説明

コンバイン

【課題】 動力源としてのエンジン15を搭載した走行機体1に,少なくとも,刈取装置3と,脱穀装置5とを備えて成るコンバインにおいて,前記脱穀後の空穀稈の野焼きを回避して,この空穀稈が有するエネルギーの回収を図る。
【解決手段】 前記空穀稈を部分燃焼にてガス化するガス化炉48を備え,このガス化炉から排出される灰成分を圃場に散布するように構成する一方,前記エンジン15を,高カロリー燃料の単独による運転状態と,この高カロリー燃料と低カロリー燃料との混合燃料による運転状態とに変更できるようにしたデュアルフューエルエンジンに構成して,このデュアルフューエルエンジンに対する前記低カロリー燃料として,前記ガス化炉48で発生した可燃性ガスを供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,圃場に植立する穀稈を,走行しながら脱穀処理するという自走型のコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のコンバインは,例えば特許文献1等に記載され,従来から良く知られているように,クローラ等に支持されて走行する走行機体に,動力源としてのエンジンを搭載するとともに,少なくとも圃場に植立する穀稈を刈り取る刈取装置と,刈り取った穀稈から穀粒を脱穀する脱穀装置とを搭載するという構成にしており,また,一部のコンバインにおいては,前記脱穀装置に穀粒を脱穀した後の空穀稈は,これを同じく走行機体に搭載したカッター装置にて適宜長さに切断することにより,細かな空穀稈片にして,圃場に散布するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭50−45236号公報
【特許文献2】特開2004−60604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そして,前記空穀稈は,そのまま圃場に散布するか,カッター装置にて切断された細かな空穀稈片は,圃場に散布することにより肥料に利用するようにしているが,前記空穀稈又は空穀稈片が腐敗して肥料になるまでには,長い日数を必要とし,その間における作物に植えつけの妨げになっていた。
【0005】
また,一部においては,前記空穀稈又は空穀稈片は,これを集めて野焼きすることにより,その灰成分で圃場における土壌改良に利用することが行われているが,この場合には,空穀稈又は空穀稈片を集める作業と,野焼きする作業と,灰成分を散布する作業とを必要として可成り厄介であるばかりか,野焼きするときの煙にて公害を招来するのであった。
【0006】
本発明は,例えば,特許文献2等には,エンジンとして,通常はガソリン,重油又は軽油等のような高カロリー燃料の単独で運転されているが,前記高カロリー燃料に低カロリー燃料を加算でできるようにしたデュアルフューエルエンジンが開発されていることに着目し,このデュアルフューエルエンジンを利用して,前記した問題を解消することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この技術的課題を達成するため請求項1は,
「動力源としてのエンジンを搭載した走行機体に,少なくとも,圃場に植立する穀稈を刈り取る刈取装置と,刈り取った穀稈から穀粒を脱穀する脱穀装置とを備えて成るコンバインにおいて,
前記走行機体,又は,この走行機体に連結した牽引車に,前記脱穀装置にて穀粒を脱穀した後の空穀稈を部分燃焼にてガス化するガス化炉を搭載して,このガス化炉から排出される灰成分を圃場に散布するように構成する一方,前記エンジンを,高カロリー燃料の単独による運転状態と,この高カロリー燃料と低カロリー燃料との混合燃料による運転状態とに変更できるようにしたデュアルフューエルエンジンに構成して,このデュアルフューエルエンジンに対する前記低カロリー燃料として,前記ガス化炉で発生した可燃性ガスを供給する構成にした。」
ことを特徴としている。
【0008】
請求項2は,
「前記請求項1の記載において,前記脱穀後の空穀稈を適宜長さの空穀稈片に切断するカッター装置を備え,このカッター装置にて切断された空穀稈片を,前記ガス化炉を供給する構成にした。」
ことを特徴としている。
【0009】
請求項3は,
「前記請求項1又は2の記載において,前記エンジンからの排気ガスを熱源として乾燥する乾燥炉を備え,この乾燥炉にて乾燥した後の空穀稈又は空穀稈片を前記ガス化炉に供給する構成にした。」
ことを特徴としている。
【0010】
請求項4は,
「前記請求項1〜3のいずれかの記載において,前記ガス化炉から前記エンジンへのガス供給経路中に,空冷式のガス冷却器を設けて,このガス冷却器を,前記脱穀装置における選別風の吸引口に配設した。」
ことを特徴としている。
【0011】
請求項5は,
「前記請求項1〜4のいずれかの記載において,前記ガス化炉への投入口に,空穀稈又は空穀稈片の圧搾手段が設けられている。」
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の記載によると,走行機体を前進走行することにより,圃場における穀稈の刈り取りと,この刈り取った穀稈からの穀粒の脱穀とが順次行われる。
【0013】
前記切断後の空穀稈片は,ガス化炉に送られてこのガス化炉において部分燃焼される。この部分燃焼において発生した可燃性ガスは,前記前進走行,前記刈取り,脱穀及び空穀稈切断を行うための動力源としてのデュアルフューエルエンジンに,当該デュアルフューエルエンジンに対する前記低カロリー燃料として供給されて,消費される。
【0014】
これにより,前記デュアルフューエルエンジンに,通常供給している例えば,ガソリン,軽油又は重油等のような高カロリー燃料の消費量を,前記ガス化炉からの可燃性ガスが有するエネルギーの分だけ低減することができるとともに,前記エンジンからの排気ガス中のNOxを低減できる。
【0015】
一方,前記ガス化炉における部分燃焼したあとの灰成分は圃場に散布されることにより,圃場における土壌の改良に利用される。
【0016】
これらにより,脱穀後の空穀稈が有するエネルギーを,エンジンの高カロリー燃料の消費量の低減に有効に利用しながら,前記エンジンにおける排気ガスのクリーン化達成と,圃場での野焼きを無くしつつ,土壌の改良を行うことができる。
【0017】
この場合,前記脱穀後の空穀稈は,請求項1に記載したように,カッター装置にて適宜長さに切断した空穀稈片にすることができる。
【0018】
次に,請求項3によると,前記した効果に加えて,湿った穀稈に適用できるほか,エンジンの排気ガスを乾燥に利用するので,エネルギー効率をアップできる。
【0019】
また,請求項4によると,前記した効果に加えて,エンジンに供給される可燃性ガスの熱量を,ガス冷却器における冷却にて高くできることに加えて,この可燃性ガスの冷却によって脱穀装置における選別風が暖められ,選別物を積極的に乾燥できるから,脱穀装置における選別性能を向上できる。
【0020】
更にまた,請求項5によると,ガス化する空穀稈における密度を高くして,ガス化炉に供給できるので,ガス化炉を小型化できるとともに,可燃性ガスの熱量をアップできて,前記した効果を助長できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】コンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの右側面図である。
【図3】コンバインの平面図である。
【図4】コンバインにおける脱穀装置の縦断正面図である。
【図5】図4のV−V視断面図である。
【図6】ガス化装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下,本発明の実施の形態を,図1〜図6の図面について説明する。
【0023】
図1乃至図3に示されるように,本実施形態のコンバインは,左右一対の走行クローラ2(走行部)にて支持された走行機体1を備えている。
【0024】
この走行機体1の前部には,穀稈を刈取りながら取込む6条刈り用の刈取装置3が,単動式の昇降用油圧シリンダ4によって刈取回動支点軸4a回りに昇降調節可能に装着されている。走行機体1には,フィードチェン6を有する脱穀装置5と,脱穀後の穀粒を貯留する穀粒タンク7とが横並び状に搭載されている。
【0025】
前記脱穀装置5は,走行機体1の前進方向に向かって左側に配置されている(図3参照)。また,前記穀粒タンク7は,走行機体1の前進方向に向かって右側に配置されている。この穀粒タンク7の下方(走行機体1の上面側)に籾受け台8が設けられ,穀粒タンク7の内部の穀粒が,穀粒タンク7の下面側の籾排出口9から籾受け台8上の籾袋(図示省略)に排出されるように構成されている。刈取装置3の右側方で,穀粒タンク7の前側方には,運転部10が設けられている。
【0026】
運転部10には,オペレータが搭乗するステップ11と,運転座席12を配置している。運転座席12の前方のハンドルコラム13に,操縦用の左右のサイドクラッチレバー等が配置されている。運転座席12の左側方のレバーコラム14に,走行変速レバー,脱穀クラッチ及び刈取クラッチ操作用の作業クラッチレバー等が配置されている。運転座席12の下方の走行機体1には,動力源としてのエンジン15が配置されている。
【0027】
前記エンジン15は,例えば,通常はガソリン,重油又は軽油等のような高カロリー燃料の単独で運転されているが,この高カロリー燃料の単独による運転状態と,この高カロリー燃料と低カロリー燃料との混合燃料による運転状態とに変更できるようにしたデュアルフューエルエンジンの形式であり,この吸気経路には,エアクリーナ15aと,吸気通路15bとを備えている。
【0028】
図1乃至図3に示されるように,刈取装置3の刈取回動支点軸4aに連結した刈取フレーム16の下方には,圃場の未刈り穀稈の株元を切断するバリカン式の刈刃装置17が設けられている。刈取フレーム16の前方には,圃場の未刈り穀稈を引起す4条分の穀稈引起装置18が配置されている。穀稈引起装置18とフィードチェン6の前端部(送り始端側)との間には,刈刃装置17によって刈取られた刈取り穀稈を搬送する穀稈搬送装置19が配置されている。なお,穀稈引起装置18の下部前方には,圃場の未刈り穀稈を分草する4条分の分草体20が突設されている。
【0029】
前記デュアルフューエルエンジン15にて走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら,刈取装置3を駆動して圃場の未刈り穀稈を連続的に刈取る。
【0030】
図1及び図2,図4に示されるように,脱穀装置5には,穀稈脱穀用の扱胴21と,扱胴21の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別機構としての揺動選別盤22と,揺動選別盤22に選別風を供給する唐箕ファン23と,扱胴21の後部から取出される脱穀排出物を再処理する処理胴24と,揺動選別盤22の後部の排塵を機外に排出する排塵ファン25とを備えている。
【0031】
前記刈取装置3から穀稈搬送装置19によって搬送された穀稈の株元側はフィードチェン6に受け継がれて挟持搬送される。そして,この穀稈の穂先側が脱穀装置5の扱室21b内に搬入されて扱胴21にて脱穀されることになる。
【0032】
図4に示されるように,フィードチェン6の後端側(送り終端側)には,排藁チェン26が配置されている。フィードチェン6の後端側から排藁チェン26に受け継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は,前記脱穀装置5の後方側に設けた排藁カッタ機構27に送られ,この排藁カッタ機構27にて適宜長さに短く切断されたのち,走行機体1の後部に配置した排藁タンク28内に排出される。
【0033】
図4に示されるように,揺動選別盤22の下方側には,揺動選別盤22にて選別された穀粒(一番物)を取出す一番コンベヤ29と,枝梗付き穀粒等の二番物を取出す二番コンベヤ30とが設けられている。本実施形態の両コンベヤ31,32は,走行機体1の進行方向前側から一番コンベヤ29,二番コンベヤ30の順で,側面視において走行クローラ2の後部上方の走行機体1の上面側に横設されている。
【0034】
図4,図5に示されるように,揺動選別盤22は,扱胴21の下方に張設された受網32から漏下した脱穀物が,揺動選別盤22のフィードパン33及びチャフシーブ34によって搖動選別(比重選別)されるように構成している。揺動選別盤22のグレンシーブ35から落下した穀粒(一番物)は,その穀粒中の粉塵が唐箕ファン23からの選別風によって除去され,一番コンベヤ29に落下する。一番コンベヤ29のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁(実施形態では右側壁)から外向きに突出した終端部には,上下方向に延びる一番揚穀筒36が連通接続されている。一番コンベヤ29から取出された穀粒は,一番揚穀筒36に内設された一番揚穀コンベヤ(図示省略)によって穀粒タンク7に搬入され,穀粒タンク7に収集される。
【0035】
図4に示されるように,チャフシーブ34の送り下流側(後方側)にストローラック37が配置されている。揺動選別盤22は,搖動選別(比重選別)によって,チャフシーブ34又はストローラック37から枝梗付き穀粒等の二番物(穀粒と藁屑等が混在した再選別用の還元再処理物)が二番コンベヤ30に落下するように構成している。二番コンベヤ30によって取出された二番物は,二番還元揚穀筒38を介してフィードパン33の上面側に戻されて再選別される。
【0036】
なお,チャフシーブ34及びストローラック37の上面側の比較的軽い藁屑は,排塵ファン25に吸込まれて,排塵ファン25の後側の排出口から機外に排出されることになる。また,チャフシーブ34の送り下流側(後方側)からストローラック37の上面側に移動した比較的重い藁屑は,揺動選別盤22の後端側の三番口39から機外に排出されることになる。
【0037】
図4に示されるように,揺動選別盤22は,脱穀装置5を形成した脱穀機筐に,揺動駆動軸40と,前側ガイドレール41及び後側ガイドレール42とを介して,前方斜め下方乃至後方斜め上方に移動可能に配置されている。エンジン15からの動力によって揺動駆動軸40を介して揺動選別盤22が作動し,揺動選別盤22が前方斜め下方乃至後方斜め上方に往復移動することになる。その結果,扱胴21の下方に張設された受網32から漏下した脱粒物が,フィードパン33及びチャフシーブ34によって搖動選別(比重選別)されるように構成している。
【0038】
図4に示されるように,唐箕ファン23には,グレンシーブ35の下面側と一番コンベヤ29の上方とに向けて選別風を供給する主選別風路43と,フィードパン33の下面側からチャフシーブ34の下面側に向けて選別風を供給するプレ風路44とを形成している。上述の主選別風路43は,唐箕ファン23からの選別風が,グレンシーブ35の前方の下方から,グレンシーブ35の後方の上方に向けて移動するように形成されている。
【0039】
また,上述の主選別風路43は,唐箕ファン23からの選別風が,一番コンベヤ29の上方で前方から後方に向けて移動するように形成されている。即ち,グレンシーブ35から一番コンベヤ29に落下する穀粒及び塵が,唐箕ファン23からの選別風によって風選される。その結果,塵が除去された後の穀粒だけが,一番コンベヤ29に落下して,一番コンベヤ29によって穀粒タンク7に取出されるように構成している。
【0040】
上述したプレ風路44は,唐箕ファン23からの選別風が,チャフシーブ34の前方下方から後方上方に向けて移動するように形成されている。即ち,扱胴21から受網32を介してフィードパン33の上面に落下した脱粒物が,フィードパン33の後端側からチャフシーブ34の前端側に落下するときに,唐箕ファン23からの選別風によって風選される。その結果,フィードパン33からチャフシーブ34の上面に移動した脱粒物のうち,チャフシーブ34の上面に近い脱粒物の下層側の藁屑(軽量物)が,選別風によって上層側に移動されて,チャフシーブ34から落下する藁屑量が低減することになる。また,チャフシーブ34の比重選別作用と,唐箕ファン23からの選別風の風選とによって,脱粒物の上層側の穀粒(重量物)が下層側に移動して,チャフシーブ34から早期に漏下することになる。チャフシーブ34の比重選別作用が,唐箕ファン23からの選別風によって助長されて,その選別処理能力(選別精度)が向上するように構成している。
【0041】
なお,主選別風路43と,プレ風路44とから供給された唐箕ファン23からの選別風は,上述した排塵ファン25に吸い込まれて排出口から排出される。
【0042】
図4に示されるように,上述した処理胴24は,前記扱胴21の脱粒作用によって発生した扱室21bの脱粒排塵物(穀粒と藁屑との混合物)を,扱胴21の後端側の扱歯の排出作用によって,扱室21bの後端側から導いて,処理(再脱粒)するように構成している。前記脱粒排塵物中の穀粒は,処理胴24から下方のチャフシーブ34の上面側に落下して,一番コンベヤ29又は二番コンベヤ30によって取出される。前記脱粒排塵物中の藁屑等の塵埃は,下方のストローラック37の上面側に落下した後,三番口39から機外に排出される。
【0043】
上記の構成により,刈取装置3によって圃場の未刈り穀稈が刈取られ,刈取装置3から供給された刈取り穀稈が脱穀装置5によって脱穀された場合,脱穀装置5から落下した脱粒物が,揺動選別盤22によって選別される。揺動選別盤22によって選別された一番物としての穀粒が,一番コンベヤ29によって穀粒タンク7に収集される。また,揺動選別盤22によって選別された二番物は,二番コンベヤ30から二番還元揚穀コンベヤ38に受継がれ,二番還元揚穀コンベヤ38からフィードパン33の上面に排出され,揺動選別盤22によって再び選別される。したがって,二番物中の穀粒は,一番コンベヤ29から穀粒タンク7に搬入される。また,二番物中の藁屑は,チャフシーブ34の上面を経て,排塵ファン25又は三番口39から機外に排出される。
【0044】
次に,前記排藁カッタ機構27は,一対のカッタ軸27aと,円板状のディスク刃27bを有する。各カッタ軸27a上に複数のディスク刃27bが等間隔に配置されている。排藁チェン26によって搬送された排藁が,各ディスク刃27bによって所定長さに切断されるように構成している。
【0045】
この切断後における空穀稈片は,その下方における排藁タンク28内に落下し,この排藁タンク28内に設けられている排藁搬送コンベヤ機構45により,排藁タンク28における右側の底部から送り出される。
【0046】
前記走行機体1のうち前記穀粒タンク7の後方の部分には,前記切断後の空穀稈片に対するガス化装置46が搭載されている。
【0047】
このガス化装置46は,図6に示すように,乾燥炉47と,ガス化炉48と,送風ファン49とを備えている。
【0048】
前記乾燥炉47は,前記排藁タンク28内から排藁搬送コンベヤ機構45にて排出される空穀稈片を受け入れ,これを前記デュアルフューエルエンジン15からの排気ガスを熱源として間接加熱することによって乾燥するものであり,外側に加熱用ジャケット47aを,内部に加熱用内筒47bを各々備え,これら加熱用ジャケット47aの内部及び内筒47bの内部に,前記デュアルフューエルエンジン15からの排気ガスの一部又は全部を,排気管路47c,47dを介して導入する一方,その内部に前記送風ファン49からの空気を吹き込むことにより,前記空穀稈片を乾燥するという構成であり,この乾燥炉47において乾燥された空穀稈片は,スクリュー式の搬送コンベヤ機構50にて前記ガス化炉48の頂部に送られる。
【0049】
前記ガス化炉48は,その内部の上部に漏斗状に構成した投入筒48aを,内部の底部に火格子48bを,頂部にスクリュー式の圧搾機構48cを各々備えている。
【0050】
前記圧搾機構48cは,前記搬送コンベヤ機構50からの空穀稈片を受け入れてこれを圧搾しながら前記漏斗状の投入筒48a内に下向きに押し込み投入するという構成であり,この投入筒48a内に押し込み投入された空穀稈片は,前記送風ファン49から送られて来る空気によって部分燃焼する。
【0051】
この部分燃焼は,例えば,前記投入筒48a内の上部での乾燥層a,投入筒48a内の下部における低い酸素状態での熱分解層b,前記投入筒48aの下部における低い酸素状態での部分酸化層c,及びこの部分酸化層cと前記火格子48bとの間における還元層dとに分けて,この順番で行われる。
【0052】
この部分燃焼にて発生した可燃性ガスは,前記火格子48bより下部のガス出口48dから取り出される一方,残りの灰成分は,前記火格子48bより落下したのち,開閉式のシャッター48eを備えた灰出口48fから圃場に散布される。
【0053】
前記ガス化炉48におけるガス出口48dから取り出された可燃性ガスは,管路51を介して空冷式又は水冷式のガス冷却器52に送られて冷却され,次いで,バグフィルタ53等の除塵器53にて粉塵が除かれたのち,エンジン用コントローラ54を経て前記エンジン15への吸気管路15bに供給される。
【0054】
これにより,前記エンジン15は,例えば,ガソリン,重油又は軽油等のような高カロリー燃料の単独で運転されている状態から,前記高カロリー燃料と,前記可燃性ガスとの混合燃料による運転される状態に切り換わるように構成されている。
【0055】
この構成において,走行機体1を前進走行することにより,圃場における穀稈の刈取装置3による刈り取りと,この刈り取った穀稈からの穀粒の脱穀装置5による脱穀と,脱穀後の空穀稈の排藁カッタ機構27による切断とが順次行われる。
【0056】
前記切断後の空穀稈片は,ガス化装置46における乾燥炉47にて乾燥されたのち,ガス化炉48に送られてこのガス化炉48において部分燃焼される。
【0057】
この部分燃焼において発生した可燃性ガスは,ガス冷却器52及び除塵器53を経たのち,動力源としてのデュアルフューエルエンジン15に,当該デュアルフューエルエンジンに対する前記低カロリー燃料として供給されて消費される。
【0058】
一方,前記ガス化炉48における部分燃焼したあとの灰成分は圃場に散布される。
【0059】
前記した実施の形態においては,排藁カッタ機構27において切断された空穀稈片を,前記デュアルフューエルエンジン15からの排気ガスを熱源とする乾燥炉47にて乾燥したのちガス化炉48に供給する場合であったが,前記排藁カッタ機構27において切断された空穀稈片が,比較的に乾燥している場合には,前記乾燥炉47を経ることなく,これをバイパスして,前記ガス化炉48に直接に供給するように構成することができる。
【0060】
また,前記切断後の空穀稈片を前記ガス化炉48に供給するに際しては,その供給口に,スクリュー式の圧搾機構48cを設けて空穀稈片を圧搾することにより,ガス化する空穀稈片における密度を高くして,高エネルギー化を図ることができる。
【0061】
前記した実施の形態においては,前記ガス化炉48からの可燃性ガスに対するガス冷却器52を,前記脱穀装置5における揺動選別盤22に対する唐箕ファン23への空気吸い込み部に設けるという構成にしている。
【0062】
この構成によると,デュアルフューエルエンジン15に供給される可燃性ガスの熱量を,ガス冷却器52における冷却にて高くできることに加えて,この可燃性ガスの冷却によって脱穀装置5における揺動選別盤22に対する選別風が暖められ,選別物を積極的に乾燥できるから,脱穀装置5における選別性能を向上できる。
【0063】
なお,前記実施の形態は,前記乾燥炉47及びガス化炉48等から成るガス化装置46を,コンバインにおける走行機体1に搭載する場合であったが,本発明は,これに限らず,前記ガス化装置46を,前記走行機体1に連結した牽引車に搭載するという構成にすることができ,この構成すると,前記排藁カッタ機構27において切断された空穀稈片を,従来のように,そのまま圃場に散布する場合と,前記したように部分燃焼してエネルギー回収する場合とに適宜使い分けすることが容易にできる。
【符号の説明】
【0064】
1 コンバインの走行機体
2 走行クローラ
3 刈取装置
5 脱穀装置
6 フィードチェン
7 穀粒タンク
15 デュアルフューエルエンジン
22 揺動選別盤
23 唐箕ファン
26 排藁チェン
27 排藁カッタ機構
46 ガス化装置
47 乾燥炉
48 ガス化炉
52 ガス冷却器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源としてのエンジンを搭載した走行機体に,少なくとも,圃場に植立する穀稈を刈り取る刈取装置と,刈り取った穀稈から穀粒を脱穀する脱穀装置とを備えて成るコンバインにおいて,
前記走行機体,又は,この走行機体に連結した牽引車に,前記脱穀装置にて穀粒を脱穀した後の空穀稈を部分燃焼にてガス化するガス化炉を搭載して,このガス化炉から排出される灰成分を圃場に散布するように構成する一方,前記エンジンを,高カロリー燃料の単独による運転状態と,この高カロリー燃料と低カロリー燃料との混合燃料による運転状態とに変更できるようにしたデュアルフューエルエンジンに構成して,このデュアルフューエルエンジンに対する前記低カロリー燃料として,前記ガス化炉で発生した可燃性ガスを供給する構成にしたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記請求項1の記載において,前記脱穀後の空穀稈を適宜長さの空穀稈片に切断するカッター装置を備え,このカッター装置にて切断された空穀稈片を,前記ガス化炉を供給する構成にしたことを特徴とするコンバイン。
【請求項3】
前記請求項1又は2の記載において,前記エンジンからの排気ガスを熱源として乾燥する乾燥炉を備え,この乾燥炉にて乾燥した後の空穀稈又は空穀稈片を前記ガス化炉に供給する構成にしたことを特徴とするコンバイン。
【請求項4】
前記請求項1〜3のいずれかの記載において,前記ガス化炉から前記エンジンへのガス供給経路中に,空冷式のガス冷却器を設けて,このガス冷却器を,前記脱穀装置における選別風の吸引口に配設したことを特徴とするコンバイン。
【請求項5】
前記請求項1〜4のいずれかの記載において,前記ガス化炉への投入口に,空穀稈又は空穀稈片の圧搾手段が設けられていることを特徴とするコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−166879(P2010−166879A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14045(P2009−14045)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】