説明

コンバイン

【課題】簡単な操作で排出オーガを所望の位置に配置される操作手段の方向に向くように移動させることができるとともに、排出オーガの移動操作中であっても作業者が穀粒排出装置の操作以外の作業を行うことができるコンバインを提供する。
【解決手段】先端部が基部を中心に回動可能に構成される排出オーガ28と、排出オーガ28の先端部を任意の方向に移動させる回動モータ26等と、排出オーガ28を移動操作する持ち運び可能な操作手段である操作装置23と、排出オーガ28の基部に対する操作装置23の相対方位を算出する相対方位算出手段であるGPSユニット40と、操作装置23の操作により、GPSユニット40により算出される排出オーガ28の基部に対する操作装置23の相対方位に基づいて、排出オーガ28の先端部が操作装置23の方向に向くように、回動モータ26等を動作させる制御手段である排出制御装置25とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔操作が可能な穀粒排出装置を有するコンバインの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、刈取部で刈り取った穀稈から脱穀部で脱穀され選別部で選別された穀粒を穀粒タンクに貯溜しておき、穀粒タンクが満杯になったとき、または刈取作業終了後に、穀粒タンク内の穀粒を排出オーガ等からなる穀粒排出装置によりトラック等に積まれた容器に排出することができるコンバインは知られている。このようなコンバインにおいて、穀粒排出装置の排出オーガの移動動作や穀粒排出等の操作は、運転部に設けられた排出オーガの操作装置や運転部から持ち運び可能な有線式の操作装置によって行うようになっている。しかし、有線式の操作装置では、操作装置の携帯可能な範囲が制限されるため、コンバインの移動が必要となる場合や、補助作業者による排出オーガの誘導が必要となる場合があり、穀粒の排出作業の煩雑さが十分改善できていない問題があった。
【0003】
そこで、操作装置を無線式にすることによって、操作装置が携帯可能な範囲の制限を電波の到達可能範囲まで拡大し、穀粒の排出作業における作業性を向上したコンバインの技術が提案されている。例えば、特許文献1の如くである。
【0004】
しかし、従来のような無線式の操作装置を用いた場合であっても、穀粒タンク内の穀粒を排出オーガの先端部に形成された穀粒の排出口からトラック等に積まれた容器に排出する際、排出オーガが所望の位置に移動するまで、操作装置によって排出オーガの回動位置を微調整しながら当該操作装置の操作を続ける必要がある。そのため、排出オーガの移動が完了するまでの間、作業者は排出オーガの操作に集中しなければならずそれ以外の作業を行うことができない点で不利であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−325032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は係る課題を鑑みてなされたものであり、作業者が排出オーガの移動を細かく指示することなく簡単な操作で排出オーガを所望の位置に配置される操作手段の方向に向くように移動させることができるとともに、横排出オーガの移動操作中であっても作業者が穀粒排出装置の操作以外の作業を行うことができるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、先端部が基部に対して移動可能に構成されて、前記先端部から穀粒タンク内の穀粒を排出する排出オーガと、前記排出オーガの先端部を任意の方向に移動させるアクチュエータと、前記排出オーガを移動操作する持ち運び可能な操作手段と、前記排出オーガの基部に対する前記操作手段の相対方位を算出する相対方位算出手段と、前記操作手段の操作により、前記相対方位算出手段で算出される前記排出オーガの基部に対する操作手段の相対方位に基づいて、前記排出オーガの先端部が前記操作手段の方向に向くように、前記アクチュエータを動作させる制御手段と、を具備することを特徴とするものである。
【0009】
請求項2においては、前記方位算出手段は、GPS衛星からの電波信号を前記操作手段の位置と前記排出オーガの基部の位置とにおいて受信することにより、前記排出オーガの基部の位置における絶対方位を基準方位とする前記操作手段の相対方位を算出することを特徴とするものである。
【0010】
請求項3においては、前記方位算出手段は、前記操作手段から発信される電磁波が最も強くなる方向を前記排出オーガの基部の位置において探知することにより、前記排出オーガの基部の位置における任意の方向を基準方位とする前記操作手段の相対方位を算出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
本発明は、作業者が排出オーガの移動を細かく指示することなく、簡単な操作で横排出オーガの先端部を所望の位置に配置される操作手段の方向に向くように移動させることができるとともに、横排出オーガの移動動作中であっても作業者が穀粒排出装置の操作以外の作業を行うことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの全体的な構成を示す側面図。
【図2】第一実施例に係るに係る穀粒排出装置の構成を示す側面図。
【図3】GPSユニットの構成を示すブロック図。
【図4】第一GPS受信機と第二GPS受信機との位置関係を示す概略図。
【図5】第一実施例に係るに係る排出制御装置の制御手順を示すフローチャート図。
【図6】第二実施例に係るに係る穀粒排出装置の構成を示す側面図。
【図7】電磁波探知ユニットの構成を示すブロック図。
【図8】探知アンテナの感度を表すグラフを示す図。
【図9】電磁波発信機と電磁波探知機との位置関係を示す概略図。
【図10】第二実施形態に係るに係る排出制御装置の制御手順を示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図1を用いて本発明の一実施形態に係るコンバイン1の全体的な構成について説明する。以下の説明では、コンバイン1の刈取作業時の進行方向を前方向として前後左右方向を規定する。
【0015】
図1に示すように、コンバイン1は、走行部2と、刈取部3と、脱穀部4と、選別部5と、穀粒貯溜部6と、排藁処理部7と、運転部8等から構成される。
【0016】
走行部2は、機体フレーム9の下部に設けられている。走行部2は、左右一対のクローラを有するクローラ式走行装置10等を有する。走行部2は、クローラ式走行装置10が駆動することにより機体を走行させるように構成されている。
【0017】
刈取部3は、機体フレーム9の前端部に機体に対して昇降可能に設けられる。刈取部3は、分草装置11と、引起装置12と、切断装置13と、搬送装置30等から構成されている。刈取部3は、分草装置11により圃場の穀稈を分草し、引起装置12により分草後の穀稈を引き起こし、切断装置13により引き起こし後の穀稈を切断し、搬送装置30により切断後の穀稈を脱穀部4側へ搬送するように構成されている。
【0018】
脱穀部4は、機体フレーム9の左側であって、刈取部3の後方に設けられている。脱穀部4は、フィードチェン60と、図示せぬ扱胴等から構成されている。脱穀部4は、刈取部3から搬送される穀稈を受け継いで、フィードチェン60により排藁処理部7側へ搬送し、搬送中の穀稈を扱胴等により脱穀し、その脱穀物を選別部5へ落下させるように構成されている。
【0019】
選別部5は、機体フレーム9の左側部であって、脱穀部4の下方に設けられている。選別部5は、脱穀部4から落下させる脱穀物を揺動選別、および風選別により、穀粒と、未脱粒と、排藁と、塵埃等に選別する。そして、選別部5は、選別した穀粒を穀粒貯溜部6へ搬送し、未脱粒を脱穀部4へ搬送し、排藁、および塵埃等を外部へ排出する。
【0020】
穀粒貯溜部6は、機体フレーム9の右側後部であって、脱穀部4、および選別部5の右側方に設けられている。穀粒貯溜部6は、穀粒タンク15と、穀粒排出装置20等から構成されている。穀粒貯溜部6は、選別部5から搬送される穀粒を穀粒タンク15に貯溜するとともに、穀粒タンク15に貯溜される穀粒を穀粒排出装置20により外部へ排出可能に構成されている。
【0021】
排藁処理部7は、機体フレーム9の左側後部であって、脱穀部4の後方に設けられている。排藁処理部7は、図示せぬ排藁搬送装置や排藁切断装置等から構成されている。排藁処理部7は、脱穀部4から搬送される脱穀済みの穀稈を前記排藁搬送装置で受け継いで排藁として外部へ排出し、又は前記排藁切断装置に搬送して切断した後外部へ排出するように構成されている。
【0022】
運転部8は、機体フレーム9の右側前部であって、刈取部3の搬送装置30の右側方に設けられている。運転部8は、キャビン16と、座席17と、ハンドル18と、図示せぬ操作ペダル、および操作レバー等から構成されている。運転部8は、キャビン16により座席17やハンドル18等が覆われるように構成されている。
【0023】
このようにして、コンバイン1は、運転部8での操作具類の操作によって、エンジンの動力を各部の装置に供給して、走行部2にて機体を走行させながら、刈取部3で圃場の穀稈を刈り取り、脱穀部4で刈取部3からの穀稈を脱穀し、選別部5で脱穀部4からの脱穀物を選別して、穀粒貯溜部6で選別部5からの穀粒を貯溜すると同時に、排藁処理部7で脱穀部4からの排藁を外部へ排出することができるように構成されている。
【0024】
次に、図2、図3および図4を用いて、第一実施例に係る穀粒貯溜部6の穀粒排出装置20の構成について説明する。
【0025】
穀粒排出装置20は、図2に示すように、穀粒タンク15に貯溜される穀粒を外部へ排出するものである。穀粒排出装置20は、主に、横送りコンベアと、排出オーガ28を構成する縦排出オーガ21と、排出オーガ28を構成する横排出オーガ22と、操作装置23と、GPSユニット40(図3参照)と、方位センサ24(図3参照)と、排出制御装置25(図3参照)等とから構成される。これらの部材のうち、横送りコンベアは穀粒タンク15内に配置され、それ以外の部材は穀粒タンク15外に配置されている。
【0026】
排出オーガ28を構成する縦排出オーガ21は、前記横送りコンベアの終端に連設して、この横送りコンベアにより穀粒タンク15下部から排出される穀粒を上方に搬送するものである。縦排出オーガ21は、パイプ形状に形成された縦オーガ筒21a内にらせんコンベア21bを回動自在に支持し、これを排出クラッチ21e(図3参照)を介して伝達されるエンジンからの動力により回動させることによって、穀粒を搬送するように構成されている。
【0027】
縦排出オーガ21は、コンバイン1本体の後端部で穀粒タンク15の後方に配置され、鉛直(上下)方向に延長される。縦排出オーガ21の一側端部である下端部が穀粒タンク15の下部と連通されて、縦オーガ筒21a内のらせんコンベア21bが穀粒タンク15内の横送りコンベアと接続されている。そして、縦排出オーガ21は、横送りコンベアにより搬送されてくる穀粒タンク15内の穀粒をらせんコンベア21bにより他側端(上端部)に接続される横排出オーガ22に向けて搬送するようになっている。
【0028】
また、縦排出オーガ21の上部は、下部に対して回動自在に構成され、筒受部21cにより鉛直方向に延長した状態で回動自在に保持されている。縦オーガ筒21aの上部には、大径ギア21dが固設されている。この大径ギア21dには、アクチュエータである回動モータ26の出力軸に設けられた小径ギア26aが噛合されている。この回動モータ26には、その回動量を検出する回動量センサ26bが具備されている。
【0029】
こうして、縦排出オーガ21は、回動モータ26により小径ギア26aが回動されることで、あらかじめ設定された範囲内において、任意の回動位置までその軸心回りに回動されるようになっている。なお、本実施例において、アクチュエータは回動モータ26に限定するものではない。
【0030】
排出オーガ28を構成する横排出オーガ22は、縦排出オーガ21と接続される基部側から先端部に設けられた排出口まで穀粒を搬送するものである。横排出オーガ22は、パイプ形状に形成された横オーガ筒22a内にらせんコンベア22bを回動自在に支持し、これをらせんコンベア21bから伝達されるエンジンからの動力により回動させることによって、穀粒を搬送するように構成されている。
【0031】
横排出オーガ22は、オーガレスト19に載置されて収納位置にあるとき、脱穀部4や刈取部3の上方に配置され、コンバイン1本体の後端部から前方へ向けて略水平に延出されている。横排出オーガ22の一側端部である基部が縦排出オーガ21の他側端部である上端部と連通され、横オーガ筒22a内のらせんコンベア22bが縦オーガ筒21a内のらせんコンベア21bと接続されている。そして、横排出オーガ22は、らせんコンベア21bにより搬送されてくる穀粒、即ち穀粒タンク15内の穀粒をらせんコンベア22bにより先端部の排出口に向けて搬送するようになっている。また、横排出オーガ22は、縦排出オーガ21の回動に伴い一側端である基部を回動中心として水平方向、即ち前後左右方向に回動可能となっている。
【0032】
さらに、横排出オーガ22は、その基部で軸受部22cを介して縦排出オーガ21の上端部と上下揺動自在に連結されている。横排出オーガ22の基部と、縦オーガ筒21aの上端部との間には、アクチュエータとしての油圧シリンダ27が介設されている。油圧シリンダ27は電磁バルブ27a(図3参照)の制御により伸縮駆動される。横排出オーガ22には、油圧シリンダ27の伸縮量または横排出オーガ22の軸受部22c回りの回動量を検出する上下角度センサ22d(図3参照)が設けられている。
【0033】
こうして、横排出オーガ22は、油圧シリンダ27が伸縮駆動されることによって、あらかじめ設定された範囲内において、任意の回動位置まで上下方向に基部側の回動支点を中心として回動されるようになっている。なお、本実施例において、アクチュエータは油圧シリンダ27に限定するものではない。
【0034】
このような構成により、穀粒排出装置20において、縦排出オーガ21と横排出オーガ22とから排出オーガ28が構成される。排出オーガ28は、あらかじめ設定された範囲内において、回動モータ26により前後左右方向に回動可能とされるとともに、油圧シリンダ27により上下方向に回動可能とされて、機体に対する先端部の排出口の位置を任意に変更可能とされている。
【0035】
本実施例における「範囲」とは、コンバイン1の左右側方または後方に位置させたトラックに積まれた容器の上方付近に、横排出オーガ22の先端部に設けられた排出口を移動させることが可能な範囲である。
【0036】
操作装置23は、穀粒排出装置20を遠隔操作するものである。操作装置23は、作業者がコンバイン1から離れた位置から穀粒排出装置20を操作操作可能とするため持ち運び可能な大きさ、重量に構成される。操作装置23は、穀粒排出装置20の各操作ボタン等を具備する入出力部23aを用いて縦排出オーガ21および横排出オーガ22の操作や、縦排出オーガ21と横排出オーガ22とによって穀粒タンク15内の穀粒を排出するための操作信号を出力可能に構成される。なお、操作装置23と同様に排出オーガの回動動作や穀粒排出等の操作を行うため、穀粒排出装置20を直接操作する操作装置が運転部8に別途設けられている。
【0037】
GPSユニット40は、図3に示すように、GPS衛星100からの電波信号を利用して位置を算出するものである。GPSユニット40は、第一GPS受信機41と、第二GPS受信機42とから構成される。GPSユニット40は、第一GPS受信機41が計測するGPS衛星100からの電波信号の位相と第二GPS受信機42が計測するGPS衛星100からの電波信号の位相とを利用して第二GPS受信機42に対する第一GPS受信機41の相対方位(相対位置)を高精度に算出する。
【0038】
第一GPS受信機41は、GPS衛星100からの電波信号の位相、および第一GPS受信機41(第一GPSアンテナ41b)の位置を計測するものである。第一GPS受信機41は、操作装置23に設けられている。この第一GPS受信機41は、操作装置23に具備され(図2、図4参照)、第一操作表示部41aと、第一GPSアンテナ41bと、第一無線部41dと、第一処理部41cとから構成される。
【0039】
第一操作表示部41aは、第一GPS受信機41の各種入力を行ったり、第一GPS受信機41の動作状況等を表示したりするものである。第一操作表示部41aは、図示しないボタンや液晶パネル等で構成される。
【0040】
第一GPSアンテナ41bは、GPS衛星100からの電波信号を受信するものである。第一GPSアンテナ41bは、GPSユニット40が算出する相対方位の基準となる。
【0041】
第一処理部41cは、第一GPS受信機41を制御するものである。第一処理部41cは、具体的には、CPU、ROM、RAM等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。第一処理部41cは、種々のプログラム、およびデータが格納される。第一処理部41cは、前記プログラム等に基づいて、電波信号の位相の計測、および第一GPS受信機41の制御を行う。
【0042】
第一無線部41dは、無線通信を行うものである。第一無線部41dは、第一処理部41cが計測するGPS衛星100からの電波信号の位相、および操作装置23の入出力部23aに入力された穀粒排出装置20の操作信号を後述の第二無線部42cに送信する。また、第一無線部41dは、後述の第二無線部42cから送信される穀粒排出装置20の動作状況についての信号を受信する。
【0043】
第一処理部41cは、第一操作表示部41aに接続され、第一操作表示部41aに入力されるGPSユニット40の各種設定を取得することや、第一GPS受信機41の動作状態を第一操作表示部41aの図示しない液晶パネル等に表示させることが可能である。
【0044】
第一処理部41cは、第一GPSアンテナ41bに接続され、第一GPSアンテナ41bが受信するGPS衛星100からの電波信号を取得することが可能である。
【0045】
第一処理部41cは、第一無線部41dに接続され、第一無線部41dに第一処理部41cが計測した電波信号の位相を第二無線部42cに送信させることが可能である。また、操作装置23は、入出力部23aが第一無線部41dに接続され、第一無線部41dに穀粒排出装置20の操作信号を送信させることが可能であるとともに、穀粒排出装置20の動作状況についての信号を取得することが可能である。
【0046】
第二GPS受信機42は、GPS衛星100からの電波信号の位相、および第二GPS受信機42(第二GPSアンテナ42b)の位置を計測するとともに、第二GPS受信機42に対する第一GPS受信機41の相対方位を算出するものである。第二GPS受信機42は、コンバイン1本体に設けられている。この第二GPS受信機42は、第二操作表示部42aと、第二GPSアンテナ42bと、第二無線部42cと、第二処理部42dとから構成される。
【0047】
第二操作表示部42aは、各種入力を行ったり、第二GPS受信機42の動作状況等を表示したりするものである。第二操作表示部42aは、図示しないボタンや液晶パネル等で構成される。
【0048】
第二GPSアンテナ42bは、GPS衛星100からの電波信号を受信するものである。第二GPSアンテナ42bは、縦排出オーガ21の他側端(上端部)付近で、横排出オーガ22の回動中心となる基部に設置されて(図2、図4参照)GPSユニット40が算出する相対方位の基準となる。
【0049】
第二無線部42cは、無線通信を行うものである。第二無線部42cは、縦排出オーガ21の他側端に配設される(図2、図4参照)。第二無線部42cは、第一GPS受信機41の第一処理部41cが計測した電波信号の位相を受信する。また、第二無線部42cは、操作装置23の入出力部23aに入力された穀粒排出装置20の操作信号を受信し、穀粒排出装置20の動作状況についての信号を送信する。なお第二無線部42cが配設される位置は本実施例に限定するものではない。
【0050】
第二処理部42dは、第二GPS受信機42を制御するものである。第二処理部42dは、具体的には、CPU、ROM、RAM等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。第二処理部42dは、種々のプログラム、およびデータが格納される。第二処理部42dは、前記プログラム等に基づいて、第二GPS受信機42の制御、GPS衛星100からの電波信号の位相の計測、および第二GPS受信機42に対する第一GPS受信機41の相対方位を算出する。
【0051】
第二処理部42dは、第二操作表示部42aに接続され、第二操作表示部42aに入力されるGPSユニット40の各種設定を取得することや、第二GPS受信機42の動作状態を図示しない液晶パネルに表示させることが可能である。
【0052】
第二処理部42dは、第二GPSアンテナ42bに接続され、第二GPSアンテナ42bが受信するGPS衛星100からの電波信号を取得することが可能である。
【0053】
第二処理部42dは、第二無線部42cに接続され、第一GPS受信機41の第一処理部41cが計測した電波信号の位相を取得することが可能である。
【0054】
ここで、GPS(Global・Positioning・System)を利用して第二GPS受信機42に対する第一GPS受信機41の相対方位を算出する方法について説明する。
【0055】
GPSを利用した測量方法として相対測位を用いる。相対測位とは、一のGPS受信機と他のGPS受信機とが同一のGPS衛星100から発信される電波信号の位相を、同時に4機以上のGPS衛星100・100・100・100・・について計測して位相差を算出することで、GPS受信機間の相対的な位置関係を算出する方法である。本実施例において、操作装置23に具備される第一GPS受信機41を一のGPS受信機とし、他のGPS受信機を縦排出オーガ21の他側端に設置される第二GPSアンテナ42bによって電波信号を受信する第二GPS受信機42とする。第一GPS受信機41および第二GPS受信機42は、同時に4機以上のGPS衛星100・100・100・100・・からの電波信号を受信するが、各GPS衛星100に対する態様が同一であるため、一のGPS衛星100からの電波信号についての態様のみを説明する。
【0056】
第一GPS受信機41および第二GPS受信機42は、同一のGPS衛星100から発信される電波信号を同時に受信する。第一GPS受信機41は、第一GPSアンテナ41bが受信したGPS衛星100からの電波信号の位相、および第一GPS受信機41(第一GPSアンテナ41b)の位置を第一処理部41cによって計測する。同様に第二GPS受信機42は、第二GPSアンテナ42bが受信したGPS衛星100からの電波信号の位相、および第二GPS受信機42(第二GPSアンテナ42b)の位置を第二GPS受信機42の位置を第二処理部42dによって計測する。第一GPS受信機41は、第一処理部41cが計測した電波信号の位相、および第一GPS受信機41(第一GPSアンテナ41b)の位置を第一無線部41d、第二無線部42cを介して第二GPS受信機42へ送信する。
【0057】
第二GPS受信機42は、第一GPS受信機41が計測した電波信号の位相、および第一GPS受信機41(第一GPSアンテナ41b)の位置を取得し、第一GPS受信機41が計測した電波信号の位相と第二GPS受信機42が計測した電波信号の位相との位相差Phを第二処理部42dによって算出する。第二GPS受信機42は、GPS衛星100の位置誤差や対流圏・電離層遅延量等の誤差を消去するため、一のGPS衛星100について算出した位相差Phと他のGPS衛星100について算出した位相差Phと位相差(位相二重差)を算出する。第二GPS受信機42は、第一GPS受信機41(第一GPSアンテナ41b)の位置、第二GPS受信機42(第二GPSアンテナ42b)の位置、および4機以上のGPS衛星100・100・100・100・・について同様に算出した位相二重差に基づいて、第二GPS受信機42に対する第一GPS受信機41の相対位置を算出する。
【0058】
第二GPS受信機42に対する第一GPS受信機41の相対位置とは、第二GPS受信機42を基準位置とする第一GPS受信機41までの距離、および絶対方位から構成される。すなわち、GPSユニット40は、横排出オーガ22の基部における絶対方位を基準方位とする操作装置23の相対方位を算出する。なお、GPSを利用した測量方法は、本実施例に限定されるものではなく、絶対方位を基準方位とする相対方位が算出可能な測量方法であればよい。
【0059】
方位センサ24は、方位を検出するものである。方位センサ24は、コンバイン1の任意の位置に設置され、地磁気を基準として絶対方位を検出する。これにより、コンバイン1の前方向の絶対方位を決定することが可能である。
【0060】
排出制御装置25は、穀粒排出装置20を制御するものである。排出制御装置25は、具体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。排出制御装置25は、種々のプログラム、およびデータが格納される。排出制御装置25は、前記プログラム等に基づいて、穀粒の排出や横排出オーガ22の自動移動操作の制御等を行う。
【0061】
排出制御装置25は、排出クラッチ21eと接続され、排出クラッチ21eの制御によりエンジンの動力をらせんコンベア21b、およびらせんコンベア22bに伝達させることが可能である。
【0062】
排出制御装置25は、回動モータ26と回動量センサ26bとに接続され、回動モータ26を動作させることが可能であり、回動量センサ26bが検出する回動モータ26の回動量によりコンバイン1の前方向を基準方位とする横排出オーガ22の相対方位を取得することが可能である。
【0063】
排出制御装置25は、電磁バルブ27aと上下角度センサ22dとに接続され、電磁バルブ27aの制御により油圧シリンダ27を動作させることが可能であり、上下角度センサ22dにより、横排出オーガ22がオーガレスト19に載置された収納位置を基準とする横排出オーガ22の上下方向の相対角度を取得することが可能である。
【0064】
排出制御装置25は、GPSユニット40(第二処理部42d)に接続され、GPSユニット40が算出する第二GPS受信機42に対する第一GPS受信機41の相対方位、すなわち、横排出オーガ22の基部における絶対方位を基準方位とする操作装置23の相対方位を取得することが可能である。
【0065】
排出制御装置25は、操作装置23と第一無線部41dおよび第二無線部42c等を介して通信可能に構成され、操作装置23に入力される穀粒排出装置20の操作信号を取得することが可能である。
【0066】
排出制御装置25は、方位センサ24と接続され、方位センサ24が検出するコンバイン1の前方向の絶対方位を取得することが可能である。
【0067】
また、排出制御装置25は、図4に示すように、回動量センサ26bが検出する回動モータ26の回動量から取得したコンバイン1の前方向を基準方位とする横排出オーガ22の相対方位と、GPSユニット40から取得した横排出オーガ22の基部における絶対方位を基準方位とする操作装置23の相対方位と、方位センサ24から取得したコンバイン1の前方向の絶対方位とから、横排出オーガ22の基部を基準とする横排出オーガ22の先端部の方向と、横排出オーガ22の基部を基準とする操作装置23の方向とがなす水平方向の角度である移動角度θ1を算出することが可能である。
【0068】
次に、操作装置23による自動移動操作の制御態様について説明する。
【0069】
排出制御装置25は、作業者により所望の位置に配置された操作装置23の操作が行われて、横排出オーガ22の先端部を操作装置23の方向に向くように移動させる自動操作信号を操作装置23から第一GPS受信機41および第二GPS受信機42を介して受信した場合、回動量センサ26bが検出する回動モータ26の回動量からコンバイン1の前方向を基準方位とする横排出オーガ22の相対方位と、GPSユニット40から横排出オーガ22の基部における絶対方位を基準方位とする操作装置23の相対方位と、方位センサ24からコンバイン1の前方向の絶対方位とを取得する。排出制御装置25は、取得した各方位から横排出オーガ22の移動角度θ1を算出した後、横排出オーガ22の移動を開始させる。
【0070】
以下では、排出制御装置25による制御態様について、図5を用いて具体的に説明する。
【0071】
ステップS110において、排出制御装置25は、第一GPS受信機41および第二GPS受信機42を介して操作装置23から自動操作信号を受信したか否か判定する。
その結果、操作装置23から自動操作信号を受信したと判断した場合、排出制御装置25は制御段階をステップS120に移行する。
また、操作装置23から自動操作信号を受信していないと判断した場合、排出制御装置25は制御段階をステップS110へ繰り返し移行する。
【0072】
ステップS120において、排出制御装置25は、第一GPS受信機41がGPS衛星100からの電波信号の位相を計測しているか否か、および第二GPS受信機42がGPS衛星100からの電波信号の位相を計測しているか否か判定する。
その結果、第一GPS受信機41と第二GPS受信機42とがGPS衛星100からの電波信号の位相を計測していると判定した場合、排出制御装置25は制御段階をステップS130へ移行する。
また、第一GPS受信機41、または第二GPS受信機42がGPS衛星100からの電波信号の位相を計測していないと判定した場合、排出制御装置25は制御段階をステップS121へ移行する。
【0073】
ステップS121において、排出制御装置25は、操作装置23に第二無線部42cを介して位置計測不能信号を送信する。操作装置23は、第一無線部41dを介して位置計測不能信号を受信すると、第一処理部41cが第一操作表示部41aに位置計測が不能である表示を行う。
【0074】
ステップS130において、排出制御装置25は、回動量センサ26bが検出する回動モータ26の回動量からコンバイン1の前方向を基準方位とする横排出オーガ22の相対方位と、GPSユニット40から横排出オーガ22の基部における絶対方位を基準方位とする操作装置23の相対方位と、方位センサ24からコンバイン1の前方向の絶対方位とを取得した後、制御段階をステップS140へ移行する。
【0075】
ステップS140において、排出制御装置25は、取得したコンバイン1の前方向を基準方位とする横排出オーガ22の相対方位と、横排出オーガ22の基部における絶対方位を基準方位とする操作装置23の相対方位と、コンバイン1の前方向の絶対方位とから横排出オーガ22の移動角度θ1を算出した後、制御段階をステップS150へ移行する。
【0076】
ステップS150において、排出制御装置25は、横排出オーガ22を移動角度θ1だけ移動させた場合に横排出オーガ22の位置があらかじめ設定された範囲内か否か判定する。
その結果、横排出オーガ22を移動角度θ1だけ移動させた場合に横排出オーガ22の位置があらかじめ設定された範囲内であると判断した場合、排出制御装置25は制御段階をステップS160へ移行する。
また、横排出オーガ22を移動角度θ1だけ移動させた場合に横排出オーガ22の位置があらかじめ設定された範囲内でないと判断した場合、排出制御装置25は制御段階をステップS151へ移行する。
【0077】
ステップS151において、排出制御装置25は、操作装置23に第二無線部42cを介して範囲外信号を送信する。操作装置23は、第一無線部41dを介して範囲外信号を受信すると、第一処理部41cが第一操作表示部41aにあらかじめ設定された範囲外である表示を行う。
【0078】
ステップS160において、排出制御装置25は、電磁バルブ27aを制御して油圧シリンダ27により横排出オーガ22を上限位置まで上方に回動させ、回動モータ26により縦排出オーガ21を回動させ、横排出オーガ22を移動角度θ1だけ移動させる自動移動操作を開始する。
【0079】
ステップS170において、排出制御装置25は、回動量センサ26bが検出する回動モータ26の回動量を取得し、横排出オーガ22を移動角度θ1だけ移動させたか否か判定する。
その結果、横排出オーガ22を移動角度θ1だけ移動させたと判定した場合、排出制御装置25は自動移動操作を終了する。
また、横排出オーガ22を移動角度θ1だけ移動させていないと判定した場合、排出制御装置25は制御段階をステップS170へ繰り返し移行する。
【0080】
ステップS121において、排出制御装置25は、操作装置23に第二無線部42cを介して位置計測不能信号を送信する。操作装置23は、第一無線部41dを介して位置計測不能信号を受信すると、第一処理部41cが第一操作表示部41aに位置計測が不能である表示を行う。
【0081】
また、排出制御装置25は、作業者により操作装置23の操作が行われて、横排出オーガ22がオーガレスト19に載置される収納位置に移動させる自動操作信号を操作装置23から第一GPS受信機41および第二GPS受信機42を介して受信した場合、回動量センサ26bが検出する回動モータ26の回動量から横排出オーガ22が収納位置に移動するために必要な移動角度を算出した後、同様にして回動モータ26によって横排出オーガ22の移動を開始させる。
【0082】
以上の如く、コンバイン1は、先端部が基部を中心に回動可能に構成されて、前記先端部から穀粒タンク15内の穀粒を排出する排出オーガ28と、排出オーガ28の先端部を任意の方向に移動させるアクチュエータである回動モータ26と油圧シリンダ27(電磁バルブ27a)と、排出オーガ28を移動操作する持ち運び可能な操作手段である操作装置23と、排出オーガ28の基部に対する操作装置23の相対方位を算出する相対方位算出手段であるGPSユニット40と、操作装置23の操作により、GPSユニット40で算出される排出オーガ28の基部に対する操作装置23の相対方位に基づいて、排出オーガ28の先端部が操作装置23の方向に向くように、回動モータ26と油圧シリンダ27(電磁バルブ27a)とを動作させる制御手段である排出制御装置25と、を具備するものである。
【0083】
また、前記相対方位算出手段であるGPSユニット40は、GPS衛星100からの電波信号を前記操作手段である操作装置23と排出オーガ28の基部とにおいて受信することにより、排出オーガ28の基部における絶対方位を基準方位とする操作装置23の相対方位を算出することを特徴とするものである。
【0084】
このように構成にすることにより、作業者は、排出オーガ28を穀粒排出位置等の所望の位置に配置した操作装置23により排出オーガ28の自動移動操作を行うだけで、横排出オーガ22の先端部にある排出口を操作装置23の方向に移動させることができる。これにより、作業者は、排出オーガ28の移動を細かく指示することなく簡単な操作で横排出オーガ22の排出口を所望の位置へ移動させることができるとともに、排出オーガ28の移動動作中であっても作業者が穀粒排出装置20の操作以外の作業を行うことができる。
【0085】
具体的には、例えば、穀粒タンク15内の穀粒を横排出オーガ22の先端部に形成された穀粒の排出口からトラック等に積まれた容器70に排出する際、作業者はまず穀粒の排出先である容器70に近づく。そして、容器70に近づいた状態で、操作装置23の操作ボタンを一度だけ押すなどして、排出オーガ28の自動移動操作を行う。その結果、縦オーガ21及び横排出オーガ22が適宜に回動して、横排出オーガ22の先端部が操作装置23の方向に向き、この先端部の排出口が容器70の投入口の上方となる穀粒排出位置、即ち所望の位置まで移動させることができる。
【0086】
なお、作業者は刈取作業を開始する前にトラック等に積まれた容器70に操作装置23(第一GPS受信機41)を取り付けておけば、穀粒タンク15内の穀粒を横排出オーガ22の先端部に形成された穀粒の排出口から容器70に排出する際、コンバイン1を操縦してトラックに所定距離まで近づき、運転部8で穀粒排出装置20を直接操作する操作装置の操作ボタンを一度だけ押すなどして、排出オーガ28の自動移動操作を行うことが可能となる。この場合、作業者がコンバイン1に搭乗したままの状態で、縦オーガ21及び横排出オーガ22が適宜に回動して、横排出オーガ22の先端部が操作装置23の方向に向き、この先端部の排出口が容器70の投入口の上方となる穀粒排出位置まで移動させることができる。
【0087】
次に、図6および図7を用いて、第二実施例に係る穀粒貯溜部6の穀粒排出装置20の構成について説明する。なお、以下の実施例において、既に説明した第一実施例と同様の点に関しては同一符号を付してその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0088】
穀粒排出装置20は、図6に示すように、穀粒タンク15に貯溜される穀粒を外部へ排出するものである。穀粒排出装置20は、主に、横送りコンベアと、縦排出オーガ21と、横排出オーガ22と、操作装置23と、電磁波探知ユニット50と、排出制御装置25(図7参照)等とから構成される。これらの部材のうち、横送りコンベアは穀粒タンク15内に配置され、それ以外の部材は穀粒タンク15外に配置されている。
【0089】
電磁波探知ユニット50は、図7に示すように、電磁波が発信される方向を探知するものである。電磁波探知ユニット50は、電磁波発信機51と電磁波探知機52とから構成される。電磁波探知ユニット50は、電磁波発信機51から発信される電磁波の方向を電磁波探知機52によって探知することで電磁波探知機52に対する電磁波発信機51の相対方位を算出する。なお、電磁波としては電波や赤外線等を用いる。
【0090】
電磁波発信機51は、電磁波の発信を行うものである。電磁波発信機51は、操作装置23に設けられている(図6参照)。この電磁波発信機51は、発信機操作表示部51aと、発信機無線部51bと、発信機処理部51cと、から構成される。
【0091】
発信機操作表示部51aは、電磁波発信機51の各種入力を行ったり、電磁波発信機51の動作状況等を表示したりするものである。発信機操作表示部51aは、図示しないボタンや液晶パネル等で構成される。
【0092】
発信機無線部51bは、電磁波の発信および操作信号の送信を行うものである。発信機無線部51bは、発信機処理部51cが発生させる電磁波を発信する。また、発信機無線部51bは、電磁波探知ユニット50、および穀粒排出装置20の操作信号を送受信する。
【0093】
発信機処理部51cは、電磁波発信機51を制御するものである。発信機処理部51cは、具体的には、CPU、ROM、RAM等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。発信機処理部51cは、種々のプログラム、およびデータが格納される。発信機処理部51cは、前記プログラム等に基づいて、電磁波の発信、および電磁波探知ユニット50の操作信号の送受信についての制御を行う。
【0094】
発信機処理部51cは、発信機操作表示部51aに接続され、発信機操作表示部51aに入力される電磁波発信機51の各種設定を取得することや、電磁波発信機51の動作状態を発信機操作表示部51aの図示しない液晶パネル等に表示させることが可能である。
【0095】
発信機処理部51cは、発信機無線部51bに接続され、発信機無線部51bに電磁波を発信させること、および発信機無線部51bに電磁波探知ユニット50の操作信号を送信させることが可能である。また、操作装置23は、入出力部23aが発信機無線部51bに接続され、発信機無線部51bに穀粒排出装置20の操作信号を送信させることが可能であるとともに、穀粒排出装置20の動作状況についての信号を取得することが可能である。
【0096】
電磁波探知機52は、電磁波の発信方向を探知するものである。電磁波探知機52は、コンバイン1本体に設けられている。この電磁波探知機52は、探知機操作表示部52aと、探知機無線部52bと、探知機アンテナ部53と、探知機処理部52cと、から構成される。
【0097】
探知機操作表示部52aは、各種入力を行ったり、探知機操作表示部52aの動作状況等を表示したりするものである。探知機操作表示部52aは、図示しないボタンや液晶パネル等で構成される。
【0098】
探知機無線部52bは、無線通信を行うものである。探知機無線部52bは、横排出オーガ22の基部に配設される(図6参照)。探知機無線部52bは、電磁波発信機51からの操作信号を受信する。また、探知機無線部52bは、操作装置23の入出力部23aに入力された穀粒排出装置20の操作信号を受信し、穀粒排出装置20の動作状況についての信号を送信する。なお、探知機無線部52bの配設位置は本実施例に限定するものではない。
【0099】
探知機アンテナ部53は、電磁波発信機51からの電磁波を探知するものである。探知機アンテナ部53は、図6に示すように、探知アンテナ53a、アンテナ用大径ギア53b、アンテナ用小径ギア53c、およびアンテナ回動モータ53dから構成される。探知機アンテナ部53では、探知アンテナ53aが、横排出オーガ22の回動中心となる基部に、回動中心を横排出オーガ22の水平方向の回動中心と同一にして回動自在に配設される回転部材となるアンテナ用大径ギア53bに固設される。このアンテナ用大径ギア53bとアンテナ回動モータ53dに固設されるアンテナ用小径ギア53cとが噛合されている。
【0100】
こうして、探知機アンテナ部53は、アンテナ回動モータ53dによってアンテナ用小径ギア53cを回動することで、探知アンテナ53aを横排出オーガ22の水平方向の回動中心と同一の回動中心で回動することができるように構成される(図9参照)。アンテナ回動モータ53dには、アンテナ回動モータ53dの回動量を検出するアンテナ回動量センサ53eが設けられている。但し、探知アンテナ53aと探知機無線部52bの受信部は一体的に構成して回転部材上に配置することも可能である。
【0101】
探知機処理部52cは、図7に示すように、電磁波探知機52を制御するものである。探知機処理部52cは、具体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。探知機処理部52cは、種々のプログラム、およびデータが格納される。探知機処理部52cは、前記プログラム等に基づいて、電磁波の発信される方向の探知、および電磁波探知ユニット50の操作信号の送受信についての制御を行う。
【0102】
探知機処理部52cは、探知機操作表示部52aに接続され、探知機操作表示部52aに入力される電磁波探知機52の各種設定を取得することや、探知機操作表示部52aの動作状態を探知機操作表示部52aの図示しない液晶パネル等に表示させることが可能である。
【0103】
探知機処理部52cは、探知機無線部52bに接続され、電磁波探知ユニット50の操作信号を取得することが可能である。
【0104】
探知機処理部52cは、探知機アンテナ部53の探知アンテナ53aに接続され、電磁波発信機51が発信する電磁波を探知させることが可能である。
【0105】
探知機処理部52cは、探知機アンテナ部53のアンテナ回動モータ53dとアンテナ回動量センサ53eと接続され、アンテナ回動モータ53dを動作させることが可能であり、アンテナ回動量センサ53eが検出するアンテナ回動モータ53dの回動量からコンバイン1の前方向を基準方位とする探知アンテナ53aの相対方位を取得することが可能である。
【0106】
ここで、電磁波を利用して電磁波探知機52に対する電磁波発信機51の相対方向を算出する方法について、図8および図9を用いて説明する。
【0107】
電磁波が発信される方向を探知する探知アンテナ53aとして、指向性アンテナを用いる。指向性アンテナとは、図8に示すように、電波の送受信において特定の方向のみ感度がよいアンテナのことをいう。指向性アンテナである探知アンテナ53aが最も強い電磁波を探知した方向に電磁波を発信する電磁波発信機51が存在するとして、電磁波探知機52に対する電磁波発信機51の相対方位を算出する。
【0108】
図9に示すように、電磁波発信機51を具備する操作装置23は、横排出オーガ22を移動させたい位置に配置された状態で、電磁波発信機51から電磁波探知機52に自動移動操作信号を送信するとともに、探知用の電磁波を発信する。電磁波探知機52は、電磁波発信機51からの自動移動操作信号を受信すると、探知アンテナ53aをアンテナ回動モータ53dによって360度回動させて電磁波を探知する。電磁波探知機52は、コンバイン1の前方向を基準方位とする電磁波探知機52に対する電磁波発信機51の相対方向として、探知アンテナ53aが電磁波を最も強く探知した方向をアンテナ回動モータ53dの回動量から算出する。すなわち、横排出オーガ22の基部におけるコンバイン1の前方向を基準方位とする操作装置23の相対方位を算出する。
【0109】
排出制御装置25は、図7に示すように、穀粒排出装置20を制御するものである。排出制御装置25は、具体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。排出制御装置25は、種々のプログラム、およびデータが格納される。排出制御装置25は、前記プログラム等に基づいて、穀粒の排出、横排出オーガ22の自動移動操作の制御等を行う。
【0110】
排出制御装置25は、操作装置23と電磁波探知機52および電磁波発信機51を介して通信可能に構成され、操作装置23に入力される穀粒排出装置20の操作信号を取得することが可能である。
【0111】
排出制御装置25は、電磁波探知ユニット50(探知機処理部52c)に接続され、電磁波探知ユニット50(探知機処理部52c)が算出する電磁波探知機52に対する電磁波発信機51の相対方位、すなわち、横排出オーガ22の基部におけるコンバイン1の前方向を基準方位とする操作装置23の相対方位を算出する。
【0112】
また、排出制御装置25は、図9に示すように、回動量センサ26bが検出する回動モータ26の回動量から取得したコンバイン1の前方向を基準方位とする横排出オーガ22の相対方位と、アンテナ回動量センサ53eが検出するアンテナ回動モータ53dの回動量から取得したコンバイン1の前方向を基準方位とする操作装置23の相対方位とから、横排出オーガ22の基部を基準とする横排出オーガ22の先端部の方向と、横排出オーガ22の基部を基準とする操作装置23の方向とがなす水平方向の角度である移動角度θ2を算出することが可能である。
【0113】
次に、操作装置23による自動移動操作の制御態様について説明する。
【0114】
排出制御装置25は、作業者により所望の位置に配置された操作装置23の操作が行われて、この操作装置23から横排出オーガ22の先端部が操作装置23の方向に向くように移動させる自動操作信号を受信した場合、回動量センサ26bが検出する回動モータ26の回動量からコンバイン1の前方向を基準方位とする横排出オーガ22の相対方位と、アンテナ回動量センサ53eが検出するアンテナ回動モータ53dの回動量からコンバイン1の前方向を基準方位とする操作装置23の相対方位とを取得する。排出制御装置25は、取得した各方位から横排出オーガ22の移動角度θ2を算出した後、横排出オーガ22の回動を開始させる。
【0115】
以下では、排出制御装置25による制御態様について、図10を用いて具体的に説明する。
【0116】
ステップS210において、排出制御装置25は、電磁波探知機52および電磁波発信機51を介して操作装置23からの自動操作信号を受信したか否か判定する。
その結果、操作装置23からの自動操作信号を受信したと判定した場合、排出制御装置25は制御段階をステップS220に移行する。
また、操作装置23からの自動操作信号を受信していないと判定した場合、排出制御装置25は制御段階をステップS210へ繰り返し移行する。
【0117】
ステップS220において、排出制御装置25は、電磁波探知ユニット50によって電磁波の探知を開始した後、制御段階をステップS230に移行する。
【0118】
ステップS230において、排出制御装置25は、電磁波探知ユニット50が探知した電磁波の強度が基準値より大きいか否か判定する。
その結果、電磁波探知ユニット50が探知した電磁波の強度が基準値より大きいと判定した場合、排出制御装置25は制御段階をステップS240へ移行する。
また、電磁波探知ユニット50が探知した電磁波の強度が基準値以下と判定した場合、排出制御装置25は制御段階をステップS231へ移行する。
【0119】
ステップS231において、排出制御装置25は、操作装置23に探知機無線部52bを介して電磁波探知不能信号を送信する。操作装置23は、発信機無線部51bを介して位置計測不能信号を受信すると、発信機処理部51cが発信機操作表示部51aに電磁波探知が不能である表示を行う。
【0120】
ステップS240において、排出制御装置25は、回動量センサ26bが検出する回動モータ26の回動量からコンバイン1の前方向を基準方位とする横排出オーガ22の相対方位と、探知アンテナ53aが電磁波を最も強く探知した方向におけるアンテナ回動量センサ53eが検出するアンテナ回動モータ53dの回動量からコンバイン1の前方向を基準方位とする操作装置23の相対方位とを取得した後、制御段階をステップS250へ移行する。
【0121】
ステップS250において、排出制御装置25は、取得したコンバイン1の前方向を基準方位とする横排出オーガ22の相対方位と、コンバイン1の前方向を基準方位とする操作装置23の相対方位とから横排出オーガ22の移動角度θ2を算出した後、制御段階をステップS260へ移行する。
【0122】
ステップS260において、排出制御装置25は、横排出オーガ22を移動角度θ2だけ移動させた場合に横排出オーガ22の位置があらかじめ設定された範囲内か否か判定する。
その結果、横排出オーガ22を移動角度θ2だけ移動させた場合に横排出オーガ22の位置があらかじめ設定された範囲内であると判断した場合、排出制御装置25は制御段階をステップS270へ移行する。
また、横排出オーガ22を移動角度θ2だけ移動させた場合に横排出オーガ22の位置があらかじめ設定された範囲内でないと判断した場合、排出制御装置25は制御段階をステップS261へ移行する。
【0123】
ステップS261において、排出制御装置25は、操作装置23に探知機無線部52bを介して範囲外信号を送信する。操作装置23は、発信機無線部51bを介して範囲外信号を受信すると、発信機処理部51cが発信機操作表示部51aにあらかじめ設定された範囲外である表示を行う。
【0124】
ステップS270において、排出制御装置25は、電磁バルブ27aを制御して油圧シリンダ27により横排出オーガ22を上限位置まで上方に回動させ、回動モータ26により縦排出オーガ21を回動させ、横排出オーガ22を移動角度θ2だけ移動させる自動移動操作を開始する。
【0125】
ステップS280において、排出制御装置25は、回動量センサ26bが検出する回動モータ26の回動量を取得し、横排出オーガ22を移動角度θ2だけ移動させたか否か判定する。
その結果、横排出オーガ22を移動角度θ2だけ移動させたと判定した場合、排出制御装置25は自動移動操作を終了する。
また、横排出オーガ22を移動角度θ2だけ移動させていないと判定した場合、排出制御装置25は制御段階をステップS280へ繰り返し移行する。
【0126】
また、排出制御装置25は、作業者により操作装置23の操作が行われて、この操作装置23から横排出オーガ22がオーガレスト19に載置される収納位置に移動させる自動操作信号を発信機無線部51bおよび探知機無線部52bを介して受信した場合、回動量センサ26bが検出する回動モータ26の回動量から横排出オーガ22が収納位置に移動するために必要な移動角度を算出した後、同様にして回動モータ26によって横排出オーガ22の移動を開始させる。
【0127】
以上の如く、相対方向検出手段である電磁波探知ユニット50は、操作手段である操作装置23から発信される電磁波が最も強くなる方向を排出オーガ28の基部において探知することにより、排出オーガ28の基部における任意の方向であるコンバイン1の前方向を基準方位とする操作装置23の相対方位を算出するものである。
【0128】
このように構成にすることにより、作業者は、排出オーガ28を所望の位置に配置した操作手段である操作装置23から排出オーガ28の自動移動操作を行うだけで、横排出オーガ22の先端部を操作手段である操作装置23の方向に移動させることができる。これにより、作業者は、排出オーガ28の移動を細かく指示することなく簡単な操作で排出オーガ28を所望の位置へ移動させることができるとともに、排出オーガ28の移動動作中であっても作業者が穀粒排出装置20の操作以外の作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0129】
1 コンバイン
15 穀粒タンク
21 縦排出オーガ
22 横排出オーガ
23 操作装置
25 排出制御装置
26 回動モータ
40 GPSユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部が基部に対して移動可能に構成されて、前記先端部から穀粒タンク内の穀粒を排出する排出オーガと、
前記排出オーガの先端部を任意の方向に移動させるアクチュエータと、
前記排出オーガを移動操作する持ち運び可能な操作手段と、
前記排出オーガの基部に対する前記操作手段の相対方位を算出する相対方位算出手段と、
前記操作手段の操作により、前記相対方位算出手段で算出される前記排出オーガの基部に対する操作手段の相対方位に基づいて、前記排出オーガの先端部が前記操作手段の方向に向くように、前記アクチュエータを動作させる制御手段と、
を具備するコンバイン。
【請求項2】
前記方位算出手段は、
GPS衛星からの電波信号を前記操作手段の位置と前記排出オーガの基部の位置とにおいて受信することにより、前記排出オーガの基部の位置における絶対方位を基準方位とする前記操作手段の相対方位を算出することを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記方位算出手段は、
前記操作手段から発信される電磁波が最も強くなる方向を前記排出オーガの基部の位置において探知することにより、前記排出オーガの基部の位置における任意の方向を基準方位とする前記操作手段の相対方位を算出することを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−284097(P2010−284097A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139219(P2009−139219)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】