50Aにレーザ照射52を行った場合、溶接箇所50Aに生じた熱は、矢印mで示すように、突部32に接触しているチャック部64のチャック片64Aに伝導し、チャック部64の本体側に流れ、放熱される。また、溶接箇所50Aの熱は、矢印nで示すように、スペーサ10にも流れ、補助スペーサ66からチャック部64の本体側に流れ、放熱される。このような放熱形態は他の溶接箇所50B、50C、50Dで生じた熱も同様に放熱される。
【0048】
このように各集電板8A、8Bの熱容量が突部32の形成によって増加したことと、既述の放熱機能が高められ、その結果、レーザ溶接の際にレーザ溶接装置48から各溶接箇所50A、50B、50C、50Dに付与する溶接エネルギを高めることができる。この結果、従前では、レーザ溶接の際にレーザ出力を高めると、集電板8A、8Bや電極張出し部である陽極部14A、陰極部14Bを構成している電極箔が薄いために生じていた欠落部やムラを抑制できる。しかも、レーザ出力を弱めた場合に未接続部が生じていた不都合はレーザ出力を高めることにより改善することができる。そして、集電板8A、8Bの熱容量の向上と相俟って放熱効率が向上したことにより、集電板8A、8Bや陽極部14A、陰極部14Bに加えられる溶接エネルギを吸収でき、溶接精度を高め、接続の信頼性を向上させることができる。
【0049】
また、集電板8A、8Bの突部32による熱容量の増加は、集電板8A、8Bに多様な放熱ルートが確保されたことによる、溶接時の溶融熱量変化を抑制でき、溶接状態の安定化を図ることができ、溶接精度を向上させることができる。
【0050】
次に、集電板8A、8Bを素子端面6に備える電気二重層コンデンサ2について、図6を参照する。図6は電気二重層コンデンサの一例を示している。
【0051】
図6に示す電気二重層コンデンサ2では、コンデンサ素子4の陽極部14Aには封口板72にある陽極端子74が溶接により接続され、陰極部14Bには封口板72にある陰極端子76が溶接により接続されている。陽極端子74、陰極端子76はコンデンサ2の外部端子の一例である。
【0052】
このように、コンデンサ素子4と封口板72は一体化され、円筒状の外装ケース78にコンデンサ素子4が挿入される。外装ケース78はたとえば、アルミニウムケースで構成される。封口板72には封口本体80の外面側縁部に封止リング82が設置されている。この封口板72は、外装ケース78の絞り部84で位置決めされるもととに、外装ケース78の開口縁部86をカーリング処理して封口板72の封止リング82に食い込ませることにより、外装ケース78に保持されている。また、コンデンサ素子4は、封口板72と外装ケース78の内底面との間に保持されている。
【0053】
この実施の形態では、コンデンサ素子4の素子端面6と封口板72の封口本体80との間には絶縁性リング88が設置されている。この絶縁性リング88が集電板8A、8Bの周囲面及びその近傍を覆い、外装ケース78とコンデンサ素子4側との絶縁が図られている。
【0054】
以上説明した第1の実施の形態の電気二重層コンデンサ2の特徴事項や利点を列挙すれば以下の通りである。
【0055】
(1) コンデンサ素子4や製品であるコンデンサ2の内部抵抗を低下させるため、電極張出し部である陽極部14Aや陰極部14Bを増大し、集電板8A、8Bとの接触面積を大きくすれば、それらの表面性状が溶接条件や溶接精度に影響を与えることは既述の通りである。これに対し、集電板8A、8Bの熱容量を増大させたので、溶接エネルギを増大させ、溶接精度を高めることができる。
【0056】
(2) 集電板8A、8Bの熱容量を増大させる手段である複数の突部32は、集電板8A、8Bの対向縁面部34の角部に形成し、しかも、集電板8A、8Bの厚み方向に突出しているので、溶接部24の溶接有効面積を狭めることなく、集電板8A、8Bには溶接有効面積が十分に確保されている。これは溶接処理の利便性に加え、溶接精度を高めることができる。しかも、溶接部24はレーザ溶接などのエネルギ照射による溶接に適する厚さに形成でき、陽極部14A、陰極部14Bに溶接エネルギを十分に伝達できる。
【0057】
(3) 集電板8A、8Bの溶接部24や陽極部14A、陰極部14Bの電極箔が薄い場合にも溶接精度を高めることができる。
【0058】
(4) 集電板8A、8Bおよび陽極部14A、陰極部14Bの溶接精度が高められることから、集電板8A、8Bとコンデンサ素子4との接続構造を堅牢化できる。
【0059】
(5) 陽極部14Aまたは陰極部14Bと集電板8Aまたは集電板8Bとの接触状況を集電板の熱容量の増加で補完でき、溶接ムラを抑制できる。
【0060】
(6) 溶接精度の向上により、集電板8A、8Bの溶接によってコンデンサ素子4の低抵抗化を図ることができ、ひいては等価直列抵抗の低い製品など、コンデンサ2の電気的な特性を向上させることができる。
【0061】
(7) コンデンサ素子4の素子端面6に集電板8A、8Bを備えたことにより、コンデンサ素子4と外部端子部材すなわち、陽極端子74または陰極端子76との接続処理を簡略化することができる。
【0062】
(8) 外装部材である封口板72には、コンデンサ素子4が強固に支持されている。即ち、陽極端子74及び陰極端子76に集電板8A、8Bを介してコンデンサ素子4の陽極部14A及び陰極部14Bがレーザ溶接により、強固に固定されるので、コンデンサ素子4の支持強度が高められている。この結果、機械的に堅牢な支持構造が構成され、製品の耐震性を高めることができる。
【0063】
(9) 集電板8A、8Bを備えているので、コンデンサ素子4にタブを接続する必要がない。
【0064】
〔第2の実施の形態〕
【0065】
(1) 第1の実施の形態では、端子部材として陽極端子74及び陰極端子76を例示したが、これら陽極端子74及び陰極端子76と集電板8A、8Bとの間に端子板を備えた構成であってもよい。
【0066】
(2) 第1の実施の形態では、溶接手段としてレーザ溶接を例示したが、溶接エネルギを照射する溶接方法であればよく、たとえば、電子ビーム溶接を用いてもよい。
【0067】
(3) 第1の実施の形態では、電気二重層コンデンサ2を例示したが、本発明はこれに限定されない。同一の構造及び方法は、電解コンデンサにも同様に適用でき、同様の効果が得られる。
【0068】
(4) 第1の実施の形態では、スペーサ10と補助スペーサ66とを別個の構成としたが、これらを一体化した構成としてもよい。たとえば、スペーサ10の間隔保持部40、42を延長し、補助スペーサ66の機能をスペーサ10で実現してもよい。
【0069】
(5) 第1の実施の形態では、保持装置46に加圧保持部56やチャック保持部62を備える構成としたが、コンデンサ素子4や集電板8A、8Bの保持や固定手段は上記実施の形態に限定されない。また、第1の実施の形態では、保持手段や固定手段で放熱手段を兼用しているが、保持装置46と放熱手段を別個に設置してもよい。
【実施例】
【0070】
この実施例は、既述の第1の実施の形態における溶接工程の実験例を示している。
【0071】
この実施例では、既述の第1の実施の形態に係る供試品は集電板8A、8B、保持装置46およびスペーサ10による放熱を行い、比較例に係る供試品には突部32がない集電板を使用し、保持装置46、スペーサ10による放熱を行わないこととした。それぞれの溶接条件は、レーザ出力:50〔W〕〜3000〔W〕、レーザ走査の速度:一定速度、300〔mm/秒〕〜3000〔mm/秒〕とし、集電板8A、8Bと電極部14A、14Bを溶接した。第1の実施の形態に係る供試品10〔個〕と比較例に係る供試品10〔個〕のそれぞれについて、溶接部分の外観形状を観察し、溶接不良数を算出した。
【0072】
この結果、溶接不良比率(不良数/供試品数)は、第1の実施の形態に係る供試品では、0/10、比較例では、2/10であった。第1の実施の形態の供試品は、レーザ溶接が良好で、溶接不良は皆無であり、これに対し、比較例の供試品は、局所的に集電板が過度に熱せられ、ボイドや欠落部等の溶接不良を生じた。つまり、第1の実施の形態に係る製品では、集電板の熱容量が増大し、良好なレーザ溶接が得られたのに対し、比較例に係る製品では、集電板の熱容量が小さく、局所的に集電板が過度に熱せられ、溶接不良が生じた。
【0073】
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施の形態等について説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、又は発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のコンデンサ及びその製造方法は、集電板の熱容量を増大させ、溶接時の放熱性を高めたので、溶接精度の向上とともに、製品の信頼性を高めることができるなど、有益である。
【符号の説明】
【0075】
2 電気二重層コンデンサ
4 コンデンサ素子
6 素子端面
8A、8B 集電板
10 スペーサ
11 素子中心部
14A 陽極部
14B 陰極部
16 集電板当接部
18 集電板溶接部
20 切欠部
22 端子接続部
24、26 溶接部
36 絶縁間隔
38 中心保持部
40、42 間隔保持部
46 保持装置
48 レーザ溶接装置
50A、50B、50C、50D 溶接箇所
52 レーザ照射
56 加圧保持部
58、64 チャック部
62 チャック保持部
66 補助スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子端面に電極張出し部を形成したコンデンサ素子と、
前記電極張出し部と溶接する溶接接続部とともに肉厚部を持ち、該肉厚部により熱容量を増大させた集電板と、
前記コンデンサ素子の前記電極張出し部に前記集電板が溶接により接続されていることを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
素子端面に電極張出し部を形成したコンデンサ素子の前記電極張出し部に溶接する溶接接続部とともに肉厚部を持つ集電板を形成する工程と、
前記集電板の前記肉厚部に放熱手段を接触させて放熱させながら前記溶接接続部に溶接ビームを照射し、前記溶接接続部と前記電極張出し部とを溶接する工程と、
を含むことを特徴とするコンデンサの製造方法。
【請求項3】
前記放熱手段に把持手段を備え、該把持手段に前記肉厚部を把持させて前記集電板を放熱させることを特徴とする請求項2に記載のコンデンサの製造方法。
【請求項4】
前記コンデンサ素子の前記素子端面に少なくとも2つの前記集電板を設置し、スペーサを介在させて前記集電板を保持する工程と、
前記スペーサから放熱しながら、前記各集電板に溶接ビームを照射し、前記電極張出し部に前記集電板を溶接する工程と、
を含むことを特徴とする請求項2または3に記載のコンデンサの製造方法。
【請求項5】
前記把持手段に前記集電板の前記肉厚部を一括把持させ、前記把持手段を通して放熱させることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載のコンデンサの製造方法。
【請求項6】
前記スペーサに放熱手段を取り付けて放熱させる、
ことを特徴とする請求項4または5に記載のコンデンサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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