説明

コントラスト向上フィルタ

【課題】他の被着体と積層する時に遮光部分である暗色線条部の露出部での密着性を向上できる、コントラスト向上フィルタとする。
【解決手段】コントラスト向上フィルタ10は、延在方向を互いに平行に多数配列した暗色線条部1aと、暗色線条部を少なくとも側面から支持する透明樹脂層1bとを有するコントラスト向上層1を含み、暗色線条部の一部が透明樹脂層の少なくとも片面Asに露出した露出部Eの面を粗面Erにして、投錨効果によって密着性を向上させる。また、露出部は片面Asに対して凹んだ凹陥形状とはせずに平坦な平坦形状又は突出している突出形状として、露出部の凹みに被着体3と接着剤層で積層時に空気を残留し難くする。被着体は電磁波遮蔽層等の各種機能層を含み得る。また、機械的強度増強などの為に支持体シート2を積層しても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微小ルーバ構造を有するコントラスト向上フィルタに関し、特に、他の被着体と積層する時に遮光部分である暗色線条部の露出部での密着性が向上する、コントラスト向上フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ディスプレイとして、旧来のブラウン管(CRT)ディスプレイ以外に、フラットパネルディスプレイ(FPD)となる、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(以後PDPとも言う)、電界発光(EL)ディスプレイ等の各種ディスプレイが実用されている。
【0003】
そして、ディスプレイの前面(観察者側面)には、例えばPDPでは、ディスプレイからの電磁波放出が強い為、該電磁波は遮蔽し画像光は透過させる電磁波遮蔽フィルタや、ディスプレイから放出される赤外線によるリモートコントローラの誤動作を防ぐ、赤外線吸収フィルタ等の光学フィルタが配置される。
また、更に画質を向上させる等の為に、コントラスト向上フィルタを配置することがある。コントラスト向上フィルタは、通常、ストライプ状の遮光部位(暗色線条部)が面方向に、その延在方向が互いに平行となる様にして多数配列された所謂微小ルーバ構造のコントラスト向上層を備えたフィルタである。この様なコントラスト向上フィルタをディスプレイの前面に配置すると、外光は光吸収部となる暗色線条部で吸収されて観察者側に戻って画像光に混じらない様になり、また画像光は暗色線条部の間の光透過部によって観察者側に届くので、外光による明室コントラストの低下を防ぐことができる(特許文献1)。
【0004】
ところで、コントラスト向上フィルタの機能を担うコントラスト向上層1の構造は、図10で例示する従来のコントラスト向上フィルタ20の様に、それが備えるコントラスト向上層21は、基本的には、暗色線条部21aが透明樹脂層21bで支持された構造であり、更にこのコントラスト向上層21のみでは機械的強度が不足する場合に、これを支持する支持体シート(不図示)が積層されることが多い。また、更に必要に応じて、前記、電磁波遮蔽フィルタや近赤外線吸収フィルタ等の各種光学フィルタ等が積層された積層体となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−313360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の様な暗色線条部21aは、通常、生産性、物性等の要求から紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等の架橋硬化した樹脂(硬化樹脂)から構成される。この種の硬化樹脂は化学反応性が低いため、他の材料との密着力が低い。その為、図11の様に、暗色線条部21aの露出部Eが平滑面Ehであると、露出部Eが存在する側のコントララスト向上層21の面に、光学フィルタなど他の被着体3と積層したときに、露出部Eの部分での密着性が、透明樹脂層1bの面Asの部分での密着性に比べて劣ることがある。暗色線条部21aでの被着体3との密着性が不足すると、該コントラスト向上層21が撓んだりした時に部分的にでも剥離した暗色線条部21aでの被着体3との界面に空気が進入すると、空気層と暗色線条部21a或いは被着体3との界面で外光が反射して画面が白化したり、特に、暗色線条部21aの露出部Eの面積率が大きくなった場合には、コントラスト向上層21と被着体3との層間の密着性も低下するようになる、と言う問題も生じる。
【0007】
すなわち、本発明の課題は、他の被着体と積層する時に遮光部分である暗色線条部の露出部での密着性が向上した、コントラスト向上フィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明では、次の様な構成の、コントラスト向上フィルタとした。
(1)延在方向を互いに平行に多数配列した暗色線条部と該暗色線条部を少なくとも側面から支持する透明樹脂層とを有するコントラスト向上層を含む、コントラスト向上フィルタにおいて、
該暗色線条部の一部が、透明樹脂層の少なくとも片面に露出しており、また該片面に他の層が積層されているときは、該他の層が積層されていないと仮定した状態に於いて、該暗色線条部の一部が、透明樹脂層の少なくとも片面に露出しており、
暗色線条部の前記露出している部分である露出部の表面が粗面であり、且つ該露出部が前記片面に対して平坦な平坦形状又は突出した突出形状をしている、コントラスト向上フィルタ。
(2)上記(1)に於いて、上記暗色線条部が露出している側の透明樹脂層の面を含むコントラスト向上層の面に対して、接着剤層を介して機能層が積層されている、コントラスト向上フィルタ。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被着体など他の層と積層する時に、遮光部分である暗色線条部の露出部の面が粗面となっているので、投錨効果により密着性が向上する。また、露出部が透明樹脂層の面に対して突出している場合には、露出面積の増大により投錨効果が増強され密着性が更に向上する。また、露出部は透明樹脂層の面に対して平坦又は突出しており凹んでないので、該凹んだ部分に被着体など他の層と積層する時に空気が残留し難い。
従って、暗色線条部が透明樹脂層から露出している側のコントラスト向上層の面に、接着剤層を介して各種機能層を積層した構成としても、密着性良く積層でき、また残留空気による気泡も生じない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明によるコントラスト向上フィルタを、その2形態で例示する断面図。
【図2】露出部が透明樹脂層の面に対して平坦の場合、空気が残留しない状況を説明する断面図。
【図3】露出部が透明樹脂層の面に対して凹んでいると空気が残留する状況を説明する断面図。
【図4】コントラスト向上フィルタを別の一形態で例示する断面図。
【図5】電磁波遮蔽層に於ける、導電体パターン層の凸部(形成部)周辺にて、導電体パターン層の非形成部よりも形成部でプライマ層が厚く、導電体パターン層の凸部内での導電性粒子の分布が凸部の頂部近くが密でプライマ層近くが疎の形態を、概念的に示す断面図。
【図6】暗色線条部の主切断面形状の各種例を例示する断面図。
【図7】暗色線条部の露出部が透明樹脂層の面に対して突出形状であることを説明する断面図。
【図8】暗色線条部の露出部が平坦形状でも突出形状でもない凹陥形状を例示する断面図。
【図9】暗色線条部の露出部の突出形状の各種形状例を示す断面図。
【図10】従来のコントラスト向上フィルタを例示する断面図。
【図11】従来のコントラスト向上フィルタにて、平滑面の露出部の部分で密着性を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
《A1.第1の実施形態》
本発明によるコントラスト向上フィルタについて、先ず図1を参照して、その実施形態を説明する。
【0013】
本実施形態のコントラスト向上フィルタ10は、コントラスト向上層1を有し、該コントラスト向上層1は、フィルタ面方向に多数配列し遮光部となる暗色線条部1aと、該暗色線条部1aを面方向で両側側面からと厚み方向では一方から都合3方向から支持し光透過部となる透明樹脂層1bとを有する。また、暗色線条部1aの主切断面形状は台形であり、該台形の下底が露出部Eとなっており、この露出部Eの面である露出面が平滑面ではなく粗面Erとなっている。
【0014】
この様に、透明樹脂層1bから露出した暗色線条部1aの露出部Eの露出面を、上記の様な粗面Erにすることで、接着剤層4等で被着体3と積層するときに、粗面Erによる投錨効果で密着性が向上する。
【0015】
また、暗色線条部1aの露出部Eは、該露出部Eが存在する側の透明樹脂層1bの面Asに対して陥没も突出もしていない平坦な平坦形状である。つまり、該露出部Eは、透明樹脂層1bの層面である面Asと(粗面Erによる凹凸を除けば)同一水準位の面一となっている。言い換えると、面Asに立てた法線をZ軸として、Z軸の原点の水準ゼロを面Asに正の方向を図面上方にしたとき、露出部Eは水準ゼロである(粗面凹凸による水準の変動は無視する)。
【0016】
この為、図2の断面図で示す様に、他の被着体3と積層する時に該露出部Eの近くに空気Gが残留し難くい。すなちわ、図2は、コントラスト向上層1の暗色線条部1aの平坦形状を呈する露出部Eの粗面Erが、他の被着体3と積層する際に、暗色線条部1aの露出部分に空気Gが残らず、空気Gが外部に逃げ易い事を示す。なお、同図では、他の被着体3は、機能主体層5に粘着剤等による接着剤層4が積層され構成を想定している例である。
一方、図3(a)の様に、暗色線条部1aの露出部Eが透明樹脂層1bの面Asに対して窪んだ凹陥形状であると、図3(b)の様に、当該凹陥形状の凹んだ部分に、他の被着体3と積層するときに、空気Gが逃げ切れず、気泡として残留して品質低下を起こし易くなる。
【0017】
《A2.第2の実施形態》
次に、図1(b)の断面図で例示する本実施形態のコントラスト向上フィルタ10は、上記第1の実施形態で説明した図1(a)の構成に対して、更に、支持体シート2を露出部Eが存在しない側のコントラスト向上層1の面に積層し、被着体3を該露出部Eが存在する側の(透明樹脂層1bの面Asを含む)コントラスト向上層1の面に積層した構成である。その他は、上記と同じであるので、ここでは、支持体シート2と被着体3について説明する。
支持体シート2は、例えば、ポリエステル樹脂シートなどからなる透明な樹脂シートであり、コントラスト向上層1を支持して機械的強度を増すほか、コントラスト向上層1を形成するときの、ベースシートになるものである。
また、被着体3は光学フィルタ、粘着シート等の機能層であり、PDP用途の場合には、電磁波遮蔽層(乃至は電磁波遮蔽シート)や近赤外線吸収層等である。
【0018】
なお、この様な構成のコントラスト向上フィルタ10は、例えば、次の様にして作製することができる。先ず、樹脂シートからなる支持体シート2の片面にコントラスト向上層1を形成する。コントラスト向上層1の形成は、暗色線条部1aとは逆凹凸形状の溝状の凹条部を透明樹脂層1bの表面に賦形する為に、該凹条部とは逆凹凸形状が形成されたロール状の成形型を準備し、この型面に透明の紫外線硬化性樹脂を塗布後、前記支持体シート2を成形型に密着させて、支持体シート2を透して紫外線照射して該紫外線硬化性樹脂を硬化(固化とも言う。特に、(架橋)硬化性樹脂の場合を特に、以下硬化と呼称する。)させて、凹条部が賦形された透明樹脂層1bが支持体シート2上に積層された積層シートを作製する。そして、この透明樹脂層1bの凹条部が形成された面上に、暗色材料(暗色紫外線硬化性樹脂)を塗布し、凹条部の内部にのみ暗色材料が充填されるよう、表面の不要な暗色材料はドクターブレードで掻き取った後、紫外線を照射し硬化させて暗色線条部1aを形成して、コントラスト向上層1を形成する。
このとき、暗色材料にシリカ粒子等のマット剤や樹脂ビーズ等の表面を粗面化する材料を含有させた組成物を用いて、露出部Eの露出面を粗面Erとする。そして、コントラスト向上層1の前記暗色材料を充填した側の面に、粘着剤層として接着剤層4と、近赤外線吸収層や電磁波遮蔽層5aなどの機能主体層5とを積層する等した被着体3(後述図4参照)を、該接着剤層4でラミネートすることで作製する。
【0019】
なお、前記支持体シート2として、透明樹脂層1bを積層する面を離型性として離型シートを用いて、コントラスト向上層1が該支持体シート2に積層された積層シートを作製後、該支持体シート2を剥離すれば、コントラスト向上層1のみからなる前記第1の実施形態の図1(a)の様な構成のコントラスト向上フィルタ10が作製される。
【0020】
そして、図1(b)の様な構成のコントラスト向上フィルタ10とすることで、前記第1の実施形態で説明した効果に加えて、更に、支持体シート2によって機械的強度を強化して取扱性などを向上でき、また、積層する被着体3に備えさせる機能に応じて、光学フィルタ機能、電磁波遮蔽機能、粘着機能など、各種機能を付与することができる。
【0021】
《A3.第3の実施形態》
次に、図4の断面図で例示する本実施形態のコントラスト向上フィルタ10は、上記第2の実施形態で説明した図1(b)の構成に於いて、被着体3が接着剤層4と機能主体層5としての電磁波遮蔽層5aとを含み、該電磁波遮蔽層5aが、専ら電磁波遮蔽機能を担う導電体層である導電体パターン層6と、該導電体パターン層6が面上に形成された透明基材7とを含む構成としたものである。その他は、上記第2の実施形態と同じであるので、ここでは、被着体3の構成層について更に説明する。
なお、本実施形態のコントラスト向上フィルタ10は、ディスプレイの前面に配置するとき、その表裏の向きは、図面上方が観察者V側で表側となる使用法を想定したものである。また、台形の下底を露出部Eとした暗色線条部1aは、他方の上底側を観察者V側に向け、コントラスト向上層1は電磁波遮蔽層5aに対して観察者V側に位置させて使う形態でもある。
【0022】
そして、被着体3の接着剤層4としてはアクリル系粘着剤層等の接着剤を用い、この接着剤を機能主体層5となるシートに積層することで、接着剤層4と機能層主体層5とを含む被着体3が形成される。
機能主体層5としての電磁波遮蔽層5aは、ポリエステル樹脂等の樹脂シートからなる透明基材7の片面に、メッシュ形状に導電体パターン層6を、銀ペースト等の導電性組成物で印刷形成したものである。また、接着剤層4は、透明基材7上に形成された導電体パターン層6による表面凹凸を埋め尽くせる厚さ以上の厚さで、積層してある。
【0023】
導電体パターン層6は、銀ペースト等の導電性組成物をスクリーン印刷等で形成したものなどである。ただ、好ましくは、従来では不可能であった様な細く且つ精細なパターン形成が可能で、優れた電磁波遮蔽性と優れた光透過性とを高度に両立できる点で、後述する「引抜プライマ方式凹版印刷法」で印刷形成したものが良く、本実施形態では、この「引抜プライマ方式凹版印刷法」で印刷形成した導電体パターン層6とすることが出来る。
上記「引抜プライマ方式凹版印刷法」で印刷形成した導電体パターン層6には、当該印刷法によって形成されたと判る特徴的な構造を有する。すなわち、図5の断面図で示す様に、導電体パターン層6はプライマ層8を介して透明基材7上に形成され、該プライマ層8は、導電体パターン層6の形成部6aでの厚さTaが導電体パターン層6の非形成部6bでの厚さTbに比べて厚い。なお、更に好ましくは、導電体パターン層6の凸部内の導電性粒子Cpの分布が、図5の断面図に示すように、相対的に、プライマ層8近傍において分布が疎であり頂部Pの近傍において分布が密である形態が良い。
【0024】
そして、図4の様な構成のコントラスト向上フィルタ10とすることで、前記第1及び第2の実施形態で説明した効果に加えて、更に、積層する被着体3によって電磁波遮蔽機能を付与することができる。また、その際、図5の形態の特定のプライマ層8及び特定の凸部内導電性粒子分布を有する形態とすることで、その電磁波遮蔽性と光透過性とを共に優れたものとして両立させて付与できる。
【0025】
《B.用語の定義》
以下、粗面、主切断面形状、露出部、露出部に関係する各種形状、についてここで説明しておく。
【0026】
(1)「粗面」とは、暗色線条部1aの露出部Eの表面である露出面が、「平滑面」ではないことを意味し、粗面の粗さの程度は、算術平均粗さRa(JIS B 0601−2001年版)で捉えたときに、1.0μm以上の面であることが好ましい。つまり、1.0μm未満は「平滑面」と定義し、1.0μm以上は「粗面」と定義する。
(2)「主切断面形状」とは、コントラスト向上層1(暗色線条部1aの露出部Eが突出形状となっている場合はそれによる凹凸は無視するかそれも含めた全体的な包絡面で捉える、或いは透明樹脂層1b)の層面を成す面Asに立てた法線を含む断面である「縦断面」のうち、暗色線条部1aの延在方向に直交する断面として定義される「主切断面」に於ける断面形状のことを意味する。露出部Eではその表面である露出面の主切断面方向に於ける形状である。
(3)「露出部」Eとは、暗色線条部1aのうち、透明樹脂層1bで被覆されていない部分である。
【0027】
(4)「突出形状」、「平坦形状」、及び「凹陥形状」とは、暗色線条部1aの露出部Eの部分と、透明樹脂層1bの該露出部Eが存在する面Asと、が成す主切断面に於ける形状を規定する用語であり、主切断面に於ける露出部Eの端から端までの全域(両端Eeの間の全域)と面Asとの位置関係で形状を規定する用語である。ここで、該面Asに立てた法線をZ軸としてZ軸の正方向を透明樹脂層1b及び面Asから離れる方向(例えば図1、図7では図面上方)として、面Asを水準0とすると、各々は次の意味である。
「突出形状」とは、露出部Eが正の水準となる形状であり、言い換えると面Asから+Z方向に向かって膨らんで突出している形状を意味する。
「平坦形状」とは、露出部Eが0(ゼロ)の水準を有する形状であり、言い換えると、面Asと同一の面乃至は面一である形状を意味する。尚、本発明に於いて言うところの平坦の程度は、露出部Eの水準が完全にZ=0の面であっても勿論良いが、必ずしもこの形態のみには限定されない。面As(Z=0面)に対して、露出部(の最表面)Eの水準(Z座標)が−1.5μm超から+1.5μm未満の範囲の水準であれば、実質上、気泡殘留効果等の点に於いて平坦面と同等と見做し得る。従って、本発明に於いては、露出部Eの水準(Z座標)が−1.5μm超から+1.5μm未満の範囲を平坦形状とする。
「凹陥形状」とは、露出部Eが負の水準となる形状であり、言い換えると面Asから+Z方向に対して凹んでいる形状を意味する。
【0028】
(5)「凸状形状」、「平坦状形状」、及び「凹状形状」とは、透明樹脂層1bの該露出部Eが存在する面Asとは無関係に、暗色線条部1aの露出部E自体の部分での主切断面形状を規定する用語であり、露出部Eの端から端までの全域(両端Eeの間の全域)での露出部Eのそれ自体の形状を規定する用語である。暗色線条部1a自体の主切断面形状に関するこちらの用語は、形を意味する言葉の次に「状」を付けて区別してある。ここで、該面Asに立てた法線をZ軸としてZ軸の正方向を透明樹脂層1b及び面Asから離れる方向(例えば図1、図7では図面上方)として、こちらでは、露出部Eの両端Eeを水準0とすると(両端Eeは通常面Asに対して同じ水準である)、各々は次の意味である。
「凸状形状」とは、露出部Eが正の水準となる形状であり、言い換えると両端Eeよりも外側(+Z方向)に向かって膨らんでいる形状を意味する。
「平坦状形状」とは、露出部Eが0(ゼロ)の水準を有する形状乃至これと平行な形状であり、言い換えると、両端Eeと同一水準である形状(乃至はこれを+Z方向又は−Z方向に平行移動した形状)を意味する。
「凹状形状」とは、露出部Eが負の水準となる形状であり、言い換えると両端Eeから+Z方向に対して凹んでいる形状を意味する。
なお、両端Eeが異なる水準を持つ場合は、両端Ee間を結ぶ線分(直線)に対して、露出部Eが、両端Ee間の全域で正の方向に位置する形状を「凸状形状」、両端Ee間を結ぶ線分(直線)と同一となる形状を「平坦状形状」、両端Ee間の全域で負の方向に位置する形状を「凹状形状」とする。
【0029】
《C.各部材の詳細》
次に、コントラスト向上フィルタ10の構成層について更に詳述する。
【0030】
〔コントラスト向上層〕
コントラスト向上層1は、延在方向を互いに平行に、しかも所定の間隔を空けて、多数配列した直線状の暗色線条部1aと、該暗色線条部1aの少なくとも間に存在する透明樹脂層1bとからなる。透明樹脂層1bは、暗色線条部1aを少なくとも側面から(コントラスト向上層1の面方向に平行な方向から)支持して、暗色線条部1aを所定の空間配置に維持する機能と、コントラスト向上層1に於いて光を透過する光透過部としての機能を有する。本発明では、暗色線条部1aが透明樹脂層1bで被覆されずに透明樹脂層1bから露出した露出部Eの露出面が粗面Erを呈する点に特徴を有する。更に、該露出部E(の面)が透明樹脂層1bの該露出部Eが存在する側の表面(層面)である面Asに対して平坦な平坦形状又は、該面Asに対して突出した突出形状である点にも特徴を有する。これら以外の点、すなわち、暗色線条部1aの形状や配列時の寸法、透明樹脂層1bの材料等は、従来公知のコントラスト向上層の技術を採用できる。
【0031】
例えば、暗色線条部1aの大きさとその配列周期は、用途により適宜設定するが、例えば、二等辺三角形形状の場合、底辺の大きさは17μm、高さ120μm、配列周期85μmである。そして、この底辺を露出部Eとして露出させて透明樹脂層1bの面Asに対して平坦な平坦形状の粗面Erとする。
【0032】
なお、コントラスト向上層1の作用は、外光に対しては、暗色線条部1aがフィルタ面(乃至は透明樹脂層1bの層面As)の法線に対して傾斜した方向から来る外光を吸収し、暗色線条部1a同士の間の透明樹脂層1bの部分が、主にフィルタ面の法線方向の光線からなる画像光を透過する光透過部となる。これによって外光の影響を抑制して、外光存在環境下に於ける画像の黒画像に対する白画像の輝度比、即ち、明室コントラストを向上させることができる。また、該法線方向から傾斜した一部の画像光に対しては、画像光を拡散して視野角を増大したり、画像光を正面方向に集光して正面輝度を増大させたり、することができる。
【0033】
{暗色線条部}
本発明で特徴的な暗色線条部1aから説明する。
暗色線条部1aの露出部Eは、その表面である露出面が粗面Erとなっている。この様な暗色線条部1aとしては、露出面Eが粗面Erとなっている以外は、上記した様に、従来公知の暗色線条部1aに於ける、形状、材料等を適宜採用することができる。
【0034】
[暗色線条部の露出部の粗面]
露出部Eの露出面を粗面Erとするのは、露出部E上に積層される被着体3など他の物との密着性を向上させる為であるので、粗面Erの程度は投錨効果による密着性向上効果が得られるものとするのが好ましい。この様な粗面Erは、算術平均粗さRa(JIS B 0601−2001年版で規定)で捉えた場合で1.2〜8.0μmの範囲とするのが好ましい。これより小さすぎると投錨効果による密着性向上効果が得難く、またこれより大き過ぎても該効果が飽和する。
また、露出部Eの表面を粗面Erとして形成するには、後述する様に、暗色線条部1aを形成する暗色材料中に、表面を粗面化できる材料を配合したものを用いることで形成できる。
【0035】
[暗色線条部の主切断面形状]
暗色線条部1aの主切断面形状は、基本的には特に限定されない。例えば、図1及び図4では台形であったが、この他、二等辺三角形や不等辺三角形等の三角形、正方形、長方形、五角形などでも良い。ここで、図6は暗色線条部1aの主切断面形状を例示する断面図であり、図6(1)は三角形(二等辺三角形)、図6(2)は五角形、図6(3)は台形、図6(4)は長方形、図6(5)は三角形の両方の斜辺を(図面は外側に向かって凸の場合)曲線化した形状、の例を示す。
【0036】
(暗色線条部の露出部の部分での形状)
また、暗色線条部1aの露出部Eは、該露出部Eが存在する側の透明樹脂層1bの面Asに対して、平坦な平坦形状であるか、或いは該面Asに対して突出した突出形状であることが好ましい。言い換えると、該露出部Eの部分での主切断面に於ける、コントラスト向上層1としての外形形状が、平坦な平坦形状又は該面Asから突出した突出形状であることが好ましい。なお、図1、図4及び図6は全て、平坦形状の場合であった。ここで、図7(a)、図7(b)、及び図7(c)の断面図は、突出形状を呈する露出部Eの例を示す。また、露出部E自体の形状については、図7(a)及び図7(b)が凸状形状、図7(c)は平坦状形状の例でもある。
露出部Eが平坦形状又は突出形状であれば、前述図3の様に空気Gが残留し難い。また、暗色線条部1aの露出部Eの部分の形状が突出形状であれぱ、平坦形状に比べてその分、露出部の面積が増大し、投錨効果を発現する面積が増大するので、密着性を更に向上させることができる。
【0037】
一方、前述した図3、或いは図8(a)、図8(b)及び図8(c)の様に、露出部Eが該露出部Eが存在する側の透明樹脂層1bの面Asに対して平坦でも突出でもない窪んだ凹陥形状を呈していると、露出部Eの部分に、被着体3などと積層時に空気Gが残留し品質低下を起こし易い。
露出部E自体の形状が、図8(a)は「平坦状形状」の一例であり、図8(b)は「凹状形状」の一例であり、図8(c)は「凸状形状」の一例である。なお、図8(b)の「凹状形状」、図8(c)の「凸状形状」でも、突出形状で例示した図7(a)の露出部E自体の形状が「凸状形状」と同様に、露出部Eの面積が拡大し投錨効果の増大による密着性向上が期待されるが、(露出部Eの部分でのコントラスト向上層1の形状が)凹陥形状のため、空気Gが露出部Eに残留し易い。
【0038】
ただ、図7(b)や図7(c)の突出形状は、その現実的な作製法を考えた場合、普通は起こりえず、また、あえてそこまで突出させる必要もない。しかも、これらの形状は、露出部Eの中央部に空気が溜まるのを防げるが、透明樹脂層1bの面Asから突出した暗色線条部1aの側面と該面Asとの接続部Ajの部分が窪んだ形状となる為に、今度はそこに空気が残り易くなる点で、突出形状の中ではなるべく避けた方が好ましい形状でもある。一方、図7(a)の突出形状は、台形の下底を変形させて凸状形状にすることで形成できる形状であり、変形前の該下底の両端が面Asと接続した形状であり、図7(b)や図7(c)の様な窪んだ接続部Ajが発生しない点で、より好ましい突出形状である。
つまり、露出部Eが直線状の底辺等の辺を変形させた凸状形状であれば、変形前の辺の両端Beの部分で面Asと接続している、前記図7(a)で例示した様な形状の方が好ましい。図7(b)及び図7(c)は、辺の両端Beの部分で面Asと接続していない。図7(b)では暗色線条部1aの側面と透明樹脂層1bの面Asと接続しており、図7(c)では辺の両端Beは透明樹脂層1bの面Asとではなく透明樹脂層1bの側面と接続している。
【0039】
ただ、前記した突出形状としての定義を満たす形状の中には、図9で各種例示する様な突出形状もあり得る。なお、図9は、暗色線条部1aの露出部Eと透明樹脂層1bの面As回りのみを拡大した断面図である。また、図面は説明用の概念図でもあるので、縦横の縮尺及び大小関係等は、これに限定されるものではない。
図9(a)は、暗色線条部1aの露出部Eの中央部に更に凸なる尖点Acを有する。尖点(せんてん)とは尖った点であるが、この場合は、外側に向かって尖った尖点Acである。一方、図9(b)は、暗色線条部1aの露出部Eの中央部の尖点Acが内側に向かって尖った形状の例である。また、図9(c)は、暗色線条部1aの露出部Eの中央部に尖点Acは無いが、内側に向かって湾曲して凹んだ形状の例である。
この様に、尖点Acの存在の有無に関わらず、露出部Eがその突出形状に内側に向かって凹んだ部分を有すると、そこに空気が残留する余地が生じるので、好ましくは、図9(a)の様に、内側に向かって凹んだ部分を持たない突出形状が望ましい。
なお、内側に向かって凹んだ部分を持たない突出形状において、直線部分が存在しても良い。極端な場合は、図9(d)の様に、透明樹脂層1bの面Asから突出した部分の露出部Eが、該面Asの水準を下底とし頂部を上底とする台形となる、直線のみからなる折れ線形状である。或いは、図9(a)で言えば、尖点Acが存在しない代わりに、頂部が面Asに平行な直線となる形状などである。
【0040】
また、図7(a)は、露出部Eが尖点がない曲線のみからなる突出形状(乃至は凸状形状)を呈する例でもあったが、尖点がない曲線のみからなる突出形状としては、図9(e)の様な突出形状もあり得る。図9(e)では、露出部Eが成す突出形状の幅(面As方向の寸法)と、突出高さH(面Asから最高部までの寸法)が略同じ場合で、半円状の形状の例である(突出高さHについては図7(a)参照)。しかし、この様な形状では、面Asと露出部Eとの接続部Ajに、先に図7(b)及び図7(c)で説明した様に、空気が溜まり易く、なるべく避けた方が好ましい。また、現実的にあえてそこまで突出させる必要もない。
つまり、突出形状としては、接続部Ajが窪んでいない形状が、より好ましい。接続部Ajが窪んでいない形状とは、透明樹脂層1bの面Asと、暗色線条部1aの露出部Eとの接続部Ajに於ける該露出部Eの面の成す角度を傾斜角θとして、傾斜角θが90°未満である形状であり、好ましくは傾斜角θが45°以下、より好ましくは30°以下の形状である。ちなみに、図9(e)は、傾斜角θ=90°である。
【0041】
以上の様に、突出形状としては、空気Gが抜け易い点で、より好ましくは、図9(b)の様な凹なる尖点や、図9(c)の様な凹湾曲部がない形状が良い。更に、凸なる尖点も直線もない曲線のみからなる(これを「凸湾曲形状」ということにする)形状が、好ましい。例えば、図7(a)の様な露出部Eの突出形状、乃至は凸状形状である。これらの突出形状は、又、+Z方向(図1に於いては上方)に向かって凸の滑らかな連続曲線となっている。また、露出部Eの面Asからの水準である突出高さHは、例えば、1.5〜7μmである。
【0042】
[暗色線条部の材料]
暗色線条部1aは暗色材料で形成され、暗色材料としては、光吸収性色材を樹脂バインダに含有させた、塗料(乃至はインキ)等の樹脂組成物を用いることができる。該光吸収性色材は、光吸収性が高く暗色の、つまり低明度の有彩色或いは無彩色を呈する暗色色材を用いることができる。暗色の代表例は黒色であり、無彩色の黒色が画像表示の色に影響を与えず、また外光吸収が大きい点で好ましい。又、低明度の有彩色としては、茶褐色、紺色、臙脂色、深緑色等が挙げられる。なお、暗色色材としては、公知の色材、黒色で言えば、例えば、カーボンブラック、黒色酸化鉄等の黒色顔料、アニリンブラック等の黒色染料などを用いれば良い。また、暗色色材としては、これら暗色色材でアクリル樹脂粒子等を暗色に着色した暗色の樹脂粒子などでもよい。また、青色、黄色、赤色などの有彩色の色材を複数種類用いて混色により、暗色材料を黒色など無彩色乃至は有彩色の暗色としても良い。
【0043】
上記粒子は、各個の粒子が非凝集で独立している分散形態、或いは複数粒子が凝集して複合粒子となった分散形態の何れでも良い。該粒子の粒径(複合粒子の場合は複合状態での粒径)は、通常、平均粒径0.1〜10μm程度である。又、複数の異なった粒径の粒子を混合しても良い。該暗色色材の添加量は、通常、樹脂バインダのバインダ樹脂100質量部に対して5〜1000質量部である。
また、上記樹脂バインダに用いるバインダ樹脂としては、後述する透明樹脂層1bで列記する、熱可塑性樹脂や硬化性樹脂を使用することができる。これらの中でも、電離放射線硬化性樹脂はその硬化反応による固化が迅速な点、無溶剤の樹脂バインダも可能で固化時溶剤乾燥による体積収縮で露出部Eが窪むのを回避できる点、等で好適な樹脂の一種である。また、該バインダ樹脂としては、後述する膨脹性樹脂組成物も好適な樹脂である。
【0044】
[露出部の粗面化]
露出部Eの表面を粗面Erとするには、暗色線条部1aを形成する上記暗色材料中に、シリカ粒子や樹脂ビーズ等の粒子を含有させておくことで、粗面Erを付与することができる。この様な粗面化粒子としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス等の無機質粒子、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂等の有機質粒子などの、所謂艶消し剤を用いることができる。なお、これらの粒子の平均粒径は、暗色線条部1aの寸法に応じたものとすれば良く、例えば0.1〜5μmである。また、最大粒径は露出部Eの横幅(両端Ee間の寸法)以下とすると良い。
なお、上記の様な所謂艶消し剤を樹脂バインダ中に含む塗液を、露出部Eを有する側の表面の透明樹脂層1b及び露出部Eを含む全面に塗布することで、表面が粗面の粗面化樹脂層を形成することでも、露出部Eの面に(該粗面化樹脂層としての)粗面Erを形成できる。しかし、この方法では、透明樹脂層1bの面にも(該粗面化樹脂層としての)粗面Erが形成される結果、該粗面を通過する光が拡散し、光透過部としての透明樹脂層1bの光透過率を低下させるので、好ましくない。従って、粗面Erは、透明樹脂層1bの表面は除いた、暗色線条部1aの露出部Eの表面のみとするのが好ましい。
【0045】
[暗色線条部の形成法]
暗色線条部1aの形成は、先に表面に暗色線条部1aとは逆凹凸形状の凹条部を有する透明樹脂層1bを形成した後、該凹条部の中に暗色材料を充填することで形成できる。充填は、例えば、凹条部が形成された透明樹脂層1bの面に、暗色材料を塗布した後、凹条部以外の不要な暗色材料をドクターブレードで掻き取るいわゆるワイピング法によって除去して、凹条部内にのみに暗色材料を残す。その後、暗色材料は固化させる。
【0046】
[突出形状の形成法]
なお、露出部Eを突出形状にする場合は、上記樹脂バインダとして、硬化又は加熱により膨脹する、膨脹性樹脂組成物を用いるのが好ましい。硬化時に膨脹する、硬化膨脹性樹脂組成物を用いれば、賦形なしに、暗色材料の硬化と同時に露出部Eを突出形状に容易に形成できる。また、加熱時に膨脹する加熱膨脹性樹脂組成物を用いれば、暗色材料を加熱すれば露出部Eに突出形状を賦形なし容易に形成できる。
この様な膨脹性樹脂組成物としては、例えば、以下の(1)、(2)の樹脂組成物が挙げられる。
【0047】
(1)硬化膨脹性樹脂組成物;(I)特開2009−138116号公報記載の、オキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)及び/又は脂環エポキシ基含有ビニルエーテル化合物(B)と、分子内にオキセタン基、エポキシ基、水酸基、ビニルエーテル基、又は脂肪族若しくは脂環式不飽和炭化水素基を少なくとも1つ有し、分子量500以上のオリゴマー又はポリマー(C)を含むカチオン重合性樹脂組成物に、スピロオルソカーボネート、ジチオカーボネート類等の硬化膨脹性モノマーを配合した樹脂組成物、(II)特許第3772913号公報記載の、シアナート樹脂と少なくとも1個以上のフェノール性水酸基を含む化合物とを反応させて得られる、シアナート樹脂硬化物の中間体であるイミドカーボネートと、エポキシ樹脂と、熱可塑性樹脂とからなる樹脂組成物、(III)特公昭59−4444号公報記載の、不飽和ポリエステル樹脂オリゴマー、ナフテン酸コバルト、メチルエチルケトンパーオキシドから成る組成物中に、不飽和ポリエステルに対して1.73倍重量以上のスチレンモノマーを加えた樹脂組成物。(IV)特公昭63−56251号公報記載の、(A)イソシアネート基を2個有するポリイソシアネート化合物の少なくとも1種、(B)ヒドロキシル基を2或いは3個有するポリヒドロキシル化合物の少なくとも1種、(C)特定の1−アルキル−4−ヒドロキシメチル−2,6,7−トリオキサビシクロ〔2,2,2〕オクタンの少なくとも1種を特定モル比で反応させてなる、末端及び/又は側鎖にビシクロオルソエステル環を有するウレタンからなる硬化用組成物。該組成物は硬化時に、例えば、0.4%の体積膨脹率を有する。(V)特公平1−28055号公報記載の、エチレン性不飽和化合物に特定の1−ビニル−ビシクロオルソエステル化合物をラジカル共重合させることにより、該エチレン性不飽和化合物にビシクロオルソエステル基を導入して得られる共重合体。該重合体はその重合時に該オルソエステル基の開環による架橋時に収縮を起さず、逆に1%前後膨脹することを特徴とする。(VI)特公平3−6924号公報記載の、エチレン性不飽和化合物に特定の(メタ)アクリロイルオキシ基含有スピロルオルソエステル化合物をラジカル共重合させることにより、該エチレン性不飽和化合物にスピロオルソエステル基を導入した共重合体。得られる該共重合体は該オルソエステル基の開環による架橋時に、例えば、0.2%の体積膨脹率を有する。
【0048】
(2)加熱膨脹性樹脂組成物;加熱膨脹性樹脂組成物としては、樹脂組成物中に熱分解型の発泡剤を添加し、樹脂の固化時に該発泡剤の熱分解温度以上に加熱し体積膨脹させる様にした加熱発泡型樹脂組成物を挙げることができる。この様な、加熱発泡型樹脂組成物の場合は、発泡剤を添加する樹脂は硬化性樹脂以外に熱可塑性樹脂も使用できる。
なお、熱分解型の発泡剤の例としては、アゾジカーボンアミド、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジッド等が挙げられる。また、熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などが挙げられ、硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、電子線や紫外線等で硬化する電離放射線硬化性樹脂があり、熱硬化性樹脂としては、2液硬化型ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられ、電離放射線硬化性樹脂としては、(メタ)アクリレート系、ポリエステル系、エポキシ系などの樹脂が挙げられる。電離放射線としては、通常、紫外線、又は電子線が用いられる。
【0049】
暗色材料に上記の様な膨脹性樹脂組成物を用いることで、凹条部内のみに暗色材料を充填した後、暗色材料を硬化すると同時に、硬化膨脹性樹脂組成物は体積膨脹して、露出部Eを突出形状に出来る。また、暗色材料が加熱発泡型膨脹性樹脂組成物の場合は、凹条部内のみに暗色材料を充填した後、加熱して暗色材料を体積膨脹させて露出部Eを突出形状に出来る。
【0050】
[暗色線条部の屈折率]
なお、コントラスト向上層1に画像光を拡散させて視野角を拡大させるときは、暗色線条部1aの側面、例えば主切断面形状が三角形ならば該三角形の斜辺の面で、画像光を効率良く全反射させることが好ましい。この為には、暗色線条部1aの樹脂成分の屈折率naと、透明樹脂層1bの屈折率nbとの関係を、na<nbとすると良い。なお、この様な屈折率差は、暗色線条部1aのバインダ樹脂、及び透明樹脂層1bの樹脂を適宜選定することで付与できる。
【0051】
[暗色線条部の露出部の向き]
なお、暗色線条部1aの露出部Eの、観察者V(或いはディスプレイパネル)に対する向きは、いずれでも良い。暗色線条部1aの露出部Eが三角形や台形などでの底辺である場合で言えば、該露出部E(底辺)をディスプレイパネル側に向けた図4の如き形態は、ディスプレイパネルからの画像光の視野角を広げることができ、逆に、露出部E(底辺)を観察者側に向けた形態(図示略)は、画像光の視野角を規制することができる。また、露出部E(底辺)の向きがこれらどちらの形態でも、外光、特に暗色線条部1aの配列方向から来る外光の影響を抑制して、明室コントラストを向上させることができる。
また、該露出部E(底辺)の、電磁波遮蔽層5a等の機能主体層5に対する向きも、いずれでも良い。図4で例示した様に、電磁波遮蔽層5a等の機能主体層5側に向けても良いし、その反対側に向けてもよい。従って、観察者V(或いはディスプレイパネル)に対する向きと組み合わせると、都合4通りの組み合わせがあり、どの組み合わせでも良い。
【0052】
[暗色線条部の露出部と底辺の関係]
暗色線条部1aの露出部Eは、図1及び図4の主切断面形状が台形の場合で言えば、その底辺(下底)であったが、逆側(台形では上底)でも良い。
【0053】
{透明樹脂層}
透明樹脂層1bは、厚み方向では厚みが、暗色線条部1aの少なくとも露出部Eを除く部分の厚み以上で、面方向では暗色線条部1a同士の間を埋めて暗色線条部1aを少なくとも側面から支持して機械的強度を補強すると共に画像光を透過させる光透過部を形成する、透明な樹脂層である。図1及び図4では、透明樹脂層1bは暗色線条部1aを(両側)側面と、下底を露出部Eとする台形の上底側の3方向から支持している例である。なお、透明樹脂層1bの厚みは、例えば100〜300μm程度である。
【0054】
透明樹脂層1bを構成する樹脂としては、透明であれば基本的には特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂が使用できる。熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニルなどが挙げられ、硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、電子線や紫外線等で硬化する電離放射線硬化性樹脂があり、熱硬化性樹脂としては、2液硬化型ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、電離放射線硬化性樹脂としては、(メタ)アクリレート系、ポリエステル系、エポキシ系などの樹脂が挙げられる。尚、ここで、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。なかでも、電離放射線硬化性樹脂は硬化が迅速で無溶剤にできる点などで好適な樹脂である。
【0055】
なお、暗色線条部1aとは逆凹凸形状(同形状で凹凸関係が反転した形状)の凹条部が形成された透明樹脂層1bを形成するには、公知の成形法、例えば、例えば、加熱された熱可塑性樹脂層に成形型を押圧する熱プレス法、熱可塑性樹脂組成物を成形型内に注入して固化させるキャスティング法、射出成形法、電離放射線硬化型樹脂組成物を成形型上(内)に注入して電離放射線で硬化させるフォトポリマー法(別名2P法)等を利用できる。これらの成形法の中でも、フォトポリマー法は生産性に優れる点でより好ましい。フォトポリマー法では、シリンダ状の成形型を使用して、帯状シートなどを供給しながら連続的に成形できる。帯状シートとして支持体シート2を用いれば、支持体シート2上に積層され、透明樹脂層1b及び暗色線条部1aを含むコントラスト向上層1を形成できる。
【0056】
〔支持体シート〕
支持体シート2は、コントラスト向上層1のみでは機械的強度が不足する場合に、コントラスト向上層1を支持する機能を有する。この様な、支持体シート2としては、透明な樹脂シート(乃至フィルム)を使用できる。なお、「シート」は「フィルム」に対して一般に厚い物を意味することがあるが、本発明では単に呼称上の違いのみであり、その意味の区別は特にない。
上記樹脂シートの樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、或いは、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂等である。なかでも、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは好適な材料である。なお、支持体シート2の厚みは、取扱性、コスト等の点で通常は12〜500μm、好ましくは25〜200μmだが、特に制限はない。
また、支持体シート2としては、樹脂、ガラス、セラミックス等からなる透明な板でも良い(本発明の支持体シート2での「シート」の概念には「板」も含み得る)。
但し、生産性に優れたロール・ツー・ロール方式での生産適性の点では、フレキシブルな(可撓性の)材料を選べる樹脂シートが好ましい。
なお、ここで、ロール・ツー・ロール方式とは、ロール(巻取)から巻き出して所定の加工を施し、その後、再度ロールに巻き取る加工方式を言う。
【0057】
〔被着体〕
被着体3は、任意であり、シートや板を貼着して積層したり、塗工などで積層されたりする。その際、被着体3を暗色線条部1aの露出部Eを有する側のコントラスト向上層1の面に、特に、接着剤層4を介して積層するときに、該露出部Eを粗面Erとしたことによる密着性向上効果が得られる。さらに、該露出部Eを突出凸状としておけば、残留気泡防止の効果も得られる。その際、接着剤層4は、被着体3側に積層された形態で積層するときの方が、残留気泡防止の効果が大きい。
【0058】
{接着剤層}
先ず、接着剤層4は、前記図3の説明では被着体3に属する層としたが、必ずしもその形態には限定されない。要は、被着体3を積層する時に接着剤を施せば良い。例えば、被着体3に属さない、独立した層として用意した接着剤層4を、積層時に、被着体3とコントラスト向上層1との間に挿入しても良い。また、上記した様に、効果が相対的に小さくなるが、予めコントラスト向上層1側に接着剤層4を積層してから被着体3を積層しても良い。この様な接着剤層4は、塗工法などで形成することができる。
なお、この接着剤層4は、粘着剤層も含み得る。
【0059】
接着剤層4としては、透明であれば特に制限はない。この様な接着剤層4は樹脂層として形成でき、該樹脂層の樹脂としては、熱可塑性樹脂の他、積層時までは未硬化とすれば、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などの硬化性樹脂も用いることができる。接着剤層4には、これらの樹脂の1種又は2種以上の混合樹脂を用い、更に必要に応じて、可塑剤、粘着付与剤、安定剤、架橋剤、重合開始剤等が添加された樹脂組成物を用いる。また、通常は該樹脂組成物に更に溶剤希釈した塗液で塗工形成する。なお、上記熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられ、上記熱硬化性樹脂としては、例えば、2液硬化型ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられ、上記電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリレート系、ポリエステル系、エポキシ系などの樹脂が挙げられる。接着剤層4の厚みは通常2〜500μm程度である。
被接着面が暗色線条部1aの突出形状や、導電体パターン層6によって表面凹凸を有する場合は、該表面凹凸を吸収して接着剤層4の表面が平坦面となし得るに足る厚みとするのが好ましい。
なお、接着剤層4を粘着剤から構成し厚みを200μm以上とすると耐衝撃層(衝撃吸収層)として機能させることも出来る。
【0060】
なお、接着剤層4として粘着剤層を用い且つ最外層となる場合は、通常、使用時まで表面を保護するセパレータフィルムを積層しておく。また、粘着剤層とする場合の樹脂は、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤など公知の粘着剤を用いることができる。セパレータフィルムとしては、樹脂フィルムの表面をシリコーン系樹脂やワックス等で剥離性を付与したものを用いることができる。粘着剤層として形成する接着剤層4は、上記の様な樹脂の溶液の塗工、また粘着剤層の場合は粘着シートの積層など、公知の形成法で形成することができる。
【0061】
{機能主体層}
機能主体層5は、被着体3が接着剤層4を備える場合に、該接着剤層4以外の層、つまり該接着剤層4を用いてコントラスト向上フィルタ10に、追加する機能を担う層のことを意味する。
例えば、コントラスト向上フィルタ10が、ディスプレイ用途である場合などでは、コントラスト向上機能以外の各種光学フィルタ機能が、機能主体層5の機能となり得る。また、光学フィルタ機能以外に、ハードコート層に代表される表面保護機能、電磁波遮蔽機能など、光学機能以外の機能も機能主体層5の機能となり得る。これらは、ディスプレイ用フィルタとして、従来公知の各種光学フィルタ乃至は機能層を適宜採用できる。
【0062】
また、機能主体層5としては、コントラスト向上フィルタ10は少なくともコントラスト向上層1を1層含むが、該コントラスト向上層1に別のコントラスト向上層1を追加する場合の、追加するコントラスト向上層1も含み得る。これは例えば、暗色線条部1aの延在方向のみが異なるコントラスト向上層1同士を2層以上重ねる場合などである。しかし、通常は、コントラスト向上層1以外の層が機能主体層5となる。またその場合、粘着剤層として接着剤層4を、その粘着面を使用時まで保護するセパレータフィルム付きの粘着シートとしての被着体3を積層する場合などでは、該粘着剤層として付与する接着剤層4自体が機能主体層5でもある。
【0063】
以下、PDP用途で必須となる電磁波遮蔽層5aを機能主体層5として、先ず説明し、次に、光学フィルタ等の光学機能層と、光学機能以外の非光学機能層を説明する。
【0064】
[電磁波遮蔽層]
電磁波遮蔽層5aは、少なくとも導電体層を含み、該導電体層には全面に蒸着やスパッタ等で形成した金属乃至は金属酸化物からなるそれ自体透明性の導電性薄膜などもあるが、ここでは、それ自体は不透明でパターン状に形成した導電体パターン層6を、説明する。この様な電磁波遮蔽層5aとしては、少なくとも導電体パターン層6を含むが、透明基材7上に導電体パターン層6が形成された形態では、該透明基材7も含み、さらに後述プライマ層8を介して透明基材7上に形成された形態では、該プライマ層8も含む構成となる。
【0065】
(導電体パターン層)
導電体パターン層6は、パターン状に形成された電磁波遮蔽機能を担う層であり、kHz〜GHz帯域の所謂電波領域の電磁波は遮蔽し可視光線は透過するフィルタ機能を有する。また、導電体パターン層6は通常は後述透明基材7上に形成される。また、導電体パターン層6は、導電性粒子Cpとバインダ樹脂とを含む層である。導電体パターン層6は、導電性粒子Cpと樹脂バインダとを含む液状の導電性組成物(導電性ペースト、導電性インキ等とも呼ばれる)を用いて形成でき、導電性組成物を溶剤乾燥、電離放射線照射、加熱などのエネルギー付加、化学反応などの固化手段によって固化させて得られる。
【0066】
上記導電性粒子Cp及び樹脂バインダには公知の物を適宜採用できる。例えば、導電性粒子Cpとしては、金、銀、白金、銅、錫、アルミニウム、ニッケルなど高導電性金属(乃至その合金)の粒子やコロイド、或いは、樹脂粒子や無機非金属物粒子の表面を金、銀など上記高導電性金属(乃至その合金)で被覆した金属被覆粒子、或いは黒鉛粒子、などを用いる。
【0067】
樹脂バインダは、導電体パターン層6を形成する為の液状の導電性組成物から導電性粒子Cpを除いた残りの成分であり、樹脂バインダの樹脂(バインダ樹脂)としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などを単独使用又は併用する。熱可塑性樹脂には熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体など、熱硬化性樹脂にはメラミン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、エポキシ系樹脂などを使用する。また、電離放射線硬化性樹脂には、電離放射線で架橋など重合硬化するモノマー及び/又はプレポリマーを含む組成物を使用する。モノマーやプレポリマーにはラジカル重合性やカチオン重合性の化合物を使用する。なかでも、(メタ)アクリレート系化合物を用いた電離放射線硬化性樹脂が代表的である。なお、電離放射線には通常紫外線や電子線等が用いられる。
導電性粒子と(樹脂バインダ中の)バインダ樹脂との質量比は、導電性、印刷適性、及び導電体パターン層の強度とを兼ね備える点から、導電性粒子:バインダ樹脂=60:40〜99:1(質量比)、より好ましくは、導電性粒子:バインダ樹脂=90:10〜96:4(質量比)の範囲とする。
【0068】
なお、導電体パターン層6のパターンの平面視形状は、公知の形状など任意であり、例えば、メッシュ形状(六角形や四角形などの格子模様)、ストライプ形状(直線状縞模様、螺旋模様など)などの幾何学形状である。なかでもメッシュ形状、それも正方格子形状が代表的である。導電体パターン層6の非形成部である開口部の形状は、メッシュ形状が例えば正方格子形状では正方形、ストライプ形状では帯形状となる。また、パターンの線幅、つまり導電体パターン層6の形成部の線幅は、電磁波遮蔽性能とメッシュパターンの不可視性の両立の観点から通常は5〜50μmである。格子やストライプ等の幾何学模様のパターンの周期は通常100〜500μmである。また、導電体パターン層6の開口率〔(導電体パターン層6の開口部の合計面積/導電体パターン層6の開口部及び導電体パターン層6の形成部を含めた全被覆面積)×100で定義〕は、電磁波遮蔽性能及び可視光透過性との両立の点から、50〜95%程度である。導電体パターン層6の厚みは電磁波遮蔽性の点からは3μm以上、好ましくは10μm以上とする。又、通常最大100μm以下とする。これ以上の厚みでは、通常用途に於いては過剰性能となる上、パターン形成が困難となったり、導電体パターン層6が外力を受けて破損し易くなったりする為である。
【0069】
(導電体パターン層の印刷方式)
なお、導電体パターン層6を透明基材7上にパターン状に形成する方法は特に限定はない。公知のパターン形成法を用途、要求物性等に応じて適宜採用すれば良い。形成法の代表的な方法は、導電性組成物を用いた印刷法である。
導電性組成物を用いて導電体パターン層6を印刷形成する場合、その印刷方式としても基本的には特に制限はない。例えば、シルクスクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、凹版印刷などの有版印刷、或いはインキジェット印刷に代表される無版印刷等である。これらの印刷法の中でも、国際公開第2008/149969号のパンフレットで開示された凹版印刷の一種である「引抜プライマ方式凹版印刷法」は、従来では不可能であった様な、細く且つ精細なパターン形成が可能となる点で好ましい印刷方式の一種であり、しかも、優れた電磁波遮蔽性と優れた光透過性とを高度に両立できる。そこで、以下この印刷方式について説明する。
【0070】
「引抜プライマ方式凹版印刷法」を被印刷物が透明基材7である場合で説明すると次の様になる。
「引抜プライマ方式凹版印刷法」は、透明基材7上に施した流動状態のままのプライマ流動層上に導電性組成物のインキを凹版印刷する方法であり、しかもその際、版面上に透明基材7が存在している間に、版面と透明基材7間にあるプライマ流動層を紫外線照射などで固化させてプライマ層8として固化させた後に透明基材7を凹版から離版して、透明基材7上にプライマ層8を介してパターン状の導電体パターン層6を印刷形成する方法である。このプライマ層8は未硬化で流動状態のときに、版から被印刷物へのインキの転移を促進する作用、言い換えると凹版の版面凹部内に充填されたインキを引き抜いて被印刷物(透明基材7)に移す作用を有する。
【0071】
そして、この様な、「引抜プライマ方式凹版印刷法」による印刷物が、他の印刷法に見られない大きな特徴は、図5の断面図で概念的に示す様に、プライマ層8と導電体パターン層6との界面について、プライマ層8は、導電体パターン層6の形成部6aでの厚さTaが導電体パターン層6の非形成部6bでの厚さTbよりも厚い形状となることである。なお、非形成部6bの厚さTbは、形成部6aの厚さTaの影響のない非形成部6bつまり開口部4の中央部での厚さとする。通常、非形成部6bの厚さTbは1〜10μm程度、形成部6aの厚さTaは、非形成部6bの厚さTbに較べて1〜10μm程度厚く形成される。
【0072】
また、導電体パターン層6の凸部内の導電性粒子Cpの分布が、相対的に、プライマ層8の近傍において分布が疎であり頂部近傍において分布が密であることが好ましい。
すなわち、導電体パターン層6の形成部6aである導電体パターン層6の凸部の内部では、図5で概念的に示す様に、導電性粒子Cpが一様な均一な分布ではなく、導電性粒子Cpの分布が、相対的に、凸部の頂部P(頂上部)の近くが密で、頂部Pから遠いプライマ層8の近くが疎である分布を持つ内部構造が好ましい。密とは単位体積中の導電性粒子Cpの粒子数で見た数密度(体積密度)である。つまり、凸部内部の導電性粒子Cpの数密度が、プライマ層8近くに比べて頂部P近くの方が大きくなる分布である。数密度が大きい方が導電性粒子Cp同士の電気的接触が行われ易い。従って、例え導電体パターン層6中の導電性粒子Cpの平均濃度が同じであっても、同じ数の導電性粒子Cpを数密度一様で分布させた場合に比べて、数密度が大きい部分での体積抵抗率の低下が寄与して全体として体積抵抗率が下がり、電磁波遮蔽性能が向上する。また、導電体パターン層6の表面へ導電性金属層を電解めっきする場合に、電解めっき適性が向上する。更に、プライマ層8との境界近傍での導電性粒子Cpの数密度が小さいことによって、導電体パターン層6とプライマ層8との密着性が向上する。
前記の如き所望の効果を奏する上では、主切断面に於ける導電性粒子Cpの(面積)数
密度分布は、プライマ層との境界での数密度に比べ、頂部の密度の密度が1.5〜10倍の範囲が好ましい。
【0073】
なお、導電体パターン層6中に於ける導電性粒子Cpの分布状態は、パターン状に形成された導電体パターン層6の形成部である凸部が透明基材7上で延びる方向には依存性を持たない。つまり、図5で示す導電体パターン層6の凸部の断面図は、凸部が延びる方向に直交し且つ透明基材7のシート面に垂直な面である主切断面の断面図であり、紙面に垂直な方向が凸部が延びる方向(延在方向)であるが、凸部が延びる延在方向では、主切断面内での位置が同じであれば単位体積中の粒子の数密度は一定である。その為、この様な単位体積中の導電性粒子Cpの数密度は、凸部の主切断面に於ける単位面積中の導電性粒子Cpの数密度(面密度)で評価出来る。すなわち、図5の如く、主切断面内に於いて、導電性粒子Cpの面密度がプライマ層8近くに比べて頂部Pの近くの方が大きくなる分布であれば、導電性粒子Cpの体積密度もプライマ層8近くに比べて頂部Pの近くの方が大きくなる分布であると判断して良い。
この様に凸部の頂部Pの方に導電性粒子Cpを偏在させるには、例えば、プライマ流動層形成済みの透明基材7を版面に圧着する圧着力を強くすると共に、導電性組成物は粘度を低めにして且つ凹版凹部内では固化させずに版面から離版後に固化させると良い。この他、導電性粒子Cpと樹脂バインダとの比重差、固化前の導電性組成物の粘度(樹脂材料及び樹脂量、溶剤量、その他添加剤量、導電性粒子Cpの形状、粒度分布、含有量など関係)、固化条件などにも依存するので、これらは適宜実験的に決定すると良い。
なお、導電性粒子Cpと樹脂バインダとの比重差については、通常は金属粒子である導電性粒子Cpの比重>樹脂バインダの比重、となる為、プライマ層8に対して頂部Pを重力の向きと同じ向きにして導電体パターン層6を固化させると良い。
なお、図5の如く導電体パターン層6内に於ける導電性粒子Cpの数密度がプライマ層8側が疎で、頂部P側が密に分布する形態は、又、導電性粒子Cpの隣接粒子間距離がプライマ層8側が大で、頂部P側が小に分布する形態であるとも言える。隣接粒子間距離についても、導電体パターン層6の延在方向での依存性は実質上無視出来る為、図5の如き主切断面に於ける隣接粒子間距離を測定し評価すれば良い。隣接粒子間距離は、通常、主切断面内の特定の位置の1粒子について、周囲に隣接する各粒子のうち該特定粒子に近い順に3〜10個の予め決められた数の粒子を選び、選んだ各粒子と該特定粒子との距離を求め、求めた各距離値を平均した値を、該特定粒子についての隣接粒子間の距離とする。
前記の如き所望の効果を奏する上では、主切断面に於ける導電性粒子Cpの隣接粒子間距離の分布は、プライマ層8との境界での隣接粒子間距離が0.5〜3μm、頂部の隣接粒子間距離が0〜0.5μmの範囲が好ましい。
【0074】
(プライマ層)
なお、上記プライマ層8は透明な樹脂層で、その樹脂には熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等を用い、硬化性樹脂には熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等を用いることができるが、固化が迅速な点で紫外線照射等で硬化する電離放射線硬化性樹脂が好ましい。これらの樹脂は、導電体パターン層6で列記したバインダ樹脂などを使用できる。
【0075】
(透明基材)
また、透明基材7は、前記した支持体シートで列記したもの等が使用できる。よって、ここでは、更なる説明は省略する。
【0076】
[機能主体層となる光学機能層と非光学機能層]
次に、機能主体層5として電磁波遮蔽層5a以外の層として、光学機能層と、非光学機能層を説明する。
光学機能層は例えば光学フィルタ機能を担い、光学フィルタ機能としては、近赤外線吸収機能、紫外線吸収機能、ネオン光吸収機能、色補正機能、反射防止機能(防眩、反射防止、防眩及び反射防止兼用のいずれか)などである。これら光学機能は、夫々の光学機能に応じた公知の光学フィルタを適宜採用できる。
また、光学フィルタ等の光学機能以外の機能を付与する為の非光学機能層は、表面保護層、ハードコート層、帯電防止層、汚染防止層、耐衝撃層、粘着剤層、或いは前記の電磁波遮蔽層などである。これらの層も公知のものを適宜使用できる。なお、光学機能層と非光学機能層とは、両層を含めて、その機能の1又は2以上を、単層又は多層構成によって実現しても良い。
【0077】
《D.変形形態》
本発明は、上記説明した以外の形態として、例えば、次の様な変形形態もとり得る。
【0078】
暗色線条部1aの延在方向は1方向でも良いが、該延在方向は複数の方向、例えば2方向に交差させたものでも良い。交差は例えば直角である。
暗色線条部1aは延在方向に直線で延びる形状でも良いが、1本の暗色線条部1aが全体として直線状に延在しているが、直線を変調し例えば波形状の様な直線状であっても良い。
暗色線条部1aの露出部Eは、透明樹脂層1bの片面に露出する形態以外に、両面に露出する形態でも良い。この場合、或る一つの暗色線条部1aが該両面に露出する形態の他(例えば、変形前の形状で台形形状が、その上底と下底の両方を露出させている形態)、夫々の暗色線条部1aは、表裏面の何れか片面にのみ露出しているが、この片面露出の暗色線条部1aが、交互に配列していることで、全体として表裏面に露出する形態などである。
又、前記の実施形態に於いては、電磁波遮蔽層5aとコントラスト向上層1とを各々別個の層として用意し、両者を積層した。しかし、コントラスト向上層1の暗色線条部1aに充填する暗色材料中の暗色色材として、黒鉛粒子等の暗色を呈し且つ導電性も有する物を採用することにより、コントラスト向上層1自体を電磁波遮蔽層5aと兼用することも出来る。
【0079】
《E.用途》
本発明によるコントラスト向上フィルタは、特に、テレビジョン受像器、測定機器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器、電話機、電子看板、遊戯機器等の表示部等に用いられるPDP、CRT、LCD、ELなどの各種画像表示装置の前面フィルタ用として好適であり、画像光は透過し外光は吸収することにより明室内での画像コントラストを向上させる機能、或いは画像情報の側面からの覗き見を防止する機能を有する。特にPDP用として好適である。又、その他、住宅、学校、病院、事務所、店舗等の建築物の窓、車輛、航空機、船舶等の乗物の窓に貼着して、外界の風景は透視可能で且つ直射日光は遮蔽する機能、或いは外界の風景は透視可能で且つ高層建築物からの覗き見は遮蔽する機能を有する窓貼り用フィルタ等の用途にも使用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 コントラスト向上層
1a 暗色線条部
1b 透明樹脂層
2 支持体シート
3 機能層(被着体)
4 接着剤層
5 機能主体層
5a 電磁波遮蔽層
6 導電体パターン層
7 透明基材
8 プライマ層
10 コントラスト向上フィルタ
20 従来のコントラスト向上フィルタ
21 従来のコントラスト向上層
21a 従来の暗色線条部
21b 従来の透明樹脂層
Ac 尖点
Aj 接続部
As (透明樹脂層の層面を成す)面
Be (底辺の)両端
Cp 導電性粒子
E 露出部
Ee (露出部の)両端
Eh (露出部の)平滑面
Er (露出部の)粗面
G 空気(気泡)
H 突出高さ
P 頂部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
延在方向を互いに平行に多数配列した暗色線条部と該暗色線条部を少なくとも側面から支持する透明樹脂層とを有するコントラスト向上層を含む、コントラスト向上フィルタにおいて、
該暗色線条部の一部が、透明樹脂層の少なくとも片面に露出しており、また該片面に他の層が積層されているときは、該他の層が積層されていないと仮定した状態に於いて露出しており、
暗色線条部の前記露出している部分である露出部の表面が粗面であり、且つ該露出部が前記片面に対して平坦な平坦形状又は突出した突出形状をしている、コントラスト向上フィルタ。
【請求項2】
上記暗色線条部が露出している側の透明樹脂層の面を含むコントラスト向上層の面に対して、接着剤層を介して機能層が積層されている、請求項1記載のコントラスト向上フィルタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−257690(P2011−257690A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133978(P2010−133978)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】