説明

コンバイン

【課題】脱穀後の切断排藁の落下エネルギーを回生して刈取搬送部や脱穀部等の作業部の駆動をアシストし、作業能率の向上および燃費の低減を図る。
【解決手段】排藁落下通路24を落下する切断排藁の衝突により羽根板26を回転させて発電機を駆動し、該発電機で発電された電力を蓄電池に蓄電し、該蓄電池に蓄電された電力で駆動する電動モータによって刈取搬送部や脱穀部6等の機体に設ける作業部の駆動をアシストする構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド型のコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインの作業部を駆動するエンジンとは別個に補助出力用のモータを設け、作業部に過負荷が生じた場合には、電子ガバナコントローラによるエンジンの過負荷検出結果に基づいて、バッテリから放電させて補助出力用モータを作動し、補助出力用モータがエンジンと共同して作業部を駆動し、車速を減速することなく作業能率を確保するものは、公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−337569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された技術は、エンジンの負荷が小さい機体旋回時や、機体の一時停止時や、軽作業時に、エンジンにより補助出力モータを駆動して発電し、バッテリに充電する構成である。
【0005】
本発明は、エンジンの出力により補助出力モータを駆動しバッテリに充電せずに、コンバインの作業中に発生する脱穀済み排藁の落下エネルギーを利用して発電機を回転させバッテリに充電し、エンジン出力の減少を図ろうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するために、次の技術的手段を講じる。
即ち、請求項1記載の発明は、走行装置(2)駆動用のエンジンを備えた走行車台(1)の左右一側部に脱穀部(6)を設け、該走行車台(1)の左右他側部にグレンタンク(5)を設け、該グレンタンク(5)の前側にエンジンを備えた原動部(4)を設け、該原動部(4)の前側に操縦部(3)を設け、該操縦部(3)及び脱穀部(6)の前側に刈取搬送部(7)を設け、走行車台(1)の後側にカッター型の排稾処理装置(8)を設けて機体を構成し、前記排稾処理装置(8)の下方に排藁落下通路(24)を設け、該排藁落下通路(24)に複数の羽根板(26,…)の取り付けられている羽根軸(26a)を軸架し、該羽根軸(26a)の一端に発電機(11)を取り付け、排藁落下通路(24)を落下する切断排藁の衝突により前記羽根板(26,…)を回転させて発電機(11)を駆動し、該発電機(11)で発電された電力を蓄電池(14)に蓄電し、該蓄電池(14)に蓄電された電力で駆動する電動モータ(17)によって前記刈取搬送部(7)や脱穀部(6)等の機体に設ける作業部の駆動をアシストする構成としたことを特徴とするコンバインとする。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記羽根板(26,…)の上方には、羽根板(26,…)の上昇回転部分を覆い、該羽根板(26,…)の下降回動部分に向けて切断排藁を流下案内する案内板(31,32)を設けたことを特徴とする請求項1記載のコンバインとする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によると、カッター型の排稾処理装置(8)における切断排藁の落下エネルギーを回生して電動モータ(17)を駆動し、機体に設ける刈取搬送部(7)や脱穀部(6)等の作業部の駆動をアシストして作業能率の向上および燃費の低減を図ることができる。また、羽根板(26,…)により切断排藁を拡散しながら圃場に分散落下させることができる。
【0009】
請求項2記載の発明によると、上記請求項1の発明の効果に加えて、羽根板(26,…)の回転効率を高め、発電機(11)の発電効率を高めることで、燃費を更に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバイン後部の切断側面図である。
【図4】コンバインの背面図である。
【図5】コンバイン後部の切断側面図である。
【図6】コンバイン後部の切断側面図である。
【図7】コンバインの背面図である。
【図8】コンバイン後部の切断側面図である。
【図9】コンバイン後部の切断側面図である。
【図10】コンバイン後部の切断側面図である。
【図11】コンバインの背面図である。
【図12】コンバインの背面図である。
【図13】コンバインの背面図、羽根軸の丸棒の取付状態を示す展開図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
まず、図1及び図2に基づき本発明を備えたコンバインの全体構成について説明する。
コンバインの走行車台1の下方には左右クローラ走行装置2,2を配設し、走行車台1上には、右側前部に座席付きの操縦部3を、その後方にはエンジンを備えた原動部4及び穀粒収納用のグレンタンク5を配設し、走行車台1の左側部に脱穀部6を搭載し、走行車台1の前側部には刈取搬送部7を昇降自在に設け、脱穀部6及びグレンタンク5の後方に排稾処理装置8を設けている。原動部4のエンジンの動力によりクローラ走行装置2,2及び作業部の一部に動力を伝達するように構成している。
【0012】
また、コンバインの低馬力で駆動できる作業部である刈取搬送部7の穀稈搬送装置、脱穀部6の唐箕、揺動選別棚、一番受樋及び二番受樋の搬送螺旋、脱穀部6の扱胴、二番処理胴、排塵処理胴、排塵用の吸引ファン、排稾搬送装置、排稾処理装置8、グレンタンク5への投入穀粒に送風して乾燥する乾燥用ファン等を、電動モータ17の回転動力を入力プーリを介して伝達し、駆動するように構成している。そして、刈取作業中に排稾処理装置8の排藁カッターから排出される切断排藁の落下エネルギーを利用して、交流発電機11を回転して発電し、蓄電池(あるいはキャパシタ)14に蓄電するように構成している。
【0013】
また、コンバインの一部の低馬力で駆動できる前記作業部に入力プーリ介してエンジン及び電動モータ17から動力を伝達可能に構成し、例えば、ワンウェイクラッチや遊星歯車機構により高速回転側の動力を自動的に切り換えて入力するようにして駆動するように構成してもよい。
【0014】
次に、図3及び図4に基づき排藁カッター型の排稾処理装置8から排出される切断排藁の落下エネルギーを有効利用した発電機11の発電構成について説明する。
まず、排藁カッター型の排稾処理装置8について説明する。排藁処理ケース21の前側上部に左右方向に沿わせて上部切断軸22aを、後側下部に左右方向に沿わせて下部切断軸23aをそれぞれ軸架している。上部切断軸22aには上部切断刃22,…を左右所定間隔毎に設け、下部切断軸23aには下部切断刃23,…を左右所定間隔毎に設け、原動部4のエンジンから排藁伝動装置(図示省略)を経由して動力を伝達し駆動するように構成し、図3において上部切断軸22aの上部切断刃22,…を時計方向に、下部切断軸23aの下部切断刃23,…を反時計方向に互いに接近させて回転させて、脱穀済みの排藁を切断するようにしている。排藁処理ケース21の下部排出部を側面視で下側ほど後側寄りに幅狭にした漏斗部21aに構成して切断排藁を合流させてまとめ、下方の排藁落下通路24に落下排出するようにしている。
【0015】
また、排藁落下通路24には左右方向に沿うように羽根軸26aを軸架し、羽根軸26aには左右方向に長い例えば4枚の羽根板26,…を90度間隔に突出するように取り付け、落下する切断排藁が羽根板26,…に当たると、羽根板26,…が回転する構成している。そして、羽根軸26aの左右一側には発電機11を取り付け、切断排藁の落下エネルギーを有効に利用して羽根板26,…を回転し発電するようにしている。
【0016】
前記構成によると、排藁カッター型の排稾処理装置8の切断排藁を羽根板26,…により拡散しながら圃場に分散排出することができる。また、排藁落下通路24に羽根軸26a、羽根板26,…からなる回転羽根を配設するにあたり、前方に位置している脱穀部6の揺動選別棚28の後側端部の排塵口28aよりも下方に配設しているので、羽根板26,…により飛散した切断排藁の揺動選別棚28への侵入を防止することができる。
【0017】
また、図3に示すように、排藁落下通路24に羽根軸26a、羽根板26,…からなる回転羽根を配設するにあたり、上方に位置している排藁カッター型の排稾処理装置8の上部切断刃22,…と下部切断刃23,…の切断刃の側面視で切断接合部よりも、羽根軸26aを後方に位置するように配設している。しかして、切断排藁を排藁処理ケース21の前側部を通して落下させ、次いで、下部の漏斗部21aで後方へ案内し、前側部の下方へ回転する羽根板26,…に落下させ、羽根板26,…の反時計方向への回転効率を高めることができる。
【0018】
また、排藁落下通路24に羽根軸26a、羽根板26,…からなる回転羽根を配設するにあたり、図5に示すように、上方に位置している排藁カッター型の排稾処理装置8の上部切断刃22,…と下部切断刃23,…における側面視の切断接合部よりも、羽根軸26aを前方に位置するように配設し、漏斗部21aにより羽根板26,…の前側部の上方へ回転している部分を覆い、羽根板26,…の後側部の下方に回転している部分に切断排藁を案内落下するように構成してもよい。
【0019】
このように構成すると、切断排藁を排藁処理ケース21の前側部を通して落下させ、次いで、下部の漏斗部21aで後方へ集めながら案内し、後側部の下方へ回転する羽根板26,…部に落下させ、羽根板26,…の時計方向への回転効率を高めることができる。
【0020】
また、図6及び図7に示すように、各羽根板26,…の左側端部及び左右方向中間部に、切断排藁を右側に案内する右側案内板30,…取り付けると、コンバインの右側の既刈取穀稈側に切断排藁を集めることができ、刈取作業を円滑に行なうことができる。
【0021】
また、排藁落下通路24に羽根軸26a、羽根板26,…からなる回転羽根を配設するにあたり、図8に示すように、上方に位置している排藁カッター型の排稾処理装置8の上部切断刃22,…と下部切断刃23,…の切断刃の側面視での切断接合部よりも、羽根軸26aを後側に配置し、排藁処理ケース21の下部の漏斗部21aの後側部に、切断排藁を前側に案内する前側案内板31を設けて、羽根板26,…の後側部の上方へ回転する部分を覆うようにし、羽根板26,…の前側部の下方へ回転する部分に切断排藁を案内するように構成してもよい。
【0022】
このように構成すると、排藁処理ケース21の後側部の前側案内板31により、切断排藁を前側に案内し、羽根板26,…の前側部の下方へ回転している部分に落下させ、羽根板26,…の後側部の上方へ回転する部分には落下させないようにし、羽根板26,…の反時計方向への回転効率を高めることができる。
【0023】
また、図9に示すように、排藁落下通路24に羽根軸26a、羽根板26,…からなる回転羽根を配設するにあたり、上方に位置している排藁カッター型の排稾処理装置8の上部切断刃22,…と下部切断刃23,…における側面視の切断接合部よりも、羽根軸26aを前側に位置させ、排藁処理ケース21の下部の漏斗部21aの前側部には、後側案内板32を設けて、切断排藁を後側に案内するようにし、羽根板26,…の前側部の上側へ回転する部分を覆い、羽根板26,…の後側部の下方へ回転するに切断排藁を案内するように構成してもよい。
【0024】
このように構成すると、排藁処理ケース21の前側部の切断排藁を後側案内板32により後側に案内し、羽根板26,…の後側部の下方へ回転する部分に落下させ、羽根板26,…の前側部の上方へ回転する部分には案内しないので、羽根板26,…の時計方向への回転効率を高めることができる。
【0025】
次に、図10及び図11に基づき他の実施例について説明する。
排藁処理ケース21には、前側上部に左右方向に沿わせて上部切断軸22aを、後側下部に左右方向に沿わせて下部切断軸23aをそれぞれ軸架し、上部切断軸22aには上部切断刃22,…を左右に所定間隔毎に設け、下部切断軸23aには下部切断刃23,…を左右に所定間隔毎に設け、原動部4のエンジンから排藁伝動装置(図示省略)を経由して動力を伝達し、脱穀済みの排藁を切断するようにしている。排藁処理ケース21の下部を側面視で下側ほど後側寄りに幅狭となる漏斗部21aに構成し、切断排藁を合流させて下方の排藁落下通路24に流下するようにしている。
【0026】
排藁落下通路24には右下り傾斜の左右傾斜案内板35,35を設け、切断排藁を機体右側に案内しながら落下するように構成している。この左右傾斜案内板35,35の中途開口部35a,35aには、前後方向に沿うように左右羽根軸26b,26bを軸架し、羽根軸26b,26bに前後方向に沿わせた例えば4枚の羽根板26,…を90度間隔で突出するように取り付けている。しかして、左右傾斜案内板35,35より上方に突出している羽根板26,…の下方に回転する部分に流下排藁が当たって時計方向に回転させ、羽根板26,…の下方へ突出して上方へ回転する部分には流下排藁が当たらないようにし、円滑に回転するように構成している。そして、羽根軸26b,26bの後側部に発電機11,11を取り付け、切断排藁の落下エネルギーを利用して羽根板26,…を回転させ発電するようにしている。
【0027】
前記構成によると、左右傾斜案内板35,35を流下する切断排藁により羽根板26,26を円滑に回転させ回転効率を高めることができる。また、羽根板26,…を回転させた切断排藁の一部を中途開口部35a,35aから落下させることにより、切断排藁を分散しながらコンバイン右側の既刈取穀稈側に案内し分散することができ、刈取作業を円滑に行なうことができる。
【0028】
また、図12に示すように構成してもよい。左右傾斜案内板35,35の下端開口部35b,35bに前後方向に沿うように左右羽根軸26b,26bを軸架し、羽根軸26b,26bに前後方向に沿わせた例えば4枚の羽根板26,…を90度間隔に突出するように取り付け、左右傾斜案内板35,35より羽根板26,…の上方に突出して下方に回転する部分に切断排藁を当てて回転させ、次いで、下方に隠れるように回転しなりながら円滑に回転するようにし、羽根板26,26の下側の上方へ回転する部分には切断排藁が当たらないようにしている。
【0029】
次に、図13に基づき他の実施例について説明する。
排藁落下通路24には左右方向に沿うように羽根軸26aを軸架し、羽根軸26aの一端には発電機11を取り付けている。羽根軸26aには左右所定間隔毎に所定長さの丸棒37,…を外周側に突出するように取り付け、且つ、例えば、左側の丸棒37に対して右側に隣接する丸棒37を所定角度のずらして順次突出させ、丸棒37,…により螺旋状に突出した右側への送り面を形成している。しかして、丸棒37,…により切断排藁を分散し右側に送りながら落下排出し、羽根軸26aを回転させ発電機11により発電することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 走行車台
2 走行装置
4 原動部
3 操縦部
6 脱穀部
5 グレンタンク
7 刈取搬送部
8 カッター型の排稾処理装置
11 発電機
14 蓄電池
17 電動モータ
24 排藁落下通路
26 羽根板
26a 羽根軸
31 案内板
32 案内板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(2)駆動用のエンジンを備えた走行車台(1)の左右一側部に脱穀部(6)を設け、該走行車台(1)の左右他側部にグレンタンク(5)を設け、該グレンタンク(5)の前側にエンジンを備えた原動部(4)を設け、該原動部(4)の前側に操縦部(3)を設け、該操縦部(3)及び脱穀部(6)の前側に刈取搬送部(7)を設け、走行車台(1)の後側にカッター型の排稾処理装置(8)を設けて機体を構成し、前記排稾処理装置(8)の下方に排藁落下通路(24)を設け、該排藁落下通路(24)に複数の羽根板(26,…)の取り付けられている羽根軸(26a)を軸架し、該羽根軸(26a)の一端に発電機(11)を取り付け、排藁落下通路(24)を落下する切断排藁の衝突により前記羽根板(26,…)を回転させて発電機(11)を駆動し、該発電機(11)で発電された電力を蓄電池(14)に蓄電し、該蓄電池(14)に蓄電された電力で駆動する電動モータ(17)によって前記刈取搬送部(7)や脱穀部(6)等の機体に設ける作業部の駆動をアシストする構成としたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記羽根板(26,…)の上方には、羽根板(26,…)の上昇回転部分を覆い、該羽根板(26,…)の下降回動部分に向けて切断排藁を流下案内する案内板(31,32)を設けたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−273578(P2010−273578A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127732(P2009−127732)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】