説明

コンバインの操縦座席周りの構造

【課題】コンバインの操縦座席周りの構造であって、前方から側方に配置する各パネル類を取り付けると共に、立ち作業時にオペレータが体をもたしかけることができる支持用把手を支える支持杆を主要部とした構成の提供。
【解決手段】この発明は、操縦座席2周りの構造において、操縦座席2の前方に、基部を車台1に固着して先端部を上方に延長して設けた左右支柱10L,10Rの上部か、又は該支柱10L,10Rに連結して上方に延長した連結部材11に、支持杆12を架渡して左支柱10L側と右支柱10R側とを連結し、該支持杆12を利用して、前記左支柱10Lの上方位置に、オペレータを支持する支持用把手13を設けて構成したコンバインの操縦座席周りの構造としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインの操縦座席周りの構造であって、前方から側方に配置する各パネル類を取り付けると共に、立ち作業時にオペレータが体をもたしかけることができる支持用把手を支える支持杆を主要部とした構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンバインによる刈取、脱穀作業は、オペレータが操縦座席で立ち作業をすることが多く、操縦座席の前に立って体を前や横に乗り出して前方の刈取状態や側方の穀稈の搬送状態を監視しながら作業を行っている。そして、オペレータは、作業中に安全を確認しながら、穀稈搬送装置側に手を差し伸べて一部の搬送遅れの修正、補助をすることがあり、操縦座席周辺のパネル類に体重を掛けることも多いことが知られている。
【0003】
例えば、特開2002−291320号公開特許公報には、上記の説明によるオペレータのメータパネルに寄り掛かることによって起こる故障や破損を回避するための技術構成が開示されている。該公開技術は、フロントパネルの上部にメータパネルを収納するボックス部と、そのボックス部から左右方向に向けて延出するアーム部とが一体形成されたアーチ状の樹脂成形品からなるパネル支持体を装備し、ボックス部を、その後部側ほど横幅が狭くなるオペレータに対して逆向きの台形形状に形成した構成が主要部となっている。
【特許文献1】特開2002−291320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のこの種装置では、オペレータが操縦座席前側のフロアに立って作業を行うときに、体(体重)をもたしかける部材がなく、前側や横側のパネル類では強度的に耐えられず、故障や破損の原因になるばかりでなく、作業の安全性からも課題となっていた。
【0005】
そこで、この出願に係る発明は、操縦座席の前方の車台から上方に延長した支柱に支持杆を左右に架渡して、この支持杆を利用してオペレータが立ち作業するとき、もたれかかることができる丈夫な支持用把手を取り付けて構成した。
【0006】
更に、この出願に係る発明は、オペレータの立ち作業が安全にできるように、膝の高さ位置に膝当て板を設けて安全で、楽に立ち作業が続けられるものとしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、車台(1)上に配置した操縦座席(2)を基準として、その前方に、メーターパネル(3)やスイッチパネル(4)の前部パネル(5)を左右方向に配置し、該前部パネル(5)の側部から後方に、主変速レバー(6)や副変速レバー(7)を案内するレバーガイド(8)を形成した側部パネル(9)を、延長して構成する座席(2)周りの構造において、前記操縦座席(2)の前方に、基部を前記車台(1)に固着して先端部を上方に延長した左右支柱(10L)(10R)を設け、該支柱(10L)(10R)の上部か、又は該支柱(10L)(10R)に連結して上方に延長した連結部材(11)に、支持杆(12)を架渡して左支柱(10L)側と右支柱(10R)側とを連結して設け、該支持杆(12)を利用して、前記左支柱(10L)の上方位置に、オペレータを支持する支持用把手(13)を設けて構成したコンバインの操縦座席周りの構造であって、コンバイン作業において、オペレータは、立ち作業をするときに支持杆(12)を利用して取り付けている支持用把手(13)を握って自分の体重を支えながら、安全に作業ができる。そして、オペレータは、安定した状態で安全に作業ができるのは勿論のこと、前部や側部のパネル類にもたれかかることがなく、これらが故障したり、破損することもほとんどないもととなった。
【0008】
つぎに、請求項2に記載した発明は、前記支持杆(12)は、一方の端部を前記右支柱(10R)の上部に連結した連結部材(11)に連結して固着し、他方の端部を、前記左支柱(10L)に連結部材(11)を介して取り付けている側部パネル(9)に取り付けて構成した請求項1記載のコンバインの操縦座席周りの構造であって、主変速レバー(6)や副変速レバー(7)のレバーガイド(8)を形成している側部パネル(9)を連結して強度を高める構成としている。
【0009】
つぎに、請求項3に記載した発明は、前記左右の支柱(10L)(10R)の間か、又は該支柱(10L)(10R)に設けて上方に延長した連結部材(11)との間に、上下方向を広幅とした膝当て板(14)を、左右に架渡して固着するにあたり、該膝当て板(14)の高さを、オペレータの膝の高さに相当する位置に配置して取り付けて構成した請求項1記載のコンバインの操縦座席周りの構造であって、オペレータは、立って作業をするときに、膝当て板(14)に膝を押し付けた状態にして立つと、立ち姿が安定し、長時間の作業でも疲労が少ない利点がある。更に、膝当て板(14)は、左右の支柱(10L)(10R)、或いは左右にある連結部材(11)を連結固定して一体構成とするから、これらの剛性を高めるものとなった。
【発明の効果】
【0010】
まず、請求項1に記載した発明は、コンバイン作業において、オペレータが、立って作業をするときに、支持用把手(13)を握って自分の体重を支えながら、体を安定した状態に保って、安全に作業ができる優れた特徴がある。そして、オペレータは、前部や側部のパネル類にもたれかかることがほとんどないから、これらが故障したり、破損することもなく、安全を保持できるものとなっている。
【0011】
しかも、支持用把手(13)は、操縦座席(2)の前側で左支柱(10L)側と右支柱(10R)側とに架渡して連結している鉄製の支持杆(12)を利用して取り付けているから、充分な強度が確保されており、オペレータが体重をかけても安全に支えることができる特徴と共に、オペレータの視界、特に、メータ類の見るときの障害にならない利点もある。
【0012】
そして、請求項2に記載した発明は、主、副の変速レバー(6)(7)をガイドするレバーガイド(8)を形成している側部パネル(9)を、鉄製支持杆(12)の一端に連結し、これらが一体構成となって強度を大幅に高めることができる特徴がある。
【0013】
そして、請求項3に記載した発明は、オペレータが立ち作業をするときに、膝当て板(14)に膝を押し付けた状態にして立つと、立ち姿が安定し、体が確実に保持されて、楽に長時間の作業ができる特徴がある。そして、この発明に係る膝当て板(14)は、上下広幅にして左右の各部材を連結して一体構成としたから、補強機能を充分に発揮して、操縦座席(2)回りの強度が大幅に向上して耐久性に富む装置となった優れた特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
まず、この出願の請求項1に記載している発明の場合、操縦座席2を基準として、その前方に、メーターパネル3やスイッチパネル4等からなる前部パネル5を左右方向に配置し、該前部パネル5の側部から後方に、主変速レバー6や副変速レバー7を案内するレバーガイド8を形成した側部パネル9を、延長して構成する座席2周りの構造において、前記操縦座席2の前方に、基部を前記車台1に固着して先端部を上方に延長した左右支柱10L,10Rを設け、該支柱10L,10Rの上部か、又は該支柱10L,10Rに連結して上方に延長した連結部材11に、支持杆12を架渡して左支柱10L側と右支柱10R側とを連結して設け、該支持杆12を利用して、前記左支柱10Lの上方位置に、オペレータを支持する支持用把手13を設けて構成したものであって、立って作業を行うとき、支持用把手13を使って安定した状態で立ち、安全にコンバイン作業ができるものである。そして、実施例では、充分な強度が確保されているから、オペレータの体重をかけても安全に支えることができる。
【0015】
そして、この出願の請求項2に記載した発明は、前記支持杆12は、一方の端部を前記右支柱10Rの上部に連結した連結部材11に連結して固着し、他方の端部を、前記左支柱10Lに連結部材11を介して取り付けている側部パネル9に取り付けて構成しているから、側部パネル9の強度が増して主変速レバー6や副変速レバー7を安全にガイドできる利点がある。
【0016】
そして、この出願の請求項3に記載した発明は、前記左右の支柱10L,10Rの間か、又は該支柱10L,10Rに設けて上方に延長した連結部材11との間に、上下方向を広幅とした膝当て板14を、左右に架渡して固着するにあたり、該膝当て板14の高さを、オペレータの膝の高さに相当する位置に配置して取り付けて構成しているから、オペレータは、膝当て板14に膝を押し当てながら安定した楽な姿勢で作業ができるもので、長時間の作業でも疲れが少ない利点がある。更に、膝当て版4は、左右の各部材を一体に連結して補強した構成となっており、操縦座席2回りに組み立てた機枠構造が大幅に強化され、耐久性が向上するものとなった。
【0017】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
まず、コンバインは、図6に示すように、クローラ16,16を有する車台1上に脱穀装置17が搭載され、その前側には刈取前処理装置18が上下昇降調節自由に連結して設けられ、刈取脱穀作業ができる構成としている。そして、操縦座席2は、図6に示すように、前記車台1の前部右側で刈取前処理装置18の横に配置して構成している。なお、図6において、19はグレンタンク、20は排出オーガーを示している。
【0018】
本明細書中に記載した左右の表現は、全て、コンバインの前進方向に向かって見た状態を基準にして記載している。
そして、コンバインは、実施例の場合、図6に示すように、排出オーガー20の先端部と後端部、及び脱穀装置17の上端後部位置とにそれぞれガイドレール21を設けて機体カバー22をコンバイン機体全体に掛けるとき、ひっかりを防止して円滑に滑りながら覆うことができる構成としている。
【0019】
このように、コンバインは、収納場所に格納したときや圃場に1日程度、駐車するとき機体カバー22を掛けて機体全体を覆って駐車するが、カバー22を掛けるときに、ひっかかり易い部位に前記ガイドレール21を設ければ、機体カバー22の装着がきわめて容易に円滑にできる利点がある。
【0020】
つぎに、この発明の主要部にあたる操縦座席2と、その周辺の構造について説明する。
まず、操縦座席2は、既に説明したように、前記車台1の前部右側で刈取前処理装置18の横(特に、穀稈搬送装置の横側、図6参照)に配置して設けているが、これを基準にして図4に示すように、前側にはメータパネル3(図7参照)やスイッチパネル4(図8参照)からなる前部パネル5と、横側には主変速レバー6や副変速レバー7を案内するレバーガイド8を有する側部パネル9とを配置して設けた構成としている。
【0021】
これらの構成は、まず、図1、乃至図3に示すように、左支柱10Lと右支柱10Rとが座席2の前側で車台1上に設けられ、上方に延長して構成している。
そして、膝当て板14は、図3に示すように、右支柱10Rの上部と左支柱10Lの上部に連結した連結部材11との間に取り付けて固定した構成としている。
【0022】
この場合、膝当て板14は、図面から解るように、上下幅を広幅に形成し、オペレータが立ち作業するときに膝の部分を当てることができる高さ位置に取り付けて構成している。そして、上記膝当て板14は、鉄板を用いて剛性のある形状とし、膝当て面には分厚いパットを貼り付けてオペレータの膝に対して優しく接触できる構成としている。
【0023】
このように、膝当て板14は、剛性のある素材で形成したから左右支柱10L,10R、及びこれに接続した部材を左右一体に連結することによって強固に構成し、耐久性に富む装置を構成している。
【0024】
つぎに、支持杆12は、図1、及び図2に示すように、実施例では鉄製パイプ材を使用して右端を右支柱10Rに連結している連結部材に取り付けて左方向に延長し、側部パネル9に左端部を連結固着して構成している。この場合、側部パネル9は、前部を連結部材11に固着して、間接的に前記左支柱10Lに連結し、図4、及び図5に示すように、後方に延長して主変速レバー6や副変速レバー7等のレバーガイド8とした構成としている。なお、側部パネル9は、上記主、副変速レバー6,7の他に、刈取や脱穀の操作レバー、更に、エンジンスロットルレバー等のレバーガイドも形成している。
【0025】
そして、前部パネル5は、図1、及び図2に示すように、メータパネル3やスイッチパネル4から形成するが、これらが上記支持杆12に沿わせて取り付けて操縦座席2の前側に配置して運転時にスイッチ操作やメータ監視が容易にできる構成としている。そして、支持用把手13は、図1、及び図2に示すように、前記支持杆12の左側上部に固着するが、この場合、前記スイッチパネル4のすぐ前側近傍位置において、取付部材25によって取り付けて構成している。そして、支持用把手13は、メータパネル3より前側で若干高く設けているから、オペレータが握り易く、しかも、鉄製の剛性のある支持杆12に取り付けているから、体重をのしかけるようなもたれ方をしても充分耐えられる構成となっている。
【0026】
以上のように構成したから、コンバイン作業中にオペレータが、立って作業をするときに、支持用把手13を握って自分の体重を支えながら、体を安定した状態に保って、安全に作業ができる優れたものとなった。そして、オペレータは、この支持用把手13を握ることで、前部や側部のパネル類にもたれかかることがほとんどないから、これらが故障したり、破損することもなくなって、安全を保持できるものとなっている。
【0027】
その上に加えて、支持用把手13は、操縦座席2の前側で、メータパネル3やスイッチパネル4等よりも前側に位置するから、オペレータの視界を遮ることがなく、特に、パネル面の見るときの障害にはならない特徴がある。そして、主、副の変速レバー6,7をガイドするレバーガイド8を形成している側部パネル9を、鉄製支持杆12の一端に連結し、これらが一体構成となって全体の強度を大幅に高めることができる特徴もある。
【0028】
そして、前述の膝当て板14は、オペレータが立ち作業をするときに、膝を押し付けた状態にして立つと、立ち姿が安定し、確実に体が保持されて、楽に長時間の作業をすることができる。そして、膝当て板14は、実施例の場合、膝を当てる面に分厚いパットを貼り付けて構成したから、強く当てても膝が痛くなく、安心して押し当て体の保持ができる。そして、膝当て板14は、上下幅を広くしたから膝を当て易いのは勿論であるが、鉄製の板にしていることと合わせて、左右の各部材を連結して一体構成としたから、補強機能を発揮して、操縦座席2回りの強度が大幅に向上して耐久性に富む装置となった優れたものである。
【0029】
つぎに、パワステレバー(「操向操作レバー、兼刈取上下レバー」以下同じ)27、及びこれに関連する装置について説明する。
まず、パワステレバー27は、図9、及び図10に示すように、実施例の場合、レバー関連部品や関連装置が一体に組み立てられて箱状とし、前記右支柱10Rの内側に、取付ねじ28,28によって締め付けて固着し、図4、乃至図6に示すように、操縦座席2の右側前方位置に配置した構成としている。
【0030】
そして、パワステレバー27は、図3に示すように、後述する上部支点軸29より車台1の進行方向左側(内側)に変位(H)させてレバーグリップ50を操縦座席2側に寄せて構成している。このように、パワステレバー27は、レバーグリップ50の位置を(H)だけ内側に変位することによって、グリップ50の下方にオペレータの居住空間を広く確保することができ、膝の位置辺りにスペース的に余裕ができて作業疲労が少なくなる特徴がある。
【0031】
そして、パワステレバー27は、図10に示すように、上部取付孔26aを下部取付孔26bを中心にした円弧軌跡に沿わせた取付長孔26aに形成して、取り付け時に、レバー角度を前後に調節変更のできるチルト機構に構成している。
【0032】
そして、パワステレバー27は、実施例の場合、図11に示すように、上側に軸架した前後方向の上部支点軸29を支点にしてトルクスプリング30,31に抗しながら左右方向に傾倒操作すればコンバイン車台1の操向操作が可能に構成されている。そして、パワステレバー27は、図9、及び図11に示すように、左右方向の下部支点軸32を支点にしてスプリング33に抗しながら前後方向に傾倒操作すれば刈取前処理装置18を上下方向に昇降調節ができる構成としている。
【0033】
従来、パワステレバー27は、前部パネル5の一部を利用して取付け支持していたから、剛性が低く強度不足で安定した操作ができず、破損することもあった。
それに対して、上記実施例は、操縦座席2の前側に設けている左右両方の支柱10L,10Rのうち、右支柱10Rを利用して取り付けたから、取付構造が簡素でありながら、剛性が高くなり、2系統の異なった操作を安定よく行うことができると共に、耐久性が増した特徴がある。
【0034】
そして、パワステレバー27は、図11に示すように、上部支点軸29の側部にポテンショセンサ35を装備して左右方向の傾倒操作量を検出できる構成とし、検出情報を電気信号に置換して、図示を省略しているデフケースギヤの変速操作が可能になるように接続した構成としている。又、他の実施例として、旋回装置がサイドクラッチとサイドブレーキとを装備した構成の場合には、サイドクラッチの油圧回路に組み込んでいるソレノイドバルブに伝達し、電磁的にバルブの切替制御ができる構成にすることもある。そして、パワステレバー27は、図11、及び図12に示すように、上記した操向操作に伴って操作荷重を付与する2個のトルクスプリング30,31を支持軸36に巻き付けて設け、前記上部支点軸29を支点にしてレバー27の操作に伴い一体に作動するアーム37に係合した押圧体38の両側まで伸ばして位置させ、操向操作時に張圧される構成としている。
【0035】
この場合、トルクスプリング30,31は、図11、及び図12に示すように、内側の一個30が、操向操作の開始当初から押圧体38の両側に接触してばね力が働くように設け、外側に設けた他の一個31を、パワステレバー27の操作工程が4分の3まで進んだ部位から働くように、押圧体38から離れた位置に設けて構成している。このように、2個のトルクスプリン30,31は、パワステレバー27の操作工程で段差を持たせて2段に張圧力が作用する構成としている。したがって、前記パワステレバー27は、図面から解るように、傾倒操作が4分の3を過ぎると、オペレータの操作力に対するトルクスプリング31が加わって反力が強くなり、オペレータが体でレバーの傾倒操作が進んでいることを悟り、ブレーキターンに近い位置に達したことを知ることができる構成としている。
【0036】
以上のように、パワステレバー27は、傾倒操作が進んだとき、順次レバーがトルクスプリング31の働きにより重くなる(操作力に抗する力が強くなる)ことによって、オペレータが、旋回作用がデフケースギヤの変速による旋回からブレーキ旋回に移行していることを操作荷重の変化から自ら理解することができる特徴がある。
【0037】
つぎに、パワステレバー27は、図9、及び図11に基づいて、既に説明したように、左右方向に軸架している下部支点軸32を回動支点にしてスプリング33に抗しながら前後方向に傾倒操作して、刈取前処理装置18を上下に昇降する構成としている。この場合、パワステレバー27は、図13、及び拡大した図14に示すように、前記下部支点軸32より下方部位から押圧カム40を下方に延長して設け、この押圧カム40によって、後の上昇スイッチ41と前の下降スイッチ42とを選択してスイッチ操作ができる構成としている。そして、前部ストッパー43と後部ストッパー44とは、前記スイッチ41,42の上方に配置して固定し、前記押圧カム40のストッパーであって、過度のスイッチ押圧を規制してスイッチ保護を目的に構成している。そして、ストッパーボルト45は、図14に示すように、前記押圧カム40の基部側で、レバー操作時に移動して前記ストッパー43,44に衝突する部位に取り付けて構成している。
【0038】
そして、該ストッパーボルト45は、調節ナット46を回して移動調節すると、押圧カム40に対して左右に移動して調節され、前記した左右の前部ストッパー43と後部ストッパー44との間隔が一度に調節できる構成となっている。
【0039】
このように、パワステレバー27は、一本のストッパーボルト45の調節ナット46を回すことで左右両側の操作量を、一挙に調整できる特徴があり、中立位置からスイッチONの操作位置までの前後のストローク調節が同時にできる。そして、前記下降スイッチ41と上昇スイッチ42とは、図6に示すように、刈取前処理装置18の油圧昇降シリンダ48の油圧回路中に設けた作動油切替ソレノイドバルブを電磁的に切替制御するように接続した構成としている。
【0040】
以上の構成によって、刈取前処理装置18は、図13に示すように、パワステレバー27を前方側に傾倒操作すれば、下部支点軸32を回動中心として押圧カム40が後方に移動して下降スイッチ41を押圧し、作動油切替ソレノイドバルブを切替制御する。その結果、油圧昇降シリンダ48は、内部に充填されていた作動オイルが排油されて順次縮小し、刈取前処理装置18を下降移動する。
【0041】
そのような作動中に、ストッパーボルト45は、先端部が後部ストッパー44に当たって移動が阻止され、下降スイッチ41を、それ以上に押し圧することなく、安全に保護することができる。
【0042】
このように、実施例のストッパーボルト45は、調節ナット46の回し操作で、押圧カム40の中立位置からスイッチ作用位置までの左右両側の移動ストロークを一度で調整できる特徴がある。
【0043】
そして、パワステレバー27は、図15に示すように、レバーグリップ50の上部に平らな上面51と横側部分に側方へ膨出させた凸出面52とを形成し、これら2つの部分にコンバイン車台1を調節する各操作スイッチを配置した構成としている。まず、レバーグリップ50の上面51には、図15に示すように、前側に前傾スイッチ53、後ろ側に後傾スイッチ54、左側に左傾斜スイッチ55、右側に右傾斜スイッチ56とをそれぞれ配置して設けた構成としている。そして、レバーグリップ50の凸出面52には、前側に車体上昇スイッチ57を、後ろ側に車体下降スイッチ58を、それぞれ配置して設けた構成としている。
【0044】
そして、レバーグリップ50は、図15に示すように、実施例の場合、前記凸出面52を左側に膨出させて形成しているから、点線で示すように、右手で握った位置から操作することが可能であって、そのとき、凸出面52のすぐ上に右手の親指を載せて握っているから、上昇、又は下降の両スイッチ57,58をその親指で押圧操作することが簡単にできる特徴がある。
【0045】
このように、レバーグリップ50の実施例は、上面51に前・後、左・右の四方に傾斜するスイッチ53,54,55,56を配置したから、従来装置のように、一面に全スイッチを配置した構成に比較して操作性が向上した特徴がある。
【0046】
そして、レバーグリップ50は、図15で解るように、凸出面52を上面51から一段下げて形成したから、丁度右手で握る部分が形成された格好となり、右手親指で車体上昇スイッチ57と車体下降スイッチ58との操作することができて、誤操作のおそれがほとんどなくなった優れた特徴がある。
【0047】
なお、コンバインの車台1は、図示は省略したが、従来から広く知られているように、ローリング制御機構、ピッチング制御機構が装備され、これらの利用により、上昇、又は下降作用、及び前傾作動や後傾作動、更には、左右傾斜作動が油圧機構によって可能に構成されている。したがって、前記各操作スイッチは、それぞれ油圧回路の切替ソレノイドバルブに電気的に接続して電磁切替ができる構成としている。
【0048】
つぎに、前部パネル5を形成しているスイッチパネル4の実施例について、図16、乃至図18に基づいて説明する。
まず、スイッチパネル4は、既に説明し図8にも示しているように、各装置の自動スイッチ、調整ボリュームスイッチ等をスイッチケース59内に収めて、表面にスイッチを集めてパネル状に形成し、図4に示すように、前部パネル5の左端に取り付け、側部パネル9とのコーナー部分に配置した構成としている。この場合、スイッチパネル4は、図16に示すように、オペレータ側に向けて配置し、オペレータが見易くて、しかも、スイッチ操作がやり易いように構成している。
【0049】
更に、スイッチパネル4は、図16、及び図17に示すように、主変速レバー6をレバーガイド8の最前部の位置(前進高速位置)に操作しても、パネル面に衝突や接触しないように、レバー6の傾斜角度に沿わせて前方に傾斜させた形状に構成している。そして、スイッチパネル4は、図16、及び図18に示すように、主変速レバー6をレバーガイド8の最前部まで操作しても、レバーのグリップを握っているオペレータの手がスイッチケース59に当らないように切欠状の凹部60を上の角部に形成した構成としている。
【0050】
以上述べたように、スイッチパネル4は、コンバインを操縦しているオペレータ側に向けて見やすい角度を持たせて構成することによって、各スイッチの確認が容易となって、操作性が向上した特徴がある。
【0051】
そして、スイッチパネル4は、主変速レバー6を最も前側に操作した位置の傾斜角度に近い角度に形成しているから、それだけオペレータに接近させて配置ができる利点がある。しかも、スイッチパネル4は、オペレータ側に近づけることによって広い面積が確保でき、多くのスイッチ類の配置ができると共に、前方視界を遮ることもなく低く設けることができる特徴がある。
【0052】
そして、スイッチパネル4は、図18に示すように、そのスイッチケース59の上角部を切り欠いで凹部60を形成しているから、オペレータに近づけるように後方に配置しても主変速レバー6の操作時にレバーを握る手がパネル側に当たることなく、安全に主変速操作ができる特徴がある。
【0053】
このように、スイッチパネル4は、できる限り後方に配置して、オペレータ側に近づけることによって、スイッチ操作が一段とやり易くなる特徴がある。
以上、主変速レバー6とスイッチパネル4、及びスイッチケース59との関連構成について説明したが、実施例の場合、主変速レバー6は、静油圧式無段変速装置のトラニオン軸に操作可能に接続した変速操作するレバーである。そして、該主変速レバー6は、前後方向に設けたレバーガイド8の中間位置がニュートラル位置となり、このニユートラル位置を基準に、前方に操作すれば前進走行が順次増速され、後方に操作すると、後進走行となる従来公知の構成を採用している。
【0054】
つぎに、コンバイン62において、刈取前処理装置18の側部に設ける安全カバー65を、枕地穀稈等の手扱ぎ時に、取り外すことなく、脱穀装置63の穀稈供給口64の前側まで回転させて移動し、稲置き台として利用できる実施例を、図19、乃至図21に基づいて説明する。
【0055】
まず、安全カバー65は、図20に示すように、刈取前処理装置18の後方側部に設け、刈取脱穀作業中には安全カバーとして使用する構成としている。そして、安全カバー65は、図19に示すように、クランク形状の回転支持軸66に、軸周りに回転自由に軸装し、ロックねじ67でその軸66に固定して回り止めする構成にしている。そして、安全カバー65は、図19に示すように、カバー部分が平らに形成し、後部を外側に折り曲げて取付時に搬送チエンから逃がす形状に構成している。そして、前記回転支持軸66は、基部を脱穀機枠に180度回転可能に枢着して固定ねじ68で止める構成としている。
【0056】
以上のように構成した安全かバー65は、通常、刈取脱穀作業をするときには、図20に示すように、安全カバーとして刈取前処理装置18の側部位置に固定して作業を行い、本来の安全カバーとしての機能を発揮することができる。
【0057】
つぎに、枕地から刈り取って集めた穀稈の手扱ぎ作業を行うときには、上記安全かバー65を、クランク形状の回転支持軸66を、基部を支点にして180度時計回りに回転させて、図20の位置から図21に示すように、高い位置まで持ち上げた状態に移動させ、更に、脱穀装置63の穀稈供給口67の前側に倒すと、稲置き台として装置することができる。
【0058】
このように、安全カバー65は、圃場の枕地の稲を刈り取って手扱ぎするときには、刈取前処理装置18の側部位値から脱穀装置63の穀稈供給口64の前側まで回転させて移動できるから、この上に稲束を載置して、通常の稲置き台として使用できる利点がある。そして、刈取前処理装置18は、手扱ぎ時には停止しているから安全カバーは不要となっている。
【0059】
つぎに、脱穀装置63等の外側に装着する外装カバー70について、実施例を説明する。
一般に、外装カバー70は、脱穀装置63の外側に沿わせて、2枚の上下カバー70a,70bを上下に連続させて取り付ける場合、両カバーの間に隙間や段差ができ易いことが知られている。
【0060】
そこで、実施例の場合、上部取付ステー72と下部取付アーム73とは、図22に示すように、基部を一体に構成して脱穀装置63の外側の取付位置に固着して構成する。そして、下部取付杆74は、前記下部取付アーム73から下部カバー70bの長さに合わせて下方位置に隔てて取り付けた構成としている。
【0061】
そして、上部カバー70aは、図22に示すように、上部取付ステー72にねじで固着する。そして、下部カバー70bは、上部の上側フック75を下部取付アーム73に係合し、下部の引っ掛具76を下部取付杆74に引っ掛けて取り付ける構成している。
【0062】
以上述べたように、実施例は、上部カバー70aの下縁と下部カバー70bの上縁とが合致して隙間もなく、段差も生じないように取り付けできる特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】前側パネルや支持用把手の取付状態を示す正面図
【図2】前側パネルや支持用把手、側部パネルを示す平面図
【図3】膝当て板の取付状態を示す一部破断した正面図
【図4】操縦座席周りの平面図
【図5】操縦座席周りの側面図
【図6】コンバインの側面図
【図7】メーターパネルの正面図
【図8】スイッチパネルの正面図
【図9】パワステレバーの取り付け前の分解正面図
【図10】パワステレバーの取り付け前の分解側面図
【図11】トルクスプリングを示す内部正面図
【図12】トルクスプリングを示す内部側面図
【図13】パワステレバーが操作する刈取昇降スイッチ部の側面図
【図14】図13の一部拡大図
【図15】パワステレバーのレバーグリップ拡大斜面
【図16】操縦座席周りの平面図
【図17】主変速レバーとスイッチパネルの形状を示す側面図
【図18】操縦座席周りの正面図
【図19】安全カバーの斜面図
【図20】安全カバーを取り付けたコンバインの側面図
【図21】安全カバーを上部に回転した途中位置のコンバインの側面図
【図22】外装カバーの取付状態を示す内部の背面図
【図23】外装カバーの取付状態を示す側面図
【符号の説明】
【0064】
1 車台 2 操縦座席
3 メーターパネル 4 スイッチパネル
5 前部パネル 6 主変速レバー
7 副変速レバー 8 レバーガイド
9 側部パネル 10L,10R 左右支柱
11 連結部材 12 支持杆
13 支持用把手 14 膝当て板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車台(1)上に配置した操縦座席(2)を基準として、その前方に、メーターパネル(3)やスイッチパネル(4)の前部パネル(5)を左右方向に配置し、該前部パネル(5)の側部から後方に、主変速レバー(6)や副変速レバー(7)を案内するレバーガイド(8)を形成した側部パネル(9)を、延長して構成する座席(2)周りの構造において、前記操縦座席(2)の前方に、基部を前記車台(1)に固着して先端部を上方に延長した左右支柱(10L)(10R)を設け、該支柱(10L)(10R)の上部か、又は該支柱(10L)(10R)に連結して上方に延長した連結部材(11)に、支持杆(12)を架渡して左支柱(10L)側と右支柱(10R)側とを連結して設け、該支持杆(12)を利用して、前記左支柱(10L)の上方位置に、オペレータを支持する支持用把手(13)を設けて構成したコンバインの操縦座席周りの構造。
【請求項2】
前記支持杆(12)は、一方の端部を前記右支柱(10R)の上部に連結した連結部材(11)に連結して固着し、他方の端部を、前記左支柱(10L)に連結部材(11)を介して取り付けている側部パネル(9)に取り付けて構成した請求項1記載のコンバインの操縦座席周りの構造。
【請求項3】
前記左右の支柱(10L)(10R)の間か、又は該支柱(10L)(10R)に設けて上方に延長した連結部材(11)との間に、上下方向を広幅とした膝当て板(14)を、左右に架渡して固着するにあたり、該膝当て板(14)の高さを、オペレータの膝の高さに相当する位置に配置して取り付けて構成した請求項1記載のコンバインの操縦座席周りの構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2007−28979(P2007−28979A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−216105(P2005−216105)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】