説明

コンバインの藁収集装置

【課題】稲藁収集作業性を向上できるものでありながら、稲藁を低コストで収集できるようにしたコンバインを提供するものである。
【解決手段】圃場の未刈り穀稈を刈取る刈取装置3と、刈取装置3から供給された刈取り穀稈を脱穀する脱穀装置5と、脱穀装置5から排出された排藁を適当長さに切断する排藁カッタ35と、排藁カッタ35から排出された排藁を収集する排藁収集部83を備え、穀粒を収集しながら、排藁カッタ35によって細断された排藁を収集するように構成してなるコンバインの藁収集装置において、排藁収集部83は、排藁カッタ35から放出された排藁を搬出する排藁搬送コンベヤ機構86と、排藁搬送コンベヤ機構86の排藁送り終端側に配置する排藁収納体87を有し、排藁搬送コンベヤ機構86によって搬送される排藁が、排藁収納体87に送込まれるまでに、緩圧縮されるように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取装置によって圃場の未刈り穀稈を刈取り、刈取った穀稈を脱穀装置によって脱穀するコンバインに係り、より詳しくは、穀粒タンクに穀粒を収集しながら、排藁カッタによって細断した排藁を収集するように構成したコンバインの藁収集装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインは、エンジンを搭載した走行機体と、前記走行機体を支持する左右の走行部としての走行クローラ等と、操縦ハンドル及び運転座席を有する運転部と、圃場の未刈り穀稈を刈取る刈取装置と、刈取った穀稈を脱穀する脱穀装置とを備え、圃場の未刈り穀稈を連続的に刈取って脱穀し、穀粒を収集するように構成している(例えば、特許文献1又は特許文献2参照)。
【0003】
現在、エネルギー問題、環境問題の解決策の一環としてバイオマス燃料の実用化が図られている。バイオマス燃料であるソフトセルロースとして稲藁の利用が実用化に向けて研究されている。例えば、穀粒が収集された後の稲藁を利用できるから、バイオマス燃料に稲藁を利用しても、食料問題とのバッテングも避けることができる。しかしながら、穀粒を収集した後の稲藁(コンバインから圃場の刈り跡に放出された排藁)を収集する場合、一般的に、トラクタのフロントグリッパ−又はフォーク型作業機で稲藁を収集し、トラックに積載して運搬する方法や、自走式のロールベーラで稲藁を収集してベールを形成する方法があった。それらの方法では、穀粒を収集する穀粒収穫作業とは別に、稲藁を収集する作業が必要である。稲藁の収集及び運搬作業性の向上(稲藁収集作業の省力化)が望まれている。そこで、従来、稲藁の収集及び運搬作業性を向上できる技術が開発された。例えば、コンバインに搭載した排藁カッタの排藁細断片排出口に、排藁細断片を送出するブロワーを介して、排藁細断片を収納するタンクを連通させ、穀粒を収集しながらタンクに排藁を収集する技術がある(特許文献1参照)。また、排藁によってベールを形成するロールベーラをコンバインに搭載し、穀粒を収集しながらベールを形成する技術(特許文献2参照)も公知である。
【特許文献1】実開昭50−45236号公報
【特許文献2】特許第3851159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術は、特許文献1に示されるように、タンクに収納された排藁細断片は圃場の適当箇所に放出された場合、収穫作業後、圃場の適当箇所に集積された排藁細断片を搬送袋等の搬送用容器に詰め込んだり、自走式のロールベーラによって排藁細断片を収集する必要があり、穀粒を収集しながら排藁を収集できない等の作業能率上の問題がある。そこで、穀粒収穫作業と稲藁収集作業とを同時に実行できるコンバインが提供された。例えば、特許文献2に示されるように、コンバイン機体にロールベーラを搭載した場合、穀粒を収集しながら排藁も収集できるが、コンバイン機体が大型で高価になり、低コストで排藁を収集できない等のコスト上の問題がある。
【0005】
本発明の目的は、稲藁収集作業性を向上できるものでありながら、稲藁を低コストで収集できるようにしたコンバインを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明のコンバインの藁収集装置は、圃場の未刈り穀稈を刈取る刈取装置と、前記刈取装置から供給された刈取り穀稈を脱穀する脱穀装置と、前記脱穀装置から排出された排藁を適当長さに切断する排藁カッタと、前記排藁カッタから排出された排藁を収集する排藁収集部を備え、穀粒を収集しながら、前記排藁カッタによって細断された排藁を収集するように構成してなるコンバインの藁収集装置において、前記排藁収集部は、前記排藁カッタから放出された排藁を搬出する排藁搬送コンベヤ機構と、前記排藁搬送コンベヤ機構の排藁送り終端側に配置する排藁収納体を有し、前記排藁搬送コンベヤ機構によって搬送される排藁が、前記排藁収納体に送込まれるまでに、緩圧縮されるように構成したものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインの藁収集装置において、前記排藁搬送コンベヤ機構は、前記排藁カッタの下方に配置する排藁搬送オーガと、排藁搬送オーガの送り終端側に連結させる可撓性コンベヤとを有し、前記可撓性コンベヤを内設させる排藁搬送路が、入口側又は出口側よりもその中間が狭くなるように形成したものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインの藁収集装置において、前記排藁搬送コンベヤ機構の出口側に、排藁の放出方向を変更可能な放出筒を連結したものである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインの藁収集装置において、前記排藁搬送コンベヤ機構の出口側に、開閉シャッタを開閉可能に設けたものである。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインの藁収集装置において、前記排藁カッタによって細断された排藁を受止める排藁タンクが、前記排藁カッタの下方に配置され、前記排藁搬送コンベヤ機構の排藁送り始端側を前記排藁タンク内に突入させたものである。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインの藁収集装置において、前記排藁カッタによって細断された排藁を受止める排藁タンクを備え、前記排藁タンク内に所定以上溜まった排藁が排藁タンクから排出されるオーバーフロー部を、排藁タンクの側面に設けたものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、圃場の未刈り穀稈を刈取る刈取装置と、前記刈取装置から供給された刈取り穀稈を脱穀する脱穀装置と、前記脱穀装置から排出された排藁を適当長さに切断する排藁カッタと、前記排藁カッタから排出された排藁を収集する排藁収集部を備え、穀粒を収集しながら、前記排藁カッタによって細断された排藁を収集するように構成してなるコンバインの藁収集装置において、前記排藁収集部は、前記排藁カッタから放出された排藁を搬出する排藁搬送コンベヤ機構と、前記排藁搬送コンベヤ機構の排藁送り終端側に配置する排藁収納体を有し、前記排藁搬送コンベヤ機構によって搬送される排藁が、前記排藁収納体に送込まれるまでに、緩圧縮されるように構成したものであるから、穀粒を収集する穀粒収穫作業と、稲藁を収集する稲藁収集作業とを同時に実行でき、稲藁収集作業性を向上できる。またコンバイン機体及び稲藁収集装置を簡単に構成でき、稲藁を低コストで収集できる。
【0013】
したがって、穀粒が収集された後の稲藁を利用できるから、バイオマス燃料に稲藁を利用しても、食料問題とのバッテングも避けることができる。また、穀粒を収集した後の稲藁を収集するのに、トラクタのフロントグリッパ−又はフォーク型作業機で稲藁を収集し、トラックに積載して運搬する必要がなく、自走式のロールベーラで稲藁を収集してベールを形成する必要もない。しかも、ブロワーを介し排藁細断片を収納する従来の一時貯留用のタンク、又は排藁によってベールを形成するロールベーラ等をコンバインに搭載しなくてもよい。その結果、例えば、前記排藁カッタにて細断した稲藁をコンバイン機体後部で受けて、オーガにて緩く圧縮して袋詰する簡単な稲藁収集装置によって、稲藁を低コストに収集できる。籾の収穫と稲藁の収穫とを同時に実行できる完全収穫・収集コンバインを提供できるものである。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、前記排藁搬送コンベヤ機構は、前記排藁カッタの下方に配置する排藁搬送オーガと、排藁搬送オーガの送り終端側に連結させる可撓性コンベヤとを有し、前記可撓性コンベヤを内設させる排藁搬送路が、入口側又は出口側よりもその中間が狭くなるように形成したものであるから、前記排藁カッタから前記排藁収納体に移動するまでに、前記排藁カッタによって細断された排藁の体積を縮少でき、前記排藁収納体に排藁を収納する稲藁収集作業の能率を簡単に向上できるものである。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、前記排藁搬送コンベヤ機構の出口側に、排藁の放出方向を変更可能な放出筒を連結したものであるから、前記排藁収納体内に排藁が偏って送込まれるのを防止でき、前記排藁収納体内に排藁を効率よく充填することができるものである。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、前記排藁搬送コンベヤ機構の出口側に、開閉シャッタを開閉可能に設けたものであるから、前記排藁収納体を交換するときに前記排藁搬送コンベヤ機構の出口側から排藁が飛散するのを防止でき、前記排藁収納体の交換作業性を向上できるものである。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、前記排藁カッタによって細断された排藁を受止める排藁タンクが、前記排藁カッタの下方に配置され、前記排藁搬送コンベヤ機構の排藁送り始端側を前記排藁タンク内に突入させたものであるから、コンバイン機体の後部を利用して、前記排藁タンクの容量を確保しながら、前記排藁搬送コンベヤ機構及び前記排藁タンクを簡単に配置でき、前記排藁カッタによって細断された排藁を収集する構造を機能的に構成できるものである。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、前記排藁カッタによって細断された排藁を受止める排藁タンクを備え、前記排藁タンク内に所定以上溜まった排藁が排藁タンクから排出されるオーバーフロー部を、排藁タンクの側面に設けたものであるから、コンバイン機体の後部を利用して、前記排藁タンクの容量を確保しながら、前記排藁タンクを簡単に配置できるものでありながら、前記排藁タンク内の排藁の余剰分を、前記オーバーフロー部から前記排藁タンク外部に排出でき、前記排藁タンク内で排藁が異常に圧縮されて詰るのを未然に防止でき、稲藁収集作業性を向上できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。図1はコンバインの左側面図、図2はコンバインの右側面図、図3はコンバインの平面図、図4はコンバインの脱穀装置の左側面断面図、図5は脱穀装置の背面、図6は図5の拡大背面図である。図1乃至図3を参照しながら、コンバインの全体構造について説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0020】
図1乃至図3に示されるように、本実施形態のコンバインは、左右一対の走行クローラ2(走行部)にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、穀稈を刈取りながら取込む6条刈り用の刈取装置3が、単動式の昇降用油圧シリンダ4によって刈取回動支点軸4a回りに昇降調節可能に装着されている。走行機体1には、フィードチェン6を有する脱穀装置5と、脱穀後の穀粒を貯留する穀粒タンク7とが横並び状に搭載されている。脱穀装置5が走行機体1の前進方向に向かって左側に配置されている(図3参照)。また、穀粒タンク7が走行機体1の前進方向に向かって右側に配置されている。穀粒タンク7の下方(走行機体1の上面側)に籾受け台8が設けられ、穀粒タンク7の内部の穀粒が、穀粒タンク7の下面側の籾排出口9から籾受け台8上の籾袋(図示省略)に排出されるように構成されている。刈取装置3の右側方で、穀粒タンク7の前側方には、運転部10が設けられている。
【0021】
運転部10には、オペレータが搭乗するステップ11と、運転座席12を配置している。運転座席12の前方のハンドルコラム13に、操縦用の左右のサイドクラッチレバー14,15が配置されている。運転座席12の左側方のレバーコラム16に、走行変速レバー17と、脱穀クラッチ及び刈取クラッチ操作用の作業クラッチレバー18とが、配置されている。運転座席12の下方の走行機体1には、動力源としてのエンジン20が配置されている。
【0022】
図1及び図2に示されるように、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム21を配置している。トラックフレーム21には、走行クローラ2にエンジン20の動力を伝える駆動スプロケット22と、走行クローラ2のテンションを維持するテンションローラ23と、走行クローラ2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ24とを設けている。駆動スプロケット22によって走行クローラ2の前側を支持し、テンションローラ23によって走行クローラ2の後側を支持し、トラックローラ24によって走行クローラ2の接地側を支持する。
【0023】
図1乃至図3に示されるように、刈取装置3の刈取回動支点軸4aに連結した刈取フレーム51の下方には、圃場の未刈り穀稈の株元を切断するバリカン式の刈刃装置52が設けられている。刈取フレーム51の前方には、圃場の未刈り穀稈を引起す4条分の穀稈引起装置53が配置されている。穀稈引起装置53とフィードチェン6の前端部(送り始端側)との間には、刈刃装置52によって刈取られた刈取り穀稈を搬送する穀稈搬送装置54が配置されている。なお、穀稈引起装置53の下部前方には、圃場の未刈り穀稈を分草する4条分の分草体55が突設されている。エンジン20にて走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取装置3を駆動して圃場の未刈り穀稈を連続的に刈取る。
【0024】
図1及び図2、図4に示されるように、脱穀装置5には、穀稈脱穀用の扱胴26と、扱胴26の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別機構としての揺動選別盤27と、揺動選別盤27に選別風を供給する唐箕ファン28と、扱胴26の後部から取出される脱穀排出物を再処理する処理胴29と、揺動選別盤27の後部の排塵を機外に排出する排塵ファン30とを備えている。なお、扱胴26を回転させる扱胴軸26aは、フィードチェン6による穀稈の搬送方向(換言すると走行機体1の進行方向)に沿って延びている。刈取装置3から穀稈搬送装置54によって搬送された穀稈の株元側はフィードチェン6に受け継がれて挟持搬送される。そして、この穀稈の穂先側が脱穀装置5の扱室26b内に搬入されて扱胴26にて脱穀されることになる。
【0025】
図4に示されるように、フィードチェン6の後端側(送り終端側)には、排藁チェン34が配置されている。フィードチェン6の後端側から排藁チェン34に受け継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後方側に設けた排藁カッタ35にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後部に配置した排藁タンク85内に排出される。
【0026】
図4に示されるように、揺動選別盤27の下方側には、揺動選別盤27にて選別された穀粒(一番物)を取出す一番コンベヤ31及び一番樋31aと、枝梗付き穀粒等の二番物を取出す二番コンベヤ32及び二番樋32aとが設けられている。本実施形態の両コンベヤ31,32は、走行機体1の進行方向前側から一番コンベヤ31、二番コンベヤ32の順で、側面視において走行クローラ2の後部上方の走行機体1の上面側に横設されている。
【0027】
図4、図5に示されるように、揺動選別盤27は、扱胴26の下方に張設された受網26cから漏下した脱穀物が、揺動選別盤27のフィードパン271及びチャフシーブ272によって搖動選別(比重選別)されるように構成している。揺動選別盤27のグレンシーブ273から落下した穀粒(一番物)は、その穀粒中の粉塵が唐箕ファン28からの選別風によって除去され、一番コンベヤ31に落下する。一番コンベヤ31のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁(実施形態では右側壁)から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる一番揚穀筒33が連通接続されている。一番コンベヤ31から取出された穀粒は、一番揚穀筒33に内設された一番揚穀コンベヤ(図示省略)によって穀粒タンク7に搬入され、穀粒タンク7に収集される。
【0028】
図4に示されるように、チャフシーブ272の送り下流側(後方側)にストローラック274が配置されている。揺動選別盤27は、搖動選別(比重選別)によって、チャフシーブ272又はストローラック274から枝梗付き穀粒等の二番物(穀粒と藁屑等が混在した再選別用の還元再処理物)が二番コンベヤ32及び二番樋32aに落下するように構成している。二番コンベヤ32によって取出された二番物は、二番還元揚穀筒61を介してフィードパン271の上面側に戻されて再選別される。
【0029】
なお、チャフシーブ272及びストローラック274の上面側の比較的軽い藁屑は、排塵ファン30の前側の吸引口30aに吸込まれて、排塵ファン30の後側の排出口30bから機外に排出されることになる。また、チャフシーブ272の送り下流側(後方側)からストローラック274の上面側に移動した比較的重い藁屑は、揺動選別盤27の後端側の三番口36から機外に排出されることになる。
【0030】
図4に示されるように、揺動選別盤27は、脱穀装置5を形成した脱穀機筐60に、揺動駆動軸56と、前側ガイドレール57及び後側ガイドレール58とを介して、前方斜め下方乃至後方斜め上方に移動可能に配置されている。エンジン20からの動力によって揺動駆動軸56を介して揺動選別盤27が作動し、揺動選別盤27が前方斜め下方乃至後方斜め上方に往復移動することになる。その結果、扱胴26の下方に張設された受網26cから漏下した脱粒物が、フィードパン271及びチャフシーブ272によって搖動選別(比重選別)されるように構成している。
【0031】
図4に示されるように、唐箕ファン28の唐箕ファンケース28aには、グレンシーブ273の下面側と一番コンベヤ31及び一番樋31aの上方とに向けて唐箕ファン28の選別風を供給する主選別風路41と、フィードパン271の下面側からチャフシーブ272の下面側に向けて唐箕ファン28の選別風を供給するプレ風路42とを形成している。上述の主選別風路41は、唐箕ファン28からの選別風が、グレンシーブ273の前方の下方から、グレンシーブ273の後方の上方に向けて移動するように形成されている。
【0032】
また、上述の主選別風路41は、唐箕ファン28からの選別風が、一番コンベヤ31及び一番樋31aの上方で前方から後方に向けて移動するように形成されている。即ち、グレンシーブ273から一番コンベヤ31及び一番樋31aに落下する穀粒及び塵が、唐箕ファン28からの選別風によって風選される。その結果、塵が除去された後の穀粒だけが、一番コンベヤ31及び一番樋31aに落下して、一番コンベヤ31によって穀粒タンク7に取出されるように構成している。
【0033】
上述したプレ風路42は、唐箕ファン28からの選別風が、チャフシーブ272の前方下方から後方上方に向けて移動するように形成されている。即ち、扱胴26から受網26cを介してフィードパン271の上面に落下した脱粒物が、フィードパン271の後端側からチャフシーブ272の前端側に落下するときに、唐箕ファン28からの選別風によって風選される。その結果、フィードパン271からチャフシーブ272の上面に移動した脱粒物のうち、チャフシーブ272の上面に近い脱粒物の下層側の藁屑(軽量物)が、選別風によって上層側に移動されて、チャフシーブ272から落下する藁屑量が低減することになる。また、チャフシーブ272の比重選別作用と、唐箕ファン28からの選別風の風選とによって、脱粒物の上層側の穀粒(重量物)が下層側に移動して、チャフシーブ272から早期に漏下することになる。チャフシーブ272の比重選別作用が、唐箕ファン28からの選別風によって助長されて、その選別処理能力(選別精度)が向上するように構成している。
【0034】
なお、主選別風路41と、プレ風路42とから供給された唐箕ファン28からの選別風は、上述した排塵ファン30の排塵吸引口30aに吸い込まれて排出口30bから排出されたり、三番口36から脱穀機筐60の後方に移動するから、扱胴26からの脱粒物中の藁屑及び粉塵等が、脱穀機筐60の後部から圃場に向けて排出される。
【0035】
図4に示されるように、上述した処理胴29は、処理胴29を回転させる処理胴軸29aを介して、処理胴ケース45内に配置されている。処理胴軸29aは、上述した扱胴軸26aと平行に(換言すると走行機体1の進行方向)延びている。脱穀機筐60の前面側に処理胴軸29aの前端側を延長して、扱胴軸26aの前端側と処理胴軸29aの前端側とに、伝動ベルト(図示省略)を介してエンジン20の動力を伝えて、扱胴26と処理胴29を常に連動して回動させるように構成している。
【0036】
脱穀機筐60の右側に処理胴ケース45を配置している。処理胴ケース45の前端側には、扱室26bの後端側の右側に形成した脱粒排塵口47を介して、扱室26bの後端側を連通している。扱胴26の脱粒作用によって発生した扱室26bの脱粒排塵物(穀粒と藁屑との混合物)が、扱胴26の後端側の扱歯の排出作用によって、扱室26bの後端側から、脱粒排塵口47を介して、処理胴ケース45内に移動するように構成している。
【0037】
扱室26bの後端側から処理胴室29bに移動した脱粒排塵物は、処理胴29によって処理(再脱粒)されるように構成している。前記脱粒排塵物中の穀粒は、処理胴ケース45内から下方のチャフシーブ272の上面側に落下して、一番コンベヤ31又は二番コンベヤ32によって取出される。前記脱粒排塵物中の藁屑等の塵埃は、処理胴ケース45の後端側の排塵口から下方のストローラック274の上面側に落下した後、三番口36から機外に排出される。
【0038】
図4に示されるように、二番コンベヤ32の送り終端側に連結する二番還元揚穀筒61と、二番還元揚穀筒61の送り終端側(上端側)に連結する二番還元前方移送筒としての二番還元搬送筒62とを有している。二番還元揚穀筒61には二番還元揚穀コンベヤ63が内設されている。二番還元搬送筒62には二番還元搬送コンベヤ64が内設されている。二番コンベヤ32のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁(実施形態では右側壁)から外向きに突出した送り終端部には、上下方向に延びる二番還元揚穀コンベヤ63の送り始端側(下端側)が連通接続されている。二番還元揚穀コンベヤ63の送り終端部(上端側)には、前後方向に延びる二番還元搬送コンベヤ64の送り始端側(後端側)が連通接続されている。
【0039】
図4に示されるように、二番還元揚穀筒61の上端側に二番還元搬送筒62の後端側が連結されている。脱穀機筐60の一側壁(右側壁)のうち上部側壁の外面に沿わせて二番還元搬送筒62が略水平に横設されている。一番揚穀筒33より後方で、二番コンベヤ32から上向きに二番還元揚穀筒61を延長し、一番揚穀筒33の中間に二番還元搬送筒62の中間を側面視において交叉させるように構成している。換言すると、二番還元揚穀筒61に対して揺動選別盤27の左右幅内に二番還元搬送筒62をオフセットさせて配置し、二番還元揚穀筒61の送り終端側に二番還元搬送筒62の送り始端側を連結するように構成している。
【0040】
図4に示されるように、一番還元筒33よりも前方に延長した二番還元搬送筒62の前端側には、揺動選別盤27に二番物を戻す二番放出体としての放出ケース80が配置されている。フィードパン271の上面の右側上方に放出ケース80が配置され、フィードパン271の上面の右側から左側方に向けて放出ケース80が開口されている。即ち、扱胴26の回転下手側(扱室26bの底部の右寄り)に配置された受網26cの下面側に向けて、放出ケース80が開設されている。放出ケース80からフィードパン271の上面側に向けて、放出ケース80内の二番物が放出される。
【0041】
なお、脱穀装置5を正面から見たときに時計方向に回転する扱胴26の下側で脱粒された脱粒物が、フィードパン271の上面の左側から右側方に向けて飛散するのに対して、放出ケース80から放出された二番物は、フィードパン271の上面の右側から左側方に向けて飛散するように構成されている。したがって、扱胴26からの脱粒物の飛散方向(フィードチェン6側から穀粒タンク7側に向けて飛散)と、放出口80aからの二番物の飛散方向(穀粒タンク7側からフィードチェン6側に向けて飛散)とが、フィードパン271の左右幅の中央付近で交叉する。即ち、フィードパン271の左右幅の中央付近で前記脱粒物と二番物とが衝突して、フィードパン271の右側寄り(扱胴26の回転下手側)に前記脱粒物が堆積するのを防止できる。その結果、フィードパン271からチャフシーブ272に移動する前記脱粒物及び二番物が、チャフシーブ272の左右幅方向に拡散して、チャフシーブ272における選別作業性を向上できる。
【0042】
上記の構成により、刈取装置3によって圃場の未刈り穀稈が刈取られ、刈取装置3から供給された刈取り穀稈が脱穀装置5によって脱穀された場合、脱穀装置5から落下した脱粒物が、揺動選別盤27によって選別される。揺動選別盤27によって選別された一番物としての穀粒が、一番コンベヤ31によって穀粒タンク7に収集される。また、揺動選別盤27によって選別された二番物としての穀粒と藁屑の混合物が二番樋32aに落下した場合、その二番物は、二番コンベヤ32から二番還元揚穀コンベヤ63に受継がれ、二番還元揚穀コンベヤ63から二番還元搬送コンベヤ64に受継がれ、二番還元搬送コンベヤ64から放出ケース80内に搬送される。
【0043】
二番還元搬送筒62の前端側から放出ケース80の内部に取込まれた二番物は、刺さり粒の脱粒及び藁屑の分離等の処理後、放出ケース80からフィードパン271の上面に排出され、揺動選別盤27によって再び選別される。したがって、二番物中の穀粒は、一番コンベヤ31から穀粒タンク7に搬入される。また、二番物中の藁屑は、チャフシーブ272の上面を経て、排塵ファン30又は三番口36から機外に排出される。
【0044】
また、二番コンベヤ32と、二番還元揚穀コンベヤ63と、二番還元搬送コンベヤ64とは、常に連動して回動するが、それぞれの回転数が異なる。二番コンベヤ32よりも二番還元揚穀コンベヤ63が高速で回転し、二番還元揚穀コンベヤ63よりも二番還元搬送コンベヤ64が高速で回転する。二番コンベヤ32の単位時間当たりの搬送量よりも二番還元揚穀コンベヤ63の単位時間当たりの搬送量を多くし、二番還元揚穀コンベヤ63の単位時間当たりの搬送量よりも二番還元搬送コンベヤ64の単位時間当たりの搬送量を多くし、二番還元揚穀コンベヤ63又は二番還元搬送コンベヤ64の搬送途中で二番物が詰るのを防止している。
【0045】
次に、図4乃至図6を参照して、本発明の実施形態の排藁収集構造を説明する。図4乃至図6に示す如く、走行機体1(脱穀装置5)の後部に排藁カッタ35及び排藁収集部83を備える。排藁カッタ35は、一対のカッタ軸35aと、円板状のディスク刃35bを有する。各カッタ軸35a上に複数のディスク刃35bが等間隔に配置されている。排藁チェン34によって搬送された排藁が、各ディスク刃35bによって所定長さに切断されるように構成している。なお、走行機体1の左右方向に、換言すると、排藁チェン34の下方でこれと交差する方向に、一対のカッタ軸35aを延長している。
【0046】
排藁収集部83は、上述した排藁タンク85と、排藁カッタ35から放出された排藁を搬出する排藁搬送コンベヤ機構86と、排藁搬送コンベヤ機構86の排藁送り終端側に配置する排藁収納体87を有する。排藁タンク85は、排藁カッタ35の左右両側方及び下方及び後方を囲む形状に形成されている。排藁カッタ35によって細断された排藁の全量が、排藁収集部83の排藁タンク85内に落下して収集されるように構成している。即ち、収穫作業中、穀粒タンク7に穀粒を収集しながら、排藁カッタ35によって細断された排藁が排藁収集部83に収集されるように構成している。なお、排塵ファン30の後側の排出口30bから機外に排出される藁屑は、排藁タンク85の底部の下面側に案内されて、排出口30bの後方下方の低い位置に移動する。
【0047】
図4、図6に示す如く、排藁搬送コンベヤ機構86は、排藁カッタ35の下方に配置する3本の排藁搬送オーガ88,89,90と、排藁搬送オーガ90の送り終端側に連結させる可撓性コンベヤとしてのバネコンベヤ91を有する。前側が高く後側が低くなるように傾斜させた排藁タンク85の底部の上面側に、前側から順に、上段排藁搬送オーガ88、中段排藁搬送オーガ89、下段排藁搬送オーガ90を配置する。カッタ軸35aの軸芯線と平行に、各排藁搬送オーガ88,89,90を延長させる。排藁タンク85の左側壁に各排藁搬送オーガ88,89,90の送り始端を位置させる。排藁タンク85の左右幅寸法と下段排藁搬送オーガ90の送り作用長さとを略等しく形成する。各排藁搬送オーガ88,89,90の排藁送り方向を排藁カッタ35の左右方向とし、排藁カッタ35の左側から右側に向けて、排藁タンク85底部の排藁を移動させるように構成している。
【0048】
図6に示す如く、下段排藁搬送オーガ90の送り作用長さよりも中段排藁搬送オーガ89の送り作用長さを短尺に形成し、中段排藁搬送オーガ89の送り作用長さよりも上段排藁搬送オーガ88の送り作用長さを短尺に形成している。上段排藁搬送オーガ88の送り終端の排藁が中段排藁搬送オーガ89の送り中間に移動し、中段排藁搬送オーガ89の送り終端の排藁が下段排藁搬送オーガ90の送り中間に移動するように構成している。したがって、上段排藁搬送オーガ88又は中段排藁搬送オーガ89の送り終端の排藁が排藁タンク85の右側壁に圧着されて詰るのを防止できる。
【0049】
図6に示す如く、下段排藁搬送オーガ90の送り始端側のオーガ径よりも、下段排藁搬送オーガ90の送り終端側のオーガ径を小さく形成する。下段排藁搬送オーガ90の送り終端側の排藁送り作用力よりも、下段排藁搬送オーガ90の送り始端側の排藁送り作用力を大きくしている。排藁タンク85底部の排藁を、排藁タンク85の左側から右側に向けて、下段排藁搬送オーガ90によって緩く圧縮しながら移動させるように構成している。
【0050】
図6に示す如く、排藁タンク85の右側壁に排藁出口92を開設する。円筒状の排藁ダクト93の一端側を排藁出口92に連通接続する。排藁ダクト93は、合成ゴム等の可撓性合成樹脂製のパイプによって形成する。排藁ダクト93に上述した鋼鉄製のバネコンベヤ91を回転自在に内挿する。下段排藁搬送オーガ90の送り終端側にバネコンベヤ91の送り始端側を連結する。下段排藁搬送オーガ90の回転力によってバネコンベヤ91を回転させるように構成している。なお、排藁ダクト93が合成樹脂製のため、鋼鉄製のバネコンベヤ91の摺動抵抗が、金属性ダクトよりも小さくなる。
【0051】
図6に示す如く、バネコンベヤ91を内設させる排藁ダクト93の中空部によって排藁搬送路94が形成される。排藁搬送路94は、バネコンベヤ91の送り始端側を臨ませた入口側、又はバネコンベヤ91の送り終端側を臨ませた出口側よりも、バネコンベヤ91の送り中間を臨ませた中間側が狭くなるように形成されている。即ち、排藁ダクト93の中空部は、入口側又は出口側よりもその中間が狭くなり、排藁ダクト93の中間で排藁が詰らない程度に緩く圧縮されるように形成している。バネコンベヤ91(排藁搬送コンベヤ機構86)によって搬送される排藁が、バネコンベヤ91の送り終端側の排藁収納体87に送込まれるまでに、排藁搬送路94の送り中間で搬送圧力によって緩く圧縮されるように構成している。
【0052】
上記の構成により、穀粒タンク7に穀粒を収集する穀粒収穫作業と、排藁収納体87に稲藁を収集する稲藁収集作業とを同時に実行でき、稲藁収集作業性を向上できる。また走行機体1(コンバイン機体)及び排藁収集部83(稲藁収集装置)を簡単に構成でき、稲藁を低コストで収集できる。さらに、排藁カッタ35から排藁収納体87に移動するまでに、排藁カッタ35によって細断された排藁の体積を縮少でき、排藁収納体87に排藁を収納する稲藁収集作業の能率を簡単に向上できる。したがって、穀粒が収集された後の稲藁を利用できるから、バイオマス燃料に稲藁を利用しても、食料問題とのバッティングも避けることができる。穀粒を収集した後の稲藁を収集するのに、トラクタのフロントグリッパ−又はフォーク型作業機で稲藁を収集し、トラックに積載して運搬する必要がない。また、自走式のロールベーラで稲藁を収集してベールを形成する必要もない。ブロワーを介し排藁細断片を収納する従来の一時貯留用のタンク、又は排藁によってベールを形成するロールベーラ等をコンバインに搭載しなくてもよい。その結果、例えば、排藁カッタ35にて細断した稲藁をコンバイン機体後部で受けて、上記オーガ88,89,90にて緩く圧縮して袋詰する簡単な稲藁収集装置(排藁収集部83)によって、稲藁を低コストに収集できる。籾の収穫と稲藁の収穫とを同時に実行できる完全収穫・収集コンバインを提供できる。
【0053】
図6に示す如く、バネコンベヤ91の送り終端側(排藁搬送コンベヤ機構86の出口側)の排藁ダクト93端部に、排藁の放出方向を変更可能な放出筒97を連結している。放出筒97は、電動モータ98によって放出方向を変更するように形成されている。したがって、排藁収納体87内に排藁が偏って送込まれるのを防止でき、排藁収納体87内に排藁を効率よく充填できる。なお、バネコンベヤ91の送り終端側(排藁ダクト93の排藁出口側端部)に排藁搬送圧力センサ111を設け、排藁ダクト93内に排藁が詰ったときに、排藁搬送圧力センサ111の検出結果に基づき、エンジン20を自動的に停止させ、且つオペレータに警報するように構成している。
【0054】
図6に示す如く、バネコンベヤ91の送り終端側(排藁搬送コンベヤ機構86の出口側)に、開閉シャッタ95を開閉可能に設けている。下向きに開口させた排藁ダクト93の出口側に開閉シャッタ95を開閉可能に設け、開閉レバー96の手動操作によって開閉シャッタ95を開閉させるように構成している。したがって、排藁収納体87を交換するときに、排藁ダクト93の出口側(排藁搬送コンベヤ機構86の出口側)から排藁が飛散するのを防止でき、排藁収納体87の交換作業性を向上できる。
【0055】
図6に示す如く、排藁カッタ35によって細断された排藁を受止める排藁タンク85が、排藁カッタ35の下方に配置され、上記の各排藁搬送オーガ88,89,90の排藁送り始端側(排藁搬送コンベヤ機構86の排藁送り始端側)を排藁タンク85内に突入させている。したがって、走行機体1又は脱穀装置5(コンバイン機体)の後部を利用して、排藁タンク85の容量を確保しながら、各排藁搬送オーガ88,89,90及び排藁タンク85を簡単に配置でき、排藁カッタによって細断された排藁を収集する構造を機能的に構成できる。
【0056】
図4、図6に示す如く、排藁タンク85内に所定以上溜まった排藁が排藁タンク85から排出されるオーバーフロー部としての放出口99を、排藁タンク85の側面(背面壁)に設けている。放出口99は、上段排藁搬送オーガ88の送り終端及び中段排藁搬送オーガ89の送り終端に対向した部位の排藁タンク85の背面壁に開設されている。放出口99が形成された排藁タンク85の背面壁の外面にドア100を開閉可能に設けている。ドア100によって放出口99を開閉可能に閉鎖する。排藁タンク85内に所定以上溜まった排藁の押し開き圧力によってドア100が開動され、放出口99が開放されて、排藁タンク85内の排藁が放出口99から外側の圃場面に排出されるように構成している。
【0057】
上記の構成により、走行機体1又は脱穀装置5(コンバイン機体)の後部を利用して、排藁タンク85の容量を確保しながら、排藁タンク85を簡単に配置できる。また、上段排藁搬送オーガ88の送り終端及び中段排藁搬送オーガ89の送り終端に搬送された排藁タンク85内の排藁の余剰分を、放出口99から排藁タンク85外部に排出できる。その結果、排藁タンク85内で排藁が異常に圧縮されて詰るのを未然に防止でき、稲藁収集作業性を向上できる。なお、放出口99は、下段排藁搬送オーガ90の設置位置よりも高位置の排藁タンク85の背面壁に配置され、下段排藁搬送オーガ90によって搬送される排藁が放出口99から直接的に排出されない構造に構成している。下段排藁搬送オーガ90の排藁搬送圧力が所定以上に維持されるように構成する。
【0058】
一方、図3、図5、図6に示す如く、上記した籾受け台8の後方の走行機体1の上面側には、排藁ダクト93の排藁出口側に排藁収納体87を自動的に装填する自動交換機115を配置している。自動交換機115は、網製袋等で形成された排藁収納体87を排藁ダクト93に着脱するロボットアーム116と、排藁収納体87に排藁が充填される状況を検出する排藁充填センサ117と、ロボットアーム116を自動的に作動させる自動装填用電動モータ118を有する。排藁充填センサ117の検出結果に基づき、図示しないコントローラ(コンピュータ)によって自動装填用電動モータ118を自動制御し、ロボットアーム116を自動的に作動させて、排藁ダクト93の排藁出口側端部(バネコンベヤ91の送り終端側)に、排藁収納体87を自動的に交換可能に構成している。
【0059】
また、図6に示す如く、空気中の粉塵を遠心分離によって除去するサイクロン221を備える。サイクロン221の吸気ダクトを、排藁ダクト93の排藁出口側に装填された排藁収納体87内に突入させ、排藁収納体87内の粉塵をサイクロン221に吸い込んで除去するように構成している。サイクロン221の吸気によって、排藁収納体87内の粉塵を低減できる。また、排藁収納体87を不通気性の布袋(例えば合成樹脂シート製の袋)で形成した場合、サイクロン221の吸気によって、排藁収納体87内を負圧に維持して、排藁収納体87内に充填する排藁の詰込み圧力を高めて、排藁収納体87内に排藁を効率よく充填できる。
【0060】
次に、図6を参照して、排藁ダクト93の排藁出口側に排藁収納体87を支持する構造の変形例を説明する。図6に仮想線で示したように、袋状の排藁収納体87を下向き開口姿勢に支持する排藁支持台223を備える。排藁タンク85の底部よりも高い位置であって、排藁カッタ35の右側(穀粒タンク7の後方)に隣接した位置に、排藁支持台223を配置する。排藁支持台223の下面側から上面側に向けて、排藁ダクト93の排藁出口側を延長させる。排藁支持台223の上面側に排藁ダクト93の排藁出口側を上向きに開口させる。排藁支持台223上面の下向き開口姿勢の排藁収納体87内に排藁ダクト93の排藁出口側を突入させるように構成している。
【0061】
上記の構成により、バネコンベヤ91(排藁搬送コンベヤ機構86)によって搬送される排藁が、バネコンベヤ91の送り終端側から下向き開口姿勢の排藁収納体87内に送込まれる。上向きに開口した排藁ダクト93の排藁出口側の排藁送出し抵抗(排藁ダクト93の出口外方の排藁の自重力)によって、排藁収納体87内に排藁が緩く圧縮されながら充填される。排藁収納体87内に充填する排藁の詰込み圧力を高めて、排藁収納体87内に排藁を効率よく充填できる。
【0062】
また、排藁収納体87は、伸縮性に富んだ袋(例えばゴム風船又はストッキング等のように、内圧が高くなることによって体積が大きくなる不通気性の袋又は通気性の袋)にて形成されている。即ち、排藁支持台223に空の排藁収納体87を装填したときには、排藁収納体87が最小容積に縮少した状態で排藁支持台223の上面に支持される。排藁ダクト93から排藁収納体87内に排藁が充填されることによって、排藁収納体87の内圧が高くなって膨張する。充填される排藁量に比例して排藁収納体87の体積が大きくなるように構成している。
【0063】
したがって、排藁収納体87が縮少する緊縮圧力(排藁収納体87の弾性圧力)によって、排藁収納体87内に排藁が緩く圧縮されて充填される。排藁収納体87内に充填する排藁の詰込み圧力を高めて、排藁収納体87内に排藁を効率よく充填できる。また、排藁収納体87内に所定量の排藁が充填され、排藁収納体87への排藁の充填が完了したときに、所定大きさに膨張した排藁収納体87を排藁支持台223から取出すことによって、排藁収納体87の自己緊縮圧力にて、排藁収納体87内に排藁が充填保持される。即ち、排藁収納体87を排藁支持台223から取出すときに、排藁収納体87の開口部を閉じる手間を省ける。排藁支持台223から排藁収納体87を簡単に取出すことができる。
【0064】
なお、排藁(稲藁)、又はそれと同一性状の木又は草の繊維等を原料として、排藁収納体87が形成されることが望ましい。充填する排藁と同一性状の材料によって排藁収納体87を形成した場合、排藁収納体87に排藁が充填された状態で、セルロース系バイオエタノール製造のソフトセルロース原料として排藁及び排藁収納体87の両方を供給できる。バイオエタノール製造時、排藁収納体87から排藁を取出す手間を省くことができる。ソフトセルロース原料としての排藁及び排藁収納体87の取扱い作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1実施形態のコンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの右側面図である。
【図3】コンバインの平面図である。
【図4】コンバインの脱穀装置の左側面断面図である。
【図5】脱穀装置の背面図である。
【図6】図5の拡大背面図である。
【符号の説明】
【0066】
3刈取装置
5脱穀装置
35排藁カッタ
83排藁収集部
85排藁タンク
86排藁搬送コンベヤ機構
87排藁収納体
91バネコンベヤ(可撓性コンベヤ)
95開閉シャッタ
97放出筒
99放出口(オーバーフロー部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場の未刈り穀稈を刈取る刈取装置と、前記刈取装置から供給された刈取り穀稈を脱穀する脱穀装置と、前記脱穀装置から排出された排藁を適当長さに切断する排藁カッタと、前記排藁カッタから排出された排藁を収集する排藁収集部を備え、穀粒を収集しながら、前記排藁カッタによって細断された排藁を収集するように構成してなるコンバインの藁収集装置において、
前記排藁収集部は、前記排藁カッタから放出された排藁を搬出する排藁搬送コンベヤ機構と、前記排藁搬送コンベヤ機構の排藁送り終端側に配置する排藁収納体を有し、前記排藁搬送コンベヤ機構によって搬送される排藁が、前記排藁収納体に送込まれるまでに、緩圧縮されるように構成したことを特徴とするコンバインの藁収集装置。
【請求項2】
前記排藁搬送コンベヤ機構は、前記排藁カッタの下方に配置する排藁搬送オーガと、排藁搬送オーガの送り終端側に連結させる可撓性コンベヤとを有し、前記可撓性コンベヤを内設させる排藁搬送路が、入口側又は出口側よりもその中間が狭くなるように形成したことを特徴とする請求項1に記載のコンバインの藁収集装置。
【請求項3】
前記排藁搬送コンベヤ機構の出口側に、排藁の放出方向を変更可能な放出筒を連結したことを特徴とする請求項1に記載のコンバインの藁収集装置。
【請求項4】
前記排藁搬送コンベヤ機構の出口側に、開閉シャッタを開閉可能に設けたことを特徴とする請求項1に記載のコンバインの藁収集装置。
【請求項5】
前記排藁カッタによって細断された排藁を受止める排藁タンクが、前記排藁カッタの下方に配置され、前記排藁搬送コンベヤ機構の排藁送り始端側を前記排藁タンク内に突入させたことを特徴とする請求項1に記載のコンバインの藁収集装置。
【請求項6】
前記排藁カッタによって細断された排藁を受止める排藁タンクを備え、前記排藁タンク内に所定以上溜まった排藁が排藁タンクから排出されるオーバーフロー部を、排藁タンクの側面に設けたことを特徴とする請求項1に記載のコンバインの藁収集装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−201431(P2009−201431A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48188(P2008−48188)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】