説明

コンバイン

【課題】刈取る穀稈の量が急激に変化しても、扱深さセンサによる穀稈の穂先位置の検出を確実に行い、適正な扱深さを維持して良好な脱穀作業を行うことができるコンバインを提供する。
【解決手段】コンバインの前処理部20は、刈取った穀稈を搬送しつつ扱深さの調節を行う穀稈搬送装置44を備え、穀稈を刈取る前処理部20の掻込み体30、31に、搬送する穀稈の量を検出する供給穀稈量検出手段40を構成する第1条センサ41、第2条センサ42を設け、第1条センサ41が穀稈を検出し、第2条センサが穀稈を検出しないとき、穀稈搬送装置44の穀稈搬送速度を減速制御するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の穀稈を刈取ると共に刈取った穀稈を脱穀部に搬送する前処理部を備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンバインにおいては、穀稈の刈取り及び搬送を行う前処理部と、穀稈の脱穀を行う脱穀部と、脱穀された排稈を処理する排稈処理装置等を備えており、該前処理部は、穀稈の刈取り部と、刈取った穀稈を脱穀部へ向けて搬送する穀稈搬送装置とを備えている。穀稈搬送装置は、刈取り部から脱穀部に向けて穀稈を搬送する間に、搬送される穀稈の搬送経路に配置された扱深さセンサで穀稈の穂先位置を検出して、脱穀部に送込む穀稈の位置、すなわち、脱穀部における扱深さを扱深さ搬送体によって調整するようになっている。
【0003】
このようなコンバインにおいては、刈取り作業時における走行機体の走行速度に応じて、前処理部で処理(刈取り、搬送)すべき穀稈の量が増減変化するため、従来、走行機体の走行速度に応じて前処理部の処理速度を連動させるようにしたコンバインが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−305942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば三角圃場などの通常の圃場とその形状や大きさが異なる圃場の場合、圃場に応じて様々な形で苗が植付けられているため、収穫作業の途中で全条分の穀稈を刈取らず、上記前処理部の一部にしか穀稈が入らない場合がある。
【0006】
すると刈取る穀稈の条数が減少し、単位時間当たりの穀稈搬送装置で搬送される穀稈の量が少なくなるため搬送される穀稈の層厚が薄くなり、比較的柔らかい穀稈の穂先が扱深さセンサに当接して曲がってしまうため、扱深さセンサが適切に穂先位置を検出できず、深扱ぎ状態になることがあった。
【0007】
このような深扱ぎ状態において前処理部の刈取り条数が戻り、搬送される穀稈の層厚が厚くなって上記扱深さセンサが正確に穂先位置を検出すると、急激に深扱ぎ状態から浅扱ぎ側に扱深さ搬送体が移動して、穀稈が斜めに傾斜した状態で搬送されるため、タッチ部において穀稈が詰まり易くなると共に、脱穀効率も低下してしまうという問題があった。
【0008】
特に、上記特許文献1記載のような走行速度と穀稈の搬送速度とを連動させるものでは、刈取り条数が減っても走行速度が速い場合には、搬送速度が速くなり、上述した問題が発生し易かった。
【0009】
そこで本発明は、常に搬送される穀稈の層厚を一定に保ち、扱深さセンサが穂先位置を正確に検出することができるように穀稈搬送装置を構成することによって、上記課題を解決したコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、請求項1に係る本発明は、駆動源(7)と、前記駆動源(7)からの動力により走行する走行機体(3)と、前記走行機体(3)の前方に支持されて穀稈を刈取る前処理部(20)と、これら刈取られた穀稈を脱穀する脱穀部(13)と、を備えたコンバイン(1)において、
前記前処理部(20)は、刈取った穀稈を前記脱穀部(13)に搬送しつつ扱深さの調節を行う穀稈搬送装置(44)を有しており、
前記前処理部(20)の動力伝達系に介在し、前記駆動源(7)からの動力を変速してなる前処理変速装置(77)と、
前記前処理部(20)への供給穀稈量を検出する供給穀稈量検出手段(40)と、
前記供給穀稈量検出手段(40)により検出された穀稈量が所定量より少ない場合、前記前処理変速装置(77)を、前記穀稈搬送装置(44)の搬送速度が遅くなるように制御する制御装置(81)と、を備えた、
ことを特徴とするコンバインにある。
【0011】
請求項2に係る本発明は、前記制御装置(81)は、前記走行機体(3)の走行速度に応じて、前記穀稈搬送装置(44)の搬送速度を制御してなる、
請求項1記載のコンバインにある。
【0012】
請求項3に係る本発明は、前記前処理部(20)は、複数条数の穀稈を刈取ると共に、
前記供給穀稈量検出手段(40)は、これら複数条数の穀稈のうち、前記走行機体(3)の進行方向左端側の条の穀稈を検出可能な第1条センサ(41)と、他の何れかの刈取り条の穀稈を検出可能な第2条センサ(42)と、を備え、
前記第1条センサ(41)が穀稈を検出しかつ、前記第2条センサ(42)が穀稈を検出しない場合に、前記制御装置(81)は前記穀稈搬送装置(44)の搬送速度を遅くしてなる、
請求項1又は2記載のコンバインにある。
【0013】
なお、前記した括弧内の符号等は、図面を参照するためのものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によると、供給穀稈量検出手段により穀稈搬送装置が搬送する穀稈量を検出し、検出された穀稈量が所定量より少ない場合には、制御装置によって穀稈搬送装置の搬送速度が遅くなるように制御することにより、常に一定の層厚を有して穀稈を搬送することができる。それにより、扱深さセンサが確実に穀稈の穂先位置を検出し、急激な扱深さの変化を防止して良好な姿勢で穀稈を搬送することができるため、タッチ部における穀稈の詰まり及び脱穀効率の低下を防止することができる。
【0015】
請求項2に係る発明によると、急激な扱深さの変化が起こりやすい走行速度と穀稈の搬送速度を連動させたコンバインにおいて、確実に穀稈の斜行を防止することができると共に、適切な層厚を保った範囲で走行速度と穀稈の搬送速度を連動させるため、作業効率を向上させることができる。
【0016】
請求項3に係る本発明によると、複数条数の穀稈のうち、通常、未刈取り側にある進行方向左端側の条の穀稈を検出可能な第1条センサが穀稈を検出し、他の何れかの刈取り条の穀稈を検出する第2条センサが穀稈を検出しない場合に、穀稈の搬送速度を遅くしたため、簡単な構成で確実な制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用するコンバインの斜視図。
【図2】コンバインの前処理部の側面図。
【図3】前処理部の穀稈搬送部の平面図。
【図4】コンバインの駆動系統図。
【図5】コンバインの制御系統図。
【図6】制御系統における制御過程を示す制御フローチャート図。
【図7】コンバインの車速と前処理部及びフィードチェーンにおける穀稈の搬送速度の関係を示す特性図。
【図8】他の制御形態を示すコンバインの車速と前処理部及びフィードチェーンにおける穀稈の搬送速度の関係を示す特性図。
【図9】他の実施形態における前処理部の搬送体の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明する。図1に示すように、コンバイン1は、左右一対のクローラ走行装置2、2に支持された走行機体3を備えている。走行機体3の左右何れか一側の前部には、運転席5が配置されている。走行機体3の前記運転席5の後部には、エンジンルーム6が画成され、エンジンルーム6内にエンジン7が配置され、その側方をエンジンカバー8で覆われている。走行機体3の前記エンジンルーム6の後方には、脱穀された穀粒を一時的に貯留する穀粒タンク10と、前記穀粒タンク10の後方に付設され、穀粒タンク10内に貯留された穀粒を外部に排出するための排出オーガ11が配置されている。
【0019】
走行機体3の左右の他側には、穀粒を選別して前記穀粒タンク10へ送る選別部12(図4参照)と、該選別部12の上部に配置され、穀稈の脱穀を行う脱穀部13が配置されている。脱穀部13は、穀稈から穀粒を脱穀する第1扱胴15aと、該第1扱胴15aを回転自在に支持する第1扱ぎ室から処理室に送られた脱穀物を処理する第2扱胴15b(図4参照)と、第1扱胴15a、第2扱胴15bに沿って穀稈を搬送するフィードチェーン16(図2、図4参照)が配置されている。脱穀部13の後部には、排稈処理装置(図示せず)が配置され、例えば、脱穀後の排稈を所要の長さに切断して圃場に排出する。
【0020】
走行機体3の先端部には、圃場の穀稈を刈取り条ごとに分けるデバイダ17、ナローガイド18等を備えた前処理部20が昇降自在に支持されている。図2、図3に示すように、前記前処理20は、図示しない取付フレームを介して前記走行機体3に回動自在に支持された横伝動筒21を有し、その一端には、該横伝動筒21の回転角を検知して前記前処理部20の上下方向の位置を検出するリフトポテンショメータ22(図5参照)が配置されている。
【0021】
横伝動筒21には、前処理伝動筒23が取付けられている。前処理伝動筒23には、前処理フレーム25が取付けられ、該前処理フレーム25の先端に、デバイダ17が固定されている。走行機体3と前処理伝動筒23の間には、アクチュエータ26が配置され、該アクチュエータ26の伸縮により前処理伝動筒23が上下方向に揺動し、前処理フレーム25を上下方向に移動させる。
【0022】
前処理フレーム25には、デバイダ17の後方に位置するように、デバイダ17で分草された穀稈の引起しを行う引起し体27が、その上部が後方に傾くように傾斜した状態で立設配置されている。前処理フレーム25の下面には、摺動式の刈刃28が配置され、この刈刃28により引起し体27で引起された穀稈の株元を切断し、穀稈の刈取を行う。
【0023】
前処理フレーム25には、デバイダ17で分草され、引起し体27で引起される穀稈を掻き込む掻込み体30、掻込み体31、掻込み体32が所定の間隔で配置されている。これら掻込み体30、掻込み体31、掻込み体32は、前処理フレーム25に回転自在に支持されたスターホイル33と、スターホイル33と同軸状に軸支された駆動プーリ35と、駆動プーリ35の前方に前処理フレーム25に回転自在に支持された従動プーリ36と、駆動プーリ35と従動プーリ36の間に掛渡された搬送ベルト37を備え、搬送ベルト37には、所定の間隔で複数の搬送タイン38が配設されている。
【0024】
供給穀稈量検出手段40は、掻込み体30に取付けられた第1条センサ41と、掻込み体31に取付けられた第2条センサ42で構成されている。走行機体3の進行方向左側の穀稈条イのみの刈取を行っている場合には、第1条センサ41のみが刈取った穀稈を検出している。また、走行機体3の進行方向左側から複数条の穀稈条イ、穀稈条ロ(又は穀稈条イ、穀稈条ロおよび穀稈条ハ)の刈取りを行っている場合には、前記第1条センサ41と前記第2条センサ42で同時に刈取った穀稈を検出する。すなわち、前記第1条センサ41と第2条センサ42の検出状態により、刈取られた穀稈の量(多、少)を検出することができるようになっている。
【0025】
穀稈搬送装置44(図3参照)は、前記脱穀部13に搬入される穀稈の穂先位置を後述する一対の扱深さセンサ57,58(図2参照)により検出し、検出された穂先位置に応じて搬送する穀稈の稈長方向の位置を調整し、前記脱穀部13における扱深さを調整する扱深さ搬送体45と、前記掻込み体30、掻込み体31、掻込み体32で掻込まれ、前記刈刃28で刈取られた穀稈を、前記扱深さ搬送体45の搬送開始位置まで搬送する搬送チェーン66、搬送チェーン67を備えている。
【0026】
前記扱深さ搬送体45は、前記横伝動筒21に上下回動自在に支持された駆動ケース43を介して、前記フィードチェーン16と前記搬送チェーン66、搬送チェーン67の間に位置するように支持されている。前記扱深さ搬送体45は、アクチュエータ46により支えられ、前記アクチュエータ46の作動により上下方向に揺動して、前記フィードチェーン16により前記脱穀部13に送込まれる穀稈の穂先が適当な扱深さになるように、前記搬送チェーン66、搬送チェーン67から送込まれた穀稈の穂先位置を調整する。
【0027】
前記扱深さ搬送体45は、株元搬送体47と穂先搬送体48を備え、前記株元搬送体47と穂先搬送体48によって搬送される穀稈を検出するメインセンサ49が配置されている。前記株元搬送体47は、前記搬送チェーン66、搬送チェーン67から送込まれた穀稈の株元側を支える挟持レール50と、前記挟持レール50に沿って配置され、前記挟持レール50に支えられた穀稈の株元側を搬送する株元搬送チェーン51を備えている。前記穂先搬送体48は、搬送ベルト52と、該搬送ベルト52に所定の間隔で配置された複数の搬送タイン53を備えている。
【0028】
前記横伝動筒21には、複数の中空パイプと複数のギヤケースにより逆U字状に形成された動力伝動ケース55が上下方向に回動自在に支持されている。前記動力伝動ケース55に固定されたブラケット56には、前記穂先搬送体48で搬送される穀稈の穂先位置を検出する一対の扱深さセンサ57、58が位置調整自在に支持されている。
【0029】
前記ブラケット56には支持部材60が取付けられ、ブラケット61を介して挟持レール62が支持されている。また、前記支持部材60の先端には、前記挟持レール50が前記株元搬送チェーン51に沿うように支持されている。
【0030】
前記動力伝動ケース55の先端部には、補助穂先搬送体63が前記掻込み体30及び掻込み体31の上方に位置するように支持されている。また、前記穂先搬送体48には、補助穂先搬送体65が前記掻込み体32の上方でこれと略平行するように一体に設けられ、前記走行機体3の前方から後方に向けて略一直線状の搬送経路を形成している。前記補助穂先搬送体63と補助穂先搬送体65は、前記動力伝動ケース55に内蔵された駆動軸64により駆動される。
【0031】
図4に示すように、前記コンバイン1は、前記エンジン7を駆動源とする駆動系統により駆動される。前記エンジン7の出力は、走行HST70に入力され、所要の速度に変換された後トランスミッション71に入力され、前記クローラ走行装置2、2を駆動して、前記走行機体3を走行させる。
【0032】
また、前記エンジン7の出力は、脱穀クラッチ(テンションクラッチ)72を介して、前記第1扱胴15a、第2扱胴15bと排稈チェーン73を駆動して、穀稈の脱穀を行うと共に、脱穀後の排稈を前記排稈チェーン73で前記排稈処理装置へ搬送させる。同時に、前記選別部12の唐箕ファン75を駆動すると共に、選別ベルト76を介して、前記選別部12の他の機器(図示せず)を駆動させ、前記脱穀部13から前記選別部12に落下した処理物から穀粒の選別を行う。
【0033】
また、前記エンジン7の出力は、前記脱穀クラッチ72を介して、搬送HST77に
入力され、所要の速度に変換された後、搬送トランスミッション78に入力され、前記フィードチェーン16を駆動する。また、前記搬送トランスミッション78の出力は、刈取クラッチ(テンションクラッチ)80を介して前記前処理部20に伝動され、前記前処理部20を駆動して穀稈の刈取りを行わせる。
【0034】
図5に示すように、前記コンバイン1の制御装置81は、入力インターフェース82と、マイコン(マイクロコンピュータ)83及び出力インターフェース85を備え、前記コンバイン1のメインスイッチ86に接続されている。
【0035】
前記入力インターフェース82には、前記リフトポテンショメータ22と、前記脱穀クラッチ72の作動状態を検出する脱穀クラッチスイッチ87と、前記刈取クラッチ80の作動状態を検出する刈取クラッチスイッチ88と、前記扱深さ搬送体45で搬送される穀稈の有無を検出するメインセンサ49と、前記前処理部20が所定の位置まで上昇したとき、前記前処理部20と前記脱穀部13の駆動を停止させる機能の有効、無効を選択するリフトシャットスイッチ90と、前記コンバイン1の走行方向を選択するバックスイッチ91と、リフト上昇スイッチ92と、前記走行HST70の出力軸に配置され、前記トランスミッション71に入力される回転数を検出するトランスミッション(T/M)回転センサ93と、前記搬送HST77の出力軸に設けられ、前記搬送HST77の出力軸の回転数を検出する搬送HST回転センサ95と、前記エンジン7の回転数を検出するエンジン回転センサ96と、前記扱深さセンサ57と、前記扱深さセンサ58と、前記第1条センサ41及び第2条センサ42が接続されている。
【0036】
前記出力インターフェース85には、ホーン97、手扱ランプ98、前記搬送HST77出力を制御するHST駆動モータ100と、エンジンストップソレノイド101が接続されている。
【0037】
前記コンバイン1を圃場に入れ、前記前処理部20を下降させ前記刈取りクラッチ80を接続して前記前処理部20を作動させた状態で、穀稈の配列方向に向けて前進させる。すると、前記デバイダ17が穀稈条イ、穀稈条ロ、穀稈条ハの間に入り分草を行い、前記引起し体27で穀稈の引起しを行うと共に、前記掻込み体30、掻込み体31及び掻込み体32で穀稈を掻き込み、前記刈刃28で穀稈の株元側を切断して穀稈の刈取りを行う。このとき、前記掻込み体30で掻込まれた穀稈条イの穀稈は、前記第1条センサ41で検出され、前記掻込み体31で掻込まれた穀稈条ロの穀稈は、前記第2条センサ42で検出される。
【0038】
刈取られた穀稈は、前記掻込み体30、掻込み体31及び掻込み体32から前記搬送チェーン66、搬送チェーン67に引渡され、前記搬送チェーン66、搬送チェーン67により前記扱深さ搬送体45の搬送開始位置まで搬送され、前記扱深さ搬送体45に引渡される。
【0039】
前記扱深さ搬送体45は、送り込まれた穀稈が前記メインセンサ49で検出されると、前記扱深さセンサ57、扱深さセンサ58で検出された穀稈の穂先位置に基づいて、アクチュエータ46を作動させ、前記扱深さ搬送体45を上下方向に揺動させ、搬送している穀稈をその穂先側あるいは株元側に移動させることにより、前記脱穀部13に送込む穀稈の稈長方向の位置を変え扱深さを調整すると共に、前記フィードチェーン16の搬送開始位置まで搬送し、その穀稈を前記フィードチェーン16に引渡す。
【0040】
前記フィードチェーン16は、前記扱深さ搬送体45から引き継いだ穀稈を前記脱穀部13に搬入し、前記第1扱胴15aで穀稈の脱穀を行う。穀粒の脱穀された排稈は、前記フィードチェーン16から前記排稈チェーン73に引渡され、前記排稈処理装置へ送られ、所定の長さに切断され圃場に排出される。
【0041】
前記前処理部20の速度制御は、図6に示す制御フローチャートに基づいて行われる。前記供給穀稈量検出手段40の前記第1条センサ41のON、OFFを判定する(図6のステップS1、以下、単にステップS○という)。前記第1条センサ41がOFFの場合、すなわち、前記前処理部20で穀稈の刈取りを行っていない場合、前記搬送HST77の速度制御は、通常の車速同調制御で行う。このとき、前記前処理部20における穀稈の搬送速度と前記フィードチェーン16による穀稈の搬送速度は、図7に示すAの曲線に沿って制御される。
【0042】
前記ステップS1で前記第1条センサ41がONの場合、すなわち、少なくとも穀稈条イの穀稈の刈取りを行っている場合、前記第2条センサ42のON、OFFを判定する(ステップS3)。前記第2条センサ42がONの場合、すなわち、前記前処理部20で、少なくとも、穀稈条イと穀稈条ロの2条以上の穀稈の刈取りを行っている場合、前記ステップS2へ移行して、前記搬送HST77の速度制御は、図7に示すAの曲線に沿った通常の車速同調制御で行う。
【0043】
前記ステップS3で、前記第2条センサ42がOFFの場合、すなわち、前記前処理部20で穀稈条イの1条のみの刈取りを行っている場合、前記搬送HST77の減速制御を行う(ステップS4)。すなわち、前記HST駆動モータ100を減速側へ作動させ、前記搬送HST77の出力を減速させることにより、前記前処理部20の前記掻込み体30、掻込み体31、掻込み体32、刈刃28、補助穂先搬送体63,65、搬送チェーン66、搬送チェーン67、扱深さ搬送体45及び前記フィードチェーン16の作動速度が低下して、穀稈の搬送速度は、図7に示すBの曲線に沿って制御される。
【0044】
前記のように、前記搬送HST77の減速制御を行うと、前記走行機体3の車速に対して前記穀稈搬送装置44や前記フィードチェーン16の穀稈の搬送速度が低下するため、前記搬送HST77を通常の車速同調制御した場合に比べて、同一車速で刈取走行した時に、前処理部20の搬送速度が速い場合より遅い場合の方が搬送される穀稈の層厚が増加することにより、搬送される穀稈の層厚を確保し前記扱深さセンサ57、扱深さセンサ58による穀稈の穂先位置の検出が確実に行えるようになる。従って、前記扱深さ搬送体45における扱深さの調整を適正に行うことができ、良好な脱穀作業を行うことができる。また、穀稈の量の変化に伴う前記扱深さ搬送体45における急激な扱深さの調整を無くすことができるので、搬送中における穀稈の姿勢の変化(斜め搬送)を防止して、タッチ部における詰りを防止することができる。
【0045】
刈取り作業中に、刈取る穀稈の量の急激な変化が起こり易い圃場の刈取り作業においても、常に前記扱深さ搬送体45で搬送される穀稈の層厚を、前記扱深さセンサ57、扱深さセンサ58で確実に検出するのに必要な厚さに確保することができる範囲で、前記走行機体3の走行速度と前記前処理部20の穀稈の搬送速度を連動させることができ、作業効率を向上せることができる。
【0046】
前記ステップS4のおける減速制御は、前記前処理部20における穀稈の搬送速度と前記フィードチェーン16による穀稈の搬送速度を、図7に示すBの曲線に沿った制御のほか、図8に示すCの直線状に制御するものであってもよい。なお、図8に示すAの曲線は、前記前処理部20における穀稈の搬送速度と前記フィードチェーン16による穀稈の搬送速度を、車速同調制御した場合の特性を示す。
【0047】
なお、上記実施の形態において、通常、図3中の穀稈条イに稈が入らず穀稈条ロ、ハに稈が入ることは殆どないと思われ、2つのセンサ41,42で1条刈りと判断したが、これに限定されることなく穀稈条イ,ロ,ハの何れにもセンサを設け、3つのセンサのいずれか1つがONすることによって、1条刈りと判断しても良い。また、条センサに限らず、扱深さ搬送体45の挟持レールの作動量感知などの稈量検出センサに代えて、少量稈の時に前処理速度を下げるようにしてもよい。
【0048】
図9は、本発明の他の実施の形態を示すもので、前記図3と同じものは、同じ符号を付けて示し、説明は省略する。本実施の形態では、前処理部20は4条刈りに構成され、前記走行機体3の走行方向右側の掻込み体32のさらに右側に掻込み体34が配置されている。また、前記供給穀稈量検出手段40を構成する前記第1条センサ41は、前記搬送チェーン66で搬送される穀稈を検出するように配置され、前記第2条センサ42は、前記搬送チェーン67で搬送される穀稈を検出するように配置されている。
【0049】
このような構成では、4条の穀稈条イ、穀稈条ロ、穀稈条ハ、穀稈条ニの刈取りを同時に行うことができる。前記掻込み体30及び掻込み体31で掻込まれ刈取られた穀稈は、前記搬送チェーン66で前記扱深さ搬送体45に向けて搬送される間に、前記第1条センサ41で検出される。また、記掻込み体32及び掻込み体34で掻込まれ刈取られた穀稈は、前記搬送チェーン67で前記扱深さ搬送体45に向けて搬送される間に、前記第2条センサ42で検出される。
【0050】
圃場の形状や広さによって1条(穀稈条イ)もしくは2条(穀稈条イと穀稈条ロ)の刈取りを行うことがある。このような場合でも、前記図6に示す制御フローチャートに基づいて、前記図7、図8に示すような減速制御を行うことにより、前記扱深さ搬送体45における扱深さの調整を適正に行うことができ、良好な脱穀作業を行うことができる。また、穀稈の量の変化に伴う前記扱深さ搬送体45における急激な扱深さの調整を無くすことができるので、搬送中における穀稈の姿勢の変化(斜め搬送)を防止して、タッチ部における詰りを防止することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 コンバイン
3 走行機体
7 駆動源(エンジン)
13 脱穀部
20 前処理部
40 供給穀稈量検出手段
41 第1条センサ
42 第2条センサ
44 穀稈搬送装置
77 前処理変速装置(搬送HST)
81 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、前記駆動源からの動力により走行する走行機体と、前記走行機体の前方に支持されて穀稈を刈取る前処理部と、これら刈取られた穀稈を脱穀する脱穀部と、を備えたコンバインにおいて、
前記前処理部は、刈取った穀稈を前記脱穀部に搬送しつつ扱深さの調節を行う穀稈搬送装置を有しており、
前記前処理部の動力伝達系に介在し、前記駆動源からの動力を変速してなる前処理変速装置と、
前記前処理部への供給穀稈量を検出する供給穀稈量検出手段と、
前記供給穀稈量検出手段により検出された穀稈量が所定量より少ない場合、前記前処理変速装置を、前記穀稈搬送装置の搬送速度が遅くなるように制御する制御装置と、を備えた、
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記制御装置は、前記走行機体の走行速度に応じて、前記穀稈搬送装置の搬送速度を制御してなる、
請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記前処理部は、複数条数の穀稈を刈取ると共に、
前記供給穀稈量検出手段は、これら複数条数の穀稈のうち、前記走行機体の進行方向左端側の条の穀稈を検出可能な第1条センサと、他の何れかの刈取り条の穀稈を検出可能な第2条センサと、を備え、
前記第1条センサが穀稈を検出しかつ、前記第2条センサが穀稈を検出しない場合に、前記制御装置は前記穀稈搬送装置の搬送速度を遅くしてなる、
請求項1又は2記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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