説明

コンバインの脱穀装置

【課題】刈取穀稈の種類等に応じて扱室内の扱網と四番処理室の扱網の目合いの大きさを適宜に変更調節できるようにし、脱穀選別精度を高める。
【解決手段】扱室66の底部に設ける円弧状扱網74を、選別孔74Sを形成した円弧状内網74aと円弧状外網74bをそれぞれの選別孔74Sが重なり合う状態で重ね合わせ、円弧状内網74aと外網74bを相対的に周方向にスライドすることで重なった選別孔74Sの通過孔径を変更可能にすると共に、四番処理室21の底部に設ける四番網77を、同じく四番選別孔77Sを形成した円弧状四番内網77aと円弧状四番外網77bをそれぞれの四番選別孔77Sが重なり合う状態で重ね合わせ、円弧状四番内網77aと円弧状四番外網77bを相対的に周方向にスライドすることで重なった選別孔74Sの通過孔径を変更可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに搭載される脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインは穀稈の刈取装置と、脱穀装置と、脱穀後一時的に貯留するグレンタンクと、グレンタンクに貯留されている穀粒を排出するオーガなどから構成される。
脱穀装置の扱室には刈取装置で刈り取った穀稈がフィードチェンにより搬送して挿入され、穀稈は扱室に軸架された扱胴の表面に多数設けられた扱歯と扱網との相互作用により脱穀される。穀稈から分離された被処理物(穀粒や藁屑)は扱網を通過して、選別室の揺動棚で受け止められ唐箕からの送風による送風選別や揺動棚の揺動選別などによって二番穀粒や藁屑などを分離して穀粒のみをグレンタンクに搬送する。
【0003】
二番穀粒は二番処理室に送られ二番処理胴により穀粒、枝梗粒などに分離され、再び揺動棚に戻して穀粒、二番穀粒、藁屑などに分離される。扱室で発生した藁屑など短尺のものは排塵処理室に搬送され、排塵処理胴により処理される。脱穀装置の扱室の終端に到達した脱穀された残りの穀稈で長尺のままのものは、排藁搬送装置により搬送され、脱穀装置の後部の排藁処理室に投入された後、圃場に放出される。
【0004】
そして、下記の特許文献1には、扱室の後端部分を利用して搬送穀稈中に刺さり込んでいる刺さり粒を落下処理させる四番処理室が配置されている構成が記載さられている。
また、下記の特許文献2には、刈取穀稈の種類等に応じて扱室内の扱網の目合いの大きさを適宜に変更調節できる脱穀装置の扱網構造として、扱胴の周方向に沿う円弧状の帯板部材から成る複数の縦桟を前記扱胴の軸芯方向に並設し、該縦桟に、前記扱胴の周方向に沿って並設される複数の横棒部材を貫通する状態で架設支持して格子状に扱網を構成し、前記縦桟同士の間隔を変更して扱網の目合いの大きさを変更調節自在に構成した構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−35782号公報
【特許文献2】特開2000−4655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のコンバインにおいて、刈取穀稈の種類等に応じて扱室内の扱網の目合いの大きさを適宜に変更調節できるようにするために、特許文献2に記載の扱網構造を採用して扱網の目合いの大きさを適宜に変更調節できるようにすると、縦桟の間隔を狭めて目合いを小さくした場合には、扱室終端部の四番処理室における扱網の目合いが逆に広がって、多くの藁屑と共に刺さり粒が扱網を通過して四番処理室での刺さり粒回収率が悪くなる。
【0007】
そこで、本発明は、扱室の後部に四番処理室を設けたコンバインの脱穀装置において、刈取穀稈の種類等に応じて扱室内の扱網と四番処理室の扱網の目合いの大きさを適宜に変更調節できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、扱室(66)の後部に、脱穀後の排稈にささり込んだ穀粒を扱胴(69)後端部の扱歯(69a)によって脱落させる四番処理室(21)を設けたコンバインの脱穀装置(15)において、扱室(66)の下部に設ける扱網(74)を、多数の漏下孔(74S)を形成した円弧状内網(74a)と円弧状外網(74b)をそれぞれの漏下孔(74S)が重なり合いうる状態で重ね合わせ、該円弧状内網(74a)と円弧状外網(74b)を相対的に周方向にスライドさせることで、該円弧状内網(74a)の漏下孔(74S)と円弧状外網(74b)の漏下孔(74S)が連通することで形成される漏下面積を変更する構成とし、四番処理室(21)の下部に設ける四番網(77)を、多数の四番漏下孔(77S)を形成した円弧状四番内網(77a)と円弧状四番外網(77b)をそれぞれの四番漏下孔(77S)が重なり合いうる状態で重ね合わせ、該円弧状四番内網(77a)と円弧状四番外網(77b)を相対的に周方向にスライドさせることで、円弧状四番内網(77a)の四番漏下孔(77S)と円弧状四番外網(77b)の四番漏下孔(77S)が連通することで形成される漏下面積を変更する構成としたことを特徴とするコンバインの脱穀装置とする。
【0009】
この構成で、扱室66の扱網74と四番処理室21の四番網77から漏下する脱穀処理物の量を変更調節出来る。
請求項2に記載の発明は、搬送穀稈や脱穀選別物等の収穫物の量を検出する収穫量検出手段を設け、前記収穫量検出手段で検出された収穫量が多い場合には前記扱網(74)の漏下面積と四番網(77)の漏下面積を小さくし、前記収穫量検出手段で検出された収穫量が少ない場合には前記扱網(74)の漏下面積と四番網(77)の漏下面積を大きくする漏下面積制御手段を設けた請求項1に記載のコンバインの脱穀装置とする。
【0010】
この構成で、収穫量が多い場合には扱網74と四番網77から選別室へ漏下する脱穀処理物の量を制限して選別室での選別精度を維持し、収穫量が少ない場合には扱網74と四番網77から選別室へ漏下する脱穀処理物の量を増やして選別効率を維持する。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記収穫量検出手段を、機体の走行速度を検出する速度センサとした請求項2に記載のコンバインの脱穀装置とする。
この構成で、速度センサが高速を検出すると扱網74と四番網77から選別室へ漏下する脱穀処理物の量を制限し、低速を検出すると扱網74と四番網77から選別室へ漏下する脱穀処理物の量を確保する。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記収穫量検出手段を、フィードチェン(14)に対向する挟扼杆(16)の移動量を検出する穀稈量検出センサとした請求項2に記載のコンバインの脱穀装置とする。
【0013】
この構成で、穀稈量検出センサが穀稈量の増加を検出すると扱網74と四番網77から選別室へ漏下する脱穀処理物の量を制限し、穀稈量の減少を検出すると扱網74と四番網77から選別室へ漏下する脱穀処理物の量を確保する。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記収穫量検出手段を、扱室(66)下方に配置される移送棚(52)の選別板(52a)上に設けられ、扱網(74)から落下する脱穀処理物の層の厚みを検出する層厚センサとした請求項2に記載のコンバインの脱穀装置とする。
【0015】
この構成で、層厚センサが脱穀処理物の増加を検出すると扱網74と四番網77から選別室へ漏下する脱穀処理物の量を制限し、脱穀処理物の減少を検出すると扱網74と四番網77から選別室へ漏下する脱穀処理物の量を増加する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、扱室(66)の扱網(74)と四番処理室(21)の四番網(77)から漏下する脱穀処理物の量を調節出来て、収穫量が変動するコンバインの脱穀装置(15)の選別状態を良好に維持出来る。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、上記請求項1に記載の発明を奏するうえに、収穫量が多い場合には扱網(74)と四番網(77)から選別室へ漏下する脱穀処理物の量を制限して選別室での選別精度を維持し、収穫量が少ない場合には扱網(74)と四番網(77)から選別室へ漏下する脱穀処理物の量を確保して選別効率を維持することで、コンバインの脱穀装置が最良の選別状態となる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、上記請求項2に記載の発明の効果に加え、速度センサが高速を検出すると扱網(74)と四番網(77)から選別室へ漏下する脱穀処理物の量を制限し、低速を検出すると扱網(74)と四番網(77)から選別室へ漏下する脱穀処理物の量を増加出来る。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、上記請求項2に記載の発明の効果に加え、穀稈量検出センサが穀稈量の増加を検出すると扱網(74)と四番網(77)から選別室へ漏下する脱穀処理物の量を制限し、穀稈量の減少を検出すると扱網(74)と四番網(77)から選別室へ漏下する脱穀処理物の量を増加出来る。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、上記請求項2に記載の発明の効果に加え、層厚センサによって脱穀処理物の増加が検出されると扱網(74)と四番網(77)から選別室へ漏下する脱穀処理物の量を制限し、層厚センサによって脱穀処理物の減少を検出すると扱網(74)と四番網(77)から選別室へ漏下する脱穀処理物の量を増加させることが出来、選別室へ漏下する脱穀処理物の量を適正に維持し、脱穀選別精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】穀類の収穫作業を行うコンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの脱穀装置の側面断面図である。
【図4】コンバインの脱穀装置の平断面図である。
【図5】図3のX1−X1線矢視の一部省略正断面図である。
【図6】図3のX2−X2線矢視の一部省略正断面図である。
【図7】図3のX3−X3線矢視の一部省略正断面図である。
【図8】脱穀装置の刺さり粒落とし部材を有する扱胴の展開図である。
【図9】脱穀装置の一部側断面図である。
【図10】脱穀装置の正断面図である。
【図11】扱網の拡大平断面図である。
【図12】漏下孔の目合いを変更した扱網の拡大平断面図である。
【図13】四番処理室の底部を示す拡大平面図である。
【図14】四番網の拡大側面図である。
【図15】別実施例を示す四番処理室の底部の拡大平面図である。
【図16】別実施例を示す四番処理室の底部の拡大平面図である。
【図17】別実施例を示す四番処理室の底部の拡大平面図である。
【図18】別実施例を示す四番処理室の底部の拡大平面図である。
【図19】別実施例を示す四番処理室の底部の拡大平面図である。
【図20】別実施例を示す四番処理室の底部の拡大平面図である。
【図21】別実施例を示す四番処理室の底部の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。
図1には本実施例の穀類の収穫作業を行うコンバインの左側面図を示し、図2にはコンバインの平面図を、図3にはコンバインの脱穀装置の拡大右側断面図を示す。
【0023】
なお、本実施の形態ではコンバインの前進方向に向かって前側と後側をそれぞれ前、後といい、左側と右側をそれぞれ左、右ということにする。
図1ないし図2に示すコンバイン1の走行フレーム2の下部には、ゴムなどの可撓性材料を素材として無端帯状に成型した左右一対のクローラ4を持ち、乾田はもちろんのこと、湿田においてもクローラ4が若干沈下するだけで自由に走行できる構成の走行装置3を備え、走行フレーム2の前部には刈取装置6を搭載し、走行フレーム2の上部には図示しないエンジンならびに脱穀装置15、操縦席20およびグレンタンク30を搭載する。
【0024】
刈取装置6は、図示しない刈取昇降シリンダの伸縮作用により刈取装置6全体を昇降して、圃場に植生する穀稈を所定の高さで刈取りが出来る構成としている。刈取装置6の前端下部に分草具7を、その背後に傾斜状にした穀稈引起し装置8を、その後方底部には刈刃(図示せず)を配置している。刈刃と脱穀装置15のフィードチェン14の始端部との間に、図示しない前部搬送装置、扱深さ調節装置、供給搬送装置などの搬送装置9を順次穀稈の受継搬送と扱深さ調節とができるように配置している。
【0025】
コンバイン1の刈取装置6の作動は次のように行われる。まず、エンジンを始動して変速用、操向用などの操作レバーをコンバイン1が前進するように操作し、刈取・脱穀クラッチ(図示せず)を入り操作して機体の回転各部を伝動しながら、走行フレーム2を前進走行させると、刈取、脱穀作業が開始される。圃場に植立する穀稈は、刈取装置6の前端下部にある分草具7によって分草作用を受け、次いで穀稈引起し装置8の引起し作用によって倒伏状態にあれば直立状態に引起こされ、穀稈の株元が刈刃に達して刈取られ、前部搬送装置に掻込まれて後方に搬送され、扱深さ調節装置、供給搬送装置に受け継がれて順次連続状態で後部上方に搬送される。
【0026】
穀稈は供給搬送装置からフィードチェン14と該フィードチェン14の上側に配置され、フィードチェン14に向けて弾性付勢されながら機体に支持された挟扼杆16との間の始端部側に受け継がれ、脱穀装置15に供給される。脱穀装置15は、上側に扱胴69を軸架した扱室66を前板97と後板98の間に配置し、扱室66の下側に選別室50を一体的に設け、供給された刈取穀稈を脱穀、選別する。
【0027】
脱穀装置15に供給された穀稈は、後で詳細に説明するが、主脱穀部である扱室66に挿入され、扱室66に軸架され回転する扱胴69の多数の扱歯69aと、フィードチェン14による移送と、扱網74との相互作用により脱穀され、被処理物(穀粒や藁屑)は脱穀装置15内の選別室50の揺動棚51で受け止められ、上下前後方向に揺動する揺動棚51上を移動しながら、唐箕79からの送風を受けて風力選別され、比重の重い穀粒はシーブ53、54および選別網63を通過し、一番螺旋65から、搬送螺旋を内蔵している一番揚穀筒73(図6、図7)を経てグレンタンク30へ搬送され、一時貯留される。一番揚穀筒73の長手方向の軸芯上にグレンタンク30の籾排出口を設けている。
【0028】
図9と図10に、扱網74の詳細な構成を示す。扱網74は、扱室66の底部から右奥側部にかけて円弧状の四角な漏下孔74Sを形成した円弧状内網74aとこの円弧状内網74aに重ねた円弧状外網74bで構成し、円弧状外網74bの底部と右奥部の前側2か所と後側2か所の計4か所にピニオンギヤ32a,32bを係合している。円弧状外網74bのピニオンギヤ32a,32bとの係合部は、歯先が係合するラックに形成し、ピニオンギヤ32a,32bの回転で円弧状外網74bが円周方向にスライドする。
【0029】
ピニオンギヤ32a,32bは、扱室66の前板97と後板98の近くに設けるブラケット34の間に軸支したピニオン軸33に固着し、このピニオン軸33を前板97の外側で塵埃の比較的少ない位置に取り付けた扱網駆動モータ31で回転する。
【0030】
円弧状内網74aの漏下孔74Sと円弧状外網74bの漏下孔74Sは同一目合いの四角穴で、図11の如く内外の漏下孔74Sが重なった場合に漏下孔としての目合いが最大になり、図12の如く円弧状内網74aの漏下孔74Sの一部を円弧状外網74bで塞ぐ状態で漏下孔としての目合いが小さくなる。円弧状外網74bを図10のD方向へスライドして漏下孔74Sを狭めるようにすることで、藁屑等が漏下孔74Sに引っ掛かり難くなる。
【0031】
なお、扱網74の選別目合いは、底部と右奥側部を一体にして変更するが、右奥側部のみを変更するようにしても良い。
脱穀装置15の扱室66の終端に到達した脱穀された残りの穀稈で長尺のままのものは、並列配置される排藁株元チェン80a(図4)および排藁穂先チェン80b(図4)に挟持されて搬送され、脱穀装置15の後部の排藁処理室82に投入されて圃場に放出される。排藁処理室82内には排藁カッター81a、81bが設けられており、排藁カッター81a、81bにより切断された穀稈は、排藁カッター81a、81bの下方であって、排藁処理室82の前壁部に基部が支持され、後方下り傾斜に設けられた板状の切断藁ガイド96(図3)により案内されて圃場に放出される。
【0032】
グレンタンク30内の底部に穀粒移送用のグレンタンク螺旋(図示せず)を設け、グレンタンク螺旋を駆動する螺旋駆動軸に縦オーガ18および横オーガ19からなる排出オーガを連接し、グレンタンク30内に貯留した穀粒を排出オーガ排出口からコンバイン1の外部に排出する。グレンタンク螺旋(図示せず)、縦オーガ螺旋(図示せず)および横オーガ螺旋(図示せず)は、エンジンの動力の伝動を受けて回転駆動され、それぞれの螺旋羽根のスクリュウコンベヤ作用により貯留穀粒を搬送する。
【0033】
刈取装置6で刈り取った穀稈は刈取装置6に装着された穀稈搬送、調節装置で扱深さが調節され、脱穀装置15の主脱穀部である扱室66内に挿入される。扱室66に軸架された扱胴69は、その表面に多数の扱歯69aが設けられており、図示しない駆動機構により、エンジンからの動力により、図4の矢印W方向に回転する。扱室66に挿入された穀粒の付いた穀稈は、移動するフィードチェン14により図4の矢印A方向に移送されながら、矢印W方向に回転する扱胴69の扱歯69aと扱網74との相互作用により脱穀される。穀稈から分離された被処理物(穀粒や藁屑)は扱網74を通過して、揺動棚51で受け止められる。
【0034】
揺動棚51は、扱室66の扱網74の下方に配置した移送棚52とその後方に配置した上方の第1チャフシーブ53、第2チャフシーブ54とその下方の選別網63と最後端部に配置したストローラック62などから構成されている。
【0035】
第1チャフシーブ53と第2チャフシーブ54は、揺動しながら各シーブ間から被処理物を漏下させ、唐箕79からの送風により風力選別する点で共通しているが、被処理物の搬送方向前方側の第1チャフシーブ53の方が後方側にある第2チャフシーブ54に比べて各シーブの大きさが小さく、各シーブ間の距離が多少狭い構成である。被処理物の搬送方向前方側では、被処理物中における単粒の含有率が高く、藁屑の漏下を抑えながら単粒だけを漏下させ、藁屑をより後方へ移送するために、このような構成としている。
【0036】
また、第1チャフシーブ53の上方に、揺動棚51上の被処理物を拡散させる拡散ガイド88を、被処理物の搬送方向に向かって拡散ガイド88の前端が前記移送棚52の上方に位置するように設けている。
【0037】
そして移送棚52には複数個のラック状の選別板52aを備えており、移送棚52は第1チャフシーブ53の前方に配置されている。移送棚52は扱胴69の下方に配置して二番処理物を受け止め得る構成になっている。
【0038】
扱網74(図3)の前方の領域で漏下する脱穀初期に脱粒した穀粒は単粒であり夾雑物も含んでいないので第1チャフシーブ53や第2チャフシーブ54上で粗選別する必要が無く、直接選別網63で後述する唐箕79からの送風により風選することができ、これらチャフシーブ53、54の負荷を軽くし、能率的な脱穀が可能となる。
【0039】
また、揺動棚51は図示しない揺動棚駆動機構の作動により上下前後方向に揺動するので、被処理物は矢印D方向(図3)に移動しながら、揺動棚51上に漏下した比重の重い穀粒は選別網63を矢印E方向に通過し、一番棚板64で集積され、一番螺旋65から一番揚穀筒73を経てグレンタンク30へ搬送される。グレンタンク30に貯留された穀粒は、縦オーガ18と横オーガ19を経由してコンバイン1の外部へ搬送される。
【0040】
揺動棚51の上の被処理物のうち軽量のものは、揺動棚51の揺動作用と唐箕79のファン79aによる送風に吹き飛ばされて揺動棚51から第1チャフシーブ53と第2チャフシーブ54に向けて矢印D方向に移動し、ストローラック62の上で大きさの小さい二番穀粒は矢印G方向に漏下して二番棚板85上に集められ、二番螺旋86で二番揚穀筒(図示せず)へ搬送される。
【0041】
二番穀粒(二番物ということがある)は、正常な穀粒、枝梗粒、藁屑および藁屑の中に正常な穀粒が刺さっている刺さり粒などの混合物であり、二番揚穀筒の中を二番揚穀筒螺旋(図示せず)により揚送されて、二番処理室入口から二番処理室67の上方へ放出される。
【0042】
二番処理室67に軸架する二番処理胴70はエンジンからの動力を伝動する駆動機構により、図4の矢印J方向に回転する。二番穀粒は二番処理胴70に植設してある多数の処理歯70aに衝突しながら矢印I方向(図3、図4)に進行する間に二番穀粒の分離と枝梗粒の枝梗の除去を行い、被処理物の一部は二番処理胴70の下方に設けられた二番処理網75(図6)を通り抜けて選別室50に漏下し、被処理物の大部分は移送棚52から第1チャフシーブ53と第2チャフシーブ54方向に送られ、穀粒は第1チャフシーブ53と第2チャフシーブ54と選別網63を通り、一番螺旋65に集められる。
【0043】
このように二番物を移送棚52上に回収して第1チャフシーブ53、第2チャフシーブ54による再処理をすることにより、穀粒と藁屑との分離が良好になる。
扱室66を図4の矢印A方向に進行し、扱室66の終端に到達した被処理物の中の脱穀された穀稈で長尺のままのものは、図4に示す矢印A1方向に搬送され、排藁処理室82に投入される。
【0044】
また、扱室66の扱胴69による被処理物搬送方向終端部側に到達した被処理物の中で、藁屑など短尺のものは、扱室66の扱胴69による被処理物の搬送方向終端部と排塵処理室68の排塵処理胴71による被処理物の搬送方向始端部とを連通する連通口Aにある排塵処理室入口68aから矢印A2(図4)方向に投入されて、扱室66からの取り込みを良好にする螺旋71bの作用により排塵処理室68に入り、排塵処理室68では回転する排塵処理胴71の処理歯71aにより矢印K方向(図3)に搬送されながら処理される。
【0045】
なお、排塵処理胴71の上手側に螺旋71bが設けられ、排塵処理胴71の下手側に処理歯71aが設けられている。排塵処理胴71の扱室66側には格子状の排塵処理胴枠72(図7)が排塵処理胴71の下側及び扱室66側の外周に沿って設けられ、排塵処理室68の濾過体を構成している。
【0046】
前記排塵処理胴枠72の後端72a(図3)は、排塵処理室68の後端68b(図3)よりも所定距離だけ前方に配置され、この排塵処理胴枠72の後端72aと排塵処理室68の後端68bとの間に、排塵処理室68の後端部に達した被処理物を脱穀装置15の外部へ排出する第1排塵口102を、揺動棚51上に向かう斜め下方向および後方に向けて開口して設けている。
【0047】
排塵処理室68に入った少量の穀粒を含む藁屑を主体とする被処理物の中の漏下物(穀粒)は受け網76(図3)から揺動棚51上に漏下し、揺動棚51に設けられたストローラック62に誘導されて二番棚板85から二番揚穀筒を経由して二番処理室67に送られる。なお、同軸上にある二番処理胴70と排塵処理胴71の駆動は、図示しないがエンジンからの駆動力がプーリを介して伝動して行われる。
【0048】
図3に示すように、脱穀装置15の後部に被処理物を吸引するための吸引ファン91を設け、排塵処理室68を含む脱穀装置15内で発生する排塵のうち、比重の軽い藁屑、枝梗および塵埃を含む空気を吸引ファン91の回転による吸引風で吸引し、第3排塵口92から矢印L方向へ吹き出して、コンバイン1の外部へ放出する。
【0049】
一方、吸引ファン91の回転による送風で吸引されない被処理物は揺動棚51の終端部であるストローラック62の後端に設けられ、脱穀装置15の後壁15aに形成された第2排塵口103からコンバイン1の外部に排出される。
【0050】
揺動棚51上を後方へ移送されてきた藁屑でチャフシーブ53,54やストローラック62の目合いから濾過しないものは、揺動棚51の揺動やストローラック62の移送作用によって第2排塵口103から脱穀装置15の外部に排出されるが、この藁屑中には穀粒がわずかに含まれることがあり、このように藁屑とともにコンバイン1の外部に排出される穀粒を三番穀粒と言い、三番穀粒が脱穀装置15の外部に排出されることを三番ロス(三番損失)、三番穀粒の回収ロスなどと言う。
【0051】
また、排塵処理室68から揺動棚51の終端部に矢印M(図3)のように落ちた排塵(排塵物)のうち二番穀粒、三番穀粒など小径で比重の重いものは、揺動棚51の終端部のストローラック62あるいは第2チャフシーブ54を矢印G方向へ通過して二番棚板85に漏下し、再び二番処理室67において処理される。
【0052】
本実施例では扱室66から排塵処理室68への連通口Aの後方に延長した扱胴69の延長部分(四番処理胴)に対応する扱室部分を四番処理室(刺さり粒回収部)21とし、刺さり粒落とし部材100を扱胴69の延長部に回転方向(図4,図8の矢印W方向)に対して鋭角θとなるように斜めに傾斜して設けて、刺さり粒回収機能を持たせた。図8に刺さり粒落とし部材100を有する扱胴69の展開図を示す。また、図5に示すように刺さり粒落とし部材100は先端につれて細くした中空のワイヤーツースとしている。
【0053】
このように刺さり粒落とし部材100を扱胴69の延長部表面に扱胴69の回転方向(矢印W方向)に対して鋭角θとなるように傾斜させて配置した。また、図8から明らかなように、刺さり粒落とし部材100は扱胴69の延長部表面に扱胴69の回転方向(矢印W方向)に間欠的に螺旋状に、かつ排塵処理胴連通口Aにある扱歯69aよりも粗に設けているので、扱胴69の回転により、搬送穀稈を大きく開き、刺さり粒落とし部材100が入り込むようになり、搬送穀稈の穂先部分の排出が良好に行え、排藁搬送部への穀稈の引継ぎが良く、搬送姿勢が良好となり、また、脱粒した穀粒の回収が良好に行える。また、扱室66内の藁塵や穀粒の処理物の排出も良好となり、扱室66内の負荷低減が良好となる。
【0054】
なお、刺さり粒落とし部材100は先端側ほど細くなっている中空のワイヤーツースとしているので、刺さり粒落とし部材100が搬送稈に入り込みやすくなり、傾斜して配置することと合わせて、搬送稈の穂先部分を傷つけることなく搬送稈を割るように作用し、良好に刺さり粒を取り除き、藁塵の発生は抑制でき、刺さり粒除去性能が安定する。
【0055】
図5に示すように、脱穀装置15の後板98の下方を開放した構成において、四番処理室21に対向する位置にある後板98の穂先側下部に長藁や雑草の引っ掛かりを防止する矩形状のスクレーパ体99を取り付けた。スクレーパ体99を取り付ける部位は下方まで延長した後板98の前記延長した部分98aに設けている。
【0056】
こうして、刺さり粒落とし部材100により扱胴69の回転に沿って持ち廻る長藁を浮かせてスクレーパ体99により掻き取ることができ、四番穀粒の回収効果が向上した。
四番処理室21の底部には、図13と図14に示す四番選別網77を設けている。この四番選別網77は、四角孔の四番漏下孔77Sを形成した円弧状四番内網77aと円弧状四番外網77bを重ねると共に円弧状四番外網77bを周方向へスライド可能に支持している。そして、円弧状四番外網77bの片側をスプリング41で引きその反対側を四番モータで引くワイヤ42を連結して、扱網74と同様に四番漏下孔77Sの選別目合いを変更可能にしている。
【0057】
なお、前記の実施例では、扱網74と四番網77を別々に構成しているが、円弧状内網74aと円弧状四番内網77aを一体とし、円弧状外網74bと円弧状四番外網77bを一体とすることで、円弧状内網74aのスライド機構で扱網74と四番網77の選別目合いを同時に変更するようにしても良い。
【0058】
図15から図21には、四番処理室21の底部に設ける四番選別網77に代えてガイド杆43を設ける構成の実施例を示している。
図15ではガイド杆43aを後方へ直線状に伸ばした構成を示し、図16ではガイド杆43bを後方で扱胴69の回転方向へ傾けて伸ばした構成を示し、図17ではガイド杆43cを前記ガイド杆43bの後端を横に伸ばした構成を示し、図18ではガイド杆43dを前記ガイド杆43aの二本を一体にして後方へ直線状に伸ばした構成を示し、図19ではガイド杆43eを前記ガイド杆43bの二本を一体にして斜め後方へ直線状に伸ばした構成を示し、図20では前記ガイド杆43aの下に長孔44Sを設けた選別板44を設けた構成を示し、図21では前記ガイド杆43bの下に長孔44Sを設けた選別板44を設けた構成を示している。長孔44Sの長手方向は扱胴69の回転方向へ傾けている。
【0059】
これらの実施例は、全て刺さり粒を第2チャフシーブ54へ落下し易くする構成である。
扱室66を排塵処理胴連通口Aより後方に延長した四番処理室21に位置する挟扼杆16の部分(図5に示す)を、例えば図6,図7に示す挟扼杆16のフィードチェンと弾性接触している断面「コ」字状の内側(排塵処理胴側)を切上げて、切欠部16aとした構成(図4の切欠部16aも参照)にしている。
【0060】
このように、挟扼杆16の内側を大きく切上げたことで、排藁株元チェン80aを挟扼杆16の終端まで接近して設けることができ、扱胴67の脱粒作用が穀稈株元にまで及ぶので、搬送穀稈の引継ぎ性能がより向上し、また、扱室66から搬送されてくる穀稈の引き出しがスムーズになり、その搬送姿勢の乱れがなくなる。また、扱室66の終端では大半の穀稈の脱粒が終わっており、穀稈は扱室66内に引き抜かれ難い。
【0061】
そのため、搬送されてくる穀稈からの四番物の除去(回収)が効率よく行え、四番物のロスが低減する。
前記扱網74の漏下孔74Sの選別目合いと四番網77の漏下孔74Sの選別目合いは、次の検出信号によって変更制御する。
【0062】
移送棚52の選別板52a上に扱網74から落下する二番処理物の層厚みを検出する層厚センサを設け、扱網74の漏下孔74Sの選別目合いと四番網77の漏下孔74Sの選別目合いを共に、二番処理物の層厚が厚い場合には小さくし、薄い場合には大きくする。
【0063】
また、走行装置3に走行速度を検出する車速センサを設け、扱網74の漏下孔74Sの選別目合いと四番網77の漏下孔74Sの選別目合いを共に、走行速度が速い場合には大きくし、遅い場合には小さくする。
【0064】
また、フィードチェン14に対する挟扼杆16の移動量で搬送する穀稈の量を検出する穀稈量検出センサを設け、扱網74の漏下孔74Sの選別目合いと四番網77の漏下孔74Sの選別目合いを共に、穀稈の量が多い場合には小さくし、少ない場合には大きくする。
【0065】
また、刈取装置6に刈取穀稈の有無を検出する穀稈センサを設け、穀稈が無いことを検出すると、扱網74の漏下孔74Sの選別目合いと四番網77の漏下孔74Sの選別目合いを共に小さくする。
【符号の説明】
【0066】
3 走行装置
14 フィードチェン
15 脱穀装置
16 挟扼杆
21 四番処理室
52 移送棚
52a 選別板
66 扱室
74 扱網
74a 円弧状内網
74b 円弧状外網
74S 漏下孔
77 四番網
77a 円弧状四番内網
77b 円弧状四番外網
77S 四番漏下孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(66)の後部に、脱穀後の排稈にささり込んだ穀粒を扱胴(69)後端部の扱歯(69a)によって脱落させる四番処理室(21)を設けたコンバインの脱穀装置(15)において、扱室(66)の下部に設ける扱網(74)を、多数の漏下孔(74S)を形成した円弧状内網(74a)と円弧状外網(74b)をそれぞれの漏下孔(74S)が重なり合いうる状態で重ね合わせ、該円弧状内網(74a)と円弧状外網(74b)を相対的に周方向にスライドさせることで、該円弧状内網(74a)の漏下孔(74S)と円弧状外網(74b)の漏下孔(74S)が連通することで形成される漏下面積を変更する構成とし、四番処理室(21)の下部に設ける四番網(77)を、多数の四番漏下孔(77S)を形成した円弧状四番内網(77a)と円弧状四番外網(77b)をそれぞれの四番漏下孔(77S)が重なり合いうる状態で重ね合わせ、該円弧状四番内網(77a)と円弧状四番外網(77b)を相対的に周方向にスライドさせることで、円弧状四番内網(77a)の四番漏下孔(77S)と円弧状四番外網(77b)の四番漏下孔(77S)が連通することで形成される漏下面積を変更する構成としたことを特徴とするコンバインの脱穀装置。
【請求項2】
搬送穀稈や脱穀選別物等の収穫物の量を検出する収穫量検出手段を設け、前記収穫量検出手段で検出された収穫量が多い場合には前記扱網(74)の漏下面積と四番網(77)の漏下面積を小さくし、前記収穫量検出手段で検出された収穫量が少ない場合には前記扱網(74)の漏下面積と四番網(77)の漏下面積を大きくする漏下面積制御手段を設けた請求項1に記載のコンバインの脱穀装置。
【請求項3】
前記収穫量検出手段を、機体の走行速度を検出する速度センサとした請求項2に記載のコンバインの脱穀装置。
【請求項4】
前記収穫量検出手段を、フィードチェン(14)に対向する挟扼杆(16)の移動量を検出する穀稈量検出センサとした請求項2に記載のコンバインの脱穀装置。
【請求項5】
前記収穫量検出手段を、扱室(66)下方に配置される移送棚(52)の選別板(52a)上に設けられ、扱網(74)から落下する脱穀処理物の層の厚みを検出する層厚センサとした請求項2に記載のコンバインの脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−94102(P2013−94102A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239154(P2011−239154)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】