説明

コンバイン

【課題】 エアクリーナの上流にプレクリーナを備えたコンバインにおいて、コンバインの外観を向上させると共に、部品点数の削減や構造の簡略化を図る。
【解決手段】 オペレータの乗車空間を覆うキャビン7と、該キャビン7の後方に配置されるグレンタンク3と、キャビン7の下部に設けられるエアクリーナ17と、エアクリーナ17の吸気口17cから延出する吸気パイプ21と、吸気パイプ21の延出端に設けられるプレクリーナ22とを備え、吸気パイプ21を、キャビン7とグレンタンク3との間に配置したコンバイン1において、右側面視でキャビン7とグレンタンク3との間の空間を遮蔽するカバー23が設けられると共に、このカバー23を介して、吸気パイプ21(プレクリーナ22)がキャビン7に支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビン付のコンバインに関し、特に、エアクリーナの上流にプレクリーナを備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
エアクリーナの上流にプレクリーナを備えたコンバインが知られている。例えば、特許文献1に記載されるコンバインは、オペレータの乗車空間を覆うキャビンと、キャビンの下部に設けられるエアクリーナと、エアクリーナの吸気口から延出する吸気パイプと、吸気パイプの延出端に設けられるプレクリーナとを備えており、吸気パイプは、キャビンとグレンタンクとの間に配置されている。
【特許文献1】特開2004−113107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載されるコンバインでは、吸気パイプ(プレクリーナ)をキャビンで支持するにあたり、専用の支持部材を用いるので、部品点数の増加や構造の複雑化を招く惧れがある。また、キャビンとグレンタンクとの間に吸気パイプを配置する場合、キャビンとグレンタンクとの間隔が広がり、外観の低下も懸念される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、オペレータの乗車空間を覆うキャビンと、該キャビンの後方に配置されるグレンタンクと、前記キャビンの下部に設けられるエアクリーナと、該エアクリーナの吸気口から延出する吸気パイプと、該吸気パイプの延出端に設けられるプレクリーナとを備え、前記吸気パイプを、前記キャビンと前記グレンタンクとの間に配置したコンバインにおいて、右側面視で前記キャビンと前記グレンタンクとの間の空間を遮蔽するカバーが設けられると共に、該カバーを介して、前記プレクリーナ及び/又は前記吸気パイプが前記キャビンに支持されることを特徴とする。このようにすると、キャビンとグレンタンクとの間の空間をカバーで遮蔽し、コンバインの外観を向上できるだけでなく、カバーをプレクリーナの支持部材に兼用し、部品点数の削減や構造の簡略化が図れる。
また、前記カバーは、前記キャビンを吊り上げるための吊り具を介して前記キャビンに支持されることを特徴とする。このようにすると、吊り具をカバーやプレクリーナの支持部材に兼用できるだけでなく、プレクリーナを想定していないキャビンでも、プレクリーナを容易に取付けることができる。
また、前記吊り具の一部は、前記カバーに形成された開口部を介して機体外側方に臨み、メンテナンス用のグリップに兼用されることを特徴とする。このようにすると、吊り具をメンテナンス用のグリップに兼用し、コンバインのメンテナンス性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1はコンバインであって、該コンバイン1は、茎稈を刈り取る前処理部2と、刈り取った茎稈から穀粒を脱穀し、これを選別する脱穀部(図示せず)と、選別済みの穀粒を貯溜するグレンタンク3と、グレンタンク3内の穀粒を排出する穀粒排出オーガ4と、脱穀済みの排稈を後処理する後処理部5と、オペレータが乗車する運転部6と、オペレータの乗車空間を覆うキャビン7と、クローラ式の走行部8とを備えて構成されている。
【0006】
グレンタンク3は、キャビン7の後方に配置されており、その底部には、貯溜した穀粒を穀粒排出オーガ4の縦パイプ4aに向けて搬送するための螺旋搬送体(図示せず)が内装されている。また、本実施形態では、縦パイプ4aを中心としてグレンタンク3を回動自在に支持しており、この回動によってグレンタンク3を機体フレーム9上から機体外側方へ退避可能となっている。このように構成すると、オペレータやサービスマンが機体フレーム9上に乗り込み、機体中央部のメンテナンスを行うことが可能になる。
【0007】
図2及び図3に示すように、キャビン7は、枠組みされたフレーム10、乗降口を開閉するドア11、正面の窓を覆うフロントガラス12、後面の窓を覆うリヤガラス13、屋根部を形成する屋根パネル14などを備えて構成されている。この種のキャビン7は、通常、本機とは別に組み立てられ、本機の組立工程で機体フレーム9に搭載される。このキャビン搭載工程は、キャビン7をクレーンなどで吊り上げるため、キャビン7の適所に吊り具15A〜15Dが必要となる。
【0008】
本実施形態では、キャビン7に、その吊り作業を行うための吊り具15A〜15Dを複数設けるにあたり、これらの吊り具15A〜15Dを、キャビン7の側壁上部に突設する。例えば、コ字形のパイプ材又は棒材からなる吊り具15A〜15Dを、キャビン7の四隅に立設される支柱フレーム10a〜10dの上部に取付ける。このように吊り具15A〜15Dを設けると、屋根パネル14を外すことなく、キャビン7の吊り作業を行うことができるので、後工程として屋根パネル14の取付作業が不要になるだけでなく、吊り具15A〜15Dに対するフック掛けが容易になる。
【0009】
キャビン7の後部下側には、エンジン16が搭載されている。また、エンジン16の上側近傍には、エアクリーナ17が配置されており、ここで浄化された空気がエンジン16に供給される。エアクリーナ17は、開閉自在な円筒ケース17aと、ここに収容されるエレメント17bとを備えて構成され、吸気口17cから吸入された空気は、エレメント17bを介して濾過され、排気口17dからエンジン16に向かって流れる。尚、18はエンジン16の右側方を覆う着脱自在なエンジンカバー、19はエアクリーナ17の右側方を覆う着脱自在なエアクリーナカバーである。
【0010】
エアクリーナ17の吸気口17cには、浄化ボックス20を介して吸気パイプ21が接続されており、さらに、吸気パイプ21の延出端には、プレクリーナ22が設けられている。浄化ボックス20及びプレクリーナ22は、いずれもエアクリーナ17の吸気を予備浄化するためのものであり、例えばサイクロン方式のものが用いられる。このような構成によれば、プレクリーナ22が吸い込んだ吸気は、内部に発生する渦巻流によって屑と空気に遠心分離され、屑はプレクリーナ22内の外周側に溜り、空気はプレクリーナ22の中心部から浄化ボックス20に向かって流れる。浄化ボックス20に入った空気は、浄化ボックス20内で渦を巻くことにより再度遠心分離され、ここで分離された屑は浄化ボックス20内に溜り、空気はエアクリーナ17に向かって流れる。
【0011】
上記のように構成されたコンバイン1において、吸気パイプ21をキャビン7とグレンタンク3との間に配置し、かつ、プレクリーナ22及び/又は吸気パイプ21をキャビン7で支持するにあたり、本発明の実施形態に係るコンバイン1では、右側面視でキャビン7とグレンタンク3との間の空間を遮蔽するカバー23を設けると共に、該カバー23を介して、プレクリーナ22及び/又は吸気パイプ21をキャビン7で支持する。このように構成すると、キャビン7とグレンタンク3との間の空間をカバー23で遮蔽し、コンバイン1の外観を向上できるだけでなく、カバー23をプレクリーナ22の支持部材に兼用し、部品点数の削減や構造の簡略化が図れる。
【0012】
カバー23は、前述した吊り具15Bを介してキャビン7に支持されることが好ましい。このように構成すると、吊り具15Bをカバー23や吸気パイプ21(プレクリーナ22)の支持部材に兼用できるだけでなく、プレクリーナ22を想定していないキャビン7でも、プレクリーナ22を容易に取付けることが可能になる。また、本実施形態では、吊り具15Bの一部を、カバー23に形成された開口部23aを介して機体外側方に臨ませ、メンテナンス用のグリップに兼用している。このように構成すると、吊り具15Bをメンテナンス用のグリップに兼用し、コンバイン1のメンテナンス性を向上させることができる。例えば、グレンタンク3を機体フレーム9上から退避させ、オペレータやサービスマンが機体フレーム9上に乗り込む際、吊り具15Bをグリップとして利用することが可能である。
【0013】
次に、吸気パイプ21(プレクリーナ22)及びカバー23の支持構造について、図4を参照して詳細に説明する。この図に示すように、吊り具15Bは、グリップに兼用するために下方に延長されると共に、上下両端部にプレート24、25が溶着される。上側のプレート24は、前後一対の貫通孔24aを有し、下側のプレート25には、固定ナット26が溶着されている。吸気パイプ21は、上端にプレクリーナ22が設けられる金属パイプ21aと、この金属パイプ21aを浄化ボックス20に接続するゴムパイプ21bとを備えて構成されている。金属パイプ21aには、断面コ字状のブラケット27が溶着されており、該ブラケット27の先端側には、吊り具15Bと嵌合可能な凹部27aが形成されると共に、前後一対の固定ナット28が溶着されている。カバー23は、前述した開口部23aを有すると共に、その上下両側に貫通孔23b、23cが形成されている。
【0014】
上記のように構成された吸気パイプ21(プレクリーナ22)及びカバー23をキャビン7で支持する場合は、まず、吸気パイプ21のブラケット27に形成される凹部27aを吊り具15Bに嵌め、ブラケット27をプレート24の裏側に重合させる。次に、カバー23をプレート24、25に表側から重合させると共に、カバー23の上側に形成される一対の貫通孔23bにボルト29を挿通する。そして、これらのボルト29をプレート24の貫通孔24aを介してブラケット27の固定ナット28に螺込むと、吸気パイプ21及びカバー23の上側が吊り具15Bに固定支持される。また、カバー23の下側に形成される貫通孔23cにボルト29を挿通し、これをプレート25の固定ナット26に螺込むと、カバー23の下側が吊り具15Bに固定支持される。
【0015】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、オペレータの乗車空間を覆うキャビン7と、該キャビン7の後方に配置されるグレンタンク3と、キャビン7の下部に設けられるエアクリーナ17と、エアクリーナ17の吸気口17cから延出する吸気パイプ21と、吸気パイプ21の延出端に設けられるプレクリーナ22とを備え、吸気パイプ21を、キャビン7とグレンタンク3との間に配置したコンバイン1において、右側面視でキャビン7とグレンタンク3との間の空間を遮蔽するカバー23が設けられると共に、このカバー23を介して、吸気パイプ21(プレクリーナ22)がキャビン7に支持されるので、キャビン7とグレンタンク3との間の空間をカバー23で遮蔽し、コンバイン1の外観を向上できるだけでなく、カバー23をプレクリーナ22の支持部材に兼用し、部品点数の削減や構造の簡略化が図れる。
【0016】
また、カバー23は、キャビン7を吊り上げるための吊り具15Bを介してキャビン7に支持されるので、吊り具15Bをカバー23やプレクリーナ22の支持部材に兼用できるだけでなく、プレクリーナ22を想定していないキャビン7でも、プレクリーナ22を容易に取付けることができる。また、吊り具15Bの一部は、カバー23に形成された開口部23aを介して機体外側方に臨み、メンテナンス用のグリップに兼用されるので、コンバインのメンテナンス性も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】コンバインの右側面図である。
【図2】運転部の右側面図である。
【図3】運転部の背面図である。
【図4】プレクリーナ支持部の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0018】
1 コンバイン
3 グレンタンク
6 運転部
7 キャビン
15 吊り具
16 エンジン
17 エアクリーナ
17c 吸気口
21 吸気パイプ
22 プレクリーナ
23 カバー
23a 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレータの乗車空間を覆うキャビンと、該キャビンの後方に配置されるグレンタンクと、前記キャビンの下部に設けられるエアクリーナと、該エアクリーナの吸気口から延出する吸気パイプと、該吸気パイプの延出端に設けられるプレクリーナとを備え、前記吸気パイプを、前記キャビンと前記グレンタンクとの間に配置したコンバインにおいて、右側面視で前記キャビンと前記グレンタンクとの間の空間を遮蔽するカバーが設けられると共に、該カバーを介して、前記プレクリーナ及び/又は前記吸気パイプが前記キャビンに支持されることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記カバーは、前記キャビンを吊り上げるための吊り具を介して前記キャビンに支持されることを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記吊り具の一部は、前記カバーに形成された開口部を介して機体外側方に臨み、メンテナンス用のグリップに兼用されることを特徴とする請求項2記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−28971(P2007−28971A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215719(P2005−215719)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】