説明

コンバインの穀粒排出オーガ

【課題】 耐久性に優れ、かつ、無理なく伸縮可能なコンバインの穀粒排出オーガを低コストで実現することを目的する。
【解決手段】 コンバインの穀粒排出オーガ9に、伸縮機構33により第1及び第2ケース23,24を伸縮させると、第2スクリュ41を第1スクリュ40と重なり合いながら第1スクリュ40に対してスライド移動させるスライド機構を備えて構成するとともに、伸縮機構33により第1及び第2ケース23,24を伸縮させて第2スクリュ41が第1スクリュ40に対してスライド移動すると第2スクリュ41の第2スクリュ羽根49が互いに隣接する第1スクリュ40の第1スクリュ羽根46の中央部付近を相対回転しながら移動するようにスライド機構を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮機構を備えて伸縮可能に構成してあるコンバインの穀粒排出オーガに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、例えば、特許文献1に開示されているコンバインの穀粒排出オーガが知られている。特許文献1に開示されている従来の穀粒排出オーガにおいては、縦オーガと連動連結された翼体回転手段(特許文献1の図2の60)によって、軸付螺旋翼体(特許文献1の図2の34)を回動駆動させるとともに、モーター(特許文献1の図2の64)を正逆転させることによって、駆動軸(特許文献1の図2の65)及び差動歯車機構(特許文献1の図2の62)を介して軸無螺旋翼体(特許文献1の図2の31)を軸付螺旋翼体と異なる回転数で回動駆動させて、軸付螺旋翼体及び軸無螺旋翼体の回転数の差を利用して軸付螺旋翼体に対して軸無螺旋翼体を移動させることによって穀粒排出オーガが伸縮するように構成されている。また、軸付螺旋翼体に対して軸無螺旋翼体を移動させると、軸付螺旋翼体カバー(特許文献1の図2の36)に対して軸無螺旋翼体カバー(特許文献1の図2の37)が移動して、軸付螺旋翼体カバー及び軸無螺旋翼体カバーが伸縮するように構成されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−186345号公報(図2〜図5及び図14参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている従来のコンバインの穀粒排出オーガにおいては、軸付螺旋翼体及び軸無螺旋翼体(特許文献1の図2の31及び34)をそれぞれ異なる回転数で回動駆動させるために、差動歯車機構(特許文献1の図2の62)等を穀粒排出オーガの先端部に設ける必要があった。そのため、穀粒排出オーガの構造が複雑になって部品点数が多くなり製造コストアップの一因になるといった問題や、穀粒排出オーガ(特に、差動歯車機構を設けた先端部)の重量が重くなって、穀粒排出オーガの旋回部等に無理な曲げモーメントが働き易いといった問題があった。
【0005】
また、特許文献1に開示されているコンバインの穀粒排出オーガにおいては、軸無螺旋翼体の螺旋翼と軸付螺旋翼体の螺旋翼(特許文献1の図5の30及び32)とが互いに近接した状態で穀粒排出オーガを伸縮する構造が採用されている。そのため、軸無螺旋翼体の螺旋翼と軸付螺旋翼体の螺旋翼との間や、ガイド板(特許文献1の図3の35)と螺旋翼の間に搬送途中の穀粒が存在すると、穀粒排出オーガを伸縮させる際に、軸無螺旋翼体の螺旋翼と軸付螺旋翼体の螺旋翼との間で、搬送途中の穀粒が圧縮されて、穀粒が圧縮されて損傷してしまうといった問題があった。さらに、穀粒排出オーガを伸縮させる際に、軸無螺旋翼体の螺旋翼と軸付螺旋翼体の螺旋翼の間に大きな摩擦力が働いて、無理なく穀粒排出オーガを伸縮することができないといった問題があった。
本発明は、耐久性に優れ、かつ、無理なく伸縮可能なコンバインの穀粒排出オーガを低コストで実現することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、円筒状の第1ケースと、前記第1ケースに対してスライド移動可能に構成した円筒状の第2ケースと、前記第1ケースと前記第2ケースとに亘って設けられた伸縮機構とを備え、前記第1及び第2ケースの内部に、搬送上流側に位置する第1スクリュと搬送下流側に位置する第2スクリュとを備えて、前記第1スクリュの第1スクリュ羽根の巻き方向と前記第2スクリュの第2スクリュ羽根の巻き方向とを同じ巻き方向に設定して、前記第1ケースの搬送上流側の端部に位置する供給口から前記第2ケースの搬送下流側の端部に位置する排出口に向って穀粒を搬送可能で、かつ、伸縮可能に構成してあるコンバインの穀粒排出オーガにおいて、次のように構成することにある。
前記伸縮機構により前記第1及び第2ケースを伸縮させると、前記第2スクリュを前記第1スクリュと重なり合いながら前記第1スクリュに対してスライド移動させるスライド機構を備え、
前記伸縮機構により前記第1及び第2ケースを伸縮させて前記第2スクリュが前記第1スクリュに対してスライド移動すると、前記第2スクリュの第2スクリュ羽根が互いに隣接する前記第1スクリュの第1スクリュ羽根の中央部付近を相対回転しながら移動するように前記スライド機構を構成する。
【0007】
(作用)
本発明の第1特徴によると、伸縮機構により第1及び第2ケースを伸縮させると、第2スクリュを第1スクリュと重なり合いながら第1スクリュに対してスライド移動させるスライド機構を備えることにより、第1及び第2スクリュを回動駆動させなくても、伸縮機構により第1及び第2ケースを伸縮することによって、第2スクリュを第1スクリュに対してスライド移動させることができて、穀粒排出オーガを伸縮することが可能になる。そのため、穀粒排出オーガを伸縮させる構造を簡素化することができる。
【0008】
具体的には、例えば、特許文献1における軸無螺旋翼体(特許文献1の図2の31)を軸付螺旋翼体(特許文献1の図2の34)と異なる回転数で回動駆動させるための駆動軸(特許文献1の図2の65)及び差動歯車機構(特許文献1の図2の62)に替えて、第1ケースと第2ケースとに亘る伸縮機構(例えば、図3の33)及びスライド機構(例えば、図3の40,41等)によって穀粒排出オーガを伸縮することができるため、特許文献1の構造に比べて、穀粒排出オーガを伸縮させる構造を簡素化することができる。
【0009】
本発明の第1特徴によると、伸縮機構により第1及び第2ケースを伸縮させて第2スクリュが第1スクリュに対してスライド移動すると、第2スクリュの第2スクリュ羽根が互いに隣接する第1スクリュの第1スクリュ羽根の中央部付近を相対回転しながら移動するようにスライド機構を構成することにより、第2スクリュの第2スクリュ羽根と第1スクリュの第1スクリュ羽根が互いに離れた状態で穀粒排出オーガを伸縮することできる。そのため、穀粒排出オーガを伸縮させる際に、第2スクリュの第2スクリュ羽根と第1スクリュの第1スクリュ羽根との間の搬送途中の穀粒が圧縮されることを防止できて、第2スクリュ羽根と第1スクリュ羽根の間に摩擦力が働き難くなる。
【0010】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、穀粒排出オーガを伸縮させる構造を簡素化することができるため、部品点数が少なくなって製造コストを削減することができる。また、穀粒排出オーガを伸縮させる構造を簡素化することができる結果として、穀粒排出オーガの重量が軽くなるため、穀粒排出オーガの旋回部等に無理な曲げモーメントが働き難くなって、耐久性に優れた穀粒排出オーガを実現することができる。
【0011】
本発明の第1特徴によると、穀粒排出オーガを伸縮させる際に、穀粒が圧縮されることを防止できるため、穀粒が損傷することを防止できる。また、第1スクリュ羽根と第2スクリュ羽根の間に摩擦力が働き難くなるため、無理なく穀粒排出オーガを伸縮することができる。
【0012】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴のコンバインの穀粒排出オーガにおいて、次のように構成することにある。
前記第1及び第2ケースの内部に前記第1及び第2ケースと同心状の駆動軸を備え、前記駆動軸の外周部に前記第1及び第2スクリュを備えて、前記第1スクリュを、前記駆動軸の外周部に設けた前記駆動軸と一体回動可能な第1筒軸と、前記第1スクリュ羽根とを備えて構成し、前記第1筒軸の外周部に前記第1スクリュ羽根を螺旋状に巻き付け固定して、前記第2スクリュを、前記駆動軸の外周部に設けた前記駆動軸に対して相対回転可能で前記駆動軸に対してスライド移動可能な第2筒軸と、前記第2スクリュ羽根とを備えて構成し、前記第2筒軸の外周部の搬送下流側の端部に前記第2スクリュ羽根の搬送下手側の端部を固定し、前記第2筒軸の外周面から所定の間隔を開けて前記第2スクリュ羽根を搬送上流側に向って螺旋状に巻き付けて、前記第2スクリュの第2筒軸を前記第1スクリュの駆動軸と第1筒軸との間に嵌合させることによって前記スライド機構を構成する。
【0013】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
【0014】
本発明の第2特徴によると、上記のように第1及び第2スクリュ等を構成することによって、第2スクリュを第1スクリュと重なり合いながら第1スクリュに対してスライド移動させるスライド機構を簡素に実現することができる。また、上記のように第2スクリュの第2筒軸を第1スクリュの駆動軸と第1筒軸との間に嵌合させる構成を採用することによって、第1スクリュに対して第2スクリュを無理なくスライドさせることができる。すなわち、上記のようにスライド機構を構成することにより、第1スクリュに対して第2スクリュを無理なくスライド移動させることのできるスライド機構を簡素に実現することできる。
【0015】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、第1スクリュに対して第2スクリュを無理なくスライド移動させることができるスライド機構を簡素に実現することができるため、穀粒排出オーガの耐久性を向上させることができるとともに、製造コストを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
〔コンバインの全体構成〕
図1及び図2に本発明に係る穀粒搬送装置を備えた自脱型コンバインを示す。図1及び図2に示すように、クローラ走行装置1の上部に設けた走行機体2の前部に刈取部3が設けられ、走行機体2には、操縦部4、刈取穀稈を脱穀及び選別する脱穀部5、脱穀部5から供給される穀粒を貯留するグレンタンク6、このグレンタンク6から機外に穀粒を排出するアンローダ7等を備えて自脱型コンバインが構成されている。
【0017】
アンローダ7は、グレンタンク6下部の排出スクリュ11から上方に穀粒を導く縦オーガ8と、この縦オーガ8の上部から穀粒をトラックの荷台等(図示せず)に排出する横オーガ9(穀粒排出オーガに相当)等によって構成されており、縦オーガ8と横オーガ9とに亘って設けた油圧シリンダ12を操作することでアンローダ7を起立させた上で、縦オーガ8下方のロアケース14に設けた旋回モータ13を回転させることによってアンローダ7を旋回することができるように構成されている。
【0018】
縦オーガ8は、グレンタンク6下部の排出スクリュ11の後端部に連結されたロアケース14と、ロアケース14から上方に延出された外装ケース15と、この外装ケース15の内部に回動自在に支持された縦送りスクリュ16等を備えて構成されており、グレンタンク6下部の排出スクリュ11から機体後方に搬送された穀粒を上方に搬送して横オーガ9に供給できるように構成されている。
【0019】
グレンタンク6下部の排出スクリュ11は、ロアケース14の内部でベベル伝達機構17を介して縦オーガ8の縦送りスクリュ16と連動連結されており、縦オーガ8の縦送りスクリュ16は、アッパケース18の内部でベベル伝達機構19を介して後述する横オーガ9の駆動軸42と連動連結されている。このように構成することにより、エンジン(図示せず)から、グレンタンク6と脱穀部5との間に位置する伝動ケース(図示せず)を介してグレンタンク6下部の排出スクリュ11が回動すると、ベベル伝達機構17を介して縦送りスクリュ16が回動し、さらに、ベベル伝達機構19を介して第1搬送スクリュ20及び第2搬送スクリュ21が回動するように構成されている。
【0020】
以上のように構成することで、グレンタンク6に貯留した穀粒を排出スクリュ11によって機体後方に搬送し、縦オーガ8によって上方に搬送して横オーガ9の供給口9aに供給し、横オーガ9の内部に設けた第1搬送スクリュ20、第2搬送スクリュ21及び第3搬送スクリュ22によって穀粒を横オーガ9先端の排出口9bに導いて、この排出口9bからトラックの荷台等(図示せず)に穀粒を排出することができるようにアンローダ7が構成されている。
【0021】
〔横オーガ(穀粒搬送装置に相当)の構造〕
図3〜図8に横オーガ9の詳細構造を示す。図3は、横オーガ9の全体図を示す。図3(イ)は、最も伸長した状態における横オーガ9の縦断面図を示し、図3(ロ)は、最も短縮した状態における横オーガ9の縦断面図を示す。また、図4〜図6は、図3(イ)の状態でのA〜Cの位置における横オーガ9の詳細縦断面図をそれぞれ示し、図7及び図8は、図3(ロ)の状態でのD及びEの位置における横オーガ9の詳細縦断面図をそれぞれ示す。
【0022】
図3に示すように、横オーガ9は、縦オーガ8と横オーガ9の連結部に位置するアッパケース18に連結された円筒状の前部ケース23aと後部ケース23bとに2分割された第1ケース23と、この第1ケース23に伸縮方向にスライド自在に外嵌された第2ケース24と、第1ケース23及び第2ケース24の内部に設けられた後述する第1搬送スクリュ20、第2搬送スクリュ21等を備えて構成されている。
【0023】
図5に示すように、第1ケース23の搬送下流側の端部の外周部には、円筒状のスリーブ25が第1ケース23に外嵌された状態で固着されており、このスリーブ25の搬送下流側の端部にパイプ26が内嵌された状態で固着され、このパイプ26の搬送下流側の端部に円筒状のスリーブ27が外嵌された状態で固着されている。なお、スリーブ27の搬送下流側の端部における内面側にはテーパ加工が施されており、第1ケース23に対して第2ケース24がスライドする際に第2ケース24から第1ケース23に無理なく穀粒を導けるように構成されている。スリーブ25,27の外周部に設けたカラー28,29を介して第2ケース24が第1ケース23に外嵌されており、第2ケース24が第1ケース23に対して伸縮方向に無理なくスライドするように構成されている。
【0024】
図6に示すように、第2ケース24の搬送下流側の端部には、下方に開放された排出口9bが配設されており、後述する第2搬送スクリュ21及び第1搬送スクリュ20によって搬送されてきた穀粒をこの排出口9bから下方に排出できるように構成されている。
【0025】
図4に示すように、第2搬送スクリュ21は、円筒状の第3筒軸56と、この第3筒軸56の外周部の全長に亘って巻き付けられて固定された螺旋状の第3スクリュ羽根57等を備えて構成されている。
【0026】
第2搬送スクリュ21の第3筒軸56の搬送上流側の端部から支軸56aが延出されており、この支軸56aがベアリング55を介してアッパケース18に回動自在に支持されている。一方、第2搬送スクリュ21の第3筒軸56の搬送下流側の端部に支軸56bが延出されており、この支軸56bが第1ケース24に固定された支持部材53にベアリング58を介して回動自在に支持されている。
【0027】
以上のように、第2搬送スクリュ21を構成することによって、ベベル伝達機構19を介して第2搬送スクリュ21に動力が伝達されて、第1ケース23の供給口9aから搬送されてきた穀粒を第1搬送スクリュ20に向って搬送できるように構成されている。
【0028】
図4及び図5に示すように、第1搬送スクリュ20は搬送上流側に位置する第1スクリュ40と、搬送下流側に位置する第2スクリュ41等を備えて構成されている。
【0029】
第1搬送スクリュ20を構成する第1スクリュ40は、第2搬送スクリュ21と一体回動自在な駆動軸42と、駆動軸42と連結ボルト52によって連結され駆動軸42と一体回動可能で駆動軸42と同心状の第1筒軸45と、この第1筒軸45の外周部に第1筒軸45の全長に亘って設けられた螺旋状の第1スクリュ羽根46等を備えて構成されている。駆動軸42の搬送上流側の端部は、第2搬送スクリュ21の搬送下流側の端部に設けた支持部材53にベアリング43を介して回動自在に支持されており、第2搬送スクリュ21と駆動軸42とを連結部材47で連結することによって、駆動軸42が第2搬送スクリュ21と一体回動するように構成されている。
【0030】
図5及び図6に示すように、第1搬送スクリュ20を構成する第2スクリュ41は、第2ケース24の搬送下流側の端部にベアリング44を介して回転自在に支持された第2筒軸48と、この第2筒軸48の外周部に第2筒軸48の全長に亘って設けられた螺旋状の第2スクリュ羽根49等を備えて構成されている。
【0031】
第2筒軸48は、搬送上流側に位置する筒状部材48aと、この筒状部材48aの搬送下流側に位置し筒状部材48aよりやや小径の第1パイプ48bと、この第1パイプ48bの搬送下流側に位置し第1パイプ48bより外径の大きい第2パイプ48cとによって構成されており、外径の大きい第2パイプ48cに第2スクリュ羽根49の搬送下流側の端部が固着されており、外径の小さい筒状部材48a及び第1パイプ48bの部分に位置する第2スクリュ羽根49は、この第2パイプ48c及び筒状部材48aと所定の間隔を開けて巻き付けられている。
【0032】
駆動軸42の外周部には、半円弧状のボール溝42aが螺旋状に伸縮方向の両端部に亘って形成され、第2筒軸48の筒状部材48aの内面側には複数のボール穴48dが形成されており、このボール溝42aとボール穴48dとに亘って伝動ボール51を取り付けた状態で、第1スクリュ40の駆動軸42と第1筒軸45との間に第2スクリュ41を構成する第2筒軸48の筒状部材48aが嵌め込まれている。このように、第1スクリュ羽根46と第2スクリュ羽根49を上述した形状に形成し、第2筒軸48の筒状部材48aを第1スクリュ40の駆動軸42と第1筒軸45との間に嵌合させることによって、第2スクリュ41を第1スクリュ40と重なり合いながら第1スクリュ40に対してスライド移動させるスライド機構が構成されている。
【0033】
駆動軸42の外周部に形成した螺旋状のボール溝42aの搬送方向のピッチは、第1スクリュ羽根46及び第2スクリュ羽根49の搬送方向のスクリュピッチと略同一の間隔に設定されており、また、第1スクリュ40に対して第2スクリュ41が回転しながらスライド移動する際に、第1スクリュ羽根46の搬送方向のスクリュピッチの略中間位置を第2スクリュ羽根49が移動するようにボール溝42aが加工されている。
【0034】
このように、駆動軸42のボール溝42aのピッチ、及び、第1スクリュ羽根46並びに第2スクリュ羽根49のスクリュピッチを略同一に設定し、第1スクリュ羽根46の搬送方向のスクリュピッチの略中間位置を第2スクリュ羽根49が移動するように構成することにより、第1搬送スクリュ20を伸縮する際に、第1スクリュ40の第1スクリュ羽根46と第2スクリュ41の第2スクリュ羽根49との間の隙間を確保することができるため、第1スクリュ羽根46と第2スクリュ羽根49との間に穀粒が挟まれて、穀粒が損傷することを防止することができる。
【0035】
図3,図7及び図8に示すように、第1搬送スクリュ20を上記のように構成することによって、伸縮機構33により第1及び第2ケース23,24を伸縮させて第2ケース24が第1ケース23に対して搬送上流側にスライド移動すると、第2スクリュ41の第2筒軸48が第1スクリュ40の駆動軸42と第1筒軸45との間をボール溝42aに案内されて、第1スクリュ40に対して穀粒を排出口9bに搬送する方向に相対回転しながら第1スクリュ40の方に入り込んで、第2スクリュ41の第2スクリュ羽根49が第1スクリュ40の第1スクリュ羽根46のスクリュピッチの間を第1スクリュ40に対して穀粒を排出口9bに搬送する方向に相対回転しながら第1スクリュ40の方に入り込むことによって、第1搬送スクリュ20が短縮するように構成されている。
【0036】
一方、伸縮機構33により第1及び第2ケース23,24を伸縮させて第2ケース24が第1ケース23に対して搬送下流側にスライド移動すると、第2スクリュ41の第2筒軸48が第1スクリュ40の駆動軸42と第1筒軸45との間をボール溝42aに案内されて、第1スクリュ40に対して穀粒を排出口9bに搬送する方向とは逆方向に相対回転しながら搬送下流側に相対移動するとともに、第2スクリュ41の第2スクリュ羽根49が第1スクリュ40の第1スクリュ羽根46のスクリュピッチの間を第1スクリュ40に対して穀粒を排出口9bに搬送する方向とは逆方向に相対回転しながら搬送下流側に相対移動することによって、第1搬送スクリュ20が伸長するように構成されている。
【0037】
なお、駆動軸42を停止し第1スクリュ40が回転していない状態で横オーガ9を伸縮させると、第1スクリュ40が停止し第2スクリュ41のみが回転する状態になる。そのため、伸縮機構33により第1及び第2ケース23,24を伸縮させて横オーガ9を伸縮する場合(具体的には、例えば、穀粒を排出するトラックの荷台等の位置に合わせて横オーガ9を伸縮するような場合)における第1及び第2スクリュ40,41の回転を最小限に抑えることができて、トラックの荷台等に穀粒を正確に排出することができずに排出口9bからトラックの荷台等の外側に誤って穀粒が排出されてしまう穀粒ロスを少なくすることができる。
【0038】
また、伸縮機構33を操作せずに駆動軸42が回転して第1スクリュ40が回転すると、搬送方向に力が働かないため、駆動軸42の動力が伝動ボール51を介して第2筒軸48の筒状部材48aに伝達されて、第2スクリュ41が第1スクリュ40と一体回動するように構成されている。このように、伝動ボール51、駆動軸42に設けたボール溝42a、第2筒軸48に設けたボール穴48d等によって、第2スクリュ41が第1スクリュ40と一体回動するように構成することによって、例えば、第1及び第2スクリュ40,41をそれぞれ独立して回動駆動させて、横オーガ9を伸縮可能に構成する場合に比べて、第1及び第2スクリュ40,41を回転駆動させる機構を別個に設ける必要がなくなって、第1及び第2スクリュ40,41を回転駆動させる機構を簡素化することができる。
【0039】
なお、駆動軸42に螺旋状のボール溝42aを設けて、この駆動軸42と第1筒軸45との間に伝動ボール51を備えた第2筒軸48を配置することによって、ボール溝42aを加工した駆動軸42、伝動ボール51、筒状部材48a等の部品を第1筒軸45の内部に収容することができる。そのため、横オーガ9内を通過する穀粒の粉塵や水分が駆動軸42や伝動ボール51等に付着し難くなって、無理なくスライド移動させることができるとともに、駆動軸42や伝動ボール51等が錆び付くことを防止できる。
【0040】
〔伸縮機構の構造〕
図4及び図5に示すように、第1ケース23と第2ケース24に亘って、横オーガ9を伸縮する伸縮機構33が設けられており、第2ケース24が第1ケース23側に入り込むことによって横オーガ9の長さを調節できるように構成されている。
【0041】
第1ケース23における前部ケース23aと後部ケース23bの連結部の上側に、ブラケット34が固定されており、このブラケット34に電動モータ35が減速機36を介して固定されている。一方、第2ケース24の搬送上流側の端部の上側にナット部材37が固定されており、このナット部材37に減速機36の出力軸36aに連結された送りネジ38が連係されている。
【0042】
以上のように伸縮機構33を構成することによって、操縦部4に設けた横オーガ伸縮レバー39(図1参照)を伸長側に操作すると電動モータ35が回転するとともに減速機36の出力軸36aが回転して、この出力軸36aに連結された送りネジ38が回転する。そうすると、第2ケース24が第1ケース23に対して搬送下流側に移動して横オーガ9を伸長させることができる。一方、操縦部4に設けた横オーガ伸縮レバー39を短縮側に操作すると、電動モータ35が逆回転するとともに減速機36の出力軸36aが逆回転して、この出力軸36aに連結された送りネジ38が逆回転する。そうすると、第2ケース24が第1ケース23に対して搬送上流側に移動して横オーガ9を短縮させることができる。
【0043】
〔排出口開閉装置〕
図9に横オーガ9の搬送下流側の端部に設けられている排出口開閉装置60の詳細図を示す。図9(イ)は、排出口9bが閉じて穀粒を排出できない状態を示し、図9(ロ)は、排出口9bが開いて穀粒を排出できる状態を示す。
【0044】
図9に示すように、ベアリング44に回動自在に支持された第2筒軸48の支軸48eが第2ケース24の側板24aを貫通して外側に延出されており、この支軸48eに排出口開閉装置60を構成する回転部材69、スライド部材70等が取り付けられている。
【0045】
第2ケース24の後端に位置する側板24aの内面側下部に、穀粒の搬送方向に直交する方向の軸心P1周りに回動自在に回転軸61が取り付けられており、この回転軸61に軽量な樹脂製の開閉板62が固定されている。
【0046】
側板24aの外面側に、ブラケット63が固定されており、このブラケット63の先端部に支軸64が固定され、この支軸64の穀粒の搬送方向に直交する方向の軸心P2周りに回動自在にベルクランク65が取り付けられている。ベルクランク65と支軸64とに亘ってねじりバネ66が装着されており、第1搬送スクリュ20が停止し支軸48eが回転していない状態では、このねじりバネ66の付勢力によって開閉板62を閉じることができるように構成されている。
【0047】
ベルクランク65の下端部には、回転軸61に固定されたアーム67がリンク68を介して連係されており、ベルクランク65が支軸64の軸心P2周りに回転するとリンク68を押し上げ又は押し下げてアーム67を回転軸61の軸心P1周りに回転させることで、回転軸61に固定された開閉板62を軸心P1周りに前後に揺動させることができるように構成されている。
【0048】
支軸48eの先端部には、支軸48eと一体回転可能な回転部材69が固定され、この回転部材69と側板24aとの間に、搬送方向にスライド自在なスライド部材70が外嵌されている。回転部材69とスライド部材70とに亘ってリンク71,72が連係されており、このリンク71とリンク72の連係部にウエイト73が取り付けられている。スライド部材70には、このスライド部材70に対して相対回転自在な筒状部材74が外嵌されており、この筒状部材74の下端部がベルクランク65と連係されている。
【0049】
以上のように、排出口開閉装置60を構成して、図9(イ)に示す支軸48eが回転しておらず開閉板62がねじりバネ66の付勢力によって閉じた状態から、第1搬送スクリュ20を回転させて支軸48eが回転すると、リンク71とリンク72の連結部に設けたウエイト73の遠心力によってリンク71,72が鋭角に折り曲げられてスライド部材70が搬送下流側にスライド移動する。そうすると、スライド部材70とともに筒状部材74が移動して、筒状部材74に連係されたベルクランク65が支軸64の軸心P2周りに回転して、リンク68及びアーム67を介して回転軸61が軸心P1周りに回転する。そして、ねじりバネ66の付勢力に抗して開閉板62が下方に揺動して、排出口9bを下方に開放することができる。
【0050】
一方、図6(ロ)に示す支軸48eが回転しており開閉板62がねじりバネ66の付勢力に抗して開いた状態から、第1搬送スクリュ20を停止させて支軸48eが停止すると、ねじりバネ66の付勢力が働いてベルクランク65が支軸64の軸心P2周りに回転する。そうすると、リンク68を介してアーム67及び回転軸61が軸心P1周りに回転し、筒状部材74に連係されたスライド部材70が搬送上流側にスライド移動して、リンク71,72が鈍角に折り曲げられた状態になって、開閉板62が上方に揺動して、排出口9bを閉鎖することができる。
【0051】
このように、排出口開閉装置60を構成することにより、排出口9bを開閉する開閉板62の開閉を第1搬送スクリュ20及び第2搬送スクリュ21の回転と連動させることができる。そのため、第1搬送スクリュ20及び第2搬送スクリュ21を回転させて穀粒を搬送している状態においては、自動的に開閉板62を開放して穀粒を排出することができて、第1搬送スクリュ20及び第2搬送スクリュ21を停止させて穀粒を搬送していない状態においては、自動的に開閉板62を閉じることができる。すなわち、穀粒を排出する必要性のある場合にのみ自動的に排出口9bを開放することができて、穀粒が排出口9bから無駄に排出される穀粒ロスを少なくすることができる。
【0052】
例えば、開閉板62を開閉するための動力源(例えば、電動モータ(図示せず)等)を設ける場合に比べ、上述したように排出口開閉装置60を構成することにより、開閉板62を開閉する構造を簡素化することができるため、部品点数を削減することができて、製造コストを削減することができる。
【0053】
なお、排出口開閉装置60は、上部及び下部が斜めにテーパ加工され突出部のみを効率的に覆うことができる着脱可能な防水カバー75に覆われており、排出口開閉装置60が外部に露出することによる破損や故障を防止することができるように構成されている。
【0054】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、第1搬送スクリュ20に加えて、第2搬送スクリュ21を備えた横オーガ9(穀粒排出オーガ)を例に示したが、第1搬送スクリュ20のみによって横オーガ9を構成してもよい。
【0055】
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、第1スクリュ羽根46の搬送方向のスクリュピッチの略中間位置を第2スクリュ羽根49が移動するように構成した例を示したが、穀粒が圧縮されることを防止できて、第1スクリュ羽根46と第2スクリュ羽根49の間に摩擦力が働き難い位置であれば、第1スクリュ羽根46に対して第2スクリュ羽根49が移動する位置は、異なる位置であってもよい。
【0056】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、スライド機構を、第1スクリュ40及び第2スクリュ41の構造を工夫し、伝動ボール51等を用いることにより実現した例を示したが、同様の機能を果たすものであれば、異なる構造を採用してもよい。
【0057】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]及び[発明の実施の第2別形態]においては、伸縮機構33を送りネジ38、ナット部材37等を用いて構成した例を示したが、同様の機能を果たすものであれば異なる構造を採用してもよく、例えば、ラック(図示せず)やピニオンギア(図示せず)等を用いて伸縮機構33を構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】コンバインの全体右側面図
【図2】コンバインの全体平面図
【図3】横オーガの全体構造を示す縦断面図
【図4】横オーガを伸長させた状態におけるA部の詳細構造を示す縦断面図
【図5】横オーガを伸長させた状態におけるB部の詳細構造を示す縦断面図
【図6】横オーガを伸長させた状態におけるC部の詳細構造を示す縦断面図
【図7】横オーガを短縮させた状態におけるD部の詳細構造を示す縦断面図
【図8】横オーガを短縮させた状態におけるE部の詳細構造を示す縦断面図
【図9】排出口開閉装置の構造を示す詳細図
【符号の説明】
【0059】
9 横オーガ(穀粒排出オーガ)
9a 供給口
9b 排出口
23 第1ケース
24 第2ケース
33 伸縮機構
40 第1スクリュ
41 第2スクリュ
42 駆動軸
45 第1筒軸
46 第1スクリュ羽根
48 第2筒軸
49 第2スクリュ羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の第1ケースと、前記第1ケースに対してスライド移動可能に構成した円筒状の第2ケースと、前記第1ケースと前記第2ケースとに亘って設けられた伸縮機構とを備え、前記第1及び第2ケースの内部に、搬送上流側に位置する第1スクリュと搬送下流側に位置する第2スクリュとを備えて、前記第1スクリュの第1スクリュ羽根の巻き方向と前記第2スクリュの第2スクリュ羽根の巻き方向とを同じ巻き方向に設定して、前記第1ケースの搬送上流側の端部に位置する供給口から前記第2ケースの搬送下流側の端部に位置する排出口に向って穀粒を搬送可能で、かつ、伸縮可能に構成してあるコンバインの穀粒排出オーガであって、
前記伸縮機構により前記第1及び第2ケースを伸縮させると、前記第2スクリュを前記第1スクリュと重なり合いながら前記第1スクリュに対してスライド移動させるスライド機構を備え、
前記伸縮機構により前記第1及び第2ケースを伸縮させて前記第2スクリュが前記第1スクリュに対してスライド移動すると、前記第2スクリュの第2スクリュ羽根が互いに隣接する前記第1スクリュの第1スクリュ羽根の中央部付近を相対回転しながら移動するように前記スライド機構を構成してあるコンバインの穀粒排出オーガ。
【請求項2】
前記第1及び第2ケースの内部に前記第1及び第2ケースと同心状の駆動軸を備え、前記駆動軸の外周部に前記第1及び第2スクリュを備えて、
前記第1スクリュを、前記駆動軸の外周部に設けた前記駆動軸と一体回動可能な第1筒軸と、前記第1スクリュ羽根とを備えて構成し、
前記第1筒軸の外周部に前記第1スクリュ羽根を螺旋状に巻き付け固定して、
前記第2スクリュを、前記駆動軸の外周部に設けた前記駆動軸に対して相対回転可能で前記駆動軸に対してスライド移動可能な第2筒軸と、前記第2スクリュ羽根とを備えて構成し、
前記第2筒軸の外周部の搬送下流側の端部に前記第2スクリュ羽根の搬送下手側の端部を固定し、前記第2筒軸の外周面から所定の間隔を開けて前記第2スクリュ羽根を搬送上流側に向って螺旋状に巻き付けて、
前記第2スクリュの第2筒軸を前記第1スクリュの駆動軸と第1筒軸との間に嵌合させることによって前記スライド機構を構成してある請求項1記載のコンバインの穀粒排出オーガ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−73013(P2008−73013A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−258728(P2006−258728)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】