コンバインの油圧回路
【課題】コンバインの刈取装置を昇降及び左右スライドさせる油圧回路を構成するにあたって、刈取装置の昇降と左右スライドを制御する油圧回路に共通部分を多くして構成を簡略化し、刈取装置の昇降と左右スライドを同時にすることも出来、昇降用油圧回路とスライド用油圧回路とを別々に設けた場合よりも製造コストを低くし、安価に提供することができるものとする。
【解決手段】刈取装置(12)を昇降させる刈取昇降油圧シリンダ(22)の昇降用方向切換電磁弁(29)と刈取装置(12)を左右にスライドさせる刈取スライドシリンダ(23)のスライド用方向切換電磁弁(30)とを直列に接続する。
【解決手段】刈取装置(12)を昇降させる刈取昇降油圧シリンダ(22)の昇降用方向切換電磁弁(29)と刈取装置(12)を左右にスライドさせる刈取スライドシリンダ(23)のスライド用方向切換電磁弁(30)とを直列に接続する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインの油圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインの刈取装置は、穀稈の刈高さを調整するために昇降可能にすると共に畦際の穀稈を刈る枕刈りのために機体に対して左右にスライド可能にしている。
例えば、特開平7−184458号公報には、刈取装置の昇降油圧回路とは別に刈取装置を左右にスライドさせるスライド油圧シリンダを制御するスライド油圧回路を設けた構成が示されている。そして、このスライド油圧回路は、走行装置の左右操向クラッチを操作する油圧アクチュエータの油圧回路に連結し、油路切換電磁弁の切換操作で共通する油圧バルブでスライド油圧シリンダを作動させるようにしている。
【特許文献1】特開平7−184458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記の刈取装置のスライド油圧回路は走行装置の操向油圧回路と一部を共用化しているので、旋回しながら刈取装置をスライドさせて枕刈りの準備をするような操作が出来なく、また、刈取装置の昇降回路は別に設けなければならない。
【0004】
そこで、本発明では、コンバインの刈取装置を昇降及び左右スライドさせる油圧回路を構成するにあたって、共通部分を多くして簡略化すると共に刈取装置の昇降とスライドの操作が支障なく行えるようにすることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は次の構成によって達成される。
すなわち、刈取装置(12)を昇降させる刈取昇降油圧シリンダ(22)の昇降用方向切換電磁弁(29)と刈取装置(12)を左右にスライドさせる刈取スライドシリンダ(23)のスライド用方向切換電磁弁(30)とを直列に接続したことを特徴とするコンバインの油圧回路とした。
【0006】
この構成で、刈取装置12の刈取昇降油圧シリンダ22を制御する昇降用方向切換電磁弁29と刈取スライドシリンダ23を制御するスライド用方向切換電磁弁30とが直列に接続されて、昇降用方向切換電磁弁29とスライド用方向切換電磁弁30に至る油圧回路が共通化される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、刈取装置12の昇降と左右スライドを制御する油圧回路に共通部分を多くして構成が簡略化され、刈取装置12の昇降と左右スライドを同時にすることも出来て、昇降用油圧回路とスライド用油圧回路とを別々に設けた場合よりも製造コストが低くなり、安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の実施例を説明する。
コンバインの全体は、図1、図2に示す如く構成され、クローラ走行装置11を有する機体10の前方には、機体10に枢支されて後述する刈取昇降油圧シリンダ22で前側を昇降させる刈取装置12が設けられている。この刈取装置12には下端部にバリカン型の刈刃Cを設け、この刈刃Cで刈り取った穀稈は供給搬送装置13で上方へ搬送され、穀稈脱穀搬送装置14に引き継がれ、穂先を脱穀装置15内へ供給して脱穀され、脱穀後の穀稈が機体10の最後部に設けたカッター16で細かく切断され圃場へ放出される。
【0009】
機体10の上方には、脱穀装置15の右側方にこの脱穀装置15で脱穀選別された穀粒を一時貯溜するグレンタンク21と、該グレンタンク21の前方に位置していて作業者が搭乗してコンバインの操縦等の各種操作を実行する操縦操作部17が構成されている。
【0010】
グレンタンク21の後側に揚穀筒18が立設され、該揚穀筒18の上端に穀粒排出オーガ19が屈曲可能に連結されている。グレンタンク21内の穀粒量が満杯となると、この揚穀筒18と穀粒排出オーガ19で穀粒をグレンタンク21から外部へと排出する。揚穀筒18は電動モータ(図示せず)にて旋回可能に構成され、また、穀粒排出オーガ19は油圧シリンダUにてその先端側が昇降可能に構成されている。この穀粒排出オーガ19は内部の搬送ラセンと外筒が伸縮可能にされ電動モータMで伸縮可能にされている。さらに、穀粒排出オーガ19の先端には直交して放出筒20を設け、この放出筒20から穀粒をトラックに搭載した穀粒タンクへ排出する。
【0011】
このように構成したコンバインを前進させて刈取作業をすると、刈取装置12の刈刃Cで刈り取られた穀稈は供給搬送装置13にて後上方へ搬送され、穀稈脱穀搬送装置14へと引き継ぎ搬送される。この穀稈脱穀搬送装置14に引き継がれた穀稈は、穂先側が脱穀装置15へ供給されて脱穀選別され、脱穀済の穀稈がカッター16で細かく切断され圃場へ放出される。
【0012】
脱穀装置3で脱穀された穀粒はグレンタンク21内へ送り込まれて貯留されるが、貯留される穀粒が増えてくると満杯センサが報知する。
そして、グレンタンク21が満杯になったことを知った作業者は刈取り作業を中断して、コンバインを道路に停止したトラックへ近づけて揚穀筒18と穀粒排出オーガ21で穀粒をトラック上の穀粒タンク内へ移し変える。
【0013】
刈取装置12は、前記の如く、刈取昇降油圧シリンダ22で前側を昇降させると共に、刈取スライドシリンダ23で機体10の中央から左側へスライド可能にしている。
図3は、刈取装置12の昇降と左右スライドを制御する油圧回路図である。
【0014】
オイルタンク25から油圧ポンプ26で吸い上げられたオイルがメインリリーフ弁27で一定の高圧に調整され、分流弁28に送られる。
分流弁28では、分岐されたオイルの一方が刈取装置12と穀粒排出オーガ19の制御用として送られ、他方のオイルがクローラ走行装置11の走行制御用として第一サブリリーフ弁35で減圧して送られる。
【0015】
刈取装置12と穀粒排出オーガ19の制御用オイルは、直接昇降用方向切換電磁弁29へ送られるオイルと第二サブリリーフ弁34で減圧されてオーガ用方向切換弁33へ送られるオイルに分岐する。
【0016】
オーガ用方向切換弁33では、オーガ昇降シリンダ38への供給と昇降用方向切換電磁弁29への供給に切換えられ、オーガ昇降シリンダ38へチェク弁36と絞り37を経て送られる。
【0017】
昇降用方向切換電磁弁29では、刈取昇降油圧シリンダ22と刈取スライドシリンダ23へ送り方向が切り換えられ、刈取昇降油圧シリンダ22へはチェック弁31と絞り付きチェク弁32を介して送られ、刈取スライドシリンダ23は、スライド用方向切換電磁弁30を介して送られる。
【0018】
分流弁28で分岐した走行制御用のオイルは、第二リリーフ弁49と比例減圧弁50を介してクラッチシリンダ51へ供給され、旋回用方向切換弁52を介して左右プッシュシリンダ53,54へ供給される。
【0019】
この油圧回路構成では、昇降用方向切換電磁弁29が刈取昇降油圧シリンダ22の制御に使われ、スライド用方向切換電磁弁30が刈取スライドシリンダ23の制御に使われるが、昇降用方向切換電磁弁29が優先的に作動する。
【0020】
また、この油圧回路は、図4の如く、昇降用方向切換電磁弁29とオーガ用方向切換弁33と分流弁28とメインリリーフ弁27と第二サブリリーフ弁34と第一サブリリーフ弁35とチェック弁31と絞り付きチェク弁32とチェク弁36が一体のメイン油圧ブロック8に加工・組み込まれ、スライド用方向切換電磁弁30が組み込まれた第一サブ油圧ブロック9がメイン油圧ブロック8に一体的に組み付けられて油圧配管が不要となっている。
【0021】
さらに、メイン油圧ブロック8には、図5の如く、第二リリーフ弁49と比例減圧弁50が組み込まれた第二サブ油圧ブロック7がメイン油圧ブロック8に一体的に組み付けられて油圧配管が不要となっている。
【0022】
図6の油圧回路構成では、分流弁28で分岐した刈取装置12の制御用オイルが、まずスライド用方向切換電磁弁30に送られ、その後に昇降用方向切換電磁弁29にオイルが送られるので、スライド用方向切換電磁弁30が優先的に作動する。
【0023】
図7は、前記図3の油圧回路からスライド用方向切換電磁弁30と刈取スライドシリンダ23を除いて刈取装置12の昇降と穀粒排出オーガ19の昇降を行う回路を一つの刈取・オーガ油圧ブロック40内に構成した。
【0024】
図8は、扱うオイルの油圧が違うが、前記の刈取・オーガ油圧ブロック40と内部の回路構成が略同一で作成時の加工を共用化出来る。
オイルタンクから油圧ポンプで吸い上げられたオイルがメインリリーフ弁41で一定の高圧に調整され、分流弁44に送られる。
【0025】
分流弁44では、分岐されたオイルの一方が第一サブリリーフ弁42で減圧して左電磁方向切換弁46へ送られ、チェック弁36を介して左ローリングシリンダ48へ送られる。
【0026】
分岐されたオイルの他方が第二サブリリーフ弁43で減圧して右電磁方向切換弁45へ送られ、チェック弁31を介して右ローリングシリンダ47へ送られる。
図9は、分流弁28で分岐して昇降用方向切換電磁弁29に向かうオイルをさらに分岐してパワステ用方向切換弁59へ向かうようにしている。このパワステ用方向切換弁59はチェク弁61を介してパワステシリンダ60へ向かう流れとスライド用方向切換電磁弁30へ向かう流れとオイルタンク25に戻る流れに分岐し、スライド用方向切換電磁弁30が中立時にはその流れを止めてパワステシリンダ60へ送るオイルの圧力を高める。
【0027】
図10は、チェック弁の構造を示している。例えば、刈取昇降油圧シリンダ22からの戻りオイルは、チェクボール67がばね66に押されてテーパ孔へ密着して昇降用方向切換電磁弁29の戻り流路68への流れを止めているが、作動流路69にオイルが供給されるとチェクボール67を押し戻すスプール63のチェクボール67と反対側端部にオイルが流入してスプール63がチェクボール67を押して戻り流路68の流れを生じさせるようになっているが、このスプール63のチェクボール67と反対側端部に段部64を形成すると共に穴側にラビリンス溝65を形成して、戻り流路68のオイルを抜いてスプール63を戻す際のスプール63の戻り速度をゆっくりとしてチェクボール67がテーパ孔へ緩やかに当接するようにしている。スプール63の戻り速度は、段部64に形成するノッチや切り欠きでオイルの戻り量を調整する。
【0028】
図11は、チェクボール67を押すばね66のばね座71で、チェクボール67を受けるボール受け部72を焼入れ硬化してばね座71にかしめて取り付けている。
図12は、刈取装置12の刈刃を駆動する油圧無段変速装置の油圧回路図で、入力軸75で駆動される油圧ポンプ76のオイルを高圧油路79と低圧油路80で油圧モータ77に送って、出力軸78を回転して刈刃を駆動するが、回路の途中にパイロット分流弁81とパイロット方向制御弁82を設けて、高圧油路79の圧力が所定設定圧以下であればパイロット分流弁81とパイロット方向制御弁82で一定流量を低圧油路80にバイパスさせ、高圧油路79の圧力が所定設定圧以上になると圧力に比例してバイパス流量を高圧油路79に合流させるようにしている。
【0029】
この油圧回路で、出力軸78の回転が極低速回転においても油圧ポンプ76の一定流量を確保出来、バイパス流量を負荷上昇に伴い高圧油路79に合流させることにより、負荷変動に伴う出力軸78の回転数変動を小さくすることが出来ると共に、低速回転での刈刃停止を防止出来る。この回路で、パイロット分流弁81に代えて絞り弁で構成することも出来る。
【0030】
なお、油圧ポンプ76の高圧油路79に圧力センサを設けて、所定圧力以下に低下しないように油圧ポンプ76の回転を維持するようにして、低速走行時の刈刃駆動力を維持する方法も有る。その際に、圧力範囲を例えば五段階に分け、最低段階になると回転数を一定割合で上昇させる。
【0031】
油圧無段変速装置をミッションケース内に設け、油圧無段変速装置から漏れ出てミッションケース内に溜まるオイルを油圧無段変速装置に戻す場合には、フィルタで濾過して油圧無段変速装置のオイルタンクに戻すようにする。
【0032】
前記の油圧ポンプ76は、斜板角度を変更してオイルの吐出量を変更しているが、これに代えて高圧油路79と低圧油路80の間に高速応答流量制御弁を設けて、マイコンによってこの高速応答流量制御弁を制御して油圧モータ77の回転を制御することも出来る。
【0033】
また、高速応答流量制御弁は、高圧油路79のオイルタンクへの戻り流路に設けて高圧油路79の流量を変更するようにしても良い。
また、油圧モータ77を可変にして、出力軸78の回転を低下する場合には油圧ポンプ76の吐出量を一定にしたままで油圧モータ77の出力回転を低下させるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明実施例のコンバイン全体の正面図である。
【図2】コンバインの右側面図である。
【図3】刈取装置の油圧制御回路図である。
【図4】油圧ブロックの平面図である。
【図5】油圧ブロックの平面図である。
【図6】刈取装置の別実施例油圧制御回路図である。
【図7】刈取装置と穀粒排出オーガの油圧制御回路図である。
【図8】機体のローリング制御の油圧制御回路図である。
【図9】刈取装置の別実施例油圧制御回路図である。
【図10】チェク弁の断面図である。
【図11】チェク弁の一部部品の断面図である。
【図12】油圧無段変速装置の油圧回路図である。
【符号の説明】
【0035】
12 刈取装置
22 刈取昇降油圧シリンダ
23 刈取スライドシリンダ
29 昇降用方向切換電磁弁
30 スライド用方向切換電磁弁
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインの油圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインの刈取装置は、穀稈の刈高さを調整するために昇降可能にすると共に畦際の穀稈を刈る枕刈りのために機体に対して左右にスライド可能にしている。
例えば、特開平7−184458号公報には、刈取装置の昇降油圧回路とは別に刈取装置を左右にスライドさせるスライド油圧シリンダを制御するスライド油圧回路を設けた構成が示されている。そして、このスライド油圧回路は、走行装置の左右操向クラッチを操作する油圧アクチュエータの油圧回路に連結し、油路切換電磁弁の切換操作で共通する油圧バルブでスライド油圧シリンダを作動させるようにしている。
【特許文献1】特開平7−184458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記の刈取装置のスライド油圧回路は走行装置の操向油圧回路と一部を共用化しているので、旋回しながら刈取装置をスライドさせて枕刈りの準備をするような操作が出来なく、また、刈取装置の昇降回路は別に設けなければならない。
【0004】
そこで、本発明では、コンバインの刈取装置を昇降及び左右スライドさせる油圧回路を構成するにあたって、共通部分を多くして簡略化すると共に刈取装置の昇降とスライドの操作が支障なく行えるようにすることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は次の構成によって達成される。
すなわち、刈取装置(12)を昇降させる刈取昇降油圧シリンダ(22)の昇降用方向切換電磁弁(29)と刈取装置(12)を左右にスライドさせる刈取スライドシリンダ(23)のスライド用方向切換電磁弁(30)とを直列に接続したことを特徴とするコンバインの油圧回路とした。
【0006】
この構成で、刈取装置12の刈取昇降油圧シリンダ22を制御する昇降用方向切換電磁弁29と刈取スライドシリンダ23を制御するスライド用方向切換電磁弁30とが直列に接続されて、昇降用方向切換電磁弁29とスライド用方向切換電磁弁30に至る油圧回路が共通化される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、刈取装置12の昇降と左右スライドを制御する油圧回路に共通部分を多くして構成が簡略化され、刈取装置12の昇降と左右スライドを同時にすることも出来て、昇降用油圧回路とスライド用油圧回路とを別々に設けた場合よりも製造コストが低くなり、安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の実施例を説明する。
コンバインの全体は、図1、図2に示す如く構成され、クローラ走行装置11を有する機体10の前方には、機体10に枢支されて後述する刈取昇降油圧シリンダ22で前側を昇降させる刈取装置12が設けられている。この刈取装置12には下端部にバリカン型の刈刃Cを設け、この刈刃Cで刈り取った穀稈は供給搬送装置13で上方へ搬送され、穀稈脱穀搬送装置14に引き継がれ、穂先を脱穀装置15内へ供給して脱穀され、脱穀後の穀稈が機体10の最後部に設けたカッター16で細かく切断され圃場へ放出される。
【0009】
機体10の上方には、脱穀装置15の右側方にこの脱穀装置15で脱穀選別された穀粒を一時貯溜するグレンタンク21と、該グレンタンク21の前方に位置していて作業者が搭乗してコンバインの操縦等の各種操作を実行する操縦操作部17が構成されている。
【0010】
グレンタンク21の後側に揚穀筒18が立設され、該揚穀筒18の上端に穀粒排出オーガ19が屈曲可能に連結されている。グレンタンク21内の穀粒量が満杯となると、この揚穀筒18と穀粒排出オーガ19で穀粒をグレンタンク21から外部へと排出する。揚穀筒18は電動モータ(図示せず)にて旋回可能に構成され、また、穀粒排出オーガ19は油圧シリンダUにてその先端側が昇降可能に構成されている。この穀粒排出オーガ19は内部の搬送ラセンと外筒が伸縮可能にされ電動モータMで伸縮可能にされている。さらに、穀粒排出オーガ19の先端には直交して放出筒20を設け、この放出筒20から穀粒をトラックに搭載した穀粒タンクへ排出する。
【0011】
このように構成したコンバインを前進させて刈取作業をすると、刈取装置12の刈刃Cで刈り取られた穀稈は供給搬送装置13にて後上方へ搬送され、穀稈脱穀搬送装置14へと引き継ぎ搬送される。この穀稈脱穀搬送装置14に引き継がれた穀稈は、穂先側が脱穀装置15へ供給されて脱穀選別され、脱穀済の穀稈がカッター16で細かく切断され圃場へ放出される。
【0012】
脱穀装置3で脱穀された穀粒はグレンタンク21内へ送り込まれて貯留されるが、貯留される穀粒が増えてくると満杯センサが報知する。
そして、グレンタンク21が満杯になったことを知った作業者は刈取り作業を中断して、コンバインを道路に停止したトラックへ近づけて揚穀筒18と穀粒排出オーガ21で穀粒をトラック上の穀粒タンク内へ移し変える。
【0013】
刈取装置12は、前記の如く、刈取昇降油圧シリンダ22で前側を昇降させると共に、刈取スライドシリンダ23で機体10の中央から左側へスライド可能にしている。
図3は、刈取装置12の昇降と左右スライドを制御する油圧回路図である。
【0014】
オイルタンク25から油圧ポンプ26で吸い上げられたオイルがメインリリーフ弁27で一定の高圧に調整され、分流弁28に送られる。
分流弁28では、分岐されたオイルの一方が刈取装置12と穀粒排出オーガ19の制御用として送られ、他方のオイルがクローラ走行装置11の走行制御用として第一サブリリーフ弁35で減圧して送られる。
【0015】
刈取装置12と穀粒排出オーガ19の制御用オイルは、直接昇降用方向切換電磁弁29へ送られるオイルと第二サブリリーフ弁34で減圧されてオーガ用方向切換弁33へ送られるオイルに分岐する。
【0016】
オーガ用方向切換弁33では、オーガ昇降シリンダ38への供給と昇降用方向切換電磁弁29への供給に切換えられ、オーガ昇降シリンダ38へチェク弁36と絞り37を経て送られる。
【0017】
昇降用方向切換電磁弁29では、刈取昇降油圧シリンダ22と刈取スライドシリンダ23へ送り方向が切り換えられ、刈取昇降油圧シリンダ22へはチェック弁31と絞り付きチェク弁32を介して送られ、刈取スライドシリンダ23は、スライド用方向切換電磁弁30を介して送られる。
【0018】
分流弁28で分岐した走行制御用のオイルは、第二リリーフ弁49と比例減圧弁50を介してクラッチシリンダ51へ供給され、旋回用方向切換弁52を介して左右プッシュシリンダ53,54へ供給される。
【0019】
この油圧回路構成では、昇降用方向切換電磁弁29が刈取昇降油圧シリンダ22の制御に使われ、スライド用方向切換電磁弁30が刈取スライドシリンダ23の制御に使われるが、昇降用方向切換電磁弁29が優先的に作動する。
【0020】
また、この油圧回路は、図4の如く、昇降用方向切換電磁弁29とオーガ用方向切換弁33と分流弁28とメインリリーフ弁27と第二サブリリーフ弁34と第一サブリリーフ弁35とチェック弁31と絞り付きチェク弁32とチェク弁36が一体のメイン油圧ブロック8に加工・組み込まれ、スライド用方向切換電磁弁30が組み込まれた第一サブ油圧ブロック9がメイン油圧ブロック8に一体的に組み付けられて油圧配管が不要となっている。
【0021】
さらに、メイン油圧ブロック8には、図5の如く、第二リリーフ弁49と比例減圧弁50が組み込まれた第二サブ油圧ブロック7がメイン油圧ブロック8に一体的に組み付けられて油圧配管が不要となっている。
【0022】
図6の油圧回路構成では、分流弁28で分岐した刈取装置12の制御用オイルが、まずスライド用方向切換電磁弁30に送られ、その後に昇降用方向切換電磁弁29にオイルが送られるので、スライド用方向切換電磁弁30が優先的に作動する。
【0023】
図7は、前記図3の油圧回路からスライド用方向切換電磁弁30と刈取スライドシリンダ23を除いて刈取装置12の昇降と穀粒排出オーガ19の昇降を行う回路を一つの刈取・オーガ油圧ブロック40内に構成した。
【0024】
図8は、扱うオイルの油圧が違うが、前記の刈取・オーガ油圧ブロック40と内部の回路構成が略同一で作成時の加工を共用化出来る。
オイルタンクから油圧ポンプで吸い上げられたオイルがメインリリーフ弁41で一定の高圧に調整され、分流弁44に送られる。
【0025】
分流弁44では、分岐されたオイルの一方が第一サブリリーフ弁42で減圧して左電磁方向切換弁46へ送られ、チェック弁36を介して左ローリングシリンダ48へ送られる。
【0026】
分岐されたオイルの他方が第二サブリリーフ弁43で減圧して右電磁方向切換弁45へ送られ、チェック弁31を介して右ローリングシリンダ47へ送られる。
図9は、分流弁28で分岐して昇降用方向切換電磁弁29に向かうオイルをさらに分岐してパワステ用方向切換弁59へ向かうようにしている。このパワステ用方向切換弁59はチェク弁61を介してパワステシリンダ60へ向かう流れとスライド用方向切換電磁弁30へ向かう流れとオイルタンク25に戻る流れに分岐し、スライド用方向切換電磁弁30が中立時にはその流れを止めてパワステシリンダ60へ送るオイルの圧力を高める。
【0027】
図10は、チェック弁の構造を示している。例えば、刈取昇降油圧シリンダ22からの戻りオイルは、チェクボール67がばね66に押されてテーパ孔へ密着して昇降用方向切換電磁弁29の戻り流路68への流れを止めているが、作動流路69にオイルが供給されるとチェクボール67を押し戻すスプール63のチェクボール67と反対側端部にオイルが流入してスプール63がチェクボール67を押して戻り流路68の流れを生じさせるようになっているが、このスプール63のチェクボール67と反対側端部に段部64を形成すると共に穴側にラビリンス溝65を形成して、戻り流路68のオイルを抜いてスプール63を戻す際のスプール63の戻り速度をゆっくりとしてチェクボール67がテーパ孔へ緩やかに当接するようにしている。スプール63の戻り速度は、段部64に形成するノッチや切り欠きでオイルの戻り量を調整する。
【0028】
図11は、チェクボール67を押すばね66のばね座71で、チェクボール67を受けるボール受け部72を焼入れ硬化してばね座71にかしめて取り付けている。
図12は、刈取装置12の刈刃を駆動する油圧無段変速装置の油圧回路図で、入力軸75で駆動される油圧ポンプ76のオイルを高圧油路79と低圧油路80で油圧モータ77に送って、出力軸78を回転して刈刃を駆動するが、回路の途中にパイロット分流弁81とパイロット方向制御弁82を設けて、高圧油路79の圧力が所定設定圧以下であればパイロット分流弁81とパイロット方向制御弁82で一定流量を低圧油路80にバイパスさせ、高圧油路79の圧力が所定設定圧以上になると圧力に比例してバイパス流量を高圧油路79に合流させるようにしている。
【0029】
この油圧回路で、出力軸78の回転が極低速回転においても油圧ポンプ76の一定流量を確保出来、バイパス流量を負荷上昇に伴い高圧油路79に合流させることにより、負荷変動に伴う出力軸78の回転数変動を小さくすることが出来ると共に、低速回転での刈刃停止を防止出来る。この回路で、パイロット分流弁81に代えて絞り弁で構成することも出来る。
【0030】
なお、油圧ポンプ76の高圧油路79に圧力センサを設けて、所定圧力以下に低下しないように油圧ポンプ76の回転を維持するようにして、低速走行時の刈刃駆動力を維持する方法も有る。その際に、圧力範囲を例えば五段階に分け、最低段階になると回転数を一定割合で上昇させる。
【0031】
油圧無段変速装置をミッションケース内に設け、油圧無段変速装置から漏れ出てミッションケース内に溜まるオイルを油圧無段変速装置に戻す場合には、フィルタで濾過して油圧無段変速装置のオイルタンクに戻すようにする。
【0032】
前記の油圧ポンプ76は、斜板角度を変更してオイルの吐出量を変更しているが、これに代えて高圧油路79と低圧油路80の間に高速応答流量制御弁を設けて、マイコンによってこの高速応答流量制御弁を制御して油圧モータ77の回転を制御することも出来る。
【0033】
また、高速応答流量制御弁は、高圧油路79のオイルタンクへの戻り流路に設けて高圧油路79の流量を変更するようにしても良い。
また、油圧モータ77を可変にして、出力軸78の回転を低下する場合には油圧ポンプ76の吐出量を一定にしたままで油圧モータ77の出力回転を低下させるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明実施例のコンバイン全体の正面図である。
【図2】コンバインの右側面図である。
【図3】刈取装置の油圧制御回路図である。
【図4】油圧ブロックの平面図である。
【図5】油圧ブロックの平面図である。
【図6】刈取装置の別実施例油圧制御回路図である。
【図7】刈取装置と穀粒排出オーガの油圧制御回路図である。
【図8】機体のローリング制御の油圧制御回路図である。
【図9】刈取装置の別実施例油圧制御回路図である。
【図10】チェク弁の断面図である。
【図11】チェク弁の一部部品の断面図である。
【図12】油圧無段変速装置の油圧回路図である。
【符号の説明】
【0035】
12 刈取装置
22 刈取昇降油圧シリンダ
23 刈取スライドシリンダ
29 昇降用方向切換電磁弁
30 スライド用方向切換電磁弁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取装置(12)を昇降させる刈取昇降油圧シリンダ(22)の昇降用方向切換電磁弁(29)と刈取装置(12)を左右にスライドさせる刈取スライドシリンダ(23)のスライド用方向切換電磁弁(30)とを直列に接続したことを特徴とするコンバインの油圧回路。
【請求項1】
刈取装置(12)を昇降させる刈取昇降油圧シリンダ(22)の昇降用方向切換電磁弁(29)と刈取装置(12)を左右にスライドさせる刈取スライドシリンダ(23)のスライド用方向切換電磁弁(30)とを直列に接続したことを特徴とするコンバインの油圧回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−154757(P2010−154757A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333411(P2008−333411)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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